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博 士 ( 工 学 ) 松 尾 保 孝

学 位 論 文 題 名

光散乱を利用した単一微粒子吸収分光法に関する研究 学位論文内容の要旨

  最 近 、21世 紀 の キ ー ワ ー ド と し て ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー が 取 り 上 げ ら れ 、 各 方 面 に お い て 活 発 な 研 究 が な さ れ て い る 。 特 に 量 子 ド ッ 卜 、 カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ と い った 新 規 材 料 素 子 等 が 注 目 さ れ 、 様 々 な 産 業 を 支 え る 高 度 情 報 化 社 会 の よ り い っ そ う の発 展 を 目 指 す 上 で ナ ノ メ ー ト ルオ ーダ ー領 域 の物 性研 究は 非常 に重 要と なっ てい る。 また 、 こ の 領 域 は バ ル ク と 原 子 ・ 分 子 の 中 間 に 位 置 す る 領 域 で あ り 、 サ イ ズ や 形 状 に 依存 し た 物 性 が 期 待 さ れ る メ ゾ ス コ ピ ッ ク 領 域 と し て も 認 知 さ れ 、 数 多 く の 研 究 が 進 めら れ て い る 。 一 般 に 物 性 研 究 に は 分 光 計 測 に よ る 電 子 状 態 の 測 定 が 用 い ら れ て お り 、コ ロ イ ド 溶 液 の 吸 収 分 光 や 共 焦 点 顕 微 鏡 に よ る 単 一 半 導 体 微 粒 子 の 発 光 分 光 な ど に よっ て ナ ノ 微 粒 子 の 電 子 物 性 も 徐 々 に 明 ら か に さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 従 来 用 い られ て き た 方 法 で は 測 定 感 度 不 足 や 散 乱 、 雑 音 等 に よ り 単 一 微 粒 子 の 電 子 状 態 ダ イ ナ ミク ス を 直 接 的 に 測 定 す る こ と は 困 難 で あ っ た 。

  本 論 文 で は 、 単 一 微 粒 子 の 電 子 状 態 ダ イ ナ ミ ク ス を 直 接 測 定 す る 手 法 と し て2つ の 顕 微 吸 収 分 光 法 を 提 案 す る 。 単 一 微 粒 子 の 吸 収 測 定 に お い て 透 過 率 測 定 に 基 づ く従 来 法 を 用 い る 場 合 に 問 題 と な る の は 吸 収 断 面 積 が 小 さ ぃ こ と に よ る 感 度 不 足 や 光 散乱 に よ る 精 度 不 足 で あ る が 、 提 案 す る 手 法 は こ の 光 散 乱 現 象 を 積 極 的 に 利 用 す る 事 でこ れ ら の 問 題 を 解 決 す る も の で あ る 。

  第 一 の 手 法 は 微 粒 子 か ら の 前 方 散 乱 光 に 含 ま れ る 微 粒 子 自 身 の 複 素 屈 折 率 情 報を 解 析 す る 方 法 で あ る 。 こ の 手 法 は 生 体 試 料 な ど の 観 察 に 用 い ら れ て い る 微 分 干 渉 光学 系 を 用 い る こ と で 前 方 散 乱 光と 透過 光の 干 渉か ら前 方散 乱光 の振 幅、 位相 変化 を測 定し 、 複 素 屈 折 率 を 求 め る こ と で 吸 収 解 析 を 行 う も の で あ る 。 こ の 方 法 を 用 い る と 吸 収だ け で な く 屈 折 率 変 化 や 微 粒 子 の サ イ ズ な ど 複 数 の 情 報 を 得 る こ と が 可 能 で あ る 。   第 二 の 手 法 は 放 射 圧 を 利 用 し た 顕 微 吸 収 分 光 法 で あ る 。 光 の 放 射 圧 は 光 ピ ン セッ ト と し て 用 い ら れ る 微 小 物 体 を 非 接 触 に 捕 捉 、 駆 動 す る カ で あ る が 、 理 論 的 に は 光の 散 乱 、 吸 収 等 で 誘 起 さ れ る カ で あ る こ と が 証 明 さ れ て い る 。 放 射 圧 の 測 定 は 、 レ ーザ ー 光 の エ ノ く ネ ッ セ ン ト 場 で微 粒子 を照 射 し、 散乱 光強 度か ら微 粒子 の位 置を 検出 する 手 法 を 利 用 し て 、 微 粒 子 の ブラ ウン 運動 を 観測 しポ テン シャ ルを 求め るこ とで 実現 する 。 高 分 子 微 粒 子 に 色 素 を 含 有 さ せ 、 色 素 が 吸 収 す る 波 長 の 光 を 照 射 す る こ と に よ るポ テ

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ンシャルの変化から光吸収によって生じる放射圧を測定し、その結果から微粒子の吸 収断面積を解析する方法である。

   本研究ではこれらの顕微吸収分光法について理論面からの考察を行うとともに、測 定システムを作製し、単一微粒子の吸収分光を行いその有効性について検討を行った。

   本論文は以下の5 章から構成される。

   第1 章で は、 序論 とし て本研究を行うに当たっての背景、目的そして本論文の構成 について述べている。

   第2 章で は、 現在 一般 的に用いられている吸収分光法を紹介し、提案する吸収分光 法の基礎となる光散乱現象の理論について述べる。そしてその理論を基にした微分干 渉を利用した顕微吸収分光法及び放射圧を利用した顕微吸収分光法についての原理を 説明する。

   第3 章で は、 微分 干渉 を用いた顕微吸収分光法について検討している。実際に作製 した微分干渉吸収分光システムについて説明を行う。測定対象には単一銀微粒子を用 いることでシステムの評価を行った。また、パルスレーザーを用いて時間分解吸収解 析 を 行 う こ と で 励 起 状 態 ダ イ ナ ミ ク ス の 測 定 に つ い て の 検 討 も 行 っ た 。    第4 章で は、 放射 圧を 用いた吸収分光システムについて検討している。色素を含有 した単一高分子微粒子をレーザートラッピングし、光吸収による放射圧を測定するこ とで微粒子の吸収解析を行った。微粒子に照射するレーザー光の強度変化、含有色素 濃度を 変え るこ とに より 本手法の有効性を検討する。また、Mie 散乱の数値計算より 微 粒 子 に 含 有 さ れ る 色 素 濃 度 を 推 定 し 、 予 測 さ れ る 濃度 と 良 い 一 致 を 示 し た 。    第5 章で は以 上の 結果 を総括し、今回作製した吸収分光システムの有効性を示すと ともに、今後の展望について述べる。

   最後に、著者は光散乱現象を利用することにより従来法では困難である単一微粒子 の吸収分光法を提案し、そのシステム作製を行った。そして、単一金属微粒子や高分 子微粒子を測定することによりその有効性を示した。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   笹木敬司 副査   教授   末宗幾夫 副査   教授   山本眞史 副査   教授   大宮   学

副査   教授   増原   宏(大阪大学大学院工学研究科)

学 位 論 文 題 名

光散乱を利用した単一微粒子吸収分光法に関する研究

  21世紀のキーワードとしてナノテクノロジーが取り上げられ、各方面において活発な研究が なされている。特に量子ドット、カーポンナノチューブといった新規材料素子等が注目され、様々 な産業を支える高度情報化社会のよりいっそうの発展を目指す上でナノメートルオーダー領域の 物性研究は非常に重要となっている。また、この領域はバルクと原子・分子の中間に位置する領 域であり、サイズや形状に依存した物性が期待されるメゾスコピック領域としても認知され、数 多くの研究が進められている。一般に物性研究には分光計測による電子状態の測定が用いられて おり、コロイド溶液の吸収分光や共焦点顕微鏡による単一半導体微粒子の発光分光などによって ナノ微粒子の電子物性も徐々に明らかにされている。しかしながら、従来用いられてきた方法で は測定感度不足や散乱、雑音等により単一微粒子の電子状態ダイナミクスを直接的に測定するこ とは困難であった。

  本論文では、単一微粒子の電子状態ダイナミクスを直接測定する手法として2つの顕微吸収分 光法を提案している。単一微粒子の吸収測定において透過率測定に基づく従来法を用いる場合に 問題となるのは吸収断面積が小さいことによる感度不足や光散乱による精度不足であるが、提案 する手法はこの光散乱現象を積極的に利用する事でこれらの問題を解決するものである。第一の 手法は微粒子からの前方散乱光に含まれる微粒子自身の複素屈折率情報を解析する方法である。

この手法は生体試料などの観察に用いられている微分干渉光学系を用いることで前方散乱光と透 過光の干渉から前方散乱光の振幅、位相変化を測定し、複素屈折率を求めることで吸収解析を行 うものである。この方法を用いると吸収だけでなく屈折率変化や微粒子のサイズなど複数の情報 を得ることが可能である。第二の手法は放射圧を利用した顕微吸収分光法である。光の放射圧は 光ピンセットとして用いられる微小物体を非接触に捕捉、駆動するカであるが、理論的には光の 散乱、吸収等で誘起されるカであることが証明されている。放射圧の測定は、レーザー光のエバ ネッセント場で微粒子を照射し、散乱光強度から微粒子の位置を検出する手法を利用して、微粒 子のプラウン運動を観測しポテンシャルを求めることで実現する。高分子微粒子に色素を含有さ せ、色素が吸収する波長の光を照射することによるポテンシャルの変化から光吸収によって生じ

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る放射圧を測定し、その結果から微粒子の吸収断面積を解析する方法である。本研究ではこれら の顕微吸収分光法について理論面からの考察を行うとともに、測定システムを作製し、単一微粒 子の吸収分光を行いその有効性について検討を行った。

  以下に本論文の構成を示す。

  第1章では、序論として本研究を行うに当たっての背景、目的そして本論文の構成について述 べている。

  第2章では、現在一般的に用いられている吸収分光法を紹介し、提案する吸収分光法の基礎と なる光散乱現象の理論について述べている。そしてその理論を基にした微分干渉を利用した顕微 吸 収 分 光 法 及 び 放 射 圧 を 利 用 し た 顕 微 吸 収 分 光 法 に つ い て の原 理 を説 明し てい る。

  第3章では、微分干渉を用いた顕微吸収分光法について検討している。実際に作製した微分干 渉吸収分光システムについて説明を行っている。測定対象には単一銀微粒子を用いることでシス テムの評価を行った。また、パルスレーザーを用いて時間分解吸収解析を行うことで励起状態ダ イナミクスの測定についての検討も行っている。

  第4章では、放射圧を用いた吸収分光システムについて検討している。色素を含有した単一高 分子微粒子をレーザートラッピングし、光吸収による放射圧を測定することで微粒子の吸収解析 を行っている。微粒子に照射するレーザー光の強度変化、含有色素濃度を変えることにより本手 法の有効性を検討している。また、Mie散乱の数値計算より微粒子に含有される色素濃度を推定 し、予測される濃度と良い一致を示している。

  第5章では以上の結果を総括し、今回作製した吸収分光システムの有効性を示すとともに、今 後の展望について述べている。

  これを要するに、著者は光散乱現象を利用することにより従来法では困難である単一微粒子の 吸収分光を実現する新しい手法を提案するとともに、システムを構築して単一金属微粒子や高分 子微粒子の微弱吸収を測定することに成功し、単一微粒子の光物性計測に関する有益な知見を得 た も の で あ り 、 光 工 レ ク ト 口 二 ク ス の 分 野 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よ っ て著 者は ,北 海道 大学 博士 (工学)の学位を授与される 資格あるものと認める。

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