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荒川清秀著『漢語の謎-日本語と中国語のあいだ』

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Academic year: 2021

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43 荒川清秀氏『漢語の謎──日本語と中国語のあいだ』 日本人や中国人は漢語を日常的に目にするが故に、なぜ この漢字の組み合わせからこの意味になるのかなど、疑問 を抱くことはあまりない。 本書は、普段使っている漢語の本来の意味や、その漢語 が生まれた背景に迫るため、漢語が用いられる日本と中国 の 歴 史 や 言 葉 の 成 り 立 ち の 視 点 か ら、 序 章 と 終 章 を 含 め、 計七章に分けて漢語の謎を一つ一つ紐解いている。章立て は左記の通りである。 序章──漢語の日中往来 第一章──「電池」になぜ「池」がつくのか? 第二章──「文明」 「文化」は日本から逆輸入? 第三章──「半島」 「回帰線」はどうできたか? 第四章──なぜ「熱帯」は「暑帯」ではないのか? 第五章──「空気」は日中双方でつくられた? 終章──日本語と中国語のあいだで

〔紹介〕

荒川清秀著『漢語の謎──日本語と中国語のあいだ』

  

 

 

 

序 章 で は、 漢 語 の 定 義 を 複 数 の 熟 語 を 例 に 示 し た 上 で、 日中同形語に潜む謎を挙げ、どのように言葉が日中間で往 来していたかを説明している。 第一章では、 盆地の盆、 電池の池、 銀行の行、 割礼の割、 租界の租から、日本人の感覚では理解不能な漢語、中国人 にとっても不思議と思われる漢語を追究している。身近な 日中同形語から、日本と中国を行き来する言葉の歴史や漢 字の解釈の違い、日中双方の文化の広がりが分かる。 第二章では、 文明と文化、 義務、 調査、 化石、 手続から、 日本で作られて中国に渡った漢語、所謂和製漢語について 紹介されている。漢語が生まれてから二つの国を行き来す る内に意味が徐々に変化していった過程が理解できる。 第三章では、半島、回帰線、健康から、日本でどのよう にして漢語が作られたかについて紹介されている。三種の パターン(蘭学から生まれる、 国内を漢語が巡り変化する、

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44 訓で考え音に返す)からどのような過程を経て生まれたか を分析している。日本と中国で語順が逆になる漢語の謎も 掘り下げ、 その漢語が生まれた背景に日本の視点から迫る。 第四章では、熱帯、貿易風、海流、氷河から、第三章と は逆の視点、中国でどのようにして漢語が作られたかにつ いて紹介されている。日本が漢字本来の意味に沿うのに対 し、中国では形や働きから漢語を作るなど、漢語成立の事 情が異なっており、日本と中国とで漢語を互いに理解し難 いと感じる謎が分かる。 第五章では、空気、医院、門、広場、出口、入口、百葉 箱から、日本と中国の同形語の中で、どちらでできたか分 からない、または、双方で別々に生まれた漢語を取り挙げ ている。日中双方の視点から違った発見がある。 終章では、全体の振り返りがなされる。 荒川氏自身も記述している通り、自分たちが普段使って いる漢字、漢語の意味がなぜそうなのか、どこから来たの かを考えることは少ない。本書はそんな我々の好奇心を最 大限に駆り立て、詳しい説明と共に、例に挙げた漢字や漢 語一つ一つの変化の流れや切っ掛けが丁寧に掘り下げられ ている。 (筑摩書房、二〇二〇年二月、二七〇頁、八六〇円+税) (たけざき・ちい   本学日本語日本文学科一年)

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