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ドイツにおける預金保護・危機対応の制度-市場経済に立脚した金融システムの維持-

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ドイツにおける預 金 保 護 ・危 機 対 応 の制 度 ― 市 場 経 済 に立 脚 した金 融 システムの維 持 ― 山 村 延 郎∗ 要 旨 日 本 と 同 じ Bank-Oriented System で あ る が 市場 経 済 の 機能 維 持 を 重視 す る ド イ ツ の 預 金 保 護 及 び 危 機 対 応 制 度 を 分 析 し た 。 預 金 は 大 き く 一 覧 払 い 、 大 口 定 期 預 金 、 貯 蓄 預 金 に 分 か れ 、 大 口 定 期 預 金 と 貯 蓄 預 金 が 最 も 重 要 で あ る 。 預 金 の 大 半 は 、 非 営 利 の 地 域 金 融 機 関 に 集 中 し て 、 住 宅 金 融 や 個 人 企 業 へ の 融 資 の 裏 付 け と な る 。 営 利 金 融 機 関 は 、 業 容 も 多 様 だ が 全 体 と し て は 企 業 向 け の 融 資 が 多 い 。 そ こ で か な り 高 額 で 長 期 の 預 金 保 護 が 金 融 シ ス テ ム の 維 持 に 重 要 と な る 。 地 域 金 融 機 関 は 、 困 難 に 陥 っ た 金 融 機 関 を 保 護 す る こ と に よ り 、 預 金 を 全 額 保 護 す る 。 営 利 金 融 機 関 は 、 支 援 に 役 立 つ あ ら ゆ る 手 段 の ほ か 、 ペ イ オ フ す る 場 合 は 、当 該 銀 行 の 責 任 自 己 資 本 の30%を 各預 金 者 の保 護 上 限 とし て ほ ぼ 全て の 範 囲 の 預 金 を 保 護 す る 。 こ れ ら の 保 障 は 、 業 界 別 に 設 置 さ れ た 金 融 機 関 保 護 基 金 又 は 預 金 保 護 基 金 が 担 う 。 設 置 主 体 、 資 金 源 、 個 別 金 融 機 関 の 検 査 の す べ て は 、 業 界 で 行 う と い う 自 己 完 結 体 制 に よ り 、 モ ラ ル ハ ザ ー ド と 国 家 の 過 剰 介 入 を 排 除 し て い る 。 最 後 の 貸 手 機 能 も 、 全 業 態 で 出 資 し た 「 リ コ バ ン ク 」 に よ っ て 担 わ れ る 。 こ う し て 国 も 中 央 銀 行 も 、 信 用 リ ス ク を 負 わ な い 。 自 己 資 本 規 制 は 、 自 己 資 本 比 率 8%割 れ で 利 益 配 当 制 限 、 一 定 比 率 の 損 失 を 出 す と 経 営 是 正 指 導 と い う フ ロ ー 重 視 型 で あ る 。 連 邦 金 融 監 督 公 社(BaFin)は 、 秩 序 維 持 の 役 割 を 持 た さ れ て お り 、 銀 行 が 経 営 困 難 の と き は 、 出 資 者 探 し(自 助 )や 保 護 基 金 の 出 動(共 助 )を 待 ち 、 場 合 に よ っ て は 個 別 行 の 倒 産 猶 予 措 置 を と る が 、 市 場 経 済 の 側 で 救 済 で き な い も の は 、法 的 な「 倒 産 手 続 」(整 理又 は 清 算 )を と る 。 運 営 上 、「 倒 産 手 続 」又 は そ れ に 近 い 破 綻 処 理 が と ら れ る の は 、個 人 銀 行 家 若 し く は こ れ に 類 似 の も の 、 又 は 、 新 興 の 証 券 関 連 企 業 で あ る 。 地 域 金 融 機 関 は 業 界 の 管 理 下 に お か れ る な ど し て 救 済 さ れ て い る が 、 有 責 の 経 営 者 は 残 留 し な い 。 こ の よ う な 体 制 は 、1967 年と い う 早 い時 点 で 金 融自 由 化 が 完了 し て い たの を 背 景 に 、 公 的 な 預 金 保 険 制 度 が 業 界 か ら 拒 否 さ れ 、 業 態 内 で 組 織 し た 互 助 制 度 が 法 律 に よ っ て 認 知 さ れ 、 最 終 的 に 1974 年 ヘ ル シ ュ タッ ト 危 機 後に 対 応 策 をと っ た 結 果 と し て 、 形 成 さ れ た も の で あ る 。 日 本 で も 、 自 主 財 源 と 業 態 内 部 の 相 互 監 視 に よ る 自 治 と 職 責 に 根 ざ し た 第 二 レ ベ ル の 業 態 別 預 金 保 護 制 度(全 額 又 は 自 己 資 本 に 比 例 し た 上 限 付 )の 構 築 を 促 し 、 モ ラ ル ハ ザ ー ド を 回 避 し つ つ 非 決 済 性 預 金 の 保 護 拡 大 を 図 る べ き で あ る 。 ∗ 金 融 庁 金 融 研 究 研 修 センター研 究 官 本 稿 の 執 筆 に 当 た り 、 飯 野 由 美 子 敬 愛 大 学 教 授 に 貴 重 な ご 意 見 を い た だ い た 。 庁 内 の 報 告 会 な ど の 折 に は 、 諸 氏 か ら 有 益 な ご 指 摘 を い た だ い た 。 な お 、 本 稿 は 、 筆 者 の 個 人 的 な 見 解 で あ り 、 金 融 庁 の 公 式 見 解 で は な い 。

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は じ め に... 3 1.銀行制度の概観 ... 4 1.1.銀行負債の長期性 ... 4 1.1.1.預金の長期性 ... 6 1.1.2.証券化された預金 ... 7 1.2.銀行業態の類型 ... 8 1.3.小括 ... 11 2.セーフティネット ... 11 2.1.業態別の保護制度 ... 11 2.1.1.金融機関保護基金 ...12 2.1.2.預金保護基金 ...14 2.2.「最後の貸手」制度 ...17 2.3.預金保護および投資者補償の制度 ...19 2.3.1.補償機構の設置形態 ...19 2.3.2.保護される預金等及び補償上限 ...21 2.3.3.保護対象または対象外の預金者 ...23 2.4.小括 ...23 3.危機対応の制度 ...25 3.1.連邦金融監督公社の危機対応制度 ...25 3.1.1.連邦金融監督公社[BaFin] ...25 3.1.2.早期是正措置 ...27 3.1.3.破綻処理 ...29 3.2.連邦政府の危機対応制度 ...32 3.3.小括 ...32 4.動態的分析 ...33 4.1.制度の運用...33 4.1.1.プライベートバンクの破綻(自力救済及び清算) ...34 4.1.2.証券業の破綻(清算・ペイオフ) ...35 4.1.3.地域金融機関の破綻(救済) ...36 4.1.4.公的金融機関の支援の可能性 ...37 4.2.制度の形成史 ...39 4.2.1.競争的市場の創出 ...39 4.2.2.セーフティネットの強化...40 4.2.3.バランスシート規制の拡充 ...43 4.3.小括 ...44 む す び...45 参 考 文 献 お よ び 資 料...49

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は じ め に 預 金 の 全 額 保 護 の 廃 止(いわゆるペイオフ解禁) は延期され、2005 年 4 月 か ら 実 施 す る も の と さ れ た 。直 前 に 起 き て い た 預 金 の 移 動 は 、い つ の 間 に か 沈 静 化 し た よ う に 見 え る 。し か し こ の 制 度 自 体 の 重 要 性 は 変 わ ら な い し 、期 限 が 来 れ ば 議 論 が 再 燃 す る で あ ろ う 。し た が っ て 、こ れ の 猶 予 期 間 に 、 議 論 を 深 め 十 分 な 準 備 を し て お く こ と が 望 ま し い 。 議 論 の 材 料 と し て は 、 世 界 の 預 金 保 険 及 び 破 綻 処 理 の 制 度 [Institutions]を 網 羅 的 に 紹 介 し た 文 献 も あ る1。 し か し な が ら 、 比 較 国 を 増 や し た 結 果 と し て 、当 該 国 の 預 金 保 険 制 度・破 綻 処 理 制 度 に と っ て 必 須 の 情 報 で あ る 、預 金 制 度 、銀 行 制 度 、こ れ ら が 当 該 国 の 経 済 に 果 た し て い る 役 割 に ま で は 筆 が 及 ば ず 、当 該 国 で 預 金 保 険 制 度 及 び 破 綻 処 理 が 果 た す 役 割 、そ れ に よ っ て 形 成 さ れ る 経 済 全 体 の 体 系 性 、す な わ ち 制 度[System]の分析がなされているとはいいがたい。厳密な議論をするた め に は 、日 本 と の 環 境 の 相 違 を 念 頭 に 置 き つ つ 、い く つ か の 典 型 的 な 国 を 詳 細 か つ 網 羅 的 ・ 包 括 的 に 分 析 し 比 較 す る こ と が 肝 要 で あ る 。 本 稿 が 対 象 に 選 ぶ の は 、ド イ ツ の 預 金 保 護・ 破 綻 処 理 制 度 で あ る 。そ の 理 由 は 以 下 の 通 り で あ る 。 第 一 に 、 こ の 国 の 日 本 と の 類 似 性 で あ る 。 日 本 の 金 融 シ ス テ ム は 、ア メ リ カ や イ ギ リ ス の よ う な 資 本 市 場 に 適 応 し た シ ス テ ム(Market-Oriented System)いわば「市場志向システム」では な く 、フ ラ ン ス や ド イ ツ と い っ た ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 と と も に 、銀 行 に 適 応 し た シ ス テ ム(Bank-Oriented System)いわば「銀行志向システム」に分 類 さ れ る2。ヨ ー ロ ッ パ の 中 で も 、中 小 企 業 に 対 す る 金 融 機 関 の プ レ ゼ ン ス の 点 に 鑑 み れ ば 、専 門 金 融 機 関 に 頼 る フ ラ ン ス よ り も3、預 金 貸 付 金 融 機 関 に 頼 る ド イ ツ に よ り 近 い4。 第 二 に 、 ド イ ツ と 日 本 と の 差 異 で あ る 。 両 国 の 金 融 制 度 は 、国 家 と 経 済 と の 関 係 に お い て 対 照 的 で あ る5。ド イ ツ は 、市 場 経 済 を 重 視 し 、そ の 市 場 経 済 の 機 能 の 維 持 或 い は 不 全 に 対 し て 国 家 の 介 入 が 必 要 で あ る と す る「 社 会 的 市 場 経 済 」だ か ら で あ る6。第 三 1 例え ば 、 本 間 勝[2002]

2 cf. Allen and Gale[2000], pp.30-34(Market- Oriented Systems),

34-42(Bank-Oriented Systems).「 市 場中 心 シ ス テム 」「 銀 行中 心 シ ス テム 」と も 訳 さ れ る が 、 こ の 訳 語 は 、 議 論 を 「 中 心 」 に お か れ る 市 場 や 銀 行 と い う 制 度 (Institutions)に 向け る お それ が あ る 。重要 な の は 、特 定 の 制度 を 志 向 し 、そ の 制 度 に 適 応 し て い る 全 体 の シ ス テ ム の ほ う で あ る 。 こ れ を 明 確 に す る た め 、「 志 向 」 「 適 応 」の 訳 を 当 て る 。岩 田 健 治[2003],268 頁 の 図表 に よ れ ば、家 計 の 資産 運 用 も 米 英 よ り は 独 仏 に 近 い 。 3 フラ ン ス ・ 銀 行金 融 事 情 研究 所 [1991],39 頁 以 降参 照 。 4 Paul/Stein[2002],S.7-28, フ ラ ン ス ・銀 行 金 融 事情 研 究 所 [1991]、75 頁 以 降 と く に 88 頁 も 参 照。 5 ユニ バ ー サ ル バン ク 制 度 に目 が 行 き がち で あ る 。だ が 、 預 金保 護 制 度 の観 点 か ら 言 う と 、 証 券 業 の 兼 営 は 副 次 的 な 違 い で し か な い 。 6 アメ リ カ 型 の 「新 自 由 主 義」 と は 異 なり 、 オ ル ド学 派 に 由 来す る ヨ ー ロッ パ 型

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に 、そ の 制 度 自 体 の 独 自 性 で あ る 。こ の 国 の 預 金 保 護 制 度 は 、事 実 上 全 額 保 護 又 は 変 額 保 護 で あ っ て 、ア メ リ カ に 代 表 さ れ る 定 額 の 預 金 保 護 制 度 の 対 極 に 位 置 す る 。に も か か わ ら ず 、こ の 国 の 預 金 保 護 制 度 に 関 す る 学 術 的 研 究 は 豊 富 と は い え な い7 す な わ ち 、 ド イ ツ は 、 日 本 と 同 じ く 銀 行 志 向 シ ス テ ム で あ り な が ら 、 市 場 経 済 の 機 能 を 重 視 し て 、独 自 の 発 展 を 遂 げ て き た8。日 本 の 経 済 体 制 が 行 政 主 導 型 を 脱 却 し て 市 場 経 済 を 重 視 す る と い う こ と は 、現 在 の ド イ ツ が い る 象 限 に 近 づ く こ と で も あ る 。し た が っ て 、ド イ ツ の 金 融 機 関 に お け る 預 金 保 護 の 歴 史 、現 状 を 体 系 的 に 明 ら か に す る こ と に よ り 、今 後 の 日 本 の 行 政 の 金 融 経 済 界 と の 関 係 の 有 り 方 や 業 界 育 成 、金 融 制 度 の 構 築 を 考 え る た め の 、 有 用 な 示 唆 が 与 え ら れ る の で あ る 。 こ の よ う な 問 題 意 識 の も と 、以 下 で は 、ド イ ツ に お け る 銀 行 業 態 の 概 要 、金 融 業 界 の 持 つ 預 金 保 護 制 度 の 詳 細 、国 家 に よ る 銀 行 破 綻 に 対 す る 介 入 の 制 度 、破 綻 制 度 の 運 用 事 例 、金 融 規 制 と 預 金 保 護 制 度 の 発 展 の 経 緯 を 分 析 及 び 考 察 し 、ド イ ツ 型 の 預 金 保 護 制 度 及 び 破 綻 処 理 制 度 の 特 徴 を 明 ら か に す る 。 1.銀 行 制 度 の 概 観 1.1.銀 行 負 債 の 長 期 性 預 金 の 保 護 制 度 を 論 ず る 際 に あ ら か じ め 明 ら か に し て お か な け れ ば な ら な い の は 、 預 金 及 び 銀 行 社 債 の 制 度 で あ る 。 一 般 に 、銀 行 志 向 シ ス テ ム に お い て は 、金 融 機 関 が 中 長 期 的 な 融 資 に も 踏 み 込 む た め 、銀 行 に と っ て も 中 長 期 の 借 入 が 重 要 で あ る 。し た が っ て 預 金 は 、当 座 預 金 や 小 切 手 口 座 だ け に と ど ま ら ず 、貯 蓄 性 預 金 や 高 額 の 定 期 預 金 へ と 展 開 し 、さ ら に は 証 券 化 さ れ た 預 金 に よ る 銀 行 の 資 金 調 達 も 活 発 と な る 。 ド イ ツ で は そ れ が 、「 底 溜 り 理 論 」、「 シ フ タ ビ リ テ ィ の 「 新 自 由 主 義 」 で あ る 。 市 場 の 機 能 を 維 持 す る た め に 中 小 企 業 の 育 成 、 中 産 階 級 を 創 出 す る た め に 財 産 形 成 政 策 を 重 視 す る 。Vgl. Yamamura [2001],S.191ff. 法 律 上 は 、 ド イ ツ 基 本 法 第 21 条 (1)に 「 ド イ ツ 連 邦共 和 国 は 、民 主 的 か つ社 会 的 な 連 邦 国 家 で あ る 。」あ る い は 第 28 条(1)に「諸 州 に お け る憲 法 的 秩 序は 、こ の 基 本 法 で 意 味 す る 共 和 制 的 、 民 主 的 、 社 会 的 な 法 治 国 家 の 原 則 に 準 ず る も の で な け れ ば な ら な い 。」と あ る こ と に 結 び 付 い て い る 。政 治 的 に は 、党 派 に よ る 色 合 い は 異 な る が 、 共 通 の 国 是 と な っ て い る 。 7 日本 語 で の 学 術的 論 文 と して は 、 ラ イザ ー /森下[1994]し か 見 当 た ら ない 。 8 もう 一 つ の 重 要な 視 点 は 、財 政 と 金 融の 分 離 で ある 。 戦 後 (西)ド イ ツ では 、 銀 行 監 督 を 連 邦 大 蔵 省 が 直 接 行 っ た こ と が な い(当 初 の 金 融 行 政は 連 邦 経 済省 の 管 轄)。公 共 事 業 につ い て も、東 ド イ ツ では 、国 が 貯蓄 金 庫 を 通じ て 集 め た零 細 資 金 を 、 国 立 銀 行 を 通 じ て コ ン ビ ナ ー ト に 融 資 し た の に 対 し 、 西 ド イ ツ で は 、 抵 当 銀 行 や 州 立 銀 行 が 抵 当 債 を 発 行 し て(特 に 住 宅 建 設 を )融 資 す る こ と に よ っ て 行 っ た 。

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理 論 」と い う 理 論 に ま で な っ て い る9。預 金 の 滞 留 部 分 は 引 き 出 さ れ な い の で 長 期 に 投 資 で き る と 考 え 、滞 留 の 層 を 区 分 し て 投 資 可 能 な 期 間 を 定 め る も の で あ る 。し か も 、そ れ ら の 理 論 は 、当 局 に よ る 流 動 性 規 制 に も 反 映 さ れ て い る(図 1)10。逆 に 言 え ば 、長 期 の 投 融 資 を す る た め に も 、流 動 性 の 観 点 か ら 、 資 金 調 達 を 長 期 化 さ せ ね ば な ら な い の で あ る 。 以 下 で は 、 ド イ ツ に 存 在 す る 預 金 及 び 銀 行 社 債 に つ い て 分 析 し11、 長 期 の 大 口 預 金 や 債 券 発 行 が ド イ ツ で 占 め る 重 要 性 を 確 認 す る 。 9 流動 性 に 関 す る「 黄 金 銀 行規 則 」「 底 だ ま り 理 論」「 シ フ タビ リ テ ィ 理論 」 に つ い て は 、 清 田[2003],49-55 頁 を 参 照 。 10 「自 己 資 本 と 流動 性 に 関 する 基 本 原 則」(Grundsätze)。自 己資 本 規 制 が基 本 原 則 I で あ る 。 流 動性 に 関 す る「 基 本 原 則Ⅱ 」 と 「 基本 原 則 Ⅲ 」の 詳 細 は 、清 田 [2003],49-55 頁も 参 照。 な お 、 清 田 は「 原 則」 と 訳 し て い るが 、 本 稿 では 普 通 名 詞 と 区 別 す る た め 、「 基 本 原 則 」 と 訳 す 。 11 本節 は 、 Hummel[2000],S.562-573 の 記 述 を ベー ス に し てい る 。「 預 金 商 品 」 の 多 様 化 に つ い て は 、 清 田[2003]14-93 頁 も 参 考 のこ と 。 図 1 中 長 期 及 び短 期 投 融 資 に対 する流 動 性 規 制 自 己 資 本 ・4 年 以 上 の信 用 100% ・資 本 参 加 ・固 定 資 本 4 年 を超 える債 券 及 び預 金 100% 60% 4 年 以 下 の債 券 及 び貯 蓄 預 金 ・4 年 未 満 の信 用 (対 非 銀 行 ) ・株 式 等 20% 20% 10% 4 年 未 満 の大 口 定 期 及 び一 覧 払 預 金 60% 30% 50% ・流 動 性 準 備 (確 定 利 付 証 券 , 3 ヵ月 以 内 の対 銀 行 信 用 ) 10% 3 ヵ月 未 満 の銀 行 からの預 金 90% 3 ヵ月 以 上 の銀 行 からの預 金 50% 出 所 Süchting/Paul[2002],S.475,図 C.83

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1.1.1.預 金 の 長 期 性 ド イ ツ に お い て 預 金 は 大 別 し て 三 つ に 分 け ら れ る 。 第 一 は 、 一 覧 払 い 預 金[Sichteinlagen]12で あ っ て 、 決 済 性 の 当 座 預 金 で あ る 。 事 業 用 口 座[Geschäftskonto]の ほ か 給 与 口 座[Gehaltskonto]も 重 要 で あ り 、い ず れ も 基 本 的 に 貸 越 が 可 能 で あ る 。振 替 口 座 の 口 座 手 数 料 は 、 比 較 的 低 く 設 定 さ れ て い る13。 理 由 は 、 英 米 と 異 な り 、 資 金 源 泉 (1970 年以降の相殺率の向上、1990 年代の準備金規制の大幅緩和)及び 営 業 機 会(長 期 取 引 関 係 を 通 じ た 融 資14や ク ロ ス セ リ ン グ に よ り 収 益 を 上 げ る)の観点で重要だからである。 第 二 は 、 定 期 預 金[Termineinlagen]15で あ っ て 、 短 期 又 は 中 期 の 利 付 債 権 で あ る 。30 日から 5 年の満期で、中心は半年ものから二年以上のも の に 移 っ て い る(4 年以上のものは貯蓄銀行のシェアが高い)。定期預金 と 称 し て も 、日 本 の そ れ と は 異 な り 、比 較 的 大 口 で 投 資 性 の 預 金 で あ る 。 1985 年以降は、無記名の定期預金債券いわゆる「譲渡性預金」(CD)も 発 行 可 能 だ が 、中 央 銀 行 準 備 率 規 制 の た め 、爆 発 的 に は 普 及 し て い な い 。 第 三 は 、 貯 蓄 預 金[Spareinlagen]16で あ っ て 、 通 知 性 預 金 で あ る 。 主 に 消 費 者 向 け の 口 座 で 、営 利 会 社 や 協 同 組 合 が 持 つ こ と は で き な い 。満 期 は な い が 三 ヶ 月 以 上 の 解 約 通 知 が 必 要 で あ る(三 ヶ 月 も の が 全 体 の 7 割 程 度 を 占 め る)が、一定金額までは銀行側の裁量で即時払い出しもでき る 。 貯 蓄 銀 行 と 信 用 組 合 の シ ェ ア が 大 き い 。 各 預 金 に ど の 程 度 の 重 要 性 が あ る か を 2002 年 9 月の統計上の数値(非 市 場 性 の 債 券 が 合 算 さ れ て い る)で確認すると、全銀行が国内及び外国の 非 銀 行 部 門 か ら 受 け 入 れ た 預 金 等 の 内 訳 は 、 表 1 の通りである17 こ れ で 分 か る よ う に 、七 割 程 度 が 中 期 の 預 金 、少 な く と も 三 割 超 が 二 年 以 上 の 中 期 の 預 金 で あ っ て 、結 果 的 に は そ れ 以 上 の 部 分 が 長 期 に 預 け 12 Hummel[2000],S.562,清田 [2003],17 頁も 参 照 のこ と 。 13 ドイ ツ 銀 行 24 の例 (2002 年 時 点)で は 、2002 年 4 月 現 在 、月 額 基 本 料 金 5.62 ユ ー ロ 、 書 面 で の 振 込 の 手 数 料 26 セ ン ト、ま た は月 額 基 本 料 金 3.07 ユー ロ 、書 面 で の 振 込 手 数 料 1.53 ユ ー ロ 。 い ず れも オ ン ラ イン 振 込 み 手数 料 無 料 。 28 歳 ま で の 学 生(院 生)は 、 基 本 料金 無 料 で 預金 に 付 利 する 。 口 座 開設 に 一 ヶ 月程 度 の 審 査 期 間 が か か る 。 14ド イ ツ 銀 行 24 の個 人 向 け当 座 貸 越(随 時 借 入 返済 可 能 )は 、 年 利 12.25%な い し 16.25%で あ る 。ロ ー ン は 、5000 な い し 25000 ユ ーロ の 固 定融 資 を 6 年 で 返 済 す る も の や 借 入 上 限 を 設 定 し て 自 由 に 借 入 返 済 す る も の(い ず れも 借 入 金 額に つ い て 10%前 後 の 利 率)な ど が ある (2002 年 時点 )。 住 宅 購 入 融 資は 不 動 産 金融 機 関 と 協 調 融 資 で 行 い 、 お お む ね 6%前 後 の 利率 で あ る 。 15 Vgl. Hummel[2000],S.564,清 田 [2003],19 頁 も 参照 。 16 Vgl. Hummel[2000],S.566,清 田 [2003],21 頁 も 参照 。 17 1998 年 で は 、 概ね 一 覧 払 い預 金 26%、 大 口 定 期預 金 30%(建 築 貯 金含 ま ず )、 貯 蓄 性 預 金44%(建 築 貯 金含 む )で あ っ た 。 預 金者 の 心 理 から す る と 、景 気 悪 化 の 傾 向 を 見 据 え て 、利 子 率 の 高 い 間 に 貯 蓄 性 預 金(変 動 金 利)か ら 大 口 定 期預 金 (固 定 金 利)に 預 け 替 える 傾 向 が ある よ う だ 。

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ら れ 、理 論 上 あ る い は 規 制 上 、中 長 期 融 資 の 裏 付 と な し う る 重 要 な 負 債 項 目 と な る 。 し か も 、 必 ず し も 機 関 投 資 家 か ら の も の と は 言 え な い が 、 比 較 的 大 口 の 投 資 を 意 味 す る 定 期 預 金 が 、 ほ ぼ 半 分 を 占 め て い る 。 表 1 ドイツの全 銀 行 部 門 が国 内 外 の非 銀 行 から受 け入 れた預 金 総 額 23697 億 ユ ー ロ 一 覧 性 預 金 5820 億 ユ ー ロ 24.5% 定 期 預 金 総 額(建 築 貯 金 含 む ) 11063 億 ユ ー ロ 46.7% ( うち一年以下のもの 3531 億ユーロ 14.9% ) ( 二年超のもの 7434 億ユーロ 31.4% ) 貯 蓄 預 金 5691 億 ユ ー ロ 24.0% 貯 蓄 ブ リ ー フ(非 上 場 無 記 名 債 券 含 む ) 1123 億 ユ ー ロ 4.7% 資 料 ド イ ツ 連 邦 銀 行 月 報 統 計 付 録 2003 年 1 月 号(S.10ff.) 1.1.2.証 券 化 さ れ た 預 金 定 期 預 金 の 種 類 と し て は CD に類する市場性のある無記名債券があり、 連 銀 統 計 で は 、預 金 を 考 察 す る 際 に 貯 蓄 ブ リ ー フ(非上場無記名債券を含 む)という項目が見られるように、ドイツでは預金又は「貯蓄の証券化18 が 進 ん で い る 。 こ れ ら は 、1960 年以降に登場した預金商品であって、 法 的 性 質 の 差 で 以 下 の 三 種 類 に 分 け ら れ る 。 第 一 は 、貯 蓄 ブ リ ー フ[Sparbrief](記名証券。商品名では貯蓄ツェアテ ィ フ ィ カ ー ト と も 言 う)である。これは、有価証券でも貯蓄証明書でもな い が 、貯 蓄 預 金 と 固 定 利 子 付 有 価 証 券 の 中 間 た る 有 価 証 券 類 似 証 券 で あ る と さ れ る 。 発 行 金 融 機 関 の 許 可 な く 他 人 に 譲 渡 で き な い 。 額 面 は 500 ユ ー ロ 以 上 、50 ユーロ単位の価格である。満期は 1 年から 10 年まで様々 で あ る 。満 期 前 の 償 還 は で き な い 。割 引 発 行 や 満 期 後 一 括 で 利 子 を 付 け る 。連 邦 国 庫 証 券 と 競 合 し て い る 。統 計 上 は「 貯 蓄 預 金 」と 合 算 さ れ る 。 第 二 は 、貯 蓄 オ ブ リ ガ ツ ィ オ ン[Sparobligation](指図債券)である。こ れ は 、裏 書 に よ り 譲 渡 可 能 な 指 図 式 の 証 書 で あ っ て 、寄 託 法 上 の 有 価 証 券 と さ れ る 。上 場 債 券 で な い た め 、販 売 価 格 、利 率 、償 還 価 格 が 固 定 さ れ て お り 、 相 場 変 動 が な い 。 満 期 は 1 年から 12 年まで様々である。満 期 前 の 償 還 は で き な い 。利 子 ク ー ポ ン 付 で 発 行 さ れ る 。連 邦 債 や 鉄 道 債 と 競 合 し て い る 。 第 三 は 、 貯 蓄 シ ュ ル ト フ ェ ァ シ ュ ラ イ ブ ン グ[Sparschuldverschrei -bung](無記名債券)である。満期は 1 年以上で、通常は 5 年から 10 年で 18 Vgl. Hummel[2000],S.570,清 田 [2003],64 頁 も 参照 。 フ ン メル の ほ う では 指 図 債 券 と 無 記 名 債 券 を 項 目 と し て 分 け て お り 、 清 田 の ほ う で は 分 け て い な い 。 預 金 保 護 の 観 点 か ら は 清 田 の 分 類 で 十 分 だ が 、 詳 し い 説 明 を す る た め 、 フ ン メ ル に 依 拠 し た 。

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あ る 。規 制 市 場 で 流 通 す る 上 場 有 価 証 券 で あ り 、利 子 の 展 開 に 応 じ て 価 格 変 動 す る 。行 内 相 場 で の 満 期 前 償 還 も 可 能 で あ る(資金洗浄法の上限を 超 え る 場 合 を 除 き 償 還 時 の 本 人 確 認 を し な い)。 ド イ ツ 連 銀 月 報 の 統 計 付 録 で は 、市 場 性 の あ る 無 記 名 債 券 の み を 別 に 表 示 し て 「 証 券 化 債 務[Verbriefte Verbindlichkeiten]」とし、その他は 証 券 化 さ れ て い な い 預 金 の 項 目 に 分 類 し て 合 算 し て い る 。 そ れ に 対 し 、 銀 行 会 計 法 令 上 は 、指 図 債 券 及 び 無 記 名 債 券 を「 証 券 化 債 務 」と し て 記 載 し 、「 顧 客 に 対 す る 債 務[Verbindlichkeiten gegenüber Kunden]」から 区 別 す る19。 預 金 保 護 制 度 の 枠 組 み で は 、 法 令 上 の 概 念 が 用 い ら れ る 。 ペ イ オ フ が 行 わ れ る 際 に 預 金 等 に 区 別 を 付 け る と き は 、転 嫁 流 動 性 を 有 す る 第 二 と 第 三 の も の は 保 護 さ れ な い が(付保範囲の項を参照)、証 券 化 さ れ た 負 債 で あ っ て も 他 人 に 譲 渡 で き な い も の は 保 護 さ れ る 。言 い 換 え る と 、決 済 性 の 預 金 を 維 持 す る だ け で な く 、中 長 期 的 な 預 金 ・ 負 債 を 保 護 し よ う と し て い る 。長 期 の 預 金 等 を 保 護 す る こ と が こ の 国 の 金 融 シ ス テ ム の 維 持 に と っ て は 重 要 な の で あ る 。と い う の も 、預 金 の 長 期 化 で あ れ 預 金 の 証 券 化 で あ れ 、中 長 期 融 資 を も 資 本 市 場 で な く 銀 行 が 担 う 経 済 シ ス テ ム の 安 定 に 欠 か せ な い か ら で あ る 。 1.2.銀 行 業 態 の 類 型 銀 行 全 体 に つ い て 預 金 が 長 期 化 し 高 額 な 預 金 が 重 要 で あ る こ と が 分 か っ た の で 、こ れ ら の 預 金 が ど の 業 態 に 集 中 し 、ど の よ う な 融 資 の 裏 付 と な っ て い る の か に つ い て 分 析 し て 類 型 化 を 行 う 。 ま ず 、ド イ ツ の 各 銀 行 部 門 が 預 金 市 場 で 占 め る シ ェ ア は 、表 2 のとお り で あ る20。 こ の 預 金 シ ェ ア に つ い て 言 え ば 、 貯 蓄 銀 行 ・ 州 立 銀 行 ・ 信 用 組 合 と い っ た 非 営 利 組 織 が 過 半 数 を 占 め 、四 大 銀 行 を 含 む 信 用 銀 行(商 業 銀 行 と も い う)は、全体の四分の一を占める21 債 券 化 率 で み る と お り 、州 立 銀 行 、信 組 中 央 銀 行 、抵 当 銀 行 、特 任 銀 行 と い っ た 金 融 機 関 が 債 券 発 行 中 心 の 資 金 調 達 を し て い る こ と が わ か る 。 こ れ ら は 特 に 、「 プ フ ァ ン ト ブ リ ー フ[Pfandbrief] 22」 を 発 行 し て 、 資 金 調 達 す る か ら で あ る 。四 大 銀 行 の 債 券 化 率 も 31%程度で、他のリテ 19 銀行 会 計 に つ いて は 、 遠 藤[1998],76,77 頁 を 参 照。 20 ここ で 「 預 金 等」 と は 、 連銀 統 計 に おい て 「 非 銀行 に 対 す る債 務

[Verbindlichkeiten gegenüber nicht Banken]」 と 表示 さ れ てい る 部 分 であ る 。 帳 簿 総 額 は 、 顧 客 か ら の 預 金 と 債 券 に よ る 資 金 調 達 の 合 計 額 の 倍 近 い が 、 自 己 資 本 が 多 い と い う わ け で は な く 、 銀 行 間 預 金 で 膨 ら ん で い る 。 21 ポス ト バ ン ク は、 統 計 で は信 用 銀 行 (「 そ の 他 」 )で あ る 。参 考 に 2001 年 末 に お け る 数 字 を 挙 げ て お く と 、帳 簿 総 額 は 139816、顧 客 預 金 は 62318、債 券 は 39468 で あ る(単 位 は 100 万 ユ ー ロ、 ポ ス ト バン ク 2001 年 度 営 業報 告 書 に よる )。 22 抵当 権 等 又 は 公法 人 に 対 する (若 し くは 公 的 保 証の 付 い た )債 権 を 担 保と す る 金 融 債(抵 当 銀 行 法な ど に 基 づく )。 英 語で は mortgage bond と 訳 さ れる 。

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ー ル 金 融 機 関 が 7%であるのに比べると、資金調達における債券発行へ の 依 存 が 若 干 高 い 。ヒ ュ ポ・フ ェ ラ イ ン ス 銀 行 が 既 得 権 で プ フ ァ ン ト ブ リ ー フ を 発 行 で き る ほ か 、他 の 三 大 銀 行 は 銀 行 社 債 を 発 行 し て い る か ら で あ る 。 表 2 信 用 機 関 の預 金 等 シェア・債 券 化 率 (2002 年 9 月 ) 単 位 :100 万 ユーロ 届 出 数 帳 簿 総 額 預 金 等 証 券 化 債 務 預 金 等 シェア 債 券 化 率2 3 信 用 銀 行 全 体 275 1801320 643418 217398 27.6% 25.3% 四 大 銀 行 4 1042436 331444 151814 14.2% 31.4% 地 銀 その他 189 650241 300119 65517 12.9% 17.9% 外 銀 支 店 82 108643 11855 67 0.5% 0.6% 州 立 銀 行 14 1305922 296873 395121 12.7% 57.1% 貯 蓄 銀 行 523 974422 602236 45097 25.8% 7.0% 信 組 中 央 銀 行 2 189664 29135 34175 1.2% 54.0% 信 用 組 合 1512 547935 386487 32075 16.6% 7.7% 抵 当 銀 行 等 26 893569 138716 588566 5.9% 80.9% 建 築 金 庫 28 160701 100170 7416 4.3% 6.9% 特 任 銀 行 14 508282 137763 174307 5.9% 55.9% 銀 行 全 体 2394 6381815 2334798 1494155 100.0% 39.0% 資 料 ド イ ツ 連 邦 銀 行 月 報 付 録 の 銀 行 統 計(2003 年 4 月)よ り 作 成 次 に 融 資 の 面 か ら 比 較 を す る と グ ラ フ 1 の 通 り で あ る 。 グラフ1 信 用 機 関 の貸 付 相 手 先 (2002 年 9 月 ) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 信用組合 貯蓄銀行 地銀その他 四大銀行 企業 自営業向 被用者向 割賦信用 小口住宅 非営利組織 資 料 ド イ ツ 連 邦 銀 行 月 報 付 録 の 銀 行 統 計(2003 年 4 月)よ り 作 成 23 統計 上 の 数 値 によ り 、債券/(顧 客 預 金+債 券)×100 で 求 め た。「 債 券」の 概 念 が 統 計 と 法 律 で は 異 な る の で 、 あ く ま で 概 算 で あ る 。

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信 用 銀 行 部 門 に お い て は 、四 大 銀 行 は 企 業 金 融 と 住 宅 金 融 に 力 を 入 れ て い る 。大 企 業 の 銀 行 離 れ や 大 口 信 用 規 制 を 考 慮 す る と 、中 規 模 以 上 の 企 業 に も 貸 出 先 を 分 散 し て い る と 思 わ れ る 。意 外 に も 、地 方 銀 行 そ の 他 は 、大 銀 行 ほ ど に 自 営 業 に 力 を 入 れ ず 、企 業 の ほ か む し ろ 住 宅 金 融 と 割 賦 金 融 と い っ た 被 用 者 向 け の 個 人 金 融 に 重 点 が あ る こ と が 分 か る24 貯 蓄 銀 行 と 信 用 組 合 は 、 被 用 者 向 け(特に住宅金融)に力を注ぎ、次い で 自 営 業 や 企 業 へ の 金 融 に 力 を 注 い で い る 。信 用 組 合 は 自 営 業 が 占 め る 割 合 が 大 き い 。そ れ に 対 し て 、貯 蓄 銀 行 は 、自 営 業 と 企 業 の 融 資 額 に 差 が 少 な い(貯蓄銀行の地域専念原則から言って、いずれも地元の顧客であ る)。これらの貸出先は、資本市場に頼ることが困難で、貸出も長期化し や す い 地 域 内 融 資 で あ る と い え る 。 さ ら に 各 部 門 の プ レ ゼ ン ス を 比 較 す る と 、 グ ラ フ 2 の通りである。 グラフ2 借 手 別 の信 用 機 関 の重 要 度 (2002 年 9 月 ) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 割賦信用 被用者等 自営業 企業 四大銀行 地銀その他 外銀支店 州立銀行 貯蓄銀行 信組中金 信用組合 資 料 ド イ ツ 連 邦 銀 行 月 報 付 録 の 銀 行 統 計(2003 年 4 月)よ り 作 成 信 用 銀 行 全 体 と し て 企 業 金 融 に お け る プ レ ゼ ン ス が や や 高 い と 言 え る が 、四 大 銀 行 だ け を 見 れ ば 州 立 銀 行 ほ ど で は な い 。地 銀 そ の 他 は 、割 賦 信 用 や 被 用 者 へ の 小 口 融 資 で の プ レ ゼ ン ス が 比 較 的 高 く 、単 純 に 地 域 金 融 機 関 と は 呼 べ な い こ と を 示 し て い る 。 自 営 業 や 被 用 者 に 占 め る 割 合 で は 、貯 蓄 銀 行 や 信 用 組 合 の プ レ ゼ ン ス が 圧 倒 的 で あ っ て 、両 セ ク タ ー が 、い わ ゆ る「 地 域 金 融 機 関 」で あ る こ 24 ドイ ツ の 免 許 制度 で は 、 貸金 (信 用)業 務 は 銀 行業 務 と さ れ、 営 業 に は免 許 を 要 す る 。 こ う し た も の も 銀 行 統 計 に 入 っ て い る 。

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と が 分 か る 。こ れ ら は 法 律 上 も 、非 営 利 の 金 融 機 関(公益又は自助の組織) と し て 、 営 利 を 追 求 す る 信 用 銀 行 と は 一 線 を 画 し て い る 。 1.3.小 括 ド イ ツ に お け る 預 金 の 中 心 は 、中 長 期 の も の で あ る 。ま た 、預 金 の 証 券 化 も 進 ん で い る 。 融 資 先 と し て 住 宅 金 融 や 中 企 業 貸 出 が 重 要 で あ り 、 流 動 性 規 制 も な さ れ て い る た め 、中 長 期 の 高 額 な 預 金 の 受 け 入 れ が 必 要 と な る 。家 計 の み な ら ず 企 業 部 門 も が 銀 行 を 通 じ た 投 資 を す る こ と に よ っ て 、 こ れ が フ ァ イ ナ ン ス さ れ て い る 。 融 資 か ら 見 て 、ユ ニ バ ー サ ル バ ン ク 部 門 は 、非 営 利 で リ テ ー ル 中 心 か つ 原 則 と し て 地 域 金 融 機 関 で あ る 貯 蓄 銀 行 及 び 信 用 組 合 と 、比 較 的 大 口 の 融 資 を 行 う 系 統 中 央 金 融 機 関 お よ び 営 利 の 信 用 銀 行 部 門 と に 大 別 し う る 。信 用 銀 行 部 門 は 、特 に 四 大 銀 行 を 中 心 に 、債 券 発 行 に よ る 資 金 調 達 も 盛 ん で あ り 、「 地 銀 そ の 他 」 の 項 目 に は 、 プ ラ イ ベ ー ト バ ン ク や 割 賦 信 用 機 関 も 含 ま れ て い る と い う こ と に 気 を つ け な れ れ ば な ら な い 。州 立 銀 行 及 び 信 組 中 央 銀 行 は 、ユ ニ バ ー サ ル バ ン ク で は あ る が 、系 統 中 央 金 融 機 関 と し て 特 殊 な 性 格 を 有 し て い る 。こ の よ う な 預 金 の 長 期 性 や 業 態 の 二 分 化 が 、セ ー フ テ ィ ネ ッ ト と し て 業 態 別 の 保 護 基 金 が 置 か れ る 背 景 に あ る 。 2.セ ー フ テ ィ ネ ッ ト 前 章 に よ り 、ド イ ツ の 銀 行 制 度 と 預 金 制 度 の 特 色 が 中 長 期 の 融 資 関 係 に あ る こ と が 分 か っ た 。本 章 で は 、貸 付 先 も 預 金 も 長 期 で あ る 銀 行 制 度 を 持 つ ド イ ツ に お い て 、セ ー フ テ ィ ネ ッ ト が ど の よ う に 構 築 さ れ て い る の か 分 析 す る 。ま ず 業 態 独 自 の 機 構 、次 に そ れ を 包 括 す る 機 構 、最 後 に 強 制 の 最 低 補 償 制 度 に つ い て 分 析 す る 。 2.1.業 態 別 の 保 護 制 度 大 部 分 の 金 融 機 関 は 、預 金 保 護 の た め 、業 界 で 任 意 に 用 意 し た「 基 金 」 に 任 意 で 加 盟 し て い る 。こ れ ら は 、信 用 制 度 法[Kreditwesengesetz,略称 KWG]第 23a 条25で「 諸 保 護 制 度[Sicherungseinrichtungen]」として認 知 さ れ て い る 。「 基 金 」 に は 、 金 融 機 関 の 営 業 を 維 持 し て 間 接 的 に 預 金 を 守 る「 金 融 機 関 保 護 基 金[Institutssicherungsfonds] 26」と 、直 接 預 金 を 保 護 し 場 合 に よ っ て は ペ イ オ フ を す る「 預 金 保 護 基 金[Einlagensiche- 25 第 23a 条 は 、後 述 の 補 償 機構 の 成 立 にあ わ せ 1998 年 の 第 6次 改 正 で 挿入 さ れ た が 、 基 金 の 関 連 で も 機 構 の 関 連 で も 、 適 用 さ れ る 。Vgl. Fischer[2000],S.578. 26 貯蓄 銀 行 や 信 用組 合 の 場 合、「 金 融 機関 保 護 基 金」 に 加 盟 して い れ ば 、後 述 の 「 補 償 機 構 」 に 属 さ な く て も よ い 。

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rungsfonds]」の二種類に分けられる。 金 融 機 関 は 、非 金 融 機 関 た る 顧 客 に 対 し て 、保 護 制 度 に 加 盟 し て い る こ と に つ い て 、営 業 所 の「 価 格 掲 示 板 」に 掲 示 せ ね ば な ら ず 、ま た 取 引 関 係 に 入 る 前 に 顧 客 に 保 護 の 範 囲 と 額 に つ い て わ か り や す く 説 明 し 、保 護 条 件(補償請求権の行使に 必要な要件を含む)についての情報が請求 に よ り 縦 覧 可 能 な よ う に し て お か ね ば な ら な い(信用制度法 23a 条第一項)。 ま た 、 保 護 制 度 か ら 離 脱 し た と き(除名されたとき)は、非金融機関た る 顧 客 、連 邦 監 督 公 社 、ド イ ツ 連 銀 に 、テ キ ス ト 形 式 で 遅 滞 な く 連 絡 せ ね ば な ら な い(同条第二項)。ただし、後述の補償機構 から除名されると 即 免 許 失 効 で あ る が 、保 護 基 金 は 、加 入 脱 退 等 に つ い て 顧 客 に 告 知 す る 義 務 が あ る だ け で 、 除 名 さ れ た だ け で は 処 分 の 対 象 と な ら な い 。 実 際 に は 、金 融 機 関 保 護 基 金 ま た は 預 金 保 護 基 金 に 加 入 す る 銀 行 数 が ほ と ん ど で あ る 。か つ 、保 護 基 金 の 運 営 主 体 で あ る 業 界 団 体 は 、監 査 連 合 な る 組 織 も 備 え て い る 。つ ま り 投 資・融 資 の 専 門 集 団 と し て 身 内 の 状 況 を 判 断 し 、健 全 で あ る か ど う か を 判 断 し 、間 違 い が あ れ ば 責 任 を 負 う と い う わ け で あ る 。し た が っ て 業 界 団 体 は 、業 界 の 単 な る 親 睦 団 体 で は な く 、 保 護 基 金(場合によっては補償機構)と監査連合との三位一体で 、 金 融 機 関 を 相 互 監 視 し 内 部 を 規 律 す る 、 自 主 管 理 の 組 織 で あ る 。 こ う し た 背 景 が あ る の で 、一 般 の 銀 行 顧 客 が 個 別 の 銀 行 の 財 務 内 容 を 気 に す る 風 潮 は な い 。金 融 機 関 の 一 般 的 な 顧 客 は 、取 引 の 際 に 、金 融 機 関 の 格 付 け や 自 己 資 本 比 率 と い っ た 判 断 に 一 定 の 学 識 を 要 す る 情 報 で は な く 、 任 意 制 度 に 所 属 し て い る か ど う か を 判 断 基 準 と す れ ば よ い 。 2.1.1.金 融 機 関 保 護 基 金27 非 営 利 の 地 域 金 融 機 関 で あ る 貯 蓄 銀 行・州 立 銀 行 グ ル ー プ 、信 用 協 同 組 合 に は 、任 意 加 盟 の 共 助 制 度 が 設 け ら れ て お り 、こ れ に 属 さ な い 場 合 に の み 強 制 制 度 に 属 さ ね ば な ら な い(このことは EU 指令およびドイツ の 「 預 金 保 護 ・投 資 者 補 償 法 」 に 規 定 さ れ て い る)。各地域の貯蓄銀行連 合 支 援 基 金 、州 立 銀 行 振 替 中 央 銀 行 保 護 準 備 金 、信 用 協 同 組 合 の 保 護 制 度 が あ り 、こ れ ら 基 金 の 運 営 と 資 金 融 通 に よ り 、貯 蓄 銀 行 グ ル ー プ と 信 用 組 合 グ ル ー プ は 、そ れ ぞ れ 単 一 の 金 融 機 関 で あ る か の よ う に 連 帯 し て い る28。 こ の 制 度 に は 、 い わ ゆ る ペ イ オ フ 制 度 が な い 。 ・ 貯 蓄 銀 行 セ ク タ ー ・ 貯 蓄 銀 行 貯 蓄 銀 行 は 、各 地 域 の 貯 蓄 銀 行 支 援 基 金[Sparkassenstützungsfonds]

27 Vgl. Gabler Bank Lexikon[2000], Einlagensicherung

28 フラ ン ス と 異 なり 、グ ル ープ 間 保 証 が「 法 的 」な 制 度 で は ない 。そ の ため 、格

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に 所 属 し て い る 。こ こ で 保 護 さ れ る の は 、顧 客 の 個 別 預 金 で は な く 、信 用 機 関 の 資 産 残 高 で あ る 。 貯 蓄 銀 行 は 、定 期 的 に 特 定 の 金 額 を 定 款 で 定 め ら れ た「 責 任 ボ リ ュ ー ム 」(全体ボリューム)まで保護基金に払い込む。責 任ボリュームは、 所 属 し て い る 貯 蓄 銀 行 が 毎 前 年 度 末 に 有 し て い た 「 顧 客 に 対 す る 債 権 Forderungen an Kunden」の貸借表持高の 0.3%である。貯蓄銀行は年 間 に 、 こ の 全 体 ボ リ ュ ー ム の 1 割(つまり貸借表持高の 0.03%)を払い込 む 。こ の 払 込 義 務 は 、支 援 基 金 が 全 体 ボ リ ュ ー ム の 半 分 に 達 し た と き に 終 了 し 、残 り の 半 分 は 、必 要 が 生 じ た と き に 払 い 込 む 追 加 払 込 義 務(ギャ ラ ン テ ィ ー ボ リ ュ ー ム)となる。 ・ 州 立 銀 行/振替中央銀行 州 立 銀 行 は 、「 州 立 銀 行/ 振 替 中 央 銀 行 の 保 護 準 備 金 [Sicherungs- reserve]についての規則」なる法的な枠組みにより、独自の基金を有す る 。責 任 ボ リ ュ ー ム 、現 金 払 込 、追 加 払 込 の 体 系 は 、貯 蓄 銀 行 支 援 基 金 の 体 系 が 準 用 さ れ て い る 。た だ し 、預 金 を 保 護 す る 基 金 と い う コ ン セ プ ト な の で 、 責 任 ボ リ ュ ー ム ・ 払 込 義 務 の 計 算 基 礎 は 、「 銀 行 で な い 顧 客 か ら の 預 金[Einlagen von Nichtbankkunden]」である。

責 任 ボ リ ュ ー ム(全体ボリューム)は、計算基礎の 1%に固定されている。 年 間 の 払 い 込 み 義 務 は 、そ の 1 割、つまり「銀行でない顧客からの預金」 の 0.1%で、基金ボリュームの半分が積み立てられたときに終了する。 貯 蓄 銀 行 支 援 基 金 と 同 様 、 追 加 払 込 義 務 が 規 定 さ れ て い る 。 こ の 保 護 準 備 金 は 、外 見 上 は 、加 盟 金 融 機 関 に お け る 非 銀 行 顧 客 預 金 の 追 加 的 保 障 で あ る が 、実 際 は 、加 盟 金 融 機 関 の 保 護 を 目 的 と す る も の で は な く 、第 一 に 、州 立 銀 行 も 保 護 シ ス テ ム に 参 加 す べ き だ と い う 平 等 基 準 を 満 た し 、第 二 に 、こ の 制 度 に よ っ て 州 立 銀 行 が 貯 蓄 銀 行 組 織 の 責 任 連 合 に も 所 属 し 、「 地 域 間 調 整 」 を す る 際 に 特 別 措 置 を 遂 行 す る こ と を 可 能 と す る た め の も の で あ る 。 「 地 域 間 調 整 」は 、支 援 事 故 が 生 じ た 場 合 に お い て 、必 要 な 支 出 が 担 当 す る 地 域 基 金 の 手 持 ち の 資 金(追加払い込みを除く)を超えるときに 行 う 。各 貯 蓄 銀 行 支 援 基 金 は 、独 立 の 地 方 的 制 度 と し て 設 立 さ れ て い る が 、 「 貯 蓄 銀 行 支 援 基 金 お よ び 州 立 銀 行/振 替 中 央 銀 行 保 護 準 備 金 の 責 任 連 合 の た め の 定 款 」を 基 礎 に し て 、支 援 基 金 と 保 護 準 備 金 は 、自 由 な 連 帯 責 任 制 度 を 形 成 し て い る 。こ れ に 基 づ い て 、支 援 基 金 な い し 保 護 準 備 金 の 資 金 を 別 の 制 度 に 投 入 す る こ と が で き る 。必 要 な 場 合 に は 、す べ て の 基 金 の 全 体 ボ リ ュ ー ム が 共 同 的 に 利 用 に 付 さ れ る わ け で あ る 。 な お 、 公 法 上 の 信 用 機 関 の 支 援 措 置 は 、 今 の と こ ろ 2005 年までは自 治 体 が 「 機 能 維 持 責 任[Anstaltlast]」を根拠に金融機関に対する資産額 維 持(メンテナンス)の責任をも負っているため 、保証自治体等と支援 基 金 の 共 同 で 行 わ れ る 。

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・ 信 用 組 合 セ ク タ ー

全 国 都 市 及 び 農 村 信 用 組 合 連 合(Bundesverband der deutschen Volksbanken und Raiffeisenbanken e.V., 略称 BVR)の保護制度は、単

位 協 同 組 合(単協)が資産の毀損などで経済的 困難に陥る場合、単協が慎 重 義 務 を 怠 っ て い な か っ た と き に 限 り 金 融 機 関 の 資 産 残 高 を 保 護 し 、預 金 者 に 対 し て は 無 記 名 金 融 債 と 預 金 を 全 額 保 護 す る も の で あ る 。 各 地 方 制 度 は ギ ャ ラ ン テ ィ ー 基 金 と ギ ャ ラ ン テ ィ ー 連 合 と で 成 り 立 っ て い る 。 (1)「ギャランティー基金」は、保証、ギャランティー(損害担保)、与 信 、現 金 供 与 を 行 う も の で あ る 。基 金 は 連 合 加 盟 組 合 か ら の 会 費 で 維 持 さ れ る 。 単 協 は 、 最 大 で 年 間 ロ ー ン 残 高 の 0.2%を納付する。会費の一 割 は 、全 国 連 合 の 口 座 の ひ と つ に 集 め ら れ 、管 理 さ れ る 。九 割 は 、地 方 の 監 査 連 合 の 口 座 に お か れ 、 こ れ が 全 国 連 合 の 信 託 を 受 け て 管 理 す る 。 (2)「ギャランティー連合」は、「基金」の代替手段として考え出され た も の で 、そ れ で 十 分 な 場 合 に 、会 計 上 の 支 援 を 保 証 又 は ギ ャ ラ ン テ ィ ー の 形 態 で 行 う 。ギ ャ ラ ン テ ィ ー 連 合 に 加 盟 す る 単 協 がBVR に対して、 「 当 該 保 証 ま た は ギ ャ ラ ン テ ィ ー を カ バ ー す る た め に 必 要 な 場 合 、包 括 価 値 修 正[一般引当に当たる]の一定比率を上限に支 援する」という義 務 を 負 う こ と に よ り 、 必 須 ギ ャ ラ ン テ ィ ー ボ リ ュ ー ム が 形 成 さ れ て い る 。 い ず れ の 地 方 監 査 連 合 も 、保 証 や ギ ャ ラ ン テ ィ ー を 自 分 の「 基 金 」で 行 う か 、 そ れ と も 「 連 合 」 の 支 援 措 置 を 利 用 す る か 、 自 分 で 決 定 で き る 。 最 近 の 動 向 と し て は 、2000 年にギャランティー基金の能力を高める た め 定 款 を 新 た に し 、支 援 先 信 組 の 整 理 と 早 期 是 正 の た め の 検 査 権 限 に つ い て 強 化 す る な ど し て い る 。ま た 、ギ ャ ラ ン テ ィ ー 基 金 を 汲 み つ く し た 地 方 連 合 が い く つ か あ る た め 、全 国 レ ベ ル の 基 金 を 計 画 中 で あ る 。バ ー ゼ ル II の導入にあたり、単協について A から D までの格付をつける た め の 手 法 の 開 発 に も 取 り 組 ん で い る 。単 協 を 毎 年 格 付 し 、正 規 保 険 料 に 対 し て A+と A は 90%、A-から B-までは 100%、C から D までは 120 か ら 130%を払い込むような体系を計画している29 2.1.2.預 金 保 護 基 金30 営 利 金 融 機 関 が 任 意 で 構 成 す る ド イ ツ 全 国 銀 行 連 合(Bundesverband deutscher Banken e.V.,略称 BdB)は、1974 年のヘルシュタット危機後、 預 金 保 護 基 金[Einlagensicherungsfonds] 31を 設 け た 。 こ れ を 通 じ て 、 補 償 機 構 の 上 限 を 超 え て 預 金 を 保 護 し た り 、国 内 銀 行 が シ ン ジ ケ ー ト を 29 2002 年 9 月 に おけ る BVR で の ヒ アリ ン グ に よる 。 30 本項 の 記 述 は 預金 保 護 基 金の 定 款 に よる 。 31 フル 免 許 を 持 ち、 銀 行 監 査連 合 に 所 属す る 銀 行 が参 加 。 Vgl.Büschgen[1998], S.915.

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組 ん で 銀 行 救 済 す る 資 金 を 援 助 し た り す る こ と が で き る 。 ・ 目 的 と 手 段 基 金 の 任 務 は 、 銀 行 の 財 務 上 の 困 難(特に支払停止)があるとき、又は そ の 虞 が あ る と き に 、預 金 者 の 利 害 に お い て 援 助 活 動 を す る こ と に よ り 、 会 員 で あ る「 私 立 の 信 用 機 関 」の 信 頼 性 が 損 な わ れ な い よ う に す る こ と で あ る 。こ の 目 的 を 果 た す た め 、特 に 以 下 の よ う な「 支 援 に 適 し た あ ら ゆ る 措 置 」 を と る(基金定款第 2 条) 32 1. 定 款 第 6 条 に 基 づく 個 別 債 権者 へ の 支 払 (ペ イ オ フ) 2. 銀 行 への 給 付(資 金 提 供 等) 3. ギ ャ ラン テ ィ ー[損 害 担 保]の 引 受 4. 信 用 制度 法 第 46a 条 に 基 づ く措 置 の 枠 内で の 諸 義 務の 引 受33 ・ 基 金 の 組 織 基 金 を 構 成 す る 銀 行 は 、 四 大 銀 行 、 地 方 銀 行 及 び そ の 他 銀 行34、 個 人 銀 行 家 、 私 立 の 不 動 産 抵 当 ・ 船 舶 抵 当 銀 行 、 特 任 銀 行35、 外 国 銀 行 に 分 類 さ れ て お り 、こ れ が い わ ゆ る「 私 立 銀 行 」で あ っ て 、統 計 上 の 概 念 で あ る 「 信 用 銀 行 」 の 概 念 よ り は 広 く 、 か つ ポ ス ト バ ン ク が 入 ら な い 。 会 員 は(入会費のほか)、普通会費として「顧客に対する債務36」の 0.3 パ ー ミ ル(0.03%)を毎年納入する。独自の検査で A,B,C1~3 の五ランクあ り 、A ランク以外の金融機関は、普通会費の 2.5 倍までの高い会費を支 払 う こ と に な っ て い る 。長 期 の A ランク会員には会費免除など各種優遇 措 置 も あ る 。基 金 が 不 足 す る 場 合 は 、こ の 年 の 会 費 を 二 倍 に す る か 会 費 と 同 額 の 特 別 会 費 を 徴 収 す る こ と を 毎 年 決 定 す る(基金定款第 5 条)。 32 わが 国 な ど は 外部 か ら 強 制す る「 行 政 法 」の た め 、公 平 を 期す べ く 複 雑詳 細 な 規 定 と な る 。 ド イ ツ で は 自 治 的 組 織 の 「 定 款 」 だ か ら 「 支 援 に 役 立 つ あ ら ゆ る 手 段 」 で 終 わ っ て し ま う 。 細 部 は そ の 都 度 対 処 す る も の と 思 わ れ る 。 33 この 3 号 と 4 号 は 、 以 下 の条 文 と 関 連し て い る 。信 用 制 度 法 第 46a 条(1)第 三 文 「 当 該 金 融 機 関 は 、 第 一 文 第1 号 に よる 譲 渡 及 び支 払 禁 止 の布 告 後 で も、布 告 時 点 に 当 座 で あ っ た 業 務 を 精 算 し て 新 た な 業 務 を 行 っ て も よ い 。 た だ し 、 そ れ が 精 算 に 必 要 な 限 り で あ っ て 、 か つ 担 当 の 預 金 保 護 機 構 又 は 投 資 者 補 償 機 構 が 遂 行 に 必 要 な 資 金 を 利 用 に 付 し 、 又 は こ れ ら の 業 務 全 体 か ら 生 じ る 当 該 金 融 機 関 の 資 産 減 少 分 を 、 そ れ が 全 債 権 者 の 完 全 弁 済 に 必 要 な 限 り で 、 金 融 機 関 に 支 払 う 義 務 を 負 う 限 り で あ る 。」 本 稿 3.1.3.の モ ラト リ ウ ム の款 も 参 照 。 34 連銀 統 計 と 違 い、 個 人 銀 行家 と ポ ス トバ ン ク が 含ま れ な い。「 そ の 他 」と し て は 、BMW 銀 行 など の 機 関 銀行 が 入 っ てい る 。 35 AKA 輸 出 信 用 有限 会 社(フ ラ ン ク フ ルト )、IKB ド イ ツ 工 業銀 行 株 式 会社 (デ ュ ッ セ ル ド ル フ)、ザ ー ル 投 資信 用 銀 行 株式 会 社 (ザ ー ル ブ リ ュッ ケ ン )の 三 行 で あ る。 DePfa 建築 用 地 銀行 株 式 会 社(ヴ ィ ー スバ ー デ ン )は 、 最 近 脱退 し た よ うで あ る 。 36 付保 預 金 の 属 する 項 目 と 同じ く 、指図 債 券 が 入 らな い 点 が 連銀 統 計 と は異 な る 。

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第 二 項 で い う 援 助 と し て ど の よ う な 手 段 を と る か は 、10 名からなる預 金 保 護 委 員 会 が 決 定 す る(基金定款第 7 条)。銀行連合の総会は、大銀行 の 代 表 4 行、地方銀行、外国銀行、その他の金融機関の代表 3 行、個人 銀 行 家 の 代 表 3 名の委員、事故あるときのための同数の代理を選出する (いずれも業務執行権者すなわち経営のトップでなければならない)。 ・ 基 金 加 盟 銀 行 の 規 律 基 金 へ の 加 盟 が 免 許 交 付 に 与 え る 影 響37、 脱 退 が 預 金 に 与 え る 影 響 を 配 慮 し て 、 通 常 の 銀 行 は 基 金 に 加 盟 し て い る(所属変更はありうる)。 加 盟 に 当 た っ て は 、 法 令 順 守 し 、 監 査 連 合 に 加 入 し な け れ ば な ら ず 、 監 査 連 合 か ら 脱 退 し た り 、不 正 情 報 を 提 供 し た り し た 場 合 は 、除 名 等 の 処 分 が な さ れ る(基金定款 3 条および 4 条)。これによって基金が金融機 関 を 監 視 す る 体 制 が 整 備 さ れ て い る 。 資 金 援 助 等 の 支 援 に つ い て は 、銀 行 側 に 法 的 な 権 利 が あ る わ け で は な い(基金定款 10 条)。したがって銀行経営者にとって、自分の銀行が救済 さ れ る か ど う か は 、通 常 は 競 争 状 態 に あ る 同 業 他 社 の 役 員 か ら な る 委 員 会 が 基 金 の 利 用 に 合 意 す る か ど う か に か か っ て い る 。 ・ 付 保 預 金 の 範 囲 及 び 上 限 対 象 と な る 預 金 等 は 、自 然 人 、企 業 、公 的 主 体 の 預 金 等(対照表で「顧 客 に 対 す る 債 務[Verbindlichkeiten gegenüber Kunden]」と表示されて

い る 部 分)、および、投資信託会社等が信託財産の投資のためになした預 金 等 で あ る(基金定款第 6 条の 1)。ただし、無記名証券化されているも の(銀行社債又はプファントブリーフ)又は証券現先取引やレポ取引で 生 じ た 債 務 、コ ン ツ ェ ル ン 内 の 外 国 銀 行 に 対 す る も の(同第 6 条の 1a)若し く は イ ン サ イ ダ ー と そ の 家 族 に 対 す る も の(同第 6 条の 2)は保護されな い 。し た が っ て 債 券 発 行 を 中 心 と し た 抵 当 銀 行 や 特 任 銀 行 の 場 合 、規 模 の 割 に は 、 基 金 が 保 護 す べ き 債 務 は ほ と ん ど な い と 言 っ て よ い 。 こ れ ら を 保 護 す る 上 限 は 、前 年 度 の「 責 任 自 己 資 本[haftendes Eigen- kapital]38(た だ し 補 完 的 資 本 は 核 資 本 の 25%ま で し か 考 慮 し な い )の 30%である(基金定款第 6 条の 1)。言い換えると、核資本と補完資本の 比 率 に よ り 、 核 資 本 の 30 から 37.5%が上限として定まる。自己資本の 充 実 度 に も よ る が 、一 名 義 当 た り 数 億 円 か ら 1 兆円程度まで保護するこ と が で き る こ と に な る39。 こ の 額 は 、 業 界 の 監 査 連 合 が 検 査 し た 結 果 を 37 ライ ザ ー/森 下[1994],5 頁 も 参照 。 38 「保証 自 己 資 本」と も い う。信 用 制 度法 第 10 条(2)及 び(6)に よ り、核 資 本 及 び 補 完 資 本 を 合 算 し 、非 連 結 金 融 機 関 等 に 対 す る 10%以 上 の 出 資等 を 控 除 した も の 。 39 預金 貸 付 機 関 を開 業 す る ため の 最 低 資本 金 額 は 信用 制 度 法 (33 条 第 一 項の d)に よ り 500 万 ユ ー ロ、最 大 の 民間 銀 行 た るド イ ツ 銀 行の コ ン ツ ェル ン 責 任 自己 資 本 が 約 370 億 ユ ー ロ(た だ し 外国 の 子 会 社も 含 む 数 値 )だ か ら であ る 。

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イ ン タ ー ネ ッ ト で 公 表 し て 確 定 す る(同条の 9)。 こ の 保 護 上 限 ま で は 、法 律 上 、後 見 人 が 管 理 す る 被 後 見 人 資 金 の 投 資 に 適 格 な 安 全 資 産 と み な さ れ て い る(民法典 1806 条および 1807 条第一 項 第 五 号)。ただし基金に対する法律上の請求権が発生するものではない (基金定款 6 条の 10)。これらのことは、有責預金者のモラルハザードに 対 処 す る 自 由 も あ る と い う こ と 、ま た 、こ の 制 度 が 究 極 的 に は 専 門 家 の 社 会 的 責 任 に 立 脚 し て い る と い う こ と を 意 味 し て い る 。 な お 、「 預 金 保 護 基 金 は 、 預 金 保 護 及 び 投 資 者 補 償 法 に 基 づ く そ の 他 の 保 護 制 度 又 は 補 償 機 構 が 当 該 預 金 を 補 償 し な い と き そ の 限 り に お い て 、補 償 給 付 を 本 定 款 に よ り 提 供 す る 」(同条の 11)から、後述の補償機 構 で 払 わ れ な い 10%の控除部分を基金が補償しうる。 ・ 特 殊 な 口 座 の 取 扱 複 数 の 名 義 人 か ら な る 共 同 所 有 口 座 に つ い て は 、口 座 を 按 分 し て 個 別 預 金 者 に 帰 属 さ せ 、個 別 預 金 者 が 保 護 上 限 を 使 い 切 っ て い な い 限 り で 共 同 所 有 口 座 の 預 金 も 保 護 さ れ る40。 法 律 に 定 め る 集 合 住 宅 の 所 有 協 同 組 合 の 口 座 に つ い て は 、こ れ を 一 つ の 口 座 と み な す 旨 の 規 定 が な さ れ て い る(基金定款第 6 条の 7)。名寄せをしないのだから事務負担も軽減され る 。ド イ ツ の 不 動 産 事 情 や 保 護 上 限 を 念 頭 に 置 け ば 、住 宅 所 有 組 合 が 一 口 座 と み な さ れ て も 多 く は 上 限 に 達 し な い で あ ろ う か ら 、結 果 的 に 一 人 当 た り の 保 護 額 が そ の 分 増 大 し 、 実 質 的 な 優 遇 と な る 。 ・ 預 金 債 権 等 の 移 転 基 金 に 加 盟 し た 銀 行 は 、 普 通 取 引 約 款 の 第 20 号として預金保護につ い て 触 れ な け れ ば な ら な い(基金定款第 5 条第4号)。この契約に従い、 預 金 保 護 基 金 又 は こ れ が 委 任 し た 者 が 顧 客 に 支 払 い を な す 範 囲 で 、顧 客 の 当 該 銀 行 に 対 す る 債 権 は 、付 随 す る 権 利 と 併 せ て 、相 応 額 が 次 々 に 預 金 保 護 基 金 へ と 移 転 す る こ と に な る 。ペ イ オ フ 決 定 時 に は 、こ の 仕 組 み に よ っ て 立 替 払 い を す る も の と 思 わ れ る 。 2.2.「 最 後 の 貸 手 」 制 度 以 上 の よ う に 、各 業 界 で 保 護 基 金 が 作 ら れ て い る が 、一 つ 問 題 が あ る 。 金 融 機 関 保 護 基 金 で も 、基 金 の 責 任 準 備 は 現 金 形 態 で は な く 単 な る 保 証 で あ る 。預 金 保 護 基 金 で も 、基 金 を 現 金 で 備 蓄 し て い る と は 思 え な い41 40 ドイ ツ で 口 座 を作 る と 、署 名欄 が 二 名分 あ る よ うに 、普 通 は 、二 人 の 共 同 生 活 者(夫 婦 な ど)の た め の 口 座を 意 味 す る。 い ず れ かの 署 名 で よい 口 座 と 両方 の 署 名 が 必 要 な 口 座 と が あ る 。 日 本 で は 、 一 方 の 給 与 口 座 の 通 帳 や 印 鑑 を 配 偶 者 に 預 け る な ど す る と 思 わ れ 、 こ の よ う な 口 座 の 需 要 が な か っ た の で あ ろ う 。 41 現在 の 預 金 額 を基 礎 に 30 年程 度 「 保険 料 」 を 積立 て た と 仮定 し て も 、基 金 は た か だ か 600 億ユ ー ロ(約 7 兆 円)に し か な ら ない 。

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急 に 大 き な 金 融 機 関 が 破 綻 し た り 、小 さ く と も 連 続 し て 多 数 の 金 融 機 関 が 破 綻 し た り し た 場 合 、 現 金 が 枯 渇 す る 可 能 性 が あ る 。 こ の 問 題 を 解 決 す る と す れ ば 特 融 制 度 で あ る が 、ド イ ツ 連 銀 法 は 、日 銀 法 第37 条(金融機関等に対する一時貸付)や第 38 条(信用秩序の維持に 資 す る た め の 業 務)にあたる規定を持たない。「中央銀行の最後の貸手と し て の 役 割 を 強 調 す る ア ン グ ロ ・サ ク ソ ン 的 伝 統42」は 、中 央 銀 行 の 安 全 性 及 び 独 立 性 を 脅 か し 、通 貨 安 定 の 維 持 や 通 貨 の 信 認 を 脅 か す し 、な に よ り 市 中 銀 行 に モ ラ ル ハ ザ ー ド を 引 き 起 こ す か ら で あ る 。 そ の か わ り に「 最 後 の 貸 手 」機 能 を 果 た す の が 、フ ラ ン ク フ ル ト に 本 店 の あ る 流 動 性 コ ン ソ ー シ ァ ル 銀 行 有 限 会 社(Liquiditäts Konsortial- bank GmbH、略称 Liko-Bank、以下リコバンク)を媒介とする流動性供 与 制 度 で あ る 。こ の 制 度 を 通 じ て 、三 つ の 業 界 団 体 の 保 護 基 金 が す べ て 結 び 付 け ら れ 、 流 動 性 危 機 に 対 応 す る43(末尾の図 2 を参照)。 リ コ バ ン ク は 、 ヘ ル シ ュ タ ッ ト 危 機 の 後 、 ド イ ツ 連 邦 銀 行 の 主 導 で 、 私 法 上 の 特 任 銀 行 と し て 1974 年に設立された。目的は、支払能力に問 題 が な い 銀 行 に 、 流 動 性 の 危 機 が 生 じ た と き に 、 流 動 性 支 援 を 供 与 し 、 ド イ ツ の 銀 行 制 度 全 般 に 一 般 的 な 信 任 の 減 退 が 生 じ る こ と を 防 ぐ こ と で あ る 。 社 員 は 、 ド イ ツ 連 邦 銀 行 、 ド イ ツ 全 国 銀 行 連 合 加 盟 金 融 機 関 、 ド イ ツ 貯 蓄 銀 行 振 替 局 連 合 加 盟 金 融 機 関 、R+V 信用組合連合会代表たる DZ バ ン ク ・ ド イ ツ 協 同 組 合 銀 行 AG 、 銀 行 専 門 家 連 合 [Bankenfachverband e.V.]であって、総会においては基本資本に追加す る 出 資 義 務 を 定 め る こ と が で き る44 資 本 金 は 約 2 億ユーロで、30%を連銀が出資し、残りを 136 の個別銀 行 ま た は 連 合 が 出 資 し て お り 、追 加 出 資 義 務 は 約 10 乃至 17 億ユーロで あ る45。 全 ド イ ツ の 銀 行 業 界 に 益 す る 金 融 機 関 で あ る が 、 営 業 報 告 で も 42 ドイ ツ 連 銀 副 総 裁 Jürgen Stark が 1999 年 の 春に 述 べ た とさ れ る 見 解を 参 照 し た 。Euromoney 誌 2000 年 7 月 号 参照 。 43 Vgl. Süchting/Paul[1998],S.490ff.

44 Vgl. Gabler Bank Lexikon[2000], Liquiditäts Konsortialbank

45 Süchting/Paul[1998],S.491 に よ れ ば 、残 り は 連 銀 30%,全銀 連 31.5%,系 統 中

央 金 融 機 関 等 11%,貯 蓄 銀 行協 会 26.5%(残 り 1%は 賦 払 銀行 信 託 基 金か )で あ る。 加 藤 訳[1980],121 頁 と 比 較 する と 、労 金 中 央 銀 行 の出 資 分 を 全銀 連 側 が 取得 し て い る 計 算 で あ る 。Enzyklopedisches Lexikon[1999],Liquiditätskonsortial Bank GmbH によ れ ば、資 本 金 3 億 7200 万 マ ル ク 、追 加 出 資 義 務 18 億 6000 万 マ ル ク と さ れ て い る 。ド イ ツ 版 フ ィ ナ ン シ ャ ル・タ イ ム ズ 2000 年 1 月 17 日 の 記 事 に よ れ ば 、1.9Mrd.DM(約 10 億 ユ ー ロ)の と ころ を 10Mrd.100 億マ ル ク す なわ ち 約 50 億 ユ ー ロ に し て 、こ の シ ス テ ム を 欧 州 レ ベ ル で 利 用 し よ う と す る 提 案 が 、[リ コ バ ン ク の]監 査 役 会に よ っ て 否決 さ れ た 。加 藤 訳 [1980],121 頁と 比 較 す れば 、 30 年 で 3 倍 弱 引 き 上 げた 計 算 に なる 。Euromoney 誌 2000 年 7 月 号 に よ れ ば 、資 本 金 + 準 備 金 が 2 億 2400 万 ユ ー ロ 、 コ ーラ ブ ル マ ネー 17 億 ユ ー ロ と し てい る 。

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あ ま り 詳 し く 語 っ て い な い と さ れ る46 リ コ バ ン ク の 市 中 銀 行 に 対 す る 流 動 性・信 用 供 与 は 、当 該 銀 行 が 自 己 の 資 金 を 利 用 で き る と き は 帳 簿 信 用 、そ う で な い と き は 、約 束 手 形 の 割 引 に よ る 。 そ の 際 、 以 下 の 前 提 が 必 要 で あ る47 1. 通 常 の市 場 条 件 によ る 。 2. [リ コ]銀 行 の 信 用委 員 会 の 全員 一 致 で 信用 供 与 す る。 3. 原 則 と し て 有 担 保 と す る (預 金 保 護 基 金 の 損 失 補 償 付 き で 債 権 を 受 け 入 れ た り 適 格 手 形 を 割 り 引 い た り す る)。 ド イ ツ で は 、手 形 と 言 え ば 為 替 手 形 で あ り 、約 束 手 形 の 割 引 は 特 殊 な こ と で あ る 。こ こ で は 再 割 引 を 可 能 に す る た め に 約 束 手 形 を 出 さ せ て い る 。 こ れ に 関 す る 連 銀 の 再 割 引 可 能 上 限 は 、 約 5.6 億ユーロである48 こ う し て 、「 特 別 融 資 」 に お い て も 、 政 府 や 中 央 銀 行 が 負 担 を 引 き 受 け る わ け で は な く 、特 定 の 業 界 の 組 織 の 保 証 の も と 、究 極 的 に は 全 銀 行 業 界 の 了 解 の 下 に 、流 動 性 供 与 が 行 わ れ る 。こ の こ と に よ っ て 市 場 規 律 が 高 ま る と さ れ て い る49 2.3.預 金 保 護 お よ び 投 資 者 補 償 の 制 度 ド イ ツ に は 、業 界 で 自 発 的 に 形 成 し た 基 金 の ほ か 、強 制 で 加 盟 す る 補 償 機 構 が 存 在 す る 。こ れ は 、EU 指令(預金保護指令[Einlegersicherungs- richtlinie]および投資者補償指令[Anlegerentschädigungsrichtlinie])に 沿 っ て 、 ド イ ツ で 「 預 金 保 護 ・投 資 者 補 償 法[Einlagensicherungs- und Anlegerentschädigungsgesetz, 略称 ESAEG]」が制定されたことによ る 。EU 預金保護指令は、ギリシャ、ポルトガルに預金保護制度がなか っ た こ と を 踏 ま え て 共 通 の 最 低 基 準 を 作 る た め の 規 制 で あ り50EU 投 資 者 補 償 指 令 は 、証 券 取 引 に 伴 う 義 務 を 最 低 限 補 償 す る た め の 規 制 で あ る51。 こ の 制 度 は 、 以 下 の よ う に 実 施 さ れ て い る 。 2.3.1.補 償 機 構 の 設 置 形 態 預 金 保 護 ・投 資 者 補 償 法(以下「預保法」)の規定(第 6 条 機構 第一 46 Vgl. Hahn[1998],S.286

47 Vgl. Gabler Bank Lexikon[2000],Liquiditäts-Konsortial Bank GmbH und

auch Franke[2000],S.250. 48 Euromoney 誌 2000 年 7 月 号 に よ る 。 49 ドイ ツ 連 銀 理 事兼 ヨ ー ロ ッパ 中 央 銀 行銀 行 監 督 委員 会 委 員 長 Edgar Meister が 欧 州 レ ベ ル の 流 動 性 銀 行 を 提 案 し た 論 拠 。Euromoney 誌 2000 年 7 月 号 参 照 。 50 「最 低 基 準」と い う こ と は、補 償 上 限も ギ リ シ ャ、ポ ル ト ガル 両 国 の 経済 状 態 に 規 定 さ れ る と い う こ と が で き る 。 51 EU 指 令 は 各 国が 満 額 保 護ま た は よ り高 額 の 保 護制 度 を 作 るこ と を 許 容し て い る(ド イ ツ で そ れに 当 た る のが 民 間 の 預金 保 護 基 金や 金 融 機 関保 護 基 金 であ る )。

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項)により、復興金融公庫[Kreditanstalt für Wiederaufbau,略称 KfW] に 法 人 格 の な い 連 邦 特 別 財 産 と し て 、三 つ の 金 融 機 関 グ ル ー プ に 各 一 つ の 「 補 償 機 構[Entschädigungseinrichtung] 52」 を 設 置 す る こ と が 規 定 さ れ て い る 。 こ こ で い う 三 つ の 金 融 機 関 グ ル ー プ と は 、1.私法上の預金貸付金融機 関 、2.公法上の預金貸付金融機関、3.その他の金融機関である。前述の 金 融 機 関 保 護 制 度 に 属 し て い る 限 り 、貯 蓄 銀 行(及び系統中央金融機関た る 州 立 銀 行)、信用組合(及び系統中央金融機関)は、補償機構に入る必要 は な い(預保法第 12 条 金融機関保護制度)。したがって、実際のところ、 1.は基本的に私立銀行、2.は州開発銀行等(特任銀行に分類される)とポス ト バ ン ク(信用銀行に分類される)が属し、3.は、証券業務53や 契 約 仲 介 等 54を 中 心 と す る 金 融 機 関 及 び 資 本 投 資 会 社(投資信託)である。なお、「預 金 貸 付 金 融 機 関 」(信用制度法第 1 条 第 3d 項)という概念には、無記名 社 債 等 の 発 行 で 公 衆 か ら 資 金 を 受 け 入 れ て 貸 付 を 行 う 金 融 機 関(貸 金 業 及 び 政 策 金 融 機 関)も含まれることに注意しなければならない55 実 際 は 、 三 つ と も 必 ず 公 庫 に 設 置 さ れ る わ け で は な く 、「 機 構 の 任 務 と 権 限 」 は 、「 機 構 の 任 務 を 引 き 受 け る 用 意 が あ り 、 か つ 、 機 構 の 要 請 を 履 行 す る に 十 分 な 保 証 を 与 え る 私 法 上 の 法 人 に 」連 邦 大 蔵 省 の 法 規 命 令 に よ り 委 任 で き る(第 7 条 受託機構 第一項)。この規定を用いて、 ド イ ツ 全 国 銀 行 連 合(BdB)はドイツ全銀連補償機構(EdB)を、ドイツ公的 銀 行 連 合(VöB)は公銀連補償機構を56、 有 限 会 社 形 態 で 設 立 し て い る 。 52 Einrichtung を 第 2 章 で は「 制 度 」と訳 し た が 、こ こ で は これ と 区 別 す る た め 「 機 構 」 と 訳 し て い る 。 53 プリ ン シ パ ル ・ブ ロ ー キ ング 業 務 、 アン ダ ー ラ イテ ィ ン グ 業務 で あ る 。 54 「財 務 道 具 Finanzinstrument」の 投 資仲 介・契 約仲 介 、ポ ート フ ォ リオ 管 理 、 仕 切(顧 客 の た めの 自 己 売 買)業 務 で ある 。 55 例え ば ト ヨ タ 信用 銀 行 GmbH(ケ ル ン)や フ ォ ルク ス ヴ ァ ーゲ ン 銀 行 GmbH(ブ ラ ウ ン シ ュ ヴ ァ イ ク)な ど の割 賦 信 用 機関 も 1 の EdB に 加 入 さ せ ら れて い る 。 56 LfA バイ エ ル ン州 援 助 銀 行(元 ・ 州 開発 金 融 制 度 )(ミ ュ ン ヘン )、 ブ レー メ ン 開 発 銀 行 GmbH、Calenberger 信 用 協 会(ハ ノ ー バー )、DtA ド イ ツ 平 衡 銀行 (ボ ン)、 ド イ ツ 信 用 銀 行 AG(ベ ル リ ン)、 ド イ ツ・ ポ ス ト バン ク AG(ボ ン )、DIF ド イ ツ 投 資 金 融 銀 行 GmbH(バ ー ト・ ホ ン ブ ルク )、 ハ ンブ ル ク 住 宅建 築 信 用 制度 、 国 際 銀 行 商 会 ゼ ー デ ン ゼ ーAG(フ リ ー ド リ ヒ スハ ー フ ェ ン )、ブ ラ ンデ ン ブ ル ク州 投 資 銀 行(ポ ツ ダ ム)、 ヘ ッ セ ン 州投 資 銀 行(フ ラ ン ク フル ト )、 ラ イ ン ラ ン ト・プ フ ァ ルツ 投 資 構 造 銀 行 GmbH(マ イ ン ツ )、 L-Bank バ ー デ ン ・ヴ ュ ル テ ン ベ ル ク 国 立 銀 行 、 農 業 用 レ ン テ ン バ ン ク(フ ラ ン ク フ ル ト )、ポ ス ト バン ク・イ ー ジ ー ト レ ー ド AG(ケ ル ン)、 ス タ ー デ騎 士 団 金 融公 庫 (ス タ ー デ)、 ザ クセ ン 開 発 銀 行 GmbH(ドレ ス デ ン)、setis-bankAG(ラ イ プ チヒ 、昨 年 8 月 ま で に 新規 加 盟 し てい る )、チ ュー リ ン ゲ ン 開 発 銀 行(エ ル フ ル ト)。 性 格 は 公的 だ が 、 法形 態 は 私 法上 の 金 融 機関 も 含 ま れ て い る 。 預 金 保 護 ・ 投 資 者 補 償 法 の 第 6 条 第 二 項の 規 定 に より 、同 意 を得 て 所 属 変 更 し て い る と 思 わ れ る 。VöB の サ イト に よ れ ば、 ブ レ ー メン 開 銀 、 DIF、 ブ ラ ン デ ン ブ ル ク 州 投 資 銀 行 以 外 の 諸 銀 行 は 、 こ の 部 門 に 独 自 の 任 意 預 金 保 護 基 金

図 2 リコバンクおよび業態別保護基金のシステム  中央銀行部門 30% 特別再割引 26.5% 出資持分 +  31.5% 特任銀行 追加出資義務 市中銀行     1) 責任連合 (保証連合) 3a)の十分の一 5a) 5b) 州立銀行/ 振替金庫 11% 6) 2)               4a)             4b) 3a) 3b) 3a)顧客に対する債権の名目0.05パーセント、最大0.2パーセント 4a)顧客に対する債権の最大0.5%、又は加盟組合の預金の0.2% 6)顧客に対する

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