143 (43) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
エ グチ レイ キ 江 口 礼 紀 (昭和28 医学博士 乙第1042号平成元年9月22日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
胆管癌切除例の臨床病理学的検討 (主査)教授 羽生富士夫 (副査)教授 武石 詞,降矢 榮論 文 内 容 の 要 旨
目的 胆管癌の治療成績は良好とは言えない.これは早期 例が少ないことにも依るが,的確な外科治療が成され ていないことにも起因する.そこで本研究では,胆管 癌の進展様式および外科治療上の問題点を明らかに し,癌進展領域に対応した必要十分な切除術式を追求 するための指標とすることを目的とした. 対象および方法 1968年1月から1987年12月まで教室で経験した胆管 癌切除例106例を対象とし,日本胆道外科研究会胆道癌 取扱い規約に則し,臨床病理学的検討を行った.なお 胆管外膜に対しては規約では明確に規定されていない ため,線維筋層として扱われてきたもののうち外層に 相当するものを外膜とし検討した. 結果 1)癌深達度が粘膜もしくは線維筋層までのもの8 例ではリンパ節転移を認めず神経侵襲も軽微であった が,外膜に及ぶもの11例ではリンパ節転移を18%に認 め,神経侵襲も64%と高率に認められ,漿膜下層に達 するもの87例ではリンパ節転移は43%とさらに高率に 認められ,神経侵襲も高度であった.2)肝臓側および 十二指腸側断端あるいは剥離面への癌浸潤のため非治 癒切除となった症例が77%あった.3)5年生存率は癌 深達度が線維筋層までのものでは83%,外膜まで及ぶ ものでは44%,漿膜下層に浸潤するものでは17%で後 2者で予後不良であった.4)治癒切除例の5生率は 72%と良好であったのに対し相対非治癒切除例および 絶対非治癒切除例では16%,5%と極めて予後不良で あった.5)癌死例の多くは局所再発であった.6)肝 臓側断端癌浸潤が陰性となるためには肉眼的癌辺縁か ら断端までの距離が限局型で1cm以上,浸潤型では2 cm以上必要であった.7)肝臓側長軸進展最先進部で は粘膜表層を置換していくものが23%あったが,65% は胆管壁内を直接もしくは脈管,神経を介して浸潤し たものであり,壁外が肝臓側の最先進部であったもの が12%あった.8)側方進展最先進部の進展様式は直接 浸潤37%,脈管侵襲32%,神経侵襲31%であった, 考察 胆管癌壁深達度を線維筋層の内層と外層を明確に区 別して検討した報告はなく,一般に壁内胆管癌は予後 良好とされてきたが,リンパ節転移,神経侵襲,予後 の各因子から,壁内胆管癌であっても線維筋層の内層 までに止まるものと外層(外膜)に及ぶものでは臨床 上区別して扱う必要があると思われた.胆管癌の外科 治療上の問題点は切除縁癌浸潤による癌遺残であるこ とに異論はない.これは周囲に肝膵などの重要臓器を 有することに加え,胆管癌には直接もしくは脈管や神 経を介して容易に周囲組織に浸潤する性質があるため と考えられる.治癒切除するには可及的に肝臓側及び 十二指腸側の切除線を追求するとともに,肝十二指腸 問膜や周囲組織を,豊富な脈管や神経を含め一括切除 されることが望まれた. 結論 胆管癌の外科治療上の問題点は切除縁癌浸潤であ り,特に癌深達度が線維筋層を越えて浸潤する症例に 対して治癒切除するためには,癌の長軸および側方進 745一144 展に対応した周囲臓器を含む広範な切除が必要であ り,本研究結果は合理的切除術式を検討する上で有用 な指標となると思われた.