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ROCKY NOTE 二次性多血症に対して抗血小板薬を投与するべきか (120704) 喫煙が原因と思われる二次性多血症 ( 赤血球増加症 ) の患者を抗血小板薬で治療するべきかと いう研修医の疑問があったので

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Academic year: 2021

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二次性多血症に対して抗血小板薬を投与するべきか(120704)

喫煙が原因と思われる二次性多血症(赤血球増加症)の患者を抗血小板薬で治療するべきかと いう研修医の疑問があったので、自分なりに調べてみた。 ハリソンの多血症の項目では以下のような記載があり、ヘマトクリットが上昇すると血栓症のリ スクが上昇することが指摘されており、喫煙による多血症であっても禁煙や瀉血のような治療が 必要と記載されている。ただし、抗血小板薬の投与に関しては記載がない。  増加した赤血球量に起因する主症状は、血液の過粘稠や血栓症(静脈および動脈)である。  ヘマトクリットが 55%を超えると、血液粘稠度が幾何級数的に増加する。  (喫煙による多血症の)患者は禁煙すべきであり、もしできないなら多血症の治療のため瀉

血が必要である。(Such patients should be urged to stop smoking. Those who cannot stop smoking require phlebotomy to control their polycythemia.)

参考文献 2 は PCI 施行後の STEMI の患者に関する観察研究。貧血ほどではないものの、多血 症も短期的には死亡のリスクになっているようだが、心血管イベント(再狭窄、ステントの血栓、 MACE)に関してはそれほど関係しているようには見えない。

The mortality rates were greatest among the patients with anemia, followed by the patients with erythrocytosis, who in turn had greater short-term mortality than patients with normal hematocrit.

Multivariate analysis, which included patients with erythrocytosis and those with normal hematocrit (excluding the patients with anemia), revealed that erythrocytosis was associated with an odds ratio of 4.3 (95% confidence interval 1.4 to 13, p = 0.01) for 1-month mortality.

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(参考文献 2 より引用)

参考文献 3 の二次性血球増加症 secondary forms of myeloproliferative disorders の二次性赤 血球増加症 secondary polycythemia の部分には以下のような記載があり、二次性血球増加症で は積極的な治療対象としては紹介されていない。 予後は基礎疾患の予後による。治療は非腫瘍性(代償性)の場合、積極的に行う必要はない。 腫瘍性の場合、多くは瀉血を行うが、コントロール不良の場合はヒドロキシウレアなどの抗腫瘍 薬を投与する。あくまで基礎疾患の治療が基本である。 二次性多血症の治療に関しては原因の治療(喫煙者であれば禁煙)が優先されることは言うま でもないが、薬物による介入についてははっきりとしたデータを見出すことが出来なかった。ヘマト クリット値や他の血栓のリスク因子を勘案した上で、治療が必要かどうかが判断されると思うが、 少なくとも喫煙が原因と思われるようなケースで安易に治療が開始されることはあまり無さそう だ。 二次性多血症はともかく、真性多血症では本当に抗血小板薬の効果が期待できるのか。ここは 押さえておきたいポイントなので、論文を検索してみた。 参考文献 4 はコクランのシステマティックレビュー。これによると、致死性の血栓イベントはアスピ リン群で良好な傾向であった。95%信頼区間からは、14%イベントを増やすかもしれないが、大き

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抗血小板薬による試験は無いとのこと。

The use of aspirin, compared with placebo, was associated with a lower risk of fatal thrombotic events (although this benefit was not statistically significant (OR 0.20, 95% CI 0.03 to 1.14)) and did not increase the risk of major bleeding (OR 0.99, 95% CI 0.23 to 4.36). No studies have been published in patients with essential thrombocythaemia or studying other antiplatelet drugs.

(参考文献 4 より引用)

このシステマティックレビューにも含まれている比較的大きな試験である ECLAP 試験を読んでみ ることにした。

●PECO

P : 518 patients with polycythemia vera, no clear indication for aspirin treatment, and no contraindication to such treatment

E:low-dose aspirin (100 mg daily). C:placebo

O:The two primary end points were the cumulative rate of nonfatal myocardial infarction, nonfatal stroke, or death from cardiovascular causes and the cumulative rate of nonfatal myocardial infarction, nonfatal stroke, pulmonary embolism, major venous thrombosis, or death from cardiovascular causes.

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明らかなアスピリンの適応の無い真性多血症の患者に対して、低用量アスピリン(100mg/日)を 投与すると、プラセボと比較して、血管イベントが減少するかどうかを検討した研究であることが分 かる。 血管イベントとは以下の項目で評価している。 ①非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死 ②非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、肺塞栓、主要静脈血栓、心血管死 ●妥当か

抄録中に double-blind, placebo-controlled, randomized trial、The mean duration of follow-up was about three years.などのキーワードがある。本文の statistical analysis の部分に Analyses were performed according to the intention-to-treat principle.とあり、大きな問題は無さそう。

●結果 結果は①の項目では有意ではなかったが、②では有意にイベントを減少させていた。この②の 数値を用いて RRR、ARR、NNT を計算してみる RRR:1-3.2/7.9=59.5% ARR:7.9-3.2=4.7% NNT:1/ARR=22 22 人(約 3 年)

Treatment with aspirin, as compared with placebo, reduced the risk of the combined end point of nonfatal myocardial infarction, nonfatal stroke, or death from cardiovascular causes (relative risk, 0.41; 95 percent confidence interval, 0.15 to 1.15; P=0.09) and the risk of the combined end point of nonfatal myocardial infarction, nonfatal stroke, pulmonary embolism, major venous thrombosis, or death from cardiovascular causes (relative risk, 0.40; 95 percent confidence interval, 0.18 to 0.91; P=0.03). Overall mortality and cardiovascular mortality were not reduced significantly. The incidence of major bleeding episodes was not significantly increased in the aspirin group (relative risk, 1.62; 95 percent confidence interval, 0.27 to 9.71).

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(参考文献 5 より引用)

参考までに、サブグループ解析をみてみると、ヘマトクリットが高い集団でより効果が期待できそ うなデータが示されている。

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(参考文献 5 より引用) 治療効果の程度はともかく、真性多血症であればアスピリンによる血栓症予防がある程度期待 できそうだ。二次性多血症についてはそれを示すデータは発見できなかった。アスピリン以外の抗 血小板薬についてはデータが無い。一般的には、ヘマトクリットが高くなれば血栓のリスクは増す ものの、積極的には治療が行われていない。多血の程度、他のリスクなどを勘案して総合的に決 めるしかなさそうだ(保険診療上の問題もありそうだが)。治療する場合でも、基礎にある病態の改 善が優先される。それ以外に介入する場合では、ハリソンに記載されている瀉血、真性多血症で 効果の期待できるアスピリンなどが候補になると思うが、このような治療はより慎重に行われるべ きなのかもしれない。

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参考文献

1. 福井 次矢ら(監訳).ハリソン内科学 第 2 版.東京,MEDSI,2006.

2. Greenberg G, Assali A, Vaknin-Assa H, Brosh D, Teplitsky I, Fuchs S, Battler A, Kornowski R, Lev EI. Hematocrit level as a marker of outcome in ST-segment elevation myocardial infarction. Am J Cardiol. 2010 Feb 15;105(4):435-40. PubMed PMID: 20152235.

3. 高久 史麿. 新臨床内科学 第 9 版,東京,医学書院,2009.

4. Squizzato A, Romualdi E, Middeldorp S. Antiplatelet drugs for polycythaemia vera and essential thrombocythaemia. Cochrane Database Syst Rev. 2008 Apr 16;(2):CD006503. Review. PubMed PMID: 18425953.

5. Landolfi R, Marchioli R, Kutti J, Gisslinger H, Tognoni G, Patrono C, Barbui T; European Collaboration on Low-Dose Aspirin in Polycythemia Vera Investigators. Efficacy and safety of low-dose aspirin in polycythemia vera. N Engl J Med. 2004 Jan 8;350(2):114-24. PubMed PMID: 14711910.

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