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特別支援教育から見る今後の教育に関する一考察 ― 中央教育審議会特別委員会の審議内容と知的障害教育から考えること ―

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Academic year: 2021

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(1)Title. 特別支援教育から見る今後の教育に関する一考察 ― 中央教育審議会特 別委員会の審議内容と知的障害教育から考えること ―. Author(s). 塩見, 啓一. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 16: 27-36. Issue Date. 2019-03-26. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10494. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 特別支援教育から見る今後の教育に関する一考察 ― 中央教育審議会特別委員会の審議内容と知的障害教育から考えること ― 塩 見 啓 一*. A Study on Future Education Thinking from Special Support Education ― Thinking from the Deliberation of the Educational Council Central Committee Special Committee and Intellectual Disability Education ―. 要 約 我が国の障害のある子どもへの教育は,国連から分離教育制度と指摘されていた特殊教育を,2007年 に特別支援教育へと転換した.しかし,特別支援教育の開始とほぼ同時に,全体の教育施策が「ゆとり 教育」から「確かな学力」へと大きく転換したこともあって,インクルーシブ教育を目指していた普通 学級は大きな混乱を招いた.中央教育審議会は「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」を設置し, 特別支援教育の現状と課題を検討したが,様々な問題の存在は明らかになったが,具体的な改善のため の施策を示すまでには至らなかった. 本稿では,知的障害教育の課題と解決のための方策について検討することを通し,知的障害教育の指 導の特性,方法を検討することが特別支援教育の混乱,課題の解決に役立つだけでなく,教育全体の現 状と今後の在り方を検討するために有効なのではないかと考えた.. はじめに. 上の困難を改善又は克服するため,適切な指 導及び必要な支援を行う.. 2007年の学校教育法の改正にあわせて文部科学. ② これまでの特殊教育の対象の障害だけでな. 省から特別支援教育の推進についての通知が出さ. く,知的な遅れのない発達障害も含めて,特. れ本格的に始まった特別支援教育は,開始から10. 別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍す. 年以上を経過した.. る全ての学校において実施される. ③ 障害のある幼児児童生徒への教育にとどま. 特別支援教育が掲げた崇高な理念は以下の通り である.. らず,障害の有無やその他の個々の違いを認. ① 障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加. 識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる. に向けた主体的な取組を支援するという視点. 共生社会の形成の基礎となるものであり,我. に立ち幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズ. が国の現在及び将来の社会にとって重要な意. を把握し,その持てる力を高め,生活や学習. 味を持つ.. *. Keiichi SHIOMI:札幌学院大学教授,北海道教育大学大学院学校臨床心理専攻非常勤講師. キーワード:特別支援教育,知的障害教育,エピソードの記述,教育の成果の明証性. 27.

(3) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 崇高な基本理念を基に始まった特別支援教育は, 1 文部科学省中央教育審議会特別支援教育. のあり方に関する特別委員会について. 現在の日本の学校教育がグローバル化する国際経 済に対応するための教育再編の過程にあり,特別 支援教育が目指す制度改革もその一環に含まれざ. 日本の特殊教育は国連・子どもの権利委員会か. るを得ないことから,現場で具体化された問題の. ら1998年から3度も分離教育制度に対する勧告を. 背景及び原因は,新自由主義教育改革からの影響. 受け,特別支援教育に変わっていた2010年にも「分. を強く受けており,最も必要とされた分離・隔離. 離教育からインクルーシブ教育にすぐに転換する. 的と言われた特殊教育の改造と公教育制度の再編. べき」と特に厳しい勧告を受けている.このこと. を視野に入れた制度転換についてほとんど論議が. から特別支援教育制度は障害者権利条約批准の最. 施されていない.. 大のネックと言われ,特別支援教育制度とインク. 特別支援教育政策は開始から5年を経た頃から. ルーシブ教育との整合性をいかに付けるかが大き. 矛盾が指摘されていた.特殊教育から特別支援教. な課題であった.文部科学省は「権利条約批准の. 育になって初めて対象になった発達障害児が普通. 達成を目指すうえで重要な教育制度の要件は何. 学級や特別支援学級で,他方で重い障害児のある. か」 「日本的なインクルーシブ教育システムの構. 児童生徒は特別支援学校で,ともに十分な教育的. 築を図るうえで,現行の特別支援教育をどのよう. 支援を受けられないという現状である.障害児の. に位置付けるか」を目的として特別委員会を設置. 「問題行動」を抑えるための向精神薬の無軌道な. した.. 投与を問題した番組も放映された( 「NHKクロー. 特別委員会の設置は,日本が国連の「障害者の. ズアップ現代」2012年6月13日放送) .. 権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」)の. 2010年7月に設置された「文部科学省中央教育. 批准のための最大の問題点である障害教育分野で. 審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方. の特別支援教育と障害者権利条約のインクルーシ. に関する特別委員会」 (以下「特別委員会」 )は19. ブ教育との整合性をつけるためのものということ. 回に渡る審議を経て,2012年7月23日に「共生社. ができる.. 会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構 築のための特別支援教育の推進(報告) 」を出した. 2 特別委員会の審議内容 その中で,特別委員会は「特別支援教育の現状は 収拾のつかない混乱と矛盾に陥っている」と報告. ⑴ 「論点整理」. した.また,特別委員会は,報告において, 「特. 特別委員会は第1回(2010年7月)から第8回. 別支援教育は,共生社会の形成に向けて,インク. (2010年12月)までの審議を「論点整理」として. ルーシブ教育システム構築のために必要不可欠な. まとめた.これは,翌年の通常国会に改正障害者. ものである」と特別支援教育政策の政策的破綻を. 基本法を上程するという,全閣僚によって構成さ. 補完するものとして,改めてインクルーシブ教育. れた「障がい者制度改革推進本部」のもとに設置. 政策に踏み出した.. された「障がい者制度改革推進会議」の工程に合. 本稿では,この特別委員会での審議内容を踏ま. わせるため,中央教育審議会初等中等教育分科会. え,従来の特殊教育の対象や対応方法などを包含. に年内に報告する必要があったためであり,この. しつつも,その考え方や対象を大きく変え, 「共. 時点で主な検討事項に関する審議が終了したとさ. 生社会」の実現のための基礎となるはずであった. れ,特別委員会は一旦廃止された.この時点では,. 特別支援教育のこれまでを振り返りながら,知的. 「インクルーシブ教育」を巡る論議が中心で,特. 障害教育の考え方を参考にして,今後の教育全体. 別委員会の審議内容に特別支援教育の現状と課題. について検討してみたい.. についての認識がほとんど見られない. しかし,政権内の変化により障害者政策の優先 順位が後退し,推進会議と制度改革の政策的位置 も後退したことにより,2012年初めには改正障害 28.

(4) 特別支援教育から見る今後の教育に関する一考察. 者基本法の第16条(教育)がほぼ文部科学省の提. しくなっており,グレーゾーンと言われる子. 案通りになったのを受けて特別委員会は別の目的. どもたちを特別支援学級に在籍させるべきな. を持って再集結することになった.再開された特. のかどうかが曖昧で,特別なニーズが必要か. 別委員会では,推進会議と制度改革の圧力が減少. もしれない子どもたちへの対応が不明瞭だか. したことにより,特別支援教育の現状をどう取り. らである. ⑤ 優秀な教員を特別支援学級担当者にするの. 繕うかというところに議論の焦点が移行した.. はもったいないという理由で経験の浅い教員 が特別支援学級の担任をしており,特別支援. ⑵ 議論の中心「特別支援教育制度の行き詰ま. 学級の担当は普通学級の担当より一段下に見. り現象について」 特別委員会では,第1回の会議から,本格的に. られて,長年の担当は極稀で,経験を積んだ. 始まってから5年を経過した特別支援教育の行き. 人材が極端に少なく,特別支援学級の子ども. 詰まりが深刻になっていることが話題になってい. の支援は十分とはいえない.また,障害のあ. た.特別委員会の委員は実際に特別支援教育に関. る子とない子と線引きが難しくなってきてい. 係している人が多く,現場のストレートな現状が. る.. 語られている.その主なものは以下の通りである. 各委員の発言から,特別支援教育制度が開始さ (特別委員会議事要旨・議事録・配付資料の要約). れて以来普通学級の混乱が増加している現状が明. ① 特別支援教育政策の目的は発達障害児を含. らかになる.発達障害児も含めた何らかの学習に. めた100万とも言われる何らかの教育的支援. 困難を抱えている,いわゆるグレーゾーンの子供. を要する子どもに新たに支援をすることであ. たちは「発達障害」がブームになり,「発達障害. り,そのための理念が一人一人の教育的ニー. 児探し」が顕著になるにつれて増加の一途であり,. ズを把握して個々人に適切な支援を行うとい. この子供たちにどう対応していくかが,特別支援. うことであり,制度のキーポイントは障害種. 教育政策の今日的な課題になってしまっているこ. 別を限定しない特別支援学校とそのセンター. とも伺える.. 化,特別支援教室の創設,特別支援コーディ ネーターであったが,特別支援コーディネー. ⑶ 「報告」. ターは医療的な診断に特化されてしまってお. 特別委員会は第9回から第19回の審議をまとめ. り,一人一人の教育的ニーズに適切な支援を. て「報告」とした.その中身は,以下のような項. するということからはかけ離れている.. 目となっている. ① 共生社会の形成に向けた取り組み. ② 特別支援学校が担うことになっていたセン. ② 就学相談・就学先決定の在り方についての. ター機能はその機能を果たせておらず,政策. 検討. の目的,理念,制度がことごとく機能してい. ③ 障害のある子どもが十分に教育を受けられ. ない.. るための合理的配慮及びその基礎となる環境. ③ 障害種別を限定しない特別支援学校と特殊. 整備. 学級をなくして普通学校・学級における総合. ④ 多様な学びの場の整備と学校間連携等の推. 的対応をするための特別支援教室構想は,現. 進. 場の猛反対にあって当初より無くなり,特別. ⑤ 特別支援教育を充実させるための教職員の. 支援学校,特別支援学級在籍者は,2004年か. 専門性向上. ら2009年の5年間だけみても文部科学省の集 計によれば1.5倍から2倍に増え,特別支援. 等の項目となっている.. 学校は満杯状態であり,障害児が劣悪な教育. 数多くの審議を重ね,特別支援教育の開始時か. 環境に置かれている.. ら現在に至るまでの様々な問題点は明らかになっ. ④ 普通学級が混乱しているのは,障害のある. たものの,具体的な改善のための施策を明らかに. 子ども,障害のない子供の線引きが非常に難. することが出来たとはとても言えない報告となっ 29.

(5) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). たのは,特別支援教育の今後にも画期的な施策は. 2002年に文部科学省の調査研究会は「通常の学. 期待できないことを伺わせる.. 級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童 生徒に関する全国実態調査」という悉皆調査を. 3 特別支援教育が目指した基本理念の実現 に向けて. 行った.そこでは留意事項として次のように書か れている.「本調査は,担任教師による回答に基 づくもので,LDの専門家チームによる判断では. 新しい世界的な障害観の変化を背景に, 「共生. なく,医師による診断によるものでもない.従っ. 社会」の基礎となるべく崇高な理念とともに,一. て,本調査の結果は,LD・ADHD・高機能自閉. 人一人の子どもの教育的ニーズに対応した教育的. 症の割合を示すものではないことに注意する必要. 支援を目的として開始された「特別支援教育」は, がある.」つまり,そもそもこの調査は,国語や 開始とほぼ同時期に教育全体が大きく方向転換し. 算数の学習や生活面での遅れがある児童の数を調. たこともあって,これまでの「特殊教育」を新し. べたものであって,医学的診断名であるはずの. い制度に転換するためには,様々な課題があるこ. LD,ADHD,高機能自閉症の数を調べたもので. とが明確となった.. はない.. インクルーシブ教育を目指すことになったはず. しかし,2003年度から始まった「特別支援教育. の小学校普通学級と,一人一人の特別な教育的. 体制モデル事業」では「すべての小・中学校にお. ニーズに対応することになったはずの特別支援学. いてLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒に対. 校,特に知的障害の特別支援学校での課題を整理. する支援体制の整備を目指すもの」とされていた.. してみたい.. そして調査研究協力者会議は, 「今後の特別支援 教育の在り方について(最終報告)」を出し,以. ⑴ 特別支援教育開始当初からの混乱. 下の定義とシステムの枠組みを公表した.. 特殊教育から特別支援教育への転換は,ノーマ. ① 特別支援教育とは従来の特殊教育の対象の. ライゼーションの進展や障害の重度・重複化や多. 障害だけでなく,LD,ADHD,高機能自閉. 様化,教育の地方分権など特殊教育をめぐる状況. 症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会. の変化が生じていることや,特殊教育が,これま. 参加に向けて,その一人一人の教育的ニーズ. で盲・聾・養護学校や特殊学級等に就学する児童. を把握して,その持てる力を高め,生活や学. 生徒への教育が中心であったため,小・中学校等. 習上の困難を改善または克服するために,適. の通常の学級に在籍する学習障害児や注意欠陥/. 切な教育や指導を通じて必要な支援を行うも. 多動性障害(ADHD)児,高機能自閉症児等特. のである.. 別な教育的支援を必要とする児童生徒等への対応. ② 現行の盲・聾・養護学校を障害種別にとら. が積極的に求められるようになったことを契機と. われないセンター的機能を持つ「特別支援学 校」の制度に変更すること.. して始まった.. ③ 現行の特殊学級と通級による指導を「特別. 2001年,文部科学省調査研究協力者会議は「21. 支援教室」に一本化すること.. 世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)―. ④ 各学校に「特別支援教育コーディネーター」. ―人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方に. を配置し,「個別の教育支援計画」の作成を. ついて―」を出した.そこでは次のような提言が. 徹底すること.. 行われた.「これまでの特殊教育は,盲・聾・養 護学校や特殊学級などの特別な場において,障害. そして「今後の特別支援教育の在り方について. の種類,程度に応じた適切な教育を行うという考. (最終報告) 」は,障害種別の特殊教育諸学校と. え方に基づいていた.しかし,これからの特殊教. 特殊学級をなくすという点で衝撃を与えた.2005. 育は児童生徒の特別な教育的ニーズを把握し,必. 年「特別支援教育を推進するための制度の在り方. 要な教育的支援を行うという考え方に転換する必. について」では,今まで通り特別支援学校・学級. 要がある」 .. が存在できることになり,結局名前だけが変わり, 30.

(6) 特別支援教育から見る今後の教育に関する一考察. 特殊教育のシステムでは解決不可能な存在であっ. 児との共同及び交流学習等,特別支援教育の中で. た発達障害・グレーゾーンの子供たちを新たに対. 示された様々な取り組みを可能にした.. 象にしただけとなり「大きな矛盾」を抱え込んだ. しかし,2007年,特別支援教育の本格実施と同 この時点で今日の混乱は必然であったというべき. じ年に「全国学力・学習状況調査」が実施された.. だろう.. それ以後,都道府県教委,市町村教委,各学校は,. そして「小・中学校の通常の学級に在籍してい. 学力テストの成績を上げる教育を強いられること. る児童生徒のうち,LD・ADHD・高機能自閉症. になった.. により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要 としている児童生徒が約6%程度の割合で存在す. ⑶ 普通学級と特別支援学級の混乱. る可能性が示されており,これらの児童生徒に対. 2000年代初め,小学校では,特別支援教育コー. する適切な指導及び必要な支援は,学校教育にお. ディネーターを指名し,校内委員会,専門家チー. ける喫緊の課題となっている」 (中央教育審議会. ムを設置し,特別支援教育の実施のために体制を. 「特別支援教育を推進するための制度の在り方に. 整備しつつあった.. ついて」2005年)ことをその必要性の根拠とした. 一方で,拡大しつつあった「発達障害」概念の さらに2007年に文部科学省は, 「 『発達障害』の. 情報は,それまで「不器用な子」,「勉強のできな. 用語の使用について」という通知を出し,LD・. い子」, 「落ち着きのない子」, 「わがままな子」, 「変. ADHD・高機能自閉症等を「発達障害」という. わった子」をそれぞれの教師が「特別な教育的ニー. 用語に変えてしまった.さらにその中で, 「学術. ズ」として捉え,それらの子どもたちを「教育的. 的な発達障害と行政政策上の発達障害とは一致し. 支援の必要な障害の一つ」すなわち「発達障害児」. ない」と示したことから,医学的にも変化しつつ. として恣意的にとらえ,結果として,普通学級の. ある「発達障害」概念を一層曖昧なものにし,現. 中にいる「気になる子」の存在を際立たせること. 場の混乱は現在に至っても増大しつつある.. になった. 「インクルーシブな教育」を求めて始まったは. ⑵ 教育全体の大きな方向転換による混乱. ずの特別支援教育は,「ゆとり教育」から「確か. 1980年度から施行された学習指導要領は, 「詰. な学力」への教育の大転換により,障害の有無に. め込み教育」と言われる知識量偏重型の教育方針. かかわらず,学習に遅れのある子どもや人との関. を是正し,思考力を鍛える学習に重きを置いた経. 係に課題のある子どもを普通学級から排除しよう. 験重視型の教育方針をもって,学習時間と内容を. とする雰囲気を生むことになった.. 減らしてゆとりある学校を目指そうとする大改革. さらに,普通学級で「気になる子」の発見が日. であった.特殊教育から特別支援教育への転換は, 常化すると,相談所や支援センター経由で特別支 特殊教育が露呈しつつあった,発達障害やグレー. 援学級への在籍変更が増え,特別支援学級には,. ゾーンの子供たちへの無策の問題と同時に,この. ネグレクトや被虐待児,経済的理由など家庭的な. 教育全体の大転換の狭間に乗じて急激に始められ. 問題を抱えているが障害のない子や,当初は普通. たともいえるのである.. 学級で指導を受けるはずであったいわゆる学習障. さらにいうならば,2000年代初めの時期の文部. 害のある子,そして従来の特殊学級対象の障害の. 科学省をはじめ,都道府県教委の特別支援教育に. ある子等が混在することになり,結果として全国. 向けた異常とも思われる加熱は,いわゆるゆとり. の自閉症・情緒障害特別支援学級数が激増してお. 教育から「確かな学力づくり」というそれまで以. り,恐らくその影響を受けて,特別支援学校の在. 上の学力偏重教育へと再転換する時期と重なって. 籍児童生徒数も増加しており,校舎の狭隘化が深. いる.. 刻な問題となっている.. いわゆる「ゆとり教育」は,インクルーシブ教. 同時に,特別支援学級での教育課程は,多様化. 育を目指す特別支援教育と共存するように思われ, する児童生徒の実態に対応仕切れず,特別支援教 育の理念からはかけ離れたものとなっており,そ. 小学校等では,総合的な学習の時間における障害 31.

(7) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). れは特別支援学校においても同様である.. 別の新しい課題を生むことが多いともいわれてい る.. ⑷ 知的障害教育における教育の成果の曖昧さ. 知的障害教育には,児童生徒の的確な実態の把. 知的障害教育は学習指導要領において他の障害. 握を欠かすことが出来ず,そのためには保護者を. とは別に独自に教科の内容が大綱的に示されてお. はじめとする関係者との連携が欠かせない.児童. り,指導内容方法の選択配列は指導者に委ねられ. 生徒の実態といわれるものは,それまでの保護者. ている.それが知的障害の教育の専門性に繋がる. との関係性が強く影響していたり,また,服薬を. 独自性,独創性を生み,一人一人の認知能力や個. 続けている子どもは,今の状態が薬の作用や副作. 性に応じた教育実践に繋がっていた(注1).. 用によるものであったりすることから,それらの. しかし一方ではそのせいで,知的障害の教育は, 情報を抜きにしてその子の実態なるものを知るこ 指導内容方法,評価のいずれもが曖昧で,成果の. とはできない.知的障害のある児童生徒の認知や. エビデンスを示すことが不十分であるという指摘. 社会性等の不全さの成り立ちを知るためには,今. を知的障害以外の障害の教育担当者や,福祉施設. だけではなく,今に至るまでの生き方に関する情. 職員,保護者等から受けていた.. 報を手に入れることが不可欠であり,それが授業. 特別支援教育の開始と共に,特別支援学校には. 作りの始まりである.. 「個別の指導計画」の作成が義務づけられ,一人. また,知的障害教育の授業は,教師と児童生徒,. 一人の教育的ニーズに基づいた教育が行われ,そ. 児童生徒同士のやりとりの中に多くの教育的内容. の成果が明確に示されるはずであった.しかし,. が生まれている.しかし,それを適切に記録して. 実際には,個別の指導計画の作成に時間をかける. いくことが少なく,授業の成果の評価は児童生徒. 割には,指導や評価と直接に結びつくことが少な. の行動に表われたものや書かれたもの,作品だけ. く,指導の成果の明確化という点においては,特. をもとに行われることが多い.授業に観察者(評. 殊教育時代から不十分のままである.. 価者)を置き,その観察者が,教師や児童生徒の 微妙な表情の変化や,雰囲気など,教師も意識し. ⑸ 知的障害教育における教育の成果の明確化. ていなかったものまで含まれる「授業の中で生ま. の必要性. れているもの」を適切に記述していき,その積み. 指導の成果の明確化という課題に関しては,特. 重ねを分析,評価していくことにより,授業の教. 殊教育から特別支援教育に移行する頃,自閉症児. 育的成果のエヴィデンスを明らかにしていく取り. に対するそれまでの「受容」を基本とした指導や. 組みが不可欠である.. 発達障害のある子どもへの指導が十分な効果を上. 児童生徒の学習の多くは,教師の意図を超えた. げられなかったことから,子どもの「問題行動」. エピソードの中から生まれる.それを記述するこ. と言われるものに焦点を当て,それを改善しよう. とができれば教育の成果の検証の一助となるが,. とする行動主義的指導が盛んに行われるようにな. 毎日の授業の中ではそのかなりの部分が見逃され. り,認知能力の不全の改善やSSTの訓練に用いら. てしまっている.授業の記録は教師が今日の授業. れるようになった.行動主義的指導は指導者にも. から生まれた学習の成果を確認する機会であり,. 保護者にも分かりやすいものであり,課題解決の. 同時にそれを可能な限り詳細に記録に残していく. ためのマニュアルを求める人にとっては便利な. ことにより学習の成果を継時的に積み重ねていく. ツールであり,成果の明確化という点では一定の. ことが出来,指導の成果として評価に活用するこ. 成果を上げてきたということもできる.. とが出来る.. しかし,本人や保護者の悩みや苦しみは置き去. エピソードを記述することは必ずしも出来事の. りにしたまま,障害名と障害特性が分かれば既存. 正確な記述ではなく,書いた人が見聞きし,感じ. の対処マニュアルに沿って対応,教育することに. たものを読む人に分ってもらうために書くもので. 終始し,負の行動が減ることで教育の成果だと語. ある.その内容には書いた人の人生経験や考え方. られることが多い. .また, 行動主義的な指導は, のフィルターが反映され,無視されるものや強調. (注2). 32.

(8) 特別支援教育から見る今後の教育に関する一考察. ⑹ 知的障害教育における人間科学的アプロー. されるものができる.読む人にも同様のフィル. チ. ターは存在し,共感したり感動したり,違和感を 覚えたりもすることになる(注6).. 教育は人間が対象であるから,意思や欲求,不. 知的障害教育におけるエピソードの記述も,授. 安,言語,コミュニケーションなどが,人間とは. 業における予想外の事態を記述したものである.. 何かを考える上での重要な指標となるが,それら. それが読み手の心にどのように伝わるかは読み手. は自然科学のように数値化することはできない.. によって異なる.年齢や経験,考え方,価値観が. 一般性,普遍性を求めない研究は自然科学から見. 異なれば教師の伝えたいことが読み手には異なっ. れば科学とはいえず,批判的に見られてきた.. て伝わることの方が多いかも知れない.大切なこ. しかし,現代哲学が客観的真理の存在を否定す. とは,教師の思いが率直に投げかけられることに. るようになり,自然科学が前提としてきた客観的. あり,それが継続して読み手に伝えられることに. 事実そのものが,確固たるものとはいえなくなり,. ある.. 統計処理や数値化等の自然科学的手法ではなく,. エピソードの記述は恣意的で一過性であり,教. グラウンデッド・セオリーアプローチやナラティ. 師にとっては貴重な出来事の記述ではあっても,. ヴ分析など,人間科学独自の個別性を求める質的. そこからは一般性,客観性は導かれないと思われ. 研究の枠組みが注目されるようになった(注7).. がちである.しかし,例えば連絡帳を継続して記. 質的研究は,自然科学のような数値に基づく一. 録していくと,その中から,読み手は共感するも. 般化ではなく,文化的・時代的背景や環境に限定. のを見つけ出していく.それこそがエピソード記. された範囲,特定領域での共通性を前提とした一. 述によるエヴィデンスである.手続きと行動結果. 般化を求めることになる.. が明確であれば,読む人の人格を左右しない行動. 知的障害教育には,児童生徒の認知力によって. 主義的エヴィデンスとは異なる.エピソード記述. は言葉を指導のツールとして使用することが出来. は互いに顔の見える情報交換であり,大きな意味. ない場合があるという他の教育にはない困難性と. のある重要なものとなるのである(注3).. 創造性がある.児童生徒を「教える」場合には有. 知的障害教育に求められるものは,確かな教育. 効であっても,「育てる」営みにおいては,言葉. の成果であるが,そのために求められるものの一. が持つ機能はそれほど有力ではない.言葉の機能. つは,指導内容の客観化を図るために教育課程を. が有効でない場合,教師は言葉に代わる手段を見. 学習指導要領の内容から選択,配列し,ICF(注4). つけなければならない.互いのことに気持ちを向. のコード分類の細分化と連動させた評価項目を設. けている人と人との間には,かけがえのない相互. 定することである.二つ目は,学校での教師と児. 作用が生まれる.そこには人の感情の機微ともい. 童生徒,児童生徒同士での相互作用のエピソード. える豊かな情動が行き交う.教師が教育的愛情を. 記述を高次化していくことである.そのためには, 持って子どもと接する場合,そこに豊かな教育的 学習集団を少人数化して指導者が単独で指導する. 環境が生まれ,子どもが主体的に学ぶきっかけが. 授業を増やし,授業に直接にかかわらない記録者. 生まれる.. (評価者)を置くこと,そしてその内容を数値化. 現代の教育を語る場合に欠けているのは,かつ. できないものの評価として活用することで,その. ては大いに語られていたそのような教師の実践知. 日あるいは過去のエピソードを連絡帳に記録して, である.学校現場においてもIT化が進み,タブ 保護者との情報交換に活用することが望まれる.. レットの使用や教育ソフトの活用ばかりが流行し. 知的障害教育には,教師や保護者等,そして児. ている今,教育が失ってはならない不易なものを. 童生徒の個別性を尊重し,自然科学とは異なる人. 考えるゆとりがあるのは知的障害教育だけなのか. 間科学とでもいうべき,人と人との間に生じる貴. もしれない.. 重なものへの畏れを積み上げていくことが求めら れる.. 33.

(9) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 4 まとめ. それを可能にするために何が必要なのかは,それ ぞれの教師や保護者等,そして子どもたち一人一 人に独自のかけがえのないものがあり,それは日. 特別支援教育の現状や課題,今後への期待は, からICFに変わっ. 常の家庭での教育や教師の実践の中にあるものを. た世界的な障害観の変化やアメリカ精神医学会作. 見直すことによって,見つけ出すことができる.. 成のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル). いうまでもなく,教師や保護者等の言動や子ど. が3版,4版,5版と改訂されるなどの精神科医. もの言動だけを取り上げても,人と人とのかかわ. 療の混乱による影響を抜きにしては考えることが. り合いの中で生まれる相互作用について理解する. 出来ず,さらに我が国の教育施策が,特別支援教. ことはできない.. 育の開始とほぼ同時に「ゆとり教育」から「確か. 教師が子どもの気持ちにより添って指導に当. な学力作り」へと180度転換をしたことにより,. たったとき,あるいは母親が子どもをかわいがる. 学校では予想とは全く異なる混乱を生じ,基本的. ときに生まれる雰囲気こそが子どもが「学ぶ」機. な考え方のつじつま合わせが必要になるなど,ほ. 会を生む.「学び」は子どもたちが生きるために. とんど破綻しているともいえる状態になった.. 必要だと感じたときに自らの欲求によって成立す. 通常学級においては特別支援教育の時間的経過. る活動である.教育とは,それぞれの子どもたち. と共に発達障害概念の混乱と広がりが「障害児捜. の主体的な活動である「学び」を支援するために. し」もしくは「障害児づくり」として働くとき,. 最適な環境を整備し,教師は,その上で,子ども. 学年進行と共に専門家や専門機関を経由して特別. たちが主体的な学びを効果的に獲得するよう,優. 支援学級へ在籍を変更していく児童生徒が増加す. しさに満ちた眼差しで,見守ることである.指導. (注5). WHOの障害者分類がICIDH. ることとなり,特別支援学級や特別支援学校では, も評価もその中にある. それまでの特殊教育とほとんど同じ考え方に基づ. 知的障害教育に欠かせない重要なことは,知的. く教育が続けられている.. 障害の障害特性を理解しようとすることではなく,. 現在の小中学校での教育施策は,グローバルな. 教師,保護者等と障害のある子どもとの間に同じ. IT化に対応するための「生きる力」の育成に主. 人としての心の動きがあることを感じ取ることで. 眼が置かれており,インクルーシブ教育の理念と. あり,自分と他人との共通性と違いを認め,教師. 共存することは困難である.一方で特別支援教育. と子ども,また子ども同士の相互作用をエピソー. は,障害者権利条約と差別解消法との整合性を確. ド記述によって分析していくことである.それは. 保するために,矛盾点の修正に追われている.. 知的障害教育に止まらず,全ての教育に当てはま. 特別支援教育の意義を再認識し,掲げた理念に. るものである.. 近づいていくためには,教育全体のあり方を見直. 教育は,特別支援教育が掲げた理念である「障. してみることが必要であり,そのための手がかり. 害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、. として,知的障害教育の内容・方法,評価等を検. 様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形. 討してみることが有効である.. 成の基礎」を目指すべきなのである.. 知的障害のある子どもたちに対する教育は,一. 註. 人一人の認知特性の理解から始める必要がある. 「ことば」を理解できない子どもに対しては, 「こ とば」以外のコミュニケーション手段が必要にな. 注1 2018年に改訂された新学習指導要領では,. る.. 先達が大切にしてきたこの知的障害教育の宝. 教育に求められるものには,時代や社会情勢に. 物を差別解消法との整合性のためになくして. 左右されない普遍的なものを重視することであり,. しまった.. それは, 「これだけは教えておきたい」 「社会人と. 注2 小澤勲 『自閉症論再考』批評社 2010年. して」「幸せな人生を送るために」等々の思いで. 小澤勲 『続 優しい発達障害論』批評社 . あり,どんな親や教師にも共通するものである.. 2013年 34.

(10) 特別支援教育から見る今後の教育に関する一考察. 注3 塩見啓一 「特別支援教育における連絡帳. 浜田寿美男 村岡学 『もう一度自閉症の世界に. を活用した教育実践報告」北海道教育大学大. 出会う「支援と関係性」を考える』ミネルヴァ. 学院研究紀要 『学校臨床心理学研究』第14. 書房 2016年 文部科学省 「今後の特別支援教育の在り方につ. 号 2017年 67-76頁. いて(最終報告) 」 (平成15年3月)http://www.. 注4 ICFとはWHOによる「国際生活機能分類」. mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/054/. のことである.. shiryo/attach/1361204.htm. 注5 ICIDHとはWHOによる「国際障害分類」. 文部科学省 「特別支援教育の推進について(通. のことである.なお,ICIDHは2001年にICF. 知) 」(平成19年4月)http://www.mext.go.jp/. となる.. b_menu/hakusho/nc/07050101.htm. 注6 鯨岡峻 『関係の中で人は生きる――「接. (平 面 」 の 人 間 学 に 向 け て 』 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 文部科学省 「特別支援教育資料平成29年度」 成30年 6 月 )http://www.mext.go.jp/a_menu/. 2016年 注7 竹田青嗣,山竹伸二,鯨岡峻著 小林隆児,. shotou/tokubetu/material/1406456.htm 文部科学省 「平成29年度特別支援教育に関する. 西研編 『人間科学におけるエヴィデンスと は何か――現象学と実践をつなぐ』新曜社 . 調査の結果について」(平成30年3月)http://. 2015年. www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ tokubetu/1402845.htm. 参考文献. 文部科学省 「特別支援学校新学習指導要領」 (平 成29年 3 月 )http://www.mext.go.jp/a_menu/ shotou/tokubetu/main/1386427.htm. 厚生労働省 「『国際生活機能分類-国際障害分. ルネーM.トービン,アルビンE.ハウス共著 高. 類改訂版-』 (日本語版)の厚生労働省ホーム ページ掲載について」 (平成14年8月)https://. 橋祥友監訳『教育関係者のためのDSM-5』 . www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.. 医学書院 2017年. html ジョエル・パリス 村上雅昭訳 『現代精神医学 を迷路に追い込んだ過剰診断』星和書店 2017 年 高岡健 『自閉症論の原点』雲母書房 2007年 中央教育審議会 初等中等教育分科会 特別支援 教育のあり方に関する特別委員会「審議要旨・ 議事録・配付資料」http://www.mext.go.jp/b_ menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/giji_list/ index.htm 中央教育審議会 初等中等教育分科会 特別支援 教育のあり方に関する特別委員会「論点整理」 (平成2年12月)http://www.mext.go.jp/b_ menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/ houkoku/1300890.htm 中央教育審議会 「共生社会の形成に向けたイン クルーシブ教育システム構築のための特別支援 教育の推進(報告) 」 (平成24年7月)http:// www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/ chukyo3/044/houkoku/1321667.htm 35.

(11) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). SUMMARY A Study on Future Education Thinking from Special Support Education ― Thinking from the Deliberation of the Educational Council Central Committee Special Committee and Intellectual Disability Education ―. Keiichi SHIOMI (Sapporo Gakuin University) Education for children with disabilities in our country changed “special education”, which was pointed out as separate education system from the United Nations, to “special support education” in 2007. However, almost simultaneously with the start of the special support education, the entire education policy changed from “cram-free education” to “sure academic ability”, ordinary classes aiming for inclusive education had big confusion invited The Central Education Council set up “Special Committee on the way of Special Support Education” and examined the current situations and issues of special support education. The existence of various problems became clear, but it did not lead to show measures for a concrete improvement. In this paper, the examination of the “characteristics and methods of guidance on intellectual disability education” through examining the “problems of intellectual disability education and measures” not only solves confusion of special support education and solves tasks but may also be effective to examine the current and the future state of education as a whole.. Key words : s pecial support education, education of intellectual and developmental disabilities, description of the episode, evidence of the results of education. 36.

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