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学位 論文審査の要旨 主査 副査

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 木 佐 健 悟

学 位 論 文 題 名

プライマリケア外来における診察時間に関する研究 学位 論文内容の要旨

【背景と目的】日本では「3時間待ちの3分診療」と揶揄され、医学系の英文雑誌で日本の医療 を紹介する記事でも言及されるように診療時間が短いイメージが持たれている。また、地域によ っては医師の退職や閉院により特定の医療機関に患者が集中するようになると外来の混雑が引き 起こされるが、来院した患者は無理をしてでも全員診察するのが慣習であり、1日あたりあるい は単位時間あたり何人までであれば診療の質が維持できるのかなどは不明である。これらの問題 を考える上では、診療時間やその内容を分析することが必要であるが、海外の報告と比べ診察時 間に関する日本での知見が乏しいのが現状である。そのため、対象をプライマリケア外来とし、

診察時間の構造や関連要因を明らかにすることを目的とした研究を行った。なお、本論文は6章 構成であり、1〜5章に研究の内容を、6章を総括とした。以下では、1〜5章の研究の概要を記載 し、全体を通しての結論を述べる。

1章診察時聞研究の現状

【方法】診察時間はその国や地域の文化的背景および保険制度の影響を受けやすいと指摘されて いることから、日本国内で実施された診察時間に関する研究の論文を抽出した。医学中央雑誌、

CiNii、JMEDPlus、Google Scholar、MEDLINEで具体的な診察時間に言及していた論文を検索した。

【結果】26の文献が抽出された。診察時間を研究の中心のテーマとしたものは6件と限られてい た。研究内容は大きく2つに分かれ、診察時間とそれに関する要因を調べたものと、電子カルテ や医療秘書導入による診察時間の影響をみたものであった。

【考察】日本は国民皆保険制度、受診回数が多いなど諸外国にはない特徴がありながら、診察時 間に関する研究がほとんど行われていない現状を明らかにした。今後の研究の方向性として、満 足度と診察時間の関係を明らかにする研究、複数のセッティングで比較可能な形での診察時間の 分析が必要と考えられた。

2章医師満足度・患者満足度と診察時間の関係

【方法】プライマリケア医7名が122名の初診・再診双方の患者に対して行った診察の後に、医 師・患者双方に質問紙を配布し医師と患者の満足度を測定した。双方の満足度を比較するととも に、満足度と診察時間を含めた要因との関係について順序口ジスティック回帰分析を行った。

【結果】医師と患者ともに診療に満足をしていたが患者が医師より高い満足度を示していた、医 師は診察時間が長いことに満足していたが患者はそうではなかった、患者は診察前に長い待ち時

‑ 221

(2)

間 が あ る こ と で 満 足 度 が 下 が っ て い た 、 と い っ た 点 が 明 ら か に な っ た 。

【 考 察 】 他 の 国 で 行 わ れ た 医 師 ・ 患 者 満 足 度 に 関 す る 研 究 は 日 本 の セ ッ テ イ ン グ で 適 用 で き ると 考 え ら れ た 。

3章 診 察 時 間 の 構 造 と 関 連 要 因

【 方 法 】 プ ラ イ マ リ ケ ア 医9名 が 診 療 し た 初 診 ・ 再 診 双 方 の 患 者298名 の 診 察 を 観 察 し 、 診 察 の 一 連 の 流 れ を 病 歴 聴 取 、 身 体 診 察 、 助 言 な ど7つ の 段 階 に 分 け そ れ ぞ れ の 時 間 を 計 測レ た 。 ま た 、 患 者 に 質 問 紙 を 配 布 し 満 足 度 を 測 定 し た 。 患 者 の 属 性 、 受 診 理 由 な ど を 診 療 録 や 診 察 中 の や り と り か ら 記 録 し た 。

【 結 果 】1回 の 診 察 時 間 の 中 で 、 診 察 の 段 階 毎 に か け る 時 間 が 明 ら か に な っ た 。 今 回 調 査 し た 施 設 間 で は 診 察 時 間 に 大 き な 差 が あ っ た が 、 身 体 診 察 の 時 間 は 有 意 な 差 は な か っ た 。 年 齢 が 高 く な る と 身 体 診 察 で 時 間 が か か る 、 定 期 受 診 の 方 が 身 体 診 察 と 助 言 が 長 い 、 診 察 が 検 査 な ど で 中 断 さ れ る 場 合 で は 身 体 診 察 と 助 言 に 時 間 が か か る 、 処 方 が な さ れ た 診 察 で は 病 歴 聴 取 と 身 体 診 察 が 短 く な る 、 エ ピ ソ ー ド 数 が 増 え る と 病 歴 聴 取 と 助 言 に 時 間 が か か る 、 と い う 傾 向 が あ っ た 。

【 考 察 】 施 設 に よ る 診 察 時 間 の 差 が 大 き く 、 医 師 . 患者 双 方 が 施 設 の特 徴 を 理 解 する こ と が 診 察 時 間 に 関 す る 不 満 を 減 ら す 手 段 と な ろ う 。

4章 医 師 が 診 察 時 間 を 決 定 す る 要 因 に 関 す る 質 的 研 究

【 方 法 】 プ ラ イ マ リ ケ ア 医 に 半 構 造 化 面 接 を 行 い 、 こ れ ま で の 研 究 で 明 ら か に な っ て い な い 診 察 時 間 に 関 わ っ て い る 要 因 に つ い て 探 索 的 に 明 ら か に す る こ と を 試 み た 。 得 ら れ た デ 一 夕 か ら 質 的 デ ー 夕 分 析 の 手 法 に よ りInterpretive codes、Overarching themesを 生 成 し た 。

【 結 果 】 医 学 的 な 病 状 以 外 に 、 医 師 が 自 身 の 理 想 を 元 に 診 療 時 間 の コ ン ト 口 ー ル を 行 っ て い る こ と 、 患 者 の 協 力 、 環 境 の 調 整 に よ り 診 察 時 間 が 変 わ る な ど 、 診 察 時 間 に 影 響 を 与 え る 可 能 性 の あ る 要 因 が 明 ら か に な っ た 。

【 考 察 】 過 去 の 量 的 研 究 で は 得 ら れ な か っ た 様 々 な 要 因 が 質 的 研 究 に よ っ て 示 さ れ た 。

5章 町 内 外 受 診 行 動 か ら の 診 察 時 間 の 考 察

【 方 法 】 北 海 道 内4町 の 診 療 情 報 明 細 書 の 分 析 に よ り 町 外 の 医 療 機 関 を 受 診 し て い る 割 合 と そ の 疾 患 に つ い て 集 計 し た 。

【 結 果 】 各 町 で 地 元 の 医 療 機 関 を 受 診 す る 割 合 は 大 き く 違 う こ と 、 頻 度 の 高 い 疾 患 に 差 が あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。

【 考 察 】 今 後 は 、 地 域 住 民 の 受 診 行 動 の 把 握 と と も に 疾 患 名 毎 や 患 者 の 属 性 に よ る 診 察 時 間 の デ ー タ を 蓄 積 す る こ と で 、 そ れ ぞ れ の 医 療 機 関 や 地 域 の 診 察 時 間 の 実 態 を よ り 詳 細 に 分 析 す る こ と が 可 能 に な る と 思 わ れ た 。

【 結 諭 】 本 研 究 に よ り 、 診 察 時 間 の 構 造 、 診 察 時 間 に 影 響 を 与 え る 要 因 、 日 本 の 診 察 時 間 と 満 足 度 の 関 係 が 明 ら か に な り 、 診 察 時 間 に 関 す る 今 後 の 研 究 の 方 向 性 が 示 さ れ た 。 診 察 時 間 の 研 究 の 利 点 と し て 、 医 療 者 自 身 が 診 察 を 振 り 返 る こ と が で き る 点 が 挙 げ られ る が 、 同 時に 医 療 者 と 患者 ・ 地 域 住 民 が 持 つ 診 察 に 対 す る 疑 問 を 解 決 し 、 意 識 の ギ ャ ッ プ を 埋 め る よ う な 基 礎 デ ー タ と な る こ と が 期 待 さ れ る 。

―222一

(3)

学位 論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 教授 教授 教授

玉城 寺沢 松居 小山

学 位 論 文 題 名

英彦 浩一 喜郎     司

プライマリケア外来における診察時間に関する研究

  本論文は、プライマリケア外来における診察時間に焦点をあて、量的研究・質的研究の双方を 用い、診察時間の構造、診察時間に影響を与える要因、日本の診察時間と満足度の関係など複数 の新し い知見 を明らか にし、 診察時間 に関す る今後の研究の方向性を示したものである。

  最初に申請者は30分かけてプレゼンテーションを行った。論文の構成について触れた上で、1 章から5章までの各研究の概要を紹介し、全体の考察や今後の研究の方向性について述べた6章 の内容を説明した。

  引き続き行われた質疑応答では、まず小山教授から量的研究の調査対象となった地域や医療機 関の背景について、初診と再診の患者で診察時間は違うと予想されるがどのように解釈するのか、

患者満足度を尋ねた質問紙の回答には追従バイアスが入っているのではないか、という質問があ った。次いで、松居教授から適切な診察時間は患者毎に違うのではないか、今回の調査対象であ るプライマリケア外来の知見は他の外来に適用できるのか、という質問があった。また、寺沢教 授から研究の前提となる文化的背景や保険制度の具体的な内容について、診察の構造の各段階に ついての定義について、今後の研究の方向性として挙げられていたデルファイ法についての質問 があった。最後に、玉城教授から各研究の倫理審査の状況について、量的研究の調査対象のサン プリングの方法について、順序口ジスティック回帰分析のオッズ比の解釈についての質問があっ た。

  申請者は最初に小山教授の質問に対し、調査対象の地域(都市部から離れている・周囲に医療 機関がほとんどない)や医療機関(病床数・医師数・1日の外来患者数)の情報を述べた上で、

初診・再診それぞれに診察時間が長い患者と短い患者がおり初診・再診では診察時間に有意差は

―223ー

(4)

み ら れ な か っ た こ と 、 患 者 の 追 従 バ イ ア ス を 最 小 限 に す る た め に 質 問 紙 は 診 療 を し て い る 医 師 か ら で は な く 研 究 者 か ら 渡 す 、 患 者 の 担 当 医 に は 結 果 は 提 示 し な い こ と を 説 明 す る 、 と い っ た 工 夫 を し た こ と を 説 明 し た 。 次 に 、 松 居 教 授 の 質 問 に 対 し 、 患 者 個 人 毎 に 適 切 な 診 察 時 間 を 決 め る 方 法 は 先 行 研 究 を 含 め 現 段 階 で は 確 立 さ れ て お ら ず 患 者 全 体 の 診 察 時 間 が 今 回 の 研 究 対 象 と な っ て お り 今 後 は 本 研 究 結 果 を 踏 ま え 患 者 背 景 に 踏 み 込 ん だ 研 究 を 進 め て い く 必 要 が あ る こ と 、 適 切 な 診 察 時 間 そ の も の は 診 療 科 や 医 療 機 関 の 性 質 に よ っ て 異 な る 可 能 性 が 高 い が 、 海 外 の 先 行 研 究 と 類 似 し て い る 点 の 中 に は 普 遍 的 に 言 え る 知 見 が あ る と 説 明 し た 。 ま た 、 寺 沢 教 授 の 質 問 に 対 し 英 国 の よ う にGeneral Practitionerと 専 門 医 が 区 別 さ れ て い る 海 外 と 通 院 す る 患 者 が 自 由 に 受 診 先 を 選 べ る 日 本 と の 環 境 の 違 い を 述 べ 、 具 体 例 を 交 え 診 察 の 各 段 階 の 定 義 に つ い て 説 明 し 、 意 見 を 収 束 さ せ る 質 的 研 究 手 法 で あ る デ ル フ ァ イ 法 の 具 体 的 な 手 順 に つ い て 回 答 し た 。 最 後 に 、 玉 城 教 授 の 質 問 に 対 し 公 開 さ れ て い る 資 料 を 用 い た1章 を 除 き 倫 理 審 査 を 受 け 倫 理 に 配 慮 し て 研 究 を 行 っ た こ と 、 当 研 究 で 採 用 し た サ ン プ リ ン グ 方 法 を 説 明 し た 。 順 序 口 ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 の オ ッ ズ 比 の 絶 対 値 の 大 小 は 説 明 変 数 の 性 質 に 依 存 す る た め 一 律 に 議 論 す る こ と は で き な い が 、95% 信 頼 区 間 を 併 記 し 統 計 学 的 に 有 意 な 結 果 を 示 す こ と で 読 者 が 解 釈 す る こ と が 可 能 に な っ て い る 旨 を 説 明 し た 。

  審 査 員 か ら は 研 究 が 十 分 に 行 わ れ て い な い 診 察 時 間 に 取 り 組 み 興 味 深 い 知 見 が 得 ら れ た こ と を 評 価 す る 意 見 や 、 今 後 の 研 究 の 発 展 を 期 待 し た ぃ と い う 発 言 が 出 さ れ た 。   い ず れ の 質 問 に 対 し て も 、 申 請 者 は 自 身 の 研 究 か ら 得 ら れ た デ ー タ や 分 析 結 果 、 考 察 、 先 行 研 究 な ど を 引 用 し て 適 切 に 回 答 し た 。

  こ の 論 文 は 、 診 察 時 間 に 関 す る 複 数 の 新 し い 知 見 を 明 ら か に し 、 今 後 の 方 向 性 を 示 し た 研 究 と し て 高 く 評 価 さ れ 、 今 後 の 外 来 診 療 を 考 え る 上 で 基 礎 に な る 研 究 と し て 期 待 さ れ る 。   審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 、 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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