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日本国憲法と保育

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Academic year: 2021

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日本国憲法 と保育

馬 場 昭 夫 は じめに 新潟中央短期大学では,毎年 「保育研究会」を行なっている。平成12年11月に行なわれ た 「保育研究会」 において,私 は 「日本国憲法 と保育」 という講演を行なった1。 私 は,当短大 において,幼稚園教諭二種免許必修科 目としての 「日本国憲法」を講義 し ている。幼稚園は学校教育法上の学校であ り教育委員会,文部科学省の管轄下 にあるが, 「保育」をなす とされている2。 また,当短大では,保育士資格が同時取得できる。 ほとんどの学生が同時取得 (両免取 得) し,多数の学生が保育士 として保育所 に就職 している。保育所においては 「保育」を なす とされている3. 「幼児教育」 ということが言われるが,法律上 は 「保育

である。 現在,少子化の傾向の中,虐待 に象徴 されるような子育て困難の風潮がある。子 どもを 産み育てること,教育することについて,比較的自信を持ち,世界か らも尊敬 されていた 日本の社会 において,なぜ急速 に, このような事態が生 じたのであろうか。少子化 につい ていえば,そ もそも婚姻 に懐疑的な世代が拾頑 してきている。 また人間の子 どもに興味を 持たない人々もいる。子 どもを育てる苦労を喜びとして受 けとめる心情が弱 くなっている。 また,子 どもを育てる技術,文化の伝承が弱 まっている。家庭が事実上ないか,あって も 機能 しない場合が多 くなっている。小児科医が急速に減 りつつあり,子 どもの医療が不安 にさらされている。 また,保育所のす ぐ隣にスーパーや駐車場を平気で作 り, またそれを 許 している実態がある。 さらに子 どもをね らった殺人事件が多発 している。 これ らの事態に対 して種々の専門分野か ら原因究明,分析,対策がなされているが,私 は, これ らの事態 は, 日本国憲法 とは関係がないのであろうか,同 じ日本の社会のことが ら (日本国憲法の存在 とその もとでの子育て)なのだか ら,関係がないことはないはずで あるが,あるとすれば, どのような関係であろうかと考えてきた。 前記講演 は,そのような思 いでおこなったものである。講演の内容を要約 して記す と共 に,加筆を試みた。 - 2

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5-一 日本国憲法 と保育 現在の 「日本国憲法」 は昭和

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年)

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日に施行 され,効力を発 した。以後

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数年 にわたって改憲護憲の激 しい論争,政争の嵐の中で結局一字一句変わるところな く 存在 してきた。 この間,勿論,営々としていわゆる子育ては親,親族,保育所等福祉施設, 幼稚園,小学校等教育機関,あるいは広 く社会,国家において行なわれてきたのである。 戦争,災害等非常異常の事態の中にあって も,妊娠,出産,育児,教育 は一刻 もとどまる ことな く行なわれて きた。 この連続性の上 に, しか し,第二次大戦の終結, 日本 における 連合軍の占領,新 しい憲法の制定施行 は新 しい国の仕組み,新 しい個人や社会の価値観を もた らした。 軍事優先 に対 してまず平和を求 める価値観が導入 された。 また天皇中心 に対 して,個人 個人の自由と幸福の追求を第一 とす る価値観が導入 された4。 この大転換 は, 日本の社会の諸制度の抜本的な改革をもた らした。以後

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数年 を経 た現 在 にいたるまで,直接 の戦闘は一度 もな く,直接の戦闘で亡 くなった人 は一人 もいない。 衣食 はあ りあまり,交通通信 は発達 し,就学率 も向上 し,医療 はゆきとどき,世界一の長 寿国 となった。極東の島国で,武士が支配する封建的な身分社会か ら, わずか

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年 ほど で現在の日本 になった ことは奇跡 に近いことである。「日本国憲法」 が もた らした価値 の 転換,戦後の改革が幸 いを もた らしたといえる。子育てについては, まず教育 は有名な教 育改革が行なわれた。出産,小児医療 については大 きな前進が見 られ,小児の死亡率が低 下 しだ 。 日本の社会の中で,農村 ・都市 において受 けつがれて きた家族 (三世代以上 同 居の中 ・大家族),地域社会の育児の知恵,技術,文化 は昭和

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年代 頃 まで は健在 であ っ た。平和の継続,女性の解放,子 どもも人間 として尊重する思想,出産,小児医療の前進, 家族,地域社会を中心 とす る育児,教育の充実,出版,放送, スポーツの充実 によって, 部分的には, いろいろな問題が生 じていたが,子育ては軌道 に乗 っていたといえる。戦後 のベ ビーブーム,一世代後の第二次ベ ビーブームで明、るい子 どもの声 は社会のあちこちに 響 いていたのである。 しか し,昭和

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年代中頃

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年代) より,学校教育における種々の困難な事態が発生 し,次 に少子化の傾向が指摘 されは じめた。年号でいうな らば平成 に入 った頃か ら,西暦 でいうな らば

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年代 に入 って,前記軌道 に乗 っていた子育てをめ ぐる状況 はあちこちで 異変が起 き始めていた。農村人 口の激減,社会の都市化,いわゆる核家族化の急速な進行 女性の高学歴化,高就業率化,女性の晩婚化,未婚化,離婚の増大, これ らと平行 して確 たる原因がつかめないままに少子化が進行 していた。出産後小学校 に就学するまでの幼児, 最近では乳児 について も,育児 に迷 う,あるいは困難を訴える親の状況が現われた。 さら に育児放棄,虐待 にいたる事態が多発するにいたっている。 さらに子 どもには手を出さな

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い とい うタブーを破 って幼 い子 どもが襲われる事態が起 きている。学校教育 は, い じめ, 不登校,校内暴九 学力低下 に悩んでいる。 さらに環境の悪化 は,環境 ホルモ ン, ダイオ キ シン等,母子,父子 に異変を生 じ,医療機関においては ミスが続発 して信頼 を損 ない, また小児医療 は,小児科,小児科医院,小児科医師の減少で危機 にさらされている。社会 における倫理感,モ ラルの喪失 は,幼児の しつけの不徹底,少年の非行,犯罪の増大,凶 悪化 を もた らしている。 ところで振 り返 ってみるな らば,憲法 はやはり 「日本国憲法」であ り,一字一句変わ っ ていないのである。同 じ憲法の もとで, このような変化が起 きていることをどのように考 えた らよいのであろうか。事態の変化 は 「日本国憲法」 とは関係がないのであろうか。 ここで 「日本国憲法」 についての著書 についていうな らば,不思議 ともいえるが,一つ と して,育児,保育 に触れた ものはない6。 また,育児,保育 についての著書で も憲法 との関係 に言及 しているものに出会 わない7。 教育,労働,信教,防衛等 は憲法26条,27条,20条,9条等を挙 げて議論 されている。 単純 な質問 として,現在の子 どもをめ ぐる困難な状況 は,憲法がよいか らか,悪 いか ら か, あるいは,関係 はないのか ということはいえないことなのであろうか。頭か ら無視, あるいは噸笑すべ き問 とは思えない。論憲,創意の姿勢でのぞむべきであると思 う日 。 保育研究会 における 「日本国憲法 と保育

は, このような問題意識で行 な った ものであ る。

講演の概要 1.日本国憲法の成立過程 日本 は1945年 (昭和20年)8月15日にポツダム宣言受諾 による終戦 (敗戦)をむかえた。 10月に幣原 (Lではら)喜重郎内閣が成立 した。1946年 (昭和21年)3月憲法改正 につい てのマ ッカーサー草案が発表 され,4月には男女20才以上 による衆議院選挙が行なわれて, この国会 において,憲法改正の審議が行 なわれた。 その結果11月3日に 「日本国憲法」 は 公布 され,1947年 (昭和22年)5月3日施行 された。

2.

日本国憲法の特徴 従来, 日本国憲法の特徴 としては, いろいろな指摘がなされてきたが,私 は次 の5点を 指摘 したい。

1.

敗戦 による占領下で, しか し選挙 された国会議員 によって審議 されて制定 された。 2.国民の一人一人の個人の自由を最大限尊重す ることを基礎 としている. (前文中 「わが国全土 にわたって自由の もた らす恵沢を確保 し

,

とあ る。 また第-三条 「すべて国民 は,個人 として尊重 される。生命, 自由及 び幸福追求 に対す る国民 の権利」 とある. また第-八条か ら第二四条がある.) - 2

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7-3.

皇族を除 く国民の中での徹底 した平等の実現 (第一四条)

4.

福祉の実現 (第二五条)

5.

平和の実現をめざ している。 日本国憲法が押 しつ けられた ものであるかどうか ということは難 しい問題である。確か に占領下で制定 されたということは独立状態で自主的に制定 されたといえないわけである が, 占領下 において従来の抑圧が排除 され自由な選挙が行なわれ,民意を反映 した国会で の審議で制定 されたことを考えると, いちがいに押 しつ けられたともいえない。 従来, 日本国憲法の三原則 は平和主義,民主主義,基本的人権の尊重 といわれた。 この 指摘が間違 いであるとは思わないが, より明確 に具体的に述べるな らば, 自由,平等,宿 祉,平和の実現 といえる。 日本国憲法の数奇な運命 は, いわば産みの親 と育ての親がちが う点 にある。 幣原,吉田 茂等の英米の自由主義の影響の もとに産 まれた憲法 は,

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条問題で,吉田によってはうむ られそ うにな ったが,社会党,共産党を中心 とす る社会主義勢力によって,全力を傾 けて 守 り育て られた10。 しか し, ソ連崩壊,世界的な社会主義勢力の衰退, 国内における社会 主義勢力の衰退が起 きた。 このような中で, 日本国憲法の根本か らの見直 しが行なわれて いる。9条問題がいわゆる神学論争 にな り政争の渦中にあるために,憲法自体のより深い, あるいはより具体的な議論がなかなかで きないでいる現状があるが, この数奇な運命をた どってきた憲法を直視す ることが必要であると思 う11。

3.

日本国憲法における子 どもに関する規定

1.

自由の保障 (第-八条∼二四条),福祉 (第二五条) についての規定 は子 ど もに も 適用 され る。

2.

教育を受 ける権利,保護す る子女 に普通教育を受 けさせる義務 (第二六条)

3.

児童酷使の禁止 (第二七条三項) 日本国憲法 においては,一字一句詳 しく見てみて も子 どもに関す る規定 は少 ない。 ずば り用語 として書かれているのは,二七条三項の 「児童」だけである。

4.

諸外国の憲法における子 どもに関する規定 3において日本の憲法の条文 について見たように,憲法において子 どもについてどのよ うな規定があるかを数 ヶ国について見てみる12。 アメ リカ合衆国 ない カ ナ ダ ない イギ リス連合王国 ない イタ リア共和国 イタ リア共和国憲法 第二章 倫理的 ・社会的関係

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第二九条 〔家族の権利の保障,婚姻 における両性の平等 〕 ① 共和国は婚姻 に基づ く自然共同体 としての家族の権利を認める。 ② 婚姻 は,家族の一体性を保障するために法律で定める制限の下 に,配偶者相 互の倫理的および法的平等 に基づ き,規律 される。 第三〇条 〔子供 に対す る親の義務 と権利,非嫡出子の保護等 〕 ① 子供を育て,教え,学ばせることは両親の義務であり,権利である。子供が 婚姻外で生 まれた ものであって も,同 じとする。 ② 両親が無能力の場合 は,前項の任務を果たす ものを法律で定める。 ③ 婚姻外で生 まれた子供 に対する法的および社会的保護 は法律で定める。 この 保護 は適法な家族の成員の権利 と両立するものとす る。 ④ 父の捜索 に関す る規定 とその制限は法律で定める。 第三一条 〔家族形成への配慮,母性 ・児童 ・青年の保護 〕 ① 共和国は,経済的および他の措置により,家族の形成およびそれに必要な任 務の遂行を,助 ける。大家族 に対 しては特別の配慮を行なう。 ② 共和国は母性,児童,青年を保護 し, この目的に必要な施設を助成す る1… 。 ドイツ連邦共和国 ドイツ連邦共和国基本法 - 基本観 第六条 〔婚姻,家族,母および子の保護 〕 (1)婚姻および家族 は,国家秩序の特別の保護を受 ける。

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)

子供の育成および教育 は,両親の自然的権利であり,かっ,何よりもまず両 親 に課せ られている義務である。 この義務の実行については,国家共同体が こ れを監視す る。 (3)子供 は,教育権者 に故障がある場合, または子供がその他の理由か ら放置 さ れるおそれのある場合 には,法律の根拠 に基づいてのみ,教育権者の意思 に反 して これを家族か ら引 き離す ことが許 される。 (4) すべての母 は,共同社会の保護 と配慮 とを請求することがで きる。

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)

嫡出でない子 に対 しては,立法によって,肉体的および精神的成長について, な らびに社会 におけるその地位 について,嫡出子に対すると同様の条件がつ く られなければな らない。 フランス共和国 フランス第五共和国憲法 ない フランス第四共和国憲法

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年)では,前文で,子供,母親 に対す る健康の保 護等を記 している。 - 2 9

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-中華人民共和国 中華人民共和国憲法 第四九条 〔婚姻 ・家族 ・老人 ・婦人 ・児童 に対す る配慮 と保護 〕 婚姻,家族,母親および児童 は,国家の保護を受 ける。 夫婦 は,共 に計画出産を実行す る義務を有する。 父母 は,未成年の子女を扶養 し教育する義務を有 し,成年子女 は,父母を扶養 し扶助す る義務を有する。 婚姻の自由に対する侵害を禁止 し,老人,婦女および児童 に対す る虐待を禁止 す る。

5.

幼児保育,育児をめ ぐる法体系 日本国憲法第二四条 は家族生活 における個人の尊厳 と両性の平等 を規定 した15。 この規 定 に合わせるように民法の第四編親族,第五編相続が全面的に改正 された16。 そ して, こ れ らの実務,政策の実行 は法務省 (一部 は厚生省 (平成

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月よ り厚生労働省)) が行 い, また新設 された家庭裁判所が重要な役割を担 った。憲法 は理想を追及 して体系的に作 られた ものであ り, この憲法に合わせて民法,刑法,国家行政組織法等重要法令が全て改 廃 され,中央,地方の行政官庁 も改廃 された。憲法二四条を担当 した機関は法務省,家庭 裁判所であったといえる。 同 じように憲法第二五条 は生存権,国の国民生活環境保全向上義務 を規定 した17。 この 規定 にもとづいて児童福祉法が制定 され, この中に保育所が規定 された。 これ らの実務, 政策の実行 は厚生省 (厚生労働省)が行なってきた。 憲法第二六条 は教育を受 ける権利,教育の義務を規定 した18。 この規定 に もとづ いて教 育基本法,学校教育法が制定 され,幼稚園 は学校教育法上の学校 として,学校教育法に規 定 された。 これ らの実務,政策の実行 は,文部省 (文部科学省)が行な ってきた。 以上 をまとめて示す と以下のようになる。 憲法

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条 民法 夫婦,親子,扶養 (法務省,厚生省 (厚生労働省),家庭裁判所) 25条 児童福祉法 保育所 (厚生省 (厚生労働省)) 26条 教育基本法,学校教育法 幼稚園 (文部省 (文部科学省)) 幼児の保育,育児 については,関係す る憲法の三つの条文 に合わせて,所管官庁が三種 に分かれた。特 に25条一児童福祉法一保育所一厚生労働省,26条一学校教育法一幼稚園一 文部科学省の図式がで きあが り,固定化 して しまっているr。同 じ日本の中で,統一 した政 府 の もとで政治,行政が行われているのであるか ら,子 どもの幸せのために総合的にはよ いことが行われているであろうと考えることが良識,常識であるが,

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年以上 も固定化 し て,その間,行政機構 は肥大化 し,関連す る法律,施設 も多様化,多量化 し, また子 ども をめ ぐる状況 も変転 している中で,必ず しもそのようには言えないと思われる。

(7)

む しろ,保育所 と幼稚園をめ ぐる厚労省 と文科省 の確執 は,現在 の 日本の子 どもをめ ぐ る深刻 な事態 を 目の前 に して,有効 な解決策 を提示 し実行す ることを深 く妨 げているよ う に思われ る。 ここで振 りかえ って, なぜ にこのような固定化,硬直化が起 きているのか考えてみ るこ とが必要 である。 これまで見て きたよ うに憲法の条文 に合 わせて関係法令があ り,担当,所管官庁があ っ た。憲法の条文 が変 わ らないと法体系,所管官庁が変わ らないとい う面があるのであ る。 日本国憲法をめ ぐって は第九条 〔戦争 の放棄,戦力および交戦権の否認 〕について,改正, 護持の両論がす るど く対立 し,戦後政治の最大 の争点 とな って きた。第九条等 を絶対 に護 持 しよ うとす る論者の中には, もし,他 に改正すべ き点があった として も, その改正作業 にまざれて第九条が改正 され ることを恐れて,憲法の改正 に強 く反対す るとい う論 を展開 す る人 々が多数 いる。 いわゆる, た らいの水 と共 に赤 ちゃん も流 して しまう恐れがあ ると い う論である。一字一句で も改正 とい うものに取 り組む ことを恐れ,拒否す るのである。 改憲か護憲か とい うよ りも,論憲,創意,増憲がいわれている。子 どもが幸せ になるに はどのよ うな憲法がよいのか, どのような法律,制度がよいのか,担当す る行政官庁 はど のよ うに した らよいのか,真剣 に考える時期 に来ていると思われる。

6.

新 しい提案 憲法 において,幼児,児童,子 どもにつ いての規定を充実 させ ることがで きることが望 まれ る。 しか し,そのよ うな ことが実現す る前であ って も,現在 の憲法の条項 の もとで も 何がで きるか,考えなければな らない。 次 の四項 目の提案 を試 みた。

1.

幼児保育法 (仮称) の制定 (家庭での育児支援,保育所,新設 の (仮称)幼児園, 場合 によっては幼稚園 も含む。)

2.

幼児園 (仮称) の新設 (希望す る幼児が入園で き,必要 な教育的配慮 も行 う。)

3.

地方 自治体 において幼児保育委員会 (仮称) の設置

4.

文部省 (文部科学省), 厚生省 (厚生労働省) か ら独立 した子 ど もにつ いて の庁 (仮称 子 ども庁) の設置 (内閣府 にお くことが考え られ る。) おわ りに 前記講演か ら一年近 く経っが乳幼児 をめ ぐる状況 は,部分的な対処,改善 は見 られ るが 大 きくは変 わ っていない。子 どもの幸せのために憲法 まで も視野 に入れた変革,改善 が早 :急 に求 め られていると思われ る. (平成

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月脱稿) -3

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1-注 1.平成12年度 「保育研究会」 平成12年11月16日 「日本国憲法 と保育」 は約30分の講演だ った。 2.学校教育法第七章幼稚園第七七条 3.児童福祉法第三章事業及 び施設第三九条 4.このよ うな新 しい価値観 を柱 とす る新 しい日本の社会,国家の象徴 として,天皇 は位置づ け ら れた。 5.しか し,優生保護法 による妊娠中絶の容認 は,個人 に も家庭 に も,社会 に も暗 い影 を もた らす こととな った。 6.「憲法」 (第三版) (現代法律学講座)佐藤幸治 1999青林書院 「憲法」辻村みよ子 2000 日本評論社 7.看護教育 については,「関係法規」 という科 目の教科書 にお いて明確 に憲法25条 を基礎 とす る ことを説 いている。例えば,「関係法規」 (系統看護学講座)2001年 医学書院 8.「増憲」 (現在の憲法の条文 に,必要な条文を付 けたす。)を主張す る人 もいる。 9.本稿 においては 子育て

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出産後成人 に達す るまでの養育 育 児

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出産後小学校就学前 までの主 として家庭 における養育 保 育

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出産後小学校就学前 までの主 として保育所,幼稚園 における養育 として使 い分 けた。 10.憲法擁護各界連絡会議が存在 した。 ll.「「日本国憲法」講義の概要

馬場 昭夫 暁星論叢第46号 (平成12年6月)参照 12.「解説世界憲法第 3版

樋 口陽一,吉田善明編 三省堂 13.イタリア憲法原文 は次の通 りである。 Codiceconstituzionale

Art.29 LaRepubblicariconosceidirittidellafamigliacomesocieta.naturalefandatasuュ matrimonio.

Ilmatrimonioとordinatosull'eguaglianzamoraleegluridicadeiconlugl,comilimiti stabilitidallaleggeagaranziadell'unitafamiliare.

Art.30 丘dovereedirritodeigenitori,mantenere,istruireededucareifigli,anchesenati fuoridelmatrimonio.

Neicasidiincapacita.deigenitori,laleggeprovvedeachesianoassoltiiloro compiti.

Laleggeassicuraaifiglinatifuoridelmatrimonioognitutelagluridicaesociale,

compatibileconidirritideimembridellafamiglialegittima. Laleggedettalenormeeilimitiperlaricercadellapaternitと.

Art.31 LaRepubblicaagevolaconmisureeconomicheealtreprovvidenzalaformazione dellafamigliael'adempimentodeicompitirelativi,conparticolarerlgllardoalle famiglienumerose.

Proteggelamaternitと,1'infanziaelagioventも,favorendogliistitutinecessaria talescopo.

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14.イタリアの憲法の歴史 については,「イタリア憲法史」 井 口文男 1998 有信望 参照 15.日本国憲法第二四条 ① 婚姻 は,両性 の合意のみに基づいて成立 し,夫婦が同等の権利を有す ることを基本 と して, 相互の協力により,維持 されなければな らない。 ② 配偶者の選択,財産権,相続,住居 の選定,離婚並 びに婚姻及 び家族 に関す るその他 の事項 に関 しては,法律 は,個人 の尊厳 と両性の本質的平等 に立脚 して,制定 されなければな らない。 16.民法第四編親族 第-章 総則 第二章 婚姻 第三章 親子 第四章 親権 第五章 後見 第六章 扶養 17.日本国憲法第二五条 (む すべて国民 は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 ② 国は,すべての生活部面 について,社会福祉,社会保障及 び公衆衛生の向上及 び増進 に努 め なければな らない。 18.日本国憲法第二六条 ① すべて国民 は,法律 の定めるところにより,その能力に応 じて, ひとしく教育 を受 け る権利 を有す る。 (塾 すべて国民 は,法律の定 めるところにより,その保護する子女 に普通教育 を受 けさせ る義務 を負ふ。義務教育 は, これを無償 とす る。 -3

参照

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