小学生における生活力の育成を目指した教材開発
一児童・保護者の調査結果をふまえて一
教科・領域教育専攻
生活・健康系コース(家庭)
馬 場 亜 沙 美
1 研究の背景と目的
近年,服を自分でたためない,整理整頓がで
きない,エプロンの紐を結べない,雑巾を絞れ
ないなど生活に必要な投能が身に付いていない
子どもたちが見られ,子どもたちの生活力が低
下しているD
従来,生活力は,私たちが家庭で日常生活を
営む上で自然と身に付くもので、あったoしかし,
家庭環境の変化や家庭の教育力の低下により,
子どもたちが生活力を身に付ける環境が整って
いない状況にある。よりよい家庭生活を過ごす
ためには, 日常生活に必要な技能を身に付ける
という,生活の自立の基礎となる資質や能力を
習得しなければならなし、
そこで,学校において生活力育成のための学
習内容を設定すること,そして,家庭と連携し
て,それらの学習内容を繰り返し実践すること
により,現代においても子どもの生活力の育成
が可能となる。本研究では,児童の生活力の育
成を目指した学習内容や方法の考案を目的とし
た。
2
研究の方法
まず,子どもの生活力を育成するにあたり,
どのような要因があるのかを明らかにした。そ
れらの要因を受け,小学ヰ交家餅の新学習指導
要領の改訂について考察を行ったo また,生活
科の新学習指導要繍写説の分析を行い,家麟ヰ
や生活力育成との関連性
l
こついて明らかにし,
指導教員 福 井 典 代
生活科における授業の実践事例から,生活科で
の生活力の育成が可能かどうかについて検討し
た。次に,児童とその保護者を対象として,家
庭生活の実態や生活力についての意識調査を行
い,生活力に関する実態と児童・保護者が学校
に期待する学習内容について明らか
l
こした。最
後に,これらを踏まえて,児童の生活力の育成
を目指した教材開発を行ったo
3 児童の生活力の育成と家庭科との関係、
生活力に関する先行研究の分析から,子ども
の生活力育成についての要因として,①「子ど
もの家事作業への主体性の育成.j,②「具体的な
方法の提示J,③「家族による子どもへの過度の
助力の停止J,④「児童・生徒の家庭科の学習効
果の実感J とし1う4つの要因が挙げられたD
これらの要因を踏まえ,児童の生活力の育成
と小学校家庭科の新学習指導要領との関連性に
ついて考察した結果,今回の学習指導要領の改
訂は,子どもの生活力の育成のための要因であ
る① f子どもの家事作業への主体性の育成J,③
f家族による子どもへの過度の助力の停止J,④
「児童・生徒の家麟ヰの学習効果の実感」と対
応した記述で、あったo
4 児童の生活力の育成と生活科との関係、
子どもたちの生活力を育成するために,早い
段階からのアプローチが必要と考え,小学校生
活科の新学習指導要領の内容の把握と,生活科
の授業実践事例の把握を行ったo その結果,生
q
u
o o
q δ
活科の目標は,小学校高学年で設けられている
家庭科教育に通じるものであり,児童の生活力
の育成を促すもので、あったD また,授業実践事
例では,学習指導要繍写説の
r
(
2
)
家庭生活を支
えている家族のことや自分でできることなどに
ついて考え,自分の役割を積極的に果たすとと
もに,規則正しく健康に気を付けて生活するこ
とができるようにするj ことに基づいて設定さ
れた単元において,児童の生活力が育成されて
いた。この単元において,今の自分にできる仕
事に留まらず,今の自分には難しい家事作業に
羽織していくことで,さらに子どもたちの生活
力は育成されてし、くD また,児童の実態や家庭
の要望に即した授業を展開することで,子ども
たちに必要な生活力を身に付けることが可能で
ある。
5 児童・保護者の生活力に関する実態調査
児童の生活力の育成を目指した教材の開発を
行うにあたり,児童の基本的な家事作業を中心
とした家庭生活の実態と児童や保護者の生活力
に対する意識を,小学校
2
,
4
,
6
年生とその保
護者を対象として調査した。その結果,児童の
被服分野における実賂頻度が低いことが分かつ
た。また,児童は今後,特に被目防士野における
学習を学校に期待していることが分かったo
保護者に対する調査結果では,保護者は主に
包丁で食ベ物を切る
食器を洗う
料理をする
i5¥;潜物を干す・たたむ
アイロンがけをする
ボ世ン差付ける
手縫いをする
ミシン在使う
パ、ノコンを使って暮らしの情報告集める
掃除をする
買い物をする
ゴミを決められた方法で出す
電気や水を使いすぎないようにする
包装がゴミになりにくいものを選ぶ
周りの人とコミュエケーションをとる
近所の人にあいさつをする
0% 日韓 40% 60聾 80% 10日目
圃家庭
園学校
。無記入
図 1 主な家事作業の教育の場吋コ保護者の意識
被ij~全野の教育を学校に期待していることが分
かった(図1)。また,生活力育成についての自由
記主において,保護者は学校に家事作業の基本
を教えてほしいと期待している。
6 児童の生活力育成を目指した教材開発
以上の結果から,児童の生活力の育成を自指
し,児童・保護者の両者が学校での教育を期待
している被服分野の内容の中で,アンケートに
おいて上位に挙げられていた裁縫に注目した。
保護者の「家事作業の基本を教えてほしいj と
いう希望を考慮し,、裁縫の基本である「手縫しリ
をテーマとして生活科と家麟ヰの授業において
教材開発を行った。
低学年において,なみ縫いを用いて製作を行
うことを考慮した。小物製作よりも日常生活の
中で活用できる作品を作ることが可能で、あり,
fできた
J
としづ実感をもっ「刺繍
J
を題材と
した白また,学校生活の中で活用することを考
え,耕オをランチョンマットとした。生活科の
単元名を fたのしいきゅうしょくだいさくせん
P
J
として,小学校1, 2年生を対象に,計8
時間の授業プランを考案した。家願ヰにおいて
も,より発展的な生活技能の定着を目指し,題
材名を「オリジナルランチョンマットを作ろ
う!J として,小学校 5,6年生を対象に,計
1
0
時間の授業プランを考案した。
7 今後の課題
本研究では,授業プランの考案のみで,授業
を実践していない。そこで,今後は,本研究で
考案した授業プランを実践し,学習効果の検討
を加え,より児童の技能の定着を図り,家庭で
の実践につながる学習に改善したい。また, r:裁
縫Jに関する授業プランの考案のみではなく,
他の分野においても生活力の育成を目指した学
習プランを考案していきたい。