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石油75-2 ブック

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石油技術協会誌 第 75 巻 第 2 号 (平成 22 年 3 月)139 ∼ 147 頁 Journal of the Japanese Association for Petroleum Technology

Vol. 75, No. 2(March, 2010)pp. 139∼147

講   演

Lecture

1. は じ め に

ベトナム南東沖合いに位置するクーロン盆地は,第三紀 のリフト堆積盆地で,Bach Ho 油田や Rang Dong 油田など 数多くの油・ガス田が発見されており,2008 年にはベト

ナムの原油生産量の95% を生産している(Canh,2008)。

クーロン盆地のこれらの油・ガス田の主要貯留岩は白亜 紀の花崗岩であり,炭化水素は断層に伴うフラクチャー孔

隙に胚胎している。本稿で述べるNam Rong – Doi Moi 油田

(以下NR-DM 油田)もクーロン盆地の南部に位置しており, フラクチャー花崗岩を貯留岩とする油田である。 クーロン盆地の主要油・ガス田を表1 に,油・ガス田の 位置を図1 に示す。 NR-DM 油田の開発対象層である白亜系の花崗岩は,フ ラクチャーを主要孔隙とする貯留岩である。このため粒子 間孔隙を主体とする砂岩貯留岩とは,孔隙の規模や連続性 など,貯留岩性状が大きく異なることが予想され,油田発 見当時の埋蔵量の推定には大きな不確実性が懸念された。 そのため,本油田の開発移行に際しては,花崗岩中の孔隙

ベトナム沖合い花崗岩貯留岩油田「Nam Rong – Doi Moi 油田」の開発

*

佐 久 山 尚 文

**

(Received December 28, 2009;accepted March 5, 2010)

Development of the fractured granite reservoir of the Nam Rong – Doi Moi field, offshore Vietnam

Naofumi Sakuyama

Abstract: The Nam Rong – Doi Moi field is located in the south of the Cuu Long basin, which produces oil from

the fractured granite reservoir. The pore system within fractured granite was investigated based on the well data, and a hypothetical reservoir model was proposed.

The fractured granite reservoir consists of “fault breccia”, “damaged zone” and “un-deformed zone”. Both “fault breccia” and “damaged zone” show low to fair permeability while “un-deformed zone” shows very low permeability nature. There occasionally be high permeable “channel structures” within “fault breccia”, and this mixed pore structures create a high permeability contrast within granite, and the fluids in the fractured granite reservoir behave as a dual porosity reservoir. In order to predict the fault/fracture distributions within the granite, the “Controlled Beam Migration” technique was applied to the 3D seismic data in the NR-DM field. The results of reprocessing show an improvement to image high-dip structures within the granite, which corresponds to the actual flow zones in the well.

The NR-DM field is still under development and will be studied further with newly acquired data to optimize the development and production.

Keywords : fractured granite reservoir, dual porosity, controlled beam migration

* 平成 21 年 11 月 5 日,平成 21 年度石油技術協会秋季講演会「激動下の我 が国の海外探鉱開発」で講演 This paper was presented at the 2009 JAPT Autumn Meeting entitled “Oversea exploration & production activities under the recent drastic change in world economy” held in Tokyo, Japan on November 5, 2009.

** 出光オイルアンドガス開発㈱  Idemitsu Oil and Gas Co., Ltd.

Fields/Discoveries Discovery Start Production Status

Bach Ho Field 1987 9/6/88 Producing

SE Rong 1995 6/27/96 Producing

Rang Dong 1994 8/30/98 Producing

Ruby 1995 11/1/98 Producing

Su Tu Den 2000 10/29/03 Producing

Phuong Dong 1995 Aug-08 Producing

Su Tu Vang 2001 Oct-08 Producing

Ca Ngu Vang 2002 Jul-08 Producing

E. Rong 1993 2009 Developing

Nam Rong - Doi Moi 2004 2009 Developing

CS Rong 2006 2010 Developing

NE Su Tu Den 2010 Developing

Su Tu Tran 2003 2010 Appraisal

Hai Su Den 2008 2011 Appraisal

Su Tu Nau 2005 2012 Appraisal

S. Ho Xam 2008 2012 Appraisal

Thang Long 2007 2012 Appraisal

1 クーロン盆地のフラクチャー花崗岩を貯留岩と

する油・ガス田リスト

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システムの理解,フラクチャー花崗岩中の流体挙動の理解 とフラクチャーの分布予測が重要な課題と考えられた。 本稿では,このNR-DM 油田の探鉱を通じて得られたデー タを用いて,現在 想定している貯留岩モデルとフラク チャー分布予測技術の現状について紹介する。

2. クーロン盆地の石油探鉱史と石油地質

2.1 クーロン盆地の石油探鉱史 クーロン盆地での最も古い試掘井は,1974 年に Mobil 社 が掘削したBach Ho-1 号井が知られている。この試掘井に より,ベトナム最大のBach Ho 油田上位の砂岩層からの出 油が確認されている。また,1979 年には Deminex 社が合 計4 坑の試掘を実施し,全ての坑井で油・ガス徴を確認し ている。この時期の主要探鉱対象層は第三系の砂岩であり, 基盤岩となる花崗岩を深く掘削した坑井はない。 ベトナム政府は,1981 年に当時のソビエト連邦と 2 国 間の合弁会社Vietsovpetro 社を設立し,既発見未開発の Bach Ho 油田の開発を含むクーロン盆地の石油探鉱・開発 作業を開始した。1980 年代には Vietsovpetro 社が精力的に クーロン盆地の石油探鉱を推進し,1985 年には Rong 油田 を発見したほか,1987 年には Bach Ho 油田の花崗岩のフ ラクチャー区間から3,600 BOPD の出油を確認した。この 発見を契機に,クーロン盆地での探鉱対象は一気にフラク チャー花崗岩にシフトしたといわれている。 1980 年代には欧米企業によるベトナムでの探鉱活動は 行われていないが,1986 年にベトナム政府が打ち出した ドイモイ政策に基づいて,1990 年代には国際入札が実施 されるようになり,外国企業の石油産業への参加が可能に なった。 こ の 時 期 に,JVPC 社や Petronas 社がクーロン盆地で の探鉱活動を開始し,90 年代半ばには Rang Dong 油田, Phuong Dong 油田や Ruby 油田群が相次いで発見されてい

る。いっぽう,70 年代後半から活動している Vietosovpetro

社は,1988 年には Bach Ho 油田からの生産を開始し,90

年代にはBach Ho 油田の周辺で,E Rong 油田や SE Rong

油田を発見している。 このように,90 年代はクーロン盆地での探鉱活動が徐々 に活発化するとともに,Bach Ho 油田での生産・開発に伴っ て,フラクチャー花崗岩貯留岩に関する基礎データが集積 され埋蔵量推定のための基礎知識が蓄積された時期ととら えることが可能である。 Canh(2008)によると,Bach Ho 油田の原始埋蔵量は生 産開始時点の1988 年には 0.98 billion bbl といわれたが,貯 留岩の理解が進むにつれて,1991 年には 2.37 billion bbl, 1997 年 に は 4.82 billion bbl,2002 年 に は 6.03 billion bbl, 2008 年には 7.55 billion bbl と 7 倍以上に原始埋蔵量が増加 したと報告されている。 このような探鉱・開発・生産の成果を踏まえて,90 年 代後半にはクーロン盆地での探鉱活動が一気に加速し,Su Tu Den 油田,Su Tu Vang 油田,Ca Ngu Van 油田,などが次々 に発見され,ベトナムの生産量も年々増加し,2004 年に は生産量のピークを迎えている。2008 年にはベトナムの 原油生産量約300 千 BOPD うちのクーロン盆地の油田から 95% を生産するまでに成長している。 2.2 クーロン盆地の石油地質 2.2.1 概 要 クーロン盆地はベトナム南部の海域に北東– 南西の構造 トレンドを持って発達する第三紀のリフト堆積盆地であ る。(Nguyen, 2007, 図 2) 堆積盆地の中央やや東よりには,Bach Ho 油田,Rang Dong 油田などが位置する基盤のホルスト構造列が存在し, 堆積盆地を東西の亜盆地に区分している。地震探査データ から,堆積盆地の最も厚い部分はRang Dong 油田の西部 からSu Tu Tran ガス田の南西部と考えられている。 東の亜盆地も西の亜盆地と同等の厚さの堆積物を有して いると考えられており,NR-DM 油田は東の亜盆地の最南 図1 クーロン盆地の主要油・ガス田と NR-DM 油田 の位置 図2 クーロン盆地の基盤構造形態と NR-DM 位置   (Nguyen H., 2007 に加筆修正)

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端に位置している。

堆積盆地の北部にはテラス状のやや基盤の浅い部分が存

在し,Ruby 油田群や,Su Tu Den 油田などが位置している。

一方で盆地の南西部にもテラス状の部分は認められるが, これまでのところ商業規模の油・ガス田の発見は報告され ていない。

クーロン盆地の最近の発見としては,Su Tu Tran ガス田 や,Te Giac Tran 油田などで良好な生産性を示す砂岩での 発見が報告されており,改めて砂岩プレイが見直されて いる。 2.2.2 層 序 図3 にクーロン盆地の地質層序を示す。 (1) 基盤岩類 クーロン盆地の基盤岩は,三畳紀∼ジュラ紀の花崗閃緑 岩を主とするHon Khoai 岩体,ジュラ紀∼前期白亜紀の 花崗閃緑岩,閃緑岩を主とするDinh Quan 岩体,中期白亜 紀の花崗岩・花崗閃緑岩からなるDeo Ca 岩体,後期白亜 紀の花崗岩からなるAnkroet 岩体により構成されている。 このうち,クーロン盆地の油・ガス田の主要貯留岩となっ ているのは,Ankroet 岩体と Deo Ca 岩体といわれている。 (Quy et. al.. 2006)

これらの花崗岩類は,断層運動による変形や熱水作用 による変質のほかに,地表付近での風化作用による変質 を蒙っていることが,露頭や坑井試料により確認されて いる。 (2) 始新統 クーロン盆地のリフト活動は始新世∼漸新世に始まっ た。リフト活動により形成された地溝の最下部は,河川成 ∼湖沼成の砂・礫質の堆積物からなるTra Cu 層が堆積し ている。このTra Cu 層は,地震探鉱データとの対比から F シークェンスと呼ばれ,上位の河川成∼湖沼成の砂岩泥 岩互層からなるTra Tan 層に不整合で覆われる。 (3) 漸新統

Tra Tan 層は syn-rift の堆積物であり,盆地中央部で厚 く基盤岩のホルスト構造上では薄くなっており,側方への 層厚・岩相の変化が著しい。河川成∼湖沼成の砂岩泥岩互 層からなり,漸新世中期の不整合を境に,大きく上下に分 けられる。 Tra Tan 層の下部は,やや砂質で地震探査データとの対 比から,E シークェンスと呼ばれるのに対して,上部の堆 積物は泥岩勝ちとなり,下位よりD シークェンス,C シー クェンスと呼ばれる。

Tra Tan 層の湖沼成泥岩は有機物に富み,TOC 値が 0.5 ∼10%に達し,Hydrogen Index が 500 mg/gTOC に達する 良好な根源岩性状を示すことが知られている。この湖沼 成泥岩と同時異相となる河川成の砂岩はRong 油田や Bach Ho 油田などで貯留岩を形成している。Tra Tan 層は,堆積 盆地の縁辺部や一部の構造頂部で欠如している部分を除け ば,上位の下部中新統Bach Ho 層に整合的に覆われる。 (4) 中新統 前期中新世には,クーロン盆地の広い範囲で海進が始ま り,河川成∼海成の堆積物が堆積した。 下部中新統のBach Ho 層は河川成∼デルタ成堆積物と 海成泥岩の互層からなる。Bach Ho 層の砂岩の単層の厚さ は数cm ∼数十 cm 程度で,上部には広域の海進に伴って 堆積した海成有孔虫を伴う泥岩が知られており,Bach Ho Shale と通称されている。Bach Ho 油田や Rang Dong 油田, Su Tu Den 油田,Ruby 油田などでは,この Bach Ho Shale

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が良好な帽岩となり構造トラップを形成し,Bach Ho 層の 砂岩から油・ガスを生産している。

中期中新世に入ると非常に砂岩勝ちの海成砂岩からな

るCon Son 層が堆積する。Con Son 層は中∼粗粒の砂岩で

しばしば顕著な上方粗粒化を示し,時折薄い泥岩を挟在 する。 2.2.3 トラップの概要 図4 にクーロン盆地でのトラップの概念図を示す。 クーロン盆地では,漸新統Tra Tan 層の湖沼成泥岩が良 好な根源岩となり,堆積盆地の深部で油・ガスの熟成帯に 入ることから,堆積盆地の広い範囲で油・ガスを生成して いると考えられている。 生成された油・ガスは,根源岩に隣接する基盤岩のフラ クチャー孔隙や同時異相となる漸新統砂岩に移動する。あ るいはリフト活動に伴う正断層に沿って上位層である漸新 統や中新統砂岩にも油・ガスが供給された。 これらの基盤岩や,砂岩の上位には漸新世の湖沼成泥岩 や,前期中新世の海成泥岩が存在しており,上方シールと なり構造トラップを形成している。 既存のクーロン盆地の油・ガス田では,明瞭な層位トラッ プの事例は知られていない。

3. NR-DM 油田

3.1 概 要 NR-DM 油田は 09-3 鉱区と 09-1 鉱区の鉱区境界に跨って いるため,両鉱区で共同開発を進めている。 NR-DM 油田の基盤構造の概観と掘削された試・探掘井位 置を図5 に示す。 NR-DM 油田は,東西方向の正断層により形成された基 盤のホルスト構造である。構造は断層に沿って東西に伸び ており,南北方向あるいは北西– 南東方向の断層の発達を 伴う。 最初の試掘井であるWell A は 2004 年に構造のほぼ頂部 に垂直井として掘削され,原油を回収した。生産テストで は自噴を確認できなかったが,2005 年に隣接鉱区で掘削 されたWell D において自噴を確認した。その後,2006 年 に掘削されたWell B では,4,000 BOPD を超える良好な生 産性を確認した。その後掘削されたWell E と Well C でも 良好なフローを確認した。 NR-DM 油田の試掘井のうち最も良好な生産性を示した Well B の坑跡に沿った地震探査断面を図 6 に示す。この地 震探査記録は,2002 年に測定されたオリジナルの記録で あり,基盤上限は明瞭な反射面としてとらえることが可能 であるが,断層面そのものやフラクチャーの発達する区間 を地震探査記録から直接読み取ることは難しい。当時は, 基盤上限の凹凸や不連続を頼りに断層の位置や方向性,さ らには当時の応力配置を推定することで,フラクチャーの 発達を予想して掘削位置を検討した。 Well B の坑井検層データを図 7 に示す。Well B では, FMI 画像により花崗岩中に非常に多くのフラクチャーが確 認でき,フラクチャーの発達の著しい区間で油・ガス徴が 顕著になる傾向が見られる。また,フラクチャーが発達す る区間では比抵抗,密度,音波速度など検層記録上に顕著 な変化が確認できる。 このNR-DM 油田の埋蔵量評価に際しては,次のような 図4 クーロン盆地の地質層序と集油の概念図5 NR-DM 油田の構造概観図と試探掘井位置6 Well B を通る地震探査断面  基盤上限深度とフローの確認された区間をマーカーで示す。 2002 年測定震探データでは,フローに関連する断層を正確 に読み取ることは困難。

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技術課題が存在していた。 構造の頂部付近に掘削されたWell A と Well B では,両 方の坑井で良好なフラクチャーの発達と油・ガス徴が確 認されたにもかかわらず,Well A は自噴せず,Well B では 良好なフローが得られた。また,多くのフラクチャーが確 認されたWell B の中でも,実際にフローが確認されたの はその中のきわめて狭い区間だけであった。このため,掘 削された花崗岩区間のうち,生産に寄与する区間(ペイ) の定義の仕方によって埋蔵量の予測が大きく異なってし まう。 また,後述するように生産テスト時の圧力解析結果から, フラクチャー花崗岩の圧力挙動がdual porosity の傾向を示 していることが分かったが,これを説明できる孔隙システ ムの理解(貯留岩モデル)が必要となった。 さらに,埋蔵量を予測するためには,三次元的なフラ クチャーの発達を把握することが必要となるが,地震探査 データからはフラクチャーの予測が極めて困難であった。 このため,坑井データを元に,フラクチャー花崗岩での 貯留岩モデルについての作業仮説を立て,生産テスト結果 と整合的なペイの定義を検討した。また,地震探査データ の再処理を行い,坑井で確認されたフラクチャーの三次元 的な分布を予測することに取組んだ。 以下にそれぞれについての現状を説明する。 3.1 貯留岩モデル 露頭の観察やクーロン盆地のコアデータや分析データ, 坑井検層データに基づいて仮定した貯留岩モデルの概要を 以下に記す。またその概念図を図8 に示す。 花崗岩中には,断層を中心に外側に向かって,断層角礫 岩,変形・変質帯,未変形帯が帯状に分布している。 断層角礫岩は,断層活動に伴うせん断により形成された 幅数十cm ∼数 m の帯状の部分で,破砕された花崗岩によ り構成されている。孔隙率は5 ∼ 20%程度で浸透率は 10 ∼100 md 程度と予想される。この断層角礫岩中には「水 みち」と呼ばれる浸透率10,000 md に達するチャネル構造 が不規則に発達している。 変形変質帯は,断層角礫岩に沿ってその外側に数十m の幅で発達する区間であり,多くのフラクチャーが発達す る。孔隙率は0.5 ∼ 3 %程度であり,浸透率は 0.1 ∼ 100 md 程度である。 図8 フラクチャー花崗岩の貯留岩モデルの概念図7 Well B の坑井データ FMI イメージから,花崗岩中に数多くのフラクチャーが発達していること,フラクチャーの発達する区間で油・ガス徴が顕著になる ことが分かる。また,フラクチャーの発達する区間では比抵抗,密度,音波速度の低下など通常検層の測定値にも顕著な変化が確認 できる。

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さらに外側には未変形帯が存在している。この区間はフ ラクチャーの発達が少なく,岩石も母岩の特徴を残してい る。孔隙率は,0.5%程度で浸透率は 0.1 md 未満と推定さ れる。 断層角礫岩中に不規則に発達する 「 水みち 」 は,しばし ば破砕帯中の湧水帯として認識される区間と同様の構造と 考えられるが,その分布の予測はきわめて難しい。 上記のような花崗岩中の岩相の変化を検層データから区 分するために,坑井でのフラクチャーの発達を,通常検層 データを用いて5 段階にクラス分けし,Fracture Facies と 名づけた。このFracture Facies を密度検層,音波検層, 比抵抗検層のクロスプロット上に表現したものが図9 で ある。 この図からFracture Facies の増加とそれぞれの検層デー 図9 Fracture Faceis と比抵抗,密度,音波速度(DT)の関係

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タの間に良好な対応関係が見いだされることがわかる。 このFracture Facies を Well B の検層データと PLT のデー

タと合わせて比較した結果が図10 である。この図から, 検層データから求めたFracture Facies と油・ガス徴の分布 がよく対応していることが読み取れる。一方で,PLT によ りフローが確認された区間はFracture Facies が大きな値を 示す区間のごく一部のみであり,「水みち」はフラクチャー の発達の程度と直接結び付けられないことが再確認で きる。 3.2 生産テスト時の圧力ビルドアップデータ 図11 に Well B の生産テスト時の圧力ビルドアップデー タを示す。 この圧力データには,Dual Porosity の傾向が明瞭に現れ ており,フラクチャー花崗岩貯留岩には,高浸透率と低浸 透率の2 つの孔隙システムが共存していることが分かる。 一方で,花崗岩は深成岩であり,本来粒子間孔隙は存在 しないことから,フラクチャーのみからなる孔隙システム で,浸透率のコントラストを説明できるかどうかが問題と なった。 図8 に示す貯留岩モデル,さらには図 9 に示す坑井デー タと油・ガス徴,フローコントリビューションの関係とを 合わせ考えると,いわゆる「水みち」が高浸透率のシステ 図10 Well B の坑井データ Fracture Facies と油・ガス徴,PLT によるフロー区間を合わせて表示

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ムを,その周囲の断層角礫岩と変形・変質帯が低浸透率の システムを構成していると考えることが自然であると考え られた。 このように考えると,「水みち」を経由した最初のビル ドアップのあとで,断層角礫岩や変形・変質帯からの圧力 サポートが得られるということになり,原油の直接的なフ ローは「水みち」のみから得られるが,断層角礫岩,変形 変質帯もペイに含まれると考えることが可能である。 すなわちWell A はペイを確認しているが,「水みち」を 掘削できなかったためにフローが得られなかったと解釈 できる。また,Well B の中でフローが確認できていない区 間からも最終的には,「水みち」を経由した生産が期待で きる。 ただし,1 坑井当たりの生産量を高めるためには,効率 的に「水みち」を掘りぬくことが必要となり,坑井軌跡を どのように計画するかが非常に重要な課題となる。 3.3 フラクチャーの分布予測 花崗岩中の孔隙は断層に起因するフラクチャー孔隙が 主体であり,その分布予測には震探データによる断層のイ メージングが鍵となると考えられる。 従来,花崗岩中の断層のイメージングについては,断層 自体の幅が狭く震探の解像度以下である,断層の上下で物 性に変化がなく反射面を形成しない,高傾斜の正断層を主 としており反射法でのイメージングが難しい,などの理由 で否定的な見解が多かった。 しかし,2003 年頃から PSDM に加えて最新のマイグレー ション処理を併用することで地震探査データのイメージン グの向上が可能であるという事例が報告されるようになっ た(Jonklaas 2003, Graeme et. al., 2008, Quan et. al., 2008)。

特に最近の処理技術で高傾斜イベントの可視化に有効と言 われた Control Beam Migration 技術を NR-DM 油田に適用し

た結果,図12 に示すようなイメージングの向上が見られ た。さらに,AntTrack 処理を行うことで,Well B のフロー ゾーンに相当するアノマリーを抽出することもできた。 このように,地震探査データの処理技術の進歩により, 断層やフラクチャーの分布を直接的に予測できる可能性が 見いだされている。 一方で,良好な生産を可能にする「水みち」の分布は本 来不規則で,予測困難であることから,地震探査データで フラクチャーの発達する区間に対してより効率的に坑井を 掘削するための坑井配置の最適化に関する検討も重要な課 題と認識されている。

4. まとめと今後の課題

NR-DM 油田のフラクチャー花崗岩貯留岩について,坑 井データにもとづいて,孔隙システムを検討した。 フラクチャー花崗岩は,断層中心部から外側に向かって, 断層角礫岩,変形・変質帯,未変形帯という岩相からなる。 また,断層角礫岩中には「水みち」と呼ばれる高浸透率区 間が不規則に発達しており,「水みち」と断層角礫岩およ び変形変質帯がペイを形成している。このペイの中の浸透 図11 Well B の 生 産 テ ス ト 時 の 圧 力 ビ ル ド ア ッ プ データ 図12 NR-DM 油田での断層イメージングの向上 上段:NR-DM 油田のオリジナル地震探査断面(2002 年) 中段:コントロールビームマイグレーション技術(CBM)を 適用することにより得られた地震探査断面 下段:AntTrack (Schlumberger 社)処理結果

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率コントラストにより,dual porosity の圧力挙動が生じて いるものと解釈できる。 フラクチャーの分布予測に関しては,最新の震探処理技 術を用いることで,断層のイメージングが向上されており, 断層角礫岩,変形・変質帯の位置の予測に有効と期待して いる。 今後,掘削される開発井のデータを取り込んで,貯留 岩性状や生産挙動に関する理解を深めて現在の貯留岩モデ ルや地震探査処理パラメータを修正・改善することにより, 油層の理解を深め,最適化を図っていくことで,中・小規 模のフラクチャー花崗岩の開発が可能になるものと期待し ている。 謝 辞 本検討は,ベトナム09-3 鉱区の鉱区評価活動の一環と して行われたものであり,検討に際してはPetrovietnam 社,

Petrovietnam Exploration & Production 社 , Zarubezhneft 社に は,数多くの貴重な助言をいただくとともに,本講演の許 可をいただいた 。ここに深く感謝の意を表する。

参 考 文 献

Canh, T. N., 2008:Achievement of 20-year hydrocarbon exploration and reservoir, In Canh, T. N., Thuc, P. D., Dong T. L., and Quy, H. V. eds., Fracture basement reservoir,

Petrovietnam, p. 13 – 18.

Graeme B., Giang N. T., Quy, D. N., An V. N., Pham D., Sun J., Sun J., Tang Q, 2008:Improvements in seismic imaging in fractured basement, Block 15-1, offshore Vietnam, In Canh,

T. N., Thuc, P. D., Dong T. L., and Quy, H. V. eds., Fracture basement reservoir, Petrovietnam, p. 63 – 69.

Jonklaas, P., 2003:Seismic fault interpretation of a fractured basement reservoir: A case study of Su Tu Den and Su Tu Vang, In Dac, N. V., Bo N. Q., Minh., N. V., Chinh T. D., Dong, T. L., Quy, N. H., Quyet, N. V., Trung P. N., Cuong T. X., Quan, N. Q., Trung N. H. eds., Technical Forum entitled “Cuu Long Basin production challenges and opportunities”. p. 326 – 342. Nguyen, H., 2007:Dia chat va tai nguyen dau khi Viet Nam, p.

269 – 315, (in Vietnamese).

Quan, N. Q., Huy, T. N., Ngoc, N. H., Phong N. X., 2008:Role of the E-W Fault system in Hai Su Den structure from seismic interpretation to tectonic reconstruction. In Canh, T. N., Thuc, P. D., Dong T. L., and Quy, H. V. eds., Fracture basement reservoir, Petrovietnam, p. 70 – 87.

Quy, H. V., Dac, P. T., Hau, T. S., Hien, P. D., Boi, N. K. and Cao, N. V., 2006:Guidebook Geological field trip route Vung Tau – Dinh Quan – Dalat, “Basement reservoir” international conference.

表 1  クーロン盆地のフラクチャー花崗岩を貯留岩と する油・ガス田リスト
図 3 クーロン盆地の層序(Cuong and Warren2009 に加筆)

参照

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