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Academic year: 2021

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博士課程用(甲)

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(様式4)

学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

( 小林大二郎 ) 印

(学位論文のタイトル)

Mitotic catastrophe is a putative mechanism underlying the weak correlation between sensitivity to carbon ions and cisplatin.

(炭素イオン線とシスプラチンの感受性の相関ならびに細胞死機序の解析)

【背景】炭素イオン線治療はX線抵抗性腫瘍にも高い抗腫瘍効果を示す有望な放射線治療法である。

炭素イオン線治療は現在、概して線量増加試験の過程にあるため主に単独治療として用いられてい るが、X線治療と化学療法との併用療法が有効であることから、化学療法との併用によりさらなる 治療効果の向上が期待される。一方、シスプラチンはX線治療と最も広く併用されている化学療法 のひとつであり、臨床的にX線の抗腫瘍効果を向上させることが示されている。以上から、臨床に おける炭素イオン線治療とシスプラチンの併用療法の有効性が示唆される。しかし、炭素イオン線 とシスプラチンの併用効果は基礎研究レベルで十分に検討されていない。さらに、X線とシスプラ チンの併用効果についても、過去に多くの研究がなされているにも関わらず、その効果が相乗的か 相加的かについての明確なコンセンサスは未だに確立されていない。これは、先行研究の多くが限 られた数の細胞株、実験条件(線量・薬剤濃度)ならびに感受性評価指標から併用効果の相加・相 乗性を評価しているためと考えられる。以上から、本研究では、炭素イオン線およびX線とシスプ ラチンの併用効果に関する生物学的基盤情報の取得を目的とし、先行研究とは異なる手法を用いた 包括的な感受性解析をおこなった。

【方法】20種類のヒトがん細胞株をX線、炭素イオン線またはシスプラチン処理後、コロニー形成

法で細胞生残率を評価した。放射線(X線および炭素イオン線)についてはSF2Gy、SF4Gy、SF6Gy、S F8Gy、D10を、シスプラチンについてはSF0.2M、SF1M、IC50を感受性評価指標として用い、放射線・

シスプラチン間での感受性の相関をSpearman’s rank order testで評価した。シスプラチン感受性上 位・下位の3細胞株ずつについてX線、炭素イオン線またはシスプラチン処理72時間後に4’,6-diamidi no-2-phenylindole dihydrochloride-stain(DAPI)染色をおこない、核形態によりアポトーシス、分裂 期崩壊、老化様増殖停止を評価した。

【結果】X線感受性とシスプラチン感受性は全評価点の87(13/15)において強い相関(R0.6) を示した。このことからX線とシスプラチンに共通のコロニー原性細胞死機序の存在が示唆された。

一方、炭素イオン線とシスプラチンの感受性の相関は、全評価点においてR0.6と、X線とシスプラ チンの感受性の相関よりも弱かった。このことから炭素イオン線とシスプラチンにおいて異なるコ ロニー原性細胞死機序の存在が示唆された。X線、炭素イオン線またはシスプラチンにより誘導さ れるコロニー原性細胞死機序を比較検討したところ、X線(4 Gy)またはシスプラチン(1 M) によって誘導されるアポトーシス、分裂期崩壊および老化様増殖停止の量の差は、いずれも全評価 細胞株の83(5/6)において5以下と小さかった。このことからX線とシスプラチンは同様なコ ロニー原性細胞死プロファイルを誘導することが示唆された。炭素イオン線(4 Gy)またはシス プラチン(1 M)によって誘導されるアポトーシスおよび老化様増殖停止の量の差もまた、全評 価細胞株の83(5/6)において5以下と小さかった。しかし興味深いことに、同実験条件下にお いて炭素イオン線により誘導された分裂期崩壊の量は、シスプラチンのそれと比較して、全調査細 胞株の83(5/6)において5以上、67(4/6)において10以上多かった。このことから炭素イ オン線は、シスプラチンと同程度のアポトーシスおよび老化様増殖停止を誘導する実験条件におい

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てシスプラチンより効率的に分裂期崩壊を誘導することが示唆された。

【考察】X線とシスプラチンは、その感受性が強く相関することおよび同様なコロニー原性細胞死

プロファイルを誘導することから、併用時に相加的な効果を示す可能性があると考えられた。一方、

炭素イオン線とシスプラチンは、その感受性の相関が弱いことおよび炭素イオン線がシスプラチン より効率的に分裂期崩壊を誘導することから、併用時に相乗的な効果を示す可能性があると考えら れた。炭素イオン線とシスプラチンはともにDNAを細胞致死標的とするため、DNA損傷形成およ びその修復機序の差が炭素イオン線の効率的な分裂期崩壊誘導に寄与しているかもしれない。今後

はDNA損傷応答シグナル経路や細胞周期に着目し、さらに解析をおこなっていきたい。

【結論】炭素イオン線とシスプラチンの感受性の相関はX線とシスプラチンの感受性の相関より弱 かった。炭素イオン線はシスプラチンより効率的に分裂期崩壊を誘導した。以上のデータは炭素イ オン線治療とシスプラチンの併用効果に関する重要な生物学的基盤情報となると考えられる。

参照

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