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(3) 生活習慣を改善するために

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1 生活習慣改善の取組の在り方

 これまでの全国体力・運動能力、運動習慣等調査(以下、全国体力調査)の結果から、 運動実施頻度(毎日する者と全くしない者)が体力に大きな影響を及ぼしていることが示 されている(図3-Ⅲ-1)。そのため、体力向上にとって日常的な運動時間の確保が重要であ ると言える。そして、運動を生活の中に取り入れていく(日常化する)ためには、生活習 慣全般を見直していく必要があると言える。  また、これまでの全国体力調査の結果などから示された生活習慣と体力の関連性は、朝 食摂取、睡眠時間、テレビ等視聴時間のそれぞれを改善すれば体力が向上するという直接 的なものではなく、規則正しい生活習慣が体調の良い健康的な体を育み、日常の学校を中 心とした活動に意欲的に参加することができることにより、結果として体力の向上に結び付 いていることが考えられる。  「体を動かすこと、朝食を摂取すること、睡眠時間を確保すること、テレビ等(テレビ、 ビデオゲーム、携帯電話、パソコン)の視聴時間を適切なものにすること」などのそれぞ れの生活行動の改善は、相互の生活行動に影響を及ぼす。例えば、テレビ等の視聴時間が 短くなれば就寝時刻が早まり睡眠時間の確保につながる可能性があることも考えられ、起 床時刻が早まれば朝食を摂取する時間を確保できることも推察される。また、体を動かす ことによる適度な身体的疲労感は食欲や睡眠時間に影響することとなる。睡眠、朝食、テ レビ等視聴時間の改善が体調の良い健康的な生活を送ることを可能にし、体調が良いから こそ「よく体を動かす」ことができ、結果として子どもの体力の向上につながると言える。  体力向上の観点からは、運動習慣の確立による日常的な運動時間の増加が最も重要であ るが、運動が苦手で体力の低い児童生徒に対して運動習慣を身に付けさせることは容易な ことではない。しかし、生活習慣の一部である朝食摂取、睡眠時間、テレビ等視聴時間に ついては、工夫次第で児童生徒全員が改善している事例が見られる。そして、そうした生 活習慣の改善を通して体力の向上につなげている事例がある。そのため、運動が苦手で体 力の低い児童生徒に対しては、生活習慣の改善に関する取組が初期段階の取組として有効 である。  ここでは、はじめに生活習慣と体力の関わりについて、全国体力調査の結果に基づいて 解説し、生活習慣改善に取り組んでいる学校の事例を紹介する。

Ⅲ 生活習慣を改善するために

全国平均 40 45 50 55 60 しない ときたま (月に1∼3日) 時々 (週に1∼2日) ほとんど毎日 (週に3日以上) 体力合計点 57.0 51.3 47.6 45.7 (点) 全国平均 40 45 50 55 60 しない ときたま (月に1∼3日) 時々 (週に1∼2日) ほとんど毎日 (週に3日以上) 体力合計点 58.6 58.6 53.9 51.0 50.0 (点) 図3-Ⅲ-1 運動やスポーツの実施頻度と体力合計点との関連(平成22年度) ●男子 ●女子 小学校

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図3-Ⅲ-3 朝食の摂取状況と肥満傾向児及び痩身傾向児出現率との関連(平成22年度) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 肥満:7.5 正常:89.9 肥満:12.9 正常:85.7 痩身:2.6 痩身:1.5 肥満:17.9 正常:80.3 痩身:1.8 ●女子 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 肥満:9.7 正常:87.9 肥満:14.3 正常:83.9 痩身:2.3 痩身:1.7 肥満:17.0 正常:81.4 痩身:1.6 ●男子 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 361 322 278 (分) 1週間の総運動時間 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる (分) 1週間の総運動時間 722 607 509 図3-Ⅲ-2 朝食の摂取状況と1週間の総運動時間との関連(平成22年度) 全国平均 40 45 50 55 60 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 体力合計点 54.6 52.3 50.7 (点) 40 45 50 55 60 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる (点) 体力合計点 55.1 50.6 全国平均 53.1 図3-Ⅲ-4 朝食の摂取状況と体力合計点との関連(平成22年度)

2 生活習慣と体力の関わり

(1)朝食を毎日食べることが体力向上の好循環を生む  朝食摂取の効果は、適正な体重を維持し、体重の増加を抑えること等多岐にわたる。全 国体力調査の結果では、毎日食べる群の運動時間は毎日食べない群よりも長いことが示され ている(図3-Ⅲ-2)。また、毎日食べる群の肥満傾向児の出現割合は時々食べない群及び毎 日食べない群よりも低いことが示されている(図3-Ⅲ-3)。さらに、毎日食べる群の体力合計 点がそうでない群と比べて高いという結果(図3-Ⅲ-4)から考えると、朝食を毎日食べるこ とが運動時間の増加や肥満傾向と関連し、これらの要因が相互に影響し合って体力が向上 するという好循環を生み出していることが考えられる。 ●男子 ●男子 ●女子 ●女子 小学校 小学校 小学校 Ⅲ 生活習慣 を改善 す る た め に 第

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章  体力向上 へ の 活用 の ポ イ ン ト と 取組事例

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(2)テレビ等の視聴時間が 3 時間を超えると体力が低下傾向  テレビ等の視聴時間の影響については、テレビやパソコンの視聴時間が肥満度や身体活 動量と関連しているということがこれまでの全国体力調査により示されている。例えば、平 成22年度全国体力調査を再分析すると、テレビ等の視聴時間が3時間以上の児童生徒は他 の児童生徒と比べて1週間の総運動時間が短いことが分かる。さらに、肥満傾向にある児童 生徒は他の児童生徒と比べてテレビ等の視聴時間が3時間以上である割合が多い。  また、1日のテレビ等の視聴時間が3時間以上である群の体力合計点が他の群と比べて低 いことが示されている(図3-Ⅲ-6)。  したがって、テレビ等の視聴時間を適切な時間とすることは運動時間の増加や適正体重 の維持と関連して体力に影響していることが考えられる。 ●男子 ●男子 ●女子 ●女子 図3-Ⅲ-5 生活習慣の要因と体力合計点との関連(平成20年度) *決定木分析の結果によるグラフ( 25ページ参照) 全国平均 50 55 60 朝食毎日摂取者 90%未満+3時間以上 テレビ(テレビゲーム含む) 視聴者25%以上+ 睡眠時間6時間未満者 5%以上の学校 朝食毎日摂取者 90%未満+3時間以上 テレビ(テレビゲーム含む) 視聴者25%以上の学校 朝食毎日摂取者 90%未満の学校 朝食毎日摂取者 90%以上の学校 体力合計点 55.1 53.7 (点) 54.2 54.0 全国平均 30 35 40 45 50 55 朝食毎日摂取者 75%未満 +3 時間以上テレビ (テレビゲーム含む) 視聴者 45%以上の学校 朝食毎日摂取者 75%未満の学校 朝食毎日摂取者 75%以上の学校 38.8 41.6 39.9 体力合計点 (点) 全国平均 50 55 60 朝食毎日摂取者 95%未満+睡眠時間 6時間未満者5%以上 +朝食を全く食べない者 1%以上の学校 朝食毎日摂取者 95%未満+睡眠時間 6時間未満者 5%以上の学校 朝食毎日摂取者 95%未満の学校 朝食毎日摂取者 95%以上の学校 体力合計点 56.8 55.1 53.8 (点) 54.7 全国平均 30 35 40 45 50 55 朝食毎日摂取者 70%未満+睡眠時間 8 時間以上者 20%以上の学校 朝食毎日摂取者 70%未満の学校 朝食毎日摂取者 70%以上の学校 体力合計点 45.9 44.0 (点) 48.7 中学校  朝食の摂取状況(朝食摂取率)を見ると、朝食を毎日食べる児童生徒の割合が、小学校 では90∼95%以上、中学校では70∼75%以上の学校の体力合計点は、それ未満の学校と比 べて高い傾向にある(図3-Ⅲ-5)。そこで、児童生徒が朝食を「毎日食べる」ようになること を目標とする生活習慣の改善の取組を行うことが、子どもの体力向上の観点から有効であ ることが分かる。 小学校

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全国平均 40 45 50 55 60 3時間以上 2∼3時間未満 1∼2時間未満 1時間未満 体力合計点 55.1 55.1 54.6 53.3 (点) ●男子 40 45 50 55 60 3時間以上 2∼3時間未満 1∼2時間未満 1時間未満 体力合計点 55.1 55.2 55.1 54.4 (点) 全国平均 ●女子 図3-Ⅲ-6 1日のテレビ等の視聴時間と体力合計点との関連(平成22年度) 中学校 全国平均 30 35 40 45 50 55 3 時間以上 2∼3 時間未満 1∼2 時間未満 1 時間未満 体力合計点 42.6 42.2 41.6 40.2 (点) ●男子 全国平均 30 35 40 45 50 55 3 時間以上 2∼3 時間未満 1∼2 時間未満 1 時間未満 体力合計点 48.1 47.0 (点) 48.6 48.5 ●女子  朝食の摂取状況とテレビ等の視聴時間を組み合わせて体力との関連を分析した結果から は、「朝食を毎日食べてかつテレビ等の視聴時間が1時間未満」の児童生徒は、「朝食を全く 食べずかつテレビ等の視聴時間が3時間以上」の児童生徒よりも体力合計点が約3∼5点高い ことが分かる(図3-Ⅲ-7)。この傾向は特に男子において顕著に現れていることから、テレビ 等の視聴時間を3時間未満に抑えることは、特に男子における体力の向上に有効であると言 える。 45 50 55 60 65 1 時間以上 2 時間未満 1 時間未満 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 51.6 51.6 51.051.051.051.050.450.4 (点) 全国平均 52.0 52.0 52.9 52.9 53.3 53.3 53.0 53.0 55.1 55.1 55.155.1 53.5 53.5 54.6 54.6 テレビ等の視聴時間 1 時間未満 1 時間以上 2 時間未満 2 時間以上 3 時間未満 3 時間以上 全国平均 45 50 55 60 65 1 時間以上 2 時間未満 1 時間未満 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 54.8 54.8 55.255.2 51.4 51.4 51.551.551.651.651.751.7 (点) 53.4 53.4 53.5 53.5 53.0 53.0 52.6 52.6 54.9 54.9 55.3 55.3 テレビ等の視聴時間 1 時間未満 1 時間以上 2 時間未満 2 時間以上 3 時間未満 3 時間以上 40 45 50 55 43.1 43.1 42.142.1 37.8 37.8 (点) 全国平均 38.9 38.9 40.1 40.1 40.6 40.6 41.6 41.6 40.3 40.3 41.6 41.6 テレビ等の視聴時間 40.4 40.4 39.339.3 38.938.9 1 時間未満 1 時間以上 2 時間未満 2 時間以上 3 時間未満 3 時間以上 40 45 50 55 1 時間以上 2 時間未満 1 時間未満 45.1 45.1 44.944.9 45.045.0 (点) 全国平均 45.7 45.7 46.7 46.7 46.8 46.8 46.4 46.4 48.9 48.9 49.249.2 47.9 47.9 49.0 49.0 44.2 44.2 テレビ等の視聴時間 1 時間未満 1 時間以上 2 時間未満 2 時間以上 3 時間未満 3 時間以上 中学校 ●男子 ●男子 ●女子 ●女子 小学校 小学校 Ⅲ 生活習慣 を改善 す る た め に 第

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章  体力向上 へ の 活用 の ポ イ ン ト と 取組事例

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 朝食の摂取状況と睡眠時間を組み合わせて1週間の総運動時間との関連を分析した結果 からは、小学生においては「朝食を毎日食べてかつ睡眠時間が8時間以上」、中学生におい ては「朝食を毎日食べてかつ睡眠時間が6∼8時間(男子は8時間以上)」の児童生徒は、そ うでない児童生徒と比べて、1週間の総運動時間が長いことが分かる(図3-Ⅲ-9)。以上の結 果から、睡眠時間を十分確保し、朝食を摂取して登校する児童生徒は日常の運動時間が多く、 その結果として体力が高く維持されていると考えられる。 (点) 全国平均 30 35 40 45 50 55 8 時間以上 6∼8 時間未満 6 時間未満 体力合計点 47.2 48.3 47.3 (点) 全国平均 30 35 40 45 50 55 8 時間以上 6∼8 時間未満 6 時間未満 体力合計点 41.3 41.8 40.7 ●男子 ●男子 ●女子 ●女子 図3-Ⅲ-8 1日の睡眠時間と体力合計点との関連(平成22年度) 中学校 0 200 400 600 800 8時間以上 6-8時間 6時間未満 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 600 600 674674 607607 621621 568568 566 566 760 760 428 428 508 508 6時間未満 6時間以上8時間未満 8時間以上 1 週 間 の 総運動時間 ︵分︶ 睡眠時間 0 200 400 600 800 8時間以上 6-8時間 6時間未満 毎日食べない 時々食べない 毎日食べる 343 343 375375 320320 307307 344344 314314 310310 245 245 1 週 間 の 総運動時間 ︵分︶ 307 307 6時間未満 6時間以上8時間未満 8時間以上 睡眠時間 (3)睡眠時間が小学生 8 時間以上、中学生 6 ∼ 8 時間は体力が高い傾向  睡眠時間と体力との関係については、全国体力調査の結果から小学生は睡眠時間が8時間 以上、中学生は6∼8時間の睡眠時間を確保している者の体力合計点が最も高いことが分か る(図3-Ⅲ-8)。したがって、睡眠時間については、運動時間と関連して体力に影響してい ることが考えられる。 全国平均 40 45 50 55 60 8時間以上 6∼8時間未満 6時間未満 体力合計点 52.2 54.8 55.1 (点) 全国平均 40 45 50 55 60 8時間以上 6∼8時間未満 6時間未満 体力合計点 (点) 51.5 54.0 54.9 ●男子 ●女子 小学校 小学校

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(4)運動習慣に加えて生活習慣を複合的に改善させることが体力向上を促進する  運動習慣と生活習慣を組み合わせて体力との関連を分析すると、「週3日以上・1日2時間 以上の運動実施」に加えて、小学校では「朝食を毎日食べかつ睡眠時間が8時間以上」、中 学校では「朝食を毎日食べかつ睡眠時間が6時間以上」を実践する児童生徒の割合が高い 学校は、高い体力水準にあることが分かった。平成20年度全国体力調査の結果は、その割 合が50%を超える学校では体力が高い水準にあることを示している(図3-Ⅲ-10)。この図を 見ると、運動習慣と生活習慣を組み合わせた体力に対する影響は、女子において特に強い ことが分かる。この調査結果を見ると、運動習慣と生活習慣を組み合わせた取組は、女子 の体力向上に効果的であると言える。 ●男子 ●女子 図3-Ⅲ-9 朝食の摂取状況・1日の睡眠時間と1週間の総運動時間との関連(平成22年度) 0 200 400 600 800 1000 8時間以上 6時間以上8時間未満 6時間未満 まったく食べない 時々欠かす 毎日食べる 764 764 875 875 677 677 799 799 789 789 678 678 894 894 579 579 675 675 6時間未満 6時間以上8時間未満 8時間以上 1 週 間 の 総運動時間 ︵分︶ 睡眠時間 0 200 400 600 800 1000 8時間以上 6時間以上8時間未満 6時間未満 まったく食べない 時々欠かす 毎日食べる 543 543 599599 402 402 453 453 503 503 455 455 564 564 345 345 414414 6時間未満 6時間以上8時間未満 8時間以上 1 週 間 の 総運動時間 ︵分︶ 睡眠時間 中学校 全国平均 50 55 60 65 50%以上の学校 25%以上の学校 25%未満の学校 体力合計点 (点) 58.9 60.9 55.4 全国平均 50 55 60 65 50%以上の学校 25%以上の学校 25%未満の学校 体力合計点 (点) 55.7 57.5 54.2 ●男子 女子 図3-Ⅲ-10「週3日以上、かつ1日2時間以上の運動・スポーツ実施、かつ朝食を毎日食べる、かつ1日の睡眠8時 間以上(小学校)、6時間以上(中学校)」の児童生徒の割合と体力合計点との関連(平成20年度) *決定木分析の結果によるグラフ( 25ページ参照) 全国平均 30 35 40 45 50 55 60 80%以上の学校 50%以上の学校 50%未満の学校 体力合計点 (点) 51.4 52.3 47.9 全国平均 30 35 40 45 50 55 60 80%以上の学校 50%以上の学校 50%未満の学校 体力合計点 (点) 42.5 42.7 40.6 ●男子 ●女子 中学校 小学校 Ⅲ 生活習慣 を改善 す る た め に 第

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章  体力向上 へ の 活用 の ポ イ ン ト と 取組事例

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3 生活習慣改善の取組事例

 生活習慣の改善を目的とした取組事例を見ると、多くの学校の事例は、単一の生活行動 にとどまらず、生活習慣を全般的に改善する取組を行っている。  体力向上を意識した生活習慣の改善に関する取組の代表例としては「地域のスポーツ指 導者による講演会の開催」「生活習慣チェックシートの活用」「保健室通信による家庭への 啓発活動」「栄養教諭による栄養指導(家庭科など)」「保護者との情報共有」「アンケート 調査を基に学級指導」「総合的な学習での食育実践」「学校栄養職員とのTT授業」「保健委 員会を活用した生活習慣改善の取組」「生徒会での食習慣改善の取組」「家庭での親子共同 作業による料理」「けんこうデーの実施」などが見られた。  ここでは、このような活動の取組事例を示しながら、学校において実践していくためのポ イントを紹介する。 1)生活習慣チェックシートの活用  総合的に生活習慣を改善するための取組として最も多く行われているのが、チェックシー トに記入させる方法である。事例9(北海道)では、長期の休み明けに「生活リズムチャレ ンジ週間」を設けて、生活習慣チェックシートに記入させ、保健便りなどを活用して改善 の方法を示している。  小学校の事例では、生活習慣の定期的な実態調査とあわせて生活習慣チェックシートを 活用し、家庭と連携を図りながら、望ましい生活習慣確立のための取組を行っている学校 がある(事例1・千葉県)。また、生活習慣のチェックシートを週に一度、帰りの会の時間を 利用して作成し、テレビの視聴時間や就寝時刻などの目標を保護者と話し合いながら、児 童自身に設定させている学校がある(事例21・鹿児島県)。自らの生活習慣を把握するだけ でなく、児童自身が目標(生活のルール)を決めることが生活習慣の改善に役立っている。 そして、チェックシートには担任が定期的にコメントを記入し、家庭に返却することで保護 者と情報を共有できる内容となっている。  中学校の事例では、帰宅後の行動をすべて記録する「生活記録ノート」を利用し、生徒 が毎日記録し、担任が毎日チェックし、コメントを添えるという事例がある(事例4・群馬県)。 この学校では、必要に応じて特別支援教育部会や生徒指導部会に情報提供し生活改善の支 援を組織的に行っているのが特徴である。また、事例24(高知県)では、生徒の委員会活 動の中で「ヘルスポイントカード」という生活習慣の記録シートを作成し、生活習慣の状況 を得点化することで、現状把握と目標設定を行っている。評価に際しては高得点者や伸び の大きい生徒を表彰するなど、取組への動機付けを行っていることや一連の活動を生活環 境委員会の取組として位置付けることで生徒が主体的に実施できるようにすることがポイ ントである。  小学校と中学校に共通するポイントは、事例21(鹿児島県)や事例24(高知県)にある ように、単に状況を記録するだけにせず目標を自ら設定することや、事例23(長野県)に あるように生活習慣チェックの活動がマンネリ化しないように健康や栄養に関する指導の場 を設けることにある。

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2)生徒会活動での取組  中学校では、事例23(長野県)のように、生徒会において「生活向上週間」を設定するなど、 生徒が主体となって行われる委員会活動を活用した取組が効果を上げている。事例16(秋 田県)では、保健委員会による生活習慣に関するアンケート調査(年2回)を行い、その結 果を保健集会やお便りで報告したり、給食委員会による「今日の献立と栄養」の校内放送 や月ごとのキャンペーン(例えば「残さず食べようキャンペーン」)を行ったりしている。 生活習慣チェックシートを活用する場合にも、事例24(高知県)のように、生徒が企画運 営することで、健康的な体つくりへの意識付けがより身近なものに感じられるようになる。 3)学級活動や家庭科での取組  小学校では、生活習慣の改善のためにクラス担任が果たす役割は大きい。児童が記入し た生活習慣チェックシートを定期的に確認し、実態の把握とともに賞賛や励ましのコメント を書くことが成果を上げるポイントになっている。事例21(鹿児島県)では定期的にコメン トをし、家庭に返却することで保護者の意識付けに役立てている。また、中学校の事例(事 例4・群馬県)では、必要に応じて養護教諭などと情報を共有することで、クラス担任を中 心とした複数の教諭が生徒を支援する体制を整えている。また、生活習慣のアンケートを 実施し、そのアンケート結果を基に学級指導を行っている事例20(大阪府)や事例22(青 森県)の取組がある。事例22(青森県)においては、家庭科でのバランスの良い食事づく りを実践することにより食習慣の改善に取り組んでいる。 4)家庭との連携  生活習慣の改善には、学校での取組を強化・継続する上で保護者の理解と協力が必要不 可欠になる。多くの事例で、児童生徒の実態や改善方法について学校だより、保健だより、 給食だよりのような通信を配布することで家庭への啓発を図っている。次に多い事例は、 事例23(長野県)や事例25(岩手県)のように、保護者や児童生徒向けの講演会を企画す ることであり、このことが生活習慣改善の意識付けや、保護者・教職員・生徒が情報を共 有することにつながっている。  事例25(岩手県)では、児童が家庭で食事の手伝いを行ったり、食事づくりに親子で挑 戦し取組カードに記入したりすることで、家庭との連携を図っている。事例20(大阪府) では養護教諭と栄養教諭による食習慣の指導のほか、家庭に対しては「朝ご飯簡単レシピ」 の募集や親子クッキングを行い、家庭への食の関心を高める工夫を行っている。また、始 業前の外遊びを取り入れることで、朝ご飯と給食をしっかり食べられるようになるといった、 運動と食事を結び付けた内容を行っているのが特徴である。事例28(徳島県)では、生活 習慣全般に関する健康スローガンを親子で考え、教室に掲示したり、保護者に呼びかけス ローガンに沿った生活をするよう指導したりすることで、保護者との連携を図っている。 Ⅲ 生活習慣 を改善 す る た め に 第

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章  体力向上 へ の 活用 の ポ イ ン ト と 取組事例

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5)人材の活用  学校内ではクラス担任に加えて、養護教諭・栄養教諭・保健体育教諭などと連携するこ とは、学校全体での子どもの生活習慣を改善するための取組に効果的である。学校外では、 保護者だけでなく、地域住民や専門家と連携することは、地域全体(近隣の小学校や中学校) への波及効果を生じさせる。  事例16(秋田県)では、栄養教諭による食育指導、養護教諭による健康に関する資料掲 示が朝食の摂取率増加に結び付いている。事例25(岩手県)では、給食センター栄養教諭 を活用して保護者向け講演会や給食試食会を定期的に実施している。小規模校では養護教 諭や栄養士が朝礼時に食の指導を行うケースもある(事例26・和歌山県)。養護教諭や栄養 教諭は直接的な指導だけでなく、給食だよりや保健室だよりによる啓発活動も行い、一定 の成果を上げている。事例33(長野県)においては、町の栄養士と町の食生活改善委員会 の連携により保育園、小学校とともに食育講座を実施したり、大学教員を活用して食育推 進の講義を実施したりしている。  生活習慣チェックシートの活用においても、クラス担任がチェックするだけでなく、事例 21(鹿児島県)のように家庭にフィードバックすることや、事例4(群馬県)のように、一 人の児童生徒に対して複数の教諭が関わることで、担任一人ではなく、複数の教諭で一人 一人の児童生徒を支える取組が実現する。  ここで取り上げた事例に象徴されるように、生活習慣改善の取組は家庭(保護者)を巻 き込んだ取組となっているのが特徴である。特に、小学校においては、学校と家庭の連携 が体力向上に関わる成果を上げる重要な視点であると言える。また、中学校においては、 家庭との連携とともに生徒が主体的に活動することが重要な視点であると言える。また、 学校内の活動については、総合的な学習の時間、ホームルーム、生徒会活動などの様々な 機会を使って、チェックシートなどにより生活を見つめ直し、自己管理を促し、改善を実践 することで大きな成果を上げている。そこでは、養護教諭・栄養教諭・保健体育教諭、そ して地域住民や専門家など多くの人材の協力体制を確立し、学校教育活動全般と関連付け ながら推進することが重要である。

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