The /aPanese
.
loumal 〔ゾPSI戸chonomic Science 2009,
Vol.
28、
No,
t,
44−
58原
著
論
文
聴覚 事 象 関連 電 位
へ の神 経
デ
コー
デ
ィ ング
の適
用
一
統計 的識 別手
法
の比
較
と脳
波分析 方
法 と し
ての評 価
一
1}康
直
諸
上
嵜
井
松
之
*・小
幸
*・
小
冨
荒
豊
博
コ
愕
額市
和
子
昭
幸
噌
ー
粗
邦
山
隆
秀
隆
本
森
晃
松
大
充
が
炉
崎
宏
敦
此
井
巻
眇
豊 橋技 術 科 学大 学* ・理化学 研 究所*2 ・作 新学 院 大学*3 科 学 技 術 振 興 機 構*4・
北 海 道 大 学*5・
モ川 大 学*6彦
*3司
*6Neural
decQding
of
auditory
event
−related
potentials
一
Comparison
of
statistical −classification
methods
and
characteristics
as
an
EEG
analysis
method一
Yasuyuki
INouE
*,Akitoshi
OGAwA
*2,Kota
ARAI
*,Hidehiko
MATsuMoTo
*3,Naoyuki
MATsuzAKi
*,
Sachiko
KoYAMA
*4,
Atsuhito
ToYoMAKI
*5,
Takashi
OMoRI
*6,
Takashi
MoRoToMI
*3,
Hiroshige
TAKEIcHI
*2, andMichiteru
KITAzAKI
*Toyohαshi Lfniversit3,
of
TeChnotogy
*,
RIKE ハ,
T *2,
Sakushin
Gakuin
乙/itiversity’
*3,
ノ∬
RIS
TEX
*4,
H{〕lekaido
Universit
」,*5,
and Tama9 αwα 伽 魏 宮s勿*6
Our
aim was to predict the duration of a stirnulus,
which was a tone or a gap in a cor ユtinuoustone
.
from auditory event−
relatedbrain
potentials(neuraldecoding
>.
We
also aimed to co【npareperformances across statistical c ]
.
assification methodsfor
prediction、
Wo found that thedecoder
performance was signincantly higher than the chance leve1
.
The nalve Bayes method 、vithprincipal
−
comporlent−
analysis prcprocessing (PCA
十NB
classification )and the support−
vector−
mach ine method (
SVM
classi 丘cation )revealed a higher perforrnance than the naive・
Bayes
method(
NB
classification )alone,
Erroneous
classifications wered
[stributed inthe
neighborhood ofthe
correct class.
It is suggested that theS
▽M methodhas
an advantagefor
its
high
performancewithout parame しer optimization
,
whi !e the PCA l NB methQd has an advantage for c ]arifyin.
g brain representation.
Statistical
c]assification is thus shown tobe
an effective rnethod for analyzing anEEG and cou 工
d
be
usefulfor
investigating
neural representatior ユof sensorylrlput
,
Key words :event
−
related brainpotentiaL,
neurat decoding,
nalve Bayes mcthod,
principal compo−
nent analysis
,
supPort vector machineは じ め に
事 象 関 連 電 位
ある特 定の刺激や事 象に同 期 して生 じる 過 性の脳 電
位の変 動は事象 関連 電 位 (
Event−Related
brain
PQten・
tial;以降
,
ERP
)と呼ば れ る。
ERP
計 測は標 準 的な脳 波計を用い て 行 うこ と がで き る た めに
,fMRI
やMEG ,
NIRS な ど他の脳 機 能 計 測 手 法に比べ て装置の導入 や 運
*
Toyohashi
University
ofTechnology,1−1
Hibarigaoka,
Tempakucho ,
Toyohashi,
Aichi
441−8580
1)本
研 究は
,
文部科 学 省グロー
バ ルCOE
プロ グラム 「イン テ リジ=
ン ト セ ン シ ン グの フ ロ ン テ ィ ア (豊 矯 技 術科 学大学)」(井上 )
,
科 学 技術 振興 機構 社会 技術研究開 発セ ンター
研究開発プロ ジェ クト「音 声 言 語 知 覚機構の 解 明と英 語 教 育法へ の展 開 」〔小山),お よ び 日産科学 振 興財団特別 研究 (北 崎)の助 成を受けて遂 行さ れ た。
井 上
。
他:聴 覚 事 象 関連電 位へ の神 経デコー
デ ィ ン グの適 用45
用が容易で あ る。 また,
計測 時における身 体 的な拘束が 少な く,
時間 分解能が高い とい う特長が あ る。 神経 生蹕 学や 生 理 心 理学の研究に おい てERP
は人 間の内 的 状 態 を 調べ るた めの ッー
ル と して利用 さ れ る。
例え ば,
刺 激 閾に近い聴 覚 刺 激の検 出課題 におい て,
実際の信 号の有 無にか かわらず 実 験 参 加 者が確 信を持っ て刺 激があっ た と判 断し た場 合の み P300 と呼ば れ るERP 波形が出現 し,
刺 激に対 する注意の強さによっ てP300
の振 幅が増加す るこ と が報 告さ れて い る(
Squires,
Squires,
& Hi1−
lyard,1975
;Sommer ,
Matt,
&Leuthold.1990
)。 こ れは実 験 参 加 者の主 観 的な確 信 度や注 意を反 映 した成 分で あ る と考え ら れ, 適 切な 課題や行動 指標と組み合わせ る ことで脳における情 報 処理過 程を調べ ること が可 能であ る。 ERP 成 分
ERP
波 形はい くつ か の変 動 (頂 点や谷 )で 構 成さ れて いる。 この変 動の大き さ (振 幅)や出現 す る までの 時間 (潜 時 ) は刺 激や実 験 操 作に よ っ て選 択 的に変 化 する こ と か ら,
計 測さ れ た ERP 波形は そ れぞ れ異な る複数の 神 経 細 胞 集 団の活 動に 由来す るい くつ もの 成 分が時 間 的, 空間的に重複した もの と考え ら れて い る。
ERP
を用いた研究で は, 実験に よ り得ら れ たERP
波 形につ い て特 定の刺 激や事 象,
実 験 操 作に よ っ て惹 起さ れ る特 徴的な頂点成分の同定を行い, その振幅や潜 時, 極 性を記 述する。
瑣点同定法と呼ば れ る こ の分 析 手法 は,
刺 激な ど に反 応 し て選 択 的に出 現 する頂 点 成 分の潜 時や振 幅,
極性の違い か ら,
そ れ らの成 分の 認知 的な意 味を考 察する もの である。 し た がっ
て,
頂 点 同 定 法によ るERP
の分 析は,一
定の潜 時で明 確な振 幅 を 示 す 電 位 活動に反 映さ れ た脳にお け る処理過程を 記 述 するの に適 する。 しかし,
頂 点同定 法で は,
明 確な頂 点 が 現れ ない処 理 過 程 (e.
g.
,
Picton,
Woods,
&Proulx,
1978)につ い て,
十 分に記 述で きない
。
さらに,
電 位 変 化の個 人 差が大 き い 場合や,
眼 球 運動・
筋 電・
アー
チ フ ァ ク トな どによ り 十 分な加 算デー
タ数 を 得られない場 合,
アル フ ァ波 など の 背 景 脳 波 が 大 きい場 合に は,
頂 点 成 分の抽 出,
振 幅や 潜 時の計測が 困 難 にな ると考え ら れ る。
主 成分分析を 用 い たERP
の 分析 ERP 成 分の 同 定やアー
チ フ ァ ク ト除去 を 行う ための ヒ=一
リステ ィ ッ クな分析手 法の ひ とつ と して主 成 分 分 析を適 用す る ものが あ る。 その方 法で は,
複 数の ERP 波 形か ら その振 幅の変 動を説 明する ための主要な要 素を抽 出 する (Donchin ,1966;Donchin &Heffey
,
1978;投石
,
1990
)。 主 成 分 分 析は,
多 変 量間の 相 関に基づい たデ
ー
タの要 約が 目 的で あるこ と が 多いが,
ERP 研 究で用い ら れて い る 主成 分分析で は
“
2
成 分法による因 子 分 析”
を意 味 すること が多い (Picton,
Bentin,
Berg,
Don−
chin
,
Hillyard,
Johnson ,
Miller,
Ritter
,
Ruchkin ,
Rugg
,
&Taylor,
2000 ;入 戸 野,
2005 )。 っ まり,
ERP を異なる複 数の成 分 (因 子)の組み合わ せで構 成さ れ る と 仮定し, 時 間的ま た は空間 的に重畳 し た ERP 成分を抽 出 するこ と が目 的で ある。 以 ドに
,
時 系 列 脳 波へ の主 成 分 分 柝 適用法の概 要を示 す。
ERP
を構成す る各 時 刻 点の電 位を軸と す る多 次 元 空 間を想 定 する と,
それぞ れの ERP 波 形は こ の多 次 元 空 間にお け る一・
点と して表さ れ る。 実験 参 加者, 計測部位,
実 験 条 件にっ い て集め ら れ た ERP 波 形の デー
タ集 合を こ の 多次 元 空間に表 現し, すべ て の デー
タの分散が最 大 にな る よ う な新しい軸を求め ることで,
第1
主成 分を得 る。
こ の軸に対して 直 交し,
かつ,
残っ た分 散が最 大に な る よ う な軸を第2
主成 分, 第3
主成 分と次々 と求めて い く。
実 際に は,
ERP の各 時 刻 点に関 する分 散 共 分 散 行 列を作成 し,
その冏有 値と固有ベ クトル を 求め るこ とで 計 算が行わ れ る。 主成 分 分 析の結 果,
元のデー
タに含ま れる情報の大 部 分は寄与率の大 きな上位の主 成 分に集中 す る た め, ヒ位の主成分だ け を用い るこ とで情報の要約 が 行わ れる。
ERP
研 究に お け る 主成分分 析 (主成分 法に よ る因 子 分 析 ) で は,
こ の主成 分を元の ERP の変 動を説 明 する 潜 在 的な要 因と考え る。
つ ま り,
各 条件で得ら れた個々 のERP
波形は,
これ らの要 因 住 成分 )の足 し合わ せに よっ
て構 成さ れる。 それ ぞ れの主成 分に対す る成 分 負荷 量の波形的な形 態 を 調べ,
個々 のERP
波 形にこれ らの 成 分が どの程度 含ま れて い る か を検 討するこ とで 時間 的 に重 畳 した ERP 波 形から実 験 操 作に由 来 する成 分 を抽 出し,
個人 差に よ る ERP 波形の変 動や実験操作と無関 係なアー
チ フ ァ ク ト の除 去を行 うこと がで きる。
神 経デコー
デ ィング 近年,
大 き く 進展を遂げて い る ブレ イ ン コ ン ピ=一
タイ ン タフェ
ー
ス (Brain−
CQmputerInterface
;以 降,BCI
) は,
心 理 的な活動を 反 映 する脳 活動デー
タ を直接 利 用して機 器を操 作する技術で ある 〔Wolpaw,
Birbau−
mer,
Hectderks,
McFarland ,
Pecleham,
Schalk,
Don −
chin,
Quatrano,
Robinson,
& Vaughan,
2000 ;Wol・
paw
,
Birbaumer,
McFarland,
PfurtscheHer,
& Vau・
gh且n,
2002 ;Mason & Birch,
2003 )。 BCI は,
脳 活 動に随 伴 する信 号を取り出し
,
そ の信 号を統 計 的 識 別 手 法・
機 械 学 習で解 析・
解 釈 するこ とに よっ て身 体 動作な し に46
基礎心理学研究 第28
巻 第 ].
号BCI で は判 別 分 析やサ ポ
ー
トベ ク ター
マ シ ンな どの高 度なパ タ
ー
ン識 別手法 が 用い ら れてお り,
雑昔 除去処 理 な どに独 立 成 分 分 析や wavelet 解 析 等の特 微 抽 出 手 法が併 用 さ れ て い る(Blankertz
,
Muller,
Krusicnski,
Schalk,
Wolpaw ,
Schlog1,
Pfurtschel
工er,
Millan,
Schroder,
& Birbaumer,
2006 ;Wolpaw et aし2002 )匚
,
医療分 野におい て は, 患者の状態 を
.
検査す るた め に脳 波の計 測が行わ れて おり
,
医 師や専 門の技 師がこれ らの脳 波 を 調べ ることで異 常の 有 無な どの 診 断を行う、
,
こ の よ う な脳 波鋸 :別を自動 的に行う た めの 分 類シス テムが研 究されて お り
,
強 迫 性 障 害・
統 合 失 調 症や うっ 病の 診 断 (Hazarika,
Chcn ,
Tsoi,
&Serge
ゴew,
1997;Sabeti,
Boostani
,
Katebi,
& Price,
20071 Kalatzis,
Pillouras,
Ventouras
,
Papageorgiou,
Rabavilas,
& Cavc}uras,
2004
〕, て ん か ん 性 異 常 脳 波 の 判 別 (Walczak
&Nowack
,
2001 ;Adeli,
Zhou,
& Dadmehr,
2003)へ の 利用 が 可能で あ るこ と が報告さ れ てい る。
これ らの統計 的識別 手 法
・
機 械学 習を利 用して脳 内の情 報 表 現 (brain representation )を明 らか に しよ う と す るパ ラダ イム と して
,
神 経デコー
デ ィ ン グ が提 案さ れて い る (Haynes & Rees,
2006 ;神 谷,
2006 )。Kamitani &Tong
(2005,2006
)は,fMRI
を用いて視 覚野の 活 動を 調べ る ことで実 験 参 加 者の 見て い る線 分の方 位や運 動 方 向 を 高い精 度で推 定 するこ と,
そ し て相 反 する線 分の方 位や運動の方 向の う ち注 意を向けて い る ものを推定で き る こと を報 告し た、
,
方 位の推定 は V3a や MT よ り もV1 やV2
で 正 答 率が高 く,
運 動 方 向の 椎 定はV
ユ.
よ り も V3a や V4 で正答 率が高いな ど,
視 覚 皮 質の部 位に よっ て デコー
ディ ン グl!l
答 率が異な ることか ら, 脳に お け る 情報 表現解明の新しい研究手法と なる こと が指摘さ れて い るc ま た,Shige
皿 asu,
Miyawaki ,
KamiLani,
&Ki−
tazaki (2008 )は
,
視 覚情 報に 基 づ く進 行 方向 知覚 (Heading )時の fMRI 画 像を用い て デコー
デ ィ ン グ を行 い,
V1,
V2 およ び V3 の デー
タを用い る場 合に は,
網 膜 上の オ プテ ィカル フ ロー
に基づ く進 行 方向が推 定される の に対 して , hMT 十 の デー
タ を 用 い た場 合に は,
眼球 運 動に依 存し ない進 行方 向が推定で き るこ と を示し た。 他 }こも,
顔 とそ れ 以外 の 物 体の カ テ ゴ リ識別 (Haxby,
Gobbini
,
Furey,
Ishai,
Schouten,
& Pietrini,
200上),
カー
ドゲー
ム 時の 嘘 識 別 (Davatzikos,
Ruparel,
Fan ,
Shen
,
Acharyya,
Loughead , Gur,
& Langieben,
2005
),
視野闘 争 時の知 覚 内 容の識 別 〔Haynes
&Rees,
2005
),
奥 行 き知 覚 の 識別 (Preston,
Li,
Kourtzi,
&Wclchman ,2008
)な ど がfMRI
を用い て行わ れて い る。こ れ らの結果は
,
複 数ボ クセ ル に表現 さ れ るfMRI
イメ
ー
ジン グデー
タを 脳 活 動パ ター
ンと して分 析 し,
刺 激や 知 覚 状態 との 相 関か ら識 別 関 数を作 る こ とに よ る
(Yamashita
,
Sato,
Yoshioka,
Tong,
& Kamitani,
2008 )
。
本 研 究の 目 的一
方,
脳 波に対 する神 経デ コー
デ ィ ン グの適用 は,
fMRI
研 究に比較する と, 前 述 し た臨床 的な もの以 外は それほ ど行 われて いない。 fMRI にお ける ボク セル の 空 間パ ター
ン に対 応す るの は,
脳 波で は時系 列 波 形で あ る と考え ら れ る。 そこ で,
本 研 究で は,
脳 波の時 系 列パ ター
ン に神 経デ コー
デ ィ ン グ手 法の 適用 を試み る,
, 脳 波 が時 聞 分 解 能に優れ る点を考 慮し,
異な る持 続 時 間の純 当刺 激,
ある い は連 続 純 首の途 中に無 音 区 間がある音 刺 激を聴取 して い る と きの脳波を計測し,
その 持 続 時 間 長 あ るい は無 音 区 間 長を脳 波か ら識 別 すること を試み た。 また,
提 示 刺 激とデコー
ディ ン グ結果 との対 応を 分析 し たc な お, 本研究で は,
脳 波 計 測 時に おい て実 験 参 加 者 の注 意を音に向けさ せず,
受 動 的な聴 取に と ど め た。
ま た,
音の長さにつ いての知 覚実 験 (知覚識別 )は実 施せ ず,
神 経デ コー
デ ィ ングの識 別 対 象は,
物理刺 激の艮さ と した。 その た め, 本稿にお け る神 経デコー
デ ィ ング と は,
計 測さ れ た脳 活 動に基づ い て実 験 参 加 者に与え ら れ た感 覚 人 力を推 定 する こと を意 味 する=
バー
ス ト的な純 音刺激について は, 刺激の オンセ ッ ト (立ち上が り)とオ フ セ.
ソ ト (消失)に反応 した ERP が 生じる こ とが報 告さ れ て い る (Hillyard & Picton,
1978;Scherg,
Vajsar,
&Picton,1989
;Pantev,
Eulitz,
Hamp −
son , Ross
,
& Roberts,
1996}n こ の ERP は音 響 環 境の変化 を捉え る処 理 を 反 映し てい る と考え ら れ て お り(
Pan −
tev et al.
,
1996 ;Watari,
Lutter,
Chen,
& Maier,
2007 ),
そ の発 生 源や牛 理 的な機 序 〔Hari
,
Pelizzonc, Makela
,
Hanstrom ,
Leinonen,
&Lounasrnaa,
1987;Scherg
eta
.
1.
,
1989 ;Pantev et al.
,
1996;Noda,
Tonoike,
Doi,
Koizuka
,
Yamaguchi,
Seo,
Matsum 〔〕to,
Noiri,
Takeda,
& Kubo
,
1998),
発達過程 〔Watari et al.
,
2007 )に関す る議論が行わ れて い る。 こ れ に対 して, 連 続 純 音中の 間 欠 的な無音に対する聴 覚ERP
は ほ と ん ど調べ ら れて い ない。 連続す る 純音 中の無 音 区間は,
主 観 的 には同じ長 さの純 音と同 様ひ と ま と ま りの 「図 」と して知 覚さ れ る が,
音 響 的には純 音の オフ セ ッ トと オン セ ッ トの組み合 わぜ で あるt,
そ の ため,
無 音 区 問が短け れ ば複 数の ERP 成 分が重 畳 し て観 測さ れ る可 能 性が あ る。
神 経デコー
ディ ング を 用い た脳 波の分 析で は,
脳 波につ い ての 事 前 知識を用い る こ と な く, 計測さ れ た脳 波デー
タ中に識別 対象にっ い ての情 報が どの程 度含ま れて い る か を識別性井 上
・
他:聴 覚 事 象 関 連 電 位へ の神 経デ コー
デ ィ ングの適 用47
能と して評価す る。 した が っ て, 本 研 究で 用い る よ うな 刺激か ら惹 起さ れ,
頂点同定 法の適用が難しい 複数の ERP 成 分が重 畳 する事 象や ERP 成 分の変 化が緩 慢な事 象の分 析に有効で あ る と考え ら れ る。
小川・
小山・
大 森・
諸 富 (2006)は,
ERP 波 形に統計 的識別を用い るこ と で頂点 同定法と併 用 可能な ERP の 特徴分析手 法を提案して い る。 特に,
学習 率な どのパ ラ メ タ設 定の必 要が な く,
非専 門家で も容 易に使用 可能なナ イ
ー
ブベ イ ズ法 (Domingos
&Pazzant,1997
;Duda ,
Hart,
& Stork,
2000 )を 聴 覚 ERP デー
タに適用 し,
統 計 的 識 別 器の正 答 率か らERP
分類のた めの特徴量 を抽 出で きる可 能 性を示し た。
本 研 究で は,
小 川 らの提 案し た ナイー
ブベ イ ズ法を発展させ, ナイー
ブベ イ ズ法と主 成 分 分 析を組み合わ せ た分析,
お よ び,fMRI
を用いた デ コー
デ ィ ングにおい て一
般 的で あり,
識 別 性 能が高い と さ れ る サ ポー
トベ ク ター
マ シ ン (Vapnik ,1995
;Bur・
ges,
1998)を用い た分 析 も行い,
3種の統 計 的 識 別 手 法 間の 比較を行っ た。 ま た, 脳波の計測部位に よ る正答 率 の 違いを調べ る こ とに よ っ て,
脳 活 動の空 間 的 分 析を 行っ た。 これ らの結 果を踏ま え, こ の よ う な デコー
ディ ン グ手 法の適 用で脳 波か ら明らか にな る脳にお け る情報 表現 を検討 し た。
ERP
計 測 実 験2
種類の聴 覚 刺 激に対 する聴 覚 ERP を 計 測し,
各 刺 激の持 続時間の違い に よる ERP 成 分を調べ た。 方 法 実験参加者 実 験の 目 的 を 知 ら ない成 人25
名 (女性 13名,
男 性 12名,
平 均 年 齢22.
04 歳 )が実 験に参 加 し た。 すべ ての実験 参 加 者は右利きで正常聴力 を有してい た。 刺 激 2種 類の聴 覚 刺 激,
すな わ ち,
持 続 提 示され た 純 音 (500Hz,
65dBSP
)に閙欠 的な無 音を挿 入し たGAP
刺 激 と無 音 状態 か らバー
ス ト的な純 音 を提 示す るTONE
刺 激 を 用い た。GAP
刺 激におけ る無 音 区 間とTONE
刺 激 に お け る純音 バー
ス ト区 間の 持 続時間 は ど ち らも8,16,
32,
64,
128,
256ms の 6水 準と し,
各 刺 激 の オ ン セ ッ トとオ フ セ ッ ト に は 5ms の ラ ン プ (た だ し,
持 続 時 間 81ns の と きの み,
3ms の ラン プ)を付けた (Figure
1
)o 装置 脳 波の計 測には,
ディ ジタル脳 波記録 計 (日本 光 電製, NeurofaxEEG −1100
)を用いた。 電 極を国際10−20
法に墓つ くFz,
Cz,
Pz,
T3 ,
T4
の5
ヵ所と左 右の 乳 様突起 (Ml ,
M2 )の2
カ所の 計 7ヵ所に配 置し,
鼻尖 を基 準 電 極と し た(Figure 2) 。電 極 間 抵 抗はすべ て 5k Ω 以下と し, 標 本化 周波数 1,
000Hz
で記録した。 記録時 にO.
16
Hz
か ら30Hz
の帯域 通 過フ ィ ル タ を適 用し た。 手 続 き GAP 刺 激と TONE 刺 激は,
それぞれ別の実 験ブロ ッ ク と し た。
実験 参 加者は防音室内で ヘ ッ ドホ ン を着 用し,
聴 覚 刺 激 (GAP 刺 激ま たは TONE 刺 激 )を 聴 取し た。 約 1,
000 s の実験ブロ ッ ク内において, 6 種 類の持続時 間 (8,16.
32,64,128,256ms
)を持っ聴覚 刺GAP
Condition
榊
三
1
黼
8 _256ms
1
羅騨
騨
齶
1
!
「
〜
ー
1
TONE
Condition
一一
→
囃
點
PS 鵬仁
蠍
Figure 1
.
Schema of auditory stimuli.
GAP
stimulus (Top ) wasintermittently
temporal short gap on continuous pure tone
.
TONE
stimulus (Bottom
>was toneburst
onquietude
,
Both
conditionshad
sixlevels
of
durations
(8,
]6,
32,64,
128,
256 ms ).
Onset
and offset of tones were smoothed by ramp
.
Nose
Tip
(Reference
)toid
) Figure 2.
Arrangement of electrodes on parti−
cipanVs scalp
.
Participants
’
electroencephalograms were recorded at seven e 】ectrodes based on IO−
20system
,
Reference electrode was putted Qn48
基 礎心 理学研 究 第28
巻 第1
号GAP
Conditior1
§
一
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ONE
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5
〔
〉 虱)
O 鳴 コ 赳一
Ω 蟇 く 50
5
コ
(
〉 畏)
O 層 コ 醒一
Ω ∈ く職
囲…
…
剛
、
}
V
麒羹
50 5
ア
(
〉 互)
ω
コ
コ
謂 五 ∈ く 5D 5
(
〉 互)
碧 コ 裾 五 E く 50
5
コ
(
〉 這)
コ
コ
扈 五 E くFz
…
…
Gzi
…
一 一 一16ms −
64ms
−
256ms 一
50
5
(
〉 試)
o η コ ρ = ユ 巨 く 50
5
〔
〉 員 V Φ で コ ゼ【
ユ E くT4
一 一 一一
100 0 100 300 50D−
100 0 10D 300 500−
10D O 10D 300 500Lateney(ms ) Latency (ms ) LatenGy(ms )
Figure
3.
Results
ofERP
recordings.
激を 2
.
8s か ら3,
2s の ラ ンダム な間 隔で ラ ン ダム順に そ れぞ’
れ 60 回 繰 り返し提 示 し た。
音に対 する注 意が脳 波 に与え る 影 響 を統 制す る た め,
実験 参加者は同 時にス トー
リー
のあ るアニ メー
シ ョ ン映 画の音 声を消し た映 像 の み を鑑 賞 し,
音に注意 を向けな い よ う教 示さ れ た。
分 析 計 測さ れ た各 実 験 参 加 者の脳 波をオ フ ラ イ ンで 処 理 した。
7 ヵ所の 各 電 極か ら計 測 さ れ た脳 波に っ い て,
持 続 時間6
水 準ご と に刺激 提 示 前100ms
か ら提示 後500ms
まで の デー
タ区 間を60
試行 分取り出して 加 算平均を行っ た後,
刺 激 提 示前100ms
か ら提示直 前ま で の平均電位を 全体か ら差 し引い た。 な お,
各試行の脳 波を目視し,
ま ば た き な どに起 因 するアー
チ フ ァ ク トが 混 入 し た試 行は加 算 平 均に加え な か っ た。
結 果GAP
刺 激 条 件お よ びTONE
刺 激 条 件にっ い て,
計沮rI 部 位ご とに求め た実 験 参 加 者 25名のERP
の総加算 波 形を,
簡 便のた めに持 続 時 間に関して 16,
64,
256ms
の 3水 準だ け図 示し た (Figure 3)。
GAP 刺 激 条 件は持 続 時 間に よ っ て ERP 波 形の形 態 が 異なっ た。
すべての持 続 時 間で共 通 した成 分として潜 時 100 エns 付 近 に陰 性成分 が観 察さ れ,
また,
持 続時 間 ご と に潜 時の異 な る成 分が 現 れて お り,
波 形の 形 態はそ れ ぞ れ異なっ て い たD−一
方,
TONE
刺 激 条 件は持 続 時 問 に よ るERP
波形の形態の 差 が小さ かっ た。
GAP
刺激条 件と同 様に TONE 刺 激 条 件で も潜 時100
ms 付 近の陰 性 成 分 (M1,
M2 で は陽 性 )が共 通して観 察さ れ,
そ の振 幅は GAP 刺 激 条 件よ りも大きか っ た。
持 続 時 間に よ る井上
・
他:聴 覚 事 象 関 連 電 位へ の神 経デコー
デ ィン グの適 用 49 頂点成分の 振 幅や潜時の差は小さく,
波 形はほぼ同 じ形 態で あっ た。
聴
覚ERP
の統 計 的 識 別分析 こ こ で は,
“
ナイー
ブベ イズ法”
,
“
主 成 分 分 析とナ イー
ブベ イ ズ法 とを 組み合 わせ る方 法”
,
およ び“
サ Pt一
トベ ク ター
マ シ ン”
の 3種 類の統 計 的識別 手法を用い て,ERP
デー
タか ら聴 覚 刺 激の持 続 時 間 を 統 計 的に識 別 す ること を 試 み た。
ま た,
その 過 程で抽 出さ れ るERP
を 構 成 する複 数の成 分にっ い て,
聴 覚 刺 激の持 続 時 間との 関 連につ い て分 析した。
さ らに,
3手 法の識 別 性 能を比 較 検討し た。 入 力デー
タ 脳波計 測実 験に よ っ て得ら れ た計 2,
100 サ ンプ ル (聴 覚 刺 激2
条 件 ×7電 極×持 続 時 間 6 水準×実 験 参 加者25
名 )のERP
波 形 (500
次元,
時 系 列デー
タ ) を識 別 器に与え た。GAP
刺 激 条 件とTONE
刺 激 条 件は,
別 個 に識 別 器 を設 計 し,
分 析 し た。
識 別 器の作成 神 経デ コー
デ ィン グで は,
計 測さ れ た神 経 活 動を入 力 して実験参加者の知覚な ど の心理状態を出力 する識別 器 と呼ば れ る関数を作成す る。 識別 器は識別対象を最も効 果 的に分 類 する ように入 力デー
タを統 計 的に分 析 して作 成す る。 こ れ を識別 器の学習と呼ぶ。 本研究で用い た識 別 器は,
聴 覚 刺 激の持続時 間の違い (8,
16,
32,
64,
128,
256ms )を 分 類 するよ う学 習 を行 っ た。
また,
GAP 刺 激 とTONE
刺激は異 な る識別 器を作 成 し た。 っ ま り,
GAP 刺 激の識 別 器は無 音 区 間の長さ を,
TONE 刺 激の 識別 器は純 音バー
ス トの長さをそ れぞ れ 推 定 し た。 各 識別 器へ の入 力デー
タ は,
脳波計測実験に よっ て得 られた電 極・
刺 激 持 続 時 間・
実 験 参 加 者 ご と計1
,050
サ ンプル (7
電極×持続 時 間6
水準×実 験 参 加者25
名) の ERP 波 形 (500 次 元,
時 系 列デー
タ)で あっ
た。 た だ し,
後 述 する よ うに,
識 別 性 能の評 価に は Leave−One ・
Out
交 差 検 定 法を用い た。
っ ま り,24
名の デー
タ を用い て 識 別 器を作 成 (学 習 ) し,
残 り1名の デー
タを 識 別 (テス ト) するこ とを 25 名の全デー
タに対 して行っ た。
識 別手法 識別 器 の性能は.
一
般 に 入力デー
タ に依存 し, 入力デー
タ が識 別 対 象に関 する情 報 を ト分に含んでい る場 合,
識 別 器は機 械学 習によっ
て その 情 報を抽 出し,
良 好な識 別 結 果を得るこ と がで き る。 本 研究の場 合,GAP
刺 激 条 件 ま た はTONE
刺 激 条 件の 聴 覚 刺 激の 無 音 区 間/持 続 時 間の違いを反 映 する情 報 (成 分 )が ERP 波 形に多 く含 ま れて い る ほど識 別 器の性 能は高 くな ると考え ら れ る。
しか し,
識 別 器の性 能は学 習ア ル ゴ リズム によっ て も変 化す る。 学習ア ル ゴ リズム によ る識別性 能の違い を検 討 する た め,
ナ イー
ブベ イ ズ法とサ ポー
トベ ク ター
マ シ ン の2
種 類の識 別 手 法に基づ く識 別 器 を独 立に作 成 し,
両 者の性能を 比較し た。 ま た,
ナ イー
ブベ イズ法にっ いて は,
前 処 理と して主 成 分 分 析を導 入 す る新 手 法を検 討に 加え た。 ナ イー
ブベ イズ法 ナ イー
ブベ イ ズ法は,
入 力デー
タ に対す る独 立 性の仮定 とベ イ ズの定理 に某つい た単 純な識 別 手 法であ る(
Domingos
&Pazzani,1997
;Duda
et al.
,
2000 )。
学 習バ ラ メ タ は各ク ラス に属 する サ ンプル デー
タの平 均と分散だ けで あ り,
概念的には各クラス の 平 均 ERP 波 形をテ ン プレー
トと して学習 し,
未 知の ERP 波形と テ ン プ レー
トとの類 似 度に基づい て識 別を 行 う もの で あ るe 実 際に は、 識 別は未 知の入力デー
タに 対す る各クラス の対 数 尤 度 を 比 較 して 尤 度が最 大の ク ラ スを分 類 結 果と して 出 力す る。 各 電 極のERP
波 形デー
タ ごと に尤 度が求ま るた め,
全 体で の識 別 性 能を調べ る 際には各 電極の対 数尤 度の合 計値 (尤度の 積)を用いて 分 類を行い,
計 測 部 位ご との識 別 性 能を調べ る際に は そ れぞれの尤 度を用い て分類を行っ た。 し か し,ERP
波 形の よ う な時 系列デー
タ は時間的に 接 近した要 素 聞の相 関が大 き く,
独 立 性の仮 定が満た さ れ ていない ため, ナ イー
ブベ イズ法の入 力デー
タ と して ERP 波 形は必ず し も適 切で はない。
そ のた め,
本研 究で は入 力デー
タ の前 処理 とし て主 成 分 分 析を導 入 する手 法 を提 案す る。1,
008
サ ンプル (電極7
ヵ所×刺激長6
水 準×実 験 参加 者 24 名 )の ERP 波 形にっ い て 時 間 的な主 成分 分 析を 適 用 する こ と に よっ て,ERP
波形の時系 列 デー
タを主成 分得点デー
タ に変 換し,
上位次元の デー
タ だ けを 識 別に使 用し た。
な お,
主 成 分 分 析の後に回 転な ど は行わ な かっ た。 この よ うに して変換し た主 成分 得点 は無 相 関で あり,
独 立性を仮 定す る ナ イー
ブベ イ ズ法の 入 力デー
タとして は よ り適 切と考え ら れ る。
主 成 分 得 点 を 入力デー
タ と す るナ イー
ブベ イズ法の識 別は,
概念的 に は それぞれの ク ラス に含 ま れる各 主 成 分 (≒ERP
成 分)の大きさをテ ンプレー
トと して学 習し,
これ らの成 分の 含 有量の 違いに基づ いて識 別する もの である。.
主成 分 分 析の導 入によ る識 別 性 能の変 化を調べ る た め に,
ERP 波形デー
タを直接入 力デー
タ と して用い る従 来の ナ イー
ブベ イズ識 別 器と比 較 した,
、
サ ポー
トベ ク ター
マ シ ン サ ポー
トベ ク ター
マ シ ン (SVM )は,
近 年,
パ ター
ン認 識の分 野に お い て注 目を集 め てい る識 別 手 法であり,
ク ラス間の マー
ジン (距離) が最 も大 きく な る よ うに分離 平 面の 学習が行わ れ る50
基礎 心理学研 究 第 28巻 第 1号 (Bishop,
2006 )。 マー
ジン最 大 化 とい う明 確な基 準に 従っ て学 習が行わ れ る た めに サ ンプル デー
タ に対す る 過 学 習が起こ りに く く,
未 知の入 力デー
タに対 する汎 化 性 能が高い と 言 わ れて い る。 本来,
サポー
トベ ク ター
マ シ ン は2 ク ラス の分 類 問 題 し か扱うこと がで きないが,
通 常の 2 ク ラス識 別 器 を 複 数 組み合わせ る ことで 多ク ラ ス識別 器を実 現す る方法が提 案さ れて い る。 よく用い ら れ る方 法は,
ク ラス ご とに そ の クラス に属 する デー
タを 正 例,
そ れ 以外を負 例と す る サポー
トベ ク ター
マ シ ン を別 々 に 学 習さ せ る
1
対 多 他 方 式 (one−
versus・
the−
rest method )で あ る (Vapnik,
1998)。
た だ し,
複 数の サ ポー
トベ ク ター
マ シ ン識 別 器を用い て未 知の 入 力を識 別す る 場 合,
それ ぞれの予 測 値が矛 盾し同 時に複 数の クラスに 割り当て ら れ る可能「生が あ る。 そのため,
与え ら れ た入 力デー
タに対 して それ ぞれのSVM
識 別 羅の予 測 値を比 較 し,
最 も大 き な 予 測値を 出 力 し た識別 器 を 全 体の予 測 値 と して用い る(Bishop,2006
>。 本 研 究で は,1
対 多 他 方 式の 多ク ラ ス サ ポー
トベ ク ター
マ シ ン の実 装で あるSVMmuttictass
(Joachims
,2008
)を用いて識別を行っ た。 カー
ネルは最 も単 純な線 形カー
ネル と し た。
分 離 平 面の 決定は学習デー
タに対する誤分 類を 比較 的許 容す るソ フ トマー
ジン (Bishop,
2006
)によっ て行い,
学 習パ ラ メ タ の最 適 化は行わ なか っ た。
識 別 性 能の評 価Leave
−
One−
Out 交差 検 定 法に よ る正答 率を用い た。
これは,
サ ンプ ル デー
タ の う ち ひ とつ をテ ス ト デー
タと して 取り除き,
残 り を学 習デー
タ と して識別 器を作成す る。
そ の後,
テス ト デー
タを識 別 器に入 力した際に正 し い クラス に分 類さ れ る か ど う か を調べ る方法で あ り,
学 習デー
タとテ ス ト デー
タ は独 立で ある。 こ の手 続き を,
すべ てのサ ンプル デー
タをテス ト デー
タ とする場 合に関 して,
す な わ ちサ ン プル デー
タ の数だ け繰り 返 し適 用 す る こ とで,
サ ンプ ル デー
タ の.
般 的な 正答 率を評 価する こ と がで き る。 本研 究で は,
実 験 参 加 者25
名の ERP デー
タの う ち 1名の デー
タ を 除 外 し,24
名のERP
デー
タ で識 別 器を作 成 (学 習 )し た後,
残り1
名のERP
デー
タ (無 音 区 間 長 /持続時 間 長6水準) を識別 器に入 力し た際に そ れぞ れ 正 しい ク ラス に分 類さ れるか を調べ た。 各 無 音 区 問 長 /持 続 時 間 長に対 応 する ERP デー
タがそ れぞ れ正 しい無 音 区 間 長 /持 続 時 間 長に分 類さ れ た比 率 (nf25 )を正答 率と し て識 別性 能の 指標と し た。 結果 識別性 能 評 価 従来のナ イー
ブベ イズ法で作 成 した識 別 器 (以 降,
NB 識 別 器 ),
主成 分 分 析を前 処理に導 入 し,
.
.
ヒ位 15次 元の主 成 分 得 点を用いたナ イー
ブベ イ ズ法で 作成 した識 別器 (以 降PCA
+NB
識 別 器 ),
サ ポー
トベ ク ター
マ シ ンで作 成し た識 別 器 (以 降 SVM 識 別 器 )の3
種 類につ いて,
持 続 時 間6
水 準の正 答 率 を 平 均した 全 体 的 傾 向を調べ た (Figure
4)D 次 元数の選択にっ い ては 後 述 する。 片 側二項 検 定に よ る統 計 的 白’
意 性 を 検 討 する と,
正 答 率22.
67
% (25名×6
水 準の 150 サ ンフ ル デー
タ中,34
サ ソプルが正 答 )以 上で チ ャ ン ス レベ ル (1f6・
=
16、
67
% ) よ り有 意 に高 い と判断 さ れ る (p
く.
05
).
NB
識 別 器 の TONE 刺 激 条 件を除い て,
[E
答 率は チャ ン ス レベ ル より 有 意に高か っ た。TONE
刺 激 条 件よ り もGAP
刺 激 条 件 におい て正答 率が高かっ
た。 TONE 刺 激 条 件とGAP 刺 激 条 件の正 答 率の差 を 識 別 器 ごとに x2検 定で検 討 し た 結 果,
い ずれの識 別 器において もGAP
刺激 条 件の正 答 率はTONE 刺 激 条 件の正 答 率に比べ て 有 意に大 きか っ た (NB
識別 器: X2=12.
61,
NB
⊥PCA
識別 器 : X2;25,
93,
SVM
識 別 器:X2=18.
49 ,
すべ てdf=1,
p
く.
05)。 また,
識 別 手 法に よ る正 答 率に差が GAP 刺 激・
TONE 刺激の両方におい て認 め ら れ た (GAP
刺激: κ2π17.
22,
TONE 刺 激:X2=
7.
14,
と もに df=
2,
p<.
05)。
ラ イ アン 法に よ る多 重 比較の結 果, GAP 剌 激条 件と TONE 刺激 条 件の いずれの場 合も,NB
識 別 器に比べ てPCA
⊥NB
識 別 器の ほ うが正 答 率は有 意に高く (p<.
05),
主 成 分 分 析の適 用に よっ て ナ イー
ブベ イズ法の識 別性能が向上し た。
PCATNB 識 別 器とSVM 識 別 器につ い て は止答率 に差は ほ と ん ど な く,
識 別 性 能に違い は なかっ た。
識 別 手 法 (3
種 類)と刺激条件 (GAP
刺激TONE
刺激 )に 100 5 0 5 7 52 」 o 擡 芻 “コ δ 甲 o も o 辷 oO 承 0Naive
Bayes Naive Bayes Support Vecter
without PGA with PCA MaGhine
Figi
ユre 4.
Rcsults of ERP classificatien forGAP and TONE condi しion
.
Nalve
Bayes without PCA classifier (Left)and
Support
Vector
Machinc classifier (Right}
learned
origjnalERP
data
(500
factors
).
Nai
’
veBayes
with PCA c】assifier (Ccntcr
> leamed princjpa! component scores (15井上 ・他:聴覚事 象関連 電位へ の 神経デコ
ー
ディ ングの 適用 51 よ る正 答 率の違い を検 討する た め,
逆 正弦変 換法に よ る 2元 配置 分 散 分 析 (森・
吉田,
1990)を行一
・た と こ ろ,
刺 激条 件につ い ての 主効果が有意 であ っ た(X2・
−9.
54,
df
=
−1,p
<.
05>が,
識 別 手 法にっ い て の主 効 果は有 意で は な く(X2・
=3.
96,
(tf=
2,
p =.
13>, 交互作用もなか っ た (X2=0.
21,
df=2,p =
=
.
90
>り TONE 刺 激 条 件・
GAP 刺 激 条 件と もに ほぼ同 様の識 別 結 果を得た が,TONE
刺激 条 件は全体に正答 率が低 か っ た。
ま た,
TONE 刺 激 条 件はGAP
刺 激 条 件に比べ て持 続 時 間ご との識別 成績の 違い が小さ く,
脳 波の計 測 部 位ご とに識 別 器を作 成 して分 析 を 行っ た結 果 も.
部 位 に よ る識別成 繽の 違い はGAP
刺 激 条 件よ り小さ か っ た。 そのた め,
以降の分 析はGAP
刺 激 条 件の結 果の み につ い て記 述 する。 各 無 昔区 間 の識別 性 能 と 誤答パ ター
ンGAP
刺激条 件の各無 音 区 間 長に対応 し たERP
デー
タ が入 力さ れ た 際の識 別 器の反 応 傾 向を調べ て,
持 続 時 間の違い に対 す る識 別器の分類 精度と 誤答パ ター
ンを検 討し た。 Figure 5 にPCA
+NB 識 別 器の結 果を示 す。 片 側二 項 検 定に よ る統 計 的 有 意 性 を 検 討 すると,
正 答 率32
% (25
名の サ ンブ ルデー
タ中,
8 サンプルが [E
答 ) 以 上で チ ャ ン ス レ ベ ル よ り も有 意に高い と判 断さ れ る(p
く.
05〕。 すべ ての 無 音 区 間 長 条 件につ いて,
正答 率はチ ャ ン ス レ ベ ル より有 意に高かっ た。
各 時 間 長 条 件の正 答 率 の 差をx2 検 定で検 討し た ところ, 正答率は無 音 区間 長 によっ て異なっ て い た (X2=
25.
86,
df=
5,
p〈.
05
)D ライ 100 75 50 25 = o 顎8
田 。o 。o 』 O 承Stimu
[usDuration
:8ms
Correot
,一
_ _ 一
_ _ _ .
1
送
9
与
00 32 64 128 256Predicted
Duration
(ms ) 100 75 50 25 に o 軍8
}
士 。。 詔6
誤Stimulus
Duration
:16ms
CorreGt
↓_ _ _ .
.
一
一
一
.
.
ま
鯉 昏
00 32 64 128 256Predicted
Duration
(ms ) 100 5 0 5 7 5 2 匚 O一
習 口 O 弔一
の りり σ一
〇 ま Stimulus Duration:32msCorrect
」°
↑
畳〜
9
与
00 32 64 128 256 Predicted Duration(ms ) 100 5 0 5 7 5 2 ⊆ o 爭8E
ω 総6
承 Stimulus Duration:64ms CorreGt↑
亘〜
9
巨
00 32 64 128 256 Predicted Duration(ms > 100 50 5 7
5 2 匚 O
一
制 眄 O 甲一
の 90 目」一
〇 翠 StimulusDuration
:128msCorrect
tp
≦
璽
一_
、.
.
一
一
.
_
一
一
.
.
00 32 64 12B 256Predicted
Duration(ms ) 100 75 50 25 = 2 届 o 輕 。, 自。 』 O 器 00 StimulusDuration
:256ms
岬
Correct
一
短
〜
9
窘
一一
一
一一
一一
一一
一
_
.
、.
32 64 128 256 Predicted Duration(ms ) Figure5.
Performance of dassiβersfor
each stimulusduration.
Outputs
of6・
classPCA
十NB
c!assifier were plotted,
When the predicted duration was identicai to the52 基 礎 心理学研 究 第 28巻 第 1号 ア ン法によ る多 重 比較の結 果