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ダイズにおける過湿条件下での根の機能発現に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

氏      名 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号

学位授与年月日

学位授与の要件

学位論文題 目

学位論文審査委員 ば       け   い   り   ん 馬         啓   林

博士(農学)

甲 第358 号

平成17年 3月15日

学位規則第4条第1項該当

ダイズiこおける過湿条件下での根の機能発現に関する研究 (StudiesontheFunctionalExpressionofRootSystem underExcessiveSoilWaterinSoybean(Glycinemax (L.)Merr.))

昇亨肇

田 削 橋

中小高

中 野 淳 一   山 口 武 視

学 位 論文 の 内 容 の 要 旨

日本・中国をはじめとするアジアモンスーン地域におけるダイズ作では,生育初期と梅雨期と 重なり、しばしば湿害が発生し,これが生育の不安定性や収量低下の大きな一因となっている。 ダイズの根系は他の作物に比べて酸素要求量が多く,比較的湿害を受けやすい作物と言われ,特 に生育初期は過湿に弱いことが知られている。湿害の発生は根の機能低下に起因すると考えられ ているが,根に関する調査・測定手法の難しさゆえに根の生理活性および養分吸収能と湿害とを 結びつけた研究は意外と少ない。 そこで,本研究ではまず簡便な調査形質であるダイズ茎基部からの出液速度で根の生理活性を 把握するための条件を明らかにしようとした。そして,過湿条件下での乾物重や菓身窒素含有率 の変化と出液速度および出液中窒素量の動態を調査することで,出液を用いた過湿による根系機 能低下程度の評価の有用性を検討した。さらに,過湿条件下での乾物増加量の品種間差異を光合 成関連形質と出液速度との関連性から解明し,過湿条件下での根の機能発現の意義を考察した。 1.ダイズ幼植物における茎基部からの出液速度に関与する要因 ダイズ幼植物を用いて出液速度に関与する要因を明らかにし,根の呼吸速度と出液速度との関 係を検討した。出液速度は土壌水分の影響を強く受け,土壌含水比が40%以下になると,出液速 度が指数関数的に減少し,30%以下ではほとんど出なくなった。また,午前10時に切断した場合 が最も高い値となり,茎切断後の出液速度は急速に低下し,6時間後にほぼ一定となった。さら に,出液速度は地温の影響を受け,25℃~30℃ではほぼ一定の値を示した。生育に伴う出液速度

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の変化は,花芽分化期の出芽後45日ごろ最大となり,その後は低下した。その変化は呼吸速度の 推移と一致した。 以上より,土壌水分を約55%,地温25℃に保ち,午前10時に切断した後1時間日の出液速度は, 個体当たり根の呼吸速度と密接な関係にあることが認められた。個体当たり根の呼吸速度は「根 重当たり呼吸速度×根重」で示されるので,この2要因について検討した結果,出液速度には根 重の方が強く関与するが,同じ根量であれば,根の呼吸活性の高いものほど出液速度が高いこと を明らかにすることができた。 2.ダイズ茎基部からの出液を用いた過湿による根系機能低下の評価 ダイズの湿害は根の活力低下が関与するため,出液を用いて過湿による根系機能低下の評価が 可能かどうかを検討した。過湿区の乾物重は対照区と有意な差は認められなかったが,菓身窒素 含有率は明らかな低下が認められた。出液速度は菓身窒素含有率よりも早く過湿処理に反応し, 処理後6日目より低下が認められた。さらに出液中全窒素量では処理後2日目より低下が認めら れ,処理終了時まで常に過湿区が低く推移した。根粒由来の窒素吸収は過湿条件下では著しく抑 制されたが,根粒由来窒素の多少に関わらず出液中全室素量で養分吸収能の把握は可能であり, 出液速度および出液中全窒素量は過湿によるダイズ根系の機能低下程度を評価する有用な指標と なりうることが示唆された。 3.ダイズ幼植物における耐湿性の品種間差異 耐湿性の異なる品種を選抜するために国内外より収集したダイズ約50品種についてスクリー ニングを行った。対照区(C)に対する処理区(T)の地上部乾物重比(T/C)を耐湿性の指標とし て,1次選抜で20品種に絞り込み,2次選抜で8品種を選抜し,これらを圃場栽培して耐湿性の 品種間差異を検討した。過湿条件下における地上部乾物重比は品種間で大きな変動幅を持つもの の,品種の反応が試験ごとで大きく異なり,品種間の耐湿性の強弱を特定できなかった。 4.過湿条件下における乾物生産量と根の機能発現との関連性 過湿処理期間内の乾物増加量(』DW)に差をつけるために,ダイズ40品種を供試し,対照およ び過湿区をこみにして』DWに関与する要因を明らかにし,これと出液速度との関連性を検討した。 』DWは葉身窒素含有率および葉面積の両者が密接に関与していた。すなわち,過湿条件下で』DW を落とさないためには,葉身窒素含有率を高く保ち,多くの葉面積を確保しておくことが重要で あるといえた。そして,この両者と出液速度との間にはそれぞれ高い相関関係にあることを認め た。これは,出液速度と出液中全窒素量が密接な関係にあり,出液中全窒素量と菓身窒素含有量 とが高い相関関係にあることから裏付けられた。 以上より,過湿条件下における』DWには出液速度に代表される根の機能が強く関与しているこ とが明らかとなった。このことは,適切な作物管理技術を通して根の機能をより強く発現させる ことができれば,過湿条件下でも乾物生産量を十分に確保することができ,湿害を回避できる可 能性が示唆された。

(3)

以上のように、本研究では出液速度で根の生理活性を把握するための条件を定め,過湿による 根系機能低下程度の評価に出液を用いることは有用であることを明らかにした。さらに,過湿条 件下での乾物増加量を低下させないためには、光合成関連形質の維持・確保が重要であり、出液 速度が関与していることを明らかにした。これらより過湿条件下での湿害を軽減するためには培 土のような根の機能を強化する栽培管理技術を適用することが重要であると考察した。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 日本・中国をはじめとするアジアモンスーン地域におけるダイズ作では生育初 期と梅雨期が重なり,しばしば湿害が発生し,これが生育の不安定性や収量低下 の大きな一因となっている。ダイズの根系は他の作物に比べて酸素要求量が多く, 比較的湿害を受けやすく,特に生育初期は過湿に弱いことが知られている。湿害 の発生は根の機能低下に起因すると考えられているが,根に関する調査・測定手 法の難しさゆえに根の生理活性および養分吸収と湿害とを結びつけた研究は意外 と少ない。 そこでダイズの根系の生理活性,養分吸収を茎基部から出液の速度,窒素含量 で評価し,光合成関連形質,乾物増加量との関連を検討した。本研究で得られた 結果の概要は以下の通りである。 1.ダイズ幼植物における茎基部からの出液速度に関与する要因 簡便に根の機能を測定する手法としてダイズ茎基部からの出液速度に着目し, これに関与する要因を明らかにし,根の呼吸速度と出液速度との関係を検討した。 出液速度は土壌水分の影響を強く受け,土壌含水比が40%以下になると,出液速 度が指数関数的に減少し,30%以下ではほとんど出なくなった。また,出液速度 は午前10時に切断した場合が最高となり,茎切断後急速に低下し,6時間後にほ ぼ一定となった。さらに,出液速度は地温の影響を受け,25℃~30℃ではほぼ一 定の値を示した。生育に伴う出液速度の変化は,花芽分化期の出芽後45日ごろ最 大となり,その後は低下した。その変化は呼吸速度の推移と一致した。これらの 条件を統一して測定した出液速度は,個体当たり根の呼吸速度と密接な関係にあ ることを認めた。個体当たり根の呼吸速度は「根重当たり呼吸速度×根重」で示 されるので,この 2要因について検討した結果,出液速度には根重の方が強く関 与するが,同じ根量であれば,根の呼吸活性の高いものほど出液速度が高いこと を明らかにした。

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2.ダイズ茎基部からの出液を用いた過湿による根系機能低下の評価 過湿区の出液速度は処理後6 日目より低下が認められ,その後菓身窒素含有率 の明らかな低下が認められた。さらに出液中全窒素量では処理後2 日目より低下 が認められ,処理終了時まで常に過湿区が低く推移した。根粒由来の窒素吸収は 過湿条件下では著しく抑制されたが,根粒由来窒素の多少に関わらず出液中全窒 素量で養分吸収能の把握は可能であり,出液速度および出液中全窒素量は過湿に よるダイズ根系の機能低下程度を評価する有用な指標となりうることが示唆され た。 3.ダイズ幼植物における耐湿性の品種間差異 耐湿性の異なる品種を選抜するために国内外より収集したダイズ約 50 品種に ついてスクリーニングを行った。対照区(C)に対する処理区(T)の地上部乾物 重比(T/C)を耐湿性の指標として,1次選抜で20品種に絞り込み,2次選抜で8 品種を選抜し,これらを圃場栽培して耐湿性の品種間差異を検討した。過湿条件 下における地上部乾物重比は品種間で大きな変動幅を持つものの,品種の反応が 試験ごとで大きく異なり,品種間の耐湿性の強弱を特定できなかった。 4.過湿条件下における乾物生産量と根の機能発現との関連性 ダイズ40品種を供試し,過湿処理期間内の乾物増加量(』DW)に注目し,』 DW に関与する要因を明らかにし,これと出液速度との関連性を検討した。過湿 条件下で』DW を落とさないためには,菓身窒素含有率を高く保ち,多くの葉面 積を確保することが重要であった。この両者と出液速度との間にはそれぞれ高い 相関関係にあることを認めた。これは,出液速度と出液中全窒素量が密接な関係 にあり,出液中全室素量と菓身窒素含有量とが高い相関関係にあることから裏付 けられた。以上より,過湿条件下における』DW には出液速度に代表される根の 機能が強く関与していることが明らかとなった。このことは,適切な作物管理技 術を通して根の機能をより強く発現させることにより湿害を回避できる可能性が 示唆された。 以上のように,本研究では過湿による根系機能低下程度の評価に出液を用いる ことは有用であることを明らかにした。そして,過湿条件下での乾物増加量を低 下させないためには,光合成関連形質の維持・確保が重要であり,それには出液 速度で代表される根の生理的機能が強く関与していることを明らかにした。これ らより過湿条件下での湿害を軽減するためには培土のような根の機能を強化する 栽培管理技術を適用することが重要であると考察した。

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てのように,本研究はダイズの湿害発生と根の生理的機能との関連性について 検討したもので,この成果はアジアモンス.トン地域におけるダイズ作の収量向上 のための栽培技術の確立に貴重な基礎資料となるものであると高く評価し,学位 論文として十分な価値を有するものと判定した。

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