博 士 ( 獣 医 学 ) 岩 崎
忠
学位論文題名
Studies on ExperlmentalASthmatiCMOdel usingNC/NgaMice
(NC/Nga マウスをもちいた実験的喘息モデルに関する研究)
学位論文内容の要旨
気管支喘息は世界に1 億5 千万人もの患者を数え、また年間に18 万人が犠牲 になる社会的にもきわめて影響の多い疾患である。近年、その罹患率が上昇傾 向にあり、この疾患の病態の解析および、これに基づいた治療法の確立が求め られている。
アレルギ―性気管支喘息はアレルゲンの吸入によって可逆的に気道の閉塞 と呼吸困難を引き起こす疾患である。この疾患では病理組織学的に気道周囲に おいてアレルギ―性疾患に特徴的な好酸球を主体とした慢性炎症性反応を示す
。患者の多くは血中IgE の高値をみること、アトピ一性皮膚炎やアレルギ―性鼻 炎の経歴があり、いわゆるアレルギーマーチの経験者であることなどから、こ れらアレルギ一性疾患の発症要因の間には、遺伝的背景を始めとして何らかの 関連性が推測されていた。
喘息のモデルとしては、これまでモルモッ卜やラットに抗原暴露をおこなう 系がもちいられてきたが、アトピ―素因をもつ動物をもちいたモデルがより正 確な病態を反映することは明らかである。このような観点からBrown Norway ラ ットをもちいた系がいくっか確立されてきたが、免疫学的背景や遺伝的背景を 詳細に解析することには不向きであり、主要組織適合抗原(MHC) 遺伝子のハプ ロタイプが明らかとなっているマウスによる喘息モデルの確立が求められてい た。
そこで著者は、NC/Nga マウスが高IgE 血症をともなうヒトのアトピ一性皮膚炎 のモデルとして広く解析されていることに着目し、アトピ―性皮膚炎と発症要 因に強い関連性があるとされる気管支喘息について、NC/Nga マウスがモデルと しての特性を有するか否かについて検討した。
実験にはNC/Nga マウスと対照動物として
MHCハプロタイプが
NC/Ngaマウス と同型(H2d) である
BALB/cマウスをもちいた。これらのマウスに水酸化アル ミニウムゲルと混和したOvalbumin (OVA) を実験開始のO および7 日目に投与して 感作をおこない、14 日目にOVA を経鼻的に投与してチャレンジをおこなった。
抗原感作後に、喘息を弓1 き起こす因子として最も重要視されている抗原特異
的IgE 産生と気道過敏性について評価を加えたが、NC/Nga マウスはBALB/c マウ
スより有意なIgE 産生とアセチルコリン吸入に対する強い気道過敏性を示し、喘
息を誘導しうる素因を有していることが明らかとなった。また、実際に抗原チ
ヤレンジ後に気道抵抗圧を観察したところ、NC/Nga マウスで有意に高い気道抵
抗圧の亢進が認められた。
次い で、 気道 の炎 症反応 を観 察す る目 的で 、経 時的 に気 管洗 浄液 中の 炎症 性 細 胞数 の観 察を おこ なった とこ ろ、NC/Ngaマ ウス でチ ャレ ンジ 後24時間 目か ら 好 酸球 を主 体と した 細胞数 の増 加が 認め られ た。 さら に、 対照 マウ スで48時 間 目 にそ の数 の減 少が みられ たの に対 し、NC/Ngaマ ウス では 増加 傾向 が続 いて お り 、著 しい アレ ルギ 一性の 炎症 反応 が引 き起 こさ れて いる こと が示 唆さ れた 。 ま た 、 病 理 組 織 学 的 に も 気 道 に 著 し い 炎 症 性 細胞 の 浸 潤 と 気 道 上 皮 に よ る 粘 液の 分泌 亢進 が観 察され た。 以上 のこ とか ら、NC/Ngaマ ウス が気 管支 喘息 に 特有の症状を強く弓1き起こしていることが明らかとなった。
こ の メ カ ニ ズ ム を 探 る 目 的 で 、 血 中 の白 血 球 数 の 変 動 を 観察 した とこ ろ、
NC/Nga、BALB/c両 マウ ス で チ ャ レ ン ジ6時 間 後 に一 過 性 に 好 酸 球 数 の 上 昇 が 認 めら れた が、 その 後24時 間目 にはBALB/cマ ウス では この 数が 減少 した のに 対 し 、NC/Ngaで は さ ら な る 増 加 が 観 察 さ れた 。 ま た 、 好 酸 球 走化 因子 のmRNA発 現 を肺 組織 で観 察し たとこ ろ、BALB/cマ ウス では6時間目に発現が誘導され以後 減 少す るの に対 して 、NC膩gaマ ウス では 血中 好酸 球数 が高 い24時間 目に 発現 が 認 めら れた 。こ のこ とから 、血 中好 酸球 数の 上昇 と走 化因 子の 発現 の一 致が 、 NC膩gaで み ら れ た 好 酸 球 性 炎 症 を 顕 著 に し て い る も の と 考 え ら れ た 。 NC/Ngaマ ウス で認 められ た血 中好 酸球 数の 上昇 は、 この 細胞 の産 生部 位で あ る 骨髄 で多 くの 好酸 球が誘導されていることを示している。そこで、好酸球の分 化に関与し、前駆細胞から好酸球を誘導するインターロイキン(IL)‐3,ILー5,顆粒 球マクロファ―ジーコロ二―増殖因子(GM―CSF)の存在下にて骨髄細胞の培養を お こな い、 骨髄 の好 酸球産 生能 を検 討し た。 その 結果 、NC爪gaマウ スの 骨髄 で 有 意に 高い 好酸 球誘 導が認 めら れ、NC烈gaマ ウス の骨 髄が 高い 好酸 球産 生能 を 有していることが明らかとなった。
さらに、アレルギ―性炎症と関連が深いとされるIL‐4,IL−5と、これらサイトカ インと拮抗する働きを持っインターフェロン(IFN)IYの発現をELISA法にて評価し た。その結果、抗原チャレンジ後の気管洗浄液中IL‐4,IL‐5のレベルはNC/Ngaマ ウスと対照動物のBALB/cマウス間で類似の発現パターンを示したが、IFN‐Yのレ ベルはNC膩gaマウスで低かった。IFN‐Yは加vfケDの系で好酸球の誘導を抑制し、
ま た喘 息患 者に おい てもIFN.Yの産生が低いという報告があることから、NC/Nga マ ウス で認 めら れた 著しい好酸球誘導に低いIFN‐Y産生が関与していることが示 唆された。
学位論文審査の要旨 主査 教授 小沼 副査 教授 橋本
操 晃
副査 教授 松田浩珍(東京農工大)
副査 助教授 大橋和彦
学位論文題名
Studies on ExperlmentalASthmatiCMOdel uSingNC/NgaMiCe
(NC/Nga マウスをもちいた実験的喘息モデルに関する研究)
アレルギ ー性気管支喘息はアレルゲンの吸入によって可逆的に気 道の閉塞と呼吸困難を引 き 起こす疾患 である。この疾患では病理組織学的に気道周囲にアレル ギー性疾患の特徴とされ る 好酸 球主 体の 慢性 炎症 性反 応を示す。 また、患者の多くに高値の血中IgEが見られ、アトピ ー 性皮 膚炎 やア レル ギー 性鼻 炎の 病歴 をも っこ と が多 い。
NC/Ngaマ ウス は高IgE血 症を ともなうヒトのアトピー性皮膚炎のモ デルとして広く解析され て いる。そこ で本研究では、アトピー性皮膚炎と発症要因に強い関連 性があるとされる気管支 喘 息 に つ い て 調 べ 、NC/Ngaマ ウ ス の 喘 息 モ デ ル と し て の 有 用 性 に つ い て 検 討 し た 。 NC/Ngaマ ウス と対 照のBALB/cマ ウス をOvalbumin (OVA)で感 作後 、抗 原特異的IgE産生と気 道 過 敏 性 につ いて 調べ た。 その 結果 、NC/Ngaマウ ス はBALB/cマウ スよ り有 意なIgE産 生と ア セ チル コリ ン吸 入に 対する強い気道過敏性を示し、喘息を誘導しうる素因 を有していることが 明 らか とな った 。ま た、OVAで 経鼻 的に チャ レン ジを おこ なう と、NCf Ngaマウスの気管洗浄 液 中に 好酸 球が 顕著 に増加し、病理組織学的にも気道に強いアレルギー性 の炎症反応が観察さ れ た。 以上 のこ とか ら、NC/Ngaマ ウス では 気 管支 喘息 に特 有の 症状 が強 く誘導されているこ とが明らかとなった。
こ の機 序を 知る ため に、 血中 の自 血球 数 の変 動を 観察 した とこ ろ、NC/Ngaマウスでは24 時 間目 でも 好酸 球の 増加 が観 察さ れた 。ま た 、肺 組織 での 好酸 球走 化因 子mRNA発現も血中好 酸 球数 が高 い24時間 目に 認め られ 、血 中好 酸 球数の上昇と走化因子の発現の一致が、NCf Nga マウスでみられた好酸 球性炎症を誘導しているものと考えられた。
次 に、 両マ ウス での 骨髄 の好 酸球 産生 能 を検 討し た。 その 結果 、NC/Ngaマウスの骨髄で 有 意に 高い 好酸 球誘 導が 認め られ 、NC/Ngaマ ウス の骨 髄が 高い 好酸 球産 生能を有しているこ とが明らかとなった。
最 後に 、抗 原チ ャレンジ後のサイトカイン産生について調べたところ 、気管洗浄液中のイ ンターロイキン(IL)―4,IL‑5のレベル′は両マウス聞で差を認めなかったが、インターフェロン (IFN)‑y産生はNCf Ngaマウスで低レベルであった。NCf Ngaマウスでは低いIFN‐Y産生が著しい好 酸球誘導を引き起こし たものと考えられる。
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本研究は気管支喘息のモデル動物としてのNC/Ngaマウスの有用性を示すと同時にその発現 機序を明らかにしたものである。よって、審査員一同は岩崎忠氏が博士(獣医学)の学位を受 けるのに十分な資格を有するものと認めた。
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