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褥瘡治療への理学療法の挑戦

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Academic year: 2021

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はじめに  高齢社会が進行し,超高齢社会を迎えた今日,寝たきり高齢 者が抱える問題に対峙することの重要性が増してきている。な かでも,褥瘡は一旦発生するとその治療には多大な時間と医療 費がかかるため,予防ならびに悪化防止が重要となってきてい る。我が国において,褥瘡に対する学術的発展は日本褥瘡学会 を中心として展開されている。現在,日本理学療法士協会が認 定している認定理学療法士(褥瘡・創傷ケア)は 4 名(平成 25 年 8 月現在),日本褥瘡学会が認定している褥瘡認定師(理 学療法士)は 11 名,在宅褥瘡予防管理師(理学療法士)は 3 名(平成 25 年 6 月現在)である。今後,理学療法士が褥瘡に 向き合う必要性は一層高まってくるものであり,褥瘡治療にお いてどのような理学療法が展開できるのかを考え,褥瘡予防・ 管理における理学療法士の役割について述べる。 褥瘡とは  日本褥瘡学会では褥瘡を「身体に加わった外力は骨と皮膚表 層の間の軟部組織の血流を低下,あるいは停止させる。この状 況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り 褥瘡となる。」としている1)。褥瘡の発生要因としては,日常 生活自立度の低下,病的骨突出,関節拘縮,低栄養状態,浮腫 などの個体要因,体位変換,体圧分散寝具の使用状況,スキン ケア,介護力等の環境・ケア要因があり,これらの重なりであ る「外力,湿潤,栄養,自立」が褥瘡予防において重要なポイ ントとなっている。外力として,従来は圧に着目されていたが, 近年,圧だけではなく応力として捉え,剪断力や摩擦力につい ても注目され,種々の対策がとられるようになってきている。  褥瘡の分類として,米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel;NPUAP)ならびにヨーロッパ褥瘡諮 問委員会(European Pressure Ulcer Advisory Panel;EPUAP) の分類が用いられている。この中では,表皮の損傷だけではな く,皮下の軟部組織の損傷である深部損傷褥瘡(Deep Tissue Injury;DTI)を褥瘡として捉えるようになってきている。ま た,褥瘡の程度や治療経過を評価するためのツールとしては, 日本褥瘡学会が評価用の DESIGN2)ならびに経過観察用の DESIGN-R3)を開発している。項目は,深さ(Depth;D),滲出 液(Exudate;E),大きさ(Size;S),炎症 / 感染(Infl ammation/ Infection;I),肉芽(Granulation;G),壊死組織(Necrotic Tis-sue;N),ポケット(Pocket;P)であり,それぞれの頭文字を 用いて DESIGN と略している。  褥瘡は骨が突出し長時間の応力が加わりやすい部位で好発す る。すなわち,背臥位では,仙骨部,尾骨部,踵骨部などであ り,側臥位では大転子部,車椅子座位では坐骨部が好発部位と なる。座り方が悪く仙骨座りになっている場合には,仙骨部や 尾骨部に形成されることがある。また,褥瘡の発生は動的な関 わりによっても形成されることがあり,ズボンやオムツをもっ た移乗介助を反復することによって,尾骨部が擦れ,褥瘡形成 に至ることもある。  褥瘡の有病率と推定発症率は表 1 のとおりであり,大学病院 ではかなり予防できるようになっているが,在宅ではまだまだ 発生率が高いのが現状である4)。 褥瘡予防・管理ガイドライン  日本褥瘡学会では,エビデンスに基づき「褥瘡予防・管理ガ イドライン」(以下,褥瘡 GL)を策定しており,褥瘡ケアの基 本となっている。現在の最新の褥瘡 GL は第 3 版である5)。褥 瘡 GL の第 1 版は局所治療に焦点をあてたものであり,その策 定の中で,物理療法のエビデンスが多くあり盛りこまれること になったため理学療法士として参画することとなった。その 後,第 2 版では予防的ケアが盛りこまれ,現在の第 3 版に至っ ている。現在,第 4 版に向けた改訂作業が行われている。  褥瘡 GL は「診療ガイドライン作成の手引き」6)にしたが い,アルゴリズムの作成,臨床疑問(Clinical Question;以下, CQ)の検討,文献収集・抄読,構造化抄録の作成,推奨度の 決定,解説文の作成という流れで策定されている。また,褥瘡 ケアの特徴でもあり,作成委員会は皮膚科医,形成外科医,皮 膚排泄ケア認定看護師,薬剤師,管理栄養士,理学療法士と多 職種によって構成さている。また,作成に際して,複数回のコ ンセンサスシンポジウムを学術集会に合わせて開催し,褥瘡学 会員の意見を取りこむようにしている。  褥瘡 GL の中で「理学療法士がどこで関われることができる のか」ということについては,アルゴリズム作成時に検討がな され,予防的ケアとして脊髄損傷者・高齢者に対するシーティ ング,発生の個体要因である関節拘縮や筋萎縮に対する運動療 法・物理療法,褥瘡発生後の治療としての物理療法について, CQ を設定し,推奨事項を検討することになった。なお,推奨

褥瘡治療への理学療法の挑戦

日 髙 正 巳

**

アドバンスドセミナー

Challenge of Physical Therapy Toward Care of Pressure Ulcer **

兵庫医療大学リハビリテーション学部理学療法学科 (〒 650‒8530 兵庫県神戸市中央区港島 1‒3‒6)

Masami Hidaka, PT, PhD: Hyogo University of Health Sciences, School of Rehabilitation, Department of Physical Therapy キーワード:褥瘡治療,物理療法,予防

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度の決定においては,文献のエビデンスレベルを重視しながら も,本邦での使用状況を反映させた調整を行うとともに,強く 推奨する推奨度 A と禁忌扱いに相当する推奨度 D については 厳格化するようにした。物理療法については,海外では理学療 法士が精力的に施行し,ランダム化比較試験も多く行われてい るため,エビデンスレベルは高いものもあるが,本邦では使用 困難な特定の製品を用いていたり,使用経験が少ないと思われ たりする治療法については,推奨度を 1 ランク下げた判断がな されている。理学療法士に関係する CQ ならびに推奨度の一覧 を表 2 に示す。  理学療法士が関われる部分は非常に多く,またエビデンス が高いことにより,推奨度も B として「行うよう勧められる」 とされているものがある。これらの項目については,確実に実 施できるようにスキルアップしていくことが必要である。ま た,推奨度 D という「行わないように勧められる」ものとして, 「ドーナツ型の円座の使用」と「骨突出部へのマッサージ」の 2 つがある。これらについてもなぜ創に対して悪影響が及ぼさ れるのかという理由とともに理解しておきたいものである。今 後,褥瘡 GL を発展させていくための課題としては,次の点が 挙げられる。  1)介入帰結(Outcome)を褥瘡にした研究が乏しい。  2)褥瘡について取り組んだ症例報告ですら少ない。  3) 物理療法については刺激条件(強度,時間等)が不揃い である。  理学療法士は褥瘡ケアにおいて,予防と治療の両面で携わる ことができる職種である。褥瘡 GL がエビデンスにつながる研 究をもとに策定されていることからも,今後のさらなる研究の 発展が求められる。ダブルブラインドテストの難しさや無作為 化比較対照試験の限界なども有しているが,可能な研究モデル を構築し,多施設が共同して研究成果をだしていくことが求め られている。 褥瘡ケアのトピックス  褥瘡ケアは,治療以上に予防を重視した取り組みが展開さ れている。なかでもどのような体位をとることが褥瘡ケアの 観点から重要なのかということについて取り組みの進歩は著 しい7)。また,体位変換についても,画一的に 2 時間毎に行う のではなく,個別の状態に応じて行うことが推奨されるように なってきている。さらに,体位変換に人の手によって加わる動 的外力が褥瘡に対して悪影響を及ぼすことも確認されており, 創のことを考えた体位変換方法の検討が重要となってきてい る8)。在宅ケアが重視される時代を迎え,在宅ケアを継続して いくためには,2 時間毎の体位変換を家族介護者に求めること は限界である。また,要介護者自身にとっても人的な外力が加 わることで熟睡が妨害される可能性もある。したがって,十分 な体圧分散が管理できるマットレスの選択やスモールチェンジ を含めた体位変換方法の指導が重要となってくる。  もう一点,褥瘡ケアの観点で注目されているものに「医療機 器関連圧迫創」がある。治療上必要な医療機器によって持続的 に圧迫が加わることで創が形成されるものである。理学療法士 が身近に使用している装具等もカフの接触状況によっては,圧 迫創をつくりかねない。装具装着者に対して,装具を外したと きの皮膚のチェックの指導等の再確認が必要である。 褥瘡に対する物理療法  褥瘡ケアにおいて理学療法士は「褥瘡の予防」と「褥瘡の治 療」の両面で活躍できる。予防としては発生要因の除去であり, 発生要因の中で可動性ならびに筋量の維持といった廃用性障害 の予防への関わりは重要であり,廃用性筋萎縮を防ぐための一 手段として物理療法を用いることができる。また,治療の面で は,逸脱した治癒過程の軌道修正を行うということで物理療法 に対する期待は高い。  褥瘡に対する物理療法としては,①局所陰圧閉鎖療法,②振 動療法,③超音波療法,④電気刺激療法,⑤光線療法,⑥水 治療法,⑦酸素療法が取り上げられる9)。陰圧閉鎖療法は VAC® という機器を用いドレッシング材で保護された創部の 中を ‒ 125 mmHg の陰圧にすることによって肉芽形成を促そう とするものであり,医師が直接実施することで保険請求も可能 となっているものである。ポケットを有する褥瘡の場合には, 陰圧で密着している環境がつくられるため,創の修復が図られ 表 1 褥瘡の有病率と推定発症率 施設数 有病率(%) (95% CI) 推定発症率(%) (95% CI) 一般病院 183 2.94(2.81 ‒ 3.06) 1.40(1.32 ‒ 1.49) 一般病院 1 30 3.52(3.16 ‒ 3.89) 1.54(1.30 ‒ 1.79) 大学病院 63 1.94(1.80 ‒ 2.07) 0.78(0.69 ‒ 0.86) 精神病院 3 1.92(1.16 ‒ 2.68) 1.12(0.54 ‒ 1.70) 介護老人福祉施設 22 1.89(1.46 ‒ 2.39) 1.21(0.86 ‒ 1.57) 介護老人保健施設 34 2.20(1.59 ‒ 2.80) 1.75(1.20 ‒ 2.30) 訪問看護 ST 62 5.45(4.73 ‒ 6.17) 4.40(3.75 ‒ 5.05) 一般病院 1 は療養型病床を有する病院 推定発症率:(調査日に褥瘡を保有する患者数 ‒ 入院時すでに褥瘡保有が記録されて いた患者数)/ 調査日の施設入院患者数× 100(%) 有病率:調査日に褥瘡を保有する患者数 / 調査日の施設入院患者数× 100(%) 文献 4 より作成

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る。理学療法士が他動的に動かすときには,ポケットが密着し ていないときよりも動かしやすくなるが,回旋等を加えると内 部で骨が大きく動くことになるため,組織を含めた運動学的な 対応が必要である。  これらの物理療法の中で現在,注目されているものは,直流 微弱電流刺激療法と超音波療法である10)。直流微弱電流刺激 では,細胞レベルでの基礎研究を受け,標的細胞の電気走性を 考慮した治療モデルをもとに臨床研究が行われている11)。ま た,創の縮小が停滞していた褥瘡患者 7 名に対して直流微弱電 流刺激を実施したところ創の縮小をみたという報告もなされて いる12)。これらの報告においては,炎症期では陰極帯電して いる好中球やマクロファージを遊走させるために陽極刺激を行 うが,肉芽増殖期になる陽極帯電している繊維芽細胞の遊走を 助けるために陰極刺激を行うこと,電流強度の決定においては 創部分がすでに有している損傷電流を考慮すること,通電後の 逆電流を解消するためのシャント処理を行うことがポイントと されている。すなわち,適当に直流微弱電流刺激を行うのでは なく,創の状態を評価したうえで適用していくことが大切であ る。また,超音波療法についても,好中球やマクロファージの 遊走を促進させ新生血管の形成を促進させるために使用される が,その場合においても,ドレッシング材の超音波透過率,深 達距離による減衰率を考慮し,照射対象とする部分での刺激強 度を考えた使用を行うことで治療効果がみられたことが報告さ れている。また,同時に超音波照射によって滲出液を増加させ ることもあり,滲出液の増加をさせない強度設定の重要性につ いても示されている13)。  これらの報告が示すように,物理療法を適用する際には,単 にモダリティーを選択するだけではなく,褥瘡の評価を行い, 状態に応じたモダリティーの選択と刺激条件の決定が重要で ある。 表 2 褥瘡 GL(抜粋,理学療法士関連分) Clinical Question 推奨文 推奨度 CQ5.1 慢性期脊髄損傷者の褥瘡発生にはどのような要因があるか   褥瘡の病歴がある場合,再発に注意することが勧められる B CQ5.2 脊髄損傷者の褥瘡予防にはどのような方法が有効か   接触圧を確認しながら指導してもよい C1 CQ5.3 高齢者の座位における褥瘡予防においては,どのようなクッションを用いるとよいか   高齢者には脊髄損傷者に使用される体圧再分散クッションを使用することが勧められる B CQ5.4 連続座位時間を制限してもよいか   自分で姿勢変換ができない高齢者は,連続座位時間の制限をしたほうがよい B CQ5.5 座位姿勢変換をどのくらいの間隔で行えばよいか   自分で姿勢変換ができる場合には,15 分ごとに姿勢変換を行ってもよい C1 CQ5.6 座位姿勢を考慮することは有効か   座位姿勢のアライメント,バランスなどを考慮してもよい C1 CQ5.7 円座を用いることは有効か   円座は用いないよう勧められる D CQ5.8 筋萎縮に対して,どのような物理療法があるか   電気刺激療法を行ってもよい C1 CQ5.9 関節拘縮に対して,どのような運動療法があるか   他動運動を行ってもよい C1 CQ5.10 骨突出部にマッサージをしてよいか   骨突出部へのマッサージは,行わないよう勧められる D CQ5.11 浅い褥瘡を有する患者では,車椅子座位生活を維持するにはどのような方法があるか   適切な座位姿勢,クッションの選択,そして座位時間の制限を行ってもよい C1 CQ5.12 感染を有する褥瘡に対して,どのような物理療法を行ったらよいか   水治療法を行ってもよい C1 CQ5.13 壊死組織を有する褥瘡に対して,どのような物理療法を行ったらよいか   水治療法ならびにパルス洗浄・吸引を行ってもよい C1 CQ5.14 創の縮小をはかる場合,どのような物理療法を行ったらよいか   電気刺激療法が勧められる B   近赤外線療法,超音波療法,電磁波刺激療法を行ってもよい C1

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図 1 他動運動時の臀部にかかる接触圧

a ∼ d:臨床 1 年目 e ∼ h:臨床 10 年以上 a, c, e, g:柔らかいベッド,b, d, f, h:硬いベッド a, b, e, f:通常実施,c, d, g, h:減圧を意識して実施

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褥瘡予防のための理学療法  褥瘡は一度形成されると活動性が制限され QOL の低下とと もに治療に必要となる医療費が増加する。そのため,予防が大 切となっている。理学療法を開始することで,「褥瘡が形成さ れる」とか「褥瘡が悪化する」という指摘を聞くことがある。 その一方で,褥瘡を治しながら活動性の向上につなげることが できるという話もある。なぜ,このようなギャップが生じるの であろうか? その答えとしては,局所に加わる負荷にどれだ け意識を集中させ,注意深く関わっているかということにな る。褥瘡の発生原因によって褥瘡の形状は変化する。特に,円 形・楕円形の形状であれば,局所への均一的な圧迫が関与して いるが,尾骨部における線型の褥瘡は,臥床時や座位時に形成 されるのではなく,トランスファー時にズボンをもって引き上 げるなど鋭利な力が作用していることを物語っている。重心の 移動を適切に誘導し,ズボン等を引き上げるようなトランス ファーをしないように注意したい。また,車椅子離床を開始し た後の褥瘡形成では坐骨部に円形で形成されるとすれば座位時 間が長かったり,除圧動作が不十分であったりすることをうか がわせており,適切なクッションの選択を考えていくことが必 要である。その一方で,尾骨部や仙骨部に不整形の褥瘡を形成 するのであれば,不良座位姿勢をとっていることを物語ってい る。したがって,シーティングを工夫することで,安定した座 位姿勢を取らせなければならない。褥瘡 GL においても接触圧 を確認しながら座位を検討することが有益とされており,シー ティングについての知識・技術を高めることが大切である。  褥瘡 GL の第 3 版では省略されることとなったが,第 2 版14) においては,Good Practice Point(以下,GPP)が示されていた。 GPP は診療ガイドライン作成グループが「臨床的に重要」と 強調すべきと感じているが,研究によるエビデンスがない,ま たは研究を行うことが期待できない項目(研究に馴染まない), いわば“Clinical Common Sense”に関して,経験のある臨床 家が助言を行うような内容である。理学療法に関するものとし て,「ベッド上での動作時・他動運動時には,皮膚・皮下組織 のずれが起こることに留意する」「リハビリテーション介入は, 硬いベッド上でのプログラムを避けるようにする」というポイ ントが挙げられている。関節への負担を考えても他動運動を行 うときに,運動学的に考えて行うことはあたり前のことであろ う。そこで,ベッドの硬さや他動運動時の意識の違いによって, 臀部に加わる圧力がどのように異なるのかということを新人と 熟練者との対比で確認した*(図 1)。その結果,新人の場合に は柔らかいベッドで減圧を意識しても圧が高く加わっている (図 1c),一方,熟練者では柔らかいベッド上ではもちろんのこ とながら,硬いベッドのうえでも高圧となる部分は非常に小さ く,圧を高めることなく実施できていることがわかる。この結 果からも不用意に動かすことを継続していれば,「動かすから 悪化する」ということにつながるが,他動運動の実施環境を整 え,創部への負荷を考慮した実施方法で行うことで創部への悪 影響を与えることなく実施することが可能である。そのために は,十分な熟練を必要とすることがあきらかとなった。 ま と め  褥瘡ケアにおいて理学療法士は,褥瘡発生の予防として,発 生要因を減らし,また,ポジショニングやシーティングといっ た療養環境の整備に貢献することができる。また,褥瘡の治療 面では物理療法を活用し,創傷の修復促進を支援することが可 能である。しかしながら,刺激条件を十分考えずに実施したり, 不用意な動作介助を行ったりすれば,褥瘡形成や悪化につなが ることもある。多職種で取り組む褥瘡ケアにおいて,理学療法 士は悪影響をだすことなく,治療並びに予防の効果を示してい くことが大切である。そのためにもより多くの理学療法士が認 定理学療法士(褥瘡・創傷ケア)の認定を受け,臨床現場にお いて,褥瘡治療を必要とする対象者に対峙していただきたい。 * 本研究部分は,独立行政法人日本学術振興会科学研究費挑戦 的萌芽研究「関節拘縮予防のための安全な他動運動の実施に関 する研究」(研究課題番号 23650450)により実施したものの一 部である。 文  献 1) 仲上豪二朗,真田弘美:褥瘡とは,NEW 褥瘡のすべてがわかる. 真田弘美,宮地良樹(編),永井書店,東京,2012,pp. 13‒21. 2) 森口隆彦,宮地良樹,他:「DESIGN」褥瘡の新しい重傷度分類と 経過評価のツール.褥瘡会誌.2002; 4: 1‒7. 3) 古江増隆,真田弘美,他:第 3 期学術教育委員会報告 DESIGN-R 合 計点の褥瘡治療に対する予測妥当性.褥瘡会誌.2010; 12: 141‒147. 4) 日本褥瘡学会実態調査委員会:療養場所別褥瘡有病率,褥瘡の部 位・重症度(深さ).褥瘡会誌.2011; 13: 625‒632. 5) 日本褥瘡学会学術教育委員会ガイドライン改訂委員会:褥瘡予 防・管理ガイドライン(第 3 版).褥瘡会誌.2012; 14: 165‒226. 6) 福井次夫,吉田雅博,他(編):Minds 診療ガイドライン作成の手 引き 2007.医学書院,東京,2007. 7) 田中マキ子(監修),市岡 滋(編),他:ポジショニング学.中 山書店,東京,2013. 8) 大浦武彦:新しい体位変換.中山書店,東京,2013. 9) 寺部雄太,市岡 滋:リハビリテーション専門職が知っておきた い褥瘡の基本,褥瘡治療に有効な最新の物理療法.MB Med Reh. 2013; 159: 47‒52. 10) 杉元雅晴,日髙正巳,他:最先端のエビデンス Update,褥瘡ケア への理学療法士の参画.理学療法学.2013; 40: 56‒58. 11) 本田寛人,杉元雅晴,他:直流微弱電流刺激が褥瘡の創縮小に対 して与える効果,シングルケース実験法に基づいて.褥瘡会誌. 2012; 14: 63‒67. 12) 吉川義之,杉元雅晴,他:褥瘡部を陰極とした微弱直流電流刺激 療法による創の縮小効果.理学療法学.2013; 40: 200‒206. 13) 前重伯壮,萩原信夫,他:超音波照射が褥瘡に対して与える影響, single case 実験法に基づいて.褥瘡会誌.2008; 10: 507‒512. 14) 日本褥瘡学会(編):褥瘡予防・管理ガイドライン.照林社,東京, 2009.

図 1 他動運動時の臀部にかかる接触圧

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