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児童の学校適応感の高まりと自己受容を促す支援のあり方に関する研究-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学教育実践総合研究(Bull. Educ. Res. Teach. Develop. Kagawa Univ.),26:133-146,2013

児童の学校適応感の高まりと自己受容を促す支援の

あり方に関する研究

和泉 裕子・七條 正典

*   (高松市立太田小学校)(附属教育実践総合センター) 761-8071 高松市伏石町84-1 高松市立太田小学校 *760-822 高松市幸町1-1 香川大学教育学部   

A Study about How to help Children to feel They are

fitting in at Elementary School and

Encourage Self-Acceptance

Yuko Izumi and Masanori Shichijo

Ota Elementary School, 845-1 Huseishi-cho, Takamatsu 761-8071

Faculty of Education, Kagawa University, 1-1 Saiwai-cho, Takamatsu 760-8522

要 旨 本研究では,Y小学校の通常学級の担任と児童を対象に,児童の学校適応感の高ま りと自己受容を促す支援のあり方に関する具体的な方策を調査し,その傾向と,より効果の ある支援について考察を行った。その結果,①教師は,重要な他者として,また学級集団の 経営者としての役割を自覚し支援を工夫することと,②発達段階(自己定義の中心的基準) を踏まえた支援を行うことの重要性が確認された。 キーワード 自己受容 学校適応感 Q-U 自己概念

1 問題の所在

 全国で,不登校や暴力行為等,子どもの不 適応行動の発生件数が高い水準で推移してお り(文部科学省 2010),学校現場では,その対 応に追われている。一方,大半の子どもは,不 適応行動の表出が見られず,適応していると言 える状況である。適応状態には,他者から見 た「客観的適応状態」と,個人が自己の良い状 態を意識している「主観的適応状態(適応感)」 がある(大久保 2010)。真に学校に適応してい る「主観的適応状態(適応感)」になることが 重要であるため,本研究では,学校における 「主観的適応状態(適応感)」を「学校適応感」 と表現することとし,そのような学校適応感を 高めるためにはどのような支援が必要かという ことについて考えていくこととする。  「楽しい学校生活を送るためのアンケートQ -U」(以下,「Q-U」)の資料によると,小 学校上学年(200全国平均)において,全体の 62%の子どもたちは,「学級生活満足群」に入っ ておらず,内的に学校適応感を持ちにくい状態 にあると考えられ,将来は不適応行動の表出に -133-

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している人は自己受容している人であると述べ ている。つまり,子どもが学校適応感を持ちに くい内的要因の一つとして,子どもの自己受容 の度合いが大きく影響していると考えられる。  このことから,子どもたちの学校適応感を高 めるためには,自己受容を促すことが効果的支 援であることが示唆されよう。このことに関し ては,これまでも,学校現場において,様々な 取り組みが実践されているが,本当に有効な支 援の在り方に関する検討は必ずしも十分になさ れていない。

2 目的と方法

(1)目的  本研究では,子どもたちの学校適応感を高め るための自己受容を促す支援のあり方について 検討することを目的とする。そのため,児童の 自己受容を促す支援について,教師が行ってい る具体的な方策を調査し,その傾向とより効果 のある支援について検証することとする。 (2)方法 ○調査対象 ・自己受容を促す支援についてのアンケート調 査;Y小学校の通常学級の担任23名(男性4 名,女性1名) ・「Q-U」についての調査;Y小学校の児童 818名 ○調査方法 ・現在の担任している学級で行った自己受容を 促す支援についてのアンケート(自由記述); 実施日:平成23年2月~3月 ・「Q-U」についての調査;実施日:平成22 年6月と12月

3 研究の背景

(1)自己受容について  「自己受容」と類似の言葉として「自尊心」「自 尊感情」「自己肯定感」が挙げられるが,「自尊 心」と「自尊感情」は同義と考える。『心理学 辞典』(1)によると,「自己受容」について 「自尊感情と同じ意味で使用される場合もある」 と示されていることから,「自己受容」と「自 陥る可能性があると言える。また,不安定な心 の状態は,生きる力をはぐくむことやよりよく 成長することを妨げる要因にもなりうる。した がって,学校適応感を持ちにくい状態にあると 考えられる子どもたちに対して学校適応感を高 める支援を行うことは,子どもたちの不適応行 動を予防するとともに,よりよい成長を促すた めの開発的な支援になるといえよう。  ところで,子どもが学校適応感を持ちにく い要因になっているのは何であろうか。篠原 (18)は,適応とは,個人と環境の相互作 用であると述べている。また,大貫・佐々木 (18)・戸川(16)は,適応とは,生体が環 境からの要請に応じると同時に,自分自身との 要求も充足しながら環境と調和した関係を保つ ことであり,その過程も含まれると考えてい る。これらのことから,子どもが学校適応感を 持ちにくい要因として,①子どもたち自身の持 つ内的要因②子どもたちを取り巻く環境による 外的要因③個と環境の関係を保つためのプロセ スという3つが考えられる。これらの要因の中 でも,筆者は,「主観的適応状態」を「学校適 応感」ととらえていることから,特に,内的要 因について着目することとする。その内的要因 の内,『心理学辞典』(1)によれば,自発的 な行動変化の原点となり,対人関係の基盤とな るという意味で適応と深く関わっているものと して,「自己受容」が説明されている。また, カーシェンバウムら(2001)は,その個人にとっ て,「最大限の適応」をなし,「よき生き方」を

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尊感情」もほぼ同じ意味として捉えることとす る。次に,「自己肯定感」について,田中(2010) は,「『自尊心』と同様に,自己概念の評価的側 面であり,『自尊心』の下位概念である」と示 していることから,「自己肯定感」と「自尊心」 は強く関係しているといえる。以上のことを踏 まえ,「自尊心」「自尊感情」「自己肯定感」に 関わる様々な研究を参考にしつつ,「自己受容」 を促すための支援を中心に検討していくことと する。 (2)自己受容の形成要因  それでは,自己受容を促すためにどのような 支援が望ましいのであろうか。  榎本(18)によると,自己概念とは「男性 である,1歳である,おしゃべりである」等, 自己に対する記述的側面である。一方,自己評 価は,そのような記述的側面に対する具体的評 価である。そして,自尊感情は,多くの自己評 価的経験の積み重ねを通して形成された自己評 価的な感情の複合体であり,ある程度一貫性を もった評価的感情の流れであるという。  一方,遠藤(12)は,現実自己と理想自己 の差異得点と自尊感情との関係を検討し,個人 にとって重要な側面では差異得点と自尊感情と の間に強い相関があるのに対して,個人にとっ てあまり重要でない側面においてはほとんど相 関がないことを確認している。  以上のことから,自己受容を促すためには, 子ども自身が重要性を認めるような自己評価的 経験を多く積み重ねることが条件になるといえ よう。  では,どのような自己評価的経験を積み重ね ることが必要であろうか。自己評価の形成要因 について,榎本(18)は,「A他者から与え られた評価や評価的態度」「B他者との比較」「C 実際の成功・失敗体験」「D理想とする自己像」 との比較の4点を挙げている。 A 他者から与えられた評価や評価的態度  他者から評価を与えられることは,現実の自 己に関する評価につながる。  マズロー(14)は,自尊心は基本的欲求の 最上層に位置づけられる「承認の欲求」の中に 含まれると定義しており,他者から認められる 経験は,自己評価を肯定的に形成し自尊心を 高めるといえよう。さらに,榎本(2010)は, 「子どもは,評価を与える他者が自分を受け入 れているか,自分のことを思ってくれているか といった言葉を超えた心の構えを感じとる力を 持っている」と述べている。このことから,他 者による評価的態度は,好意的である必要があ るといえる。以上のことから,肯定的な自己評 価が形成されるためには,「他者から与えられ た評価や評価的態度」が肯定的・好意的なもの であることが重要だといえよう。 B 他者との比較  他者との比較は,自己評価に必ず付随してく るものである。眞榮城(2010)は,小学校4年生 から6年生を対象にした調査により,子どもの全 体的自己価値観に影響を及ぼすものとして,容姿 評価,友人関係評価,学業能力評価を挙げている が,これらの評価は,友人との比較によって行わ れる側面が強いといえよう。また,児童期の自己 概念は,児童前期には自己を身体的側面からとら えることが多いのに対して,児童中期くらいから は,内面的自己概念が形を取り始めるとし,外見 的自己概念から内面的自己概念に発達していくと されている(榎本18,図2参照)。つまり,児 童期は,他者との比較の中で外見的自己概念を形 成し,自分自身の認識を深めていく時期であると いえる。眞栄城の調査結果にあるように,子ども は比較的認識しやすい側面の評価に強く影響され ているが,このことは肯定的な評価ばかりでなく 否定的な評価も得やすいことを示しており,心理 的に傷つく危険性が含まれていることが懸念され る。繰り返し形成された否定的な自己評価は劣等 感を生み,その後の内面的自己概念の形成に悪影 響を与えることになる恐れがある。したがって, 外見的自己概念に関わる評価について否定的にな らないよう,十分に配慮される必要がある。さら に,眞栄城も指摘していることであるが,外見的 自己概念に関わる評価は,児童期の子どもにとっ て分かりやすく受け入れやすいので,肯定的な評 価については,できるだけ多く与えることが肯定 的な自己概念の形成に効果的であるといえよう。 -13-

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C 実際の成功・失敗体験  青木(2010)は,体験のプロセスの中で,失 敗も成功も共有することができる他者の存在が 大切であると述べている。また,安部(2010) は,「待たれた経験は,自己肯定感の根っこと なる。やがてひとりで世界を歩んでいく日のた めの,自分の中の確かな軸となる。」と述べ, 子どもが自分で考え,試行錯誤を繰り返し,失 敗に学びながら成長していく大切さを理解した うえで,子どもに寄り添いながら待つことの重 要性を指摘している。これらのことから,「実 際の成功・失敗体験」の第一の条件として,体 験する過程に寄り添い見守ることができる他者 の存在を挙げることができよう。  一方,遠藤(2010)は,私的な親密な関係の 大切さは明白だが,それだけでなく,社会的価 値を少しでも具現しようと努力する人など,一 市民として大きな社会とよい関係を取り結ぶこ とも,自己肯定感を支える重要な柱であると説 いている。岩井(2006)は,自己受容の前提条 件の大部分は,共同体感覚であり,自己受容 は,自分が家庭やクラスの共同体の一員として 居場所(所属感)を持ち,共同体に対して積極 的に貢献することを目標としていると述べてい る。したがって,「実際の成功・失敗体験」の 第二の条件として,自分の所属する集団に対し て子ども自身が貢献感を味わえるようなものに することが考えられる。 D 理想とする自己像との比較  榎本(2010)は,「抽象度の高い理想自己像は, 思春期あたりから形成されるが,具体的な身体・ 行動レベルでの理想自己像は,児童期からすで に持っている」と述べている。このことに関連 して,岩堀(200)は,自己肯定感の形成のた めに,自らを振り返り成長を実感できる,「パー ソナルポートフォリオ」の作成を推奨している。 これらのことから,特に,児童期の子どもには, 具体的な事柄において,過去の自分と比較して 理想とする自己像に向かってどんどん伸びてい る,うまくなっているという実感が持てるよう にしていくことが有効であるといえよう。  また,榎本(18)は,「理想とする自己像」 の一つとして「他者から期待されている自己像」 があると分析している。その「他者からの期 待」に関して,青木(2010)は,期待されるこ とで自分は期待されるに値する存在であると感 じることができるとともに,期待されることは 社会的に望ましい行動をとるための指針になる と述べ,期待が持つ重要性について指摘してい る。しかしその一方,青木(2010)は,期待に 応える過程において子どもが大きな不安を持つ 場合があること,また,期待の高低によって子 どもが重圧あるいは否定的感情を感じること等 を考慮しておく必要があると述べている。つま り,他者から期待されることは重要であるが, 子どもの実情に合わせて適切であることが望ま しく,期待をその都度修正していく柔軟な姿勢 が求められているといえよう。  以上のことから,自己受容を促すためには, 以下のような自己評価的経験を積み重ねる必要 が求められているといえよう。 〈条件A〉  「他者から与える評価や評価的態度」は,肯 定的・好意的なものになるようにする。 〈条件B〉  「他者との比較」による外見的自己概念に関わ る評価について否定的なものにならないように配 慮するとともに,外見的自己概念に関わる肯定的 な評価については,できるだけ多く与えること。 〈条件C〉  「実際の成功・失敗体験」は,所属する集団 に対して貢献感を味わえるようなものにすると ともに,過程に寄り添い見守ることができる他 者の存在が必要である。 4 㕍ᐕᓟᦼᗧᔒ⊛ㆬᛯ䉇୘ੱ⊛䊶୶ℂ⊛ၮḰ䉕෻ᤋ䈜 䉎り૕⊛ዻᕈ ㆬᛯ䉇୘ੱ⊛䊶୶ℂ⊛ ၮḰ䉕෻ᤋ䈜䉎ⴕേ ․ᕈ ␠ળ⊛㑐ଥ䉇␠ળ⊛䊶 ᕈᩰ⊛․⾰䈮㑐䉒䉎 ୶ℂ⊛䊶୘ੱ⊛ㆬᛯ ାᔨ૕♽䋬୘ੱ⊛䈭 ືቇ䋬⥄ಽ⥄り䈱ᕁ ⠨ㆊ⒟ 3 㕍ᐕ೨ᦼ ␠ળ⊛㝯ജ䉇␠ળ⊛ ⋧੕૞↪䈮ᓇ㗀䈜䉎 り૕⊛ዻᕈ ␠ળ⊛㝯ജ䉇␠ળ⊛ ⋧੕૞↪䈮ᓇ㗀䈜䉎 ⴕേ․ᕈ ␠ળ⊛䊶ᕈᩰ⊛․⾰ ␠ળ⊛ᗵฃᕈ䋬䍘䍮䍋䍤 䍗䍎䍚䍌䍻⢻ജ䋬䈠䈱ઁ䈱 ᔃℂ⊛஥㕙䉕䉅䈧␠ ળ⊛ᛛ⢻ 2 ఽ┬ਛᦼᓟᦼ ᵴേᕈ䈮㑐䉒䉎り૕⊛ዻᕈ ઁ⠪䈫㑐䉒䉎⢻ജ ઁ⠪䈱෻ᔕ䋨ᛚ⹺䉇ਇᛚ⹺䋩䉕⠨ᘦ䈚䈢ⴕേ ⍮⼂䋬₪ᓧ䈘䉏䈢ᛛ ⢻䋬േᯏ䈨䈔䋬ⴕേ䈮 ⚿䈶䈧䈇䈢ᖱേ⁁ᘒ 1 ఽ┬೨ᦼᐜఽᦼ り૕⊛ዻᕈ䉇ᚲ᦭‛ ౖဳ⊛ⴕേ ․ቯ䈱␠ળ㑐ଥ䉇␠ળ㓸࿅䈱ᚑຬ䈪䈅䉎䈫 䈇䈉੐ታ 䈠䈱䈫䈐䈬䈐䈱᳇ಽ䋬 ᗵᖱ䋬ᅢ䈐ህ䈇 り૕⊛⥄Ꮖ ⴕേ⊛⥄Ꮖ ␠ળ⊛⥄Ꮖ ᔃℂ⊛⥄Ꮖ ቴ૕䈫䈚䈩䈱⥄Ꮖ 䋨me) ⊒㆐Ბ㓏 図2

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〈条件D〉  「理想とする自己像との比較」について,具 体的な事柄において,過去の自分と比較し成長 が実感できるようにすること。また,他者から の期待は,理想とする自己像の形成に重要なも のであるが,子どもの実情に合わせて適切なも のになるように努める。

4 分析のための手続き

(1)学年段階による分類 分析にあたって,まず,調査対象を1~3年 の下学年と4~6年の上学年に分類することと した。榎本(18)は,児童期の自己概念の発 達に関して,さまざまな研究から,8歳~9歳 にかけてが自己認知について発達上重要な時期 であると述べている。つまり,9歳に達した時 期から子どもの自己認知の有り様が変化すると いうことである。そこで,全員が9歳になる3 年生と全員が満9歳に達している4年生を境界 とし,発達段階を考慮した望ましい支援のあり 方について探ることとした。 (2)学校満足度による分類  次に,Q-Uの結果とその変化を数値で表し, 学校生活満足群が占める割合とその変化率を基 に調査対象学級を高群と低群に分類することと した。高群と低群の教師が行っている支援のあ り方や学級経営についての考察等を比較するこ とにより,学校適応感を高めるための望ましい 支援のあり方について探ることとした。  高群と低群の分類にあたって,調査校は,学 校生活満足群が占める割合が全国平均38%をど の学級も上回っていた。表1のように,全体の 平均が約61%であったので,60%を目安とし, 12月の学校生活満足群が占める割合が60%を超 えている学級を高群,60%に満たない学級を低 群として分類することとした。以下,下学年に おける高群を下学年高群,下学年における低群 を下学年低群, 上学年における 高群を上学年高 群,上学年にお ける低群を上学 年低群とする。 (3)アンケート記載内容の分類  分類に際しては,アンケートの記載内容か ら,筆者,指導教員,協力者の3名が協議しな がら行った。(表2参照) 学級名 アンケート記載事項 教師からの賞賛 友達からの賞賛 家族 か ら の 賞 賛 自分を見つめる トラブル・マイナス行動に対して その他 場 対象 内容 配慮 場 対象 内容 配慮 場 対象 内容 配慮 場 対象 内容 配慮 場 対象 内容 配慮 4 の 2 1 ・子どもが 間違って答 えてもでき るだけ受け 入れた上で ア フ タ ー フォローす るようにし ている。 間違えた人 アフターフォローをする できるだけ受け入れる 表2 アンケート記載内容の分類 (4)比較対象の分類  各群ごとに,分類されたアンケートの記載内 容を各項目別でまとめることとした。そして, 下学年高群と下学年低群,上学年高群と上学年 低群において,各項目の内容をそれぞれ比較 し,分析・考察を行った。

5 結果と分析,および考察

(1)下学年  ①教師からの賞賛  まず,高群・低群共通して,賞賛する対象と して,「自他からプラスの評価を受けにくい児 童」と「プラス評価の行動をしている児童」が 挙げられていた。また,教師は,結果とともに 過程を賞賛していた。 〔下-a〕*1下学年の児童に対して,教師は,プラス の評価を受けにくい児童には意識的に賞賛する。 *1 下学年における重要な点を〔下-a〕とする。以下,同様とする。 〔下-b〕下学年の児童に対して,教師は,志望する 方向性を指し示すモデルとなる行動をする児童を賞 賛し,賞賛する対象を広げるようにする。 〔下-c〕下学年の児童に対して,教師は,できるよ うになったという結果を賞賛するとともに,頑張っ ているという過程も賞賛し,過程に寄り添い見守っ ている人が存在することを児童に示す。  次に,教師の賞賛の場として,低群は主に学 習中の限られた場面であったのに対して,高群 は,さまざまな場面が挙げられ,教師はあらゆ る場面を賞賛の場として意識的に賞賛している ことが考えられる。さらに,高群は具体的で分 6月 12月 全体 下学年 0.21 61.24 6.83 上学年 64.88 6.0 6.3 全体 8.71 63.47 61.31 表1 Q-U学級生活満足群が 占める割合の平均(%) -137-

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かりやすく伝わりやすい方法で賞賛していた。 〔下-d〕下学年の児童に対して,教師は,学校生活 のあらゆる場面を賞賛の場として意識的に賞賛する。 〔下-e〕下学年の児童に対して,教師は,即座に賞 賛したり自分の伸びやよさが視覚的に分かるように 工夫したりして,具体的で分かりやすく伝わりやす い方法で賞賛する。  ②友達からの賞賛  高群・低群共通して,プラス行動をした人を 児童がなされるようにしていた。  低群の教師は,友達からの賞賛から受ける質の よい賞賛が児童の自尊感情を高めると考える傾向 が強いが,高群は,どの児童も友達からの賞賛が 与えられることが重要であると捉えていた。 〔下-f〕下学年の児童に対して,教師は,全員の児 童が友達から賞賛される場を設定する。その際,何 をよい状態とするかを児童と確認しておく等,交流 活動が有効に働くようにしておくとよい。  ③自分を見つめることを促す支援  高群は全体的に記載数が多く,他者と比べる 必要のない内容で自己呈示する経験を積み重ね ていた。また,具体的な事柄で自己の成長が実 感ができるような工夫や達成感や成功体験につ ながるように教師側からスキルを提示する等の 工夫がなされていた。 〔下-g〕下学年の児童に対して,教師は,児童が他 者と比べる必要がない内容で自己呈示する経験がで きるような支援をさまざまな場面で取り入れる。 〔下-h〕下学年の児童に対して,教師は,児童が具 体的に伸びを確かめることができるような支援を行 い,過去の自分と比較し成長が実感できるようにす る。その際,教師は,身につけてほしいスキルを提 示する等,目標設定を工夫する。  ④トラブル・マイナス行動への対応に関する 考察  高群・低群共通して,教師は,他の児童の前 でマイナスの評価を受けないように配慮してい た。また,低群では,トラブル・マイナス行動 が生じた場合はあまりそのことに触れないよう に配慮していたが,高群では,児童が十分反省 し,自分たちで納得して次にどうするかを考え る場を与えていた。 〔下-i〕下学年において,教師は,失敗するような 体験をできるだけさせないように配慮するとともに, トラブルやマイナス行動が生じた場合には,児童は 納得して十分に自分の行為を反省し,次に同様の失 敗をしないよう自ら考えられるように支援する。  ⑤その他の支援  低群では,児童自身の対人関係に関わる能力 を上げる支援が行われていたが,高群では,教 師の言葉かけや保護者にも広げるような内容, 子ども同士の関わりに関することが挙げられて いた。児童自身の対人関係に関わる能力を上げ ることも重要であろうが,児童を取り巻く周囲 の人物からの働きかけを工夫することが重要で あるといえよう。図3のように,それぞれの2 者関係で賞賛する行為がなされることも重要で あるが,図4のように,教師の工夫により,児 図3 児童を取り巻く人間関係図ー1 (通常の賞賛を行った場合) 図4 児童を取り巻く人間関係図ー2  (第3者から賞賛される場合)

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童を取り巻く人間関係を強化したり対象を広げ たりして促進させる支援をすることで,他者と よく関わる経験を積み重ねることができ,肯定 的な人間関係を築く基盤を作ることができるよ うになるといえよう。 〔下-j〕下学年において,教師は,児童を取り巻 く肯定的な人間関係を促進させることができるよう な支援方法を工夫する。 (2)上学年  ①教師からの賞賛  高群・低群共通して,教師は,結果ととも に,過程を賞賛していた。また,プラス行動の モデルとなる行動を賞賛しており,賞賛される 児童を増加させようとしたり所属する集団に対 して貢献感を味わえるようなものにしたりして いた。 〔上-a〕上学年の児童に対して,教師は,できるよ うになったという結果を賞賛するとともに,頑張っ ているという過程も賞賛し,過程に寄り添い見守っ ている人が存在することを児童に示す。 〔上-b〕上学年の児童に対して,教師は,志望する 方向性を指し示すモデルとなる行動をする児童を賞 賛し,賞賛する対象を広げるようにする。 〔上-c〕上学年の児童に対して,教師は,善行や進 んで働く姿を賞賛し,所属する集団に対する貢献感 が味わえるようにする。  次に,教師が賞賛する内容に関して,低群と高 群の比較により,教師が積極的に児童を賞賛しよ うとしている姿勢を持つことと,賞賛されにくい 児童がよく賞賛される児童と同等に賞賛されるよ うに配慮することの重要性が示唆された。 〔上-d〕上学年の児童に対して,教師は,意識的に 児童を賞賛しようという姿勢を持つようにする。 〔上-e〕上学年の児童に対して,教師は,普段あま り肯定的な評価がされにくい児童を積極的に賞賛す るように心がける。  ②友達からの賞賛  低群の教師は,賞賛する側の児童に注目して いるのに対し,高群の教師は,賞賛される側に 注目していた。また,高群の教師は,交流の場 の指導を工夫し,児童同士がお互いに高め合え る交流を図っていた。 〔上-f〕上学年の児童に対して,教師は,児童同士 の賞賛を促すとき,全員の児童が同等に友達から賞 賛される場を設定する。その際,ペアリングに配慮 したり具体的に賞賛し合えるように視点を与えてお いたりする等,交流活動が活発にかつ有効に働くよ うにしておくとよい。  ③自分を見つめることを促す支援  児童全体を対象に,自分を見つめながら,分 かりやすい形で表現する活動が行われ,自己呈 示する経験を積み重ねる支援がされていた。 〔上-g〕上学年の児童に対して,教師は,児童自身 が自らに対するよいイメージを持つ事柄を視覚的に 表現する活動を取り入れるとともに,それを発表す る場を設ける等,所属する集団の中で自己呈示する 活動を取り入れる。  ④トラブル・マイナス行動への対応  高群において,予め教師がトラブルやマイナ ス行動につながりそうな児童に配慮していた。 また,児童が他の児童からマイナスのイメージ を持たれないように配慮していた。 〔上-h〕上学年において,教師は,トラブルやマイ ナス行動につながりそうな児童に配慮することを心 がける。また,トラブルやマイナス行動が生じた場 合には,教師がその児童をできるだけ受け入れるよ うにするとともに,その児童が他の児童からマイナ スのイメージを持たれないように配慮しながら対応 する。  ⑤その他の支援  低群に比べて,高群は,多くの記載が見られ た。個々の児童が活躍する場の設定や,児童を 取り巻く環境への配慮,学級の自尊感情を高め る工夫もなされていた。 〔上-i〕上学年において,教師は,個々の児童が所 属する集団に対して貢献感を味わえるように活躍の 場を設定する。 〔上-j〕上学年において,教師は,児童を取り巻く 環境を整えるとともに,学級全体で取り組み活動を 工夫することで,集団の自尊感情を高めるようにす る。 (3)下学年・上学年の比較による全体考察  ①教師からの賞賛  教師からの賞賛に関して,まず第一に,〔下 -13-

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-d〕〔上-d〕に関しては,教師が意識的に賞 賛する重要性を示しているといえる。3-(2) で挙げた「自己受容の形成要因」の〈条件A〉 「『他者から与える評価や評価的態度』は,肯定 的・好意的なものになるようにする。」から考 えても,教師が意識的に賞賛する態度が重要で あるといえよう。さらに,〔下-a〕〔上-e〕に 関しては,意識的に賞賛する対象として,「普 段あまり肯定的な評価がされにくい児童」を挙 げていることから共通しているといえる。自己 受容を促すための条件として,「自己評価的経 験を多く積み重ねること」が挙げられているこ とから考えても,自己評価的経験が得られにく い児童を積極的に賞賛することが重要であると 考える。以上のことから,教師からの賞賛に関 して,以下の2点を,共通の重要事項として挙 げることができよう。 〔全-A〕教師は,学校生活のあらゆる場面を賞賛 の場として,意識的に児童を賞賛する。 〔全-B〕教師は,普段あまり肯定的な評価がされ にくい児童を積極的に賞賛するように心がける。  第二に,〔下-b〕と〔上-b〕,〔下-c〕と 〔上-a〕については,全く同じ内容であるため, 共通点とする。〔下-b〕・〔上-b〕に関しては, 3-(2)で挙げた「自己受容の形成要因」の「B 他者との比較」において,児童期は他者との比 較の中で自己概念を形成していくことが明らか になったことから考えても,志望とする方向性 を指し示すことは,どのような行動をとると自 己評価を上げることができるかということを, モデルとなる行動をした児童だけでなく周囲の 児童も理解できるため,自己評価的経験を増加 させることができるといえよう。また,教師 が,児童にとって望ましいと考える言動に関し て指し示すことは,「自己受容の形成要因」の 〈条件D〉「理想とする自己像との比較」におい て挙げられた「他者からの期待」を示すことと なるということもできよう。  〔下-c〕・〔上-a〕に関しては,「自己受容の 形成要因」の〈条件C〉「実際の成功・失敗体験」 において,過程に寄り添い見守ることができる 他者の必要性が挙げられていたことから考えて も,重要事項ということができよう。  以上のことから,教師からの賞賛に関して, 以下の2点を,共通の重要事項として,加える ことができよう。 〔全-C〕教師は,志望する方向性を指し示すモデ ルとなる行動をする児童を賞賛し,賞賛する対象を 広げるようにする。 〔全-D〕教師は,できるようになったという結果 を賞賛するとともに,頑張っているという過程も賞 賛し,過程に寄り添い見守っている人が存在するこ とを児童に示す。  第三に,〔下-e〕と〔上-c〕に関しては相 違点とする。教師からの賞賛は,下学年の児童 にとっては具体的で分かりやすいものに,上学 年の児童にとっては貢献感が味わえるようにす る特徴が見られるといえる。下学年の児童の自 己定義の中心的基準が身体的特性や所有物とい う「身体的自己」である(自己概念の発達図式) ことから,賞賛内容に具体性や明瞭性を持たせ ることが重要であるといえよう。一方,同様 に,上学年の児童の自己定義の中心的基準が他 者と関わる能力である「行動的自己」であるこ とから,他者に貢献することが肯定的な自己概 念を形成することになるといえよう。したがっ て,発達段階に応じて賞賛内容や賞賛方法を変 えることが児童へのより効果的な賞賛になると いえよう。以上のことから,教師からの賞賛に 関して,以下の2点を,発達段階から見た重要 事項として挙げることができよう。 〔下-A〕下学年の児童に対して,教師は,即座に 賞賛したり自分の伸びやよさが視覚的に分かるよう に工夫したりして,具体的で分かりやすく伝わりや すい方法で賞賛する。 〔上-A〕上学年の児童に対して,教師は,善行や 進んで働く姿を賞賛し,所属する集団に対する貢献 感が味わえるようにする。  ②友達からの賞賛  友達からの賞賛に関して,まず第一に,共通 点として,「全員の児童が友達から賞賛される 場を設定する」ということが挙げられる。「自 己受容の形成要因」の条件「B 他者との比較」 において述べたように,児童は友人との比較に

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よって自己評価が行われる側面が強いことか ら,同等の条件の中で賞賛されることが重要で あるといえよう。  第二に,共通点として,交流活動の際に,賞 賛する視点を与え確認しておくことで,具体的 に賞賛し合い,活発で有効な交流となるように 配慮することが挙げられる。「自己受容の形成 要因」の条件「B 他者との比較」において, 児童は容姿評価や友人関係評価,学力能力評価 といった比較的認識しやすい側面の評価に強く 影響されていたことから,活発で有効な交流活 動を行うためには,教師側から賞賛する視点を 与えておくことが必要な条件ということができ よう。以上のことから,友達からの賞賛に関し て,以下の点を共通の重要事項として挙げるこ とができよう。 〔全-E〕教師は,児童同士の賞賛を促すとき,全 員の児童が同等に友達から賞賛される場を設定する ようにする。その際,具体的に賞賛し合えるように 視点を与え確認しておき,交流活動が活発にかつ有 効に働くようにしておく。  第三に,発達段階からの視点として,上学年 においては,「ペアリングに配慮する」ことが 挙げられていた。「自己受容の形成要因」の〈条 件B〉で挙げられたように,評価は否定的にな らないよう十分に配慮される必要があるが,上 学年になると,学力等の能力に差が出やすく, 交流の中で否定的な評価を受けやすいことも懸 念される。したがって,上学年において,同等 の能力の児童同士や人間関係が良好な者同士を ペアにする等,ペアリングに配慮することは, 活発で有効な交流になるための重要な点である といえよう。以上のことから,友達からの賞賛 に関して,以下の点を,発達段階から見た重要 事項として挙げることができよう。 〔上-B〕上学年の児童に対して,教師は,児童同 士の交流活動の際には,ペアリングに配慮し,より 活発で有効な交流になるようにする。  ③自分を見つめるための支援  自分を見つめるための支援に関して,まず第 一に,共通点として,〔下-g〕と〔上-g〕か ら「自己呈示する活動を取り入れる」ことが挙 げられる。自己呈示は,他者が自分に対して形 成する印象を統制する過程であったことから考 えると,支援として有効であるといえよう。以 上のことから,自分を見つめるための支援に関 して,以下の点を,共通の重要事項として挙げ ることができよう。 〔全-F〕教師は,児童が自己呈示する活動を取り入 れるようにする。  第二に,自己呈示する活動を取り入れる際, 相違点が見られる。下学年においては,自己呈 示する活動を取り入れる際,「他者と比べる必 要がない内容」を取り扱うことと,「さまざま な場面で取り入れる」ことが挙げられている。 「他者と比べる必要がない内容」を取り扱うこ とに関しては,「自己受容の形成要因」の「B  他者との比較」において述べたように,児童 は友人との比較によって自己評価が行われる側 面が強く,比較により否定的な評価を受けるこ とも懸念されることから考えても,比較の必要 性のない内容で自己呈示し合う活動を行うこと が重要だといえよう。また,「さまざまな場面 で取り入れる」ことにより,他者と良好な関係 を築く機会を数多く得られることとなるとい え,児童中期・後期の自己定義の中心的基準「行 動的自己」の成長を促すものであるということ ができよう。一方,上学年においては,自己呈 示する活動を取り入れる際,「自分に対するよ いイメージを持つ事柄を視覚的に表現する活動 を取り入れること」が挙げられている。視覚的 に表現する活動を通して,児童は,自己を見つ める時間を十分に確保できるとともに,自己の 成長を実感することができるため,「自己受容 の形成要因」の「D 理想とする自己像との比 較」を促すものであるといえよう。さらに,表 現されたものを集団の中で発表することは,青 年期の自己定義の中心的基準「社会的自己」の 成長を促すものであるといえよう。以上のこと から,自分を見つめるための支援に関して,以 下の点を,発達段階から見た重要事項として挙 げることができよう。 〔下-B〕下学年の児童に対して,教師は,できるだ け多く自己呈示する活動を取り入れる。その際,他 -141-

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者と比べる必要がない内容を取り扱うようにする。 〔上-C〕上学年の児童に対して,教師は,児童自 身が自らに対するよいイメージを持つ事柄を視覚的 に表現する活動を取り入れるとともに,それを発表 する場を設ける等,所属する集団の中で自己呈示す る活動を取り入れる。  第三に,発達段階からの視点として,〔下- h〕において,「児童が具体的に伸びを確かめ ることができるような支援を行うこと」と「教 師が目標設定を工夫する」ことが挙げられてい る。これらのことに関しては,「教師からの賞 賛」において確認された下学年における具体性 や明瞭性のある支援や,「自己受容の形成要因」 の〈条件D〉「理想とする自己像との比較」に おいて挙げられた「具体的な事柄において過去 の自分と比較する」ことから考えると,有効な 支援といえよう。以上のことから,自分を見つ める支援に関して,以下の点を,発達段階から 見た重要事項として加えることができよう。 〔下-C〕下学年の児童に対して,教師は,児童が 具体的に伸びを確かめることができるような支援を 行い,過去の自分と比較し成長が実感できるように する。その際,教師は,身につけてほしいスキルを 提示する等,目標設定を工夫する。  ④トラブル・マイナス行動への対応  トラブル・マイナス行動への対応に関しては, トラブル・マイナス行動が生じる前の支援とト ラブル・マイナス行動が生じた後の支援に分類 することができる。  まず第一に,トラブル・マイナス行動が生じ る前の支援に関する共通点として,〔下-i〕〔上 -i〕により,児童が失敗したと感じる体験をで きるだけさせないよう配慮しているといえる。  以上のことから,トラブル・マイナス行動へ の対応に関して,以下の点を,共通の重要事項 として挙げることができよう。 〔全-G〕教師は,児童が失敗するような体験をで きるだけさせないように配慮する。  第二に,トラブル・マイナス行動が生じる前 の支援に関して,発達段階の視点から,上学年 においては,「トラブル・マイナス行動につな がりそうな児童」に注目して配慮している。ト ラブル・マイナス行動は,児童が自他から否定 的な評価を受けることであるため,「自己受容 の形成要因」の〈条件B〉にもあったように, 自己概念に関わる評価が否定的にならないよう に配慮することが重要であるといえよう。  以上のことから,トラブル・マイナス行動へ の対応に関して,以下の点を,発達段階から見 た重要事項として挙げることができよう。 〔上-D〕上学年において,教師は,トラブル・マ イナス行動につながりそうな児童に配慮することを 心がける。  第三に,トラブル・マイナス行動が生じた後 の支援として,発達段階の視点から,下学年に おいては,「教師は,児童が自分の行為を反省 し,次に同様の失敗をしないように自ら考えら れるような支援」が挙げられている。これは, これからの失敗体験を減らし,否定的評価を軽 減させているといえる。  以上のことから,トラブル・マイナス行動へ の対応に関して,以下の点を,発達段階から見 た重要事項として加えることができよう。 〔下-D〕下学年において,教師は,トラブル・マ イナス行動が生じた場合,児童が納得して十分に自 分の行為を反省し,次に同様の失敗をしないように 自ら考えられるように支援する。  第四に,トラブル・マイナス行動が生じた後 の支援として,発達段階の視点から,上学年に おいては,「教師がその児童をできるだけ受け 入れる」ことや「その児童が他の児童からマイ ナスのイメージを持たれないようにする」こと が挙げられている。これらのことは,上学年の 児童の自己定義の中心的基準が「行動的自己」 であることから,他者から否定的なイメージを 持たれることを体験することは,肯定的な自己 概念の形成を妨げる要因となることを示してい るといえよう。  以上のことから,トラブル・マイナス行動に 対する支援に関して,以下の点を,発達段階か ら見た重要事項として加えることができよう。 〔上-E〕上学年において,教師は,トラブル・マ イナス行動が生じた場合,教師自身がその児童をで きるだけ受け入れるようにするとともに,その児童

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が他の児童からマイナスのイメージを持たれないよ うに配慮しながら対応する。  ⑤その他の支援  その他の支援に関して,〔下-j〕・〔上-j〕の ように児童を取り巻く環境に対する支援と,〔上 -i〕のように児童に対する支援が挙げられる。  まず第一に,児童を取り巻く環境に対する支 援に関して,発達段階の視点から,下学年にお いては,「児童を取り巻く肯定的な人間関係を 促進させること」に配慮している。前述したよ うに,肯定的な人間関係をできるだけ多く築 くことが,「行動的自己」の成長を促すことと なるといえる。上学年においては,学習環境や 教師の姿勢,学級全体の雰囲気等,さまざまな ことに配慮している。前述したように「集合的 自尊感情が,個人の自尊感情を高め,維持する ことに動機づけられている」ことから,児童が 所属する集団や場の環境に配慮することは,児 童の自尊感情を高める支援だといえよう。以上 のことから,その他の支援に関して,以下の点 を,発達段階から見た重要事項として挙げるこ とができよう。 〔下-E〕下学年において,教師は,児童を取り巻 く肯定的な人間関係を促進させることができるよう な支援方法を工夫する。 〔上-F〕上学年において,教師は,児童を取り巻く 環境を整えるとともに,学級全体で取り組む活動を 工夫することで,集団の自尊感情を高めるようにす る。  第二に,児童に対する支援に関して,発達段 階の視点から,〔上-i〕において,「個々の児 童が所属する集団に対して貢献感を味わえるよ うに活躍の場を設定する」ことが挙げられてい る。このことは,「自己受容の形成要因」の〈条 件C〉「実際の成功・失敗体験」において,貢 献感の重要性が述べられていたことから考えて も重要であるといえよう。以上のことから,そ の他の支援に関して,以下の点を,発達段階か ら見た重要事項として加えることができよう。 〔上-G〕上学年において,教師は,個々の児童が 所属する集団に対して貢献感を味わえるように活躍 の場を設定する。

6 総合的考察

(1)共通の重要事項に関する考察  下学年・上学年共通の自己受容を促す支援と して,「ア 教師が児童に接する際の姿勢」に 関することと,「イ 学級担任として整える環 境」に関することの2点から考察することがで きよう。  まず第一に,「ア 教師が児童に接する際の 姿勢」として,「教師が意識的に積極的に児童 を賞賛すること(〔全-A〕・〔全-B〕)」が重要であ る。その際,特に「普段あまり肯定的な評価が されにくい児童(〔全-B〕)」に目を向けるよう にすることや,「賞賛の対象を広げ(〔全-C〕)」 ることで賞賛が増加するようにすること,「失 敗する体験をできるだけさせない(〔全-G〕)」 ことで児童ができるだけ否定的評価を得ないよ うにすること,結果だけでなく「過程も賞賛 (〔全-D〕)」することが重要であることが導き出 された。これらのことは,〈条件A〉・〈条件B〉・ 〈条件C〉(3-(2))に密接につながるもので ある。このことから,教師が児童に接する際の 姿勢として,①児童が否定的評価を受けないよ うに配慮しながら,②肯定的・好意的な評価を できるだけ多く与えるとともに,③体験する際 に必要であるとされる過程を見守るという3つ の役割を担っている重要な他者であることを, 自らが自覚することが重要である。  第二に,「イ 学級担任として整える環境」 として,教師は,「交流活動が活発にかつ有効 に働く(〔全-E〕)」ようにしたり,児童が「自 己呈示する活動(〔全-F〕)」を取り入れ友達や 集団に受け入れられる経験を与えたりすること が重要であることが導き出された。このこと は,教師は,学級の経営者として,児童同士の 肯定的な人間関係の構築を工夫するように努め ることの重要性とつながるものである。  以上のことから,自己受容を促すための支援 のあり方について,以下の2点を,重要な視点 としてまとめることができよう。 1教師は,児童との二者関係において重要な他者で あることを自覚する。 2教師は,学級の経営者として,児童同士の肯定的 -143-

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な人間関係の構築に努める。 (2)下学年の重要事項に関する考察  下学年の児童に対する自己受容を促す支援と して,「ア 具体性や明瞭性のある支援」に関 することと,「イ 他者と関わる経験を積み重 ねるような支援」という2つの視点で考察する ことができよう。  まず第一に,「ア 具体性や明瞭性のある支 援」として,「具体的に」(〔下-A〕〔下-C〕),分 かりやすい方法で」(〔下-A〕),「児童が納得」〔下 -D〕するようにすることが効果的であること が導き出された。支援に具体性や明瞭性を持た せることは,〈条件B〉〈条件D〉(3-(2))と つながるものであるとともに,自己概念の発達 段階を考慮した支援として位置づけられる。  第二に,「イ 他者と関わる経験を積み重ね るような支援」として,「できるだけ多く自己 呈示する活動」(〔下-B〕)や,「できるだけ多く 友達とふれあえる活動」(〔下-E〕)等の支援が 導き出された。下学年の児童は,自己概念の発 達段階(図2参照)から,集団に対する成員と しての意識はあるものの,他者の反応に考慮し た行動を取ることは難しい。このことから,他 者からの反応が得られる経験や,他者と関わる 楽しさを味わう経験を積み重ねることは,他者 と関わる能力を培い,自己概念の発達を促すこ とにつながるものである。  以上のことから,下学年の児童に対する自己 受容を促すための支援のあり方について,以下 の2点を,重要な視点としてまとめることがで きよう。 3下学年の児童に対して,教師は,具体性や明瞭性 のある支援を行う。 4下学年の児童に対して,教師は,他者と良好な関係 を築く経験をできるだけ多く積み重ねるようにする。 (3)上学年の重要事項に関する考察  上学年の児童に対する自己受容を促す支援に 関して,「個々の児童と所属する集団との関係 性」という視点で考察することができよう。  「個々の児童と所属する集団との関係性」に 考慮した支援として,まず第一に,児童同士に よる「活発で有効な交流」(〔上-B〕)や,「所属 する集団の中で自己呈示する活動」(〔上-C〕), 「トラブル・マイナス行動」(〔上-D〕〔上-E〕) に対する配慮が重要であることが導き出され た。上学年の児童は,自己概念の発達段階(図 2参照)から,他者と関わる能力や他者の反応 を考慮した行動により自己を認知し,常に他者 が自分をどのように見ているかを意識してい る。このことは,児童が所属する集団の中で認 められる存在となることに配慮することの重要 性とつながるものである。  第二に,「集団の中で貢献感を味わえる」(〔上 -A〕〔上-G〕)ようにすることが導き出された。 上学年の児童は,自己概念の発達段階(図2参 照)から,青年期に向けて,社会的な魅力や社 会的相互作用に影響する行動を取れるようにな り,社会の中で認められるようになることが重 要課題となる。このことから,所属する集団に 対する貢献感を持つことは,自己概念の発達を 促すことにつながるものである。  第三に,「集団の自尊感情を高める」(〔上-F〕) ことが導き出された。このことは,5-(3)- ⑤でも述べたように,集合的自尊感情が個人の 自尊感情を高めることを示している。したがっ て,児童が所属する集団をよりよい集団にする ように努めることが重要である。  以上のことから,上学年の児童に対する自己 受容を促すための効果的な支援のあり方につい て,以下の3点を重要な視点としてまとめるこ とができよう。 5上学年の児童に対して,教師は,児童が所属する 集団の中で認められる存在となるように配慮する。 6上学年の児童に対して,教師は,貢献感を味わう 経験を積み重ねるようにする。 7上学年の児童に対して,教師は,児童が所属する 集団の集合的自尊感情を高めるように努める。  以上述べてきた自己受容を促す効果的な支援 に関する重要事項を視点別に整理したものを表 5にまとめた。

7 研究の成果と今後の課題

 研究の成果として,これまで個々の教師が経 験則をもとに手探りで行ってきた自己受容を促

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す支援に関して,本研究により,支援の柱とな る重要事項や重要な視点を得ることができた。 これらは,自己受容を促す支援につながる重要 な指針となるものと考えることができる。ま た,学級の学校適応感の状態から,調査対象を 高群と低群に分けて分析したことにより,児童 の自己受容を促すためのより効果のある支援に 関して考察することができた。さらに,下学 年・上学年に分けて分析したことにより,発達 段階を考慮した支援のあり方について考察する こともできた。このことは第1学年から第6学 年を担任する小学校教師にとって,発達段階を 考慮したより適切な支援につながると考える。  しかし,本研究では,1小学校23クラスの学 校適応感の状態と23名の教師によるアンケート による調査・分析,および考察を行ったもので 表5 学校適応感を高めることにつながる自己受容を促す効果的な支援のあり方 1 教師は,児童との二者関係において重要な他者であることを自覚する。 〔全-A〕  教師は,学校生活のあらゆる場面を賞賛の場として,意識的に児童を賞賛する。 〔全-B〕  教師は,普段あまり肯定的な評価がされにくい児童を積極的に賞賛するように心がける。 〔全-C〕  教師は,志望する方向性を指し示すモデルとなる行動をする児童を賞賛し,賞賛する対象を広げるようにする。 〔全-D〕  教師は,できるようになったという結果を賞賛するとともに,頑張っているという過程も賞賛し,過程に 寄り添い見守っている人が存在することを児童に示す。 〔全-G〕  教師は,児童が失敗するような体験をできるだけさせないように配慮する。 2 教師は,学級の経営者として,児童同士の肯定的な人間関係の構築に努める。 〔全-E〕  教師は,児童同士の賞賛を促すとき,全員の児童が同等に友達から賞賛される場を設定するようにする。その 際,具体的に賞賛し合えるように視点を与え確認しておき,交流活動が活発にかつ有効に働くようにしておく。 〔全-F〕  教師は,児童が自己呈示する活動を取り入れるようにする。 3 下学年の児童に対して,教師は,具体性や明瞭性のある支援を行う。 〔下-A〕  下学年の児童に対して,教師は,即座に賞賛したり自分の伸びやよさが視覚的に分かるように工夫したり して,具体的で分かりやすく伝わりやすい方法で賞賛する。 〔下-C〕  下学年の児童に対して,教師は,児童が具体的に伸びを確かめることができるような支援を行い,過去の 自分と比較し成長が実感できるようにする。その際,教師は,身につけてほしいスキルを提示する等,目標 設定を工夫する。 〔下-D〕  下学年において,教師は,トラブル・マイナス行動が生じた場合,児童が納得して十分に自分の行為を反 省し,次に同様の失敗をしないように自ら考えられるように支援する。 4 下学年の児童に対して,教師は,他者と良好な関係を築く経験をできるだけ多く積み重ねるようにする。 〔下-B〕  下学年の児童に対して,教師は,できるだけ多く自己呈示する活動を取り入れる。その際,他者と比べる 必要がない内容を取り扱うようにする。 〔下-E〕  下学年において,教師は,児童を取り巻く肯定的な人間関係を促進させることができるような支援方法を 工夫する。 5 上学年の児童に対して,教師は,児童が所属する集団の中で認められる存在となるように配慮する。 〔上-B〕  上学年の児童に対して,教師は,児童同士の交流活動の際には,ペアリングに配慮し,より活発で有効な 交流になるようにする。 〔上-C〕  上学年の児童に対して,教師は,児童自身が自らに対するよいイメージを持つ事柄を視覚的に表現する活動 を取り入れるとともに,それを発表する場を設ける等,所属する集団の中で自己呈示する活動を取り入れる。 〔上-D〕  上学年において,教師は,トラブル・マイナス行動につながりそうな児童に配慮することを心がける。 〔上-E〕  上学年において,教師は,トラブル・マイナス行動が生じた場合,教師自身がその児童をできるだけ受け入れ るようにするとともに,その児童が他の児童からマイナスのイメージを持たれないように配慮しながら対応する。 6 上学年の児童に対して,教師は,貢献感を味わう経験を積み重ねるようにする。 〔上-A〕  上学年の児童に対して,教師は,善行や進んで働く姿を賞賛し,所属する集団に対する貢献感が味わえる ようにする。 〔上-G〕  上学年において,教師は,個々の児童が所属する集団に対して貢献感を味わえるように活躍の場を設定する。 7 上学年の児童に対して,教師は,児童が所属する集団の集合的自尊感情を高めるように努める。 〔上-E〕  上学年において,教師は,児童を取り巻く環境を整えるとともに,学級全体で取り組む活動を工夫するこ とで,集団の自尊感情を高めるようにする。 -14-

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あり,本研究で得られた自己受容を促す支援の あり方に関する重要事項や重要な視点が,一般 的にあてはまるかどうかということが懸念され る。したがって,今後は,本研究で得られた学 校適応感の高まりと自己受容を促す支援の柱と なる重要事項や重要な視点について,さらに多 くの教師や児童を対象として検証するととも に,実際に学校適応感の高まりや自己受容を促 す効果が得られるかどうか,実証的なレベルで さまざまな実践を行うことが求められるといえ よう。実際には,個々の児童および学級におけ る学校適応感や自己概念の発達の状態は一様で はない。したがって,支援を考える際,教師 は,個々の児童や各学級の実態を適切に把握 し,それぞれのケースに即した適切な支援方法 を立案し,支援方法の成果を適切に検討するこ とが求められてくるであろうが,このプロセス を個人の教師で行うことは容易でない。以上の ことから,今後は,学級担任によるアセスメン トのあり方や,学校内のチームにおけるコンサ ルテーションのあり方に関する研究をさらに進 めることが重要となるであろう。 文献 安部芳絵 2010 子ども支援学研究の視座 学文社 110-118. 青木みのり 2010 子どもに寄せる親の期待 児童 心理 第64巻第4号 金子書房 61-66. 遠藤由美 12 自己認知と自己評価の関係-重み づけをした理想自己と現実自己の差異スコアか らの検討- 教育心理学研究40 17-163. 遠藤由美 2010 自己肯定感の構造-社会的ネット ワークへの位置づけの適切感- 児童心理 第 64巻第4号 金子書房 11-18. 榎本博明 18 「自己」の心理学-自分探しへの誘 い- サイエンス社 2-3.161-201. 榎本博明 子どもの「自己肯定感」のもつ意味-自 己肯定感の揺らぎを乗り越えるために- 児童 心理第64巻第4号 金子書房 1-10. 岩堀美雪 200 ポートフォリオで「できる自分」 になる サンマーク出版 岩井俊憲 2006 勇気づけの心理学 146-176. 河村茂雄 楽しい学校生活を送るためのアンケー ト 「Q-U」結果の解釈と活用について http:// www.waseda.jp/sem-kawamura/ 河村茂雄 2007 データが語る①学校の課題 学校 向上・学級の荒れ・いじめを徹底検証 図書文化 14-24. 河村茂雄・藤村一夫・粕谷貴志・武藏由佳 2004  学級経営スーパーバイズ・ガイド 小学校編  図書文化  河村茂雄(著)田上不二夫(監修) 200 Q-U楽 しい学校生活を送るためのアンケート 小学1 ~3年,4~6年 図書文化

Kirschenbaum, H & Henderson, V. L.(Eds.) 2001  ロジャーズ選集 伊藤 博・村山正治 監訳  誠信書房 10-204. 小林亮 2010 自己心理学の最先端-自己の構造と 機能を科学する- 榎本博明 編著 あいり出版 13-14. 眞榮城和美 2010 セルフエスティームを高める要 因 児童心理第64巻第4号 金子書房 48-4. 丸本奈央 2010 自己心理学の最先端-自己の構造 と機能を科学する- 榎本博明 編著 あいり出 版 20.

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参照

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