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徐放性制癌剤の臨床応用に関する研究 : とくに切除不能膵癌に対する応用

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(1)

原 著

臨麟。4灘籍63劉1言〕

徐放性制癌剤の臨床応用に関する研究

一とくに切除不能膵癌に対する応用一

東京女子医科大学 消化器外科学教室(主任:羽生富士夫教授) ナカ ムラ ミツ ジ

中 村 光 司

(受付 昭和63年6月1日)

Cli皿ica豆Study. of Anti・cancerous Controlled−release Capsule with Special Reference to its ApPlication to

Inoperable Cases of Pancreatic Cancer

Mitsuji NAKAMURA

Department of Surgery, The Institute of Gastroenterology(Director:Prof, Fulio HANYU)

Tokyo Women’s M6dical College

The author has studied the clinical effects of controlled−release capsule of Mitomycin C(MMC)in

41cases of inoperable pancreatic cancer in which MMC capsules were surgically placed on or embedded in the pancreas. Even after administration of 40−150 mg of MMC(mean 75 mg), blood chemistry and complete blood count remained within normal limits.Judging from the concentration of

MMC in the blood, the effect of controlled−release was thought to be satisfactory. In 140ut of 23 cases

(60.9%),severe pain, due to invasion of cancer, was reduced for more than 2 months after

administration of controlled−release capsules of MMC. Histology revealed degeneration of the tissues in which MMC capsules were administered.

As far as drug preparation is concerned, there still remain some problems to be solved. However, it is quite possible that the above mentioned therapy could be more effective for the pain and other

symptoms of patients with inoperable pancreatic cancer.

緒 言 近年,種々の画像診断の進歩はめざましく,他 の消化器癌は早期診断,早期治療により著しく遠 隔成績の向上をみるに至ったが,こと膵癌に関し ては未だ早期診断の機会は少なく,外科治療の対 象となるものはstage IIIやstage lVのかなりの 進行癌である. ちなみに,1968∼!986年の当センターにおける 膵癌の切除率を示せば,膵頭部癌368例中153例 (41.6%),膵体尾部癌131例中31例(23.7%),膵 全体癌76例中0例(0.0%)であり1),他の消化器 癌,胃癌,結腸・直腸癌等に比し明らかに低率で ある. 膵癌に対する治療は,切除不能膵癌が大半を占 め,しかも膵癌特有の頑固な癌性癒痛のため患者 の闘病はさらに苛酷なものとなっている.した がって膵癌治療にあっては早期診断法の確立が急 務であると同時に,切除不能膵癌の治療法もまた 重要な課題である.このように,切除不能膵癌に 対し施行される姑息手術,放射線療法および化学 療法等のいわゆる集学的治療はpalliative ther− apyであり,画一的な治療法としては確立し難く, 更に創意工夫が加えられてしかるべきである.か かる観点から著者は腫瘤の占居部位によっては適 用が可能で除痛効果が期待できる徐放性制癌剤に 関する基礎的臨床的検討2)3)を進めてきたが,

(2)

Mitomycinを応用した2凸型に関し,切除不能膵 癌に対する局所化学療法として徐放性制癌剤の臨 床的検討を行ったので,以下にその成績を示し若 干の考察を加える. 対象と方法 1.対象 対象は1979年1月∼1983年3月に当センターに 入院し,いずれも著しい局所浸潤,もしくは他臓 器転移を伴い切除不能であった膵癌41例である. 41例の性差は男性27例,女性14こ口あり,年齢は 36∼81歳,平均59.3歳であった,表1に対象の内 訳を占居部位別の進行程度並びに術中照射の併用 等について示した.まず,占居部位別にみると膵 全体癌14例,膵頭部癌(含む:膵頭体部癌)14例, 膵体尾部癌13例である.これを膵癌取り扱い規 約4)による腫瘍の大きさ別でみると,T4が36例, T3 が5例である.T3の5例は遠隔転移または上腸間 膜動脈,総肝動脈への直接の癌浸潤のため切除不 能となったものである.また,遠隔転移は肝転移 10例,腹膜播種1例,肝転移+腹膜播種5例となっ ており,全例stage IVの進行癌であった.術中照 射を併施したものは膵全体癌5例,膵頭部癌2例, 膵体尾部癌5例の計12例であり,いずれも2,500 radの照射線量であった. 2.方法 1)徐放性制癌剤 製剤の本質は担体ポリマー中に制癌剤を分散さ せた複合体であり,その製剤学的検討は嘉悦ら5), 山田ら6》7)によりなされた. 本研究に用いた製剤はMitomycin C(MMC) を10%ポリメタクリル酸メチル含有,ガラス性ポ リマーに混合し,一78℃,60Coのγ線を1×106rad 照射することによる重合によって製したもので, 次の2種の三型とした(写真1). (1)結紮留置用

14mm径,4mm厚;結紮用に1mmの2孔を

穿ったボタン状製剤.1製剤中MMC 20mg含有. 病巣への接触面以外はコーティングし,二二面の み薬剤が放出. (2)刺入留置用 0.8mm径,7mm長;先端が尖型の針状製剤. 表1 切除不能膵癌に対する三目性制癌剤投与症例 T分類 遠隔転移 占居部位 症例数 T3 T4 肝 腹膜 d種 肝+?券d種 術 中 ニ射合併 膵全体癌 14 0 14 4 0 1 5 膵頭部癌 i含膵頭体部癌 14 3 11 4 1 2 2 膵体尾部癌 13 2 11 2 0 2 5 計 41 5 36 10 1 5「 12

7 /

、 !

噛聯騨噸撫籔購嚇蜘繭一

写真1 徐放性MMC製剤 上;ボタン状製剤20mg/製剤,下;針状製剤5mg/製 剤.

1製剤中MMC 5mg含有.全表面より薬剤が放

出. 製剤を37℃の蒸留水中に静置の条件下,5日間 で約70%,15日間で約95%のMMCが放出する爽 気曲線が認められており6),ボタン状製剤の,イヌ を用いた前臨床試験においても,その照臨性が確 認されている2), いずれの製剤も日本原子力研究所・高崎研究所 において製造され,供給された.また,本研究に おけるMMCの定量はすべてE. coli B株を被検 菌とする薄層カップ法による生物学的検定法に よった. 2)投与方法 製剤の投与は,開腹しいずれも試験開腹,姑息 的手術,術中照射施行時に行った.病巣を精査の 上,先進部とみなしうる正常組織との境界近傍を 投与点と定め,ボタン状製剤は,徐放面を病巣表 面に密着させるように縫着,針状製剤は,外套針

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表2 占居部位別投与法 姑 息 手 術 p 式 投与製剤および投与量 占居部位 症例 胃空腸吻合術 空置的胃切除術 ボタン状製剤 針状製剤 両剤併用 単開腹 のみ 胆汁内官p付加 のみ 胆汁・膵液熨鴛t加 その他 合併 ニ射 40mg 60mg 80mg 100mg 5∼100mg 105mg∼ 5∼100mg 105mg∼ 膵全体癌 14 3 6 1 1 1 2 5 2 5 1 1 i30mg) 1i100mg) 1 i75mg)

@1

i75mg) 1 i150mg)

@1

i130mg) 膵頭部癌 i含膵頭体部癌) 14 5 2 4 3 2 3 4 3 1 i45mg)

@1

i65mg) 1 i120mg)

@1

i135mg) 膵体尾部癌 13 4 6 1 2 5 3 1 7 1 i75mg)

@1

i65mg) 計 41 7 17 3 1 6 7 12 8 1 16 4 3 1 4 已4 血小板 40万 20万 WBC 10,000 5,000 ロ ね 10 血小板△ WBc i lo20。 i 旨 3 6goo l … 、,。i : 1 38 18 白血球。 8000 6400 5000 ア 27 1㎜ 7蜘

1\響

4 6300 署ll 写真2 術中徐放製剤投与の実際 を応用して,専用に試作した穿刺針により,病巣 へ刺入する方法によった(写真2). 投与量は,病巣の形状,広がりに応じ一定しな かったが,MMC量として40∼150mg/例(平均75 mg/例)投与された.表2に,剤型と投与量,姑息 手術術式,術中照射等を占居部位別に示した. 成 績 1.臨床検査値への影響 ボタン状製剤投与後,定期的に臨床検査がなさ れた15例(投与量:MMCとして40∼80mg/例)の AL・P 20 10 GOT 50 25 術前 0 術後1W 2W 測・P△

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GOT o L[旧罵 3W ゆ

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術前 0 術後1W 2W 3 W 図1 臨床検査値への影響(ボタン状徐放剤投与15例) 推移を図1に示す. 血液検査では,血小板数は減少傾向が認められ たが,白血球数には変動なく,血液生化学検査に おいては,1例にアルカリフォスファターゼの軽 度上昇を認めた以外は変化を認めなかった, 針状製剤が投与された4例(投与量:MMCと して30∼100mg/例)の臨床検査値の推移を図2に

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血余板 40 XlOl/mm9 20 w&c 1騨1 5000 WBC 血小板 30 17 5 7000 血小板△ 白血球o 18 110GD 6000 19 1200D 57DO 2500 2800 17 840G ア000 5000 AI今〕 G8T L茜H

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術前 0 術後1W 2 W 縄lf

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54 5 50 術前 0 術後1W 2W 3W 図2 臨床検査値への影響(針状徐放剤投与4例) 表3 歯痛に対する効果 投与後の落痛の推移 治 療 法 荿A痛例投与前 消 失 軽 減 不 変 型放製剤単独 23 14i60。9%) 7 i30.4%) 2 i8.7%) 術中照射併用 12 6 i50,0%) 4 i33.3%) 2 i16.7%)

計 35 20i57.2%) 11i31,4%) 4i11.4%)

1×iD一コμ9/・2 5 4 発熱,抗生物質投与

l123456曇日

OP 図3 全身血中MMC濃度の経時的変化(ボタン状 MMC製剤80mg投与例) 示す. 血液学的検査では何等変化を認めず,血液生化 学的検査においては,原疾患由来の肝機能障害を 認めるものの,増悪傾向は認められなかった.

2.血中MMC濃度の推移

ボタン状製剤投与後,経日的採血により血中 MMC濃度測定が可能であったのは1例(投与量 80mg/例)のみで,その成績を図3に示す. 投与後5日目まで0.004∼0.005μg/m1が持続 性に推移したが,旧例には5日目以降,他の抗生 物質が投与されたため,その後の推移は追跡でき なかった. 3.臨床効果 1)癌性疹痛に対する効果 全41例中,徐放製剤は投与前に強い癌性落痛を 訴えていた35例における投与後の癖痛の消長を表 3に示す. 不変は4例であり,改善(消失+軽減)は35例 中31例(88.6%)に認められ,落魚の完全消失は, 20例(57.2%)に認められた.徐放製剤単独使用 で認められた改善率は23例中21例(91,3%)であ り,術中照射を合併した場合の改善率は12例中10 例(83.3%)よりもむしろ良好であった. 癌性落痛に改善がみられ,2ヵ月以上の経過観 察がなされた9例の改善効果の持続期間を,合併 照射の有無別に表4に示した. 歯痛の再燃は2∼3ヵ月に多く認められたが, 5ヵ月強改善効果の持続をみた例も認め,合併照 射がなされた例での持続期間が若干長い傾向が認 められたが,検索例数が少なく,更に詳細な比較 検討には至らなかった. 2)胃腸症状に対する効果 全41例中,疎放製剤投与前に食欲不振,悪心, 口区吐,便通異常等の胃腸症状の消長について合併 照射の有無別と更にbypass手術の有無別に解析 し,表5に示した. 不変は7例であり,改善(改善÷やや改善)は 27例中20例(74%)に認められた. 亭亭製剤単独使用で認められた改善率は17例中 13例(76.5%)で,術中照射を合併した場合の改 善率10例中7例(70.0%)とシまぽ同等であったが, 改善例に占める姑息的手術施行例の比率は70.0% と高く,胃腸症状の改善にはbypass手術の影響 が大であった.

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表4 落口改善効果の持続期間 治 療 法 検索 1 痔痛最燃の時期(MMC投与量) Q 3 4 5 6 徐放剤単独 6

一鞭: 1鵠

●(80mg) 術中照射併用 3 →(80mg) ●(40mg) ●(60mg) O再燃 →効果持続中 表5 胃腸症状に対する効果 投与後の胃腸症状愁訴の推移 治 療 法 投与前ン腸症状有愁訴例

十善

やx改善 不 変 徐放製剤単独 17 7〔5〕 i41,2%〔29.4〕) 6〔6〕 i35,3%〔35.3〕) 4〔3〕 i23,5%〔17,6〕) 術中照射併用 10 5〔2〕 i50.0%〔20.0〕) 2〔1〕 i20.0%〔10,0〕) 3〔1〕 i30.0%〔10.0〕)

i100%)27〔18〕 i44%)12〔7〕 i30%)8〔7〕 i26%)7〔4〕

〔〕Bypass手術施行例 表6 切除不能膵癌の長期生存例(徐放性MMC製剤投与例) 手 術 所 見 徐 放 製 剤 診断 肝転移 腹膜播種 局所所見 Stage分類 手 術 術 式 剤 型 蒲^量

MMC

術中.照射 転 帰 1 62 女 膵全体癌 Ho PD T、S、Rp,CH。DU。u3A3N不明 IV 単開腹 針状型 100mg (一) 1年8ヵ月 ?死 2 36 男 膵頭体部癌 H1 Po T4SIRp、CH, cUoVp2 `sm2N不明 IV 胆嚢胆管切除 フ管空腸Roux Y吻合 置的胃切除術(BII) フ転移巣核出術 ボタン型 60mg 2500窒≠р 2年8ヵ月 ?死 3 54 女 膵体尾部癌 H2 PD T4S3Rp3 bH2DUo up2A2 m2 IV 胃腸吻合兼Braun吻合 ボタン型 j 型 130mg (一) 1年3カ月?死 4 71 膵体尾部癌 Ho Po T4S2Rp3bH。DU。V、Aゴ m不明 IV 胆 摘 ボタン型 80mg (一) 1年3カ月 ?死 5 48 男 膵頭体部癌 Ho P。 T4S2Rp3 bH3DU。V3A3 m不明 IV 胆嚢胆管切除 フ管空腸吻合 ン腸吻合兼 araun吻合 ボタン型 40mg (一) 1年.癌死 3)遠隔成績 全41例中,消息不明2例,病理学的検索のない 1例を除く38例の予後を図4に示す. 平均生存月数を転移の有無別で比較すると,転 移のあった14例では6.5ヵ月,転移のなかった23例 は5.5ヵ月と,前者の予後が比較的良好ではあった が,転移の有無にかかわらず,そのほとんどは1 年以内に死亡しており,病理学的に癌と診断しえ たものでは1年以上の生存例は5例に過ぎなかっ たが最長2年8ヵ月の癌死闘を得ている(表6). 4.組織病理学的効果 全41例中,徐放製剤留置部位とその近傍膵組織 の組織病理学的検索が可能だったボタン状製剤投 与例4例における組織病理学的効果を下里らの基 準に準拠したグレード別留置部位からの距離別に 解析した結果を表7に示した.留置部位直下の腫

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肝 転 移 群 (10例) ゆほ

,鴨』L__L___

競気,61

P 24(月)

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24(月) ←†2年9ヵ月 24(月) 転 移 (一.) 群 (23例) 3 6 12 曾 「 i

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・ 1 、 l l l 享 1 ↑ 一 詐 耀㌦1 饗・・G’鷺蓄i 嚇・さ継・ ↑ loヵ月 3 6 9 12 15 18 21 24(月) ただし予後不明2例,病理学的検索のない1例を除く 図4 切除不能膵癌に対する徐放性制癌剤(MMC)投 旧例の転帰 表7 徐放性MMC製剤による部位別組織変成度 組織学的効果判定基準 @ (下里ら) 留置部位 近 位 i1cm以内) 遠 位 i1cm位上) 0 癌に治療効果を全く認 ○ めない 1 癌細胞の変性は認めら ○○ れるが癌胞巣パターン ○○ は破壊はない II 癌細胞変性,癌胞巣パ ターンの破壊がある a) 再増殖し得る可能性の ○ ○○ 強い形態的にかなりよ ○ ○○ く保たれた癌細胞が, ○ 腫瘤の広範囲を占める b) 増殖の可能性のあるか ○○○○ なりよく保たれた癌細 ○ 胞が小範囲に認められ るのみである(全腫瘤 の1/4以下)

m

生残不可能と思われる ○ 高度に変性した癌細胞 のみが認められる IV 癌細胞は全く認められ ○ ない a) 広範な壊死巣を伴う ○○○ ○ b) 主として肉芽組織を伴 ○○ ○ c) 搬痕組織よりなる ○○

《 写真3 ボタン状製剤留置例の摘出標本の弱拡大像 し 上方が留置部位直下,右下に一部粘液形成を残すが癌 細胞は認めない. 亀 写真4 針状製剤を刺入留置した組織像 中央組織欠損部位は針状製剤の留置跡.

瘍組織にグレードIII∼IVのMMCによるとみ

なしうる強い変性が認められたが,1cm以内の周 辺部ではグレードIIの変性度にとどまる所見のみ となり,更に製剤の留置縁よりも1cm以遠の組織 にはほとんど変性が認められなかった(写真3). 針状製剤刺入局所の病理学的検索は1例のみ で,製剤中心性に約5mmの範囲内にグレードIII ∼IVの強い変性が認められた(写真4). 考 察 膵癌を対象とする化学療法の成績は,総じて芳 しいものとはいえない.投与後の膵液中薬剤濃度 は,極めて高値に推移する8》にもかかわらず,膵癌 の薬剤に対する反応が微弱であるのはhypovas− cularである点が指摘されており9),膵実質内,特

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に膵癌組織内への薬剤到達が不良であることがま ず考えられる. 次に膵癌の薬剤感受性が,他の悪性腫瘍に比し て著しく低い可能性が挙げられるが,この点につ いては,乱読γo,初〃勿。を問わずヒト膵癌の薬 剤感受性に関する詳細な検討が未だなされていな いので,否定することはできないが,しかし,た とえ膵癌が特異的に低感受性であったと仮定して も,充分量の薬剤濃度を以ってすれぽ,薬効を発 現せしむることは可能なのではないかと考えられ る. このような観点から膵癌に対して局所化学療法 が試みられるのは当然の帰結ともいえる.膵癌の 局所化学療法として最も効果的なものとしては動 脈内注入療法(動注)が挙げられる.静脈内投与 法(静注)に比較して圧倒的に高濃度の薬剤を標 的部位に送達しうるのが動注の利点であり,持続 注入ポンプによる至適濃度の維持もある程度可能 である.しかしながら,動注に期待しうるのは 丘st passに際しての効果のみであり,灌流による 回収もしくは不活化手段を併用しない限り,静注 時と大差のない全身性副作用を惹起することはし ぼしぼ経験するところである.したがって,膵癌 の動注には,血管作動性薬剤の併用10),局所温熱療 法と透析の併用11)等,検討の余地は未だ多いと思 われる. 膵癌治療における,よりpracticalな問題に,切 除不能膵癌の臨床症状の改善があり,姑息的手術, 放射線療法,動注をも含む化学療法に加うべき何 等かの補助的手段の開発が切望されるところで あった.このような事情から,近年発達が著しい

drug derivery systemの導入が望まれるところで

はあったが,他の消化器癌領域においては,これ

までに食道癌への前波性Bleomycinの適

用12)13),胃癌への製癌剤emulsionの局所投 与’4)15),肝癌へのMMC microcapsule16)または microsphereの塞栓17),油性製剤の動注18),直腸癌 に対するemulsionの適用19)等が挙げられる.膵 癌においては,癌病巣,特にその先進部に直接適 用できるdepot型製剤が適しており,本研究に用

いた徐放性MMC製剤はこの種の検討例では最

初の試みとなった. したがって本剤の適用目的は,あくまでも局所 的な対症療法にあり,臨床効果の判定についても, 一般の癌化学療法に適用される判定基準等に照ら して評価しうるような臨床反応は期待しえず,ま して遠隔成績向上を期待しえぬことは,先に示し たごとくであるが,それでも1年以上の生存例が 5例あり,最長2年8ヵ月の生存例を得ている. 臨床効果として,一過性とはいえ,癌性柊痛の改 善が認められた事実は注目されてよい.すなおち,

如上性MMC製剤の単独使用のみでも23例中14

例(60.9%)に2ヵ月以上の持続期間を有する癖 痛の消失が認められている.一方,消化器症状の 改善にはbypass手術による効果の関与があるた め十分な解析はできなかったが,27例中20例 (74%)に改善が認められており,3例中2例 (66.7%)は底幅性単独使用のみでの改善が認めら れている.しかもこれらの改善効果は,術中照射 を合併することにより更に増強しうる傾向が少数 例での検討ながら認められている. 特に,除痛効果が認められた症例が,手術時の 投与部位,投与量,すなわち癌の浸潤,先進部へ の的確かつ充分量の製剤の縫着,刺入例と一致す るとの印象を得てはいるが,この点に関しては極 めて経験的なものであり,病巣の占居部位,形状, 大きさ,深達度等と製剤の位置,投与量等との相 関については解析を加えるには至っていない.こ のことは病理学的検索成績すなわち本製剤が強力 な局所効果を発揮すると同時にその波及範囲が極 めて限局されているという所見から,薬効の到達 範囲を勘案した投与部位と製剤間の間隔,投与量 の設定が重要であることを示唆している. 以上述べてきたごとく,本研究に用いた徐放性 MMC製剤は,切除不能膵癌に適用する限りにお いては,ほぼ所期の目的を達しえた製剤というこ ともできよう.すなわち,徐放効果という点に関 する限り,本製剤はMMCとして最高150mg/例 (平均75mg/例)投与した例においても,全身性副 作用が特に認められず,1例のみの検討ではある が投与後の血中濃度推移からも徐放製剤としては 優れたものであるということができる.反面,そ

(8)

の材質が,体内残留性であること,製剤表面から の薬剤放出にむらがある可能性,形状,大きさか ら,病巣への適用に限界があること,更に病理組 織学的検索から明らかなごとく,薬剤の組織内へ の浸達が表層にとどまること等の問題点が指摘さ れよう.しかし,これらの問題点のいくつかが解 決されるならぽ,本法は切除不能膵癌のpallia− tive therapyを進めてゆく上で更に有力な治療手 段を提供するものと考察する. 結 論 低温放射線重合を応用して試作された徐放性 MMC製剤を41例の切除不能膵癌に局所投与した 結果,以下のごとき成績が得られた. 1.MMCとして40∼150mg(平均75mg)投与で も臨床検査値への影響はみられず,また1例の投 与後血中濃度推移からも,本剤の徐放効果が確認 された.

2.本剤による治療のみでも,23例中14例

(60.9%)に癌性落痛の消失,3例中2例(66.7%) に胃腸症状の改善がみられ,これらの改善は術中 照射の合併により増強する傾向が認められた. 3.投与局所の病理学的検査により,強い組織学 的効果を認め,その波及範囲は製剤から0.5∼1.O cmであることが確認された. 以上より,本製剤によって切除不能膵癌の局所 的対症化学療法が可能であることを示した. 稿を終るにあたり,御指導ならびに御校閲を賜った 教室主任,羽生富士夫教授に深甚なる謝意を捧げると ともに,徐放性制癌剤を提供して下さった日本原子力 研究所高崎研,嘉悦 勲博士,動物実験を共同して 行った医工研,山田明夫助教授,また,終始御協力を いただいた肝胆膵のグループの諸兄に感謝の意を表 する. 本論文の要旨は第19回日本癌治療学会総会,第17回 日本消化器外科学会総会において発表した. 文 献 1)中村光司,羽生富士夫,今泉俊英ほか:膵癌の外 科的治療成績.臨床成人病 17:1363−1365,1987 2)中村光司,羽生富士夫,高崎 健ほか:切除不能 膵癌に対する徐放性MMCカプセルの使用経験。 癌とイヒ療 7:1824−1831,1980 3)羽生富士夫,中村光司,高崎 健ほか:膵癌への 抗癌剤・腫瘍内投与一特に切除不能膵癌に対して 一.総合臨床 32:2782−2786,1983 4)日本膵臓病研究会編:外科・病理膵癌取扱い規約 (第2版).金原出版,東京(1982)1 5)嘉悦 勲,熊倉 稔,吉田 勝ほか:徐放性腫瘍 カプセルに関する検討.放射線を利用したカプセ ル化技術の検討,人工臓器 8:797−799,1979 6)山田明夫,桜井晴久,羽生富士夫ほか:徐放性抗 腫瘍剤カプセルに関する研究.東女医大誌 49: 481−490, 1979 7)山田明夫,中村光司,嘉悦 勲ほか:徐放性抗腫 瘍剤カプセルに関する研究.医科器械学 50: 89−91, 1980 8)山谷文夫,宮坂圭一,栗原 稔:5−FUの外分泌液 への移行動態に関する基礎的検討,医学と薬学 5 :767−770, 1981 9)真辺忠夫,鈴木 敬,戸部隆吉:膵癌の化学療法 一その問題点および最近の動向一.癌と化療 7: 216−222, 1980 10)石川 治,大東弘明,岩永 剛:膵癌に対する動 注化学療法一血管作動性薬剤による新しい試み 一.癌と化療12:235−244,1985 !1)阿岸鉄三,中沢速和,寺岡 慧ほか:Vascular access portからの制癌剤選択的動注と局所温熱 療法の併用効果.癌と化療13:502−507,1986 12)渡辺 寛:食道癌の手術・補助化学療法一癌手術 根治を強化する三下性珊瑚ブレオマイシンチュー ブ療法の成績一.癌と化療9:2067−2076,1982 13)鎌野俊紀,岸野 洋,水上 健ほか:粘膜展着剤 配合オイルブレオマイシン経口投与による食道癌 治療について.癌と化療 9:1394−1399,1982 14)高橋俊雄,山ロ俊晴,水沢広和ほか:胃癌に対す る制癌剤エマルジョンの内視鏡下注入.消化器外 科5:605−610,1982 15)太田博俊,竹腰隆男,高木国夫ほか:内視鏡によ る制癌剤Emulsionの胃壁内注入.癌と化学 9: 1969−1975, 1982 16)加藤哲郎,玉川芳春,海野勝男:肝腫瘍に対する 塞栓化学療法.MMCマイクロカプセルによる Chemoembolization.癌と化療 11:798−805, 1984

17)Fujimoto S, Miyazaki M, Endoh F et al:

Effects of intra−arterially infused biodegrada−

ble microspheres containing mltomycin C. Can− cer 55:522−526, 1985 18)今野俊光,前田 浩,横山育三ほか:原発性肝癌 の新治療法・油性リンパ管造影剤リピオドールと 親油性高分子制癌剤スマンクスの肝動脈内投与と その臨床成績.癌と二酉 9:2005−2015,1982 19)西岡文三,渡辺信介,森沢康こほか:直腸癌に対 する術前化学療法としての5・Fu Emulsion・5−Fu 坐薬の直腸内投与の臨床成績,癌と化療 5: 1047−1054, 1978

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