• 検索結果がありません。

現職教員への遠隔教育の実践とその質的分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "現職教員への遠隔教育の実践とその質的分析"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)学校教育学研究, 2003,第15巻, pp.13-19. 13. 現職教員への遠隔教育の実践とその質的分析 成田滋長瀬久明夜更治 (兵庫教育大学) (奈良工業高等学校) 教育改革の一環である現職教員の資質と力量形成は,今や必須の課題である。なかでもICTを用いた教師の指導技術の向 上は今日的な課題となっている。遠隔によるオンライン上での教授/学習形態は,伝統的な教室における対面の学習を補完 する有効な選択肢と考えられる。特に遠隔教授/学習マネージメントツ-ルの利用は,現職教員が研修に要する物理的・時 間的な移動等に費やす負担を最小限にとどめ,利便性と学習効果を高める具体的な一つの方略である。本研究では,いわゆ るe-Learningにおける現職教員の生涯教育の過程で,従来の対面学習に加えて,教授/学習に特化したオンラインマネー ジメントツールを使った遠隔教育の実践を質的に分析し,現職教員の再教育におけるより効果的な教授学習形態や方法を明 らかにする。 キーワ-ド:遠隔学習, e-Learning,マネージメントツール,授業改善,教員養成. 成田滋:兵庫教育大学・学校教育研究センター・教授, 〒673-1421兵庫県加東郡社町山国2007-109 E-mail: [email protected]. 長瀬久明:兵庫教育大学・学校教育研究センター・教授, 〒673-1421兵庫県加東郡社町山12007-109, E-mail: [email protected]. 彼更治:奈良県立奈良工業高等学校・教諭,兵庫教育大学・学校教育研究センター客員研究員(兼職) 〒632-0811奈良市秋篠町1277-1 E-mail: [email protected]. Qualitative Analysis of E-Learning Practices at Teacher Educa.tion Institution. Shigeru Narita, Hisaaki Nagase, and Kohji Shino (Hyogo University of Teacher Education) {Nara Technical High School) Teacher enrichment is one of the crucial issues in schools and colleges. High expectations and disciplined efforts are required in order to meet a variety of educational needs of teachers. Use of groupware, course management tool, in the online learning and teaching minimizes teachers logistic works and maximizes instructional preparation and assessment. This paper examines both strengths and shortcomings of e-Learning practices in the teacher education university from various perspectives. More specifically, this paper contains several charges to which the authors gave particular attention in regard to curriculum enhancement in the teacher education university.. Key Words: online learning, e-Learning, groupware, curriculum enrichment, teacher training Kohji Shino is Teacher and visiting researcher Nara Technical High School, Center for School Education Research, Hyogo University of Teacher Education, 1277-1, Akishmo, Nara 〒632-0811 Japan. E-mail: [email protected] Shigeru Narita is Professor, Center for School Education Research, Hyogo University of Teacher Education, 2007-109 Yamakum, Yashiro, Kat0-gun, Hyogo 673-1421 Japan. E-mail: [email protected] Hisaaki Nagase is Professor, Center for School Education Research, Hyogo University of Teacher Education, 2007-109 Yamakuni, Yashiro, Kat0-gun, Hyogo 673-1421 Japan. E-mail: [email protected]'0-u.ac.ip.

(2) 学校教育学研究, 2003,第15巻. 14. 1.はじめに 高等教育の進歩は,科学技術がもたらす時代の変容と その影響に敏感である。文部科学省の-諮問機関である 教育職員養成審(1997)は, 「新たな時代に向けた教員 養成の改善方策について」という答申を行った。そこで は教員の資質能力の在り方を不易と流行という視点から とらえ,いずれの時代にも欠かすことのできない教師と しての素養や資質と時代に対応した能力の必要性を謡っ ている。また,教育職員養成審議会(1998)は,夜間課 程や通信制課程の開設,遠隔教育等による授業方法の工 夫を挙げている。 わが国での大学改革の波は, ICTの応用めぐる高等 教育の質的充実と能率化を中心的な課題とし,生き残り をかけた機関同志の大競争時代へと押し寄せている(文 部科学省1997, 2000)。大学教育の改革は,高等教育の 大衆化とそれに次ぐ「ポスト大衆化」の課題として質の 維持・向上,教育の成果報告と義務,いわゆるアカウン タビリティが主要な課題となっている(成田, 2000;日 本私立大学連盟, 1993;安岡, 1999;八代, 1999)c 2.研究の背景と目的 ICTの特徴を最も良く表す成果にネットワ-クの成 立と,その上での人々のコミュニケーションがある。さ らに,コミュニケーションの形態の一つとして,大学に. おける協調的な教授/学習活動を指摘することができる。 しかし,協調的な教授/学習を支援する研究は歴史が短 い。特に共同で学習する研究は端緒に着いたばかりであ る。. 協調的な学習はもともと企業における経営革新,技術. チャル・ユニバーシティ」,その他会津大学,早稲田大 学や慶応大学の遠隔教育の取り組みなどが挙げられる。 このような大学拡張の動きは,文部科学省の大学設置基 準の改定や,社会の生涯教育への関心の高さ,グローバ ル教育の浸透などと呼応している。 本研究は,以上のようなICTの進歩と協調的な学習 のニーズを念頭におき,現職教員を対象とした高等教育 におけるe-Learningの実践を質的に分析し,教員養成 や現職教員の再教育におけるより効果的な教授学習形態 や方法を明らかにするものである。 3.オンラインでの教授/学習 ネットワークという支援手段と協調的学習という支援 対象を視点にもった概念は,オンライン学習/教授とい う新しい方法をもたらしている(Bodzin & Park, 2000)c オンライン学習/教授は,特定の学習上の動機や目的を もっ学習者と教官が,情報通信技術とサーバー・クライ アントシステムのもとで,学習や教授環境を管理するグ ループウェア等を利用し,個別・共同な学習活動を非同 期・非対面で行う方法というように定義しておく。この 方法は,学習情報や教材を利用しながら学習者と教官が 互いに討議し,教授学習過程を記録したり評価し,その 結果を学習者-提示する機能を持っ学習形態である。 協調的学習の特徴として次のことがあげられる (Scardamalia & Bereiter, 1996)。 1)学習者間での共通の学習目的を媒介としたコミュ ニケーション. 2)個人の知識や情報をグループの知として活用する 3)学習には媒体となるものや媒介者が存在する 4)学習は対話である(discourse). 革新への対応と,それに必要な人材の育成に拠るところ. 5)学習は脈絡や状況にある. が大きいo遠隔での会議やセミナー,研究会,そして研. 6)学習グループは文化-知識や経験の共有に共感的 である. 修などが協調学習のノウ-ウを培ってきた。衛星通信や 専用回線を利用した遠隔的な対話から,いまやインター. オンラインでの協調的学習の基本的なコンセプトは,. ネット型のホームページを中心とした双方向の非同期的. 伝統的な対面学習の長所を活かしつつ,個々の学習者が. な形態が盛んに使われている。従前の通信教育や社内教. 分散しつつ,その知識や経験を共有しながら学びあうと. 育による概念を包括するオンラインでの社員研修が,グ ループウェアや遠隔学習マネージメントツ-ルの開発に. いう側面がある。対面での教授/学習では,学習者と教 官が同時・同場性を共有することで学習が成立する。オ. よって,いっそう容易となっている。. ンラインオンラインでは,情報通信システムを使い,同. 海外のオープンユニバシティはもちろんのこと,我が. 時・同場性をある程度補うことにより学習を成立させ. 国においてもバ-チャルユニバーシティとかオンライン. る。. 大学などと称して一般への講座を提供する試みも見られ. 1)オンライン教授/学習の実践 1999年の7月に筆者らはニュージーランドはハミ ルトン市のワイカト大学に滞在していた。その間,イ. るようになってきた。その一つは,信州大学工学部情報 工学科の「インターネット大学院」 (2001)や青山学院 大学の「グローバル・クラスルーム」 (2001),園田学園. ンターネット上において指導する院生との間で同期的. 女子大学の「そのだインターネット大学」 (200D, a本. な方法で,テキストと静止画データの送受信によるオ ンライン討議を実施した(成田,1999)。こうした遠隔. 大学の「サイバー・キャンパス」,高知工科大学の「バー.

(3) 現職教員への遠隔教育の実践とその質的分析. 15. での討議に際しては,遠隔での参加を全く意識するこ. できる電子掲示板システムも付随している。これは,問. となくディスカッションが可能であることが実証され. い合わせや意見表明,および討議に有効なシステムの一. た。同様の機会は, 2001年の6月にバンク-バ-と. 例である。. 兵庫の間でも行った(Narita & Shino, 2001)。この. 1)グループウェアの登場. 際のオンライン対話では,話題の継続性と発展性を維 持するために, 20数名とのオンラインでの発言には,. オンラインによる教授/学習では,少なくとも学習 者と教官そして学習コースなど,特定した構成員とコ. 書き込み上のルールを作っておき,それに添って受講. ンテンツによる仮想的な教授/学習システムが必要で ある.そのためのアプリケーションシステムは,いわ. 者が発言権を行使することが話題の討議を深めるうえ で有効であることも検証された。 以上のように,ネットワーク上でのオンライン教授. ゆるグループウェア(groupware)である。グルー プウェアは,インターネット上で以下の特色を有する. /学習システムは,システム全体が学習者や教官にとっ. サーバー・クライアント用アプリケーションシステム. て,全体として一つの教授/学習のための仮想空間で. である。 1977年にJohnson-Lenz (1978)が,共通. の教室を提供する。ネットワ-ク端末に実現される教. の仕事や目的のために働く利用者を支援し,共同作業. 揺/学習の画面は,システムの支援によって,あたか. の環境のためのインターフェイスを提供するコンピュー. も端末を操作する一人の参加者が,他のメンバーとで. タシステムを提唱した。これがいわゆるグループウェ. 双方向のコミュニケーションの場を創るのである.同. アの登場である。. 時性や同場性という条件のもとで成立してきたこれま での伝統的な教授/学習形態は,オンライン環境が提 供するメディアの出現により,その短所を補いっつ対. このグループウエアは,企業の中のコミュニケ-ショ ン,共同プロジェクト,出張,会議,棄議,日程など のロジステックを調整するのに便利なツールとして用. 面的な学習の持っ長所を再認識するものであるといえ る。. いられるようになった。今や,グループウエアのコン. オンラインによる授業には限界もある。しかし,学. 学習環境の充実に応用されるようになっている。つま. セプトは,企業から高等教育機関における授業改善や. 習者が非対面・非同期,あるいは遠隔での対面同期な. り,共通の学習の目的のために学習者を支援し,共同. 学習環境を自分で選択することが可能であり,個人の. 学習環境のためのインターフェイスを提供するように. 身体的・心理的あるいは物理的な事情を配慮した学習. なったのである。現在,高等教育機関で盛んに使用さ. 環境が提供できる。つまり,オンラインの学習ツール. れているグループウェアにWebCTというのがある. による双方向のコミュニケーションは,学習者個々の 条件に沿うことで教授者や学習仲間をより身近な存在. (WebCT, 2001:梶田,板倉, 1999)。 2)グループウェアの構成と機能. とすることができる。これにより,伝統的な対面授業. 現在高等教育機関で利用され始めているグル-プウェ. が制約する時間,場所,集団という条件を緩和するこ. アは,学習環境の快適さを提供するとともに,学習管. とができ,対面と非対面の学習は補完しあうことにな. 理を容易にする構成となっている。そこにはいくつか. る。. の特徴を有する。たとえばHTMLの知識なしに,既 存のhtml, pdf, pptで作られた教材を用いてコース. 4.オンライン教授/学習ツールと授業展開. コンテンツの作成が可能であることである。また,学 習やコミュニケーションや協調学習を可能にする教育. 今日の高等教育機関は,キャンパス全体がネットワー. 用ツール群,例えばメール,掲示板,クイズ,プレゼ. ク化された情報通信環境を提供している。従って、オン. ンテーションの機能を有している。さらに,コースの. ライン教授/学習の実施は、十分機が熟している。オン. 管理作業や改良作業において教官を支援する管理ツー. ラインによる教授/学習への利用の形態として,電子メー. ル群,例えば学習履歴の追跡,クイズの採点,成績管. ルは学習者と教官の間での個別的な情報交換に多用され ている。学習者が課題書類を電子メールで提出したり,. 理などの機能が充実している。加えて,コースコンテ. 教官が添削して学習者に返却したりするのは,メールシ. なっている。. ステムの通常の使い方である。 Webサーバ-が提供す るホ-ムペ-ジコンテンツとサーチエンジンを駆使した. ンツを交換する共有化やコンテンツ販売などが可能と. 5.オンライン教授/学習ツールに望まれる機能. 検索結果の利用も日常的になっている。 Webは巨大な データベースで,高度化した教育・学習システムとなっ ている。また, Webコンテンツには,利用者が直接内. オンライン上の教授/学習マネージメントツールを用 いた授業展開は,同期・非同期での資料提示,グループ. 容を閲覧するだけでなく,即時に端末から記事等を登録. 討議,課題提示とリポート回収及び添削,問題演習や調.

(4) 16. 学校教育学研究, 2003,第15巻. 査など,様々な学習目的に利用できる.グループウェア では, (1)対面の授業の中で取り入れる, (2)非対面の 学習コースとして展開する, (3)対面と非対面を組み合 わせ状況に応じて使い分ける,という三つの形態が考え られる。学習コースの目的と内容によっては,上記の利 用形態から最適な方法を選択すればよい。 グループウェアの利用に関する場面をここで検討して みる。例えば課題テーマを基に資料を収集し,学習者の 考えを表明させながら討議する場合である。学習者には 個々の資料を整理して電子掲示板上で課題を提起する。 その資料を交えての掲示板での討議を経た後,対面で のディスカッションで全体の意見を集約することができ る。資料の検索や整理,およびネットワークツールを 介した討論は,非対面も含めて同期・非同期で展開でき る。電子掲示板のはかに,同期的な場面としては資料を 提示しながら,オンライン対話で討議することもでき m 次に,学習者に対して,学ぶべき一定の教材資料がす. であった。グループウェアの利用と満足度の結果は図1 のようになった。なお、以下のグラフの縦軸は%であ る。. a N=22. .riユIdも肇が 図1グループウェアの利用と満足度 受講生は,対面による授業中に一人1台の端末利用が 可能な環境にあった。 13回の授業の中で教官がカナダ への海外出張が重なった時,受講生は事前に示された討 議課題に沿ってリアルタイムによる90分オンライン会. でにオンライン上の教授/学習マネージメントツールに 存在するとする。学習者は,提示された学習目標に対し て,コース設定に携わった教官の意図にそいながら,マ ネージメントツール上の複数のやり方で学習を進める. このような授業設計の場合は対面である必要性は少ない ので,複数の学習者の同場性や同時性は要求されない。 むしろ個々の学習者の学習を促進する支援が大事となる。. 議に参加したoまた,同一テーマの討議は,受講生を4. オンライン上の教授/学習マネージメントツールは,ネッ トワーク上で各機能が統合化されたツールである。各機 能は,ツールへの接続者を特定することから,教材群の. ムメールシステムを介して討議に加わったo. つの班に分け,それぞれが掲示板を介した討議を行った。 課題によっては,教官は文字数や引用した情報源を示す など様式の概略を指定して課題提出用のツールにファイ ルを送出するよう学習者に求めた.受講生のはかに,一 部ゲストスピ-カーもオンライン教授/学習マネージメ ントシステムに接続し,掲示板システムやメールシステ グル-プウェアの利便性については、図2のような回 答が得られた。. 提倣等,教授/学習を目的とした様々なコース設計が必 要である。つまり,学習者個人や学習者グループについ て,詳細に設定することが重要である。 6.グループウェ7による授業と評価 (1)授業の実際と評価 筆者は, 2000-2001年度に兵庫教育大学において昼間・ 夜間の現職教員を中心とする受講生に対し教育情報活用 特論などの科目を担当した。初年度,本授業は,電子メー ルやwww, FTPサーバーを用いたが,集団や個々の学 習が柔軟に実行しやすいグループウェアを利用する方針 に転換した。 13回の授業を通して,受講生やゲストス ピーカーを含む授業参加者がオンライン教授/学習マネジメントツールを利用した。このツールは,多国語対応 を前提に開発されてはいるものの,基本的にシングルバ イト系での動作が保障されていたので, 2バイト系文字 コード体系での利用には,若干の対応が必要であった。 そうした問題は,授業の実施ではさしたる障害とはなら なかった。受講生24名のうち、回答を寄せたのは22名. Very Useful Neutral Not Notal U seful Us eful all. 図2グループウェアの利便性 科目の受講生の大半は現職教員であった。そこで,各 自が所属する学校におけるマネージメントツールの利用 希望について回答を求めた。その結果を図3に示した。 受講生は,小学校から高等学校及び養護学校の現職教員 であるが,高等教育での利用が前提としたマネージメン トツールではあるものフ,全体的には否定的な回答は示 されなかった。.

(5) 現職教員への遠隔教育の実践とその質的分析. 17. 本授業の評価は,学内の統一様式に対する授業評価と は別に,マネージメントツ-ル内の「サーベイ」機能を 使って受講生が直接回答する形式で求めた。それが以下 の図6であるOこの結果から,大半が自学自習用のツルに対して肯定的な印象を持ったものと考えられる。. 60 50. 図3グループウェアの学校現場での利用. 40 30. 本授業は4か月間の授業で,受講生全員に対し3つの. 20. 課題レポートを科し,マネージメントツール内での提出. 10. +. 拏 ! 登諾 キ毒. を求めた。受講者は,ワ-ドプロセッサやエディタ, h tml,あるいはマネージメントツ-ルそのものを用いて. ,)請 ++ +. e. VeryGood 600d Neutral NotGood. 図6グループウェアを使った授業全体の評価. 課題レポートを提出することを体験した。このような課 題の提示と提出に関しては図4のような回答であった。 回答者の80%程度の肯定的な考えを示し,昨今でのこう したメディアを積極的に利用する姿がうかがえた。. (2)グル-プウェアを使った教授/学習に対するコメン ト. 授業などでグループウェアをより応用し活用すること. 教室と教室外での学習を組み合わせ,学習者の協調的. についての意見は図5のような結果となった。受講生全. な学習を促進する目的でグループウエアを使う授業を実. 員がはじめてグループウェアを利用して授業に臨んだこ. 施した。学期末の受講生による授業評価から,自由記述. ともあり,はじめは戸惑う者も見られたのは事実である。. の一部を以下にあげる。授業開始の当初では,グループ. だが,次第に慣れてきたことが伺えた。. ウエアの個々の機能の使い方で混乱があり,十分な事前 指導が必要であることが判明している。また,討論フォー ラムといった特定の課題についての内容の深めでは,相 手を特足しにくいなどの理由で討議の内容が不十分であっ たことも改善すべき点である。しかし,非対面や非同期 の学習方法の導入については,全般に肯定的な評価を下 している。 (3)グループウェアでの授業改善の視点. VeryGood Good Neutral NotGood. グループウェアでの授業改善を考えるときには,次の ような点から踏み込むことができると考えられる。第一. 図4グループウェア上での討議のしやすさ. の視点は,受講生の勉学目的や目標の明確化という課題 である。強い意思と学習効果の自己把握能力とを持っこ とが重要である。 学習意欲学習者の思考が互いにグループウェア上で共 有されることである。学習者の学習内容は,グル-プウェ ア上で参照されるに適当なモードやツール上に保存され る。他の学習者や教官は,この内容を必要なときに繰り 返し参照することができる。このような参照は,学習者 相互において確保できる。このことにより,与えられた 討議すべき話題に関連する記事を検索したり,整理した. Very Goo Good Neutral Not C;ood. りしながら,学習者が自ら検討を加えて再構成しやすい 状況を作り上げることができる。併せて学習者間の活発. 図5グループウェア上での遠隔授業. なコミュニケーションが期待できる。. 第二の視点は,学習者の情報収集と蓄積が拡大するこ.

(6) 学校教育学研究, 2003,第15巻. 18. とである。討議の主題についてグループウェア上でコミュ. り,一旦作成した教材を再利用可能にすることが望まれ. ニケーションを活発にするには,学習者は様々な関連事. ている。このために,教材分類情報の標準化,教材フォー. 項の情報を求めて検索・評価せねばならない。授業を展. マットの標準化,受講生の成績や履歴情報の標準化が進. 開する側は,事前に主題と関連の深い情報提供サイトや. められている。標準化が進めば,オンライン教授/学習 は今以上に進展すると考えられる。. 文書情報を調べておいて,学習者に示すことが可能であ る。学習者は,オンライン上の関連情報について,賛否. 現時点で兵庫教育大学においてこの種のマネージメン. の両面から検討したり,先進的な取り組み例や先行研究. トツールを搭載したサーバーはごく僅かである。また,. の傾向を整理したりしながら,自身の論調をグループウェ. 実際に授業や協調的学習に応用している科目も筆者の担. ア上の各種ツールを使って展開することができる。. 当する授業以外にない。こうした数少ない経験知を積み. 第三の視点は,グループウェアを介して情報発信のス. 上げて授業の改善に努めるために,授業改善を視野に入. キルトレーニングをすることができることである。学習. れた学内での関連ワークショップをこれまで3回開催し. 者は,グループウェア内,あるいはその中でも小グルー. てきた。それにより各教官にマネージメントツールを試. プを任意に構成して最も発信しやすいところから,順次. 行的に取り入れるよう啓蒙している。現職教員が多く学. 新しい情報を発信する体験を遂げやすい。オンライン教. ぶ大学院レベルの授業改善と教官の指導力量向上には,. 授/学習ツールの利用では,なによりも学習者自身がま ずグループウェアにアクセスすることが大切である。学. こうしたワークショIノブなどのFD活動が必須であると 考えられる。. 習者は,対面での授業に出席するのと同様の気概でオン. オンラインによる教授/学習環境では,個別の学習ニー. ラインでの学習に参加する態度が望まれる。学習者へ情. ズへの対応が可能で,選択的で個性的な学習環境を構築 できるOだが,学習自身の学習-の高い動機や目的意識. 報を提供することが求められる。. なしには,オンラインによる協調的学習は長続きしない. 7.課題と展望. 懸念もある。現に,アメリカの主要な大学でも中途で科 目から離脱する学生が多いと言われている(上野, 2001)。. オンライン教授/学習マネージメントツールを使った 非対面的な授業や協調的学習は,大学での伝統的な対面. 学習を遂行させるには,個々の学習者の目標,知識,舵 力に応じて適切に対応せねばならない. による学習形態を大きく変える可能性を有している。昨 今の高等教育機関や産業界でのe-Learningへの熱い期 待は,大きなビジネスチャンスと考えられており,産学. 引用文献. の共同研究も萌芽の時代を迎えている。. 1)文部科学省(1997). 「遠隔授業」の大学設置基準におけ. 今回の授業後の受講生からの回答数は少ないという限. る取扱い等について(大学審議会答申). 界はあるので、オンライン教授/学習マネージメントツー ルの有効性は一概には一般化するのは避けねばならない。. 2)文部科学省(1997).新たな時代に向けた教員養成の改善. マネージメントツールであるグループウェアをどのよう. 3)文部科学省(1998).通信制の大学院について(大学審議. な授業でいかに応用するかは,国内での実施例はいま だ少なく今後の大きな課題である。 インターネット上のオンライン教授/学習には,教材 などのコンテンツの充実が欠かせない。残念ながら現状. 方策について(教育職員養成審議会答申). 会答申). 4)文部科学省(2000).グロ-バル化時代に求められる高等 教育の在り方について(大学審議会答申). 5)成田滋(2000). 「教官と学生間の効果的な学習成果の. では,教材といわれるものは,個々の教官が所持してい. フィードバックと自己学習法の改善」報告書。兵庫教育大. て共有されていない。また,他の教官や講義で使われる. M. ことも希である。今日の大学の資産は学内の組織など有 形であるものが多いが,これからはオープンな知識,ネッ トワーク上の知識や教材といった無形の財産が中心とな ることが期待される。 オンライン教授/学習が繋明期にあるのはコンテンツ の不足にあると考えられる。従来型の対面授業に比べて, Web教材の開発コストは高いので付加価値をいかにつ けるかが課題となっている。教材の開発と充実のために, 現在遠隔教育の標準化ということが言われている(伊藤, 2001)。学習目的に適した教材の検索や購入が容易にな. 6)安岡高志(1999).授業を変えれば大学はかわる。プレ ジデント社. 7)八代尚宏(1999).市場重視の教育改革O日本経済新聞 社. 8)日本私立大学連盟(1993).大学の教育・授業をどうするI FDのすすめ。東海大学出版会。先進学習基盤協議会 (2001). eラ-ニング白書。オーム社. 9)信州大学(2001).信州大学インターネット大学院。 http://www.shinshu-u.ac.jp/. 10)青山学院大学(2001).グローバルクラスル.

(7) 現職教員への遠隔教育の実践とその質的分析. http://www.aoyama.ac.j p/daigaku/educat/index.html.. ll)園田学園女子大学(2001).そのだインターネット大学 (遠隔学習講座) http://www.sonoda-u.ac.jp/iu/. 12) Bodzin, A. M., & Park, J. C. (2000). Factors that influence asynchronous discourse with preservice teach-. ers on a public, Web-based forum. Journal of Computing in Teacher Education, 16(4), 22-29. 13) Scardamalia, M., & Bereiter, C. (1996). Computer support for knowledge-building communities. In T. Koschmann (Ed.), CSCL: Theory and practice of an emerging paradigm. Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.. 14)成田滋(1999).教師教育を促進する大学の遠隔教育プロ グラムの開発とワイカト大学との提携1-日本教育実践学会 第2回研究大会. http://www.ceser.hyogo-u.ac.ip/naritas /waikato99/waikato. pdf. 15) Narita, S. & Shino, K. (2001). Teacher Empowerment Using Asynchronous Interactive Learning in Japanese Teacher Education College and School, WebCT 2001 Conference Proceedings.. 16)伊藤健二(2001).遠隔教育システムに関する欧米の標準 化動向について。バーチャルユニバーシティ研究フォラム講演録pp.207-213. 17) Johnson-Lenz, P.T. (1978) Groupware: Coining- and Defining It http://www.context.org/ICLIB/IC23/ JnsnLenzL htm. 18) WebCT (2001). http://www.webct.com/ 19)梶田将司,板倉文忠(1999). WebCTによるコースウェ ア作成支援環境の構築,電子情報通信学会技術研究報告,. Vol. ET99-58, pp. 15-22. 20)上野暗樹(2001).ビジネスとしてのバーチャルユニバー シティ:期待と課題-研究者の視点から-。バ-チャル ユニバーシティ研究フォーラム講演録pp. 143-150.. (2002.7.31受稿, 2002.9.17受理). 19.

(8)

参照

関連したドキュメント

1、研究の目的 本研究の目的は、開発教育の主体形成の理論的構造を明らかにし、今日の日本における

確かな学力と自立を育む教育の充実 豊かな心と健やかな体を育む教育の充実 学びのセーフティーネットの構築 学校のガバナンスと

[r]

Keywords: Online, Japanese language teacher training, Overseas Japanese language education institutions, In-service teachers, Analysis of

「男性家庭科教員の現状と課題」の,「女性イ

  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科

小牧市教育委員会 豊明市教育委員会 岩倉市教育委員会 知多市教育委員会 安城市教育委員会 西尾市教育委員会 知立市教育委員会