91 KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT VOL.5(2008)
インクジェットスキャン型プリントユニットの開発
Development of the Nassenger-V MarkⅡ Scanning Unit and Inks溝 口 修 理* Mizoguchi, Shuri 工 藤 圭** Kudo, Kei 中 溝 孝 司* Nakamizo, Takashi 大 友 直 樹* Otomo, Naoki
要旨
我々は,生産機としてのインクジェット捺染プリンタ システム,Nassenger-V を 2004 年に上市し,日本国内, 欧州を中心に展開を行ってきた。今回,Nassenger-V 後継機の Nassenger-V Mark Ⅱ開 発にあたっては,ユーザーが独自のシステムを容易に構 築できるように,Nassenger-V から搬送系を分離した。 搬送機は,欧州布帛搬送メーカーと提携し,欧州にて搬 送ユニットを結合している。更に適用布帛種と色域の拡 大を図るための各種インクを開発,印刷モードの多様化 を図った。 本報告では,これらの内容を報告する。
Abstract
We launched the Nassenger-V as a high performance production IJ printing system for the textile market for not only Japan but also for EU.
With the experience of Nassenger-V, we developed the Nassenger-V Mark Ⅱ as the next system, of which fabric transportation system is separated from the printer to make it easy for venders to build up their original printing system. At the same time, we developed the new inks and printing modes to expand the color gamut and to increase the fabric kinds for the new system.
These developments are described in this report in detail.
1 はじめに
捺染市場において,インクジェット技術を採用したデ ジタル捺染印刷は,サンプル作成から量産捺染印刷へと シフトを始め,急速に普及の兆しを見せている。 そして,インクジェット捺染業界に参入するメーカー, 及びユーザーも増加傾向にある。 その中にあって,当社は,本格的な生産機としての性 能を満足することを目標に,「信頼性」,「生産性」,「品質」 を大幅に改良したNassenger-Vを2004年に上市し,日本 国内,欧州を中心に展開を行ってきた。 現在,市場からは多種多様の布帛における搬送性能, 及び適用布帛種拡大,色域拡大,印字速度に関して,性 能向上が要望されている。 後継機MarkⅡ(Fig. 1)の開発にあたっては,下記 に留意して開発に取り組んだ。 ⑴ 市場要望を織り込む。 ⑵ インクジェット捺染以外の用途への拡大を可能と するインクジェットスキャン型プリントユニット とする。 ⑶ プリントユニットを,インテグレーターに提供す る。インテグレーターは,販売地域,ユーザーニー ズに合わせた搬送モジュール〔FabricTransport Unit〕を組み合わせ,インクジェット捺染プリン タ専用機とする。 また,性能向上のために以下の開発を行った。 ⑴ 適用布帛種の拡大と色域拡大を目的とした新規イ ンク開発。 ⑵ 印字速度アップを目的としたインク物性のヘッド への最適化開発と,印刷モードの新規開発。 *コニカミノルタIJ㈱ 開発統括部 第3開発部 **コニカミノルタIJ㈱ 開発統括部 第1開発部 Fig.1 Nassenger-V MarkⅡ92 KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT VOL.5(2008)
2 本機の特徴
インクジェットスキャン型プリントユニットとして開 発したNassenger-VMarkⅡは,インクジェットヘッド から布帛にインクを吐出するスキャンユニット本体と, ヘッドにインクを供給するインク供給部とで構成してい る。 スキャンユニット本体は,ヘッドを合計16個搭載し, 保湿・サクション・ヘッドクリーニングからなるメンテ ナンス部と,インク滴検出部を備えている。 インク滴検出部では,ヘッドからのインク吐出検出と, 吐出速度の計測を行い,スキャンユニット本体に設けら れた制御装置にて,インク吐出速度が一定となるように, ヘッド印加電圧の制御をインク毎に行っている。 搭載ヘッドは,Nassenger-Vで実績のある,シェアモー ドピエゾオンデマンド方式であり,1ヘッドあたり 180dpiの256ノズルヘッドを採用し,各色(8色)のイン クにつき2ヘッドを使用している。 ヘッドからの安定したインク吐出を実現するには,イ ンク物性に合わせたヘッド駆動条件の最適化が必要であ る。同一装置にて多種のインクを使用する本機では, Nassenger-Vと同様に色毎のインクに応じた複数のヘッ ド駆動条件を装備している。 Nassenger-Vでは,ヘッド駆動条件の最適化により, 分散染料インクの印刷速度は,反応染料インクに対し, 約12%の速度向上を図った。 本機では,新規に開発した酸性染料インクと,反応染 料特色インクを搭載した。これらの新規インクは,印刷 速度を分散染料インクと同等とするためにインク物性の 最適化を行っている。 Nassenger-Vと本機Nassenger-VMarkⅡの代表的な モードでの印刷速度の比較をTable 1に示す。 印刷速度の単位は,squaremeter/hourである。3 システム構成
Nassenger-VMarkⅡでは,Nassenger-V(欧州仕様) と同様に,ユーザーが希望する印刷モード毎のLUT 〔LookUpTable〕は,販社が 準 備し,専用RIP〔Raster ImageProcessor〕ソフトウェアを使用して印刷を行う 方式を採用している。 Fig. 2にインク射出に至るまでのデータフローを示す。 ユーザーによって入力された画像データは,指定され たLUTを使用してRIPソフトウェアによって色変換が行 われ,続いてインクジェットで記録するためのハーフ ト ー ニ ン グ 処 理(1ま た は,2bit化 ) が 行 わ れ, NassengerMDCControllerに送られる。このMDCは, RIPベンダーにNassenger-VのI/Fを提供するソフトウェ ア上の切り口であり,また,ユーザーへのプリンタ操作 のI/F(GUI)となっている。 MDCに送付された画像データは,必要に応じて不要 なデータを削除されて,USB2.0を経由して,プリント ユニット内の画像処理部に送信される。 画像処理部は,受信した画像データを一旦バッファー メモリーに保存し,メカ制御部が制御しているヘッド キャリッジの動作に同期して,ヘッド駆動部に画像デー タを送出する。このとき,画像の左右の向き,インター リーブ処理,縦横変換などのフォーマット変換を画像処 理部が行っている。ヘッド駆動部に送られた画像データ は,色毎に最適化されたヘッド駆動条件で,ヘッドを駆 動し,インクによる描画を行う。Table 1 Printing speed, no I/L mode
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Fig. 3に本機のシステム構成を示す。 プリントユニットと搬送ユニットは,専用のI/Fで接 続されている。このI/Fは,プリントユニットが搬送ユ ニットを制御するコマンドラインと,互いの緊急停止を 制御する制御線を含んでいる。 記録時には,主走査終了毎に,プリントユニットが搬 送ユニットに対して,指定の長さの搬送を指示するコマ ンドを送付し,搬送ユニットは,搬送終了時に,搬送終 了を示す応答を行う。 また,緊急停止制御については,プリントユニットと 搬送ユニットどちらが緊急停止を行っても,相互に通知 を行い,ユーザーの安全を確保する構成としている。 安全性においては,コニカミノルタにおける安全基準 (素材,及び製品)を満たしており,変異原性(Ames 試験),皮膚感作性評価において陰性である。 さらに今後,欧州で稼動される新たな化合物管理シス テムに対して,規制対象となる可能性の低い素材を採用 した。 ナイロンにおける堅牢度(Fastness)は,Cyanイン クの耐光性を除き(他社インクと同等),JIS 3級以上 の性能を満足している。(Table 3) 表中の数字は,JIS試験による等級を表す。
Fig.3 Electrical system configuration
4 採用インク
〈酸性染料インク;Aciddyeink〉 本機では,Nassenger-Vで搭載する反応染料インク (Reactivedyeink), 分 散 染 料 イ ン ク(Dispersedye ink)の他に新規に酸性染料インクを開発した。(Table 2) 酸性染料インクを搭載することにより,欧州市場で要 求の高いナイロン(特に水着用NylonLycra)への適用 が可能となり,鮮明な色調再現(Brightness,brilliant, vivid)において,反応染料インクに対し優位性が向上 した。Table 2 Ink and printable fabrics
Table 3 Fastness (fabric:Nylon Lycra)
○:適する,−:不適
94 KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT VOL.5(2008) 〈反応染料特色インク;Reactivedyeink〉 酸性染料インクの開発と並行して,従来の反応染料イ ンク(濃淡)の色域拡大と印字速度向上のために,特色 インク3種類(O;オレンジ,MX;エクストラマゼンタ, B;ブルー)と,淡色インク2種類(Pk;ピンク,Gy; グレー)のインクを新規開発した。 これら今回開発した新規特色/淡色インク,及び従来 の反応染料インク,及び分散染料インクについても,素 材及び製品は,いずれもコニカミノルタグループ安全基 準を満たしており,安全であることが確認されている。
5 マルチドロップコントロール
ユーザーは,印刷画像と使用する布帛により解像度(主 走査・副走査)を選択する。本機では,主走査・副走査 の組合せで,新規に複数の印字モードを用意した。 (Table 4) Nassenger-Vに対し,新規に追加した印字モードを, 表中の「斜体太字」で示す。Table 4 Printing mode
一般的には,選択した記録解像度により,単位面積当 たりの最大インク量が決定される。高解像度になるほど 最大インク量は増加するが,同時に印刷速度も低下する。 解像度を変更せずに,最大インク量を増加させる手段 として,1画素に複数のドットを打ち込む方法と,吐出 液滴サイズの変調を行う方法がある。 本機では,吐出安定性を考慮して,1画素に1dpd〔Drop perDot〕と2dpdを混在させるマルチドロップコント ロール〔MDC〕を採用し,印刷画像のハイライト部分 の粒状性を維持すると共に,細線再現性と最大インク量 の増加を同時に実現している。 この技術を採用したことにより,同じ最大インク量に おいて印刷速度のアップを図ることが可能となった。 Table 5 - 6 は,1dpdモ ー ド〔Single-drop,noI/L mode〕,1dpdと2dpd混 在 モ ー ド〔Multi-drop,noI/L mode〕の,主走査・副走査解像度と印刷速度の関係を 表す。 1dpdモード,540dpi(主走査)×720dpi(副走査)では,
Table 5 Single-drop, no I/L mode
Table 6 Multi-drop, no I/L mode