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< 研究の背景背景と経緯 再生可能エネルギーなどの分散型電源が大量導入された次世代電力ネットワークでは 発電量の変動が大きいため ネットワーク全体を集中管理することが難しく 発電機を含めた電力ネットワークを分散的に管理することが求められています その中でも 細かい時間単位で電力価格を変動させるリアル

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Academic year: 2021

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平 成 2 7 年 7 月 2 4 日 科 学 技 術 振 興 機 構 ( J S T ) Tel:03-5214-8404(広報課) 慶 應 義 塾 大 学 Tel:03-5427-1541(広報室)

分散型電力価格決

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ポイント ポイント ポイント ポイント 電力自由化後に電力ネットワークを安定して運用するための電力価格決定メカニズム の考案が求められていた。 時間や需給状況の変化に合わせて電力価格を変化させる制度を用いることで、電力市 場参加者の利益を保証する分散型電力価格決定メカニズムを考案した。 電力自由化後の安定な電力ネットワークの経済・制御モデルの構築に貢献できる。 JST 戦略的創造研究推進事業において、慶應義塾大学の滑川 徹 教授らは、電力 自由化後 注1) の電力市場で、市場参加者の利益(個人合理性 注2) )を保証する分散型電力 価格決定メカニズムを世界に先駆けて考案しました。 電力系統では、電力需給の不均衡が周波数変動などの電力品質の低下を引き起こすた め、電力の需要量と供給量は厳密に一致させる必要があります。さらに、2016年に 予定されている家庭向け電力小売自由化や2018~2020年に予定されている発送 電分離後には、自身の利益のみを追求し、電力需要量や発電量を決めること(利己的な 振る舞い)ができるようになります。そのため、利己的な振る舞いを電力需給のバラン スを考慮した振る舞いへと誘導する方法をゲーム理論 注3) に基づいて考案しました。 考案したメカニズムは、電力価格を変化させるプライシング(価格設定)によって、 社会全体の公共利益が達成できることを示しました。さらに、提案手法を電力網に適用 した実験を行い、当初の目的である各需要家と供給者の利己的な振る舞いを公共利益へ と誘導できることを証明しました。この結果から、考案したメカニズムは、電力自由化 に対応した安定な電力ネットワークの経済・制御モデルの構築に役立つことが期待され ます。今後は独立系統運用機関(ISO 注4) )が市場参加者へ支払うインセンティブのコ ストを考慮したアルゴリズムの検討を実施し、実用化に向けた研究を加速します。 本研究は、NASA ジェット推進研究所の小野 雅裕 研究員と共同で行ったもので す。 本研究成果は、2015年7月24日(米国東部時間)に米国電気電子学会論文誌 「IEEE Trans. on Smart Grid」のオンライン速報版で公開 されます。 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST) 研 究 領 域:「分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論及び基盤技術の創出と融合展開」 (研究総括:藤田 政之 東京工業大学 大学院理工学研究科 教授) 研 究 課 題名 :「 エネ ル ギー 需給 シ ス テム 構 築の た めの 経 済モ デ ル と物 理 モデ ル の融 合 に基 づ く 設計 理 論及 び 実 証・実装・提言」 研究代表者:内田 健康(早稲田大学 理工学術院 教授) 研 究 期 間 :平成27年4月~平成32年3月 JSTは本領域で、分散協調型エネルギー管理システムを実現するための研究を電力、制御、経済などの多角的 な観点から進めています。上記研究課題では、エネルギー需給システム構築のための経済モデルと物理モデルの融 合に基づく設計理論および実証・実装・提言を目指しています。

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< < < < 研究研究研究 の研究のの背景の背景 と背景背景とと経緯と経緯経緯>経緯>>> 再生可能エネルギーなどの分散型電源が大量導入された次世代電力ネットワークでは、 発電量の変動が大きいため、ネットワーク全体を集中管理することが難しく、発電機を含 めた電力ネットワークを分散的に管理することが求められています。その中でも、細かい 時間単位で電力価格を変動させるリアルタイムプライシング 注5) を用いて電力需給量を間 接的に制御する取り組みは、電力システムや制御理論といった工学の観点からだけでなく、 経済学の観点からも非常に多くの注目を集めています。 電力ネットワークを安定して運用するためには、各時刻で電力需給量を一致させ、系統 内の周波数変動を抑制する必要があります。周波数変動量が拡大すると、電気機器の動作 に影響を与えるだけではなく、発電機の運転継続が困難になり、停電を引き起こす可能性 があります。しかし、電力自由化後の電力市場では、電力需要家および電力供給者は、市 場管理者より提示された電力価格をもとに自身の電力需要量や発電量の決定をそれぞれ利 己的に行います。従って、このような利己的な市場参加者の電力消費・発電行動を電力ネ ットワークでの公共利益へと誘導するような電力価格決定メカニズムの考案が求められて います。 一方で従来のプライシング制度では、電力市場取引に参加した市場参加者の金銭的利益 が、固定価格制度の利益を上回ること(個人合理性)が保証されておらず、そのため市場 参加者が電力市場取引に参加することで金銭的に損をする可能性がありました。このよう な金銭的な損失は人々が電力市場取引へと参加する意欲を妨げるものであり、次世代電力 ネットワークの実現に向けて解決すべき問題となっていました。 < < < < 研究研究研究 の研究のの内容の内容内容 >内容>> > 本研究グループは、ゲーム理論のアプローチを用いて、市場参加者の個人合理性を保証 した分散型電力価格決定メカニズムを考案しました。 本研究では図1に示すような電力市場を対象としています。本電力市場では、以下のア ルゴリズムに従って市場管理者であるISOと市場参加者である電力需要家および電力供 給者が電力価格を介して市場取引を行うことで、電力ネットワーク内の電力需給量の分散 的な管理を行います。 電力市場の電力需給管理アルゴリズム ⅰ)ISO:初期電力価格、初期インセンティブ価格 注6) を任意に設定。 ⅱ)需要家:ISOより伝えられた電力価格およびインセンティブ価格をもとに、自身 の電力需要量を利己的に決定。 供給者:ISOより伝えられた電力価格およびインセンティブ価格をもとに、自身 の発電量を利己的に決定。 ⅲ)ISO:ネットワーク内の電力需給偏差を計測し、その需給偏差が小さくなるよう に電力価格を更新。さらに、その際の需要家および供給者の個人合理性を保 証するようにインセンティブ価格を再設計。 ⅳ)ステップⅱ)に戻る。 本研究では、上記の電力市場で以下の2つの目標を同時に達成する分散型電力価格決定 メカニズムを考案しました。

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1.小規模電力ネットワークにおける周波数変動の抑制および電力需給均衡の達成 本研究で考案した分散型電力価格決定メカニズムでは、ゲーム理論のアプローチを用い ることで、自身の利益追求のみを考える利己的な市場参加者の電力消費および発電行動を、 系統周波数の安定化を考慮した公共利益の最大化へと誘導するような電力価格の決定を分 散的に行うことを可能にしました。具体的には、双対分解 注7) を用いて公共利益最大化問 題を各市場参加者の最適化問題へと分散化し、その分散化した問題を非協力ゲーム問題と して取り扱います。そしてこの問題に対して前述のアルゴリズムを適用することで、上記 の条件を満たす電力価格の決定を電力需給偏差情報のみを使用して分散的に行うことが可 能となります。また本研究では、従来のゲーム理論に基づく電力価格決定問題では考慮さ れていなかった需給均衡に関する等式制約条件を含めてゲーム問題の構築とその分散化を 行っており、これにより本提案電力価格決定メカニズムは、電力ネットワーク内の周波数 変動の抑制と需給均衡の一致を同時に達成する分散型電力価格決定メカニズムとなってい ます。 2.変動型インセンティブを用いた市場参加者の個人合理性の保証 本提案電力価格決定メカニズムでは、上記の特徴に加え、経済学に用いられるメカニズ ムデザイン理論 注8) に基づいて電力価格と同様に時間や状況に応じた金銭的なインセンテ ィブをISOが各市場参加者にリアルタイムで付与することで、電力需要家および供給者 双方の個人合理性を保証しています。従って本提案電力価格決定メカニズムを適用した場 合、上記の周波数変動の抑制や電力の需給均衡達成のために大幅な電力価格の更新を行っ ても、電力需要家および供給者の両市場参加者とも従来の固定価格制度のもとで得られる 利益以上の利益を得られることが保証されています。本研究では、この時間や状況によっ て変動する金銭的なインセンティブの設計に関して、電力需要家および供給者の双方の市 場参加者が共に個人合理性を満たすためのインセンティブの設計指針に関する数学的な条 件の導出を行い、さらにその設計指針に基づいてインセンティブを設定することで各市場 参加者の個人合理性が達成されることを理論的に証明しました。 さらに本研究では、提案手法の有効性の検証を数値シミュレーションにより行いました。 以下の図2(a)、(b)は分散型電力価格決定メカニズムに基づくリアルタイムプライシ ング制度および従来の固定価格制度を適用した場合の小規模電力ネットワークでの周波数 変動および市場参加者(供給者)の利益の推移を表しています。図2(a)からは、本研 究で提案した電力価格決定メカニズムを用いることで、従来の固定価格制度を用いた場合 と比べ、電力ネットワーク内の公共利益である周波数変動の抑制が十分にできていること が分かります。図2(b)からは、リアルタイムプライシング制度では市場参加者の利益 は、常に固定価格制度の利益を上回り、市場参加者の個人合理性が達成されていることが 分かります。以上の結果より、本研究で示した電力価格およびインセンティブの設計に関 する定理の妥当性を確認することができました。 < < < < 今後今後今後 の今後のの展開の展開展開 >展開>>> 本研究では、電力市場参加者の個人合理性を保証したリアルタイムプライシング制度の ための分散型電力価格決定メカニズムを考案しました。今後は、ISOが市場参加者へ支 払うインセンティブのコストを考慮したアルゴリズムの検討を行います。さらに、市場参 加者と市場管理者との間の情報交換を行うため、その実現には高い情報通信技術が必要と

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なります。そのため、アルゴリズムの高速化および計算量を低減するアルゴリズムの開発 を考えています。 < < < < 参考図参考図参考図>参考図>>> 図 図図 図 1111 電力市場電力市場電力市場電力市場のの 市場取引のの市場取引市場取引の市場取引のの 概要の概要概要概要 本研究が対象とする電力市場およびその市場取引の概念図を上図に示す。この市場には 市場参加者として電力供給者および電力需要家、また市場管理者としてISOが存在する。 このうち、電力供給者および電力需要家はISOより与えられる電力価格に基づいて自身 の発電量または電力需要量を利己的に決定し、一方でISOは他の電力ネットワークから の電力潮流を考慮しながら自身のネットワーク内の電力需給偏差を解消するように電力価 格およびインセンティブの更新を行う。

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(a) (b) 図 図 図 図 2222 周波数変動周波数変動 の周波数変動周波数変動ののの抑制抑制抑制抑制 およびおよび市場参加者およびおよび市場参加者市場参加者市場参加者ののの個人合理性の個人合理性の個人合理性個人合理性ののの 達成達成達成達成 複数の小規模電力ネットワークからなる電力系統に対して、電力価格決定メカニズムを 適用した際の周波数変動の様子および市場参加者(供給者)の金銭的利益の推移に関する シミュレーション結果をそれぞれ(a)、(b)に示す。また各図の青線はリアルタイムプ ライシング制度、赤線は従来の固定価格制度を用いた場合のシミュレーション結果である。 まず図(a)より、リアルタイムプライシング制度を用いることで従来の固定価格制度の 場合と比べ、周波数変動を抑制していることが分かる。特に900秒あたりで風力発電機 の発電量が急激に変化した状況では、本手法の効果が顕著に表れており、従来の固定価格

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制度の場合と比べてリアルタイムプライシングを用いることで周波数変動の抑制が達成さ れていることが分かる。さらに図(b)より、青線のリアルタイムプライシング制度を用 いた場合の市場参加者の金銭的利益は赤線の固定価格制度の場合の利益を常に上回ってお り、本提案電力価格決定メカニズムを用いることで市場参加者の個人合理性が達成されて いることを確認できる。また2,600秒あたりで隣接する他地域の急激な周波数変動に より、本地域でも市場参加者の利益に変化が生じているが、その後、周波数変動が十分抑 制されると市場参加者の利益も再び定常状態となり、またその際に個人合理性が保証され ていることが分かる。 < < < < 用語解説用語解説用語解説>用語解説>> > 注1)電力自由化 電気事業において市場参入規制を緩和し、市場競争を導入すること。 日本では2016年に家庭向け電力小売自由化が予定されており、さらに2018~20 20年に発電部門と送電部門を独立の組織とすることが予定されている。 注2)個人合理性 経済学の一分野であるメカニズムデザインで扱われる財の配分制度(メカニズム)の特 性の一種。他のエージェント(市場参加者)が最適反応を用いた場合、メカニズムに参加 したことにより利益が減少しないことを表す。 注3)ゲーム理論 複数の意思決定主体が存在する状況で、他の主体の意思決定による自身の利害関係への 影響を考慮しつつ、自身がどのように行動すべきかを理論化した学問。本研究では、各主 体が独自に意思決定を行う純粋戦略非協力ゲーム問題を扱う。 注4)ISO 独立系統運用機関(Independent System Operator)の略称。電力系 統と電力市場の管理を行う非営利組織であり、本研究ではISOが各電力ネットワーク内 の電力需給偏差情報に基づいて電力価格とインセンティブの更新を行う役割を担う。 注5)リアルタイムプライシング 時間や需給状況の変化に合わせて電力価格を動的に変化させる料金体系のこと。さまざ まな目的、問題設定が存在するが、本研究では前日スポット市場で一度約定が成立しているこ とを前提に、リアルタイム市場で約定結果からのずれにより生じる系統内の周波数変動をプラ イシングにより抑制し、電力システムの安定を効率的に保つことを目標とする。 注6)インセンティブ価格 市場参加者の意思決定や行動を変化させるような価格要因であり、誘因価格とも呼ばれ る。本論文では価格決定問題を扱っており、ここでは金銭的報償を示す。 注7)双対分解 大規模な最適化問題を分散的に解く際に使われる手法の一種。特に需給の一致を制約条 件として持つような市場の最適化問題に対して双対分解を適用することで、もとの最適化 問題を需要家および供給者に関する個別の最適化問題へと分散化できる。

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注8)メカニズムデザイン理論 ゲーム理論分野において、自身の利得の最大化を目指して行動する利己的なエージェン ト(市場参加者)の集団が、あるメカニズム(ルール)の元でどのように振る舞うかを分 析し、どのようにメカニズムを設計すれば社会全体に望ましい結果を達成できるか、もし くは設計者の目的を満たす結果を達成できるかを扱う経済理論。 < < < < 論文論文論文 タイトル論文タイトルタイトル>タイトル>> >

“Real-Time Pricing Mechanism for Electricity Market with Built-in Incentive for Participation” (個人合理性を考慮した電力市場におけるリアルタイム価格決定メカニズム) < < < < おおお問お問問 い問いい合い合わ合合わわ せわせせせ先先先先 >>>> <研究に関すること> 滑川 徹(ナメリカワ トオル) 慶應義塾大学 理工学部 教授 〒223-8522 神奈川県横浜市港北区日吉3-14-1 Tel:045-563-1151 Fax:045-566-1720 E-mail:namerikawa@sd.keio.ac.jp <JSTの事業に関すること> 松尾 浩司(マツオ コウジ) 科学技術振興機構 戦略研究推進部 〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町 Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066 E-mail:crest@jst.go.jp <報道担当> 科学技術振興機構 広報課 〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3 Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432 E-mail:jstkoho@jst.go.jp 慶應義塾 広報室 〒108-8345 東京都港区三田2-15-45 Tel:03-5427-1541 Fax:03-5441-7640 E-mail:m-koho@adst.keio.ac.jp

参照

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