解決策を法的に議論(検討)し困難な問題 に立ち向かうために、用地担当職員の資 質向上につなげる! 1 背景 ◆当たり前の話ではあるが、説明責任が 大変重要となっている ◆地権者・地域住民・関係者と良好な関 係を保持しながら、現場の対応を進める ◆用地職員は法令、諸制度などの幅広い 知識が必要である ①地域住民の権利者 意識の高まり ②地域・住民ニーズ の多様化・複雑化 『 『法令研究会法令研究会』』のコンセプトのコンセプト 用地部用地企画課用地部用地企画課 ③様々な情報の氾濫 ④公務員や公共事業 に対するイメージの 悪化 ②法令研究会の 実施 →関係職員、外部講師(弁護士)と討議・ 意見交換 解決策となるものを導く 2 進め方 →年に3回程度開催 用地取得業務では時折、解決困難な問 題が発生! ①事例収集・問題提起 ③情報共有 用地職員のスキルアップ →1回の開催につき3題程度を議論
「法令研究会」を開催して
~用地職員の資質向上に向けた取り組み~
恩田
富明
用地部 用地企画課 (〒950-8801 新潟県新潟市中央区美咲町1-1-1) 北陸地方整備局用地部では、平成21年度から、「用地職員が現場で直面する解決までの道 程が大変難航かつ難解となる様々な事例に対し、法的な解決に向けた方策の検討を行い、有効 かつ具体的な解決策を導き出す事を目的」として、弁護士をアドバイザーとした「法令研究 会」を開催し、用地職員の資質向上を図っている。その活動内容について報告を行う。 キーワード 法令 資質向上 法的整理1.はじめに
公共事業を推進するにあたり、公共用地の確保は重 要な業務の一つである。そのため、土地所有者や建物 等の所有者などの理解と協力が必要不可欠であり、用 地職員は現場の最前線で各関係者との良好な関係を構 築すべく日夜奮闘している。 しかしながら、昨今の用地職員を取り巻く情勢はど のような状態であるかといえば、 ①地域住民の権利者意識の高まり ②地域・住民ニーズの多様化・複雑化 ③様々な情報の氾濫 ④公務員や公共事業に対するイメージの悪化 等の要素が挙げられるように、迅速な用地補償業務を 推進するに当たって、非常に厳しい情勢であるといえ る。更に、近年では地権者等に対する説明責任も重要 な課題となっており、用地職員の資質・スキルは一層 重要なものとなってきている。2.取り組みの目的
このように、用地職員を取り巻く情勢が厳しくなっ ていく中で、用地補償業務は、土地の買収や住宅の移 転、法人であれば移転に伴う営業の休止といった各関 係者の生活に直接影響を及ぼすものである。 このため、時として、補償に関する双方の見解の相 違、各関係者からの一方的な要求又は行動、または用 地職員の認識不足による補償内容の説明不足等が原因 となり、用地交渉が難航し、解決困難な問題に発展す る場面に直面することもある。そのような解決困難な 問題への対応も含め、事業の進捗に影響を及ぼさない よう適切に用地補償業務を実施していくためには、法 令や諸制度などの幅広い知識が必要であり、用地職員 自らがそういった知識や見識、法律解釈能力を養って いくことが必要となってくる。 以上の必要性を踏まえ、用地部では、用地職員が法 令や諸制度などの幅広い知識や見識を習得し、法律解 釈能力を養うことを目的として、平成21年度に「法 令研究会(以下「研究会」という。)」を立ち上げ、 用地職員の資質向上を図っているところである。 図-1 「法令研究会」のコンセプト3.活動報告
(1)研究会の進め方 研究会では、各事務所において現場で難航している 事例や、今後、発生が想定される難解な問題を取り上 げることとし、それらに対して有効で具体的な解決策 を導き出すこととしている。 研究会の進め方としては、各事例に対して法的な問 題点を整理し、関連法令についての解釈及び手続きに ついて討議を行い、法律的に望ましい解決の方向性や 具体的な方策について整理することとしている。事例1 不実告知について
●事例の概要 営業用店舗(飲食業)が支障となり、構外移転の 必要が生じた。国の担当者Bは、浄化槽補償費の積 算内容を熟知せず、相手方Aには工事で国が浄化槽 を撤去するので、撤去費は補償費に含まれないと説 明した。 その後、物件移転補償契約を5,000万円で締結し、 3,500万円の前金をAに支払った。Aは建物を撤去 し、国の検査官が明渡検査を行ったが、浄化槽未撤 去を指摘され、補償費の積算内容を検証したところ、 浄化槽撤去費100万円が積算されていた。 Bは誤説明を詫び浄化槽撤去をAに求めたが、A は補償費に浄化槽撤去費が含まれていないことを確 認してから契約したのであり、これは重要事項の不 実告知にあたるとして、契約の取消しもしくは撤去 費の追加補償を求めてきた。 ●論点 (1)国は、Aが契約に関する義務の一部を履行(建物 撤去)したため、契約取消しが不可能と考える がどうか。 (2)誤説明に係る過失は認めざるを得ないが、補償額 は適切であり、Aに財産的損害は与えていない ことから、民法第709条は適用されないと考える がどうか。 (3)Bが誤った情報をAに提供したことに対する不法 行為性を問われた場合の対応はどうすれば良い か。 ●職員の対応状況 ・浄化槽以外はすべて撤去済であることから、契約 は解除しない。 ・補償金そのものは適切に積算されているため、追 加補償を認められないことから、Aに浄化槽撤去 を求めている。 各事例については、用地職員を発表者として事前に 割り当て、論点を検討させ、その検討結果について当 日発表させることとしている。 また、研究会には用地職員だけではなく、法律の専 門家である弁護士をアドバイザーとして迎え、整理し た問題点に対して、法的な見地からの意見やアドバイ スを受け、解決の方向性を探ることとしている。 このような討議等をすることにより、発表者となっ た用地職員や参加した職員にとって、法令や諸制度な どの幅広い知識や見識を習得でき、法律解釈能力を養 うことのできる場となっている。 当日の討議内容や論点については、報告書としてと りまとめ、広く用地職員に対して情報の共有化を図る ため、イントラネットに掲載して周知している。 (2)研究事例 研究会は、平成21年度より年3回ずつ開催してお り、平成23年度までに計9回の開催に至っている。 事例は1回の開催につき3題程度取り上げることとし ており、これまで29の事例について研究を行ってき た。 これまで取り上げられた主な事例は、次のとおりで ある。 ・過払いとなった補償金を回収する方法について ・境界確認の法的性格について ・移転期限後の土地に存する補償物件の処理について ・高齢者等との交渉にあたっての委任について ・所有者と借家人が係争している建物の補償について ・確約書の有効性について ・交渉の中断により損失が発生したとの主張に対して ・契約日の整理及び有効性について ・新たな入居人の対応について ・正しい相続人以外と契約してしまった事例 ・曳家工事の瑕疵について ・相続未登記建物の移転補償の契約相手方について ・不実告知 ・用地測量時の代理立ち会いについて ・借家人補償の契約解除について 図-2 「法令研究会」の様子 ここで、研究会で実際に検討された事例の一部を紹 介する。●望ましい法的整理の方向(研究会としての結論) 論点(1) ・浄化槽撤去に関する文言が契約書類に明示されていないこと、補償金の積算書類が内部資料であることか ら、Aは浄化槽撤去費を確認できない。したがって、Bが浄化槽撤去費を含まないと言った以上、当事者間 では含まない内容での契約成立と考えるのが自然(すなわち、契約上は取り消せない)。この場合、浄化 槽撤去費は国負担。 論点(2) ・民法709条では、損害が発生し、それが故意又は過失に基づくものであれば賠償することとされているこ とから、相手方に実際、どんな損害が発生したのかという問題になる。説明が不適切ではあったが、補償 額は適切に計算されており、財産上の損害は出ていないため、損失の要件の中に、生じた消費者損害とい うものはないということになりかねない。その場合、国の不法行為の疑い、故意の過失はあるし、保護さ れる利益はあるが、Aにとっての損害がない、という考え方になり、民法709条は適用されない。 論点(3) ・撤去の要否等、後日紛争になりがちなことは特記事項とし明記することも1つの方法。 ・総額5000万円のうち浄化槽撤去費用は割合いとして小さく、消費者契約法第4条の重要事項には該当しない と考えられる。また、契約取消しとなったとしても、再契約額は結局のところ適正な5000万円となる。し たがって、相手方には再契約のメリットがない。 ・上記のように仮に再契約となったとして、Aが浄化槽撤去費相当額を他に転用していた場合、その額が損害 として認められ、国の不法行為性が問われる可能性はある。 ●関係条文・判例 ・消費者契約法第4条(消費者の契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し) ・民法第709条(不法行為による損害賠償) 図-3 事例1の解説 担 当 者 B 5,000万円にて補償契約締結 ②補償額に浄化槽の撤去費は 含まれていないと説明。 ①補償額に浄化槽の撤去費が含ま れていないことを確認して契約。 しかし、実際には 浄化槽の撤去費も 含んだ契約内容! ③重要事項の不実 告知にあたるとし て、契約の取消し 若しくは撤去費の 追加補償を国に要 求! ③重要事項の不実 告知にあたるとし て、契約の取消し 若しくは撤去費の 追加補償を国に要 求! 相 手 方 A