一 、 は じ め に 玉 村 竹 二 氏 に よ れ ば︵ 1 ︶ 、 五 山 に 中 国 来 朝 僧 が 住 持 と し て 在 任 中 は 、 参 禅 弁 道 も 行 わ れ て い た と 考 え ら れ る が 、 や が て 南 北 朝 時 代 に 入 る と 、 寺 院 内 に そ れ ぞ れ の 門 派 の 拠 点 と し て の 塔 頭 が 成 立 し 、 そ の 発 達 と 共 に 、 僧 堂 に お い て 全 山 の 雲 衲 に よ る 修 行 は お ざ な り に な っ て い っ た と さ れ る 。 僧 堂 に 入 っ て 、 参 禅 す る も の が 、 極 め て 少 く な っ た 状 態 を 、 應 永 二 十 年 當 時 、 天 龍 寺 の 住 持 で あ っ た 惟 忠 通 恕 が 、 そ の 語 録 ﹃ 繋 驢 ﹄ 上 住 天 龍 寺 語 録 に お い て 以 下 の よ う に 述 べ て ゐ る 。 三 月 望 上 堂 、 問 答 畢 、 散 説 、 原 夫 本 寺 置 常 牧 寮 、 乃 堂 中 十 六 員 老 僧 安 下 之 處 也 、 十 六 人 内 、 抽 二 僧 、 輪 番 看 寮 之 外 、 各 在 堂 裏 、 單 々 安 祥 、 二 六 時 中 、 不 離 被 位 、 蓋 解 閑 却 七 間 僧 堂 之 嘲 也 、 自 餘 堂 僧 、 禪 誦 之 暇 、 内 外 兼 學 、 遮 手 潤 色 此 道 、 或 有 拘 寺 役 者 、 是 故 限 以 四 次 坐 禅 、 亦 是 百 丈 祖 師 、 始 設 叢 林 之 遺 訓 也 、 山 僧 邇 來 、 毎 々 齋 罷 入 堂 、 視 彼 十 六 被 位 、 坐 者 纔 三 四 人 、 或 七 八 人 、 縦 雖 居 堂 内 、 猶 如 遊 州 猟 縣 之 輩 、 不 有 究 明 己 事 體 裁 、 可 惜 也 、 雖 然 人 々 一 頭 水 牛 、 有 不 牧 而 常 牧 底 也 否 、 況 常 牧 寮 、 毎 月 常 住 所 出 費 用 繁 多 、 其 不 自 慚 塊 乎 、 自 今 以 後 、 煩 維 那 時 々 點 檢 、 不 遵 制 者 、 有 罰 、 莫 道 不 言 、 結 座 云 、 堂 中 十 六 老 聲 聞 、 幾 箇 安 禪 不 離 群 、 解 道 龍 宮 赴 齋 後 、 天 台 山 頂 去 春 雲 、 喝 一 喝 、 文 明 年 中 に 活 躍 し た 彦 龍 周 興 に よ る 、 以 下 の 文 章 か ら 、 五 山 僧 の 志 向 し た 仏 道 の あ り 方 が 読 み 取 れ る 。 某 、 力 拯 其 弊 爾 、 拈 花 微 咲 、 立 雪 安 心 、 臨 濟 肋 下 拳 、 徳 山 末 後 句 、 是 等 徹 骨 徹 髄 、 一 竅 竅 著 、 迎 刃 解 去 、 信 手 拈 來 、 茶 裏 飯 裏 、 擧 足 下 足 、 得 大 自 在 、 得 大 快 活 、 推 其 餘 以 爲 人 、 則 入 詩 入 文 、 或 花 或 柳 、 或 時 経 史 子 集 、 或 時 佛 經 祖 録 、 説 得 好 、 説 不 得 也 好 、 一 旦 出 世 、 擧 宗 乘 、 則 上 堂 、 示 家 教 則 小 參 、 稱 西 菴 稱 東 堂 、 有 拈 香 法 語 、 有 陞 座 普 説 、 是 吾 所 謂 道 也 、 ︿ 下 略 ﹀︵ ﹃ 半 陶 藁 ﹄ 與 人 絶 交 書 ︶ 玉 村 氏 が 指 摘 す る よ う に 、 五 山 僧 の 仏 道 に 対 す る 姿 勢 は 、 後 半 部 分 に お い て 端 的 に 示 さ れ て い る と 思 わ れ る 。 五 山 僧 は 、 一 三 一 駒 澤 大 學 佛 學 部 論 集 第 三 十 四 成 十 五 年 十 月
中
世
林
下
に
お
け
る
語
録
抄
と
密
参
録
に
つ
い
て
︵
上
︶
飯
塚
大
展
中 世 林 下 に お け る 語 録 抄 と 密 参 録 に つ い て ︵ 上 ︶ ︵ 飯 塚 ︶ 一 三 二 そ の 習 学 期 に お い て は 、 経 史 子 集 の 外 典 や 仏 経 祖 録 の 内 典 を 碩 学 の 師 に つ い て 学 び 、 漢 文 の 語 彙 を よ り 多 く 獲 得 す る こ と が 求 め ら れ た 。 公 案 参 得 が そ の 前 半 部 分 に は 述 べ ら れ て い る が 、 必 ず し も そ の 比 重 は 大 き く な い 。 む し ろ そ の 膨 大 な 語 彙 獲 得 に も と づ く 詩 文 の 作 成 に 多 く の 時 間 と 労 力 を 費 や し た と さ え 言 え る 。 応 永 年 間 に 、 始 め 五 山 僧 と し て 出 発 し た 一 休 宗 純 は 、 五 山 僧 慕 哲 龍 攀 の も と で 、 外 学 と と も に 、 詩 偈 作 成 の 入 門 書 で あ っ た ﹃ 三 体 詩 ﹄ を 学 ん で お り 、 事 実 そ の 詩 句 が モ チ ー フ と な っ た 偈 頌 を ﹃ 狂 雲 集 ﹄ の 中 に 見 出 す こ と が で き る 。 五 山 の 住 持 に な る 様 な 僧 侶 は 、 旦 望 上 堂 ・ 小 参 の 儀 式 に お い て 遺 憾 な く そ の 博 識 と 文 才 が 発 揮 さ れ ね ば な ら な か っ た 。 ま た 入 山 疏 を 始 め と す る 寺 院 内 文 書 の 作 成 は 、 四 六 駢 儷 体 に よ っ て 作 さ れ た か ら 、 そ の 軌 範 と さ れ た ﹃ 蒲 室 疏 ﹄ に 対 す る 講 義 が 盛 ん に 行 わ れ 、 師 資 に よ り 伝 授 さ れ て い っ た 。 林 下 各 派 は 五 山 と は 異 な っ た 伝 統 を 生 む に 至 っ た が 、 そ の 特 徴 の 一 つ は 公 案 参 得 を 中 心 と す る 修 行 体 系 の 確 立 に あ っ た と 思 わ れ る 。 本 稿 で は 、 林 下 道 元 派 下 と 大 徳 寺 派 ︵ 大 応 派 徹 翁 派 下 ︶ の 公 案 禅 に つ い て 、 そ の 一 端 を 考 察 し た い と 思 う 。 ま た 林 下 の 公 案 禅 を 語 録 抄 と 密 参 録 と の 補 完 関 係 に あ る と の 作 業 仮 説 に 基 づ き 、 ﹃ 臨 済 録 抄 ﹄ を 素 材 と し て 考 察 を 進 め た い 。 二 、 林 下 道 元 派 下 に お け る 公 案 参 究 応 仁 ・ 文 明 の 乱 以 降 、 室 町 時 代 後 半 よ り 江 戸 時 代 初 頭 に か け て は 、 最 も 活 発 に 曹 洞 宗 各 派 が 地 方 に 展 開 し た 時 期 に あ た る 。 そ れ ぞ れ の 地 方 に 展 開 し た 各 派 は や が て 独 自 の 宗 風 を 確 立 し 、 そ れ は 特 に 公 案 体 系 お よ び 公 案 解 釈 に お い て 顕 著 に な っ て く る よ う に 思 わ れ る 。 地 方 に 展 開 し た 各 派 は 、 そ の 地 方 に 最 も 早 く 進 出 し 、 外 護 者 を 得 て 建 立 さ れ た 寺 院 を 據 点 と し て 、 次 々 と 本 末 関 係 を 有 す る 子 院 を 開 創 す る と い う 形 で 、 一 定 の 地 域 に 根 ざ し て い っ た 。 そ の 派 の 據 点 寺 院 と な っ た 本 寺 は 、 し ば し ば 輪 住 制 と い う 形 を と り 、 派 内 で 末 寺 関 係 に あ る 主 だ っ た 寺 院 の 住 職 が 本 寺 へ と 晋 住 し 、 一 定 期 間 住 持 を 務 め る と い う 形 で 、 本 寺 の 権 威 化 と 経 営 的 基 盤 を 固 め て い っ た 。 か く し て 直 接 的 な 本 末 関 係 に あ る 寺 院 間 の 門 派 意 識 、 帰 属 意 識 が 強 固 な も の と な っ て 行 っ た と 思 わ れ る 。 し か し 、 後 に そ の 上 部 に 位 置 す る で あ ろ う 永 平 寺 、 総 持 寺 に 対 す る 帰 属 意 識 は 稀 薄 で あ っ た と 思 わ れ る 。 勿 論 、 形 式 的 に 自 己 の 同 一 性 を 曹 洞 宗 に 求 め る こ と は あ っ た が 、 そ れ は 大 枠 で 自 己 の 正 統 性 を 述 べ る 際 に 限 定 さ れ る 。 即 ち 、 自 ら は 臨 済 宗 と は 異 な り 、 か つ 五 山 の 僧 で は な く 、 曹 洞 宗 に 属 し 、 道 元 の 法 孫 で あ る こ と の 正 統 性 を 強 く 主 張 す る 場 合 が そ れ で あ る 。 各 派 毎 に こ の よ う な 同 一 門 派 と し て の 強 い 帰 属 意 識 が 醸 成 さ れ た 背 景 に
中 世 林 下 に お け る 語 録 抄 と 密 参 録 に つ い て ︵ 上 ︶ ︵ 飯 塚 ︶ 一 三 三 は 、 そ れ ぞ れ の 派 が 独 自 な 教 学 的 裏 づ け を 有 し て い た こ と が 一 因 と し て 想 定 さ れ る 。 以 下 に 、 林 下 曹 洞 宗 の 事 例 と し て 、 永 平 寺 に お け る 公 案 参 得 の 伝 統 に つ い て 考 察 し て み た い 。 室 町 時 代 以 降 、 曹 洞 宗 道 元 派 下 に お け る 公 案 禅 の 援 用 は 、 そ の 比 重 を 増 し 、 各 派 毎 の 本 参 の 目 録 が 作 成 さ れ る ほ ど に 体 系 化 さ れ て く る 。︵2 ︶ 公 案 禅 の 盛 行 は 林 下 の 共 通 の 傾 向 と 思 わ れ 、 大 応 派 下 の 二 派 、 即 ち 徹 翁 派 下 ︵ 大 徳 寺 派 ︶ 、 関 山 派 下 ︵ 妙 心 寺 派 ︶ で は 、 盛 ん に 密 参 録 が 抄 出 さ れ た 時 代 で あ っ た 。 五 山 叢 林 に お い て も 、 室 町 時 代 後 期 以 降 、 幻 住 派 が 盛 ん に な る と 、 林 下 の 本 参 や 密 参 録 と 類 似 性 を 持 つ 抄 物 が 作 成 さ れ る よ う に な る 。 さ て 、 林 下 曹 洞 宗 に お け る 、 管 見 の 本 参 目 録 の 中 で 比 較 的 早 い 成 立 に 属 す る も の に 、 愛 知 県 渥 美 町 常 光 寺 所 蔵 の ﹁ 傑 堂 派 参 話 目 録 ﹂ が あ る 。︵3 ︶ 常 光 寺 は 、 寒 巌 派 下 の 普 済 寺 十 三 門 派 の 一 つ 潔 堂 派 の 寺 院 で あ り 、 ま と ま っ た 切 紙 資 料 と し て は 最 も 古 い 部 類 に 属 す る 、 文 明 年 間 か ら 天 文 年 間 に 至 る 二 十 一 通 の 切 紙 を 所 蔵 し て い る こ と で 知 ら れ て い る 。︵4 ︶ こ れ に 拠 れ ば 、 潔 堂 派 で は 、 伝 授 前 、 伝 授 時 、 伝 授 後 、 更 に は 末 後 之 参 と い う 様 に 、 公 案 参 究 の 階 梯 を 設 け て い る 。 嗣 法 相 続 が 大 事 ︵ 参 禅 ︶ 了 畢 を 前 提 と し て お り 、 少 な く と も 室 町 時 代 以 降 、 室 内 参 禅 修 行 ︵ 公 案 参 究 ︶ が 盛 ん に 行 わ れ て い た こ と を 示 す も の と 言 え る 。 駒 澤 大 学 図 書 館 所 蔵 ﹃ 室 中 切 紙 ﹄ 所 載 の ﹁ 嗣 書 諸 目 録 之 切 紙 ﹂ を 見 て み た い 。 こ れ は 、 永 正 十 二 年 ︵ 一 五 一 五 ︶ に 集 成 さ れ た と み ら れ る 切 紙 目 録 で あ る 。 そ こ に は 、 夜 参 並 び に 三 位 に 関 す る 切 紙 ・ 本 参 の 名 が 見 ら れ る 。︵5 ︶ ○ 嗣 書 諸 目 録 之 切 紙 ・ 梅 絹 二 切 、 ・ 国 王 授 戒 作 法 一 枚 紙 也 、 ・ 菩 薩 戒 作 法 長 続 之 紙 也 、 ・ 受 業 明 時 椅 子 作 法 一 枚 紙 也 、 ・ 戒 律 伝 授 作 法 一 枚 紙 也 、 ・ 自 家 訓 訣 ・ 龍 天 授 戒 作 法 一 枚 紙 也 、 ・ 栄 西 記 文 一 枚 紙 也 、 ・ 達 磨 一 心 戒 作 法 一 枚 紙 也 、 ・ 応 量 器 梅 絹 一 尺 四 方 一 切 以 上 嗣 書 ノ 内 数 ノ 一 六 様 ・ 仏 祖 正 法 眼 蔵 血 脈 一 枚 也 、 ・ 没 後 授 戒 作 法 一 枚 也 、 ・ 嗣 法 論 作 法 一 枚 紙 也 、 ・ 印 形 図 一 枚 也 、 空 塵 書 三 枚 続 紙 也 、 ・ 永 平 仏 祖 正 伝 受 経 儀 軌 一 枚 也 、 ・ 臨 済 下 血 脈 一 枚 也 、 無 極 授 二 月 江 一 記 文 長 続 紙 也 、 ・ 夜 参 図ヅ 三 枚 続 ノ 紙 也 、 ・ 三 光 普 所 大 ・ 肝 要 句 儀 一 枚 也 、 ・ 嗣 書 巻 一 冊 、 ・ 曹 洞 合 血 本 則 一 冊 、 ・ 普 門 品 相 承 之 次 第 一 冊 、 ・ 三 位 之 次 第 并 月 両 箇 二 枚 也 、 ・ 如 浄 老 師 授 道 元 和 尚 儀 軌 、 ・ 夜 参 廿 八 透 一 冊 、 此 内 一 透 ハ 秘 極 ノ 々 也 、 ・ 梅 絹ノ 嗣 書 巻 一 冊 、 ・ 十 八 般 抄 共 ニ 、 二 冊 、 ・ 続 物 卅 一 様 、 本 一 冊 、 ・ 小 参 之 秘 訣 一 冊 、 ・ 夜 参 出 標 天 如 節 田 相 承 次 第 、 朝 参 計 謹 共ニ 宗 門 一 大 事 因 縁 、 禅 相 伝 附 既 畢 、 永 正 十 三 歳 丙 子 ︵ 一 五 一 六 ︶ 極 月 十 三 日 夜 半 宗 門 一 大 事 不 遺 一 物 正 忠 伝 既 畢 、 天 文 二 癸 巳 ︵ 一 五 三 三 ︶ 十 月 廿 七 日 夜 半 、 於 最 乗 金
中 世 林 下 に お け る 語 録 抄 と 密 参 録 に つ い て ︵ 上 ︶ ︵ 飯 塚 ︶ 一 三 四 剛 寿 院 、 宗 門 一 大 事 不 遺 一 物 宗 長 伝 附 既 畢 、 此ノ 外 伝 後 之 参 敲 換 十 六 則 最 秘 極 也 、 若 流 布 他 見 輩 者 瞎 却 正 法 眼 編 却 命 者 也 、 日 本 天 文 廿 年 辛 亥 ︵ 一 五 五 一 ︶ 今 寛 永 十 歳 癸 酉 ︵ 一 六 三 三 ︶ 九 月 吉 日 ︵ 9 ウ ∼ 11 オ ︶ 曹 洞 宗 道 元 派 下 に 相 伝 さ れ た 切 紙 の 中 で も 、 嗣 書 ・ 血 脈 伝 授 に 関 す る 切 紙 の 比 重 は 極 め て 大 き い も の で あ る 。 嗣 法 伝 授 の 前 提 に 参 禅 了 畢 が 求 め ら れ た よ う に 、 切 紙 も 同 時 に 伝 授 さ れ た も の と 思 わ れ 、 嗣 法 の 際 に 師 資 の 間 に に 秘 密 相 伝 さ れ る 一 連 の も の と し て 位 置 づ け ら れ て い た こ と が 上 記 の 史 料 か ら 確 認 で き る 。 前 述 の 通 り 曹 洞 宗 に お け る 公 案 参 得 の 階 梯 は 、 通 常 は 三 段 階 で 構 成 さ れ て い る 。 そ の 名 称 は 、 た と え ば 、 ﹁ 自 己 ﹂ ﹁ 智 不 到 ﹂ ﹁ 那 辺 ︵ 那 時 ︶ ﹂ 、 あ る い は ﹁ 鉄 ﹂ ﹁ 銀 ﹂ ﹁ 金 ﹂ 、 あ る い は ﹁ 最 初 ﹂ ﹁ 中 当 ﹂ ﹁ 向 上 ﹂ 、 さ ら に は ﹁ 一 透 ﹂ ﹁ 二 透 ﹂ ﹁ 三 透 ﹂ 、 ﹁ 初 ﹂ ﹁ 中 ﹂ ﹁ 後 ﹂ と さ ま ざ ま で あ る が 、 三 段 階 の 構 成 は ほ ぼ 各 派 共 通 す る と 言 え る 。 こ れ を 広 義 に は ﹁ 三 位 ﹂ と い う が 、 狭 義 に は ﹁ 自 己 ﹂ ﹁ 智 不 到 ﹂ ﹁ 那 辺 ︵ 那 時 ︶ ﹂ を 指 し 、 そ の 三 位 に よ る 、 祖 師 の 語 句 や 機 縁 を 体 系 化 し た 物 を ﹁ 三 位 之 透 ︵ さ ん い の と お り ︶ ﹂ と い う 。 ﹁ 無 極 授 月 江 記 文 ﹂ 切 紙 に よ れ ば 、 美 濃 補 陀 寺 の 無 極 慧 徹 の 会 下 に あ っ た 月 江 正 文 が 関 東 に 赴 く に 際 し て 、 師 の 無 極 か ら 示 さ れ た 旨 訣 と さ れ る も の で 、 そ の 中 で ﹁ 三 位 之 透 ﹂ の 項 目 及 び 由 来 が 説 か れ て い る 。︵6 ︶ 次 ぎ に 、 室 町 時 代 後 期 か ら 江 戸 時 代 初 頭 に か け て の 永 平 寺 に お け る 公 案 参 得 の 状 況 を 見 て み た い 。 中 世 に は 瑩 山 紹 瑾 ︵ 一 二 六 四 ∼ 一 三 二 五 ︶ に 擬 せ ら れ る 十 則 の 公 案 拈 提 集 ﹃ 秘 密 正 法 眼 蔵 ﹄ ︵ 永 平 寺 蔵 ﹃ 伝 授 室 中 之 物 ﹄ に そ の 名 が 見 え る ︶︵7 ︶ や 、 瑩 山 の も の と さ れ る 、 一 六 二 則 の 公 案 注 解 ﹃ 報 恩 録 ﹄ 二 巻 、 あ る い は 大 智 ︵ 一 二 九 〇 ∼ 一 三 六 六 ︶ に も ﹃ 無 尽 集 ﹄ ﹃ 古 今 全 抄 ﹄ な ど の 公 案 拈 提 の 抄 物 が あ っ た と さ れ る 。 ち な み に 永 平 寺 関 連 の 公 案 集 と し て は 寂 円 派 義 雲 ︵ 一 二 五 三 ∼ 一 三 三 三 ︶ の 編 と い う 伝 承 を 有 す る ﹃ 永 平 寺 秘 密 頂 王 三 昧 記 ﹄︵8 ︶ が 現 存 す る 。 本 書 は 、 漢 文 体 で は あ る が 五 十 三 則 の 公 案 拈 提 集 で あ る 。 同 じ く 寂 円 派 の 所 伝 と 考 え ら れ る 、 ﹃ 南 谷 老 師 三 十 四 関 ﹄ ﹃ 三 十 四 話 本 参 ﹄ 等 の 書 名 を 有 す る 三 十 四 則 の 公 案 拈 提 集 の 伝 本 も 現 存 す る 。︵9 ︶ 本 書 は 、 道 元 が 中 国 留 学 中 に 天 童 山 の 如 浄 よ り 伝 授 さ れ 、 建 長 五 年 ︵ 一 二 五 三 ︶ 正 月 十 五 日 に 懐 弉 に 伝 え ら れ た と い う 識 語 を 有 す る も の で あ る 。 永 平 寺 室 中 に は 、 こ の ﹃ 三 十 四 話 ﹄ の 本 参 は 現 存 し て い な い が 、 以 下 に 紹 介 す る 光 紹 智 堂 の ﹃ 切 紙 目 録 ﹄ や 、 馥 州 高 郁 の ﹃ 伝 授 室 中 之 物 ﹄ に は 、 本 書 に 基 づ く 多 種 の 本 参 が 相 伝 さ れ て い た こ と が わ か る 。 永 平 寺 三 十 世 慧 輪 永 明 禅 師 光 紹 智 堂 ︵ 一 六 一 〇 ∼ 一 六 七 〇 ︶ に よ っ て ま と め ら れ た と 思 わ れ る ﹁ 切 紙 目 録 ﹂ に は 、 百 五 十 七 種 の 切 紙 を 列 記 し た 後 に 、 ﹁ 参 禅 巻 冊 覚 ﹂ と し て 、 別 に 二 十 二 種 の 門 参 資 料 の 目 録 が 附 記 さ れ て い る 。
中 世 林 下 に お け る 語 録 抄 と 密 参 録 に つ い て ︵ 上 ︶ ︵ 飯 塚 ︶ 一 三 五 参 禅 巻 冊 覚 ︵ 1 ︶ 一 、 秘 参 独 則 十 六 則 一 巻 ︵ 2 ︶ 一 、 独 則 一 巻 ︵ 3 ︶ 一 、 永 平 秘 伝 参 一 巻 ︵ 4 ︶ 一 、 永 平 独 則 参 一 巻 ︵ 5 ︶ 一 、 永 平 秘 伝 書 伝 後 参[ 絹 地 也] 一 巻 ︵ 6 ︶ 一 、 大 儀 小 儀 二 巻 ︵ 7 ︶ 一 、 伝 授 作 法 [ 折 本 ] 一 冊 ︵ 8 ︶ 一 、 参 禅 惣 目 録 一 巻 ︵ 9 ︶ 一 、 三 十 四 話 抄 参 禅 切 紙 一 冊 ︵ 10 ︶ 一 、 三 十 四 話 名 目 一 冊 ︵ 11 ︶ 一 、 三 十 四 話 抄 [ 共 ] 一 冊 ︵ 12 ︶ 一 、 門 参 一 冊 ︵ 13 ︶ 一 、 嗣 書 三 段 訣 二 冊 ︵ 14 ︶ 一 、 正 法 眼 蔵 抜 書 一 冊 ︵ 15 ︶ 一 、 大 白 峰 記 一 冊 ︵ 16 ︶ 一 、 五 葉 集 同 抄 一 冊 ︵ 17 ︶ 一 、 根 脚 抄 一 冊 ︵ 18 ︶ 一 、 碧 岩 参 禅 三 冊 ︵ 19 ︶ 一 、 血 脈 起 一 巻 ︵ 20 ︶ 一 、 嫡 嗣 伝 授 儀 式 一 巻 ︵ 21 ︶ 一 、 伝 授 古 則 秘 伝 書 一 巻 ︵ 22 ︶ 一 、 法 華 八 巻 之 秘 参 一 冊 ︵ 朱 印 白 文 ﹁ 慧 輪 永 明 禅 師 ﹂ ︶ ︵ 朱 印 ﹁ 光 紹 高 風 ﹂ ︶ 更 に 、 永 平 寺 三 四 世 馥 州 高 郁 ︵ 大 仙 国 光 禅 師 、 元 禄 元 年 ︿ 一 六 八 八 ﹀ 示 寂 ︶ が 、 貞 享 五 年 一 〇 月 永 平 寺 退 院 に 際 し て 記 録 し た ﹁ 伝 授 室 中 之 物 ﹂ に よ れ ば 、 永 平 寺 室 中 に お い て 伝 授 相 伝 さ れ 、 室 中 の 参 禅 箱 に 収 蔵 さ れ た 本 参 ・ 切 紙 類 が 列 挙 さ れ て い る 。 伝 授 室 中 之 物 ︵ 1 ︶ 一 、 後 開 山 御 守 後 住 伝 授 之 時 、 可 拜 箱 入 、 ︵ 2 ︶ 一 、 伝 授 古 則 入 派 向 上 最 初 ヨ リ 、 十 二 通 之 目 録 ︵ 3 ︶ 一 、 三 十 四 関 之 抄 、 是 ヲ 伝 法 之 時 、 不 究 者 、 吾 宗 之 非 師 家 、 壹 冊 在 之 、 ︵ 4 ︶ 一 、 天 童 如 浄 和 尚 御 自 筆 之 仏 嗣 書 之 写 、 本 書 重 而 可 見 、 ︵ 5 ︶ 一 、 明 全 和 尚 御 自 筆 血 脈 写 シ 、 本 書 重 而 可 見 、 ︵ 6 ︶ 一 、 伝 授 入 派 竹 箆 背 触 三 位 透 脱 之 目 録 在 之 、 ︵ 7 ︶ 一 、 過 去 心 字 之 血 脈 一 大 事 因 縁 渡 之 、 同 過 去 七 仏 之 血 脈 在 之 、 ︵ 8 ︶ 一 、 伝 授 入 大 死 底 之 参 禅 諸 門 派 江 渡 ル ︵ 9 ︶ 一 、 道 場 荘 厳 儀 式 ︵ 10 ︶ 一 、 両 家 血 脈 御 大 事 之 目 録 在 之 、
中 世 林 下 に お け る 語 録 抄 と 密 参 録 に つ い て ︵ 上 ︶ ︵ 飯 塚 ︶ 一 三 六 ︵ 11 ︶ 一 、 伝 授 之 作 法 、 従 曩 祖 之 本 筋 目 也 、 永 平 寺 隠 居 地 ニ 置 、 嫡 子 一 人 ニ 可 付 之 、 ︵ 12 ︶ 一 、 永 平 寺 参 禅 之 目 録 、 代 □ 在 之 、 渡 之 、 ︵ 13 ︶ 一 、 宗 門 二 柱 、 是 ヲ 仏 法 之 二 柱 倶 云 、 祖 意 教 意 、 仏 法 王 法 之 二 柱 也 、 代 可 秘 之 、 ︵ 14 ︶ 一 、 催 促 之 切 紙 、 ︵ 15 ︶ 一 、 居 士 之 嗣 書 、 此 内 色 々 ノ 切 紙 倶 在 リ 、 壹 冊 、 ︵ 16 ︶ 一 、 碧 岩 百 則 之 参 、 壹 冊 ︵ 17 ︶ 一 、 御 開 山 弁 道 話 ︿ 小 本 、 折 本 ﹀ ︵ 18 ︶ 一 、 法 華 八 巻 微 妙 之 参 話 、 壹 冊 ︵ 19 ︶ 一 、 五 家 宗 派 之 分 ケ 、 壹 冊 ︵ 20 ︶ 一 、 吉 祥 参 禅 入 派 竹 箆 背 触 、 壹 冊 、 光 紹 改 之 ︵ 21 ︶ 一 、 永 平 寺 本 参 、 壹 冊 、 御 州 改 之 、 ︵ 22 ︶ 一 、 伝 後 之 参 目 録 、 壹 冊 、 光 紹 改 之 、 ︵ 23 ︶ 一 、 三 十 四 関 之 名 目 并 十 則 正 法 眼 、 御 州 改 之 、 ︵ 24 ︶ 一 、 三 十 四 話 之 抄 、 同 参 禅 、 并 切 紙 、 壹 冊 、 御 開 山 以 来 在 之 、 ︵ 25 ︶ 一 、 吉 祥 山 諸 話 頭 総 目 録 、 壹 冊 ︵ 26 ︶ 一 、 正 法 眼 蔵 之 内 梅 花 巻 、 光 紹 代 、 明 光 院 二 休 大 居 士 日 牌 ノ 砌 納 之 、 小 本 一 冊 、 ︵ 27 ︶ 一 、 大 陽 渡 浮 山 黒 狗 ︱ ︱ 底 ノ 切 紙 、 二 十 三 之 内 ヨ リ 在 之 、 ︵ 28 ︶ 一 、 正 法 眼 蔵 抜 書 、 壹 冊 、 ︵ 29 ︶ 一 、 天 童 三 十 四 関 之 名 目 、 壹 冊 、 ︵ 30 ︶ 一 、 達 磨 五 葉 集 、 壹 冊 ︵ 31 ︶ 一 、 宗 門 第 一 ノ 書 円 悟 碧 岩 集 古 頌 之 参 話 倶 ニ 在 之 、 三 冊 、 ︵ 32 ︶ 一 、 永 平 三 位 ニ 入 派 、 壹 冊 、 竹 箆 背 触 也 、 此 類 多 シ 、 ︵ 33 ︶ 一 、 永 平 独 則 等 参 、 壹 冊 、 ︵ 34 ︶ 一 、 仏 家 大 事 、 壹 冊 、 ︵ 35 ︶ 一 、 毫 山 成 道 参 、 壹 冊 、 ︵ 36 ︶ 一 、 十 九 代 門 鶴 勧 化 帳 ノ 写 、 一 枚 、 ︵ 37 ︶ 一 、 嗣 法 儀 式 、 ︵ 38 ︶ 一 、 守 袋 図 縫 様 切 紙 、 一 枚 、 ︵ 39 ︶ 一 、 長 門 龍 文 寺 吉 祥 山 之 由 来 在 之 、 徹 翁 和 尚 ヨ リ 送 之 者 也 、 此 度 相 渡 ス 、 ︵ 40 ︶ 一 、 箱 入 秘 伝 之 参 目 録 ノ 通 嫡 嗣 渡 之 、 ︵ 41 ︶ 一 、 室 内 事 伝 授 之 作 法 、 青 表 紙 折 本 也 、 光 紹 改 之 、 ︵ 42 ︶ 一 、 十 八 種 之 剣 、 ︵ 43 ︶ 一 、 牌 塔 伝 授 之 切 紙 、 壹 枚 ︵ 44 ︶ 同 多 子 塔 前 伝 付 ノ 作 法 、 一 枚 、 ︵ 45 ︶ 同 拈 奪 瞎 之 切 紙 、 壹 枚 、 ︵ 46 ︶ 同 伝 法 ノ 作 法 室 中 秘 訣 、 巻 本 也 、 ︵ 47 ︶ 同 伝 法 之 作 法 総 目 録 、 巻 本 也 、
中 世 林 下 に お け る 語 録 抄 と 密 参 録 に つ い て ︵ 上 ︶ ︵ 飯 塚 ︶ 一 三 七 ︵ 48 ︶ 同 開 山 伝 法 之 作 法 、 二 巻 、 ︵ 49 ︶ 一 、 太 白 峰 記 、 壹 冊 、 ︵ 50 ︶ 一 、 根 脚 七 道 ノ 抄 、 壹 冊 、 ︵ 51 ︶ 一 、 嗣 書 三 段 訣 、 壹 冊 、 ︵ 52 ︶ 一 、 当 山 伝 法 之 作 法 、 一 枚 、 紙 小 結 六 ツ 合 、 大 把 ニ 成 二 ツ 、 ︵ 53 ︶ 同 三 ツ 合 、 一 把 ニ 成 シ 一 ツ 、 後 住 代 々 可 見 之 、 ︵ 54 ︶ 一 、 古 三 物 、 三 通 、 是 無 用 所 、 以 上 右 者 、 参 禅 箱 之 内 ニ 在 之 、 右 者 、 皆 是 不 出 室 中 者 也 、 伝 授 之 時 可 相 渡 之 者 也 、 高 郁 改 之 此 外 方 丈 主 人 之 左 右 ニ 置 之 、 本 校 割 ニ 在 之 、 貞 享 五 戊 辰 、 十 月 吉 日 高 郁 ︵ 下 略 ︶ 江 戸 時 代 前 期 に は 、 実 に 多 く の 切 紙 や 本 参 と 言 っ た 相 伝 資 料 が 永 平 寺 に 所 蔵 さ れ て い た こ と を 知 る こ と が で き る 。 永 平 寺 所 蔵 の 三 位 之 透 に 依 拠 す る 本 参 目 録 及 び 本 参 と し て は 、 ﹃ 永 平 総 目 録 ﹄ 及 び ﹃ 伝 三 清 規 ﹄︵ ﹃ 永 平 総 目 録 御 州 本 参 ﹄ ︶ が 現 存 す る 。 ﹃ 永 平 総 目 録 ﹄ の 奧 書 に 以 下 の よ う に 見 え る 。 球 和 尚 以 自 筆 書 写 之 于 時 元 和 九 癸 亥 年 小 春 十 八 日 永 平 十 八 世 于 時 慶 長 十 一 丙 午 年 八 月 廿 三 日 祚 球 ︵ 花 押 ︶ 伝 附 祚 天 座 元 吉 祥 山 永 平 禅 寺 総 目 録 之 次 第 堅 可 秘 之 、 鎮 徳 寺 現 住 雪 菴 叟 ︵ 花 押 ︶ こ れ に よ れ ば 、 永 平 寺 一 九 世 ︵ 現 世 代 に よ る ︶ 祚 玖 ︵ 球 ︶ が 慶 長 一 一 年 ︵ 一 六 〇 六 ︶ に 祚 天 ︵ 後 の 永 平 寺 二 三 世 ︶ へ と 伝 授 し 、 そ れ を 更 に 祚 天 の 法 を 嗣 い だ 鎮 徳 寺 三 世 雪 庵 宝 積 が 元 和 九 年 ︵ 一 六 二 三 ︶ に 転 写 し た の が 、 本 書 で あ り 、 そ の 内 容 は 三 位 の 透 り の 参 に 基 づ く 話 頭 ︵ 公 案 ︶ 目 録 で あ り 、 そ の 構 成 は 以 下 の 通 り で あ る 。 ︵ 1 ︶ 自 己 、 祖 師 禅 之 入 派 、 大 入 頭 之 古 則 ⋮ ⋮ ⋮ 二 〇 則 ︵ 2 ︶ 死 活 当 頭 之 一 句 、 大 悟 之 正 当 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 一 〇 則 ︵ 3 ︶ 自 己 之 点 処 之 透 、 出 身 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 四 則 ︵ 4 ︶ 自 己 本 分 之 透 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 七 ︵ 九 カ ︶ 則 ︵ 5 ︶ 自 己 醒 処 之 透 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 六 則 ︵ 6 ︶ 承 当 下 活 句 之 透 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 七 則 ︵ 7 ︶ 自 己 目 前 一 致 之 透 ︵ 法 眼 宗 ノ 自 己 ︶ ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 一 〇 則