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社交不安傾向者に対する注意訓練とマインドフルネス瞑想および慈悲の瞑想の効果比較研究

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-44 208

-社交不安傾向者に対する注意訓練と

マインドフルネス瞑想および慈悲の瞑想の効果比較研究

○小野 遥加1)、金井 嘉宏2)、松永 美希3) 1 )立教大学現代心理学研究科、 2 )東北学院大学教養学部、 3 )立教大学現代心理学部 問題と目的

社交不安症(Social Anxiety Disorder : SAD)に 対する心理社会的介入法として、自身の注意(意識) を向ける対象が異なる 3 つの方法があげられる。 1 つ 目は、SADの人は動悸や震えといった自分の身体反応 や後ろ向きな思考などに注目しやすく、他者の様子や 課題内容などの外部の情報にはあまり注意を向けない というSADの認知モデル(Clark & Wells, 1995)に基 づいた、注意を外部に向ける注意訓練(Wells, 1990) があげられる。 2 つ目は、身体感覚に注意を向け、変 化を観察するためにマインドフルネスを用いた介入で ある(Kocovski et al., 2013)。 3 つ目は、他者への 思いやりや共感という向社会的・利他的な行動に着目 し、慈悲の瞑想を行って外部に注意を向ける介入であ る。先行研究では、他者への親切行動をとった群が統 制群と比較してポジティブ感情が高まり、恐れている 対人場面を回避したい気持ちが弱まることが示されて いる(Alden & Trew, 2012)。

3 つの介入方法は理論的背景も異なり、いずれの方 法がもっとも効果的であるのかを比較した研究はみあ たらない。そこで本研究では、社交不安の高い人を、 注意訓練を行う群(attention training群;AT群)、 マ イ ン ド フ ル ネ ス 瞑 想 を 行 う 群(mindfulness meditation群;MF群) 、慈悲の瞑想を行う群(loving-kindness meditation群;LK群)、統制群(control群; CT群)の 4 群に無作為に割り当て、 2 週間ほど練習を 行った後、集団対話場面での課題を行い、どの介入方 法が社交不安傾向に対して効果的であるのかを検討す ることを目的とした。 方法 実 験 参 加 者  社 交 不 安 の 高 い 人 を 抽 出 す る た め に Liebowitz Social Anxiety Scale日本語版(LSAS- J ) を用いてスクリーニング調査を行い、合計得点が42点 以上であった大学生37名(男性 5 名、女性32名;平均 年齢19.94±0.91を対象とした。各群の内訳は、AT群 10名、MF群 9 名、LK群 9 名、CT群 9 名であった。 質問紙 ( 1 ) 社 交 不 安 を 測 定 す る 尺 度:LSAS- J( 朝 倉 ら, 2002)。他者の前でパフォーマンスを行う行為状況13 項目、会話などの対人交流を行う社交状況11項目。各 項目に対して、恐怖感/不安感については「 0 :全く 感じない」〜「 3 :非常に強く感じる」、回避につい ては「 0 :全く回避しない」〜「 3 :回避する(確率 2 / 3 以上または100%)」までの 4 件法。 ( 2 )マインドフルネスを測定する尺度:Five Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ;Sugiura et al., 2012)。

( 3 )グループディスカッション(以下GD)時の感情 を 測 定 す る 尺 度: 日 本 語 版 T h e P o s i t i v e a n d Negative Affect Schedule(PANAS;川人・大塚・甲斐 田・中田, 2011)。

( 4 )GD時の状態不安を測定する尺度: Subjective Units of Distress(SUD)。

手続き 第 1 日目に各群への研究説明を行い、同意書 への記入後、実験参加者の特性を測定するため、FFMQ への回答を求めた。その後、AT群・MF群・LK群(介入 群)には各エクササイズの説明を行い、CDの音源に 従ってその場で 1 度実践を行った。AT群は、『実践! マインドフルネス 今この瞬間に気づき青空を感じる レッスン』(熊野, 2016)の付属CD内の「注意の持続 実践」を用いた。MF群とLK群は、『自分でできるマイ ンドフルネス 安らぎへと導かれる 8 週間のプログラ ム』(ウィリアムズ & ペンマン, 2016)の付属CD内の 「ボディスキャン瞑想」と「思いやりの瞑想」をそれ ぞ れ 用 い た。 介 入 群 の 参 加 者 に は 約 2 週 間 訓 練 を 行 っ て も ら っ た。 第 1 日 目 か ら 約 2 週 間 後 に 再 度 LSAS- J とFFMQへの回答を求めた。次に、GDについて 説明を行い、GD中の注意の操作に関して、各群に異な る教示を文書で与えた。続いて、GD前の不安や感情の 程度を確認するため、PANASとSUDへの回答を求めた。 その後、10分間のGDを行った後、GD中の感情や認知な どを測定するため、再度質問紙(PANAS・SUD)への回 答を求めた。その後、デブリーフィングを行い、実験 を終了した。 倫理的配慮 実験開始前に、研究趣旨の説明に加え て、実験が始まってもいつでも途中でやめることがで きること、本実験で得られたデータは記号化・匿名化 されるため、個人のプライバシーが侵害されることは 決してないこと、データが本実験の目的以外に使われ ることはないことを伝え、文書で同意を得た。また、 データや個人情報は厳重に管理した。参加者には苦痛 を与えないよう十分に配慮されたが、本研究では対象 者の不安を喚起させるGD課題が実施された。実験終了 時には、参加者の気分が落ち着いていることを確認し

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-44 209 -てから終了した。また、実験は認定行動療法士の資格 を持つ教員がいる時間に行うとともに、訓練の際にも 実験責任者の連絡先といつでも中止できることを伝え た。 結果 群と時期を独立変数、各尺度得点を従属変数とした 2 要因分散分析を行った。LSAS- J 得点については、 回避合計得点において交互作用が有意であった(F(3, 33)=5.56, p =.003)。単純主効果の検定の結果、LK群 において、ベースラインから介入後にかけて得点が減 少していたが、他の群では有意な変化がみられなかっ た(Figure1)。 FFMQ得点については交互作用が有意であり(F(3, 33)=6.095, p =.002)、AT群において、ベースラインか ら介入後にかけて得点が有意に上昇し、MF群において 有意傾向で上昇していた。また、CT群においては得点 が有意に減少していた。 GD時のPANAS得点とSUD得点については時期の主効果 が有意であった(ポジティブ感情:F(1, 33)=8.069, p =.008;ネガティブ感情:F(1, 33)=40.937, p <.001; SUD:F(2, 66)=71.487, p <.001)。ポジティブ感情 はGD前からGD中にかけて上昇し、ネガティブ感情は減 少していた。SUD得点はGD前、GD中、GD後へと経時的 に状態不安が減少していた。群による効果はみられな かった。 考察 本研究の結果、注意訓練とマインドフルネス瞑想 は、マインドフルネスを高めることはできたが、社交 不安の強さに変化をもたらさなかった。一方、LK群で は、GD場面における感情や不安に変化がみられなかっ たが、社交不安の回避が減少していた。慈悲の瞑想を 行うことで、対人場面に不安を抱えながらも、回避せ ず臨むことができるようになると考えられる。Clark & Wells(1995)のモデルに基づく注意訓練では回避は 低減しなかったことから、単に外部に注意を向けるだ けでは不十分であり、他者へ焦点づけた介入が効果的 であることが示唆された。 慈悲の瞑想による他者へ焦点づけた介入は、社交不 安傾向者に対して以下の 2 つの効果をもたらしたと考 えられる。 1 つ目は、他者配慮などの他者指向的な感 情は、向社会的行動と正の関連が示されていることか ら(登張, 2003)、利他的な感情に基づく向社会的行 動が回避に代わる行動となり得ると考えられる。 2 つ 目は、他者に注意を向けることで自己注目が減り、外 部の情報を入手できるようになると考えられる。

参照

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