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ジルコニウム―ケイ素結合の有機合成への利用

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 黒 田 愼 二

学 位 論 文 題 名

ジルコニウム―ケイ素結合の有機合成への利用

一ジルコニウム―シレン錯体の生成及びその反応性の検討―

学位論文内容の要旨

近 年、 人類 は周 期表上のあらゆ る原子の特性を利用して有機 化学を進化させてきた。そ のよう な 背 景 の な か 、13属 か ら17属 の 典 型 原 子 の う ち 主に 第3周則 以降 の原 子 は約20種 ある が、

こ れら の原 子同 士の結合、遷移 金属との結合、およびアルカ ル金属類との結合を持つイ ンター エ レメ ント 化合 物が注目されて いる。これらの化合物は従来 の有機化学の知見、常識を 凌駕す る 多様 な反 応性 を示すことが期 待されている。その中でも金 属一金属結合を有するバイ メタリ ッ クな 化合 物は 、不飽和化合物 が挿入することにより1、2− ジメタル化合物を与える可 能性が ある。この化 合物には異なる炭素ー金属結合があるために、さらに異なる炭素・ー炭素結合等へと 変 換で きる 可能 性がある。この ように従来の有機化学にイン ターエレメン卜化合物を利 用する と 新し い反 応を 開 発で きる 可能 性が あ る。その中でも著者 はZr‑Si結合を持つ化合物に 注目し た 。当 研究 室で はCPzZrCI2存在 下アルキンにシリルルチウム を作用させるとアルキン上 の置換 基 の違 いに よっ てピニルシラン 、アリルシランが得られるこ とを見いだしている。今回 この反 応 に興 味を 持ち 反応条件の検討 、及び機構の解明、さらにこ の反応で形成されるシラジ ルコナ シク口ペンテ ンの反応性を検討した。

    1.ジルコ ニウムーケイ素結合を持つ 化合物の反応性 1‑1.ジアリー ルアルキンとの反応について の検討

ジ フェ ニル アセ チ レン とCPzZrCIz`MezPhSiLiを反応させ、 加水分解するとアルキンに 対して MezPhSi基 とHがsyn付加 した ピ ニル シラ ンが得られた。この 反応の反応条件を検討した 結果、

CPzZr(ニ12に対 して2当量のMe2PhSiLiを用いるとビニルシラ ンの収率が向上することを 見いだ し た。 試薬 を過 剰 に用 いる こと によ り 、収率は82%まで向上 した。反応混合物を重水で 加水分 解すると、ピ ニル位とケイ素上のメチル基 が重水泰化されたピニルシランが得られたことから、

こ れら の位 置にCPzZrと の結 合 が存 在し ていたと考えられる 。っまり反応中間体にシラ ジルコ ナ シク 口ベ ンテ ンが生成してい ることがわかった。このシラ ジルコナシク口ペンテンは アルキ ン とジ ルコ ニウ ム―シレン錯体 の反応生成物と考えられる。CpZZrCI2と2当量のMe2PhSiLiが反 応し、CP2Zr(SiMezPh)zが生成する。この ものからロ水素が引き抜かれ、CP22rとシレンMePhSiCHz が生成し、ジ ルコニウムーシレン錯体を形 成したと考えることができる。ジルコニウム―シレン 錯 体の ジル コニ ウムーケイ素結 合とアルキンが反応すること により、シラジルコナシク ロペン テ ンが 形成 され たと考えられる 。さらにベンゼン環のパラ位 に、メトキシ基、メチル基 、卜リ フ ル オ 口 メ チ ル 基 を 導 入 し た ジ フ ェ ニ ル ア セ チ レ ン で も 反 応 は 問 題 な く 進 行 し た 。 1 ‑2.ジアルキ ルアルキンとの反応につい ての検討

一 方ア ルキ ン上 の 置換 基が アル キル 基 である3ーヘキシンを 用いたところ、アルキンに 対して MePhHSiCHz基とHがsyn付加 した アル ル シラ ンが 最高 で41ゲ 。の 収率で得られた。また アルキ

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ル鎖が長い4−オクチン を用いると収率は減少した。 反応混合物を重水で加水分解すると、ビニ ル位 とケ イ素上が重水素化された アルルシランが得られた。 本結果より反応中間体にシラ ジル コナ シク ロベンテンが生成してい ることがわかった。この場 合先のジアリールアルキンの 場合 とは異なり、ジルコニウ ム―シレン錨体のジルコニ ウムー炭素結合とアルキンが反応しているこ とが明らかになった。

1‑3. NMR実験

NMRチ ュ ー ブ にCpzZrCI2と ジメ トキ シフ ェニ ル アセ チレ ンを 入れTHF‑d8に溶 解し 、‑78度 で MezPhSiLiを 加 え 、 室 温 に 昇 温 し てNMRを 測 定 した 。昇 温し て7分後 にはCp由来 と思 われ る ピ ー クで6130、6.17、5.07 ppmのピークが観 測された。4.42 ppmに現れ たピークはMe2PhSiH で あ るこ とが標品 と比較することによって確認 された。5.07 ppmのピーク は時間と共に減少し て い き、4時 間後 には 消失 した が 、6.30、6.17 ppmの ピー クは4時間後も 存在していた。反応 混 合 物を 後処 理し た とこ ろ、 ピニ ルシランが69%の収率で得られた。ピニ ルシランが得られた と い う事 実は 、630、6.17 ppmの ピークがシう ジルコナシク口ベンテンのCpのピークであるこ と を示している。それ故5^.07 ppmのピークは恐らくジルコニウムーシレン晝昔体のCpのピークと 考 えられる。

    2 .シラジルコナシクロベンテンの反応性の検討 2‑1. イソニトリル挿入反応の検討

シラ ジル コ ナシ クロ ベン テン のTHF溶 液 にtert‑ブチ ルイ ソニ トリ ルを加え一晩撹拌し、HCl‑

Et20で処 理 した ところ、ジルコニウム― イミン錯体が得られた。こ れは生成したシラジルコナ シク口ベンテンに対し てイソニトリルがジルコニ ウム−sp3炭素に挿入したこ とを示している。

ベンゼン環のバラ位に トリフルオ口メチル基を導 入したジフェニルアセチレンを用いたところ、

ジルコニウムーイミン 錯体が結晶化したのでX線結 晶構造解析を行った。炭素 一ジルコニウム、

窒素 一ジ ル コニ ウム結合の距離はほば同 じで、窒素がジルコニウム に強く配位していることが わか った 。 この 反応 をNMRで 観測 した と ころ 、イ ソ二 卜リ ル を加 える とシ ラ ジル コナ シク口 ペン テン の ピー クは消失し、新たに5.51、5.49 ppmのピークが出現 した。これがイミノシラジ ルコ ナシ ク 口ヘ キセ ンのCpの ピ ーク と考 えら れ る。 反応 混合 物に 無水HCI‑Ec20を加えると、

新た に5.75、5.54 ppmのピークが出現し た。これはジルコニウムー イミン錯体のCpのピークと 一致 した 。6員環 ジ ルコ ナサ イク ルは こ れまであまり報告されてお らず、今回のイミノシラジ ルコナシクロヘキセン の形成は興味が持たれる。

2‑2.一酸化炭素挿入反 応の検討

シラ ジル コ ナシ ク口 ペン テン のTHF溶 液 を一酸化炭素雰囲下、室温 で一晩撹拌し加水分解した ところ、アシルシラン が得られた。これは一酸化 炭素がシラジルコナシク口ペンテンに挿入し、

その 後酸 素 のジ ルコニウムヘの強い配位 のため転移が起こった結果 と考えられる。イソニトル ルと 一酸 化 炭素 の違いで異なる化合物が 得られたが、これは窒素と 酸素のジルコニウムヘの配 位カの違いと考えられ 興味が持たれる。

2‑3.トランスメタル化 の検討

ジル コニ ウ ムか ら銅へのトランスメタル 化はこれまで数多く報告さ れており、この反応を利用 すれ ばシ ラ ジル コナシクロペンテンのピ ニル位とケイ素上のメチル 基に炭素―炭素結合を形成 でき る可 能 性が ある。シラジルコナシク 口ペンテンに対し、塩化銅 、塩化アリルを加え反応さ せたところ、ピニル位 とケイ素上のメチル基がア リル化された化合物が収率良く得られてきた。

この 化合 物 は末 端オ レフ ィン を2個持 つ ため 、オ レフ ィン メ タセシ スが進行するなら、8員環 化合 物を 与 える 可能性を持っている。メ タセシスに有効なルテニウ ムカルベン錯体を用いて反 応を 検討 し たと ころ 、高 収率 で ケイ 素を 含む8員環化合物が得られ た。この化合物は通常の合 成反 応で は 合成 が困 難と 考え ら れる が、2工 程で 収率 良く 合 成で きる 事が 明 らか にな った。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

ジルコニウムーケイ素結合の有機合成への利用

一ジルコニウム―シレン錯体の生成及びその反応性の検討―

  2 月10 日黒田慎二から提出された学位論文審査会が開かれ表記題名の 論 文 審査 が おこ な われ た 。彼 の 研究 内 容は 以 下の と おり で ある。

近年、人類は周期表上のあらゆる原子の特性を利用して有機化学を進化さ せて き た。 彼 は、 ZrSi 結合を持 つ化合物に ついて研究 を行った。 。     1 . ジ ル コ ニ ウ ム ー ケ イ 素 結 合 を 持 つ 化 合 物 の 反 応 性 1‑1. ジアルールアルキンとの反応についての検討

ジフェニルアセチレンとCp:ZrCI2 `Me っPhSiLi を反応させ、加水分解する とアルキン に対して MeiPhSi 基と H が syn 付 加したピニ ルシランが得ら れた。この反応の反応条件を検討した結果、 Cp,ZrCIz に対して2 当量の Me2PhSiLi を用いるとビニルシランの収率が向上することを見いだした。

反応混合物を重水で加水分解すると、ビニル位とケイ素上のメチル基が重 水素化されたピニルシランが得られた。恐らく反応中間体にシラジルコナ シク口ペン テンが生成 していることがわかった。CplZr‑CI2 と2 当量の Me っPhSiLi が反応し、CP2Zr(SiMe2Ph)2 が生成する。ここからB 水素が引き 抜かれ、CP22r とシレンMePhSiCH .が生成し、ジルコニウム―シレン錯体 を形成したと考えることができる。ジルコニウム―シレン錯体のジルコニ ウム―ケイ素結合とアルキンが反応することにより、シラジルコナシク口 ベンテンが形成されたと考えられる。

1‑2. ジアルキルアルキンとの反応についての検討

一方3 一ヘキシンを用いたところ、アルルシランが最高で41 ワ。の収率で得 られた。反応混合物を重水で加水分解すると、ビニル位とケイ素上が重水

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保 一

美  

  俊

   

   

橋 本

森 高

橋 佐

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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素化されたア1 」ルシランが得られた。

,4 ニ結果より反応中間体にシラジルコナシク□ベンテンが生成していること がわかった。

1 −3. NMR 実験

NMR チュ ー ブ に CP2ZrCl2 と ジ メト キ シ フェ ニ ルアセ チレンを 入れTHF‑d8 に 溶解 し 、 ‑78 度 でMe ,PhSiLi を加 え、室温 に昇温し て NMR を測定 した。

種々検 討を加え たところ 、5.07 ppm のピークは恐らくジルコニウムーシレ ン錯体のCp のピークであることがわかった。

シレンは非常に不安定な化合物であり、これまで殆ど単離されていない。

ジ ル コ ニウ ム 錯体 と し て取 り 出し得 たことは 非常に興 味がもた れる。

    2 .シラジルコナシク口ペンテンの反応性の検討

生成したシラジルコナサイクルの反応性にっき以下のように検討を加えた。

2‑1. イソニトリル挿入反応の検討

シ ラジル コナシク 口ペンテン のTHF 溶液に tert −ブチル イソニト ルルを加 え一晩撹拌し、HC1 −Et っO で処理したところ、ジルコニウムーイミン錯体が 得られ た。パラ 位にトリ フルオ口メ チル基を 導入したジフェニルアセチレ ン を用い たところ 、ジルコニ ウムーイ ミン錯体 が結晶化 したので X 線結晶 構造解析を行った。この反応をNMR で観測している。

2 ・2 . ‑ 酸化炭素挿入反応の検討

シ ラジ ル コナ シ ク 口ペ ン テ ンの THF 溶液 を 一 酸化 炭 素雰 囲 下 、室温 で一 晩撹拌 し加水分 解したと ころ、アシ ルシラン が得られた。これは一酸化炭 素がシ ラジルコ ナシク口 ペンテンに 挿入し、 その後酸素のジルコニウムヘ の強い配位のため転移が起こった結果と考えられる。

2‑3. トランスメタル化の検討

シラジ ルコナシ クロペン テンに対し 、塩化銅 、塩化アルルを加え反応させ たとこ ろ、ピニ ル位とケ イ素上のメ チル基が アリル化された化合物が収率 良 く得ら れ。この 化合物は末 端オレフ ィンを2 個 持っため 、ルテニ ウムカ ル ベン錯 体を用い て反応を検 討したと ころ、高 収率でケ イ素を含 む8 員環 化合物が得られた。

   これら の結果は 非常に新しい知見であり、すでにアメ1J カ化学会誌に掲 械されている。学位審査会では充分北海道大学の I 博士の学位を得るに値す 己結果と判断した。

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