83
第5章 Ti析出物による局部伸びに優れた熱延鋼板の開発
5-1 緒言 第2章から第4章において、フェライト相単相鋼である極低炭素鋼を対象として、固溶 元素の存在形態によるr値への影響を検討した。この結果、固溶C、N、Bの存在形態の 制御によってr値を向上させ得ることが明確となった。 r値は切り欠き伸びと相関があることは第1章で記述した通りであり、熱延板における穴 拡げ性の向上にはこの知見が有効であると考えられる。 一方、一般に鋼板強度が高くなると伸びや穴拡げ性などのいわゆる成形性が低下すると いう問題があり、高強度鋼板の適用を妨げる要因の1つとなっている。この問題に対して、 結晶粒の微細化は高強度化と同時に局部延性を向上させるという報告1)があり、他の強化 法と比較して成形性の低下を抑制できる可能性がある。また、低合金成分で高強度化でき ることから、経済的な面でも利点があると考えられる。このような理由で、近年粒界強化 を利用した微細粒鋼が注目されつつある2∼8)。 結晶粒微細化の手段としては種々検討されている5-7)が、これらの方法を薄鋼板製造プ ロセスに適用するには加工度、加工温度、冷却速度などの点で困難な点が多い。そこで、 現有の圧延設備で容易に実施できるフェライト組織微細化の手法として熱間圧延中の動 的再結晶9-16)を利用することを検討し、そのための重要な条件として、低炭素鋼に適量の Ti を添加しTiCを析出させ加工前のγ粒径を制御することにより動的再結晶を発現さ せ、フェライト粒の微細化による局部延性に優れた鋼板を開発した。 5-2 実験方法 Table 5-1 に示す Ti量を変化させた化学成分の低炭素鋼を真空中で溶製し、厚さ30 mmのスラブに鍛造した。この鍛造材より、直径8mm、高さ12mmの単軸圧縮用試験 片を、高さ方向が鍛造材の板厚方向となるように採取した。試験片は加熱・冷却が可能な 単軸圧縮試験機(富士電波社製;Thermec Master Z)を用いて室温から昇温速度30K/ sで所定の温度に加熱し、1150℃から1250℃で900秒間加熱した後、850℃84 で減厚率50%(ε=0.69)で加工し、50℃/sで室温まで冷却した。単軸圧縮の 歪み速度は0.4/sと一定である。実験方法を Fig.5-1 に示す。なお、各試料を 1273K で加熱後、20K/sで冷却時の膨張測定から供試鋼の変態点(Ar3)を求めた結果、Ti 量によらずほぼ800℃一定であった。よって、いずれの鋼種においても850℃はγ単 相域である。圧縮中の応力、歪み変化を測定し、真応力−真歪み曲線の形状から、動的再 結晶発現の有無を調べた。 一般に、動的再結晶が生じている場合 Fig.5-2 に示すような真応力−真歪み曲線を示す ことが知られている 17)。すなわち、εpまでの歪み量まで応力は増加し、ε pでσpの最 大応力を示したあと、εp以上の歪みでは応力が減少しσsの定常応力を示す。動的変態が 生じた場合にも最大応力が観察されるが、最大に達した後の応力が直線的に減少すること
C
Si
Mn
P
S
Ti
N
A
0.070
0.50
0.61
0.009
0.001
0.052
0.0023
B
0.067
0.50
0.62
0.009
0.001
0.105
0.0022
C
0.074
0.50
0.62
0.009
0.001
0.156
0.0021
D
0.068
0.50
0.60
0.011
0.001
0.217
0.0021
Table
5-1 供試鋼の化学成分 /mass %
C
Si
Mn
P
S
Ti
N
A
0.070
0.50
0.61
0.009
0.001
0.052
0.0023
B
0.067
0.50
0.62
0.009
0.001
0.105
0.0022
C
0.074
0.50
0.62
0.009
0.001
0.156
0.0021
D
0.068
0.50
0.60
0.011
0.001
0.217
0.0021
Table
5-1 供試鋼の化学成分 /mass %
8mm 1 2 m m 加熱温度 1150-1250℃ X30分 850℃で 50%圧縮 (ε=0.4/s) 組織観察 組織観察 水冷 ・ 8mm 1 2 m m 加熱温度 1150-1250℃ X30分 850℃で 50%圧縮 (ε=0.4/s) 組織観察 組織観察 水冷 ・Fig.5-1 実験方法
85 が知られており 18)、今回試験した限りにおいてはいずれも動的再結晶型のみが観察され る。 圧縮試験後、試験片中央部を圧縮軸に平行方向で切断し、ナイタールで腐食した後、 切断面の中心部を光学顕微鏡により組織観察した。まず切断法による平均切片長さLを求 め、これを 1.12 倍してフェライト公称粒径とした19)。また、各加熱温度におけるγ粒径 と Ti 析出物量を調べるため、加熱後直ちに水冷し、組織観察および析出物分析を行った。 5-3 実験結果 5-3-1 熱間加工時の応力−歪み曲線に及ぼす加熱温度および Ti 量の影響 Fig.5-3 に圧縮試験時の真歪み−真応力曲線に及ぼす加熱温度、Ti量の影響で示す。 加熱温度が1200℃、1250℃と高温の場合は歪み量とともに応力が上昇する加工硬 化型の変形曲線を示した。一方加熱温度1150℃では、低Ti量(Ti=0.05%)のA鋼 を除くといずれもひずみ量が増加しても変形応力は増加せず、定常変形状態もしくは一旦 極大応力を示した後軟化する傾向を示した。変形中に応力が軟化する傾向は Ti 量が増加 するに従って顕著となる。
ε
s
真歪み
真
応
力
動的再結晶
加工硬化
ε
s
真歪み
真
応
力
動的再結晶
加工硬化
Fig.5-2 動的再結晶時の応力−ひずみ曲線
86 このように 0.1%以上の Ti 添加鋼を 1150℃に加熱した場合には、Fig.5-1 に示した現 象と同様の変形応力の変化を示したことから、動的再結晶が生じたものと考えられる。 5-3-2 動的再結晶挙動に及ぼす加工前組織の影響 Ti添加低炭素鋼ではこれまで低温γ域での動的再結晶はほとんど報告されていない が、上記のように Ti 添加量と加熱温度を適正化することによって動的再結晶が促進され る可能性が示唆された。動的再結晶には加工前の結晶粒径が影響する 17)ことが知られて おり、詳細を議論するには Ti 添加量と加熱温度が加工前の結晶粒径に対してどのように 影響しているかを明らかにしておく必要がある。 そこでA,C,D鋼について1150℃、1250℃に加熱後直ちに水冷し、加工前の 初期γ組織を観察した。その結果を Fig.5-4 に示す。1250℃の高温加熱では、Ti添加量 の増加によりγ粒径は微細となるものの、各鋼とも200μm 以上の粗大なγ粒である。 1150℃に加熱温度を低下させた場合には、低 Ti 添加鋼(A鋼)のγ粒径は 200μmから 150μmに微細となるものの、その程度は小さい。しかし、Ti 量の増加に従いγ粒組織は Steel C(0.15%Ti) 100 200 400 300 00 0.2 0.4 0.6 0.8 Steel D(0.21%Ti) 100 200 400 300 00 0.2 0.4 0.6 Steel A(0.05%Ti) 0 100 200 400 300 0.2 0.4 0.6 0.8 0 真 応 力 / M P a 真ひずみ 0.8 真ひずみ 真ひずみ Steel C(0.15%Ti) 100 200 400 300 00 0.2 0.4 0.6 0.8 Steel D(0.21%Ti) 100 200 400 300 00 0.2 0.4 0.6 Steel A(0.05%Ti) 0 100 200 400 300 0.2 0.4 0.6 0.8 0 真 応 力 / M P a 真ひずみ 0.8 真ひずみ 真ひずみ 1250℃ 1200℃ 1150℃ 加熱温度 1250℃ 1200℃ 1150℃ 加熱温度 Fig.5-3 圧縮試験時の真ひずみ-真応力
87 微細となり、Ti 量の影響が顕著である。Ti を 0.2%添加した D 鋼のγ粒径は 20μm と微細 である。 5-3-3 初期オーステナイト粒径に及ぼす Ti 析出物の影響 1150℃での低温加熱において加工前の初期γ粒径がもっとも微細であった D 鋼につ いて、加熱温度とTi析出量の関係を調べた。D 鋼を1000℃∼1250℃で900秒 保持後直ちに水冷し、Ti析出量を定量した結果を Fig.5-5 に示す。1000℃加熱では、 添加したTi量の90%以上が加熱時にTi(C、N)として析出しているのに対して、 1250℃加熱では添加量の 10%が析出しているに過ぎない。
Steel A (0.05%Ti)
加熱温度/℃
1150℃
1250℃
150μm
200μm
Steel C (0.15%Ti)
40μm
180μm
Steel D (0.21%Ti)
20μm
90μm
50μmFig.5-4 加工前の初期γ組織
加熱温度/℃
加熱温度/℃
1150℃
1250℃
1150℃
1250℃
Steel A (0.05%Ti)
加熱温度/℃
1150℃
1250℃
150μm
200μm
Steel C (0.15%Ti)
40μm
180μm
Steel D (0.21%Ti)
20μm
90μm
50μmFig.5-4 加工前の初期γ組織
加熱温度/℃
加熱温度/℃
1150℃
1250℃
1150℃
1250℃
88 各温度でのTi(C、N)の析出挙動を Thermo−Calc.により計算した結果を実測値と あわせて Fig.5-6 に示す。加熱温度による析出量の変化は計算値と実測値でよく一致し、 ほぼ平衡状態であることを示している。このように加熱段階でのTi(C、N)析出量の 差が、加工前の初期γ粒径の微細化に寄与することが明らかとなった。
T
i析
出
物
比
率
/
%
加熱温度/℃
1150℃
1000℃
1250℃
0
25
50
75
100
T
i析
出
物
比
率
/
%
加熱温度/℃
1150℃
1000℃
1250℃
0
25
50
75
100
Fig.5-5 加熱温度によるTi析出物率
Fig.5-6 Thermo.Calc.と実験によるTi析出量の温度変化
20
16
12
8
4
0 600
800
1000
1200
Ti
C
測定値
x10-2
24
28
加熱温度/℃
析
出
量
/
m
as
s%
20
16
12
8
4
0 600
800
1000
1200
Ti
C
測定値
x10-2
24
28
加熱温度/℃
析
出
量
/
m
as
s%
89 また、Ti析出物の電子顕微鏡による観察結果を Fig.5-7 に示す。主として 0.1μm以 下の微細なTi(C、N)が観察された。Ti析出物はγ粒成長の抑制に加えてγ→α変 態の促進や、再結晶時のフェライト粒の粒成長抑制にも効果があると言われており、これ らが相乗して最終的なフェライト粒微細化に寄与している可能性がある。この点について はさらに検討を進めている。 5-3-4 フェライト粒径に及ぼす動的再結晶の影響 加熱温度1150℃∼1250℃で900秒間加熱後、歪速度0.4/s,減厚率50% (ε=0.69)で圧縮試験後のフェライト粒径を光学顕微鏡で観察し、平均結晶粒径を求め た結果を Fig.5-8 に示す。なお、圧縮試験後の冷却速度は50℃/s とした。Ti量の増 加、あるいは加熱温度の低下にともなって粒が微細化する傾向が認められる。加熱温度が 1250℃の場合、鋼中Ti量を0.21%まで増加しても平均粒径は10μm 以上と大き く、しかも混粒組織であった。一方、Ti=0.21%の D 鋼を1150℃で加熱した場 合の粒が最も微細で、かつ均一であった。すなわち動的再結晶が発現した場合、変態後に は微細で等軸なα粒が得られることがわかる。
Fig . 5-7 Ti析出物のTEM観察
0.1μmFig . 5-7 Ti析出物のTEM観察
0.1μm90 5-4 考察
5-4-1 Ti 添加鋼の動的再結晶による見かけの活性化エネルギー
低炭素鋼に0.1%以上のTiを添加し低温に加熱した鋼では、上述のように低温γ域 でも動的再結晶が生じることが明らかとなった。そこで、C−Ti鋼の動的再結晶挙動を Zenner-Hollomon 因子Z(=ε.exp(Q/RT)、以下Z因子と記載)で整理する 17)ことを考え
る。 酒井らは動的再結晶に伴って現れる典型的な応力−ひずみ(σ-ε)曲線は低 Z 変形で は多重ピーク型、高 Z になるに従い単一ピーク後滑らかに加工軟化し、高ひずみではいず れも変形応力がほぼ一定となる定常状態変形を示すようになる20)と結論している。今回T i添加鋼で動的再結晶が起きた場合に得られたσ-ε曲線はいすれも単一ピーク型形状で あることから、今回の動的再結晶は比較的高Z領域で生じたものと考えられる。 動的再結晶の kinetics は Z 因子で代表される加工温度(T)と歪み速度(ε . )によって決定 される。加工温度が低くなるほど、歪み速度が大きくなるほど、すなわち Z 因子が大きく なるほど、動的再結晶を生じる臨界歪量は大きくなり、動的再結晶は生じにくくなる。一 方、牧ら21)は、動的再結晶後のγ粒径はZ因子が大きいほど小さくなること、初期γ粒径 (D0)が小さくなるほど動的再結晶の生じる変形条件が高Z側に拡大すること、を明らか
Fig. 5-8 フェライト粒径に及ぼす加熱温度およびTi添加量の影響
0
5
10
15
1150
1200
1250
20
加熱温度 / ℃
平
均
フ
ェ
ラ
イ
ト
粒
径
/
μ
m
Ti=0.05% Ti=0.10% Ti=0.15% Ti=0.21%0
5
10
15
1150
1200
1250
20
加熱温度 / ℃
平
均
フ
ェ
ラ
イ
ト
粒
径
/
μ
m
Ti=0.05% Ti=0.10% Ti=0.15% Ti=0.21% Ti=0.05% Ti=0.10% Ti=0.15% Ti=0.21%91 にしている。本実験においてTi添加および加熱温度の低温化は、加工前の初期γ粒径の 粒成長を抑制して微細する効果があり、これにより動的再結晶が起こり易くなることが判 明した。また動的再結晶により微細なγ粒組織が得られるのは粒成長の抑制によるもので あり、変態後の微細なα粒を得るのに効果的であったものと考えられる。 また、実際の熱間圧延工程を考えた場合、本実験の結果は仕上圧延に相当する低温γ 域・高歪速度域での動的再結晶が可能であることを示しており、工業的な観点からも有益 な情報である。 ところで、本鋼においてZ因子を決定するためにはみかけの活性化エネルギーQの値が 必要となる。一般に極大応力σpと変形条件(T、ε . )の間には通常ε . =A σpnexp(-Q/RT) が成立することが知られている。そこで、化学組成が 0.12%C-0.7%Si-1.4%Mn-0.16% Ti鋼を用いて、加工フォーマスターにより、加熱温度を1150℃とし、歪み速度=0. 01/s、0.1/s、1/s、変形温度=1000℃、1100℃、1150℃、歪み量 =0.69で変形させた圧縮加工実験を行った。この時の初期γ粒径は40μmであった。 すべての実験条件において変形途中にピーク応力(σp)を示す真応力−真歪み曲線を示 した。このピーク応力(σp)は変形温度(T)とひずみ速度(ε . )との関係式ε.=A*σ pn*exp(-Q/RT)で表される。従って、ε . とσpの関係から「n」を求めることができ、また σpと1/T のアレニウス型プロットからみかけの活性化エネルギーを求める事ができる。 これらの結果からみかけの活性化エネルギーQ を求めた結果、本鋼においてQ=340k J/molを得た。この値は鉄の自己拡散エネルギー(285kJ/moll)より若干大き く、Nb添加鋼について牧らが報告25)した327kJ/molにほぼ等しい値となった。す なわち、活性化エネルギーの点からも本鋼において高Z領域まで動的再結晶が生じたこと を傍証する結果が得られた。Fig.5-9 にσpとZの関係を示す。Z=Aσpnの関係が成立し ている。
92 以上のようにTi添加低炭素鋼で初期γ粒径を微細化(50μm 以下)することにより低 温γ域まで動的再結晶が生じる。本鋼の動的再結晶はこれまで研究された C−Mn 鋼、Nb 鋼より低温、高歪み速度で生じるため、より高 Z 変形となり、γ粒の微細化には効果的で あることが判明した。 5-4-2 動的再結晶挙動に及ぼす固溶 C の影響 Ti 添加低炭素鋼の動的再結晶挙動が主として初期γ粒径に依存しているかどうかを明 らかにするには固溶 C の影響を明確にしておく必要がある。そこで、種々の C 量(0.04 mass%∼0.20mass%)を含有するTi無添加鋼を用いて、動的再結晶挙動におよぼす加 工前γ粒径の影響を検討した。
Fig.5-9 Zener - Hollomon パラメーターによる動的再結晶の検証
1.6
Q=340kJ/mol
1.7
1.8
1.9
2.0
2.1
2.2
10
910
1010
1110
1210
1310
1410
1510
16Z=ε
exp
(Q/RT)
L
og
σ
p
・1.6
Q=340kJ/mol
1.7
1.8
1.9
2.0
2.1
2.2
10
910
1010
1110
1210
1310
1410
1510
16Z=ε
exp
(Q/RT)
L
og
σ
p
・93 0.04%C-0.5%Si-0.6%Mn-Ti 無添加鋼および 0.12%C-0.5%Si-0.6%Mn-Ti 無添加鋼を加工フ ォーマスターにより、1000℃、1050℃、1100℃に加熱後、900℃で歪み速 度0.4/s、歪み量0.69の圧下を施した。0.04%C鋼および 0.12%C鋼の真歪み-真応 力曲線を Fig.5-10 に示す。0.04%C鋼では1000℃、1050℃に加熱後圧縮した場 合に動的再結晶型の応力歪み曲線を示した。0.12%C鋼ではすべての加熱温度において、 動的再結晶型の応力歪み曲線を示した。動的再結晶の有無を初期γ粒径で整理して Fig.5-11 に示す。固溶C量に関わらず加工前のγ粒径を80μm以下に微細化することに より、動的再結晶が発現する。すなわち、動的再結晶発現に対して、固溶C量はほとんど 影響しないことがわかる。 次に、固溶Tiの影響について考察する。動的再結晶型の応力-歪み曲線が観察された C 鋼、D 鋼におけるTiは、平衡溶解度積からの計算ではいずれも1150℃でTiCとし て析出し、固溶Tiとしては存在しない。実験的には十分平衡に達していたかどうか疑問 はあるが、供試鋼はいずれもTi/Cは4以下であり、Ti量に対してC量を過剰に添加 した成分系である。従って動的再結晶が観察された温度域ではTiはTiCとして十分析 出し、固溶Tiは無視できる程度であったと推定する。
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
真歪み
C=0.04%
160C=0.12%
140 120 100 80 60 40 20 00
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
160 140 120 100 80 60 40 20 0真
応
力
/
M
P
a
真歪み
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
真歪み
C=0.04%
160C=0.12%
140 120 100 80 60 40 20 00
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
160 140 120 100 80 60 40 20 0真
応
力
/
M
P
a
真歪み
1000℃ 1050℃ 1100℃ 加熱温度 1000℃ 1050℃ 1100℃ 加熱温度Fig. 5-10 真ひずみ-真応力に及ぼす鋼中C量の影響
94 以上の結果から、Ti添加鋼の動的再結晶に対する固溶Cの影響はなく、本論文成分で は主として初期γ粒径の微細化によって動的再結晶を生じ易くなったものと考えられる。 5-4-3 穴拡げ性と局部伸びの関係 このように TiC の析出により動的再結晶を発現させ、フェライト粒を微細化させた熱延 鋼板の材料特性を Table 5-2 に示す。微細化させることにより穴拡げ性が向上した。この 原因として、局部伸びおよび、切り欠き伸び、r 値の面内異方性の影響を Fig.5-12 に示す。 局部伸び、切り欠き伸びと穴拡げ性は良い相関を示し、穴拡げ性の向上には局部伸びの向 上が有効であることが判明した。 0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.20 0.24 0 20 40 60 80 100 120 × × × C量 / mass% 初 期 オ ー ス テ ナ イ ト 粒 径 / μ m
Fig .5-11 動的再結晶の発現に及ぼす鋼中C量と初期γ粒径の影響
0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.20 0.24 0 20 40 60 80 100 120 × × × C量 / mass% 初 期 オ ー ス テ ナ イ ト 粒 径 / μ mFig .5-11 動的再結晶の発現に及ぼす鋼中C量と初期γ粒径の影響
590MPa級 開発鋼
従来鋼
780MPa級 開発鋼
従来鋼
YS
(MPa)
TS
(MPa)
El
(%)
λ
(%)
FL
(MPa)
480
510
600
600
31
27
120
60
280
250
690
710
790
790
22
20
80
40
370
310
Table 5-2 開発鋼の材料特性
590MPa級 開発鋼
従来鋼
780MPa級 開発鋼
従来鋼
YS
(MPa)
TS
(MPa)
El
(%)
λ
(%)
FL
(MPa)
480
510
600
600
31
27
120
60
280
250
690
710
790
790
22
20
80
40
370
310
Table 5-2 開発鋼の材料特性
95 5-5 小括 低炭素 Ti 添加鋼において TiC 析出により動的再結晶発現とフェライト粒の微細化が可能 であることを明確にした。 (1) 加熱温度、鋼中の Ti 量によって熱間圧縮時の応力-歪み曲線は影響を受け、初 期γ粒径を 50μm 以下とした場合に、加熱温度 1423K、歪み速度 0.4/s で動的 再結晶に特徴的な応力-歪み曲線を示す。 (2) 初期γ粒径は加熱時に析出する Ti(C,N)量と対応しており、初期γ粒の微細化 には Ti(C,N)によるγ粒界のピンニングが重要であることが示唆される。また Ti 無添加鋼においても初期γ粒径を 80μm 以下にすることにより、動的再結晶 型真ひずみ-真応力曲線を示すことから、動的再結晶の発現は初期γ粒径を微細 化することが重要でありことがわかる。動的再結晶に及ぼす固溶 C や固溶Ti の影響は小さいものと考えられる。 (3) 種々の加工条件下で得られたピーク応力は Z 因子を用いてよく整理され、これ より求めた見かけの活性化エネルギーは 340kJ/mol である。この値はγ中の鉄
Fig.5-12 穴拡げ性に及ぼす切り欠き伸びおよび塑性異方性の影響
20
40
60
80
100
120
140
160
6
8
10
12
14
切欠伸び/%
穴
拡
げ
率
/
%
20
40
60
80
100
120
140
160
6
8
10
12
14
切欠伸び/%
穴
拡
げ
率
/
%
20
40
60
80
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96 の自己拡散における活性化エネルギー(285kJ/mol)より若干大きく、Nb 添加低 炭素鋼で牧らが報告している値(327kJ/mol)に近い。 (4) 以上のように微細粒組織を有する鋼板は局部延性に優れる事から、穴拡げ性 が向上し、高強度鋼においても、高い成形性を有する。 5-6 参考文献 (1) 鉄鋼の高温変形−進歩総説−,鉄鋼基礎共同研究会 高温変形部会,日本鉄鋼協会, (1979) (2) 平成9年度フロンチテイア構造材料研究センター プログレスレポート:金属材料技術研究所 (3) E.Yasuhara、A.Tosaka、O.Furukimi、M.Morita:材料とプロセス,CAMP-ISIJ, 12(1999), 377 (4) 第 2 回スーパーメタルシンポジウム講演集:JRCM RIMCOF(1999) (5) 結晶粒微細化への新アプローチ:日本金属学会(2000) (6) 第3回スーパーメタルシンポジウム講演集:JRCMRIMCOF(2001) (7) Fifth Workshop on the Ultra-steel:NRIM(2001)
(8) Masaaki Fujioka, Yoshio Abe, Yukito Ogiwara, Yoshitaka Adati, Takuo Hosoda and Hidesato Mabuchi:CAMP-ISIJ,13(2000),458
(9) T.Sakai:Recrystallization, Texture and Their Application to Structural Control ISIJ ,(1999),106
(10) R.A.P.DJAIG and J.J.Jonas:JISI,210(1972),256
(11) C.M.Sellars and W.J.MCG.TEGAR:Int.Met.Rev.,17(1972),1 (12) Masahisa Nakamura and Masanori Ueki:材料,23(1974),182
(13) Seita Sakui, Taku Sakai and Kazuo Takeishi:鉄と鋼,62(1977),856 (14) T.Sakai and J.J.Jonas:Acta Metall.,32 (1984),189
(15) 大橋正幸、遠藤孝雄、酒井拓:日本金属学会誌、54(1990)、435
(16) Tadashi Maki, Koichi Akasaka, Koji Okuno and Imao Tamura:鉄と鋼,66(1980)1659 (17) T.Maki and I.Tamura:材料,30(1981),211
97
(18) Yada Hiroshi:Committee on Ultrafine-grain Steels,ISIJ ,9(1991) (19) Minoru Umemoto:Bull. Iron Steel Inst. Jpn,2(1997),10
(20) T.Sakai:鉄と鋼,81(1995),1
(21) T.Maki, K.Akasaka and I.Tamura : Proc. Int. Conf. On Thermomechanical Processing of Microalloyed Austenite,AIME,Pittsburgh,(1981),217