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大学教育機会の地域間格差の趨勢とメカニズム 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 教 育 学 )    上 山 浩 次 郎 学 位 論 文 題 名

大学教育機会の地域間格差の趨勢とメカニズム

学位論文内容の要旨

本論 文で は ,大 学教 育 機会 の地 域 間格差の 趨勢とメカニズム について,特に1990年代から現在まで を分析時 点としながら明ら かにした。

教育社会学におい て,教育機会の属 性間格差は検討う‑べき重要 なテーマである。ただし,社会階層間格差や男 女間格差と比べて ,地域間格差に関 しては1990年代以降 十分な焦点が向け られていない。そ れゆえ,教育機会 の地域間格差がど のように推陟して きたのか(〓趨勢う ,さらにその地域間格差がなにゆえ生じているのか(=

メ カ ニ ズ ム ) と い う 最 も 基 礎 的 で か つ 重 要 な 論 点 に っ い て す ら 十 分 に 明 ら か に さ れ て い な い 。   また,1970〜 1980年代に おいて高等教育機 会の地域間格差を 縮小させたと評価されてきた「大学立地政策」

が,1990年 代以 降r規制緩 和」が進み,2003年以降に「終焉」 した。こうした動向 は,高等教育機会 の地域間 格差に少なからず 影響を与えた可能 性がある。

  そこで,高等教 育機会のうち大学教育機会に注目し,その地域間格差の趨勢とメカニズムを検討した。その際,

大学教育機会の指 標として大学進学 率と大学収容カの2っを用い ることで,その地域間格差を,進学行動と制度 条件という2側面から捉えた 。さらに,「大学 立地政策」の「規 制緩和」や「終焉」の影響を捉えるために政策 評価の発想を応用 した。

第1章 では , 大学 進学 率 の地 域間 格 差の 趨勢 に つい て検 討 した。先行研究で は,1990年代以降 ,大学進学率 の地域間格差 は拡大していると いう見解と,安定し て推移していると いう見解の2っが葡生しており,その意味 で論争的な状 況にあった。だが ,2つの見 解はともに用いる 地域問格差の指標が 適切ではない。そこで,より適 切な 格 差指 標を 用 いた 分析 を 行い ,1990年代 以降 , その 地域 間 格差 が拡 大 して いることを明 らかにした。

  その際,地 域間格差の拡大の 内実を確認すると, 進学率の上昇度合いの相違という形で格差が拡大していた。

また , 進学 率の 地域分布をみ ると「3大 都市圏」で進学率 が高いという特徴が1990年代以降現在 まで一貫して 存荏している ものの,西日本で 進学率が高いという 「西高東低型」から東日本で進学率が高いとぃう「東高西低 型」へと変化 してもいた。

  第2章では,こうした 大学進学率の地域 間格差の拡大のメ カニズムにっいて検 討した。その際,1970‑‑ 2000 年代を対象に して時点間比較分 析を行った。こうす ることで,1990年 代以降の進学率の 地域間格差のメカニズ ムを浮き彫り にできる。そこで は,進学率の地域問 格差の要因として ,大学収容カが1990年代において初めて 影響カを持ち 始めたこと,さら にそこから現在まで 一貫して影響カをもってきたことなどを明らかにした。ここ からは,第1章で確認し た大学進学率の地 域間格差の拡大に は,大学収容カの影 響カの増大が関連していること が示唆される 。

  では,こう した収容カの影響 カの増大はなぜ生じ たのか。第3章では,この点 を検討するため,大学収容カそ れ自体の地域 間格差の趨勢を検 討した。そこでは,1990年代以降,大 学収容カもその地 域間格差が拡大してい たことが明ら かになった。ここ からは,大学進学率 という進学行動の地域間格差の拡大の背景には,大学収容カ という制度条 件の地域問格差の 拡大が存荏していた と解釈できよう。

  また,大学 収容カの地域間格 差拡大の内実をみる と,大学進学率の場合と同様,ヒ昇度合いの相違とぃう形を

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していた。ま た,収容カの地域 分布も,「3大都市圏」で高いという特徴が1990年代以降一貫して存荏していた。

しかし,進学 率の場合にみられ た「西高東低型」 「東高西低型」とぃう地域分布の特徴はみられず,東北と九州 の中心県で大 学収容カが高いと いう独自の特徴も ある。

  そ の 上で ,大 学 収容 カの地域問格差の メカニズムを,第2章で用い た分析枠細みをも とに検計尹ると,1990 年代には地域 の学歴水準が,2000年代には地域の 職業構成や経済的条 件が影響カをもっ ていた。しかし, ここ からは「大学 立地政策」の「規 制緩和」や「終焉 」が,大学収容カの地域問格差に与えた影響を捉えることはで きない。

  そこで,第4章では ,まず1993〜 2002年におけ る「大学立地政策」 のr規制 緩和」の影響について検討した。

そこ か らは ,5っ の政 令指定都 市縡噛諦・仙台市 ・広島市・北九州市 ・福岡市)を対象 とした◎特定地域 にお ける新増設の 制限に関する「規 制緩和」は,いく っかの地域の大学収容カにっいては影響をあたえたものの,全 国レベルでみ た大学収容カの地 域間格差には影響 を及ばしているとは言い難かった。他方で,◎地域ブロック別 の整備目途に 関する「規制緩和 」にっいては,大 学収容カの地域間格差を拡大させるような影響をもったと判断 できた。

  続 け て, 第5章 では ,2003年 以降の「大学立地 政策」の「終焉」の 影響について検討 した。そこからは ,規 制が「終焉」 した工業(場)等 規制区域や首都圏 ・近畿圏・中部圏の政令指定都市において,予測以上に大学収 容カが増加し ていたことが明ら かとなった。そし てそれを背景として,大学収容カの地域間格差は予測以上に拡 大していた。

  第6章では,「大学 立地政策」のr規制緩和」「終焉」がもつ大学進学率の地域間格差に対する影響を検討した。

そこからは,1993〜 2002年の「規制緩和 」のうち◎地域ブロック別の整備目途の「規制緩和」に関しては,ほ見 制緩和」の結 果として,大学進 学率の地域間格差が拡大したことが示唆された。だが,そうした影響は大学l収容 カの地域間格 差に対するほどの 大きさではなぃ。 また,2003年以降の 「終焉」に関して も,確かに大学進 学率 の地域間格差 を拡大させたと解釈できたものの,その影響は大きなものとはいえなかった。こうしてみれば,「大 学立地政策」 の「規制緩和」「 終焉」は,大学収 容カにはそれなりに影響を与えたものの,大学進学率にはそれ ほど影響を与 えたとはいえない 。

  では,こう した影響カの相違 はなにゆえ生じて いるのかbそこには進学移動 の存在が関連している可能性があ る。仮に,南 関東などの大学収 容カが高い地域で 大学収容カが上昇した場合,そこへと進学するのは,該当地域 の進学行動該 当者だけでなくそ れ以外の地曦の進 学行動該当者も含まれるからである。この場合,特に南関東を 主な進学移動 先としている東北 や北関東の動向に 注目すべきかもしれ ない。なぜなら, 第1章でみたように大学 進学率の地域 分布は1990年代か ら現在にかけて「 西高東低型」から「 東高西低型」^と 変化していたから であ る。ここから は,「大学立地政策」の「規制緩和」「終焉」は,上述のような形に大学進学率の地域分布のあり方 を変化させた 可能性が示唆され よう。

  終章では, これまでの知見を 整理し,本論文の 意義を考察した。本論文には,まず,教育社会学の主要なテー マである教育 機会の格差に関し て,地域間格差と いう側面をその趨勢とメカニズムに焦点をあてて明らかにした という意義が ある。特に,2つの大学教育 機会の地域間格差 がともに拡大して いるという事実は,我が国におけ る教育機会の 弛决を把握する上 で不可欠なものだ ろう。また,近年再度関心が寄せられている「政策科学として の教育社会学 」の1つ の実践例を示したと いう点にも独自の意義がある。特に,「大学立地政策」の「規制緩和」

「終焉」がと りわけ大学収容カ の地域間格差の拡 大に寄与したという点は,今後,高等教育機会の地域配置のあ り方を構想す る上で考慮すべき 事実となろう。

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学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 准教授 准教授 准教授

小内 浅川 光本 高田

学 位 論 文 題 名

    透 和幸     滋

    洋 (札幌学院大学社 会情報学部)

大学教育機会の地域間格差の趨勢とメカニズム

  本論 文は 、1990年代 以 降の 大学 教 育機 会の 地 域間 格差 の 趨勢 とメ カ ニズ ムを 、都道府県別の統 計デー タ に基 づぃ て 明ら かに し たも ので あ る。

  大 学 教 育 機 会 の 地 域 間 格 差 に 関 す る 実 証 研 究 は1960年 代 後 半 に 開 始 さ れ 、1970〜80年 代 に は

「 大 学 立 地 政 策 」 に よ る 大 学 新 増 設 の 規 制 を 通 じ て 、 高 等 教 育 機 会 の地 域 問格 差が 縮 小し たこ と を 明 ら か に し た 。 し か し 、1990年 代 以 降 「 大 学 立 地 政 策 」 の 「 規 制 緩 和 」 が 進 み 、2003年 以 降 「 大 学 立 地 政 策 」 が 「 終 焉 」 し た に も か か わ ら ず 、 こ の 分 野 の 研 究 は 減 少し 、 新し い段 階 の大 学教 育 機 会 の 地 域 間 格 差 に 関 す る 共 通 理 解 が 得 ら れ な い ま ま に な っ て い る 。 そこ で 、本 論文 で は大 学進 学 率 と 大 学 収 容 カ の 指 標 を 用 い て 、1990年 代 以 降 の 大 学 教 育 機 会 の 地 域 間 格 差 の 趨 勢 と メ カ ニ ズ ム を 明 らか にし た 。

  本 論 文 の 前 半 で は 、 大 学 進 学 率 と 大 学 収 容 カ の 地 域 間 格 差 の 趨 勢 とメ カ ニズ ムに つ いて 検討 し て い る( 第1〜3章) 。

  従 来1990年 代 以 降 の 大 学 進 学 率 の 地 域 間 格 差 に 関 し て は 、 安 定 的 推 移 説 と 拡 大 説 が 併 存 し て い た 。 し か し 、 い ず れ の説 も大 学 進学 率の 格 差指 標( 標 準偏 差や 変 動係 数な ど )が 妥当 で はな いと し 、 よ り 適 切 な 指 標 と し て 相 関 比 を 用 い た 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 大 学進 学 率の 地域 間 格差 は拡 大 し て い る こ と 、 同 時 に 西 日 本 の 大 学 進 学 率 が 高 い 「 西 高 東 低 」 型 か ら 東日 本 の方 が高 い 「東 高西 低 」 型 に 地 域 間 格 差 の 構 造 が 変 化 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。 そ の 上 で、 多 母集 団パ ス 解析 によ り 大 学 進 学 率 の 地 域 間 格 差 の 要 因 構 造 と し て 、 地 域 の 所 得 水 準 の 一 貫 し た 影 響 カ が あ る 一 方 、2000年 代 以 降 地 域 の 学 歴 水 準 と18歳 人 口 に 対 す る 定 員 規 模 を 示 す 大 学 収 容 カ の 影 響 カ が 増 大 し て い る 点 を 見出 した 。

  同 様 に 、 相 関 比 を 用 い て 大 学 収 容 カ の 地 域 間 格 差 の 趨 勢 に つ い て の 計 量 的 な 検 討 を 行 い 、1990 年 代 以 降 大 学 収 容 力 自 体 の 地 域 問 格 差 が 拡 大 し て い た こ と を 明 ら か にし た 。し かし 、 大学 収容 カ の 場 合 に は 、 「 西 高 東 低 」 型 か ら 「 東 高 西 低 」 型 へ の 変 化 は 見 ら れ ず 、東 北 と九 州の 中 心県 が高 い と い う 特 徴 が 見 出 さ れ た 。 同 時 に 、1990年 代 に は 地 域 の 学 歴 水 準 、2000年 代 に は 地 域 の 職 業 構 成 や 所 得 水 準 が 、 大 学 収 容 カ の 地 域 間 格 差 に 影 響 を 与 え て い る こ と を 解 明 し た 。   こ の よ う に 、 大 学 進 学 率 と 大 学 収 容 カ の よ り 適 切 な 格 差 指 標 と 分 析手 法 を採 用す る こと によ り 、 地 域 間 格 差 の 拡 大 と 格 差 構 造 の 変 化 を 明 ら か に し た こ と は 、 本 論 文 の成 果 とし て高 く 評価 でき る 。

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  本 論 文 の 後 半 で は 、 大 学 収 容 カと 大 学進 学率 に 対す る「 大 学立 地政 策 」の 「規 制 緩和 」と 「 終焉 」 の 影響 を検 討 して いる ( 第4〜6章 ) 。

  検 討 に あ た っ て 、 「 ロ ジ ッ ク モ デ ル 」 と 「 イ ン パ ク ト 評 価 」 と い う 政 策 評価 に 関わ る学 問 分野 で 新 た に 登 場 し た 手 法 を 応 用 し た 。 そ れ は 、 「 規 制 緩 和 」 な い し 「 終 焉 」 が 行わ れ なか った 場 合に 予 測 さ れ る 大 学 収 容 カ と 現 実 の そ れ と の 差 を 計 量 的 に 分 析 し 、 政 策 の 効 果 を 評価 し よう とす る もの で あ る 。 教 育 社 会 学 の 分 野 で 、 こ う し た 手 法 を 用 い た 研 究 は な く 、 今 後 の 応 用可 能 性を 示す も のと し て 大き な意 義 をも って い る。

  検 討 の 結 果 、 「 大 学 立 地 政 策 」 の 「 規 制 緩 和 」 の う ち 、 地 域 ブ ロ ッ ク 別 の整 備 目途 に関 す る「 規 制 緩 和 」 に つ い て は 、 大 学 収 容 カ の 地 域 間 格 差 を 拡 大 さ せ る 影 響 を も っ た こと 、 ー方 「大 学 立地 政 策 」 の 「 終 焉 」 に つ い て は 、 規 制 解 除 区 域 や 三 大 都 市 圏 の 政 令 指 定 都 市 で 大学 収 容カ が予 測 以上 に 増 加し 、地 域 間格 差が 拡 大し たこ と を明 らか に した 。

  さ ら に 、 大 学 進 学 率 に 対 し て は、 「 大学 立地 政 策」 の「 規 制緩 和」 、 「終 焉」 の いず れも が 地域 間 格 差 を 拡 大 さ せ た こ と が 把 握 で きた 。 しか し、 そ の影 響カ は 大学 収容 カ に与 えた も のよ りは 小 さく 、 大 学 収 容 カ と 大 学 進 学 率 に 対 す る 影 響 カ の 違 い は 、 地 域 を こ え る 進 学 移 動 によ っ て生 じた 可 能性 が あ るこ とも 示 唆さ れた 。

  以 上 の 内 容 を も つ 本 論 文 で は 、 以 下 の4点 が 重 要 な 学 問 的 貢 献 と し て 評 価 で き る 。 第1に 、 適 切 な 指 標 の 吟 味 と 手 堅 い 統 計 解 析 の 手 法 に よ り 、1990年 代 以 降 の 高 等 教 育 機 会 の 地 域 間 格 差 の 拡 大 と そ の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に し た こ と 、 第2に 、 「 ロ ジ ッ ク モ デ ル 」 と 「 イ ン パ ク ト 評 価 」 を 応 用 し た 政 策 評 価 の 新 し い 手 法 を 提 起 し た こ と 、 第3に 、 「 大 学 立 地 政 策 」 の 「 規 制 緩 和 」 と 「 終 焉 」 が 高 等 教 育 機 会 の 地 域 間 格 差 に 影 響 カ を 持 っ て い る 点 を 計 量 的 に 明 ら か に し た こ と 、 第4に 、 高 等 教 育 の 動 向 を 分 析 す る 上 で 、 地 域 間 格 差 や 地 域 を こ え た 進 学 移 動 が 重 要 な 論点 に なる と示 唆 した こ と であ る。

  しか し、 統 計分 析の 精 緻さ と比 べ 、大 学政 策 全体 や大 学 の質 の違 い が十 分に 考 慮さ れて いない点で課 題 も残 され た 。こ れら の 課題 を今 後 追究 して い くこ とが 望 まれ る。

  以 上 の よ う に 、 本 論 文 は 、 高 等 教 育 機 会 の 地 域 間 格 差 に 関 す る 教 育 社 会 学的 研 究の 前進 に 貢献 し た と評 価す る こと がで き る。

  よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 教 育 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

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参照

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