(1)(2)目次
土壌調査 ... 1
1.断面調査道具一覧 ... 1
2.調査地点の選定と土壌断面の作り方 ... 2
2.1 調査地点の選定 ... 2
2.2 調査地点の記入項目および方法 ... 2
2.3 土壌断面の作り方 ... 6
3.土壌層位の区分と命名 ... 7
3.1 層位の分け方 ... 7
3.2 主層位 ... 7
3.3 漸移層位 ... 8
3.4 補助記号(添字) ... 8
3.5 添字の使用法 ... 8
3.6 層位の細分 ... 8
3.7 母材の不連続性 ... 8
4.層界 ... 10
4.1 深さ ... 10
4.2 形状 ... 10
4.3 明瞭度 ... 10
5.土色 ... 10
5.1 土色の表示 ... 10
5.2 土色の特徴的土層との関係 ... 11
6.斑紋・結核 ... 11
6.1 鮮明度 ... 11
6.2 形状 ... 12
6.3 量 ... 12
6.4 大きさ ... 12
6.5 硬さ ... 12
6.6 斑紋の種類 ... 13
6.7 結核の種類 ... 14
7.堆積有機質層 ... 14
8.有機物 ... 14
8.1 含量 ... 14
8.2 黒ボク土の有機物含量と土色の関係 ... 15
8.3 土色による有機物含量判定の場合の留意点 ... 15
9.土性 ... 15
9.1 粒径区分 ... 15
9.2 土性区分 ... 16
9.3 野外での土性の判定 ... 17
10.石礫 ... 17
10.1 岩質 ... 17
10.2 風化の程度 ... 17
10.3 大きさ ... 18
(3)10.4 形状 ... 18
10.5 含量 ... 18
11.土壌構造 ... 19
11.1 発達程度 ... 19
11.2 大きさ ... 19
11.3 形状 ... 20
12.コンシステンス ... 21
12.1 粘着性 ... 21
12.2 可塑性 ... 21
12.3 緻密度 ... 22
12.4 硬さおよび砕夷性 ... 22
13.キュータン ... 23
13.1 鮮明度 ... 23
13.2 種類 ... 23
13.3 量 ... 23
13.4 位置と方向 ... 24
14.孔隙性 ... 24
14.1 大きさ ... 24
14.2 形状 ... 24
14.3 量 ... 24
14.4 連続性 ... 25
14.5 方向性と分布位置 ... 25
15.植物根 ... 25
15.1 太さ ... 25
15.2 量 ... 25
16.水分状況 ... 26
16.1 乾湿 ... 26
16.2 地下水面 ... 26
17.反応試験 ... 26
17.1 試薬の調整法 ... 26
17.2 活性二価鉄イオン ... 27
17.3 マンガン酸化物 ... 27
17.4 活性アルミニウム ... 27
土壌分類 ... 28
1.土壌分の定義 ... 28
2.土壌区分のためのフローダイアグラム ... 29
3.土壌群・土壌亜群・土壌統群一覧表 ... 30
4.土壌亜群の定義 ... 32
5.土壌統群の区分基準 ... 35
6.土壌統の区分基準 ... 36
7.土壌統・亜群の定義のための特徴層位および識別特徴 ... 37
参考文献 ... 38
土壌断面調査記載表 ... 裏表紙
(4)土壌調査
断面記載のない土壌サンプルは、分析試料としての価値が半減してしまう。したがって、土壌断面調査の
段階では、視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚といった五感を十分に発揮して、土壌断面に刻印された土壌の生
い立ちの歴史を克明に観察・記録することが大切である。「百聞一見に如かず」という諺があるが、ここで
はさらに「百見一触に如かず」、とにかく直接自分の手でさわってみるのが土壌断面調査の第一歩である。
スコップやクワで試坑を掘り始めた段階で,すでに深さによって堅さが違ったり、スコップの先にねばり付
く土やさらさらした土、ずっしりと重い土やふわっと軽い土など、手応えが違うのに気が付く。また、掘り
あげた土塊がくずれる大きさや形などが深さによって違うことなども観察される。こうして試坑を作りなが
ら、土壌の性質が移り変わる境界がいくつぐらいあるか、その境界の深さがどの位であるか、あらかじめ見
当をつけておく。
1.断面調査道具一覧
用 具(必須) 用 途 数
土壌断面調査用資料 土壌断面調査手順 1
土壌断面調査票 調査結果記入 必要数
ラベル・ラベル立て 地名・土壌断面名・日付など記入 必要数
筆記用具(鉛筆・マジック等) 調査票・サンプル名記入 必要数
カメラ 土壌断面写真撮影 1
スコップ 穴を掘るための道具 2
ブルーシート 土を置いておく 2
スケール(折り尺) 層位深さ測定 1
スケール(リボンロッド) 土壌断面撮影用 1
竹串・爪楊枝 層位判別用 必要数
移植ごて 土壌断面整形・土壌採取 2
剪定ばさみ 植物根等切断用 1
土色帳 土色判定 1
土壌硬度計 緻密度測定 1
土色帳 土色判定 1
土壌硬度計 緻密度測定 1
試薬類(ジピリジル、TDDN、
NaF、フェノールフタレインろ紙) 各種活性物質判定用 必要数
水道水(洗瓶) コンシステンス等測定用 1
用 具(必要に応じて) 用 途 数
100ccSUS コアサンプラー 不攪乱土壌サンプル採取 必要数
採土補助器 コアサンプラーでの採土補助 1
小ナイフ 土壌サンプラー整形 1
ハンマー 土壌サンプラー打ち込み 1
F 袋 土壌サンプル保管 必要数
ビニールテープ 土壌サンプラー密閉用 必要数
(5)用 具(服装)
作業衣上下
手袋
帽子
タオル
トレッキングシューズ・長靴
雨具上下
防虫剤(草地・森林での調査)
2.調査地点の選定と土壌断面の作り方
2.1.調査地点の選定
調査地点の選定は、土壌調査を開始する際のまず基本的に重要な作業である。一般に、土壌調査の目的は、
ある一定の調査区域内に、いかなる性質の土壌がいかなる分布をしているかを調べることであるから、でき
るだけ調査の精度をあげ、しかも調査を効率的に進めるためにも、調査地点の選定に際しては十分な吟味が
必要である。
調査地点を選定する方法は、一般的に次の 2 通りがある。
1)土壌の生成やその分布と関係の深い調査地の地形・地質および植生などを参考にして、現地において
調査地点を決定する方法。
2)地形図や空中写真(縮尺の大きいもの)を利用し、調査区良い機内をいくつかの地形区に分け、それ
らの地形区毎にメッシュをかぶせるなどして、あらかじめ室内作業などで調査地点を決定する方法。
山地や丘陵地などの自然状態の土壌を調査する場合には1)が、畑地や水田などの人為の加わった土壌を
調査する場合には2)の方法が一般的に用いられる。1)は地形・地質ならびに植生などが似た様な状態の
所では、一般に同じような種類の土壌が分布することを利用するものであり、したがって、地形・地質並び
に植生がほとんど同じような所のほぼ中央部で、植生や地表面の状態が正常でかく乱や盛土などによって土
層が乱されていない所を掘ることで、その周辺の土壌を代表するものが得られる。
2.2 調査地点の記入項目および方法
2.2.1 地質(母岩)・母材・堆積様式
地質はそれを構成している母岩の風化によって、土壌の母材を提供している。母材は岩石が風化変質を受
け、柔らかく粗しょうになったものである。土壌調査では、地表の土壌断面を構成している母材を現地で調
べ、母材の組成、その堆積様式や年代などを記録する。
母岩は次の様に区分される。
区分 種類
火山砕屑物
Volcaniclastic material
火成岩
Igneous rock
未固結堆積物
火山灰(Volcanic ash)、火山礫(Lapilli)、軽石
(Pumice)、スコリア(Scoria)、火砕流堆積物
(Pyroclastic flow deposit)等
流紋岩(Rhyolite)、石英斑岩(Quartz
porphyry)、花崗岩(Granite)、安山岩
(Andesite)、閃緑岩(Diorite)、玄武岩
(Basalt)、輝緑岩(Diabase)、斑れい岩
(Gabbro)、かんらん岩(Peridotite)等
礫(Rock fragment)、砂(Sand)、泥
(6)Unconsolidated sediment
固結堆積物
Consolidated sedimentary rock
変成岩
Metamorphic rock
植物遺体
Plant remain
(Mud)、崖錐堆積物(Talus deposit)、土石流堆
積物(Debris flow deposit)等
礫岩(Conglomerate)、砂岩(Sandstone)、泥
岩(Mudstone)、頁岩(Shale)、粘板岩
(Slate)、火山角礫岩(Volcanic breccia)、凝灰
角礫岩(Tuff breccia)、凝灰岩(Tuff)、集塊岩
(Agglomerate)、チャート(Chert)、石灰岩
(Limestone)等
片麻岩(Gneiss)、結晶片岩(Crystalline
schist)、千枚岩(Phyllite)、ホルンフェルス
(Hornfels)等
高位泥炭(High moor)、中間泥炭(Transitional
moor)、低位泥炭(Low moor)等
堆積様式は次の様に区分される
残積成 Residual(斜面上部、山頂平坦部)
運積成 Transported
重力成 Gravitational
匍行成 Creep(斜面)
崩積成 Colluvial(斜面下部)
水成 Aqueous
海 成 Marine(海岸平野、砂丘、砂嘴、低地、干拓地等)
湖沼成 Lacustrine
沼沢成(湿地成)Paludal
河 成 Fluviatile
氾濫源成 Flood plain(河床、自然堤防、低湿地等)
扇状地成 Alluvial fan
三角州成 Deltaic plain
段丘成 Terrace(台地を含む)
氷河成 Glacial
風 成 Eolian(火山噴出物<一次>と非火山性の砂丘等)
集積成 Accumulative(高位泥炭、中間泥炭、低位泥炭、黒泥等)
人為的かく乱・移動 Anthropogenic(盛り土、切り土、除礫、混層耕、階段工、改良山成工等)
母材の記載は「流紋岩の残積性物質」、「風成火山灰」、あるいは「花崗岩質河成砂礫質堆積物」等と記
載する。
(7)2.2.2 地形・標高・傾斜・土壌浸食
地形は、次の点で土壌の生成(風化作用を含む)や浸食・堆積に影響を及ぼしている。
1)局地的気候・・・微気象を左右し、それを通じて土壌の水分と温度の状態に影響を与えている。
2)土壌浸食・再堆積・・・地形は雨水によって、土壌物質を斜面の上部から削剝し、斜面下部へ再堆積
させるなどの土壌の浸食に影響を及ぼしている。この浸食・再堆積の繰り返しが、土壌断面の形成に
影響を与えている。
3)内部排水・・・地形・起伏の違いが雨水の浸透を左右し土層内での水収支に影響を及ぼしている。
地形の記録には、凸・凹地などの区別、傾斜面の上・中・下部、斜面の縦断面の形状による凸型斜面上な
どの区別。また、微高地、微低地、階段状、台地上の浅い凹地、ハンモック状、ギルガイ(小丘状微起伏、
ヴァーティソル地帯にみられる)、人為改変、湿地などについて記録(スケッチ)しておくと良い。報告書
等には、「山腹平野微凸地南傾斜面上部」、「緩波状中位火山灰台地平坦面」の要に記載する。
標高は、地形図や空中写真上で一を定め、判断する。硬度計を用いると便利である。最近では Google 社
よりフリーソフト「Google earth」が提供されており、ソフト上で簡易的に標高を調べることができる。
傾斜角度は次の様に区分される。
区 分 傾斜角度(°)
平 坦 Flat
極緩傾斜 Very gently sloping
緩 傾 斜 Gently sloping
傾 斜 Sloping
急 傾 斜 Strongly sloping
極急傾斜 Steep
急 峻 Very steep
0~1
1~3
3~8
8~15
15~25
25~40
≧40
傾斜角度の度数から百分率表示への換算は、0~30°の範囲では近似的に
傾斜角度(°)×60/3438×100=傾斜角度(%)
で求められる。傾斜は「N10°W、極急傾斜(30°)」のように記載する。
土壌浸食は、その進行の早さや人為的作用の有無によって、次の様に分けられる。
1)正常浸食・・・自然景観、特に自然植生下で降雨や風などによって、土壌または地層が移動すること。
2)加速浸食・・・安定力として働いていた植物被が人的または自然に破壊されて、近郊が失われたため
浸食の速度が速められたもの。土壌の加速浸食の種類は、主に水食と風食、凍結・融解による浸食に
細分される。
水食・・・シート浸食(面状浸食)、リル浸食(雨溝浸食)、ガリ浸食(地隙浸食)、その他(地滑り、
水路浸食等)
シート浸食の程度は次の様に区分される。
区 分 基 準
極 微 Very slight
軽 度 Slight
中 度 Moderate
強 度 Severe
観察および聴取りよりほとんど認められないもの。
表層土の流出は約 25%以下で第一層が約 75%以上残り、耕土にはほとんど下層
土の混入が認められないもの。
表層土の流出は約 25~75%で、下層土がかなり混入していて耕耘していると認
められるもの。
表層土の大部分(75%程度)またはそれ以上、下層土の一部が流出し、ほとんど
下層土のみを耕耘していると認められるもの。
(8)ガリ浸食は、その深さと分布を次の様に区分する。
深さの区分
浅いガリ Shallow gully
深いガリ(基層が抵抗性) Deep gully
極めて深いガリ(基層が不安定) Very deep gully
分布の区分 基 準
稀 Few
多 Many
極めて多(大形)
Abundant
各ガリが 30m 以上離れている場合。
各ガリが約 30m 以内にある場合。
土地の 70%以上をカリが占めている場合、網目状に分布する場合、極めて大形
のガリがある場合。
再堆積とは雨水や風力によって、土壌物質が傾斜面の上部から下部へ、また風上から風下へ移動再堆積し
たものをいう。再堆積の特徴は、土壌分類の基準や土壌保全の対策の上からも重要である。したがって、再
堆積物の材料の種類、堆積の形状や規模、再堆積断面の土性(粒径組成)分布の特徴、周辺の土地景観など
を記録する。標準的な自然の土壌断面と比べ、新たに再堆積した土層の厚さとの差、母材およびその堆積構
造の差異(材料の種類・組成や粒径組成)などから、再堆積の形態や程度を判断する。風食による再堆積
(集積)は、次の様に地表面の形態(程度)、その集積の厚さによって区分する。
形 態 再堆積した土壌の厚さ
薄い Sallow
中度・平坦 Moderate・Flat
中度・円丘状 Moderate・Hummocky
厚い Deep
砂丘(小) Sand dune (small)
砂丘(大) Sand dune (large)
0~15cm
15~30cm
15~30cm
30~90cm
90~180cm
≧180cm
2.2.3 土地利用・植生
調査地点および周辺の土地利用(Land use)の状況について記載する。土地利用の区分と付記事項は次の
表による。
区 分 基 準
水田 Paddy field
畑地 Upland filed
樹園地 Orchard
林地 Forest
草地 Grassland
市街地 Urban land
湿・乾田の別、開田年次およびその後の人為的改変の種類、経過年数、休耕、法
規の状況など。
作物の種類、開畑年次およびその後の人為的か改変の種類および経過年数、休
耕、放棄の状況など。
果樹の種類、茶園、桑園の別、開園年次およびその後の人為的改変の種類、警官
年数など。
天然林および人工林の別、樹種、リン例、林冠のうっ閉度など。
野草地、牧草地、主な優占種など、周辺の植生の景観など。
住宅地、工業用地、商業用地、講演などの別。
報告書等には「放棄語 10 年目の休耕乾田」や「林齢 50 年のスギ人工林」などと記載する。
(9)2.2.4 排水状況
水田以外の畑や林地の土壌では、次の様に排水の良否が区分される。水田の場合には一般的に減水深(1
日当たりの田面水の低下する深さを mm 単位で表したもの)が用いられる。
区 分 基 準
排水阻害
Impededly drained
排水極めて不良
Very poorly drained
排水不良
Poorly drained
排水量孔
Well drained
排水過良
Excessively drained
土壌自身の透水性不良または不透水性の基岩、盤層あるいは高い地下水面の存在
によって、水の垂直方向への浸透が阻害され、平坦地や凹地では水たまりを形成
し、傾斜地では水野横流れが生じる。
常時ではないが、かなりの長期間にわたって土壌は多湿であり、A 層下部あるい
は A 層直下に、しばしば鉄やマンガンの斑紋が見られる。
水の移動はやや緩慢で、土壌は短期間ではあるが多湿となり、B 層下部 C 層に鉄
やマンガンの斑紋が現れる。
土壌から早くはないが容易に水が移動する一方、毛管孔隙には正常な植物生育に
とって十分な水が保持される。断面内の水分含量はかなり均質で、鉄やマンガン
の斑紋やグライ層はほとんどまたは全く認められず、鉄化合物は完全の酸化状態
にある。
粗孔隙に富むため、土壌からの水の移動が急速で、保水性が小さく干ばつを生じ
やすい。断面内には斑紋は無い。
水田土壌の排水状況の区分と減水深とのおおよその関係は次のようである。
区 分 減水深(mm day-1)
湿田 Ill drained
半湿田 Semi-ill drained
乾田 Well drained
漏水田 Over percolating
5~10
10~20
15~30
≧30
水稲に対して適正な減水深は 10~30mm day-1程度である。
2.3 土壌断面の作り方
調査地点が決まったら、調査用の試坑を掘る。
掘る際には、土壌の硬軟、ねばり具合、石礫や
根の分布状態などに注意し、それらの概略をつ
かんでおくと、あとの土壌断面の調査の際大変
参考になる。
続いて試坑内に土壌を観察するための垂直な
断面(土壌断面:soil profile)を設定する。平
坦な所では、土壌の観察や写真撮影に都合がい
いように、日光にむらなく当たるような面を土壌断面とすると便利なことが多い。土壌断面の大きさは目的
によって異なるが、土壌調査用の標準断面としては、一般に幅1m、深さ 1~1.5m、そして、土壌断面の反
対側に数段の階段を作るようにすると、試坑への出入りなど、あとの作業に大変都合がよい。掘り出した土
は試坑の両側に積み上げておくと、調査終了後の埋め戻しに便利であるが、その際、観察用の土壌断面の地
表部に掘り出した土を落としたり、あるいはそこを踏みつけたりして、土壌断面の表層部の自然の状態を乱
すことがないよう注意しなければならない。また、畑地や水田などにおける調査の場合には、元の状態に埋
め戻せるように、作土(表層土)と心土(下層土)とを、それぞれ別々に積み上げておくことも大切である。
(10) 素掘りが終わったら、土壌調査用のコテ(移植ごて)や剪定鋏などを用いて、調べようとする土壌断面内
のスコップやクワの跡を削ったり、植物の根などを切り揃えたりして断面の整形を行う。この作業は、一般
に表層から始めて順次下層に進めていくのがよい。
3.土壌層位の区分と命名
土壌断面は色・堅さ・手触り・根の分布などの性質の異なった、地表面にほぼ平行ないくつかの層の積み
重なりから成っている。土壌生成作用から形成されたものを土壌層位または単に層位とよび、これに対して、
氾濫堆積物層や軽石層などのような地質学的堆積作用によるものを層理とよんで区別する。また、森林土壌
などにみられる地表に堆積した動植物遺体からなる層は、堆積有機物層とよばれ、土壌層位に含められる。
層序すなわち層の配列は、土壌断面を特徴づける最も基本的な性質なので、野外で十分に観察して記蔵する
ことが大切である。
3.1 層位の分け方
試坑ができあがったら、調査する土壌断面を移植ごてで平らにけずり、色、根の分布、構造、粒子のあら
さ、孔隙、石喋の含量、あるいは移植ごての先端や親指の爪先で断面をつついたときの抵抗の大小などに着
目して、層位や層理を分ける。このようにして区分したそれぞれの層について、下記の順にしたがって各種
の性質を判定し記録する。
3.2 主層位
主層位の表示にはアルファベットの大文字を用いる。一般に土壌断面は上から順にA層、B層、C層とい
った 3 つの主層位から成り立っている。C層は土壌の無機質材料(母材)であり、A層は母材に動植物の影
響が加わった結果生成した、腐植によって黒く着色された表土層を示し、B層は C 層ともA層とも異なった
性質をもった部分を示す。このほか主層位には、O層(水で飽和されていない有機質層)、H層(水で飽和
された有機質層)、E層(淡色溶脱層)、R層(固い基岩)、G層(C 層の中の強還元層)がある。ほとん
どの層は 1 つの主層位記号で示されるが、移行層位では 2 つの記号を用いる。
H:水面下で、未分解または分解した植物遺体の集積により形成された有機物層。ほとんど常に水で飽和
されているか、かつて飽和されていたが今は人為的に排水されている層。泥炭あるいは黒泥とも呼ばれる。
O:泥炭、黒泥以外の地表に堆積した落葉、落枝などの未分解または分解した植物遺体からなる有機質層。
水で飽和されることはほとんどない。
A:表層または O 層の下に生成された無機質層。起源の岩石や堆積物の組織を失い,かつ次の特徴を 1 つ以
上もつもの。
1)無機質部分とよく混ざり合った腐植化した有機物が集積し、かつ E または B 層の特徴をもたない。
2)耕転、放牧、または同様の撹乱の結果生じた性質。
3)ヴァーテイソルなどにみられる表層撹乱作用の結果生じた下位の B または C 層と異なる形状。
E:珪酸塩粘土、鉄、アルミニウムが溶脱し、砂とシルトが残留富化し、また起源の岩石や堆積物の組織
を失った淡色の無機質層。ふつうOまたは A 層とB層の間にある。
B:A、E、Oまたは H 層の下に形成された無機質層・起源の岩石または堆積層の組織を失い、かつ次の特徴
を 1 つ以上もつもの。
1)A、E 層から溶脱した珪酸塩粘土、鉄、アルミニウム、腐植、炭酸塩、石こう、珪酸の集積富化。
2)炭酸塩が溶脱した証拠。
3)鉄やアルミニウムの酸化物の残留富化。
(11)4)土粒子を鉄やアルミニウムの酸化物が被覆していて、上および下の層位より明度が著しく低いか彩度が
高いかまたは色相が赤い。
5)珪酸塩粘土、遊離酸化物の生成と粒状、塊状、柱状構造の発達。
C:土壌の母材となる岩石の物理的風化層または非固結堆積物層。他の主層位の特徴をもたない。上位の
層位から溶脱したものの集積でなければ、珪酸、炭酸塩、石こう、鉄酸化物などの集積層は C 層になる。
G:強還元状態を示し、ジピリジル反応(Fe2+に対する反応)が即時鮮明なグライ層。干拓地のヘドロのよ
うに、ジピリジル反応は弱くても、水でほぼ飽和され、土塊を握りしめたとき土が指の間から容易には
み出すほど柔らかく、色相が 10YR よりも青灰色の層も含まれる。これは日本独特の用法で、日本の土
壌分類ではこの層の識別が不可欠である。G層は FAO/ISRIC の方式では Cr 層にほぼ相当する。斑鉄
をもつ酸化的グライ層は Go、斑鉄をもたない強還元的グライ層は Gr で示す。
R:土壌の下の固い基岩(母岩)。岩の塊を水中に 24 時間浸してもゆるまず、固くてスコップで掘ること
はできない。亀裂をともなうことがあるが非常にまれで、根はほとんど入ることはできない。
3.3 漸移層位
漸移層位には 2 種類ある。2 つの異なる主層位の性質を合わせ持つ層位は、優勢な主層位を前におき、AB、
EB、BE、BC のように 2 つの記号を続けて表示する。また、2 つの異なる主層位の性質をも粒分が混在
している層は、優勢な主層位を前におき、E/B、B/E、B/C、C/R のように斜線によって分離して表示す
る。
3.4 補助記号(添字)
主層位内の付随的特徴は、主層位記号の後にそれぞれの特徴を表す小文字の添字をつけて表示する。
a:よく分解した有機質物質。(例Ha、Oa)
b:埋没生成層位。埋没した土壌生成的層位。この記号は有機質土壌には用いない。(例Ab、Btb)
c:結核またはノジュールの集積。ふつう構成成分を表す添字を併記する。(例 Bck、Ccs)
d:物理的根の伸長阻害(根を通さない耕盤など)。
e:凍土。四季を通じて凍結または氷点下にある層。
g:グライ化。季節的停滞水による酸化・還元の反復で三二酸化物の斑紋を生じた層。(例Bg、Cg)
h:有機物の集積。無機質層位における有機物の集積を表す。(例Ah、Bhs)
i:分解の弱い有機物質。(例Hi、Oi)
j:ジャロサイト斑紋の出現。
k:炭酸塩の集積。ふつうは炭酸カルシウムの集積を表す。(例Bk、Ck)
m:固結または硬化。ふつう膠結(こうけつ)物質を表す添字を併記。(例 Ckm、Cqm、Ckqm)
n:ナトリウムの集積。交換性ナトリウムの集積を表す。(例 Btn)
o:三二酸化物の残留集積。
p:耕転などの撹乱。耕起作業による表層の撹乱を表す。(例Ap、Hp)
q:珪酸の集積。二次的珪酸の集積を表す。(例Bq、Cqm)
r:強還元。地下水または停滞水による連続的飽和の下で、強還元状態が生成または保持されていることを
示す。
s:三二酸化物の移動集積。有機物一三二酸化物複合体の移動集積を表す。(例Bs、Bhs)
t:珪酸塩粘土の集積。(例Bt)
v:プリンサイトの出現。湿状態で硬く、空気にさらされると不可逆的に固結する鉄に富み腐植に乏しい物
質(プリンサイト)の存在を表す。
(12) w:色または構造の発達。(例Bw)
x:フラジパンの形成。(例 Btx)
y:石こうの集積。(例 Cy)
z:石こうより溶けやすい塩の集積。(例Az、Ahz)
ir:斑鉄の集積。(例 Bgir、Bgirmn、Cgir)※日本独自の記号。水田土壌の生成過程を例解するに欠かせな
い。常に添字記号 g に続けて用いる。
mn:マンガン斑・結核の集積。(例Bmn、Cgmn)※日本独自の記号。水田土壌の生成過程を例解するの
に欠かせない。常に添字記号 g に続けて用いる。
3.5 添字の使用法
主層位が複数の添字をともなうときは,次のような約束によって表示する。
1)a、b、e、h、i、r、s、t、wは、最初に書く。Bhs 以外には、これらの添字を組み合わせて用いるこ
とはあまりない。
2)c、f、g、v、x、ir、mn は、最後に書く。ただし、埋没生成層位を表す添字 b は、これらのあとに書く。
3)特に約束がないものは、アルファベット順に並べる。
3.6 層位の細分
同じ記号で表された層位の細分は、全ての記号のあとにアラビア数字をつけて区分する(例C1-C2-Cg1-Cg2、Bs1-Bs2-2Bs3-2Bs4)。A、E層も同じように細分できる(例Ap、A1、A2、Ap1、Ap2、
E1、E2、Eg1、Eg2)。
3.7 母材の不連続性
無機質層位において、断面中に母材の不連続がある場合には、層位記号の前に、上部から順にアラビア数
字を付けて、Ap-Bt1-2Bt2-2Bt3-2C1-2C2-2R のように標記する。ただし、1 は省略する。不連続という
のは、その層が形成された材料または年代の違いを反映して、粒径組成または鉱物に著しい変化があること
を意味する。沖積堆積物中にふつうにある層理は、粒径組成が著しく違わなければ不連続とはみなさない。
有機質土壌の層の重なりは、不連続とはしない。有機質土壌の構成層が、有機質であればほとんどの場合
添字記号で、無機質ならば主層位記号で区分できる。
(13)4.層界
層界すなわち土壌層位間の境界は、明瞭な場合も漠然としている場合もあり、また境界の形状も平坦なも
のから複雑な形のものまである。境界が明瞭な場合には、そこを境として土壌の物理性や化学性が急激に変
化していることを示す。層界は、深さ、形状、明瞭度で表示する。
4.1 深さ
各層位の断面内での位置や範囲を明らかにするために、まず層界の深さを記載する。層界の深さを測る場
合には、無機質土壌では無機質層位の最上端(O 層があるときはその下端)を、有機質土壌ではすべての層
位の最上端を基準にして、そこから測った各層位の上端と下端の最小値と最大値を併記し,30/35~45/50
cmのように表す。O層の場合は、基準より上方へ向かって測定し、Oi:層 12/11~5/4cm、Oe層:
5/4~2/1cm、Oa層:2/1~0cmのように表示する。最小値と最大値を併記せず、平均値を用いてOa
層:2~0cm、B1 層:33~48cm のように表す場合も多い。
層厚は、各層位の厚さの最小値と最大値をもって 12~20cmのように表す。
4.2 形状
層界の形状は、次の 4 種類に区分される。
区 分 記号 基準
平坦 Smooth
波状 Wavy
不規則 Irregular
不連続 broken
ほとんど平面
凸凹の深さが幅より小
凸凹の深さが幅より大
層界が不連続
4.3 明瞭度
層界の明瞭度は,次の層までの移り変わる距離(層界の幅)を基準にして、次の 4 段階に区分される。層
界の幅が 10cm 以上におよぶような時には、一つの層位として独立させた方が良い場合が多い。
区 分 記号 基準(層界の幅)
画然 Abrupt
明瞭 Clear
判然 Gradual
漸変 Diffuse
<1cm
1~3cm
3~5cm
≧5cm
5.土色
土色は、土壌の最も重要な形態的特徴の一つであり、化学性、物理性、生物的性質と密接に関係しており、
土壌を同定するための有効かつ重要な特徴である。
5.1 土色の表示
土色の表示はマンセル表示系に準じた新版標準土色帖(農林水産省農林技術会議監修)を用いて行う。
土色は、
色相(hue):色味(赤,黄,青など)
明度(value):色の明暗
彩度(chroma):色の強さ、鮮やかさ の三属性で表示される。
(14)土色帖には、色相ごとに、垂直方向に明度、水平方向に彩度の各段階に相当する色片が貼ってある。色片
を貼ったページの左側のページに、その色片に相当する土色名が示されている。土色の完全な表示は、土色
名、色相、明度/彩度の順に並べ、赤褐 5YR4/6 のようになる。土色は土壌の水分条件によって変わるので、
ふつう湿土の色を記載する。必要なら土塊を乾かし、乾士の色も併記する。
5.2 土色と特徴的土層との関係
各種土壌分類における土色と特徴的土層との関係を下に示す。
6. 斑紋・結核
土壌中である成分がある部分に濃縮し、または除去されて、土色が周りの基質から区別されるものを斑紋
という。またある成分が濃縮しかつ硬化したものを結核という。これらは土壌生成環境の指示者として重要
である。斑紋・結核は土壌中で新たに生成したものであり、いろんな風化段階の礫や土器の破片、炭化木片
などは周りの土の色や硬さが違っても、斑紋・結核とはいわない。鮮明度、形状、色、量、大きさ、硬さの
うち、斑紋は硬さを除く項目を、結核は鮮明度を除く各項目を観察、記載する。
6.1 鮮明度
斑紋の鮮明度は,基質の色とのコントラストでどのくらい際だっているかによって,次の 3 段階に分ける。
区 分 記号 基 準
不鮮明 Faint F 色相、彩度、明度ともに基質のそれに近く、注意して観察することにより
見分けられる。
鮮明 Distinct D 色相で1~2段階、明度・彩度で数段階基質から離れている。
非常に鮮明 Prominent P 色相、彩度、明度ともに基質から数段階隔たって非常に目に付く
(15)6.2 形状
我が国は水田土壌調査の豊富な経験から、鉄・マンガンの酸化沈殿物に由来する斑紋の観察は諸外国に比
べ詳しく、形状も次のように分けて記載する。
区 分 記号 基 準
糸根状 Root-like RO イネの根の跡などに添った条線状のもの。主に作土に形成される。
膜状 Filmy FI 割れ目または構造体表面を被覆する薄膜状のもの。主に作土やグライ層に形
成される。
管状 Tubular TU 根の孔に沿ってできる点は糸根状と同じであるが、肉厚のパイプ状のもの。
主にグライ層や地下水湿性な灰色の下層土に形成される。
不定形 Irregular IR 作土やグライ層の上端付近に見られる不定形斑状のもの。雲状と混同されや
すいが、この班鉄は雲状とは逆に孔隙や構造面から基質へ広がっている。
糸状 Threadlike TH 細かい孔隙に沿った糸状のもの。膜状に広がっていることが多い。灌漑水湿
性水田の鉄集積層を形成していることが多い。
点状 Speckled SP 基質中に斑点状に析出したもの。ほとんどが黒褐色のマンガン斑。
雲状 Cloudy CL 基質中に見られる輪郭不鮮明な不定形斑状のもの。ほとんどがオレンジ色の
斑鉄で、孔隙や構造面に近づくにつれ次第に薄れ、灰色に変わる。灌漑水湿
性水田土壌の下層土や湿性な台地土の疑似グライ化層に形成される。
6.3 量
斑紋・結核の量は,断面に占める割合で,次の 6 段階に分ける。
区 分 記号 基 準
なし None
まれにあり Very few
あり Few
含む Common
富む Many
すこぶる富む Abundant
N
V
F
C
M
A
0%
0~2%
2~5%
5~15%
15~40%
≧40%
割合は標準土色帖についている面積割合の図を参照にして判定し、富む(18%)のようにパーセントも付
記するのが望ましい。
6.4 大きさ
斑紋・結核の大きさは、点状斑や結核の場合、直径(または長径、短径)を記載する。糸根状、糸状、管
状斑は内径を記蔽する。
6.5 硬さ
硬さは、結核に対してのみ適用する。
区 分 記号 基 準
硬 Hard
軟 Soft
H
S
指でつぶれないもの。
人差し指と親指の爪先でつぶれるもの
(16)6.6 斑紋の種類
1)斑紋と色模様
孔隙や構造間隙を水が満たして、その付近の鉄やマンガンが還元溶脱されると、孔隙・構造間隙に沿った
部分が灰色になる。これを灰色の斑紋(または灰色斑)という。灰色の部分が拡がり、地色だった褐色の部
分が所々に斑状に残るようになると、今度は褐色の方が斑紋とみなされる。
ただどちらかが基質あるいは斑紋といえない場合もある。その例として、赤黄色土の網状班とかトラ班と
呼ばれる、赤一黄または赤一白のモザイクがある。このような場合は 2 つ(時には 3 つあるいはそれ以上)
の色を土色の欄に列記し、各々の割合とそれがどんな模様をしているかを記載する。
2)鉄斑およびマンガン斑
遊離の鉄やマンガンが特定の部位に濃縮したものを鉄斑およびマンガン班といい,鉄質のものは黄褐色~赤
褐色、マンガン質のものは黒褐色~黒色を呈する。マンガン斑はテトラベース(TDDM)試薬で確認する。
水田土壌は、潅概期に作土で還元した鉄やマンガンを溶かした潅概水が浸透することによってできた諸形
態(鉄集積層や灰色化層)を持つ潅概水湿性のものと、潅概水の浸透がほとんど起こらないためこれらの形
態を持たず、その形態が単に地下水位の上下によりもたらされている地下水湿性のものとに分けることがで
きる。水田土壌の下層土の斑紋は、これらの生成条件を反映しているので次のように区分できる。
潅概水湿性の下でできる斑紋:雲状、糸状、点状(二価鉄化合物斑紋を除く)、糸根状、灰色斑。
地下水湿性の下でできる斑紋:管状、膜状、不定形、糸根状、灰色斑。
このことから、下層土の雲状、糸状、点状斑紋は潅概水湿性を表す指標として、また管状、膜状、不定形
の斑紋は地下水湿性を表す指標として用いることができる。
3)菱鉄鉱およびらん鉄鉱
菱鉄鉱(siderite)およびらん(藍)鉄鉱(vivianite)は二価鉄の化合物で、ふつういずれもグライ層中に
出現する。菱鉄鉱(炭酸第一鉄 FeCO3)は灰白色で 0.5~1.5cm 大の斑点状に析出し、ジピリジル試薬で
濃赤色を呈し、塩酸で発泡するので識別できる。空気中に放置すると、酸化されて褐色に変わる。よく発達
したものは硬化していることが多い。
らん鉄鉱(リン酸第一鉄 Fe3(PO4)2・8H2O)も新しい断面では灰色の斑点状または糸根状の形で析出し、
一見菱鉄鉱とまぎらわしいが塩酸で発泡せず、かつ空気中に放置すると青~青らん色に変わるので区別でき
る。菱鉄鉱、らん鉄鉱ともに有機物に比較的富む暗青灰色のグライ層に多く、地域的には日本海側の湿田地
帯にひろいが、東北や関東・東海にも存在が知られている。
4)ジャロサイト
ジヤロサイト(jarosite:KFe(SO4)2(OH)2)は酸性硫酸塩土壌に指標的な斑紋で、灰色の基質にオリーブ黄
色の糸根状、管状、膜状として析出する。わが国では稀にしかみられないが、諸外国ではデルタ地帯や海面
干拓地に珍しくない。これが存在する土壌は強酸性である。
5)塩類
世界の半乾燥~乾燥気候下では、土壌中に炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムの二次析出物が多い。硫
酸カルシウムは土層中に均一に析出することが多いが、炭酸カルシウムは局在化して析出し、色々な形の白
色の斑紋をつくる。例えば基質中に眼球大の球状析出物として、また孔隙に沿って糸根状に、構造表面に皮
膜状に析出する。量が少ないときは、構造面を被いつくさず枝分かれしたすじ状(擬菌糸状またはフィラメ
ント状)に析出することがある。炭酸カルシウムは塩酸に対して発泡する。
(17)6.7 結核の種類
特定の物質の濃縮が進み,ある場合にはそれに乾燥履歴が加わると,斑紋は硬化することがある。これを
結核という。例えばマンガン質の点状斑は、硬化して軟結核になっていることが少なくない。管状斑鉄もよ
く発達したものはガマの穂状または紡錘形で硬化しており、その模式的産地(愛知県高師ケ原)の名をとっ
て、しばしば「高師小僧」と呼ばれる。菱鉄鉱やらん鉄鉱も、先述のように結核として産出することが少な
くない。沖縄のサンゴ石灰岩土壌中には、パチンコ玉~ラムネ玉大の同心円構造を持つ鉄・マンガン質結核
がしばしばみつかる。一方、風化火山灰土の下層土では、時としてマンガン質の心を持つ黄白色の球状析出
物が出現する。地方により「ウズラの卵」とか「弘法の土鰻頭」と呼ばれ、多くは軟結核である。また、ポ
トゾルの鉄集積層には硬化した鉄質が埋まっていることがあり、オルトシユタインと呼ばれる。
わが国にはほとんどみられないものとして、湿潤熱帯の土壌に多く産する鉄質の結核がある。鉄石、ピソ
ライト、散弾状結核などと呼ばれる。また乾燥~半乾燥気候下では炭酸カルシウムの結核が多い。レス人形、
レス小僧、眼玉などと俗称される硬化物がそれである。
7.堆積有機質層
一般に森林や草原などの植被に覆われている地表面は、落葉や落枝などの植物遺体ならびにそれらの分解生
成物からなる有機物が層状に堆積している。それらは堆積有機質層と呼ばれ、土壌調査の際には、層の厚さ、
色調、形態、水分状態、菌根・菌糸および根の分布状態などについて調査が行われる。
堆積有機質層は分解の程度を反映した形態の相違に基づいて、次のように区分される。
Oi:砕氷層に位置し,ほとんど未分解の落葉・落枝などからなる層。
Oe:原形は失われているが,肉眼で葉や枝などの元の組織が認められる程度の分解状態のものからなる層。
Oa:肉眼では元の組織の判別ができない程に分解が進んだものからなる層。
上記の Oi 層、Oe層、Oa層は従来から森林土壌調査で使用されている堆積有機質層層位名L層
(litter:リターの頭文字)、F層(fermentation:発酵)、およびH層(humus:腐植)にそれぞれ相当
する。
地表面での有機物分解は、その場所の環境条件が分解者である土壌動物や微生物の活動にとって好適であ
るかどうかによって大きく影響されるため、堆積有機質層の形態は、その場所の温度や水分などの環境状態
を反映したものとなる。温度や水分環境が好適であり、土壌動物や微生物による有機物の分解作用が活発な
ところでは、Oe層や Oa 層は薄く、落葉・落枝などがまばらに堆積した Oi 層のみの堆積有機質層(ムル
(mull)型)が発達する。逆に、低温や乾燥・過湿など、土壌動物等による有機物の分解作用が不活発なと
ころでは、Oe層とOa層が特に厚い堆積有機質層(モル(mor)型)が発達する。ムル型とモル型の中間
的な形態を示す堆積有機質層はモーダー(moder)型と呼ばれる。
8.有機物
8.1 含量
有機物の含量の正確な測定は化学分析によらなくてはならないが、有機物が黒色味を呈することが多いこ
とから、野外では湿っているときの土の色の明度によって以下のようにおおよその有機物含量を判定する。
区 分 記号 基 準 明度による判定の目安
あり Low
含む Medium
富む High
すこぶる富む Very high
有機質土層 Oeganic layer
L
M
H
V
O
<2%
2~5%
5~10%
10~20%
≧20%
5~7(明色)
4~5(やや暗色)
2~3(黒色)
1~2(著しく黒色)
≦2(軽しょう真黒色)
(18)8.2 黒ボク土の有機物含量と土色の関係
黒ボク土では、土壌の命名において有機物含量の多少が重要視されるので、土色と化学分析による有機物
含量との関係に基づいて下のような細かい判定法が示されている。
有機物含量 明 度 彩 度 土 色 色 相
2%前後
3%前後
5%前後
8%前後
10%前後
12%前後
≧4
4
3
3
2
≦2
≧5
3~4
3=4
2~3
2
1
褐
褐
暗褐
黒褐~暗褐
黒~黒褐
黒
7.5YR
~
10YR
先にも述べたように土色からの有機物含量の判定は、湿土の色によるものであるので、調査時に土壌が乾
いている場合には湿らせてから判定を行う必要がある。
8.3 土色による有機物含量判定の場合の留意点
以下に土色によって有機物含量を判定する場合に留意すべき点をあげる。
1)一般に有機物含量は表層土壌で高く下層になるほど低くなる傾向にある。したがって上下の層位で土色
が異ならず、その土色から判定される有機物含量区分が 2 区分にまたがるときは、表層土は有機物の高い区
分に、下層土は低い区分に判定するのが無難である。
2)黒ボク土の混入した沖積低地の土壌は、黒味の割には有機物含量が高くないことが多い。また、埴質な
土壌に比べて砂質な土壌の方が、有機物含量が同じでも黒味が強くなる。したがってこのような土壌では、
土色から判定される有機物含量区分よりも低めに見積もった方がよい。
3)森林、特に天然林の土壌は、暗色化に寄与しない有機物が多いために、一般に有機物含量の高さほどに
は土色は黒くない。したがって、土色から判定される有機物含量区分よりは高めに見積もった方がよい。
4)未風化の火山砂、砂丘砂、河床の積喋などの呈する暗色は、有機物の色ではなく鉱物そのものの色であ
るので、当然のことながら有機物含量判定の目安とはならない。
9.土性
9.1 粒径区分
土壌を構成する無機質の粒子は、粒径によって下のように区分される。
粒径区分 粒径 区分の根拠
礫 ≧2mm 水をほとんど保持しない。
砂 粗砂
細砂
2~0.2mm
0.2~0.02mm
毛管孔隙に水が保持される。
同上、肉眼で見える限界。
シルト 0.02~0.002mm 凝集して土塊を形成する。
粘土 <0.002mm コロイド的正確を持つ。
(19)9.2 土性区分
土性は細土(2mm 未満)の鉱質部分を構成している粗砂、細砂、シルト、粘土の粒径組成のことであり、
砂、シルト、粘土の重量%の違いによって区分される。わが国では、粒径区分とともに、国際法に砂土、壌
質砂土、砂壌土の細分を付け加えた下に示すような土性区分が一般に用いられている。
区 分
記号
基準(粒径組成重量%)
粘 土
シルト
砂
砂土・(Sand)
壌質砂土・(LoamySand)
砂壌土。(SandyLoam)
壌土(Loam)
S
LS
SL
L
0~5
0~15
0~15
0~15
0~15
0~15
0~35
20~45
85~100
85~95
65~85
40~65
砂質埴壌土(SandyClayLoam)
埴壌土(ClayLoam)
シルト質埴壌土(SiltVClaVLoam)
SCL
CL
SiCL
15~25
15~25
15~25
0~20
20~45
45~85
55~85
30~60
0~40
砂質埴土(SandyClay)
軽埴土(LightClay)
シルト質埴土(SiltyClay)
SC
LiC
SiC
25~45
25~45
25~45
0~20
0~45
45~75
55~75
10~55
0~30
重埴土(HeavyClay)
HC 45~100 0~55 0~55
・粗砂および細砂の含量により次のように細分される。
粗砂土(COS) :細砂 40%以下、粗砂 45%以上
細砂土(FS) :細砂 40%以上、粗砂 45%以下
壌質粗砂土(LCoS):細砂 40%以下、粗砂 45%以上
壌質細砂土(LFS) :細砂 40%以上、粗砂 45%以下
粗砂壌土(CoSL) :細砂 40%以下、粗砂 45%以上
細砂壌土(FSL) :細砂 40%以上、粗砂 45%以下
また、右図は土性区分をわかり
易く図示した土性三角図表といわ
れるもので、図中の点線で示した
ように、粘土%の値から砂軸に平
行に引いた直線と、砂%の値から
シルト軸に平行に引いた直線との
交点が位置する領域の土性名を読
みとる。
100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
砂(%)
85 65
砂土(S)
壌質砂土
(LS)
砂壌土
(SL)
砂質植壌土
(SCL)
壌土(L) シルト質壌土(SiL)
シルト質植壌土(SiCL)
シルト質埴土
(SiC)
軽埴土
(LiC)
重埴土
(HC)
砂質埴土
(SC)
植壌土(CL)
55
(20)9.3 野外での土性の判定
正確な土性の判定は、もちろん実験室における粒径分析の結果を待たねばならないが、土性は土壌断面の
層位間の比較、風化の程度、粘土の機械的移動、異種母材の判定などの重要な目安となるので、現場で手触
りや肉眼での観察によって、おおよその判定(野外土性という)を行うことが必要である。
野外土性を判定するには、各層位から採取した小土塊に、可塑(かそ)性が最大になるように適量の水を
加えたのち、親指と人差し指の間でこねて、砂の触感の程度、粘り具合、またどの程度まで細く長くのばせ
るかなどを調べ、下に示した目安に従って判定する。
これにない土性についても、この目安を参考に判定する。
判定法
土性
ほとんど砂ばかりで、粘り気を全く感じない。 砂土(s)
砂の感じが強く、粘り気はわずかしかない。 砂壌土(SL)
ある程度砂を感じ、粘り気もある。砂と粘土が同じくらいに感じられる。 壌土(L)
砂はあまり感じないが、さらさらした小麦粉のような感触がある。 シルト質壌土(SiL)
わずかに砂を感じるが、かなり粘る。 埴浄土(CL)
ほとんど砂を感じないで、よく粘る。 軽埴土(LiC)
砂を感じないで、よく粘る。 重埴土(HC)
10.石礫
土壌に含まれる直径 2mm 以上の鉱物質粒子は石礫として、直径 2mm未満の細土と区別して調査する。
石礫の調査においては、岩質、風化の程度、大きさ、形状、含量を記減する。
10.1 岩質
土壌中に含まれる石礫は多少とも風化しているので、岩石ハンマーで砕いて新鮮な面を露出させ、ルーペ
などで構成鉱物を観察して岩石の種類を判定する。岩質の判定には岩石学的素養が必要なので、日頃、岩石
標本などに接して訓練しておくことが大切である。判定が困難なときはサンプルを持ち帰り、専門家に判定
してもらって、できるだけ正確に記録するように心掛けるべきである。
10.2 風化の程度
石礫の風化程度は、次の 4 段階に区分する。
区分 記号 基 準
未風化 (Fresh)
半風化 (Slightlyweathered)
風化 (Weathered)
腐朽 (Storonglyweathered)
F
SL
W
ST
元の岩石の堅硬度と色を保つもの。
多少風化変質しているがなお堅硬度を保つもの。
手で辛うじて圧砕できる程度まで風化変質しているもの。
スコップで容易に削れる程度に風化変質し,石喋の形態だ
け残しているもの(腐朽操)
(21)10.3 大きさ
石礫の大きさは、長径により次の 6 段階に区分する。
区 分 記号 基準(長径)
細礫 (Finegravel)
小礫 (Gravel)
中礫 (Stone)
大礫 (Largestone)
巨礫 (Boulder)
巨岩 (LarReboulder)
FC
GS
LS
B
LB
0.2~1cm
l~5cm
5~10cm
10~20cm
20~30cm
≧30cm
10.4 形状
石礫の形状は、円磨度によって次の 4 種類に区分する。
区 分 記号 基 準
角喋(Angular)
亜角喋(Subangular)
亜円喋(Subbrounded)
円喋(Rounded)
A
SA
SR
R
稜が鋭くとがっているもの。
稜が磨滅して丸みをおびるもの。
稜がほとんどなくなっているもの。
球形に近いもの。
10.5 含量
石喋の含量は,石喋の占める面積割合によって,次のように区分する。
区 分 記号 基 準
なし(None)
あり(Few)
含む(Common)
富む(Many)
すこぶる富む(Abundant)
礫土(Dominant)
N
F
C
M
A
D
0%
0~5%
5~10%
10~20%
20~50%
≧50%
面積割合の判定には,標準土色帖についている面積割合推定用のチャートを利用すると便利である。
(22)11.土壌構造
砂や粘土などの土壌構成粒子が形成する集合体(ベッド:ped)を土壌構造という。土壌構造は、乾燥や
湿潤の繰り返し、植物根や土壌動物などの作用によって形成されるため、土壌の生成環境をよく反映し、生
産力とも密接な関係がある。土壌構造の調査では、発達程度、大きさ、形状を記載する。構造が発達してい
ないものは無構造として区別する。
11.1 発達程度
土壌構造は発達程度によって次のように区分する。
区 分 記号 基 準
弱度
Weak
中度
Moderate
強度
Strong
W
M
S
土層内でペッドを辛うじて識別できる。断面から土塊を取り出すと、ベッドの大
半が壊れる。ベッドを櫛成しない土壌粒子もかなりある。
土層内ではベッドはあまりはっきりしないが、断面から土塊を取り出すと、かな
り安定で明瞭なペッドと若干の壊れたペッドに分けられる。ペッドを構成しない
土壌粒子はほとんどない。
土層内でペッドがきわめて明瞭に認められ,断面から取り出した土塊のほとんど
が完全なベッドに分けられる。ベッドを形成しない土壌粒子はほとんどない。
11.2 大きさ
土壌構造の大きさは、土壌構造の形状によって基準が異なる。ベッドの最小径によってそれぞれ次のよう
に 5 区分される。
区 分 記号 基 準 (最小径 mm)
粒状 塊状 柱状 板状
細 Very fine
小 Fine
中 Medium
大 Coarse
極大 Very coarse
VF
F
M
C
VC
<1 〈5 〈10 〈1
1~2 5~10 10~20 1~2
2~5 10~20 20~50 2~5
5~10 20~50 50~100 5~10
≧10 ≧50 ≧100 ≧10
(23)11.3 形状
土壌構造および無構造の形状は,次のように区分される。
区 分 記号 基 準
粒状 Granular
屑粒状(団粒状)
Crumb
粒状 Granular
塊状 Block
角塊状
Angular blocky
亜角塊状
Subangular blocky
柱状 Prismlike
円柱状 Columnar
角柱状 Prismatic
板状 Platy
CR
GR
AB
SB
CO
PR
PL
ほぼ球体または多面体で、周りのベッドの構造面とは
無関係の湾曲したまたは不規則な構造面を持ってい
る。指間で容易につぶれ,膨軟で多孔質な屑粒状と比
較的孔隙が少なく丸みがあり堅くて緻密な粒状とがあ
る。
ブロックまたは多面体で、周りのベッドの構造面と対
照的な平らか丸みのある構造面を持っている。典型的
なものは等方体であるが、柱状や板状への様々な移行
型がある。稜角が比較的角張った角塊状と稜角に丸み
のある亜角塊状とがある。よく発達した角塊状構造は
堅果状(nutty)構造ともいう。
垂直に長く発達した柱状の構造で、周りのペッドの構
造面と対照的な平らかやや丸みのある構造面を持って
いる。柱頭が丸い円柱状と丸くない角柱状とがある。
平板状に発達した構造で、ほぼ水平に配列し、ふつう
重なり合っている。一般に溶脱を受けた土壌の表屑部
に発達する。
区 分 記号 基 準
単粒状
Singl grain
壁状
Massive
SG
MA
砂丘の砂のように各粒子がバラバラの状態にあるも
の。
土層全体が級密に凝集し、一定の構造を認めるこがで
きないもの。常時湿潤な土壌の下層土に多い。と羊葵
のような雰囲気。
A:角柱状 B:円柱状 C:角塊状
D:亜角塊状 E:板状 F:粒状
(24)12.コンシステンス
コンシステンスの判定は、一般に粘着性、可塑性、綴密度(堅密度)、乾・湿状態の堅さおよび砕易性
(破砕の難易)などを調べる。野外で試坑を掘る際にスコップに伝わってくる土壌の硬軟や付着性、重さ、
土塊の崩れ方などもコンシステンス判定の参考となるので記載しておく。
12.1 粘着性
粘着性とは、土壌を親指と人差し指の間で圧して引き離すときの付着する性質をいう。粘着性は水分状態
によって変化し、最も高まったときの状態によって次のように区分される。
区 分 記号 基 準
なし Non sticky
弱 Slightly sticky
中 Sticky
強 Very sticky
NS
SS
S
VS
土壌がほとんど指に付着しない。
土壌が一方の指に付着するが、他方の指には付着しな
い。指を離したときに土壌はのびない。
両指頭に付着する。指を離したときに土壌が多少糸状に
のびる傾向を示す。
両指頭に強く付着する。指を離したときに土壌が糸状に
のびる。
12.2 可塑性
可塑性とは、力を加えていくと変形し、力を除いたときにその変形を保持する能力をいう。可塑性の強弱
は、土壌に十分な湿りを与え、親指と人差し指の間でこねて粒団を壊し、こねている間に水分が蒸発して土
が指に付着しなくなったときに棒状にこれのばし、その状態により次のように区分する。
区 分 記号 基 準
なし Non plastic
弱 Slightly plastic
中 Plastic
強 Very plastic
極強 Extremely plastic
P P
N S
P
VP
EP
全く棒状に延ばせない。
辛うじて棒状になるが,すぐに切れてしまう。
直径 2mm程度の棒状に延ばせて、こね直すのに力を要
しない。
直径 1mm程度の棒状に延ばせて、こね直すのにやや力
を要する。
長さ 1cm 以上の極めて細い糸状に延ばせて、これ直すの
にかなり力を要する。
(25)12.3 緻密度
緻密度の判定には、土壌硬度計を用い、その計測値によって次のように区分される。なお、親指の貫入程
度による簡易計測法の基準も併せて示した。
区 分 記号 基 準
極疎 Very loose
疎 Loose
中 Medium
密 Compact
極密 Verycompact
VL
L
M
C
VC
≦10mm
11~18mm
19~24mm
25~28mm
≧29mm
ほとんど抵抗なく指が貫入する。
やや抵抗はあるが貫入する(11~15mm)。また
はかなりの抵抗があるが第一関節以上は貫入する
(15~18mm)。
第一関節まで貫入する(19~20mm)。または
力、なり抵抗があり、貫入せずへこむ程度(20~
24mm)。
指跡はつくが貫入しない。
指跡もつかない。
12.4 硬さおよび砕易性
12.4.1 乾状態の場合
乾状態の硬さおよび砕易性は、乾状態にある土塊を親指と人差し指との間または両手でくずし、そのときの壊れ
易さによって次のように区分される。
区 分 記号 基 準
疎しょう Loose
軟 Soft
わずかに硬い Slightly hard
硬い Hard
すこぶる硬い Very hard
極端に硬い Extremely hard
L
S
SH
H
VH
EX
凝集性を示さない。
土塊は極めて弱い粘着性ともろさを持つ、極めて
弱い力で粉状や単粒状に壊れる。
力に対してわずかに抵抗があるが指間で簡単に壊
れる。
力に対して中位の抵抗がある。両手では簡単に壊
せるが、指間ではやっと壊せる状態である。
力に対して極めて抵抗がある。両手でも壊すこと
が困難な状態で、指間では壊せない。
極端に大きな抵抗があり,両手でも壊せない。
12.4.2 湿状態の場合
湿状態の堅さおよび砕易性は、野外で湿っている土塊の壊れ易さによって次のように区分される。土塊が乾燥し
ている場合には水で湿らせて試験する。
区 分 記号 基 準
疎しょう Loose
極砕易 Very Friable
砕易 Friable
堅硬 Firm
すこぶる堅硬 Very Firm
極端に堅硬 Extremely Firm
L
VFR
FR
FI
VFI
AEFI
凝集性を示さない。
土塊はわずかな力で壊れるが、それを再びくっつけられる。
土塊は指間で容易に壊れるが、それを再びくっつけられる。
土塊は指間で多少の力で壊れるが明らかな抵抗を感じる。
土塊を壊すのにかなりの強い力が必要であり、指間で壊すの
が困難である。
指間で壊すことができず、小片ずつ剥離できる程度である。
(26)13.キュータン
キュータンは、ベッドの表面、亀裂や孔隙内にみられる被膜や光沢のある圧迫面などを意味する用語であ
る。野外でキュータンを調べる場合には、ベッドを割った横断面を 10 倍程度の倍率のルーペで観察する。
13.1 鮮明度
キュータンの鮮明度は、次のように 3 段階に区分される。
区 分 記号 基 準
不鮮明
Faint
鮮明
Distinct
非常に鮮明
Prominent
F
D
P
隣接した表面に比べて、色、滑らかさなどの性質の違いが明瞭でない。
被膜を通して内部の細砂粒子が見える。ラメラ(薄層状の粘土の集積
層)は、2mmより薄い。
隣接した表面に比べて、滑らかさと色が明らかに異なる。被膜を通して
見える細砂粒子の輪郭は不明瞭。ラメラは 2~5mm の厚さである。
隣接の表面に比べて,非常に平滑で,色の違いが対照的である。
被膜を通じてない部の細砂粒子はみえない。ラメラは 5mm より厚い。
13.2 種類
キュータンの種類は,生成過程や構成物質により次のように区分される。
区 分 記号 基 準
粘土キュータン
Clay cutan
有機物キュータン
Organic matter
cutan
酸化物キュータン
Sesquioxide cutan
ストレスキュータ
ン
Stresscutan
CL
OR
SE
ST
粘土が沈着してできた平滑で光沢のある被膜。構造単位内部と被膜
の境界が明瞭。粘土の機械的移動により生成。
有機物が沈着してできた暗色の被膜。平滑で光沢のある外観を示さ
ない。
鉄やマンガンなどの酸化物が沈着した被膜。ペッド内部とは色が明
確に異なり、主成分が酸化鉄の場合は赤く、酸化マンガンの場合は
黒い。水田土壌にみられる膜状斑や糸根状斑は酸化物キュータンの
一種であるが、それらは斑紋の項に記載する。
乾いていた土壌が湿るときにペッドが互いに押し合ってできる平滑
で光沢のある圧迫面をいう。横断面で被覆物の厚さは認められな
い。砂を含む土壌の場合にはペッドの表面に砂粒子がみられる。
ヴァーテイソルに特徴的なスリッケンサイド(slickenside)はストレ
キユータンの一種で、平行な縞と細長い窪みを持つ平滑面をいう。
13.3 量
キュータンの量は,孔隙,砕屑物,ベッドなどの表面のうちキュータンによって被覆されている面積の
割合によって次のように区分される。
区 分 記号 基 準 区 分 記号 基 準
なし None
まれにあり Very few
あり Few
N
V
F
0%
0~2%
2~5%
含む Common
富む Many
すこぶる富む Abundant
C
M
A
5~15%
15~40%
≧40%
(27)13.4 位置と方向
キュータンの発達している場所を、ペッド面、孔隙、砕屑物、ラメラなどのように記載する。また、ペッ
ド面の方向を水平・垂直・斜方向(角度)などのように記載する。
14.孔隙性
孔隙性は、土壌体内部にある空間の総称で、孔隙(pore:ペッド内部に存在する空間)と亀裂(crack:
ペッド相互間に生じた空間)に大別される。野外調査では、土塊を割った面で肉眼で観察されるものについ
て記載する。また、孔隙や亀裂の生成要因が、植物根や土壌動物の巣穴、ガスの発生などと特定できる場合
は記載する。
14.1 大きさ
孔隙の大きさは,短径により次のように区分される。
孔隙の区分 記号 基 準 孔隙の区分 記号 基 準
細 Very fine
小 Fine
V
F
0.1~0.5mm
0.5~2mm
中 Medium
粗 Coarse
M
C
2~5mm
≧5mm
また、亀裂の大きさは、幅により次のように区分される。
亀裂の区分 記号 基 準 亀裂の区分 記号 基 準
狭小 Fine
中幅 Medium
F
M
<1mm
l~2mm
幅広 Wide
極幅広 Very wide
W
V
2~5mm
≧5mm
14.2 形状
孔隙の形状は,次のように区分される。
区 分 記号 基 準
小泡状 Vesicular
管状 Tubular
割れ目状 Interstitial
面状 Planar
VE
TU
IN
PL
ほぼ球形または楕円形で,不連続のもの。
動物の活動や植物根に由来する細長い管状のもの。
不規則な形状のもの
構造面や亀裂面にできる平面上の空隙。亀裂はこれに含めない。
14.3 量
孔隙の量は、100cm2
当たりの孔隙数によって、孔隙の大きさごとに次のように区分される。また、亀裂
の量は、亀裂間の距離または幅 1m 当たりの亀裂の数によって記載する。
区 分 記号 基準(100cm2当たりの孔隙数)
細孔隙・小孔隙 中孔隙・大孔隙
なし None
あり Few
含む Common
富む Many
N
F
C
M
0 個
l~50 個
50~200 個
≧200 個
0 個
1~5 個
5~20 個
≧20 個
(28)14.4 連続性
孔隙の連続性は,次のように区分される。
区 分 記号 基 準
連続 Continuous
不連続 Discontinuous
C
D
個々の孔隙が層位内でつながっている。
個々の孔隙が層位内で局部的である。
14.5 方向性と分布位置
管状孔隙や亀裂は、その伸長方向によって垂直、水平、斜、方向性なしに区分される。また孔隙の発達す
る位置についても、ペッド内かベッド間か記す。
15.植物根
層位ごとに分布する根を、太さごとにそれぞれ分布量を記載する。枯死根や腐朽根についても、それらと
は別に調査記載する。
15.1 太さ
根の太さは、直径により次のように区分される。
区 分 記号 基 準 区 分 記号 基 準
細 Very fine
小 Fine
VF
F
<0.5mm
0.5~2mm
中 Medium
粗 Coarse
M
C
2~5mm
≧5mm
15.2 量
根の量は 100cm2
当たりの根数により、次のように区分される。
区 分 記号 基準(100cm
2
当たりの根数)
細根・小根 中根・大根
なし None
まれにあり Very few
あり Few
含む Common
N
VF
F
CM
0
1~20
20~50
50~200
0
1~2
2~5
5~20
(29)16.水分状況
水分状況は、調査前の降雨状況にも影響を受けるので、調査日や調査前の天候についての記載を忘れない
ようにする。
16.1 乾湿
野外での土壌の乾湿は、小土塊を手で握った時の感触により次のように区分する。
区 分 記号 基 準
乾 Dry
半乾 Moderately dry
半湿 Moderately moist
湿 Moist
多湿 Wet
過湿 Very wet
D
MD
MM
M
W
VW
土塊を強く握っても手のひらに全く湿り気が残らない。
湿った色をしているが、土塊を強く握った時に、湿り気
をあまり感じない。
土塊を強く握ると手のひらに湿り気が残る。
土塊を強く握ると手のひらが濡れるが、水滴は落ちな
い。親指と人差し指で強く押すと水がにじみでる。
土塊を強く握ると水滴が落ちる。
土塊を手のひらにのせると自然に水滴が落ちる。
16.2 地下水面
地下水面は、湧水の上昇がほぼ停止した位置までの深さを測り、▽68cmのように記戦する。数字は地表
から水面までの深さを表す。一般に湧水があるときには、できるだけ速やかに、断面下部から調査とサンプ
リングを行い、調査終了時に水面の深さを測定する。
水面が一時的な停滞水であるか、安定した地下水位であるか、また伏流水であるかの判定は困難であるが、
聞き取り調査や試料などで確認できる場合はそれを記載する。通常は、斑紋の形成されている灰色の層の上
端が地下水の毛管上昇帯の上限であり、グライ層は常に水でほぼ飽和されている層とみなされる。
17.反応試験
ここでは還元状態や活性アルミニウムなどの判定のために断面調査時に行う試験について説明する。ここ
で用いる試薬は下記に示した。
17.1 試薬の調整法
α-α’ジピリジル試薬:α-α’ジピリジル(α-α’ピピリジル)1g を 10%(V/V)酢酸溶液 500mL に溶か
す。
TDDM試薬(テトラベース):テトラメチル・ジアミノ・ジフェニール・メタン試薬 5g を 10%(V/V)酢酸
溶液 1L に溶かし、不溶物を濾過する。
NaF 試薬・フェノールフタレイン紙:NaF の 1M溶液、およびフェノールフタレイン(1g を 100mL のエ
タノー ルに溶かしたもの)をしみ込ませ乾燥させたろ紙。