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ニホ ン ウ ズラ の 突然 変 異体

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 田 中    聡

学 位 論 文 題 名

ニホ ン ウ ズラ の 突然 変 異体 (LWC 系) に認めら れた 筋緊張性ジストロフィー様疾患の骨格筋病変に関する    超微形態学的、組織化学的、免疫組織化学的研究     1

     学位論文内容の要旨

  筋 ジ ス ト 口 フ ィ ー は 筋 原 性 ミ オ パ チ ー の ー つ で あ り , 筋 線 維 の 進 行 性 変 性 を 特徴 とす る . ヒ ト の 筋 ジ ス ト 口 フ ィ ー は , 遺 伝 様 式 , 発 症 年 齢 , 症 状 の 進 行 度 合 い , 病 変の 分布 な ど に よ り 分 類 が な さ れ て い る . 筋 緊 張 性 ジ ス ト ロ フ ィ‑ (MyD)tま ヒ ト の 筋 原 性 筋 疾 患 の 中 で , 最 も 頻 度 が 高 い 重 篤 な 疾 患 で あ る . 本 症 は 常 染 色 体 性 優 性 遺 伝 で あり ,家 系 内 に 多 数 の 患 者 を み る こ と が 多 く , 同 一 家 系 内 で も 臨 床 症 状 が 多 岐 に 渡 り , 患者 間で 発 症 年 齢 , 筋 力 低 下 の 進 行 度 に 大 き な 差 違 が み ら れ る . 本 症 の 臨 床 症 状 は 多 彩 で, 骨格 筋 の み な ら ず 中 枢 神 経 系 , 眼 球 , 内 分 泌 系 , 免 疫 系 , 循 環 系 と 多 く の 臓 器 が 侵 され る多 臓 器 疾 患 で あ る . 臨 床 的 に は , 患 者 が 手 を 握 り し め る と , こ ぷ し を 開 く の に 時 間が かか る こ と(grip myotonia), 筋 腹 を ハ ン マ ー で 叩 く と , そ の 部 分 の 筋 が 収 縮 レ 容 易 に 弛 緩 し な い 症 状(percussion myotonia)が 認 め ら れ る . 電 気 生 理 学 的 に は , 針 電 極 を 筋 に 刺 入 し た 時 , 筋 電 図 上 で 刺 入 電 位 の 持 続(myotonic discharge)が 認 め ら れ る . 本 疾患 の発 生 機 序 は 未 だ 不 明 で あ り , 適 切 な 疾 患 モ デ ル 動 物 の 開 発 が 強 く 望 ま れ て い る .   著 者 の 所 属 す る 研 究 室 に お い て , ヒ ト のMyDに 酷 似 す る 筋 疾 患 が ニ ホ ン ウ ズ ラ の 一 系 統(LWC)に 見 出 さ れ , 系 統 維 持 さ れ て い る , 本 疾 患 は 性 差 を 示 さ な い 常 染 色 体 性 優 性 遺 伝 で , ホ モ 致 死 で あ る . 臨 床 的 に 発 症 し たLWC系 ウ ズ ラ は 翼 を 背 方 に 挙 げ る と ( 翼 挙 上 試 験 ) そ の 挙 上 に 抵 抗 し , 仰 向 け に 寝 か せ る と ( フ リ ッ プ テ ス 卜 ) 起 き あ がる こと が で き ず , 筋 電 図 検 査 で は ミ オ ト ニ ア 放 電 が 認 め ら れ る . 病 理 組 織 学 的 に は , 骨格 筋病 変 は2型 筋 線 維 の み に 認 め ら れ ,1型 筋 線 維 に は 認 め ら れ ず ,2B型 筋 線 維 の 萎 縮 と2A お よ び2B型 筋 線 維 に お け るring fiberとsarcoplasmic massの 形 成 が 特 徴 で あ っ た . ま た , 精 巣 の 変 性 , 萎 縮 , 自 内 障 な ど 多 臓 器 に わ た る 病 変 も 認 め ら れ る . 著 者 は , こ の LW(ニ 系 ウ ズ ラ の 骨 格 筋 病 変 の 発 生 機 序 を 明 ら か に す る た め 本 研 究 を 実 施 し た .   第1章 で は ,LWC系 ウ ズ ラ の 骨 格 筋 病 変 の 超 微 形 態 学 的 特 徴 を 明 ら か に す る 目 的 で 研 究を 行っ た.

  検 索 材 料 と し て は , 臨 床 的 に 特 有 の 症 状 で あ る 翼 の 挙 上 不 能 を 示 レ たLWC系 ウ ズ ラ8 羽 (13〜72週 齢 ) と , 正 常 対 照 ウ ズ ラ5羽 (13〜60週 齢 ) の 浅 胸 筋 を 用 い た . 超 微 形 態 学 的 検 索 の 結 果 ,ring fiberは筋 線維 細胞 膜と 正常 筋原 線維 束と の間 に ,正 常筋 原線 維束 を輪 状に 取り 巻く 筋原 線維 束と して 観察 され た .  ring fiberを構成する筋原線維は,ほと ん ど の 例 で 正 常 筋 原 線 維 と 同 様 に ,Aニ 帯 ,I帯 ,M線,Z線を 明瞭 に有 して いた が,Z線以

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外の筋節の構造が不明瞭な例もみられた.   sarcoplasmic massは筋線維細胞膜と正常筋原 線維 束と の間 に存 在し ,断 片化 した 筋原 線維, 三つ 組,ミトコンドリア,多数のグリ コーゲン顆粒とりボゾームの不規則な集合により構成されていた.これらの構造間に秩 序だった相互関係は認められなかった.萎縮した筋線維では,筋原線維が部分的に消失 し,ここに自己貪食空胞,ライソゾーム,グリコーゲン顆粒,クリスタが濃縮したミト コンドリア,横行小管が増生,集合したと考えられる蜂巣状構造が認められた.また,

萎縮した筋線維の細胞膜に多数の陥凹を認め,余剰になった基底膜が筋線維間の問質に 突出レている像もみられた,蜂巣状構造は萎縮筋線維でしばしば認められたが,一見正 常にみえる筋線維内にもみられる例があった.胸筋の浅層部筋束のほとんどの2B型筋線 維 で は , 直 径 の 滅 少 が認 め ら れた が, 超微 形態 学的 には 異常 は認 めら れなか った .   以 上の 所見 より ,LWC系ウズラの骨格筋病変の形成は,細胞内小器官の配列を制御す る細胞内骨格の欠陥が関与しているものと解された,

  第H章 では ,LW(ニ系 ウズ ラ5羽 (9〜60週齢) と正 常対照ウズラ5羽(9〜60週齢)の 浅胸筋を用いて,組織化学的ならびに免疫組織学的に検索した.組織化学的検索として はmyofibrillar ATPase染色を,免疫組織学的検索としてはニワトりのadult fast typeと slow typeのmyosin heavy chain  (MHC:筋線維を構成するミオシンフィラメント分子の重 鎖)に対するモノクロナール抗体,ニワトりのneural cell adhesion molecule  (N‑CAM:細胞 接着因子のーつで,筋線維において神経支配の完了以前または完了以後では,脱神経支 配が起きたときに筋線維内やその近接部の問質に発現し,神経を誘導する)に対するモ ノク口ナール抗体を用いた免疫染色を行った.

  正常ウズラの浅胸筋のmyofibrillar ATPase染色では,1型筋線維(遅筋)は深層部の 筋 束 に の み 少 数 分 布 し,2Aお よび2B型 筋線 維( 速筋 )は 表層 から 深層 の全層 の筋 束 に分 布し ,こ れは 特に 浅層 部の 筋東 にお いて特 徴的 な分布を示した.すなわち,2A型 筋 線 維 は 筋 束 の 中 央 部 に 集 ま り ,2B型 筋 線 維 は そ れ を 囲 む よ う に 分 布 し て い た .   免 疫染 色で は,1型筋 線維は抗slow type MHC抗体に強く染まり,抗adult fast type MHC抗 体 に は 全 く 反 応 し な か った .抗adult fast type MHC抗 体に は,2A型筋 線維 は 強 く 染 色 さ れ た の に 対し て ,2B型 筋線 維は ほと んど 染ま らな かっ た. また,2A型 お よび2B型 筋線 維と も抗slow type MHCfjL体に対 する 反応tむ示さなかった.抗N‑CAM抗 体 に 対 す る 反 応 は , 神 経 筋 接 合 部 と 神 経 線 維 以 外 に は み ら れ な か っ た .   LWC系ウズラの浅胸筋では,myofibrillar ATPase染色および抗adult fast type MHC抗 体を 用い た免 疫染 色を 行っ た両 切片 で, 浅層の 筋束 における2A型筋線維の染色性の減 少 ,2B型 筋 線 維 の 直 径の 縮 小 をと もな った 両染 色に 対す る染 色性 の増 加が認 めら れ た.なお,深層部筋束はそれらの染色性に変化を示さなかった.

  ほとんどのsarcoplasmic massは,adult fastとslow両typeのMHCに対する抗体で陽性 に染 色さ れた .抗N‑CAM抗体による免疫染色では,浅層から中間層の筋東内の筋線維に さまざまな濃度で散在性に陽性像が認められた.一部のsarcoplasmic massとring fiber が抗N‑CAM抗 体に染 色さ れたが,N‑CAMの発現とsarcoplasmic massならびにring fiber 形成との間に相関関係は認められなかった,

  以上の所見より,sarcoplasmic massの形成は異常な細胞骨格の存在のもとで発生した 筋線 維の 肥大 によ る結 果であることが示唆された.また,LWC系ウズラの浅胸筋では,

ミオ トニ アに よる 筋線 維の 長期 間の 連続 収縮の 結果 ,筋線維内の収縮性蛋白のアイソ フ ォ ー ム が 変 化 し ,2A,2B型 両筋 線維 にお いて 形態 学的 ,組 織化 学的 ならび に免 疫 組織化学的変化が生じたとものと考えられた,

    ‑ 72―

(3)

学位論文審査の要旨

     学位論文 題名     1

二 ホ ン ウ ズ ラ の 突 然 変 異 体 (LWC 系 ) に 認 め ら れ た 筋緊 張性ジス トロフィー様疾患の骨格筋病変に関する    超 微形 態 学 的、 組 織 化学 的 、 免疫 組 織 化学 的研究

  

申請者は,ヒトの筋緊張性ジストロフイーに酷似する病態を示すニホンウズラの1 系 統

(LV/C

系 )の骨格筋 病変の形態 学的特徴と ,その病理 発生を明ら かにした.

  LWC

系ウズラの骨格筋では,病理組織学的には筋線維辺縁部におけるring fiber と

sarcoplasmic mass

の形成および筋線維の萎縮が特徴的であった.超微形態学的には,

ring fiber

は 正 常筋 原 線維 東 を輪 状 に取り 巻く筋原線 維東として 観察された .

sarcoplasmlc mass

は断片化した筋原線維,三つ組,ミトコンドリア,多数のグリコー・

ゲン顆粒とりボゾームの不規則な集合により構成されており,これらの構造間に秩序 だった相互関係は認められなかった.萎縮した筋線維では,筋原線維が消失し,ここ に自己貪食空胞,ライソゾーム,グリコーゲン顆粒,クリスタが濃縮したミトコンド リア,蜂巣状構造が認められた,以上の結果から,

LWC

系ウズラの骨格筋病変の形成に は,細胞内小器官の配列を制御する細胞骨格の欠陥が関与しているものと解された.

  

組織化学的ならびに免疫組織化学的には,myofibrillar ATPase 染色およぴ抗

fast type myosin heavy chain (MHC)

抗体を用いた染色を行った両切片において,2A 型筋 線維の染色性の減少,2B 型筋線維の直径の縮小を伴った染色性の増加が認められた.

sarcoplasmic mass

は抗

fast

ならびにSlow 両type のMHC 抗体で陽性に染色された.また,

neural cell adhesion molecule (N‑CAM)

抗体陽性の筋線維が散在性に認められ,

一部のsarcoplasmic mass ならびにring fiber を形成した筋線維においても陽性像が見 られた.しかし,

N‑CAM

の発現とsarcoplasmic mass ならぴにring fiber 形成との間に 相関関係は認められなかった.

  

以上の所見より,sarcoplasmic mass は異常な細胞骨格の存在のもとで発生した筋原 線維の新生による結果であることが示唆された.また,LWC 系ウズラの浅胸筋では,ミ オトニアによる筋線維の長期間の連続収縮の結果,筋線維内の収縮性蛋白のアイソフ オームが変化し,

2A

2B

型両筋線維において形態学的,組織化学的ならびに免疫組織 化学的変化が生じたものと考えられた.

73 ‑

敏 晃

正 彦

智  

  智

倉 本

邊 永

板 橋

渡 岩

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

  

以上のように,申請者は本疾患の筋病変の形態学的特徴を明らかにし,諸変化の病 理発生の一端を明らかにした,この成果i ま,本疾患の本態の究明に大きく貢献する,

よって審査員一同は,田中聡氏が博士(獣医学)の学位を受けるのに十分な資格を有

するものと認めた.

参照

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