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Academic year: 2021

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博士課程用(甲)

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(様式4)

学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

大西 真弘 印

(学位論文のタイトル)

High linear energy transfer carbon-ion irradiation increases the release of the immune mediator high mobility group box 1 from human cancer cells.

(高LET炭素イオン照射はヒト腫瘍細胞からのhigh mobility group box 1の放出を促進する)

(学位論文の要旨)

【背景・目的】

腫瘍への放射線照射は生体の抗腫瘍免疫を賦活する。この抗腫瘍免疫の賦活には樹状細胞が重要 な役割を果たし、樹状細胞の活性化に関与するタンパク質のひとつとしてHigh mobility group bo x 1(HMGB1)が知られている。HMGB1は、核内に存在する非ヒストン化DNA結合タンパク質であり、

トル様受容体への結合を介して樹状細胞を活性化し、Tリンパ球の活性化を誘導する。このように、

HMGB1は、放射線照射による抗腫瘍免疫賦活において、重要なタンパク質である。

炭素イオン線治療は、優れた線量集中性と高い生物学的効果を示す。炭素イオン線はブラッグピ ークにおいて、X線に比べ高いLinear energy transfer(LET)を有し、故に、X線に比べ2-3倍の殺 細胞効果を発揮する。特に、高LETの炭素イオン線が照射された細胞では、高頻度に複雑なDNA二重 鎖切断がみられる。しかしながら、LETの差異が腫瘍細胞からのHMGB1の放出量に影響するかについ ては、まだ検討されていない。そこで今回我々は、異なるLETの炭素イオン線を照射した際のヒト 腫瘍細胞からのHMGB1放出量を比較した。

【材料と方法】

本研究では、3種類のヒト腫瘍細胞株(KYSE-70;ヒト食道癌由来細胞株、HeLa・SiHa;ヒト子宮 頸癌由来細胞株)を用いた。炭素イオン線照射は、放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療装置

(HIMAC)で行った。腫瘍細胞をフラスコに播種し、細胞の接着を確認した後、13 keV/µmおよび70 keV/µmの、異なるLETでの炭素イオン線照射を行った。

13 keV/µmおよび70 keV/µmの炭素イオン線照射における生物学的等価線量は、コロニーアッセイ 法により、linear-quadraticモデルを用いて算出した。そして、10%の細胞生残率を得る線量(D1 0)による照射で、HMGB1の放出量の比較を行った。HMGB1の測定は照射後24時間、48時間、72時間 で行った。各LETのD10での照射終了直後に培養液を交換し、それぞれの測定時間に、照射後の培養 液の上清を回収し、Enzyme-linked immuno sorbent assay(ELISA)により、HMGB1量を測定した。

HMGB1の測定時の生細胞・死細胞数については、トリパンブルーを用いて評価した。

【結果】

13 keV/µmの炭素イオン線におけるKYSE-70、HeLa、SiHaのD10はそれぞれ、2.8、3.9、4.1 Gyで あった。70 keV/µmの炭素イオン線におけるKYSE-70、HeLa、SiHaのD10はそれぞれ、1.4、1.9、2.3 Gyであった。D10による照射では、照射後24時間および48時間では、13 keV/µm照射および70 keV/

µm間で、いずれの細胞株においてHMGB1の放出量に差は認められなかったが、照射後72時間では3種 すべての細胞株において、13 keV/µmの炭素イオン線照射よりも、70 keV/µmの炭素イオン線照射で、

HMGB1の放出量は有意に高かった(いずれもp<0.05)。照射後72時間後の生細胞・死細胞数は、い

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博士課程用(甲)

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ずれの細胞株においても、13 keV/µmおよび70 keV/µm間で差異を認めず、HMGB1の放出量の差異は、

細胞死の多寡によるものではなかった。

【考察・結論】

本研究では、生物学的等価線量での炭素イオン線照射72時間後において、LETの差異が腫瘍細胞 からのHMGB1放出量に影響することを示した。3種すべての細胞株において、13 keV/µmの炭素イオ ン線照射よりも、70 keV/µmの炭素イオン線照射で、HMGB1の放出量は有意に高かったことから、高 LET炭素イオン照射は、より効果的に腫瘍細胞からHMGB1の放出を促すと考えられた。したがって、

高LET炭素イオン線治療は、複雑なDNA二重鎖切断による殺細胞効果に加え、樹状細胞を刺激し抗腫 瘍免疫応答の活性化にも寄与する可能性が考えられた。

炭素イオン線照射では、DNA依存性プロテインキナーゼによって媒介される汎核H2AXリン酸化が、

X線照射にくらべ高率に誘導されることが分かっている。高LET炭素イオン線照射が、HMGB1の放出 を促進する分子メカニズムについては、複雑なDNA二重鎖切断とHMGB1放出量の相関性の検討など、

今後、更なる検討が必要である。

参照

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