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パーキンソン病患者に対する理学療法とtDCS(経頭蓋直流刺激)を併用したときの動作緩慢と歩行へ及ぼす効果の検討

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 184 43 巻第 2 号 184 ∼ 185 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 26 年度研究助成報告書. れなかった。 方  法. パーキンソン病患者に対する理学療法と tDCS(経頭蓋直流刺激)を併用したとき の動作緩慢と歩行へ及ぼす効果の検討.  tDCS による刺激 は DC Stimulator(Neuro Conn GmbH 社 製)を利用し,陽極を左運動野,陰極を右前頭部に設置し, 1 mA の直流電流を安楽座位で 20 分実施した。また,同様の 電極の配置で最初だけ電流の流れる偽刺激(sham 刺激)を, tDCS と順番はランダムに実施した。各刺激は 48 時間以上あけ. 松田雅弘 1),稲葉 彰 2),万治淳史 3)4),網本 和 4), 5). 和田義明 ,平島富美子. て実施しており,被験者によって各刺激 1 ∼ 3 回実施した。ま. 5). た,1 日 1 回 40 分の理学療法は継続的に実施した。各刺激と も服薬後に薬の効いている時間を選択して実施しており,投薬. 1). 状況による変化の少ない時間を設定した。. 2).  各刺激前後での評価は 10 m 歩行テストを実施し,10 m の. 植草学園大学保健医療学部 関東中央病院神経内科. 3). 埼玉みさと総合リハビリテーション病院リハビリテーション科. 4). 首都大学東京大学院人間健康科学研究科. 快適歩行時間と歩数の計測を行い,歩行速度(m/min),歩幅 (cm),歩行率(steps/min)を算出した。. 5). 日産厚生会 玉川病院リハビリテーション科.  統計学的な検討は SPSS ver.21 を利用して,tDCS と sham 刺激で各刺激前後の歩行速度,歩幅,歩行率の変化に関して,. キーワード:パーキンソン病,tDCS(経頭蓋直流刺激) ,歩行. Wilcoxon の符号付順位和検定を用いて分析した。有意水準は 5%とした。. はじめに. 結  果.  脳卒中後の運動麻痺の治療として経頭蓋直流電気刺激.  各刺激前後の比較した結果(図 1,2),歩行速度(m/min). (Transcranial Direct Current Stimulation: 以 下,tDCS) の. は,tDCS で刺激前 25.9 ± 12.5 m/min,刺激後 30.8 ± 11.8 m/. 有効性について報告されている。中枢性運動障害のパーキンソ. min であった。Sham 刺激前 29.1 ± 11.2 m/min,刺激後 26.2. ン病(Parkinson disease:以下,PD)でも一次運動野を刺激. ± 12.5 m/min であり,tDCS で刺激後に有意な差があった(p. することによる上肢の運動緩慢の改善 1)2)や,tDCS による皮. < 0.05)。 歩 行 率(steps/min) は,tDCS で 刺 激 前 105.5 ±. 質脊髄性の興奮性の向上. 3). ,ジストニアに対する有効性. 4). な. 21.1 steps/min,刺激後 113.6 ± 24.5 steps/min,Sham 刺激前. どの報告が見られる。PD 患者は,基底核の障害からの pallido-. 99.9 ± 23.1 steps/min,刺激後 103.7 ± 25.4 steps/min であった。. thalamo-cortical drive の低下を代償するために皮質興奮性が増. 歩幅(cm)は,tDCS で刺激前 24.9 ± 12.5 cm,刺激後 27.4 ±. 加した状態であり,皮質内抑制が減少している場合がある。そ. 10.7 cm,Sham 刺激前 29.9 ± 12.1 cm,刺激後 25.2 ± 11.8 cm. こでさらに,興奮性を増大させる目的に高頻度 rTMS(興奮性). であった。tDCS で刺激後に有意な差があった(p < 0.05)。. や anodal tDCS(興奮性)を用いることにより,運動機能の改. 考  察. 善を認めた報告. 1).  tDCS 前後での PD 患者における歩行動作に及ぼす即時効果. がある。.  しかし,本邦では PD 患者に対する tDCS による運動障害へ. について検討した。その結果,歩行速度と歩幅で sham 刺激よ. の治療効果の報告はまだ少ない。さらに,PD 患者において,. りも有意に tDCS で歩行の改善が認められた。. 脳卒中後の麻痺のように標準的な理学療法を組み合わせた報告.  tDCS の陽極下で運動誘発電位の振幅が上昇し,陰極下では. はなされていない。今回,起立・歩行動作障害を呈する PD 患. 反対の効果があり,脳皮質の活動性の陽極下での促通,陰極下. 者に対し,tDCS と同様の電極の配置で最初だけ電流の流れる. での抑制により,脳半球間・ネットワーク間の活動のバラン. 偽刺激(sham 刺激)をランダムに実施し,PD 患者における. スを整えることで歩行動作の改善に寄与していると考えられ. tDCS が歩行動作に及ぼす影響について検討することを目的と. る 6)。歩行に関して検討した症例は,すくみ足・小刻み歩行が. した。. 顕著で歩行に時間を要していたが,tDCS による歩行速度・歩. 対  象. 幅の改善はこれら PD 特有の症状の改善に効果を示したものと.  対象は PD 患者 6 名(平均年齢 77.2 歳:70 ∼ 86 歳)とし,ホー. 考えられる。tDCS が PD 患者のすくみ足現象に効果を示した. ンヤールの分類Ⅲ:2 名,Ⅳ:4 名,指示理解が可能な者,重. 報告 7) を支持する結果となった。このように tDCS により運. 度の認知症がない者とした。パーキンソン病と診断されてから. 動野を刺激することで,PD 特有の症状の改善が認められたの. の平均期間は 10.8 ± 3.1 年(7 ∼ 15 年)であった。. は,一次運動野からの入力刺激によって大脳基底核の入力が増.  植草学園大学研究倫理審査委員会にて承認番号(第 14‒03. 大する。大脳皮質から線状体,淡蒼球内節・黒質網様部,視床. 号),関東中央病院倫理審査委員会の承認番号(26 − 3 − 005). を介して運動関連領野を刺激することで,運動機能改善につな. を得て,ヘルシンキ宣言に基づき,患者・患者家族には研究の. がったことが考えられる。これは黒質からの入力が減少してい. 説明を行い,書面にて同意を得て実施した。また,日本臨床神. るため,この経路の活性化が運動緩慢に効果的なことが示唆さ. 5). にそって実施した。また,共同研. れた。刺激位置(電極接触位置)から運動野前方の補足運動野. 究者の所属する病院内で実験を実施し,なにか違和感が生じた. へも刺激が波及し,運動プログラムの活性化などが関与した可. 場合はすぐに受診できる体制で実施したが,有害事象は認めら. 能性が考えられる。電極から広い範囲で刺激が入ることが知ら. 経生理学会での適応基準.

(2) パーキンソン病患者に対する tDCS の効果. 185. 図 1 tDCS 前後の歩行速度の変化(n=6) 各被験者の tDCS の刺激前後での歩行速度の変化を図にし,左側が刺激前,右側が 刺激後とした.モノクロに対応できるように実線と点線を混ぜて作成した.. 図 2 sham 刺激前後の歩行速度の変化(n=6) 各被験者の sham の刺激前後での歩行速度の変化を図にし,左側が刺激前,右側が 刺激後とした.モノクロに対応できるように実線と点線を混ぜて作成した.. れているため,その影響も考えられるが,今回は推察の範囲内 なので今後検討が必要だと考えられる。  脳刺激部位による特異性に関しては今後とも検討を必要とす るため,今後さらに症例数を増やして検討していく予定であ る。tDCS による脳刺激で PD 患者に対する即時効果として動 作遂行能力,動作緩慢に影響することが示唆された。PD 患者 に対する脳刺激による治療の可能性を示唆したものであり,今 後,動作分析を含めた効果の検証を行ううえでの基盤となると 考える。また,その効果や程度を把握することで,その後の理 学療法が円滑に実施可能になると考えられる。しかし,理学療 法に加えた脳刺激の効果に関して十分な検討ができていないた め,今後さらに症例数を重ねて検討していきたい。 文  献 1)Fregni F, Bogio PS, et al.: Noninvasive cortical stimulation with transcranial direct current stimulation in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2006; 21: 1693‒1702. 2)Fregni F, Simon DK, et al.: Non ̶ invasive brain stimulation for Parkinso’s diseases: a systematic review. and metaanalysis of the literature. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005; 76: 1614‒1623. 3)Siebner HR, Lang N, et al.: Precondtioning of lowfrequency repetitive transcranial magnetic stimulation with transcranial direct current stimulation: evidence for homeostatic plasticity in the human motor cortex. J Neurosci. 2004; 24(13): 3379‒3385. 4)Wu AD, Fregni F, et al.: Noninvasive brain stimulation for Parkinson’s disease and dystonia. Neurotherapeutics. 2008; 5(2): 345‒361. 5)臨床神経生理学会 脳刺激法に関する委員会:経頭蓋直流 電気刺激(transcranial direct current stimulation, tDCS) の安全性について.臨床神経生理学.2011; 39: 59‒60. 6)Krause B, Marquez-Ruiz J, et al.: The effect of transcranial direct current stimulation: a role for cortical excitation/inhibition balance? Front Hum Neurosci. 2013; 7: 602. 7)Valentino F, Cosentino G, et al.: Transcranial direct current stimulation for treatment of freezing of gait: a cross-over study. Mov Disord. 2014; 29(8): 1064‒1069..

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