ピアノ演奏技能の定量的な評価方法に関する検討
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(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-MUS-119 No.15 Vol.2018-SLP-122 No.15 2018/6/16. であり,今後の演奏支援システム研究における定量的評価. はなく,授業ではひとつの曲に習熟すれば次の曲へと課題. のベースラインなることを目指すものである。. 曲が進んでいくから,上記に示したような演奏技能要素に. 3. 検討手法. ついて楽譜との誤差が小さくなっていく過程として記述す. 本研究の演奏データ収集は,大阪大谷大学教育学部教育. ることは,単に特定の楽曲に慣れたということではなく, 一般的な演奏技能の獲得を記録しているといえる。. 学科幼児教育専攻でピアノのグループ授業を受けている約. そうした分析を行うにあたって問題となるのは,演奏の. 60 名の学生を対象とし,毎週 90 分,半期の授業時間につ. 各部分と楽譜との対応付けである。電子ピアノの MIDI フ. いて,原則的にすべての演奏を記録する。この授業を受け. ァイルには,演奏している曲のテンポにかかわらず 4 分音. ている学生の多くは,保育士あるいは幼稚園教諭を目指し. 符=120BPM でノートイベントが記録される。その演奏が楽. ておりピアノ演奏獲得への必要性が高い一方で,ピアノ演. 譜のどの部分に該当するかを示すこのアノテーション作業. 奏経験のない状態から学習を始める者も少なくない。授業. は,演奏時間が短ければ手動で可能だが,本研究で扱うよ. では電子ピアノを使用しているので,演奏データ記録には. うな 1000 時間を超える長時間の演奏データを扱うには,. 電子ピアノ付属の MIDI データ記録機能を用いる。学生が. 何らかの自動化作業が必要である。これは楽譜追跡の問題. 練習に使用するのはバイエルおよび弾き歌いの保育曲であ. となる。隠れマルコフモデルや DP マッチングなどと,演. る。. 奏データからのヒューリスティックなルールを組み合わせ. 記録したデータから演奏技能として分析する要素とし ては,1) 打鍵ミスの数,2) リズムの正確さ,3) テンポの安 定性,4) 左右の手や和音で同時に発する音が揃っているか, 5) 強弱,6) ペダル操作などが考えられる。ピアノ学習の初. てアノテーション自動化の方法を構築していく必要があろ う。. 4. まとめ. 期段階では強弱やペダルの重要度は低いため,本研究では. 演奏スキルの向上を長期的,定量的に分析する方法につ. 上記 1~4 の項目を分析対象とする。打鍵ミスについては. いて現段階での検討内容を述べた。今後,実際に分析を行. 文献[3][4]において使用されている,誤打鍵(楽譜と異なる. うことでたとえば,ピアノ学習者一般に多く見られるミス. 音を打鍵),未打鍵(打鍵しない),余打鍵(楽譜にない音. のタイプや,その改善の様子など,演奏技術向上に関する. を余分に打鍵)という 3 分類を採用する。リズムの正確さ. 統計的な情報が得られると期待できる。. については,竹川[4]が被験者実験で用いている方法を参考 にする。これは,リズムミスを音長ミスと停滞に分類した うえで,音長ミスかどうかの判断基準を 16 分音符に相当. 謝辞. 本研究の一部は JSPS 科研費 16K01094 の助成を. 受けています。. する時間の 1/4 を許容誤差とし,停滞は離鍵してから次に. 参考文献. 打鍵するまでが 16 分音符の 1/2 相当以上の場合とするも. [1] 諏訪正樹. "身体知獲得のツールとしてのメタ認知的言語化 (<特集> スキルサイエンス)." 人工知能学会誌 Vol. 20, No. 5 pp. 525-532 (2005). [2] Yamada, M., Doeda, O., Matsuo, A., Hara, Y., Mine, K. "A rhythm practice support system with annotation-free real-time onset detection." Advanced Informatics, Concepts, Theory, and Applications (ICAICTA), pp. 1-6 (2017). [3] 上田健太郎, 竹川佳成, 平田圭二. "ピアノ練習状況の可視化 および気づきのアノテーション機能を持つ学習支援システム の設計と実装." 情報処理学会論文誌, 57(12), pp. 2617-2625 (2016). [4] 竹川佳成, 寺田努, 塚本昌彦. "リズム学習を考慮したピアノ 演奏学習支援システムの構築. " 情報処理学会 インタラクシ ョン (2012). [5] 松原正樹, 遠山紀子, 斎藤博昭. "ピアノ初級者のための独習 支援システムの提案." 情報処理学会研究報告音楽情報科学 Vol. 2006-MUS-064, pp. 79-84 (2006). [6] 田中功一, 小倉隆一郎, 鈴木泰山, 辻靖彦. "ピアノ学習プロ セスの表出化と変容. " 電子キーボード音楽研究, Vol. 12, pp. 4-16 (2017). [7] 田中功一, 小倉隆一郎, 鈴木泰山, 辻靖彦. "保育者養成課程 のピアノ初心者を対象とした演奏見える化ツールの活用実 践. " 電子キーボード音楽研究, Vol. 10, pp. 3-12 (2015). [8] 奥村健太, 竹川佳成, 堀内靖雄, 橋田光代. "評価のための問 題設定: 演奏支援システムの事例から. " 情報処理学会研究 報告音楽情報科学 2014-MUS-20 (2014).. のである。テンポについては,リズムとも密接な関わりが あるが,田中[6]が採用している 4 部音符ごとのテンポ変化 を示す方法が,小節パターンによる周期的な打鍵タイミン グのずれと,継続的なテンポの進みあるいは遅れを捉える うえで有効であろう。和音の同時打鍵については,具体的 な評価・判断基準を先行研究で見つけることができなかっ たため,今後の調査・検討対象としたい。 こうした演奏技能について,上級者の場合であれば感情 的表現など楽譜からの意図的逸脱も考慮する必要があろう が,初級者の場合は楽譜通りにミスなく弾けるようになる ことが上達であるとして差し支えないと考えられる。学習 者が与えられた楽譜に対してどこでどのように演奏を間違 うかは個人ごとにばらつきがあり,また同一演奏者でも演 奏のたびごとに変化し得る。これは,楽譜上のある音符が 演奏されるべき音高およびタイミング(=真値)に対して, 実際の演奏が誤差を含んだ測定値であると見ることができ る。また,音楽演奏学習者が教授者の指導を受けながら長 期的に練習を続けていけば,その演奏は望ましい方向へ変 化していくはずである。今回対象とするのは特定の楽曲で. ⓒ2018 Information Processing Society of Japan. 2.
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