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肺癌の放射線治療

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Academic year: 2021

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(1)

肺癌の放射線治療

新潟市民病院 放射線治療科

(2)

 放射線治療とはどのようなものか  肺癌に対する放射線治療(根治目的) 非小細胞肺癌(定位放射線治療を含む) 小細胞肺癌  肺癌における緩和的な放射線治療  肺癌治療において大切なこと

本日の内容

(3)

放射線治療は放射線を病変部(癌

があるところ)に当てる治療法

手術、化学療法(抗癌剤治療)と共

に、癌に対する主要な治療法の一

放射線治療とは?

(4)

癌が発生した

臓器の機能と形態を

できるだけ保ちながら

、治療を行う

ことを特徴とする。

癌治療の目標には根治(完全に治

す)、延命、緩和(苦痛となっている

症状を和らげること)があるが、放

射線療法はこの全てに用いられる。

放射線治療の特徴

(5)

放射線治療の特徴

手術と同様に

局所療法

である。

抗腫瘍効果および正常組織の副作用は、

基本的に照射された部位にしか生じな

い。(全身への影響が比較的少なく、高

齢者や終末期の患者さんでも治療を行

いやすい。)

(6)

 放射線は、細胞が分裂して増えるときに 必要な遺伝子を切断することで、細胞に 障害を起こす。  遺伝子が傷ついた細胞は分裂して増える ことができなくなる、あるいは、死滅して いく運命をたどる。  癌における放射線治療は、上記の作用を 利用して、癌を消滅させたり小さくさせた りする。

放射線治療はどうして効くのか?

(7)

根治目的で放射線治療を行う場合、正

常組織の晩期有害事象(治療後、時間

が経ってから起こる副作用)をできるだ

け生じさせないようにしながら、十分な

線量を病変部にかける必要がある。

放射線治療の原則

(8)

 扁平上皮癌と言われる組織型の場合、 途中で休止期間が長く入ると治療成 績が低下することが報告されている。  治療期間中に、粘膜炎による痛みなど の有害事象(副作用)が生じた場合で も、できるだけ休止期間を入れないで 治療することが大切。

放射線治療を受けるときに

大切なこと

(9)

治療期間中に、粘膜炎による痛み

などの有害事象(副作用)が生じた

場合でも、できるだけ休止期間を

入れないで治療することが大切。

副作用に対して、痛み止めの使用、

点滴や経管栄養などによる栄養補

給など、対策はあります。

放射線治療を受けるときに

大切なこと

(10)

 直線加速器(リニアアクセレーター:リニアック) と呼ばれる治療器で行われる。

(11)

放射線治療の流れ

 診察 治療適応の検討→方針決定→患者さんに 説明し同意を得る。  治療計画 (固定具作成) →CT撮影→コンピューターを 用いた治療計画→線量分布の確認  照射野の照合 治療寝台上で、治療部位が計画通りに合って いるか、X線撮影を行い位置を確認する。  治療開始

(12)
(13)

放射線治療の効果の評価

癌治療の効果は一般に5年生存率で

評価されるが、放射線治療において

局所制御率も大切な指標である。

化学療法との同時併用や、線量を病

巣に正確に集中させる技術(定位放

射線治療(俗称:ピンポイント治療))に

より、治療成績の向上が得られてい

る。

(14)

放射線治療の副作用(有害事象)

 早期有害事象(治療中および治療直後) 主に粘膜や皮膚の炎症、白血球減少で、多く は一時的。照射が中断されないように注意す る。  晩期有害事象(治療後3ヵ月以上経過後) 血管内皮細胞の障害や結合組織の変化が関 与。元に戻ることはなく、重要な臓器に高度の 障害が起こると死に至る場合がある。晩期有 害事象の発生確率を考慮して、放射線治療が 行われる。

(15)

 癌を消滅させることを目標とする場合 癌の組織型、進行度、患者さんの状態、他の治療手段 などを考慮し、最適と考えられる放射線治療の方法 を選ぶ。  骨転移や脳転移による症状を和らげること を目的とする場合 治療期間があまり長くならないように、有害事象をで きるだけ起こさないように配慮する。

肺癌における放射線治療

(16)

非小細胞肺癌

(扁平上皮癌・腺癌・大細胞癌など)

肺癌全体の80~85%

小細胞肺癌

肺癌全体の15%

組織型から見た肺癌の分類

(17)

①小細胞肺癌は非小細胞肺癌と比較し

て、増殖が速く早期にリンパ行性およ

び血行性に全身転移しやすい。

②小細胞肺癌は、化学療法・放射線治

療に対する感受性が高い。

③小細胞肺癌では、全身転移の可能性

を考慮した化学療法の重要性が大きい。

組織型から見た肺癌の特徴

(18)

 根治的放射線治療の適応 臨床病期 N2(同側縦隔リンパ節転移) Ⅲa期 多発結節・対側肺門リンパ節転移を除くⅢb期 高齢や合併症のために手術不能のⅠ・Ⅱ期  局所進行癌の放射線治療では、高齢者や全身状 態不良例を除けば化学療法を併用するのが標準 療法。  末梢型(縦隔から離れている)Ⅰ期例(T1a:径2cm まで、 T1b:径2cmを超えるが3cmまで)は、定位 放射線治療の適応となる。

非小細胞肺癌の放射線治療の適応

(19)

局所進行非小細胞肺癌の患者さんの場

合、1回2グレイ×30回60グレイの治療と、

シスプラチンを含む化学放射線療法を行

うことが多い。

放射線治療と化学療法との併用時期は、

同時併用が推奨されている。

非小細胞肺癌の放射線治療

(20)

 切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌 適切な化学放射線療法により、生存期間中 央値は16~22ヵ月、5年生存率は15~20%程度。  Ⅰ期例では定位放射線治療により、5年生存率 は50~80%程度。  Ⅰ~Ⅱ期例の放射線治療単独の成績は、多病 死が多いため5年生存率:20~40%前後。

非小細胞肺癌の放射線治療の成績

(21)

非小細胞肺癌 (扁平上皮癌) T4N1M0

ⅢA期 60グレイ/30回+

化学療法4コース

(22)

非小細胞肺癌 T3N0M0 ⅡB期

70グレイ/35回の放射線治療単独

(高齢のため)

(23)

非小細胞肺癌

(低分化腺癌または大細胞癌) T4N2M0 ⅢB期 60グレイ/30回+

化学療法4コース

(24)

定位放射線治療

小腫瘍に対して、局所制御率をあげ、周囲臓器 への有害事象を軽くすることを目的に、多方向 から照射する技術と、照射する放射線を病変に 正確に照準する技術の両者を満たした治療 小さな腫瘍では、大きな1回線量を用いても高 線量を受ける正常組織の体積が小さいので、有 害事象発生のリスクをあげることなく短期間で 大線量の照射が可能。その結果、高い局所制御 率を得ることができる。

(25)

肺癌の

固定7

門照射

12グレイ ×4回 48グレイ

(26)

体幹部定位放射線治療が抱える問題点

 呼吸性移動がある腫瘍を対象とする。 動きをどうするか? 実際に照射された線量はどれくらいか?  患者さんの固定方法、治療時の呼吸の状態、照 射方法についてはさまざまな方法がある。 (患者さんが息を止めていることが可能かどう かで、同じ治療器を用いても方法が異なる。)  高い1回線量で治療するため、時間がたってか ら重篤な有害事象が発生する可能性がある。 (長い経過で注意してみていく必要がある。)

(27)

小細胞肺癌の病期分類

限局型:

同側悪性胸水・両側鎖骨上窩

リンパ節転移および対側縦隔リンパ節まで

の病変の場合。

進展型: 上記以上に進展しているもの。

(28)

小細胞肺癌の放射線治療の適応

限局型小細胞肺癌に対する根治的放

射線治療 (手術可能なⅠ期例を除

くと、化学放射線療法が標準治療)

治療で腫瘍が消失した場合、限局型、

進展型を問わず、予防的全脳照射

(脳での再発予防目的)が標準治療

として勧められる。

(29)

小細胞肺癌の放射線治療

加速過分割照射 短期間に照射することで、腫瘍の増殖が加速 しないうちに、放射線治療を終了することを 目標とする。肺小細胞癌では1回1.5グレイ×2 回/日×15日(30回)45グレイ(3週間)の放射 線治療と化学療法を併用した場合、成績が もっとも優れていると報告されている。 腫瘍が大きくて、照射する範囲が広くなってし まう場合、化学療法を先行して行い、腫瘍が小 さくなった時点で、2グレイ×30回60グレイ(6 週間)の放射線治療を行うこともある。

(30)

適切な化学放射線療法併用により、

生存期間中央値: 20~23ヵ月

5年生存率: 22~26%

(31)

小細胞肺癌 T4N2M0 ⅢB期

45グレイ/30回/3週(AHF)+

化学療法4コース

(32)

放射線食道炎 放射線皮膚炎 白血球減少 放射線肺臓炎 化学療法の同時併用では増強されることが多い。 放射線肺臓炎は照射終了直後~数ヵ月で照射野 に一致してみられ、症状がないことも多い。症状 がある場合、微熱、咳、呼吸苦など。時に照射野外 に広がる場合があり、重症化すると生命に関わる。 化学療法との併用では重症化のリスクが高いと 言われている。

肺癌の放射線治療に伴う

急性期有害事象

(33)

放射線肺線維症 胸膜炎 心外膜炎 放射線脊髄症 (そのレベルより足側の麻痺・知覚鈍麻・ 膀胱直腸障害)←もっとも回避すべき有害事象。 通常は1回2グレイの治療のとき、40グレイを 超えないようにすることで、避けることができる。

肺癌の放射線治療に伴う

晩期有害事象

(34)

症状を和らげる目的の放射線治療

 骨転移 痛みの軽減と骨折や神経症状出現の予防  脳転移、癌性髄膜炎 神経症状や頭痛などの改善  上大静脈症候群 上大静脈(両側の頭や腕からの静脈が心臓 に向かって合流する部位)を圧迫する病変へ 照射することで腕や顔の浮腫を軽くする。仰 向けで眠れるようにする。  上記以外に、各種進行癌による痛みの緩和や 腫瘍からの出血を止める目的で照射すること もある。

(35)

脳転移の放射線治療

ガンマナイフによる定位照射施行

定位照射前 最大線量40グレイ、平均線量

(36)

放射線治療に よって、白内障 になることを 防ぐため、目の 水晶体をはず して治療する。

転移性脳腫瘍に対する全脳照射

(37)

骨転移に対する放射線治療

(38)

「継続は力なり」

治療期間中に長期で休みが入ると、

治療成績が低下することが、扁平上

皮癌という組織型の場合、報告され

ている。粘膜炎など、多少つらいこと

があっても、続けることが大切。

放射線治療において大切なこと

(39)

 本日のお話は、肺癌ガイドラインに沿った内容です。 難しく思われた部分もあったのではないかと思い ますが、治療に際しては、担当医が病気の進行度な どを説明しますので、ご参考になれば幸いです。  病=不幸と思われがちですが、病気を通じて、家族 の絆が強くなることは少なくありません。  良寛和尚の達観と、どんなときでもユーモアの精神 を忘れないでいることが、癌と闘うコツではないか と思っています。

最後に

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