ナノ材料が人体・環境に及ぼす影響に
関する研究の文献調査
文献調査報告
平成17年3月22日
文部科学省
ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター
本報告書は、文部科学省の委託調査研究として、 文部科学省ナノテクノロジー総合支援プロジェク トセンターが実施した平成 16 年度「ナノ材料が人 体・環境に及ぼす影響に関する研究の文献調査」 の成果を取りまとめたものです。 したがって、本報告書の複製、転載、引用等に は文部科学省の承認手続きが必要です。
目 次
はじめに
1
1)報告要旨
2
2)研究論文抄録
7
A.政策関連
7
①政策関連の議論の概要
7
②抄録
17
③論文リスト
60
B.有害性関連
63
①有害性関連の文献情報の概要
63
②抄録
73
③論文リスト
168
3)研究機関・研究者リスト
179
はじめに 21世紀の技術革新を担う新機能材料として、ナノ粒子をはじめとするナノ材料への 期待はどんどん大きくなっており、様々な展開に向かって開発が進んでいる。しかしな がら、ナノ材料の人の健康や環境中の生物への影響については、現時点では不明な点が 多いものの、微小であるがゆえに格段の反応性が高まり、あわせて有害性までもが高ま ってしまうのではないかという懸念が上がりつつある。 過去には十分な科学的論拠がないままに健康屁の影響や、環境への汚染が懸念され、 十分な検証がなされないまま、使用を断念した化学物質もある。 言うまでも無く、このような状況を繰り返すことの無いように、ナノ材料の利用にあ たっては開発段階から健康への影響(ハザード)、物理化学的性状に関するデータの収 集・整理、環境中の挙動など基本的なデータをもとにリスク評価を行っておくことが望 まれる。さらに、最も重要な点は、単にナノという新物質に対応したリスク評価のあり 方を検討するだけではなく、既存の物質であってもナノレベルの微小粒子に加工するこ とにより全く新しい物性(反応性の向上など)が現出することから、これまでハザード のレベルが低く安全と考えられていた物質や安全に取り扱う方法があるとされていた 物質も、開発、生産、流通、貯蔵、使用、廃棄、回収再利用など各段階における管理、 取扱い方法、試験計測、評価、検定等これまでの科学技術の知見に基づいて構築されて いた自主的あるいは規制的枠組みについて、有効に機能しうるのかどうかという点につ いて検討を加えておく必要があるという点である。 上記の観点を踏まえ、ナノ材料のヒトに与える健康影響のリスク及び環境に与える影 響の大きさを評価するにあたって、ナノ材料の安全性に関する各国政策、現在得られて いる科学的知見について調査した。 なお、調査にあたっては(財)化学物質評価研究機構、化学・生物総合管理学会の協 力を得た。 調査対象 意図的に製造するナノ粒子をはじめとするナノ材料を対象とし、非意図的に発生する ジーゼル排ガスのようなナノ粒子及び自然発生するものは対象外とした。 調査・検討方法 ①文献検索、査読・・・ナノ材料のハザードやリスク及び管理政策に関する文献の検索 を行い、必要な文献の収集を行う。収集した文献を査読し、その信頼性等を評価した うえで整理を行う。 ②検討体制・・・(財)化学物質評価研究機構と連携しつつ、化学生物総合管理学会に 設けられたナノ材料のリスク評価に関する研究会において検討した。
1) 報告要旨 A.先進各国の政策 a.米国
米国における、ナノ技術がもたらす社会的影響(教育、技術、経済、医療、環境、法 制、倫理など)に関する議論は、NNI(National Nanotechnology Initiative、2000)の 発足と同時期にはじまったが、多くの分野にまたがる研究開発の目標とともに社会の課 題にこたえ、発展にどのように資するかという広がりのある視野を備えており、この意 味で NNI は単なる研究開発計画ではなく国民的コンセンサスを得る戦略的政策という 性格を有する。 ナノ技術開発の必要性、また膨大な公的資金がつぎこまれる理由としては、「ナノ科 学技術は、これまでにない物質の理解と制御を可能にすると期待されているが、それだ けに、知識の活用、教育にこれまでにも増して一貫性のある取組みが必要である。ナノ 技術開発を推進する理由は、広い意味で社会的目標・・・自然の理解の改善,生産性の 向上、健康の増進、持続的発展および人間能力の限界の拡大・・・の達成を目指すこと である」としている。 こうした方針の具体化するため、R&D計画中に密接不可分は部分として社会影響へ の対処を位置づけ、計画そのものをより戦略性のある政策へと発展させるとともに、各 責任官庁及び政府内の横断的責任実施監督体制を整えることによって、生きた政策、国 民の支持を得る政策となる努力をしているように見える。 ナノ材料の毒性学上の基礎的評価と合理的リスクアセスメントについて、体制整備と 具体的な対応はきわめて早い。 ナノ材料の毒性研究を行うため、ライス大学CBEN(NSFによって設立された、 17のナノ科学技術センターのひとつ。所長 V.Colbin)が、NTP(国家毒性学プログ ラム) から2003年10月に指名されている。単層ナノカーボンチューブ、量子ドッ ト、フラーレンを対象に、経皮毒性、急性、亜慢性、慢性の毒性を研究するが、個々の 製品の安全性評価ではなくナノ材料の化学、物理、薬理的評価のためのモデルを構築し、 将来の製品評価に備えることが目的になっている。 また、NIOSHにおいてナノ材料の製造使用時の職場健康リスクの研究が進められて いるが、今年中にもナノ材料の取扱いに関する労働安全ガイドラインガが作成される予 定である。 現在では、ナノ材料の安全性に関する議論は、「ナノ技術の責任ある開発支援」の中 の1つのカテゴリーとしてとらえられている。(他のカテゴリーは、倫理、法律、その 他の社会的問題) 健康、環境等の分野の現在の活動として、毒性研究(国立環境健康科学研究所(NIEHS; NIH の傘下研究所。NTP に参加)、NIOSH、NSF 等。他に NIST が標準の開発で支援)、環 境中の挙動に関する研究、LCA のための技術開発、関係省庁間の意思疎通促進、規制当
局支援のための優先的研究、国際的対話等を実施している。 今後も必要に応じて環境、健康影響に関する研究支援を拡大するとしている。最も懸 念される職場暴露(工場、研究所)についての規制への動きがはやく、毒性に関する具 体的な実験データを待たず、取扱い基準が近々出される見込みである。 なお、ナノ材料の健康影響、環境影響の議論としては、負の影響に着目した場合安全 性の議論が中心になるが、プラスの面に着目した場合(本来、implication には、両方 の意を含む)様々な可能性がひらけてくる。リスク評価は、便益についても正確な認識 を要求するが、この面でも日本の研究は遅れている感が否めない。国際的な議論に積極 的参画していくことが望まれる。 b.欧州 社会影響までを視野に入れた政策立案に向けた取り組みは、欧州においては、200 3年頃から始まり、いくつかの専門家会合、フォーラムなどをへて2004年5月、欧 州委員会から「Toward a European Strategy for Nanotechnology」としてまとめられ 発表されている。 EU 研究 DG でまとめられた欧州の戦略は、ナノ技術開発、発展のため、研究開発投資 の拡大(2010年までに3倍増)、インフラの整備、産業の革新、人材開発、社会的 側面の5つの柱と健康、安全、環境、消費者保護及び国際協力の推進の2つの取り組み についての重点的対応を提唱しているが、特に、健康、安全、環境、消費者保護につい ては、高水準の健康、安全、環境、消費者保護のレベルを維持するため以下の事項が必 要としている。 ① 安全に関する懸念(事実及び予想)の把握と早期の対応 ② 毒性学、環境毒性学のデータとヒト、環境暴露の評価 ③ 必要に応じ、ナノ技術関連事項に関するリスク評価手続きの修正 ④ ライフサイクルの全段階におけるリスク評価の統合 この欧州戦略をうけて、2004年6月、ナノテクノロジーの危険性、利益と倫理的、 法的、社会的側面に関するフォーラムが開かれ、ヨーロッパ及び世界における議論の現 状をとりまとめたが、このテーマについて継続的に検討を行なうとしており、今後、欧 州でもこの課題への取組みが加速していくとみられる。 2004年7月には、王立協会/王立工学アカデミーから、英国政府の要請をうけて、 ナノ科学、技術の現状、将来展望とその影響に関する報告が出されている。これは欧州 委員会の検討とほぼ平行して検討が進められた。 調査の目的は、ナノ科学、ナノ技術の定義、科学的知見の現状、新技術の応用、特に すでに実用化されている分野の把握、技術の活用法に関する将来予測、実用化時期の予 測、健康、安全、環境、倫理、社会に与える影響、追加的規制の必要性を検討すべき分
野の特定であるが、分野別専門家 WG の検討、市民などを含む数回の WS、民間調査機関 による調査などの結果をまとめたものである。産業界の参加が少ないとの声もあるが、 今後検討すべき課題について包括的にまとめられている。 健康、環境への影響、規制に関する検討では、多くのナノ技術は、健康に新たなリス クを生じさせることはなく、懸念の多くは分散した粒子またはチューブの影響である。 工業的生産されているナノ材料は少なく、暴露は研究所などの職場と一部の化粧品に限 られているとし、21の勧告をまとめている。本報告の基本的考え方の特徴は、欧州委 員会でまとめられた戦略とも軌を一にしており、以下の点が指摘できる。 製造業者の責任の強調 製造業者が製造する製品について、全ライフサイクルにわたる暴露可能性のリスク評 価の実施とデータの関係規制当局への提供等、製造業者の社会的責任が強く前面にでて きている。 予防的措置 ナノ材料に関する毒性学上の情報は不十分であるが、それら情報が整うことを待たず、 現時点で予想されるリスクへの予防的対処を求めている。 研究者の協力、連携 ドラッグデリバリーのナノ粒子利用研究開発、既存の微粒子暴露研究の結果(都市大 気中の汚染ナノ粒子やある職場の無機ダストなど)等他分野の研究者とナノ材料の毒性 研究者との連携協力を求めている。 情報、研究の不足 健康、安全、環境への影響に関する多くの不確実性を低減するためには、ナノ粒子、 ナノチューブの有害性、暴露経路の調査研究、リスク評価・管理の手法開発が目下の緊 急課題である。 規制当局への提言 ナノ粒子への暴露について、現在は、ごく狭い分野の規制をしているに過ぎないため、 予防的にいくつかの規制を修正する必要があるとし具体的提案をまとめている。 ①職場環境におけるナノ粒子、ナノチューブへの暴露評価し、制御すること。 ②現行新規化学物質規制の枠踏みの中で新規化学物質として扱う。追加試験の年間生 産量上限及び試験方法は、毒性学的知見の集積にあわせ見直す。 ③消費製品へのナノ粒子の使用に関し、現在の規制体系の再検討。 ④関連規制当局は、現行規制の再検討、検討結果の公開、取った措置の説明をするこ と。 c.NGO
カナダの NGO である ETC Group は、遺伝子組み換え作物の栽培に反対運動を展開した ことで知られているが、ナノ材料について、社会的あるいは環境影響がある可能性があ るにも関わらず、データ、研究が不足しているとし、政府は予防原則にもとずいて、新
技術の社会への導入を監視し、早急なナノ粒子の放出に関するモラトリアムを求めてい る。また、技術開発を監視するメカニズムをもつ新技術評価のための国際協定(ICENT) を制定することをもとめている。 d.日本 内外の文献調査に着手した状況。安全に関する包括的政策立案にむけた、動き、体制 はない。ナノ粒子に絞った安全性試験研究等はない。 B.ナノ材料の有害性に関する知見 ナノテクノロジー(NT)は、急速に発展しており、将来種々の産業に大きな影響を与 えると考えられている。ナノ材料製品の増加により、NT よる利益と環境及び社会的負担に ついての論争が盛んになってきているにも拘わらず、ナノ材料の暴露による毒性や環境影 響について検討した実験は限られており、これらの影響を定量化するガイドラインもない のが現状である。ナノ材料(ナノ粒子一般、カーボンナノチューブ及びフラーレン)について の環境影響、毒性、体内分布等に関する既存の報告の概要は以下のとおりである。しかし、 現時点での、これらの報告の多くは断片的なものであるとともに、再現性等それらの信頼 性を確認する必要があるものもあり、ナノ材料のヒトの健康や環境中生物に対する有害性 の程度を定量的に把握することは困難である。従って、今後これらの報告を基に、それぞ れのナノ材料について体系的な有害性調査が強く望まれる。 1.ナノ粒子一般 ナノ材料の環境中の挙動については、ナノ粒子やフラーレンが、水中で凝集し、安定し たコロイド状の集合体状態になっており、下等生物への蓄積が促進されるとの報告がある。 吸収及び体内分布については、微粒子化した二酸化チタンで、ヒト表皮では深部角質層で 検出されなかったとの報告がある。吸入されたナノ粒子については、粒子サイズと肺から 移行する物質の活性間とに相関性が有り、粒子サイズに従い鼻腔、気管・気管支、肺胞へ 拡散し、鼻腔嗅粘膜に蓄積した粒子は、嗅神経から嗅球に達することが示された。毒性影 響については、ナノ粒子は、同一の化学組成の微細粒子が肺炎を誘発する濃度に相当する 濃度で肺炎を誘発することが示されており、一般的には、同じ組成、同じ暴露量にも拘わ らず大きな粒子に較べ、より強い炎症反応を惹起するとされている。この毒性には、その 表面特性 (特に表面積) 及び細胞との相互作用により発生するフリーラジカルが重要な役 割を演じると考えられている。この他、ウイルスによる気道感染やアレルギー性呼吸器系 症状の程度を増強させるとの報告、in vitro で小核及び細胞死(アポトーシス)を誘発し遺伝毒 性を示すとの報告や、食細胞系の食作用機能を低下させるとの報告がある。 2.カーボンナノチューブ ほとんどは SWCNT に関する報告であるが、暴露に関する情報は殆どない。SWCNT の毒性 影響については、その皮膚や肺に対する毒性が報告されている。その毒性や作用機序につ
いては未だ確定されてはいないが、酸化ストレスによる細胞傷害が示めされている。また、 肺毒性については、ダストによる生じる標準的な肺毒性の範疇には入らず、新しい毒性メ カニズムの存在が考えられている。 3.フラーレン 環境影響としては、フラーレンあるいはその誘導体がミジンコの脱皮と繁殖を遅延させ、 オオクチバスなどの水生生物に酸化的障害や GSH(グルタチオン)の減少を誘発するとの 報告がある。 毒性影響については、フラーレンの誘導体が反復投与で腎臓のネフローゼが 惹起したの報告や、光毒性を誘発し、そのメカニズムとして細胞周期への抑制機構が関与 するとの報告がある。また、フラーレンの有する抗酸化作用やフリーラジカル除去作用に ついての報告もある。
2)研究論文抄録 A.政策関連
①政策関連の議論の概要 a.米国
1.議論のはじまり
米国のNNI計画(National Nanotechnology Initiative、2000)の発足の当初から、 その活動の主要な柱の一つとして、「倫理、法制、社会影響および教育・訓練
(Ethical,legal and societal implications, and workforce education and training)」 が、位置付けられている。多くの分野にまたがる研究開発の目標があげられているが、 社会の課題にこたえ、発展にどのように資するかという広がりのある視野を備えており、 この意味で NNI は単なる研究開発計画ではなく国民的コンセンサスを得る戦略的政策 という性格を有する。 ナノ技術に関する社会的影響(教育、技術、経済、医療、環境、法制、倫理など)に 関する議論は、NNI の発足と同時期にはじまったが、その全体像は、2000年9月2 8−29日、連邦科学技術評議会(NSTC)ナノ科学、工学、技術小委員会(NSET)の要 請をうけて、NSF で開催された WS に見られる。(米国9) この時点では、社会的影響のなかに、安全性、環境影響に関する問題も含め多くの項 目が多数入り込んでいる。 リスクを最小化しつつ利用を加速化していくために、社会経済研究の支援、一般市民 への広報、教育、参加の仕組みの構築、科学、技術、社会影響を評価するための知的基 盤、組織インフラの整備、新世代の科学者、労働者の教育訓練などについて勧告を行な っているが、この時点では今後の取り組みの方向をまとめたというもので、具体的な研 究活動等はあきらかではない。 ナノ技術開発の必要性、また膨大な公的資金がつぎこまれる理由としては、「ナノ科 学技術は、これまでにない物質の理解と制御を可能にすると期待されているが、それだ けに、知識の活用、教育にこれまでにも増して一貫性のある取組みが必要である。ナノ 技術開発を推進する理由は、広い意味で社会的目標・・・自然の理解の改善,生産性の 向上、健康の増進、持続的発展および人間能力の限界の拡大・・・の達成を目指すこと である」としている。(米国3) 社会的影響に関する研究を進める必要については、ナノテクノロジーの成功が、単に 大学や企業における優れた研究のみによって、決まる物ではなく、技術の使用者や市民 から、経済開発、商業化、教育、インフラ、環境や健康などの社会的影響などに関する 疑問に答え、対話を図ることが不可欠であるとしている。 目標(社会的利益)と不測の結果(予期せぬ利益とリスク)との比較衡量、多様な分 野への応用、既に存在する自然界のナノ構造物との違い、既存規制体系の適合可能性、
国際的整合性、許容水準と許容できない水準の実質的な定義、個人の創造性から社会シ ステム国際的動向まで多くの要素が複雑に絡まった構造であること、技術開発の進展に 伴った累進的前進、革新的技術の前例を学ぶことを上げている。 こうした指摘、定義は勿論米国に限らず、各国政府がまとめる報告書などには、よく 使われる表現でありそれ自身目新しくない。 R&D計画中に密接不可分は部分として社会影響への対処を位置づけ、計画そのものを より戦略性のある政策へと発展させるとともに、各責任官庁及び NSF,NSET(議長 M.C.Roco、NNIの取りまとめ)のリーダーシップ、ナノ材料の健康安全影響に関する 省庁横断グループ(OSTPのもと2003年8月発足)による横断的責任実施体制を 整えることによって、生きた政策、国民の支持を得る政策となる。米国のNNI計画 (National Nanotechnology Initiative、2000)が、世界に先駆け、実際にそれに取り組 みつつあるという点が重要である。
ナノ関連連邦R&D予算の10%以上を健康安全分野に使用されており、 2001年度 464百万$ うち健康安全55.5百万$(12%) 2004年度 961百万$ うち健康安全105.8百万$(11%) となっている。 ナノ粒子の安全性に関する研究については、主に研究、製造段階での研究者、労働者へ の影響、使用段階での消費者への影響、各段階からの環境への放出,廃棄による生態系、 環境等への影響について検討がすすめられており、EPA(4百万$、2004年度)、 DOE,NSF(16百万$(基礎、環境影響)、36百万$(横断的テーマ))、FDA, NIOSH(1.5百万$)、などで研究されている。 ナノ材料の毒性学上の基礎的評価と合理的リスクアセスメントを将来行ううえで、重 要な取り組みが2つある。 1つは、ナノ材料の毒性研究を行うため、ライス大学CBEN(NSFによって設立さ れた6つのナノ科学技術センターのひとつ。所長 V.Colbin)が、NTP(国家毒性学プ ログラム) から2003年10月に指名されている。2004年度、数プロジェクト実 施中。2008年度には、年間5百万ドルの予定。単層ナノカーボンチューブ、量子ド ット、フラーレンを対象に、経皮毒性、急性、亜慢性、慢性の毒性を研究するが、個々 の製品の安全性評価ではなくナノ材料の化学、物理、薬理的評価のためのモデルを構築 し、将来の製品評価に備えることが刻的になっている。 もうひとつは、NIOSHにおいて行われている、ナノ材料の製造使用時の職場健康リ スクの研究である。(ナノ技術と健康安全プログラム、5年計画)職場の健康を維持す るため、効果的計測法、簡易安価な制御法を知ることを目的にしている。
また、労働安全に関する最初の国際シンポジウムが、2004 年 10 月、NIOSH と英国健 康安全研究所/健康安全行政部の共催で英国で開催された。 そこでは、以下ようなの点について確認されている。 ・ナノ粒子の皮膚透過と血液、リンパ流にのって体内を移動する ・ナノ材料の毒性発現の機序は不明、アジュバンドとして作用すること以外はよく分からない。 ・酸化ストレスを起こしているかも知れない。DNA/ タンパク傷害の可能性がある。 ・適正な曝露評価方法については、ナノ材料の安定性と溶解度が不明また反応性高いため 現状の関連する方法では曝露量基準の設定がむつかしい。 ・毒性評価にあたっては、低用量曝露データの活用、毒性発現機序の解明に関して、既 存の物質の毒性試験結果との対比が重要。あわせて製造業者に、より毒性の低い製品を 開発するように協力を求める。 ・毒性(評価)研究を進めるうえで、国際協力、学際的研究、製造事業者間の協力によ る知見の交換が有効。 2.議論の現状 (ⅰ)健康、環境影響に関する議論を技術的観点から概観したものとしては、2003 年 10月、Nature Biotechnology に掲載された Colvin の論文がある。(詳しくは、② 技術関連の項参照)ここでは、安全性に関する議論の現状は、 ア 職場暴露に関しては、毒性学の専門家、規制当局の経験があるが、不均一な混合物 やサイズが分散したものの情報しかなく、均一なナノ材料の挙動はわかっていない。 イ 消費者暴露に関しては、化粧品、日焼け止めに使用されているが、詳しくは商業秘 密となっておりわからない。米国では99年にミクロ化チタンは既存物質になってい る。チタン、亜鉛酸化物を含む有機物の光安定性が重要。一般的には太陽光への暴露 ほど問題はないようである。ただ、100ナノ以下の粒子の情報はない。 ウ 短期的には職場環境、消費者製品用途が懸念されるが、長期的には環境汚染が問題 である。ゴムタイヤ中の亜鉛であれ、塗料中の鉛であれ環境中の濃度は上昇する。 エ 健康影響に関しては、少なくともカーボンナノ構造物に関しては、10本以上の毒 性に関する文献が出ている。 オ UFP の吸入毒性に関しては同容量のミクロ粒子より毒性が強いようである。また、 粒子の形状、表面化学性状がサイズ以上に毒性評価に重要であるようである。 にまとめられ、今後、商品として上市される前に危険性評価するのが難しくとも、先を 見越した研究は、持続的なナノテクノロジー産業の発展を確保するためには不可欠であ ると訴えている。 (ⅱ)政府におけるナノ材料の安全性、ナノ技術の社会影響に関する議論は、NNI発
足時(2000年当時)多くの問題を包含して始まったが、昨年末に出されたNNIの 戦略に関する報告は、最もよく問題点が整理されている。 これは、NSTC下の小委員会で、既存のNNI戦略計画を見直し、向こう5から1 0年の計画としてまとめられたもので、計画では4つのゴールがもうけられ、世界水準 の研究開発計画の維持、新技術の移転促進、教育のてこ入れ・支援インフラ開発等と並 んで「ナノ技術の責任ある開発支援」があげられている。 ナノ技術の責任ある開発の支援は、さらに2つのカテゴリーに別れ、ひとつは、環境、 健康、安全影響の分野でもうひとつは、倫理、法律、その他の社会的問題である。 健康、環境等の分野では、現在の活動として、 ・ 国 立 環 境 健 康 科 学 研 究 所 ( NIEHS; NIH の 傘 下 研 究 所 。 NTP に 参 加 )、 NIOSH,EPA,DOD,DOE,NSF が健康リスクの研究に参加。他に NIST が関係標準の開発で支 援。 ・ 関係省庁間の意思疎通の促進、規制当局支援のための優先的研究、 ・ 国際的対話の場への参画(2004年、NSF 主催でWS開催。25 ケ国、EUが参加し ナノ技術の責任ある開発を支援する宣言をとりまとめた) ・環境中におけるナノ材料の挙動に関する研究、ナノ材料の全ライフサイクルを評価す る技術の開発を、 今後の計画として、必要に応じて環境、健康影響に関する研究支援を拡大するとしつつ、 in vitro, in vivo の実験、モデルで分子、細胞レベルの相互作用、環境との相互作用、 環境中の挙動に関する基礎的知見の集積、暴露形態の特定・評価、ヒトの健康への影響 の可能性の特定、職場における暴露管理のための適切な管理手法の開発、職場における 効果的手順の決定と普及への支援。特に NIOSH は、2005 年中に安全労働基準を開発す る予定があげられ、最も懸念される職場暴露(工場、研究所)についての規制への動き がはやく、毒性に関する具体的な実験データを待たず(実際待っていると、何年もさき になる)、取り扱い基準が近々出される見込みである。 (ⅲ)また、規制当局を交えて現行の毒性物質規制法(TSCA)の運用について、よ り具体的な問題点、課題の検討が始まっている。 ・ 化学物質ではなく、バクテリアやウイルスのように扱うのか ・ 食品のようではあるが、実際には医薬品の場合の規制はどうか ・ これまでに規制の基準は、サイズではなく重量に着目。ナノ材料の規制トリガーも それでよいか ・ ナノ材料の表面状態に着目する可能性があるか ・ 標準モデルと異なる挙動をする既存化学物質が出現した場合、リスク予想、健康影 響の評価ができるのか ・ 化学的同等性と構造、活性度の同等性とは異なるかもしれない
・ 研究開発用途の除外規定の扱い ・ 規制適合のための評価・実験モデルの開発 ・ ナノ材料による審査事例の開発 など実際の運用を想定した議論を開始。 (ⅳ)ナノ技術のリスクコミュニケーションは、社会の態度、認知、メデイアの役割そ して信用の4つが重要。これらは相互に関係し、ナノテクノロジーに対する不安と受容 を形成するのに影響する。 社会の一般人も含めた、多様な利害関係者との開かれた対話を行い、それらの観点を 意思決定プロセスに統合してゆくべき。利害関係者が受け入れられるレベルのリスクを 定義するなども必要になるかもしれないが、そうした対話リスクというよりは、むしろ 交渉リスクを避けることはできない。 3.その他 ナノ材料の健康影響、環境影響の議論としては、負の影響に着目した場合安全性の議論 が中心になるが、プラスの面に着目した場合(本来、implication には、両方の意を含 む)様々な可能性がひらけてくる。リスク評価は、便益についても正確な認識を要求す るが、この面でも日本の研究は遅れている感が否めない。 (ⅰ)技術統合とR&D国家目標としての人間能力向上 ナノテクノロジーが他の主要技術(バイオテクノロジー、情報テクノロジーと認知科 学)の基礎を提供し、これら技術の統一により、人間の能力、生活の質の大幅な向上を 成し遂げることを期待している。 仕事効率と学習の向上、個人の知覚と認知能力の向上、健康管理における革命的な変 化、個人と集団両方の創造性の向上、脳間の相互作用を含む高度に効率的なコミュニケ ーション技術、神経形態工学を含む人間−機械の境界の改善、神経人間工学を含む安定 で「理性的な」環境、防衛目的における人間の能力の向上、老化に伴う身体的認知的な
衰弱の改善などが期待され、国家の研究開発の重点目標として、人間能力の向上を
あげている。(米国7) (ⅱ)教育インフラ整備に向けた国際協力) ECとUS間の人材交流の拡大、EU/US に共通する雇用、訓練モデルの構築、ナノ 技術の応用について商業化、公共政策分野までの拡大等を産官共同で開拓、教育の分野 の新しい協力関係の構築、メデイアや博物館、科学センターなど科学教育を担う機関と 科学技術界との交流支援、地域グループとの対話を拡大など(米国8)の取り組みが始 まっている。 こうした枠組みに日本が積極的に関与せず、部外者にとどまれば、今後国際的に通用する人材をどのように育成してゆくのか懸念される所である。
b.欧州
1.議論のはじまり
米国 NNI 計画に見られる社会影響までを視野に入れた政策立案に向けた取り組みは、 欧州においては、2003年頃から始まり、いくつかの専門家会合、フォーラムなどを へ て 2 0 0 4 年 5 月 、 欧 州 委 員 会 か ら 「 Toward a European Strategy for Nanotechnology」としてまとめられ発表されている。(欧州4、5、6,7)
この議論の過程で、より具体的問題点と今後の課題が明らかにされており(欧州5)、 ナノ粒子の定義、人造ナノ粒子への新しい CAS(Chemical Abstract Service)登録番号 を付与、暴露データの収集,用量反応関係の把握、毒性学、環境毒性学の研究、環境中 の分解性、挙動などの研究推進、ナノ計測機器の開発、リスク評価法の開発と実践、ナ ノ技術モニター機関の創設、一般人・社会との対話、ガイドラインと標準の開発、既存 の規制の再検討(既存規制の再検討(年1トンに許容値の引き下げ、表示など)、改訂、 分散化人造ナノ粒子の封じ込め、廃棄ナノ粒子の製造及び意図せぬ放出の可能な限り禁 止又は最小限化、責任ある開発への取り組みを求めつつ、定義、標準、ガイドライン、 勧告については、国際的規範として策定することを求めている。 これらの項目の殆どは、昨年7月に発表された英国王立協会、王立工学アカデミーの「ナ ノ科学、技術:機会と不確実性」と題する報告にも記載されており、これら議論の結果 が英国における検討の下敷きになっているものと思われる。 EU 研究 DG でまとめられた欧州の戦略は(欧州4)、ナノ技術開発、発展のため、研 究開発投資の拡大(2010年までに3倍増)、インフラの整備、産業の革新、人材開 発、社会的側面の5つの柱と健康、安全、環境、消費者保護及び国際協力の推進の2つ の取り組みについての重点的対応を提唱しているが、特に、健康、安全、環境、消費者 保護については、高水準の健康、安全、環境、消費者保護のレベルを維持するため以下 の事項が必要としている。 ① 安全に関する懸念(事実及び予想)の把握と早期の対応 ② 毒性学、環境毒性学のデータとヒト、環境暴露の評価 ③ 必要に応じ、ナノ技術関連事項に関するリスク評価手続きの修正 ④ ライフサイクルの全段階におけるリスク評価の統合 この欧州戦略をうけて、2004年6月、ナノテクノロジーの危険性、利益と倫理的、 法的、社会的側面に関するフォーラムが開かれ、ヨーロッパ及び世界における議論の現 状をとりまとめたが、このテーマについて継続的に検討を行なうとしており、今後、欧 州でもこの課題への取組みが加速していくとみられる。
こうした議論と平行して、個別にナノ材料の安全性に関する研究は、個々の研究機関 のおいて行なわれており、欧州第6次研究フレームプログラム(2002∼2006) において、NANO-PATHOLOGY Project(診断法、機器の開発、病理メカニズムの解明、病 理学上の重要性の検証。イタリア物性物理研究所、2001年12月開始、3年間、1 00万ユーロ)、NANODREAM Project(ナノ材料の皮膚への影響調査。ライプチィッヒ大 学、2003年1月開始、3年間、110万ユーロ)、 NANOSAFE Project(生産プロセ スから消費者にいたるまでのナノ材料のリスクアセスメント。ナノゲート技術社(ドイ ツ)、2003年4月開始、15ヶ月間、30万ユーロ)があるが、いずれも対象、期 間、規模などからみて総合的計画的というより、予備的、サンプル的な研究である感が 否めない。 2.議論の現状 (ⅰ)2004年7月に出された王立協会/王立工学アカデミー報告は、2003年6 月、英国政府より、王立協会、王立工学アカデミーに対して、ナノ科学、技術の現状、 将来展望とその影響に関して要請したことを受けてまとめられたものであるが、欧州委 員会の検討とほぼ平行して検討が進められた。 調査の目的は、ナノ科学、ナノ技術の定義、科学的知見の現状、新技術の応用、特に すでに実用化されている分野の把握、技術の活用法に関する将来予測、実用化時期の予 測、健康、安全、環境、倫理、社会に与える影響、追加的規制の必要性を検討すべき分 野の特定であるが、分野別専門家 WG の検討、市民などを含む数回の WS、民間調査機関 による調査などの結果をまとめたものである。産業界の参加が少ないとの声もあるが、 今後検討すべき課題について包括的にまとめられている。 健康、環境への影響、規制に関する検討では、多くのナノ技術は、健康に新たなリス クを生じさせることはなく、懸念の多くは分散した粒子またはチューブの影響である。 工業的生産されているナノ材料は少なく、暴露は研究所などの職場と一部の化粧品に限 られているとし、21の勧告をまとめている。本報告の基本的考え方の特徴は、欧州委 員会でまとめられた戦略とも軌を一にしており、以下の点が指摘できる。 製造業者の責任の強調 製造業者が製造する製品について、全ライフサイクルにわたる暴露可能性のリスク評 価の実施とデータの関係規制当局への提供、既に保有する安全性情報、情報取得の方法、 人、環境への暴露可能性を最小化する管理法の公開を求めており、製造業者の社会的責 任が強く前面にでてきている。今後こうした考えは欧米、そして日本をふくむ世界の中 心的考えとなって各種の制度設計がなされてゆくことが予想される。 予防的措置 ナノ材料に関する毒性学上の情報は不十分であり、暴露状況、環境中の挙動について
もほとんど情報がないことは、本報告に限らず多くの文献でも指摘されている。それら 情報が整うことを待たず、以下のような点について、現時点で予想されるリスクへの予 防的対処を求めている。 ・研究所、職場における飛散ナノ材料への人の暴露を規制 ・ナノ材料の環境中への放出は、可能な限り回避 ・廃棄物処理の流れから分離し、地下水浄化のような環境放出応用は禁止 ・爆発リスクを管理するため、大量のナノ粒子の飛散を避ける 予防的措置は、欧米(特に欧州)の環境、安全政策の基本的考えとなっており、これ に沿って、本報告でも多くの行動を求めているところである。 研究者間の協力、連携 ドラッグデイリバリーのナノ粒子利用研究開発から、人体中の動態挙動に関する重要 な情報が得られる。また、ナノ粒子の吸入影響に関する研究がいくつか公開され、サイ ズの大きい同じ物質より重量当たり、より毒性が増加することを示しているものがある。 また、本文献調査では、人造ナノ材料に関する物に対象を絞ったが、海外の文献では、 多くの情報が既にある微粒子の暴露研究の結果(都市大気中の汚染ナノ粒子やある職場 の無機ダストなど)を参考にすることの必要性を指摘している。 情報、研究の不足 あらためて言うまでもなく、健康、安全、環境への影響に関する多くの不確実性を低 減するためには、ナノ粒子、ナノチューブの有害性、暴露経路の調査研究、リスク評価・ 管理の手法開発が必要であり、もっとも緊急に対応が求められる。 規制当局への提言 NGOの主張を念頭において、ナノ材料の研究、商業生産にモラトリウムが必要な状 況ではないとしつつも、ナノ粒子への暴露について、現在は、ごく狭い分野の規制をし ているに過ぎないため、予防的にいくつかの規制を修正する必要があるとし具体的提案 をまとめている。 ①ナノ粒子、ナノチューブへの暴露が考えられる研究所、職場について、事故時を含 めナノ粒子、ナノチューブへの暴露評価し、制御するための現在の規制の適合度を評 価すること。その間、暴露レベルをより低く押さえること。
②現行新規化学物質届出規制(NONS:Notification of New Substances)および提案 中の欧州の化学物質の登録、評価、承認、規制(REACH)体系でナノ粒子、ナノチュ ーブは、新規化学物質として扱う。ナノ材料に対する追加試験の年間生産量上限及び 試験方法は、毒性学的知見の集積にあわせ見直す。 ③欧州委員会に対し、消費製品へのナノ粒子の使用に関し、現在の規制体系が適切か どうか検討を働きかける。特に二酸化亜鉛は評価するにはデータが不足している。 ④ 連規制当局は、現行規制が適当かどうかを検討し、検討結果を公開し、規制の穴 をどのように措置したかを説明すること。
規制当局と産業界、学会の対話は、米国でも既に始まっている。
(ⅱ)欧米におけるナノテクノロジーの社会的影響にかんする議論を概観し(欧州8)、 1つは、ナノテクノロジーの長期的可能性に、焦点をやや急進的な見方をして、事実上 どんな材料や構造も分子レベルからの組み立てることができナノスケールでものを制 御するということを予期している(Drexler, Dinkelacker, Joy, Reynolgs, Suckman)。 この見方が実現可能か議論はされているが、議論は理想と地獄の両極端な結果に焦点を 当 て る こ と に つ い て は 受 け 入 れ ら れ て い る 。( Whitesides ら 、 Smally, Ball, Loveridge)
2つ目は、短期的結果により焦点を合わせたものである。これは、ナノテクノロジーの 急激な成長はとても肯定的な経済的影響を与えると信じる人々と(Taylor, US-NSTC, NSF)、環境至上主義と社会価値の立場から、発展を遅くする、またはやめようとしてい る人々である(Mnyusiwalla, ETC Group, Rolison, Colvin, BRTF of UK, Mayer)。 ここでも、特に注目をされている緊急の論点は、既存の規制体制がナノ材料の性質に十 分対処できるか、または新しい解決策が必要とされているかであるとしている。 技術変化の管理、リスクと機会の評価などについて、既存の研究と特に社会科学と自 然科学と工学にまたがる学際研究を通した新しい方法が期待される。
c.NGO
カナダの NGO である ETC Group は、遺伝子組み換え作物の栽培に反対運動を展開した ことで知られているが、ナノ材料について、社会的あるいは環境影響がある可能性があ るにも関わらず、データ、研究が不足しているとし、政府は予防原則にもとずいて、新 技術の社会への導入を監視し、早急なナノ粒子の放出に関するモラトリアムを求めてい る。また、技術開発を監視するメカニズムをもつ新技術評価のための国際協定(ICENT) を制定することをもとめている。 また、グリーンピースの委託をうけてA.H.アーナル(ロンドン大学教授)によっ てまとめられた報告(NGO3)では、「データのないところに市場無し」として、2 1世紀の技術の社会受容は、新しい技術産物の認知できる有用性と、管理できると示さ れたリスクのバランスが取れているということを、自発的に示した根拠を基に判断・受 け入れられることが必要と指摘している。 d.日本 内外の文献調査に着手した状況(日本2,3)。安全に関する包括的政策立案にむけ た、動き、体制はない。ナノ粒子に絞った安全性試験研究等はない。( 技術関連抄録参照) ナノ粒子の安全性については、まだ研究が開始されたばかりの状態であるとしつつ、
国の支援の必要性、海外との交流、作業環境の調査の重要性、同じ物質でもサイズ、形 状、化学修飾、複合化についての規制の検討開始、実験作業における安全基準(ガイド ライン)づくり、簡便なスクリーニングテストの実施等を指摘している。このなかで、 インクジェット印刷インキ、トナー、光触媒、化粧品など、身近に使用されるナノ粒子 についての安全性は、それら製造企業に知見があると思われるので積極的に公開するこ とを求める指摘がある(日本3)。
②抄録
米国
文献番号 米国1
著者 The Nanoscale Science,Engineering and Technology Subcommittee Committee on Technology
National Science and Technology Council 発表年月 2004. 12
文献タイトル The National Nanotechnology Initiative, Strategic Plan 国家ナノ技術イニシアチブ、戦略計画
(要旨)
2003年に制定されたナノ技術研究開発法は、連邦科学技術評議会(National Science and Technology Council: NSTC)に対し、連邦政府のナノ技術研究開発プログ ラムを作成することを求めており、この報告は、NSTC下の小委員会で、既存のNN I戦略計画を見直し、向こう5から10年の計画としてまとめられたものである。22 の省庁(うち11の省庁がナノ技術開発予算あり)が検討に参加した。2001年度に NNIが始まって以来、R&D予算は2倍以上の10億ドルに達している。本計画では 4つのゴールがもうけられている。すなわち、 ①ナノ技術のすべての可能性を引き出すための世界水準の研究開発計画の維持 ②経済成長、職、他の公共の利益のため、製品への新技術の移転促進 ③ナノ技術促進のための教育資源、熟練労働者、支援インフラ、ツールの開発 ④ナノ技術の責任ある開発の支援 があげられ、それぞれ現状の紹介と今後の計画が記述されている。 また、これらゴールにむけて投資を行っていく重要分野として、基礎的ナノ現象の解 明、ナノ材料、部品・システム、機器研究・計量・標準、製造、研究施設・機器の整備、 社会的側面があげられている。上記責任ある開発の支援の最も関係が深い分野は、もち ろん社会的側面である。 ナノ技術の責任ある開発の支援は、2つのカテゴリーに別れ、ひとつは、環境、健康、 安全影響の分野でもうひとつは、倫理、法律、その他の社会的問題である。 健康、環境等の分野では、現在の活動として、 ・ 国 立 環 境 健 康 科 学 研 究 所 (NIEHS; NIH の 傘 下 研 究 所 。 NTP に 参 加 )、 NIOSH,EPA,DOD,DOE,NSF が健康リスクの研究に参加。他に NIST が関係標準の開 発で支援。 ・関係省庁間の意思疎通の促進、規制当局支援のための優先的研究、政府、産業、大学
・国際的対話の場への参画(2004年、NSF 主催でWS開催。25 ケ国、EUが参加 しナノ技術の責任ある開発を支援する宣言をとりまとめた) ・環境中におけるナノ材料の挙動に関する研究、ナノ材料の全ライフサイクルを評価す る技術の開発を推進が、 また、計画として ・必要に応じて環境、健康影響に関する研究支援を拡大する (1)in vitro, in vivo の実験、モデルでナノ材料の分子、細胞レベルの相互作用の 基礎的知見を増やす (2)ナノ材料と環境の相互作用の基礎的知見を増やす (3)ナノ材料の環境中の挙動に関する知見を増やす (4)暴露形態の特定、評価、ヒトの健康への影響の可能性の特定、職場における暴 露管理のため の適切な管理手法の開発 ・ ナノ材料を取り扱う職場における効果的手順の決定、普及への支援。NIOSH は、 2005 年中に安全労働基準を開発する予定 などがあげられている。 文献番号 米国2
著者 Emmanuelle Schuler, Rice University, Texas
発表年月 2004.3 Issue82 The IPTC Report
文献タイトル A Prospective Look at Risk Communication in the Nanotechnology Field ナノテクノロジー分野におけるリスクコミュニケーションの展望 (要旨) ナノ技術を例にリスクコミュニケーションに関する展望を行なったが、そこでリスク コミュニケーションが広い分野からなるものの、4つの事項が特に重要であることが判 明した。すなわち、社会の態度、認知、メデイアの役割そして信用である。これらすべ ての要因は相互に関係していて、社会のナノテクノロジーに対する不安と受容を形成す るのに影響する。リスク認知に関するこれまでの研究は、ナノテクノロジーコミュニテ イ―は社会の一般人も含めた、多様な利害関係者との開かれた対話に関わり、それらの 観点を意思決定プロセスに統合してゆくべきだと示唆している。これは、ある程度、例 えばすべての利害関係者が受け入れられるレベルのリスクを定義するなど、単なる対話 リスクというよりは、むしろ交渉リスクの問題にまでなるのである。
しかしこれは言うが易く、行なうは難しかもしれない。社会一般を含めた協議・関与・ 意思決定プロセスは、ひねくれた部外者に公に意見をいう機会を与えるだけであると心 配する人もいる。その結果、問題を解決するというよりも議論の対立を際立たせること になるかもしれない。 しかし、社会一般人を含めたつっ込んだ議論がなければ、否定的な結果になる可能性 がある。過去の遺伝子組み換え食品に関する論争から学ぶことがあるとすれば、以下の ことである。新技術の戦略的発達に一般人が関わらないと、公共機関への不信につなが る。信用は回復するのが大変難しい。たとえ一般の協議・関与が正当な懸念をもたらす としても、ナノテクノロジーにとっては、一般人を含めないで意思決定するほうが悪影 響が大きいだろう。科学・公共機関の信用を低下させ、一般の抵抗を引き起こすと、ナ ノテクノロジーの発展の道筋に悪影響を与えるだろう。 文献番号 米国3 著者 M . C . Roco
発表年月 2003 Journal of Nanoparticle Research 5 : 181 - 189 , 文献タイトル Broader societal issues of nanotechnology
ナノテクノロジーの広義の社会的目標 (要旨) 本論文は、 M . C . Roco が 2003 年 2 月に、日本で開催された Nanotech 2003 で行 った講演を基にまとめられたもの。ナノ技術研究開発計画における社会的影響に関する 活動状況を概観したもの。 ナノ科学技術は、これまでにない物質の理解と制御を可能にするとともに、知識、技 術教育に一貫性のある取り組みの必要性を増している。ナノ技術開発を推進する大きな 理由は、広い意味で社会的目標・・・自然の理解の改善,生産性の向上、健康の増進、 持続的発展および人間能力の限界の拡大・・・の達成を目指すことである。 米国NNI における教育、社会的影響分野の研究費は、約 3000 万ドル/年(うち 2300 万ドルが学生奨学金)、環境分野が約 5000 万ドル/年(うち 3000 万ドルが NSF 奨 学金、 EPA が約 6 万ドル)と推定。 経済成長、持続的発展を目的とし、この新技術をタイムリーで責任ある使い方をする よう、当初より社会的影響に関する研究を進め、その目標とリスクの可能性について、 成果の使用者、市民と効果的な対話を持つよう、世界中の研究者や研究組織に呼びかけ る。 この中で、ナノテクノロジーの成功が、単に大学や企業における優れた研究のみによ
ラ、環境や健康などの社会的影響などに関する重要な疑問が発せられる。研究開発、利 用、社会的影響が、一貫した相互に影響を及ぼしあう循環の輪を形成していると指摘し ている。 社会的影響を評価する際の考慮すべきいくつかの考えを上げている。 目標(社会的利益)と不測の結果(予期せぬ利益とリスク)との比較衡量、多様な分 野への応用、既に存在する自然界のナノ構造物との違い、既存規制体系の適合可能性、 国際的整合性、許容水準と許容できない水準の実質的な定義、個人の創造性から社会シ ステム国際的動向まで多くの要素が複雑に絡まった構造であること、技術開発の進展に 伴った累進的前進、かつての革新的技術の前例を学ぶことを上げている。 文献番号 米国4
著者 Vicki L Colvin, Center for Biological and Environmental Nanotechnology (CBEN) Rice University, Texas
発表年月 2003.10 Vol,21 No.10 pp1166-1170 Nature Biotechnology 文献タイトル The potential environmental impact of engineered Nanomaterials
ナノ材料の環境に対する潜在的影響 (要旨) ナノ材料の安全性に関する NGO の反応、政策当局の動きのほか、物理化学的性状、 職場、一般環境での暴露、環境、健康影響など86の文献を概観している。 職場暴露に関しては、毒性学の専門家、規制当局の経験があるが、不均一な混合物や サイズが分散したものの情報しかなく、均一なナノ材料の挙動はわかっていない。一方、 分子間力が大きく空中に単独に分散しにくいことから、UFP やミクロサイズの粒子よ り問題はないとも考えられる。 消費者暴露に関しては化粧品、日焼け止めに使用されているが、詳しくは商業秘密と なっておりわからない。米国では99年にミクロ化チタンは既存物質になっている。チ タン、亜鉛酸化物を含む有機物の光安定性が重要である。一般的には太陽光への暴露ほ ど問題はないようである。ただ、100ナノ以下の粒子の情報はない。 短期的にはこれら職場環境、消費者製品用途が懸念されるが、長期的には環境汚染が 問題である。ゴムタイヤ中の亜鉛であれ、塗料中の鉛であれ環境中の濃度は上昇する。 健康影響に関しては、少なくともカーボンナノ構造物に関しては、10本以上の毒性 に関する文献が出ている。UFP の吸入毒性に関しては同容量のミクロ粒子より毒性が 強いようである。また、粒子の形状、表面化学性状がサイズ以上に毒性評価に重要であ るようである。 21世紀、新技術はより懐疑的で要求の多い社会に直面することになる。社会に対す る利益が明確であるばかりでなく、科学者・技術者は潜在的影響をも予期し、その特徴 を述べなければならない。ナノテクノロジーの場合、ナノ材料の幅広い利用によって、
潜在的な環境影響を引き起こすという危険性がある。現在ナノ材料は、一般的暴露経路 や限定された使用では、公衆衛生に対する重要な危険性を示しそうにない。しかし、社 会で使われる人工ナノ材料の量と種類が増えれば、予期せぬ環境影響の結果を引き起こ す可能性もまた増加する。たとえ商品として確実に供給される前にナノ材料の危険性を 評価するのが難しくとも、先を見越した研究は、持続的なナノテクノロジー産業の発展 を確保するためには不可欠である。 文献番号 米国5
著者 Meridian Institute & Woodrow Wilson International Center for Scholars
発表年月 2003.10
文献タイトル Summary of the First Session of the Dialogue Series on Nanotechnology And Federal Regulation
(要旨) 2003年10月2日に開催された、米国メリヂィアン研究所、ウッドロー・ウイル ソン研究所共催の会議「連邦規制とナノ技術に関する対話」の第1回会議のとりまとめ。 政府からは、ウー商務省技術担当次官補(技術担当)、クール環境保護庁チーフ(汚染防 止毒物局新規化学物質届出マネジメント室)、マーローFDA 上級科学者(規制基準調整 官)が出席。 現行規制法(TSCA)での安全審査を前提して、 ・ 化学物質としての使用ではなく、バクテリアやウイルスのようなものなのか ・ 食品のようではあるが、実際には医薬品のばあいの規制はどうなのか ・ いくつかの規制の基準は、サイズではなく重量に着目している。ナノ材料の年1万 ポンドの規制トリガーはどうか ・ EPA はナノ材料を特徴づける重要な点として対象の表面の状態に着目する可能性 がある ・ 標準モデルと異なる挙動をするようになった既存化学物質でて来た場合、リスク予 想、健康影響の評価ができるのか ・ 化学的同等性と構造、活性度の同等性とは異なるかもしれない など実際の運用を想定した議論を行っている。 また、超微粒子を対象にNTP で行なわれている2つの研究に注目。 あまり多くの注目を集めなかったが、研究開発用途の除外規定も指摘された。 規制への適合のための評価をするための実験モデルの開発、現在または将来の名の材料 による審査事例の開発の必要性も指摘された。
文献番号 米国6
著者 Steven R.J. Brueck(委員長:ニューメキシコ大学), S.T Picraux(副 委員長:アリゾナ州立大学)他、大学、民間、国立研究所から14名 全米研究評議会空軍科学技術部会
発表年月 2002
文献タイトル Implication of Emerging Micro and Nanotechnology 新興ミクロ、ナノ技術の影響 (要旨) この報告は、全米科学アカデミー、全米工学アカデミーおよび医薬品研究所から選ば れたメンバーからなる委員会でまとめられ、全米研究評議会の理事会の承認を受けてい る。調査は米空軍と全米科学アカデミーからグラントの支援をうけた。報告書の意見、 発見、結論、勧告は著者自身のものあり、調査を支援した機関の考えを反映したもので はない。 空軍任務遂行能力の向上とい観点から、マイクロ、ナノ技術の現状、可能性を調査し、 技術的観点、政策的観点から勧告をまとめている。 増大する情報能力、ミニチュア化、新設計材料、増大した機能性と自立性、将来のミ クロ、ナノ技術の方向、期待される主要分野、可能性を広げる製造技術、空軍のミクロ、 ナノ技術プログラムと機会、空軍プラットフォームの機会について調査が行なわれ、 情報処理、ミニチュア化、新材料、高機能・自立性など研究開発の重点分野への取組 強化、戦略に関する技術的観点からそれぞれ8項目の発見と勧告、研究開発資金の増額、 重点分野への集中、民生技術、市場の活用などに関する政策的観点からそれぞれ4項目 の発見と勧告がなされている。 文献番号 米国7
著者 M C. Roco and W S. Bainbridge, NSF 発表年月 2002.6
文献タイトル Converging Technologies for Improving Human Performance
Nanotechnology, Biotechnology, Information Technology and Cognitive Science
(要旨)
2001 年 12 月に開催されたWSの参加者の発表をとりまとめたもの。
21世紀の初めには、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報テクノロジーと 認知科学に基づいた新しいテクノロジーの進歩に集中的に努力することよって、科学を
統一することができよう。倫理問題と社会的ニーズに適切に注意を向けつつ、テクノロ ジーの統合は人間の能力、社会の結果、国の生産性、生活の質の大幅な向上を成し遂げ ることができる。これは、長期的な個人と社会と人間の利益の、広く横断的で新しく時 宜を得た機会である。 「テクノロジーの統合」という言葉は、以下の4つのNBIC(ナノ−バイオ−情報− 認知)、いずれも現在急速に進歩している、科学とテクノロジーの分野の、相乗的な結 合を指している。a)ナノサイエンスとナノテクノロジー、b)遺伝子工学を含めたバイオ テクノロジーとバイオ医療、c)高度な計算とコミュニケーションを含む情報テクノロジ ー、d)認知神経科学を含めた認知科学 多様なテクノロジーの統合は、ナノスケールでの物質単位とナノスケールからの技術 統合に基づいている。すべての科学にとって基礎的な、物質の組み立てる単位は、ナノ スケールから始まる。現在別々の分野である科学とテクノロジーの境界における革命的 な進歩は、NBIC テクノロジーのための重要な変形道具を作り出す準備がある。システ ムアプローチ、数学、計算科学の NBIC との結合における発展は、初めて自然界や人 間社会や密接に結合した複合体、分類体系的なシステムとしての科学的研究を理解する ことを可能にする。技術的成果の進化におけるこの瞬間、技術の統合を通じて人間能力 の向上が可能となる。 報告では、技術統合の可能性、ヒトの認識・コミュニケーションの拡大、健康・能力 の増進、組織・社会の成果の推進、安全保障、科学と教育の統合の各分野について意見、 重点研究などについてまとめている。仕事効率と学習の向上、個人の知覚と認知能力の 向上、健康管理における革命的な変化、個人と集団両方の創造性の向上、脳間の相互作 用を含む高度に効率的なコミュニケーション技術、神経形態工学を含む人間−機械の境 界の改善、神経人間工学を含む安定で「理性的な」環境、防衛目的における人間の能力 の向上、NBIC の道具を利用した持続できる発展の到達、老化した精神に一般的な身体 的認知的な衰弱の改善などの例が挙げられている。 これらを通してテクノロジーの統合にむけた国の研究開発の重点目標として、人間能 力の向上をあげ、各セクターにそのための勧告をまとめている。 文献番号 米国8
著者 Mihail C. Roco and Renzo Tomellini
発表年月 2002.1,31-2,1
文献タイトル Nanotechnology: Revolutionary Opportunities &
Societal Implications 3ed Joint EC-NSF Workshop on Nanotechnology ナノ技術:革命的機会と社会的影響
(要旨) ECとNSFが共同主催する第3回目のWSの結果をまとめたもの。欧米の専門家約 70名が参加。 ナノ技術がもたらす将来の技術的可能性、教育に与える影響、社会に与える影響の3つ のセッシオン及びポスターセッシオンに分かれて議論が行なわれた。 将来の可能性に関しては、ナノスケールで現れる新しい物理化学的性質を活用し、高 効率の光源、エネルギー転換、貯蔵、利用、表示、電荷貯蔵などへの応用が期待される。 また、医薬、健康分野での革新をもたらす。さらに、ナノ機械デバイスは、動作、演算、 移送、コミュニケーションに革新をもたらす可能性を指摘。 教育に関しては、ナノ技術は分野横断的な性格を有しているため、そこに従事する労 働者に雇用、訓練にも多くの努力を必要とする。また、教育のもうひとつの対象である 一般市民に対する働きかけも重要である。 社会影響に関しては、生命科学の進歩という利益とともに、健康影響への懸念が高ま ってきている。また、生産量が増えるに従い環境へのエお経も懸念されるところである。 健康、環境への影響について、今後一層の研究が必要である。 また、プライバシーの侵害などの倫理問題、機械の暴走への懸念も社会面における影響 としてある。一般市民をも含めた対話を通じて、一般市民、政策立案者、メデイア、研 究開発者間の意思疎通と信頼の構築を図る必要がある。 いくつかの勧告がWSを通じてまとめられている。 ・ ECとUS間の人材交流の拡大 ・ 専門性を高めるためにEC,USで共通する雇用、訓練モデルを構築 ・ EC−US間にあるナノ技術の応用についてのエネルギー利用、環境保護、情報技 術、バイオ技術の協力関係を、商業化、公共政策の分野まで広げるべく、産官共同 で開拓する。 ・ 教育の分野で新しい協力関係を構築する ・ メデイアや博物館、科学センターなど科学教育を担う機関と科学技術界との接触を 図るための支援を行う。 ・ 地域グループとの対話を拡大し、どのように効果的に達成したかを評価する 文献番号 米国9
著者 Mihail C. Roco and William Sims Bainbridge
発表年月 2001.3 National Science Foundation
文献タイトル Societal Implications of Nanoscience and Nanotechnology NSET Workshop Report
(要旨) 連邦科学技術評議会(NSTC)ナノ科学、工学、技術小委員会(NSET)の要請をう けて上記テーマで、2000年9月28−29日に NSF で開催された WS を報告とし てとりまとめたもの。 本調査の目的は、ナノ技術に関する社会的影響(教育、技術、経済、医療、環境、法 制、倫理など)に関する研究の現状を調査し、社会影響の将来の研究を調査評価手法を 見出し、望ましくない結果を最小化しつつナノ技術がもたらす成果をひきだすための方 策を提案することにある。 WS では、リスクを最小化しつつ利用を加速化し、研究、教育を改善し、主要機関の 役割のついて勧告を行なっている。 ・ ナノ技術に関する社会経済研究の支援に高い優先順位を与える ・ 連邦ナノ技術調整室(NNCO)に、ナノ技術の影響を受ける一般市民への広報、教 育、参加の仕組みを構築する ・ 短中長期的観点からナノ技術の科学、技術、社会影響を評価するための知的基盤、 組織インフラを作る ・ ナノ科学、技術に精通した新世代の科学者、労働者の教育訓練 ・ 各専門家への広報、教育、参加のためのフォーラム、継続教育活動を行なっていく ための専門学会への支援 さらに各機関に対して、以下の勧告をまとめている。 ・ 教育研究機関は、社会経済的影響に関する主要な教育研究について、分野横断的な 仕事に焦点を当てる。物理、化学、生物、材料、工学と社会学、経済学との間の学 際的交流を支援する。ナノ技術研究、産業に関わる新世代の人材を育成し、市民、 教員、企業、学者からなる地域情報センターを設立すべき。 ・ 民間部門は、社会影響の評価のために知見を提供し、シーズに投資する。大学と他 セクターとのパートナーシップを開拓する。社会科学研究への門戸開放と社会影響 研究成果のフィードバックを図るべき。 ・ 政府系研究開発研究所は、ナノ技術の主要な活動(社会経済面の評価を含む)のため の学際的な研究チーム(社会学者を含む)を設立すべき。また、評価と未来のシナリ オを継続的に見直すためのデータべースを設けること。国防強化に資するナノ技術 研究を支援すること。 ・ 政府系資金援助団体は、社会影響研究のため、ナノ技術研究者、社会学者を支援す ること。ナノ技術の開発をモニターし、社会‐法制面の影響を調査し、適切な措置 が取れるよう NNCO あるいは助言組織を支援すること。長期的な基礎研究、短期 的な技術開発に対し、技術基盤を形成し新技術の可能性を明らかにするために整合
的な支援を行なうこと。 NNCO、NSO ( IT )、 BECON (バイオ)の連邦政府の 他の調整組織との連携を進めること。 ・ 学会に対しては、研究者と市民を対照とした広報、教育、参加を目的とした討論の 場を設け、継続的教育活動を行うこと。大規模な研究開発への助言と潜在的な危険 の兆候について警告を与えること。
欧州
文献番号 欧州1著者 The Royal Society & The Royal Academy of Engineering
発表年月 2004.7
文献タイトル Nanoscience and Nanotechnologies : Opportunities and Uncertainties ナノ科学、ナノ技術:機会と不確実性 (英国王立協会/王立技術アカデミー報告) (要旨) 本報告は、2003年6月、英国政府より、王立協会、王立工学アカデミーに対して、 ナノ科学、技術の現状、将来展望とその影響に関し、独立に調査を行うことを要請した ことをうけてまとめられたものである。 調査の目的は、 ・ ナノ科学、ナノ技術の定義 ・ ナノ技術の科学的知見の現状の把握 ・ 新技術の特定の応用、特にすでに実用化されている分野の把握 ・ 技術の活用法に関する将来予測、最も将来の実用化時期を含め実用化時期の可能性 の予測 ・ 現在及び将来の技術の使用によって引き起こされる健康、安全、環境、倫理、社会 に与える影響、不確実性の把握 ・ 追加的規制の必要性を検討すべき分野の特定 分野別専門家WG の検討、市民などを含む数回の WS、民間調査機関による調査などの 結果をまとめたものである。今後の対応として21の勧告がまとめられた。 ナノスケールの定義 ナノスケールは、100ナノ以下原子サイズ(約0.2 ナノ)までのものに関心が集ま っている。(1nm=1/10億メートル。ヒト毛髪の幅、8万ナノ。赤血球は約7000 ナノ、水分子が約0.3 ナノ) ナノサイエンスとは、原子、分子、分子塊の現象解明、操作の研究。ナノ技術とは、