博士課程用(甲)
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(様式4)
学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨
( 割田 敏朗 ) 印
(学位論文のタイトル)
Radiographic parameters of acetabular dysplasia in a healthy Japanese population ―Data from the Katashina study―
(日本の一般住民における寛骨臼形成不全のX線学的指標 -片品運動器検診のデータ-)
(学位論文の要旨)
変形性股関節症は代表的な股関節疾患である。その発症には肥満、職業、スポーツ活動等の他、股関節の発育 性形成不全が影響するとされている。特に日本では寛骨臼形成不全を有する状態を「前股関節症」として位置付 けている。寛骨臼形成不全の評価には正面単純X線像におけるSharp角(SA)やCE角(CEA)といったX線学 的指標が用いられている。しかしながら、日本の一般住民におけるそれらの角度の基準範囲は定まっていない。
本研究の目的は地域住民を対象とした運動器検診で撮影した単純X線像についてこれらの指標を計測し、性別
・年齢・脊椎− 骨盤アライメントとの関連と、日本人中高年における寛骨臼形成不全の有病率を調査することで あった。
群馬県内の山村地域(片品村)の住民検診に参加し、立位骨盤正面単純X線像の撮影が可能であった639名を 対象とし、SA、CEAを計測し、さらに骨盤傾斜を反映する指標であるsacro-femoral-pubic angle (SFPA)を計 測した。
40歳以上かつSA、CEAを計測可能な単純X線像が得られたのは562名(男性221名、女性341名)であり、
平均年齢65.7歳(40歳〜90歳)であった。SFPAについては腸管内のバリウム残存を認めた29名は計測できな かった。
SAの平均は男性:右36.9゜、左36.2゜、女性:右38.9゜、左38.3゜であり、左右ともに有意に女性が大き かった(p<0.01)。また、男女ともに右が左よりも有意に大きかった(p<0.01)。SA>45゜を寛骨臼形成 不全とすると、男性は右1股関節(0.5%)、左1股関節(0.5%)、両側性0名であった。女性は右22股関節
(6.5%)、左14股関節(4.1%)、両側性4名(1.2%)であった。
CEAの平均は男性:右31.7゜、左35.1゜、女性:右26.8゜、左31.2゜であり、左右ともに有意に女性が小さ かった(p<0.01)。また、男女ともに右が左よりも有意に小さかった(p<0.01)。CEA<20゜を寛骨臼形 成不全とすると、男性は右14股関節(6.3%)、左2股関節(0.9%)、両側性1名(0.5%)であった。女性は 右69股関節(20.2%)、左32股関節(9.4%)、両側性26名(7.6%)であった。
SA>45゜かつCEA<20゜の寛骨臼形成不全を満たしたのは、男性:右1股関節(0.5%)のみであり、女性
:右6股関節(1.8%)、左4股関節(1.2%)、両側性は2名(0.6%)であった。
年齢とSAは男女ともに左右それぞれで弱い負の相関を認め、年齢とCEAは女性の右のみにわずかに正の相関 を認め、男性は左右ともに相関を認めなかった。
博士課程用(甲)
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SFPAの平均は男性:55.0゜、女性:57.0゜であり、男女ともに年齢と有意な負の相関を認め、男女ともに SAと有意な正の相関を認めた。SFPAとCEAは男性では相関を認めず、女性の左のみにわずかな正の相関を認 めた。
本研究は日本の一般住民を対象とした調査としてその対象数は多く、ここから明らかとなったことは、X線学 的な寛骨臼形成不全は明らかに女性に多いこと、左よりも右股関節により多く認められたこと、骨盤後傾はSA と弱い相関を認めたがCEAとはほぼ相関を認めなかったこと、が挙げられた。
X線学的な寛骨臼形成不全が女性に多いことはこれまでの報告と一致した見解であり、寛骨臼形成不全の有病 率についてはこれまでの日本人女性を対象とした他の報告と近い結果を得た。
また、左よりも右股関節に多く認められたことに関して、左右差の報告はこれまでの報告にもみられたが、そ の理由は明らかとされていない。子宮内における胎児の体位の影響と述べる報告では左股関節に多いとされ、本 研究とは反対の結果であった。
男女ともにSAと年齢が弱い負の相関を示したことと女性の右股関節でCEAと年齢が正の相関を示したことか ら、股関節の骨性被覆や荷重面の被覆が年齢とともに改変される可能性が示唆された。
SFPAで評価した骨盤後傾は年齢とともに有意な増大を認めた。骨盤後傾が股関節の寛骨臼前方被覆を減らす 報告やCEAが減じる報告があり、本研究では女性の左CEAに同様の結果を認めたがごくわずかな相関であった。
さらに、男女ともに骨盤後傾に対してSAは小さくなる結果を得たことから、前述のように年齢とともに骨頭被 覆を保つように寛骨臼の形状が改変することでSAが小さくなり、CEAが維持される可能性を考えた。
本報告は、日本の一般住民を対象としてX線学的な寛骨臼形成不全を調査し、その性差や左右差を明らかとし た。また、骨盤後傾は年齢との相関を認めたが、CEAとの相関はほぼ認められなかった。