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結核家族感染における小児死亡率の研究

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Academic year: 2021

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(東京女医大誌 第25巻 第8号頁345−350昭和30年8月)

結核家族感染におげる小児死亡率の研究

緒 言 東京女子医科大学衛生学教室 (主任 吉岡博入教授) 秋 アキ 田 平 喜 一ト (受t・S 田均030年5月12日) (1) さきに吉岡は,結核患者と同居経歴のある白干 764人についての調査から,同一世帯内で,患者 と接触しない家族群においては,総死亡数が期待 死亡数よIJ小さく,患者と接触した家族群におい ては,家族感染の被害をこうむって,総死亡数なら びに結核死亡数が期待数のそれより大きく,患者 と接触しなV・家族群における死亡率と患者と接触 した家族群における死亡率を訂正死亡率をもとめ て比較すると,患者と接触しない家族群の方が低 (2) く,その差は有意であると報告している。Frost のいうように,ジフテリア,狸紅熱のような急性 伝染病の伝播様式は明瞭であり,数週問の侵襲に よつて罹病するので,家族内の罹病率調査に要す る観察期間は短くてよいが,結核症のような慢性 伝染性疾患では,家族内感染は長期にわたり散発 することが多v・から,患者との接触については長 期間,詳細に観察しなくてはならない。したがっ て慢性伝染性疾患の調査には,特殊な統計学的方 法を必要とする。これは死亡率の暗合も同様であ (z) Cl) る。わたくしはFrost,吉岡等の行ったように, 生命表の方法を応用して,結核患者と同居経歴の ある世帯の小児家族群,市部(高崎および前橋 市)295人,郡部(群馬および勢多郡)439人の死 亡率について観察したので,老の結果を報告す る。 研究方法ならびに資料 昭和25年4月以降4年聞に:,群馬県高崎および前橋 保健所の外来,集団検診の際に溌見された管内の結核 患者ならびに群馬大学附属病院小児科において入工気 胸,化学療法中の患者などをRらんで,とれを発端患 者(Index Case)として,その家族歴を問診して, 発端患者のほかK結核患者が同居していた経歴のある 世帯匹ついて調査したQ

対象としてえらんだ市部295人,郡部439入の家族 郡は,発端患者をのぞいてその家族(両親,祖父母, 伯叔父母および兄弟など)ならびに同居者に旧卒患者 が同居の経歴のある世帯に生れて,患者を構成してい る小児(0∼19才)である。各家族の調査項目はつぎ のとおりである。 i)各家族と患者または結核既往歴のある者とがは じめて接触した日を調査する。 i至)世帯構成以来,生れた者の生年月日を注意深く 調査する。 iii)各家族の継続観察として,出生,死亡(病名, 発病年月日もふくむ),転出および転入年月日につい て調査する。そして対象としてえらんだ小児以外の同 …世帯を構成していた家族の全部についても調査す るQ く ラ 算出方法はFrostの報告に説明飼tているので省 略する。 市部ならびに郡部の昭和25年∼26年の平均総死亡率 と平均結核死亡率を算出し,はじめに患者と同居経歴 のある世帯で,患者と接触をまぬがれた(非接触)家 族群の延入年数(Person−years of life−experience) をもとめ,延入年数1,000対死亡率を算出し,平均総 死亡率をもちいて期待死亡数を算出して,非接触家族 群の総死亡数と比較した。つぎに患者と接触した(接 触)家族群の延入年数をもとめ,平均総死亡率と平均 結核死亡率をもちいて,期待総死亡数ならびに期待結 核死亡数を算出して接触家族群の総死亡数ならび匹結 核死亡数と比較した。さらに非接触寡族群と接触家族 群の延入年数1,000対死亡率をもちい,非接触家族群 と接触家族群の延入年数の和を標準人口として,訂正 死亡数を算出し,これより両前の訂正死亡率をもとめ 比較検討をこころみた。 前述の市部ならびに郡部の平均総死亡率ならびK平 均結核死亡率の算:出にほ,昭和25年国勢調査人口と, 昭和25年および26年入口動態統計の死亡数をもちい た。市部ならびに郡都は保健所行政管轄区分による高

(2)

崎および前橋市を市部とし,群馬および勢多郡を郡部 として観察した。 研究結果 患者と同居経歴のある世帯における小児家族群 の死亡率について,市部と郡部にわけて観察した 結果はつ曽のとおりである。

1.市部

市部295人の家族群はつぎの表のように区分さ れる。 市 部

∵讐接触

出生時障後.

生 死 存 亡 36 1 2io

13 1 9

非接触 計 18 1 264

9i 31

計 .4gl・・g1272951

1)患者と同居経歴のある世帯における非接触 第 1 表 患者と同居経歴のある世帯における非接触家族群の悟入年数,市部期待死亡数

年到賜鯛無死壁高・臨酢蝋酷驚、雍翠籔

1才未副

1 2 2・ 4 5rv 9 10・v14 15−v19 239.0 224.0 205.5 187.0 173.0 710.5 422.5 193.5 計 i 2355,0 2 0 1 0 2 0 1 1 7 家族群の延人年数,市部期待死亡数(第1表) 患者と同居経歴のある世帯における非接触家族 群の年令階級三三人年数,市部期待死亡数を算出 すれば,第1表にしめすとおりである。 総死亡数と市部期待死亡数を比較すると,1才 未満をのぞいては,各年令階級ともほとんど近似 である。市部期待死亡数の1才未満が非常に高い のは,生命表を用いた癒合の選択的な性格を反映 していると思われるから,これを省V・てユ∼ユ9才 問の計につv・て検討するに,その差d二6・1−5 第 2 表 年 令 延人年数 8.37 0 4.87 0 11.6 0 2.37 5.17 1

38.7 1 9.3

6ユ 1.4 6ユ 1.3

5・5 1 laO

42 i O.7

1.4. i 1.O

O.8 i O.3

2.0 i OA−

1 15.4

一・嶋P一

}i」(但し蝿数・謡翫

一・・…88・・一’1 一一・)一}iパα22<・で有 意でなv・。 2)患者と同居経歴のある世帯における接触家 族群の延人年数,市部期待死亡数(第2表) 患者と同居経歴のある世帯における接触家族群 の年令階級別延人年数,市部期待死亡数を算出す ると,第2表にしめすとおりである。 総死亡数は,各年令階級とも市部期待死亡数の 患者と同居経歴のある世帯における接触家族群の肝入年数,市部期待死亡数

1才未満

1 2 3 4 49.5 53.0 60.5 66.5 63.0 死 亡 数 回 待 死 亡 数 総死亡薮一丁} 結該屍丁丁 総死亡数*1籍核死亡数** 4 3 4 3 1 2’ 3 3 1 1 1.92 .32 .37 .37 .27 .0154 .0403 .0163 .0346 .0164 一 84b’ 一

(3)

5tv 9 10tv14 15tv19 285.0 279.0 157.0 3 2 o 3 2 o .40 ・.22 .31 .0627 .0502 .1350

計 1

1013.5 1 20 15 4.18 .3709 *第1表の市部平均死亡率をもちいて算出する。 **市部平均繍亥死亡率をもちいて算出する。 それより大ぎく,0∼19才間の計を比較すれば その差・・一4・・一・5・・は・P…搬.==・7・74>・で 有意である。つぎに結核死亡数と市部期待結核死 亡数を比較するのに,結核死亡数は市部期待結核 死亡数よりはるかに大ぎく,延人年数の計N= 1013.5は大9e v・のに,期待tW np= m=0.3709は小 さいので,これをポアソンの法則により検討する と,r=成功数, P{r≧4}≦0.0006となるから, 当然P{r≧15}<O.OOO6で有意の差がある。 3) 患者と局居経歴のある世帯における非接触 家族群と接触家:族群の延入年数1,000対死亡率と 訂正死亡i数(第3表) 非接触家族群における死亡率と接触家族群にお ける死亡率との比較をこころみるために,各年令 階級別延人年数1,000対死亡率をもちv・,非接触 家族群と接触家族群の各延人年数の和を標準人ロ として,非接触家族群と接触家族群の訂正死亡数 をもとめると,第3表にしめすとおりである。 第 3 表 年 令 】 1 患者と同居経歴のある世帯における非接触ならびに接触家族群の死亡率と訂正死亡数 ...一.一一一一一E…一一.一一「.『.t’t 戟u..….「.一一…’…一一@一.一.』.”’1一一一 :

Lx1;・・一L・・+L・・l M・・,’Mx・;dx・ldxL)

1∵満際劃

劉 襯l

s一一g 1 710.s 1 10rv14 1 1??’i 1 1935 i15・’v19 49.5 53.0 60.5 66.5 63.e 285.0 279.0 157.0 288.5 277.0 266.0 253.5 236.0 995.5 701.5 350.5 8.37 0 4.87 0 11.6 0 2.37 5.17 80.81 56.60 66.l1 45.45 15.87 10.52 7.17 0 2.4 0 1.3 0 2.7 0 1.7 1.8 23.3 15.7 17.6’ 11.5 3.7 10.5 5.O o

計 ). . .?3sor .o 1 iol 3・p. ..L 9.99.8;5. i LXi−ce 1表 導入年数 (非勢一群) Lxゴー第2表 延人年数 (接触群) MXI一一Lxl群の死亡率 (1,000対) 1 9・9 MxrLx2群の死亡率 (1,000対) dxrLxコ群(入年)間の訂正死亡数 dXr Lx2群(豊年)間の訂正死亡数 87.3 を これより訂正死亡率を算出すると,つぎのとお りである。 RCDI一

O5・・・…一293 L磯ヲ晶群

R・砺…灘5・・・・…=・5.・・L磯.接触群 この2群の訂正死亡率間の差25.91−2.93 ・= ・2・98は・一一

ソ一5・4>瓦蒲であ・・

皿.郡 部 郡部439人の家族群は表のように区分される。 1)患者と同居経歴のある世帯における非接触 郡 部

1\馨緯令

生死\.

∴一己

存 亡 接 触 出生時 出生後 60 1 303 8 21 非接触 計 31 16 394 45 6s 1 324 1 47 1 43g 家族群の延人年数,郡部期待死亡数(第4表) 患者と同居経歴のある世帯における非接触塚族

(4)

群の年令階級別延人年数ならびに郡部期待死亡数 を算出すると,第4表のとおりである。 第 4 表 患者と同居経歴のある世帯における非接触家族群の導入年数,郡部期待死亡数 年 令

1才未満

1 2 3 4 5tv 9 10N14 15N19 計 延 入 年数 354.5 323.5 298.0 270.5 247.0 924.5 495.5 185.5 3099.0

総死亡数総

i無知

3 1 8.46

6 1 18.54

2 1 6.71

0 i 0

2 1 8.09

0 i 0

1 ) 2.01

2 i 10.7

16

縄瀟凶・騨騰矧

1 ” 一” 1 59.0 9.2 12.1 7.7 9.5 1.9 0.9 1.2 20.9 2.9 3.6 2.1 2・4 1.8 0.5 0.2 34.2 市部と同様,1才未満を省いて1∼19才聞の計 について,総死亡数と郡部期待死亡数を比較する ・・そ磋・4・・一・3−1.・は・・一

タ一・…

<2で有意でなV・。 2)患者と同居経歴のある世帯における接触家 族群の延人年数郡部期待死亡数(第5表) 患者と同居経歴のある世帯における接触家族群 の各年令階級別訴人年数,郡部期待死亡数を算出 すると第5表のとおりである。 総死亡数は1才未満をのぞいては郡部期待死亡 第 5 表 患者と同居経歴のある世帯における接触家族群の延人年数,期待死亡数 @ ヨ

年令 延入年数i.一...一2,L_立__塾一._」.塑豊野」三延一

___一______ .一」聡.死」芝_数_」_結核死亡数__璽死亡数*」⊃蟹玉豪死亡数登.

1才未満

1 2 3 4 5N 9 10xw14 15tv19 73.0 83.5 93.0 98.e 99.5 550.5 554.0 379.0 計、 1930.5 1 4 6 1 1 5 3 5 26 1 4 5 0 1 蔓 3 4V 4.31 .77 1.!3 .76 .95 1.05 .49 .4.6 0058 .0259 .0297 .0078 .0318 .0716 .0388 .1766 22 9.92 .3880 *第4…琴の郡部平均死亡率をもちいン(算出する。 **郡部平均結核死亡率をもちいて算出する。 数より大で,.9 ・y19才間の計を比較すれば,その 差26一…一・6・・は・一

J漸5・3>・鮪意で

ある。つぎに結核死亡数と郡部期待死亡数を比較 するのに,結核死亡数は郡部期待結核死亡数より はるかに大であるので,市部の揚合.と同様ポアソ ンの法則により検討すると,r=成功数, p{≧4} ≦0.0006となるから,当然P{r≧22}<OLOOO6で 有意の差である。 3)患者と同居経歴のある世帯における非接触 家族群と接触家族群の延人年数1,000対死亡率と 訂正死亡数(第6表) 非接触家族群における死亡率と接触家族群にお 一348一

(5)

ける死亡率を比較するために,各年令階級別延人 馴tw1,000対死亡率をもちV・,非接触家族群と接触 家族群の延人年数の和を標準人口として,非接触 家族群と接触家族群の訂正死亡数をもとめると, 第6表のとおりである。 これより訂正死亡率をもとめると 第 6 表 患者と同居経歴のある世帯における非接触ならびに接触家族群の死亡率と訂正死亡率

1年令

Lx1 LxL, Lx1十Lx2

Mx1

Mx2

dxl dxL, ・才未満「354.・

1 1 323.5

2 , 298.0

3 . 270.5 i

、三,一議:1「

10tv14一 i 4955 15”v19 1 185.5 1 1 言十 3099,0 旨 73.0 83.5 93.0 98.0 99.5 550.5 554.0 379.0 1930.5 427.5 407.0 391.0 368.5 346.5 1475.0 1049.5 564.5 5029.5 8.46 18.54 6.71 0 8.09 0 2.01 10.7 13.69 47.90 64.51 10.02 10.00 9.08 5.41 13.19 3.6 7.6 2.6 0 2.8 0 2.1 6,e 24.7 MxrLx2群の死亡率(1,000同寸) dxrLXl群(早年)間の訂正死亡数 dXL,一LXa群(人年)間の訂正死亡数 5.9 19.5 25.2 3.7 3.5 13.4. 5s7 7.5 84.4一 Lx一第4表 延入年数 (非接触群) LXPt−eg一 5 X 延入年数 (接触群)』 MXI一一・Lxl群の死亡率(1,000対)

・・q「諸5一×・・…一4…Lx醒接騨

・・q一

_難・・・…一…78Lx・群甲虫群

この2群の訂正死亡率間の差16。78一一4。71=一 ・・一.・7はP一一

j』・6>・で鰭である・

i総 括 結核患者と同居経歴のある世帯における市部 295入,群部439人の小児家族群について,非接 触家族群と接触家族群にわけて,統計学的観察を こころみた結果を総括すると,つぎのとおりであ る。 1)非接触家族群の総死亡数は,1才未満をの ぞいた1∼19一間の計では,期待死亡数とほとん ど近似でその差は市部0.22<2,郡部0・415<2 で有意でなv・。 2)・接触家族群の総死亡数は,郡部の1才未満 をのぞV・ては,ほとんど期待死亡数より大で,そ の差は市部7.74>2,郡部5.13>2で,それぞ れ有意である。結核死亡数は,市部,郡部とも期 待結核死亡数よりはるかに大で,その差はポアソ ンの法則によって検討すると,それぞれ有意であ る。 3)非接触家族群と接触家族群の訂正死亡率を もとめて比較すると,市部は非接触寂族群2.93, 接触家族群25.91,郡部は非接触家族群4・71,触 接家族群16.78で,その差は市部5.14>2,郡部 4.16>2で,それぞれ有意である。 結 論 結核患者と接触しない小児家族郡の死亡数は期 待数と有意の差がみとめられないが,患者と接触 した小児家族群の総死亡数ならびに結核死亡数 は,それぞれ期待死亡数より大ぎくその差が有意 であり,と1)わけ結核死亡数はその差が顕著であ る。結核患者と同居経歴のある,同一・一経済状況 の,同一世:帯内の家族の同一人について,非接触 家族群と接触家族群にわけて,訂正死亡率を検討 すると,非接触家族群より接触家族群のほうが死 亡率が高い。 かくて結核死亡は,体質とか,悪い生活環境と V・うような因子にもよろうが,患者の家族からの 隔離が,やはり有効なる撲滅手設であると考えら れ.る。 終りに,御懇篤なる御指導,御校閲を仰いだ恩師吉 岡博入教授,御便宜をいただいた群馬大学医学部小児 科松島正視助教授,群馬県前橋保健所滝沢敏夫所長, 同高崎保健所山口健男所長ならびに両保健所職員諸 氏,特に御援助いただいた松下静子婦長,剣持フサ婦 長をはじめ,両保健所管内の保健婦諸姉に深く感謝の 意を表する。

(6)

(1 ).

1文 献

Yoshioka. H : Mortality of ”Childreti in

Familial Contact with Pu】monary Tube卜

culosis..糾j18755∼760(昭15)

( 2 ) ’Ftost W.H. .: Risk of persons in fatn’ ilial

”contact with pulmonary tuberculosis. Am.

Jour. of ’Public Health. 25, . No.5, (1933)’

参照

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東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

学識経験者 小玉 祐一郎 神戸芸術工科大学 教授 学識経験者 小玉 祐 郎   神戸芸術工科大学  教授. 東京都