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現場からのレポート ジュニアサッカー選手のバルセロナ遠征の報告 寺田進志新潟医療福祉大学 Training program in Barcelona for japanese junior football players Michiyuki TERADA Ⅰ. はじめに J J JFA (3-p.

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ジュニアサッカー選手のバルセロナ遠征の報告

寺田 進志

新潟医療福祉大学

Training program in Barcelona for japanese junior football players

Michiyuki TERADA

Ⅰ.はじめに

誰もがサッカーの海外遠征を経験できるわけで はない。さらに,世界的に有名なクラブチームと の対戦を目的に海外遠征を実施することは極めて 困難である。海外遠征を実施するためには時間, お金,海外のクラブチームとのコネクションなど が必要になるからである。もちろん,J リーグの 下部組織ともなれば海外遠征を経験することは可 能だろう。J リーグに所属するクラブと海外のク ラブとの間につながりがあるからである。しか し,いわゆる街クラブでは海外遠征を実施するこ とは決して容易なことではない。とりわけ,ジュ ニア年代での海外遠征を実施しているチームは決 して多いとはいえない。その理由は,ジュニア年 代のチームは少年団のチームが多く,ほぼボラン ティアでチームが運営されていることにあるとい える。 日本サッカー協会は JFA 2005年宣言(3-p.4)  を達 成させるために,育成年代において世界基準でト レーニングを実施することを目指している(3-p.11)  世界基準でトレーニングを実施するためには,指 導者は世界基準を知っている必要がある。その基 準を知るためには世界に出ていくことが最も効果 的だろう。つまり,海外遠征を実施して,ア ウェーの地で世界的なクラブチームと対戦するこ とが,世界基準を知るための有効な方法であると いえる。しかし,前述された理由から,ジュニア 年代の指導者の多くは海外遠征を実施することは 困難である。 このような事情ではあるが,この度,筆者は知 人からの誘いを受け,Spain の Barcelona への遠 征に帯同することができた。そして,この遠征に お い て Spain 1部 リ ー グ に 所 属 す る RCD Espanyol,さらに世界的クラブの FC Barcelona の下部組織のチームと練習試合を経験することが できた。この経験を個人の経験にとどめることな く,広く共有することによって,今後,街クラブ が海外遠征を企画する際,また世界基準を知って トレーニングを行う際の有益な資料とすることが できると考えられる。したがって,本稿において 筆者が経験した Barcelona 遠征の概要を報告す る。

Ⅱ.遠征の概要ならびに人権擁護に関して

1 .遠征メンバー 今回の遠征メンバーの内訳は,U-12の選手が21 人,スタッフが 7 人であり,その内コーチは 5 人 である。選手はファーストチームとセカンドチー ムにわけられ,ファーストチームは16人,セカン ドチームは 5 人である。なお,セカンドチームが 試合をする場合には,ファーストチームから数名 が加わり,試合が行われた。 ファーストチームの選手は,いわゆる街クラブ が運営した大会の優秀選手である。この大会では スポーツ運動学研究31:99∼108,2018

現場からのレポート

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15チームが参加し,それらのチームのなかから選 手は選抜された。なお,選抜された選手は所属 チームの指導者から遠征への帯同を許可されてい る。一方で,セカンドチームの選手は同大会に出 場したチームから,遠征への希望者が帯同するこ とになった。 2 .期間と場所 遠征期間は2018年 1 月24日(水)から同年 2 月 2 日( 金) ま で で あ る。 遠 征 場 所 は Spain の Barcelonaである。 3 .日程 日程は表 1 の通りである。 4 .人権擁護に関して 本稿では,遠征に参加した選手ならびに指導者 がイニシャルで登場する。また,選手ならびに指 導者の写真も掲載されている。これらの情報を本 稿に記載することの許可を得るため,投稿前に遠 征の責任者である H 氏に内容を確認してもらう よう依頼した。投稿時と同様に,本稿をメールに 添付して H 氏に送り,その後,登場人物のイニ シャルによる記載,ならびに写真掲載の許可をい ただいた。また,今回の遠征はメディアに掲載さ れることを前提に行われた。したがって,参加し た選手ならびに指導者は,遠征に参加する前にメ ディアに掲載されることをすでに承諾しているこ とになる。

Ⅲ.遠征中の経験

ここでは遠征中に筆者が経験したことが記述さ れる。その際に,筆者にとって極めて印象的だっ たことが記述される。 1 .サッカー環境 今 回, 遠 征 メ ン バ ー が 滞 在 し た 場 所 は 表 1  日程

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Barcelonaの南西部に位置する Castelldefels であ る。現地での練習では,UE Castelldefels のホー ムスタジアムの Camp Els Canyars - Castelldefels を使用した(写真 1 参照)。滞在したホテルから 練習場までは徒歩で約 5 分であった。このスタジ アムは住宅街の一角に位置し,大人用のピッチが 一面,子ども用のピッチが二面,人工芝でつくら れている。なお,子ども用のピッチは大人用の ピッチのなかに色違いの線で区切られていた。そ して,簡易の移動式ゴールをセットするだけです ぐに子ども用のピッチをつくることができた(写 真 2 参照)。写真 2 に示されているように,子ど も用のゴールにはゴールポストの後ろにローラー が設置されている。ゴールポストを持ち上げて, 矢印の方向へ移動するとローラーが回転してゴー ルがネット際に収まるようになっていた。 今回の遠征では 5 つのチームの本拠地へ訪れた が,いずれのチームもホームスタジアムを保有し ていた。規模の大小はあるものの人工芝のピッ チ,観客席,ロッカールームが完備されていたの で あ る( 写 真 3 , 4 , 5 , 6 参 照)。 写 真 3 は Sant Andreuのホームスタジアムのロッカールー ムであり,写真 4 , 5 , 6 は FC Barcelona のロッ カールームである。写真 4 に映されているよう に,FC Barcelona のロッカールームにはホワイ トボードが常設されていた。また,ロッカールー ムの棚やベンチコートなどを掛けるものが備え付 けられている(写真 5 参照)。さらに,ロッカー ルーム内にトイレも備え付けられていた(写真 6 参照)。 日本の場合,ジュニア年代は小学校の校庭や近 隣の公園内にあるサッカーグラウンドで練習試合 写真 2  簡易の移動式ゴール 写真 4  FC Barcelona 練習場内のロッカールーム① 写真 1  UE Castellefels のホームグラウンド 写真 3  Sant Andreu ホームスタジアムのロッカールーム

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が行われることが多い。そのため,子どもたちや 指導者がロッカールームを使用することはない。 指導者はホワイトボードやブルーシート,簡易の 組み立て式のテントを持参する必要があり,子ど もたちはリュックやベンチコートなどの荷物をブ ルーシートの上に置き,そこに簡易の組み立て式 テントを立てることになる。また,施設によって は,子どもも指導者も衛生的とはいえないトイレ を使用しなければならない。 今回遠征で訪れたチームのホームスタジアム は,そのクラブの規模によって環境の綺麗さに違 いはあった。そのため,今回訪れたクラブのすべ ての施設が綺麗だったわけではない。しかし,日 本の場合,そもそも街クラブがスタジアムを保有 していることはほとんどない。したがって,ジュ ニア年代の指導に携わる指導者は,このような Barcelonaのサッカー環境を羨ましく思うだろう。 今回の遠征のコーディネーターの話によると, Barcelonaのいたるところに街クラブのスタジア ムが点在しているという。たしかに,バス移動の 際に窓からいくつものスタジアムを目にすること ができた。 クラブの規模によってグラウンドの使用の仕方 は区々であり,UE Castellefels と Sant Andreu は 一つのピッチを使用して各カテゴリーがトレーニ ングしているようであった(写真 7 参照)。UE Cornellaは UE Castellefels と Sant Andreu よりも クラブの規模が大きく,大人用のピッチだけでは なく子ども用のピッチも所有していた(写真 8 ,

9 参 照)。 ま た,FC Barcelona と RCD Espanyol はよりクラブの規模が大きく,FC Barcelona は 大人用のピッチだけで 8 面,子ども用ピッチを 1

写真 6  FC Barcelona 練習場内のロッカールーム③ 写真 8  UE Cornella の練習場 写真 5  FC Barcelona 練習場内のロッカールーム② 写真 7  Sant Andreu の練習風景

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面,RCD Espanyol は大人用ピッチを 2 面,子ど も用ピッチを 1 面所有していた(写真10,11参 照)。なお,これらは目視や案内図によって確認 された。 2 .サッカースタイルならびにプレーの特徴 Spainに お け る12歳 以 下 の リ ー グ 戦 で は, Valenciaでは 8 人制で実施されているものの,ほ とんどが 7 人制で実施されている(2-p.297)  。今回の 遠征先の Barcelona では 7 人制が実施されてい る。したがって,試合は 7 人制で行われた。 今回の遠征では 5 チームと試合が行われた。 UE Casteldefells Alevin,Sant Andreu Alevin,UE Cornella Alevinは,日本でいうところの街クラブ の 下 部 組 織 に あ た り,FC Barcelona Alevin と RCD Espanyol Alevinは J1リーグの下部組織にあ たる。 いずれのチームにも共通することはショートパ スを主体に試合を展開し,ボールを取られた際に はボール保持者に近い選手からプレッシャーをか けに行っていたことであった。また,それぞれの チームの選手はボールへの執着心が強いように感 じられた。ここで意味するボールへの執着心と は,ボール保持者と対峙している際,競り合って いる際には「このボールを絶対に奪い取って見せ る」といった気迫ならびにその行動である。それ 写真10 FC Barcelona 練習場の一部 図 1  フォーメーション(1-3-2-1) 写真 9  UE Cornella の子ども用のグラウンド 写真11 RCD Espanyol 練習場の一部

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だけではなく,それぞれのチームの選手からボー ルを保持している際には「このボールを奪われる ものか」といった自信にみなぎっているような印 象を受けた。さらに,「競技力」(4-pp.135-137)  が高い, 低いにかかわらず,Spain の子どもたちからこの ような印象を受けた。ここで競技力が高い,低い という基準は,今回の遠征メンバーからボールを 奪われている印象を強く受けたか否かである。日 本人の選手からボールを奪われている印象が強い 選手でも,今回対戦したチームの子どもたちは ボールを奪われることに臆することなく,自信を みなぎらせてプレーしていた印象を受けた。主に これら 4 点,すなわち「ショートパスを主体にし た試合展開」,「ボール保持者に近い選手からプ レッシャーをかけに行くこと」,「ボールへの執着 心」,「ボールを奪われることに臆することなく自 信をみなぎらせてプレーをすること」が,今回の 遠征で対戦したチームに共通していたことであ る。

FC Barcelona Alevinと RCD Espanyol Alevin に 共通していたこととして,ポゼッションないし攻 撃の際にはポジションチェンジが生じ,陣形が変 化 し て い た こ と が あ げ ら れ る。FC Barcelona Alevinと RCD Espanyol Alevin は基本的な布陣と して1-3-2-1(図 1 )を採用していたと予想され るが,選手たちは情況に応じてポジションを変え ていた。たとえば後方からビルドアップする際に は図 2 のようなポジションに位置し,敵陣内へ攻 め込んだ際には図 3 のようなポジションに位置し ていた。つまり,ボールを保持し始めた際に,サ 図 3  敵陣内へ攻め込んだ際のポジションの一例 図 2  後方からビルドアップする際のポジションの一例

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イドバック(図 2 では, 2 と 4 )は幅を取るため にタッチライン際へ位置し,センターバック(図 2 では 3 )が中央よりやや右,あるいは左に寄り, 中盤の選手(図 2 では 5 )がセンターバック( 3 ) と同じような場所に位置し,一方の中盤の選手 (図 2 では 6 )は前線の選手(図 2 では 7 )と同 じような高い場所に位置することになる。また, 情況に応じてボールを持ったサイドバックの選手 は中央へドリブルしていくこともあった。

FC Barcelona Alevinと RCD Espanyol Alevin は 全く同じではないが,すでに述べられたように, 情況に応じて選手の配置を変えていた。このよう な変化はその時々で指導者が指示している可能性 もあるだろう(ただし,筆者はスペイン語を理解 することができないため可能性の話になってしま う)。しかし,ボールを保持している選手の場所 によって,その味方は自身がどこに位置すればい いのかをわかっていたように感じられた。なぜな ら,類似の情況において,選手たちは同じような 位置取りをしていたからである。 おそらく,味方がどの位置でボールを保持して いるかによって,他の味方の位置する場所はある 程度決められているのだろう。このようなポジ ション取りに関して,指導者は普段のトレーニン グのなかで指導をしているのであり,選手は「自 己の〈知〉」(4-pp.142-146)  と「他者の〈知〉」(4-pp.139-142)  読み取りながら,どこに位置したらいいのかを身 につけていくのだろう。 彼らが,普段どのようなトレーニングを行って いるのかはわからないが,指導者は体系的に「戦 術力」(1)  の養成を実践していると考えられる。そ して,選手はそのトレーニングのなかで戦術力を 身につけていく。つまり,敵,味方,ボールの位 置,スペースの場所などを常に把握し,さらに次 の情況を先読みし,どこに位置すればいいのか, どのタイミングで移動すればいいのか,といった ことを各選手が理解し,かつ実行できるように なっていくと考えられる。 どちらも一流のクラブであるため優秀な選手が 集まる。そのため,それぞれのクラブに所属する 前に,すでに各選手にはある程度の能力が身につ いていると考えられる。そのうえで,よりレベル の高いクラブに所属することで各選手の能力がよ り洗練されていったのだろう。指導者ならば,「ど のように戦術力を養成するのか」,また,「どのよ うに戦術力を洗練させるのか」といったことが気 になるところであり,Spain における指導方法を 参考にすることは有用だろう。 なお,遠征中の試合結果は表 2 の通りである。 3 .トラブル 今回の遠征では, 2 つのトラブルが生じた。 1 つ目は選手が機内で嘔吐してしまったことであ り, 2 つ目はインフルエンザの感染らしき事態が 生じたことである。遠征前に,健康面に関しては アレルギーや疾患にかかっている,またはかかっ ていた場合には事前に報告を受けるようにし,現 地での病気や怪我に関しては旅行保険で対応する ことになっていた。ここで取り上げられる 2 つは 偶発的な事態であるため,今回の遠征では避ける ことはできなかった。以下に, 2 つのトラブルの 表 2  試合結果

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概要を記載する。 1 )機内での嘔吐 今回の遠征では 2 つのトラブルが生じた。 1 つ 目のトラブルは,Barcelona へ向かう際に飛行機 のなかで選手 O が吐いてしまったことである。 Amsterdamの空港で乗り継ぎをしている際, 選手 O は両膝に手をついてうなだれるようにし ていた。その様子を確認した筆者が選手 O に対 して「気持ちが悪いのか」と尋ねたところ,選手 Oは「気持ちが悪い」と返答してきた。乗り継ぎ の時間は 1 時間程度しかなかったので,筆者は同 行している指導者 H に選手 O の状態を伝え,選 手 O にビニール袋を手渡した。指導者 H の判断 は乗り継ぎを優先することであった。乗り継ぎの 時間が 1 時間程度しかなかったこともあり,筆者 もその判断に同意し,選手 O に我慢するように 伝えた。その間に,筆者は選手 O に「海外へ行 くのは初めてなのか」,「飛行機に乗るのも初めて なのか」といったことを聞いた。選手 O の返答 は「海外へ行くことも,飛行機に乗ることも初め て」ということだった。また,筆者が「もしかし て着陸の際の衝撃で気持ち悪くなったのか」と尋 ねたところ,選手 O は「そうです」と返答した。 次の飛行機の搭乗ゲートまでたどり着き,ロ ビーの椅子に座らせて O を休ませていたら,少 しずつ体調が良くなっていく兆しが見え始めた。 Amsterdamから Barcelona までのフライト時間 は約 2 時間であり,無事に滞在先のホテルに着く と思われた。しかし,Barcelona 行きの飛行機に 搭乗し,離陸直後に選手 O は吐いてしまった。 飛行機が離陸し,上昇していくことが原因だった のではないかと考えられる。 Barcelonaに到着後も,選手 O の体調は回復し ていない様子だった。そのためか,空港からホテ ルまでのバスに乗車した直後にも吐いてしまっ た。ホテルに到着後,選手 O は徐々に回復して いった。 2 )インフルエンザの感染!? 2 つ目のトラブルは遠征メンバーが体調不良を 訴え,現地の医師にインフルエンザの疑いがある と診断されたことである。 遠征 5 日目( 1 月28日)の朝,選手 H と選手 I, 指導者 H が体調を崩し,現地の病院へ向かった。 その他のメンバーは日程通り観光に向かった。観 光からホテルへ帰ってきてから,選手 H と選手 I, 指導者 H の体調を確認すると, 3 人ともインフ ルエンザの疑いがあると診断されていた。 インフルエンザという診断結果なのか,風邪と いう診断結果なのかは,その後,選手 H と選手 I を帯同させるのか,ホテルで待機させるのかを決 める極めて重要な判断材料となる。ところが,ど うやら Spain ではインフルエンザという診断結果 を出すことができないらしい。そのため,インフ ルエンザの疑いがある・ ・ ・ ・ ・という診断結果になったよ うである。 これ以後,遠征期間中,選手 H と選手 I はホ テルでの待機となった。一方で,指導者 H は約 2 日間の休養をとり,体調が回復したことで30日 の午後から合流した。 体調不良を訴えていた選手 H と選手 I の容体 も回復の兆しを見せ始めていた。そのさなか, 7 日目( 1 月31日)の夜,体調不良者が続出した。 選手たちを部屋に戻らせたが,一度,全員ホテル のロビーに集め,体温を計らせ,各選手の状態を 確認した。すると,39.0度に達する選手やそれに 近い状態の選手が新たに 6 人現れた。急遽,部屋 割りを変更し,指導者たちはこれ以上の体調不良 者を出さないことに努めた。次の日,遠征 5 日目 からの体調不良者と合わせて 8 人の選手はホテル で待機することになった。 4 .その他 1 )オフサイドラインの設定 今回の遠征の試合ではオフサイドラインが設定 されていた。Spain の 7 人制サッカーではオフサ イドラインを設けることが競技規則となってい る(2-pp.302-303)  からだろう。オフサイドラインの有無 は選手のプレーに影響を与え,その有無は試合様 相を変化させる。オフサイドラインがあることに よって,私たちのチームの選手は敵のゴールによ り近づくことができるし,敵は私たちのチームの ゴールにより近づくことができるようになる。い

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わゆる「深み」をつくることができる。 通常のオフサイドルールでは,フォワードの選 手は最終ラインに合わせてポジションを取ること になる 注1)。一方でオフサイドラインが設定され た場合,フォワードの選手は敵の最終ラインをさ ほど気にすることなくより深い位置を取ることが できる。この場合,ディフェンダーが敵のフォ ワードのポジションに合わせて位置取りをする必 要がある。つまり,ディフェンダーが敵のフォ ワードの位置取りを気にすることになる。 フォワードがより深い位置を取ることによっ て,ディフェンスラインと前線の間にスペースが できる。このような情況において,ディフェンス からボールを前線に運ぶ場合,そのスペースへの ドリブルが発生し,また,そのスペースでボール を受けようとする動きが現れ,その選手に対する ショートパスが発生する。つまり,ドリブルと ショートパスが頻繁に発生する。他方,背後への ロングボールの発生は減少する傾向にあるといえ る。 オフサイドラインを設定することで,ドリブル とショートパスの発生頻度を高めるねらいがある と考えられる。したがって,Spain ではそれらの プレーの習熟を図るためにオフサイドラインを設 定しているのだろう。 なお,Spain におけるジュニア年代の競技規則 では,オフサイドラインはゴールラインより 13.5m の位置に設定される(2-p.303)  。日本でもオフ サイドラインを設定してトレーニングを行う場合 もあるが,その場合,指導者の任意の位置に設定 されることになる。たとえば,トレーニングのね らいによって,ペナルティーエリアのラインをオ フサイドラインとして設定することもある。 2 )ファールスローを流す 今回の遠征では,敵味方関係なく,ファールス ローを取られなかった。スローインの際に,子ど もが地面から足を離してボールを投げても反則と はならなかったのである。帰国後,以前スペイン で指導者ライセンスを取得した指導者にこのこと について話を聞いたところ,「Spain も通常のルー ルの下に試合が行われている。だから,競技規則 にファールスローを取らなくていいといった記述 はないはずだ。ただ,実際にはファールスローを 取らないことが多い。審判の裁量に任されている のではないか」といった回答を得た。 このようなことから,「スローインは大人にな ればすぐに覚えられる。だから,小学生の頃にと やかくいう必要はない。むしろ,その指導に時間 をかけるよりも,他の指導に時間をかけた方が良 い」といった考えがスペイン人にあるのではない かと考えられる。

なお,今回の遠征では,UE Castelldefells Alevin, Sant Andreu Alevinとの試合では相手チームの コーチが審判となり試合が行われ,UE Cornella Alevin,FC Barcelona Alevin,RCD Espanyol Alevinとの試合では派遣された審判が判定を行っ た。 3 )街クラブとの対戦におけるハプニング 遠征 2 日目( 1 月25日),午後の UE Casteldefells Alevin戦は15分×4本で練習試合が行われる予定 だった。しかし,始まる直前に10分×7本に変更 することを相手チームから伝えられた。 1 本目は 1 対 0 で勝利し,その後, 2 本目は 0 対 0 , 3 本目は 4 対 0 で勝利した。 5 本目も 3 対 0 でリードしていた。そうしたなか,試合時間が 10分のはずだったにもかかわらず, 7 分30秒ほど で試合終了の笛が吹かれた。 6 本目は10分の試合 時間通り行われ, 1 対 0 で勝利した。ところが, 最後の 1 本が残っていたにもかかわらず,相手か ら「これで終わり」といった合図がなされ,試合 図 4  オフサイドラインに関して

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直前の予定の 7 本目が実施されることはなかっ た。 日本で練習試合が行われる場合,通常,予定通 り練習試合は進行される。もちろん,ケガやレベ ル差,あるいは天候不順などの理由によって当初 の予定通りに進行しないこともある。しかし,こ のような場合,指導者間で協議が開かれ,両者の 合意のうえで予定が変更される。ところが,今回 の遠征では,予定していた試合時間で行われな かったり,予定の本数試合ができなかったりと, 日本では経験することがないような事態に遭遇し た。 このような事態は UE Casteldefells Alevin 戦だ けで生じた。スペイン人の気質にも関係している ことが予想されるが,そのように断定することは できない。ただし,基本的に日本では起こり得る ことがないことが生じたことは事実である。

Ⅳ.おわりに

今回の Barcelona 遠征はトラブルが続いたため 特異的な事例だったかもしれない。しかし,その ようなトラブルに,誰が,いつ,どこで遭遇する のかは予測できない。今回の事例を,より多くの サッカー指導者と共有することはトラブルを未然 に 防 ぐ こ と に も つ な が る だ ろ う。 ま た, Barcelonaにおけるサッカーに関して報告された。 情報科学の発達に伴って海外の情報を得ることが 容易になったこともあり,サッカー雑誌などでも Barcelonaおよび Spain のサッカー事情を知るこ とができる。しかし,筆者は今回の遠征で,簡易 の移動式ゴールの存在,ジュニア年代ではオフサ イドラインを採用していることなどを知ることが できた。さらに,実際に Spain 1部リーグの FC Barceronaと RCD Espanyol Alevin と対戦するこ とによって,それらのチームのサッカースタイル を知ることができた。 百聞は一見にしかずという諺があるように,実 際に海外遠征を行い,そこで世界のサッカーのレ ベルを知ることが望ましい。しかし,多くの指導 者は海外遠征を経験することはできない。本報告 によって,Barcelona のサッカーのレベルの一端 ではあるが,それを示すことができたのではない だろうか。本報告が,今後,海外遠征を企画する 街クラブにとっての基礎資料となり,またトレー ニングを行う際の有益な資料となることを願う。

注 1 ) オフサイドに関して たとえば図 4 のような場合,A から B にパス をすると,通常のルールではオフサイドの反 則になる。しかし,オフサイドラインを設定 した試合では A から B にパスをしてもオフ サイドの反則にはならない。ただし,図 4 に おいて,オフサイドラインを越えた C が位置 する場所でパスをもらうとオフサイドの反則 となる。

文 献

1 ) 金子明友:身体知の形成(上),明和出版,p. 225,2005. 2 ) 松本直也・廣津信義・吉村雅文:スペインにお ける Fútbol 7に関する戦術的分析―オフサイド ラインの突破に着目して―,桃山学院大学総合 研究所紀要,41( 1 ):297-310,2015. 3 ) 日本サッカー協会:JFA 指導指針2017,公益財 団法人日本サッカー協会,2016. 4 ) 寺田進志:サッカー選手のパス発生に関わる身 体知の構造に関するスポーツ運動学的研究,筑 波大学博士論文(コーチング学),2017. 平成30年 7 月23日受付 平成30年11月28日受理

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