技術科教育の目的と現代的役割
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 3巻 第2号. 平成5年3月. Joumalof Hokkaido University ofEducation(SectionIC) Vol .43 ‐2 , No. Mar ch ,1993. 技術科教育の目的と現代的役割. 佐 々 木. 久. 硯. ‐ Pu1 ion and the D江odenユ Roles Poses of Technology Educat Hi i SASAKI sa l コ l. 1‐ は じめ に. 戦後, 職業・家庭科として発足した普通教育としての技術教育は, 戦後の日本の復興を図るとい う狙いをこめて, 職業指導的な側面の強い啓発的経験や生産教育的な内容と して展開されてきた. しかし, その後, 産業界は世界的な技術革新 (イノベーショ ン) の時代を迎え, 産業生産はオート メーショ ン化され, 企業の設備投資が急増した. こう した時代の流れに即応し, 1 958年に職業.家. 庭科は従来の図画工作科で取り扱われてきた生産的技術に関する部分と合わせて, 新たな技術科を. }では「生活に必要な基礎的技術を習得 編成し, 技術・家庭科となっ た. そして, その時の指導要領1 させ, 創造し生産する喜びを味わせ, 近代技術扇こ関する理解を与え, 生活に処する基本的な態度を 養う」 ことが総括目標として挙げられた. しかし, この新しく生まれた技術・家庭科に対し, 「自然 科学の基礎をもっ た技術 ずを技術 寸・家庭科の教育の内容としているの ではなく, 低度の技能を学習の 手段・方法として創造する喜びと生活に処する態度を養うことが目的で, 従来の職業・家庭科の目 2 )など 多くの批判がなされた 標と実質において全く同じもの である」 , . その後, 技術・家庭科指導要領の目標 は幾度かの改訂を経て, いわゆる生産技術から生活技術 サヘ )される面も含みつつ変遷し 現在の目標は「生活に必要な基礎的 な知識と技術 のわい小化と指摘3 ぼの , 習得を通して, 家庭生活や社会生活と技術との関わりについて理解を深め, 進んで工夫し創造する 4 )となっ ている 能力と実践的な態度を育てる」 . 現在, 技術は科学と一体化 し, 基礎研究の応用により新しい技術 リや産業が生まれている. わが国 では特に電子産業やハイテクノロジーが急速に進展 し, 機械, 技術, 社会の多くの分野でイ ンテリ ジェ ント化が進ん でいる. しかし, 今日の科学技術 Jはわれわれの生活, 社会, あるいは地球に多く の公害や環境破壊をもたらした. そして, こう した問題は現在の科学技術 すでは決して消失しないと ) さ え 云 わ れ て い る5 .. 他方, 子 ども達をとりまく生活環境も時代とともにはげしく変わり, 利便性を追求した様々な道 具を使用する毎日の中で, 本来持っ ているべき, 身体の機能自体に 「無器用」 という変化が増加し, ) こう し ひとり遊びが通常化し, 人と人との交わりさえも無器用になっ ているとの指摘もみられる6 . た社会的な傾向は低出産の時代が続く今日, ますます明確化される心配がある ‐ 77年文部省が人間性豊かな児童生徒を育てるため, ゆとりのある学校生活が送れるよう に設定し た勤労体験学習は, このような状況の子ども達にとっ てその意義は決して浅くはないだろう. さら 225.
(3) . 佐々木 久 硯. にこれからの社会では生涯学習の 基礎的能力となる自己学習能力を養うことも欠かせない. また, 人口が斬減している青少年達には高齢化社会の日本を支える と同時に, 今日の地球的課題 である様々な環境やエネルギー問題を解決し, 豊かな生活を維持し, 発展させるという難問が課せ ら れて い る.. 本論文では, こう した21世紀を迎え, かかる時代に対して現在の技術科教育の目的を確認すると ともに, 本教科の現代的役割を どのように考え, 位置ずけることが可能であるか, について検討し た.. 2. 技術科教育の目的 技術科教育の目的については, これま で多くの考えや主張が展開されてきた. それらの論旨の中 )は技術科の目的が「一人一人の技術的能力の からいくつかのものについて渉猟すると, まず, 近藤7 拡大によっ て, 行動を制 限している束縛からの解放により, 自由に行動 できる範囲の拡大を可能に すること」 にあると述べ, それは生産労働力を発達させることによっ て, 生産力 (生産の可能性) や技術を発展させ人間的連帯を創 造し, 社会を進歩させるために, ①技術行動を形成するとともに, 技術的な創造力のす ぐれた人に自己変革を可能にする. ②その創造力を自由に発揮できる条件を保 証するために, 連帯して行動することができるようにすること をあげ, これらの目的達成の基礎と なることとして, ①技術的課題を科学的に認識する能力を養う. ②労働対象, 労働手段, 労働力の かかわりを認識し, 人間を主体とする労働手段のあり方が判断できる. ③技術的課題解決のための. ) 技術的思考力を高め, 創造力を養う. などを示している8 .. )は技術 こう した視点から, 佐々木ら9 け教育の目的を, 生産技術に関する科学的認識, 技能, および. 技術観の3要素からなる技術の学力の形成にあるとしている. 0 )は現在のようにME化が進展した職業社会においては その生産体制のなかでコン また, 木村1 , ピュ ータを操作することが不可欠な場面が少なくないため, 技術 け革新のなかで, 労働手段の変革に ともない, 青年のための職業教育の内容の変質, ならびに直接的に生産に 必要な, 現場教育でのい わゆる 「追加」 的な教育の遂行がなされなければならないとし, 労働と技術の発展過程において, 技術の基本的原理と労働手段の変化を含みつつ, 道具の使い方, 機械の操作のしかたといっ た, 現 在の生産の 「基礎」 におかれている技術 寸・技能を習得することが必要であるとしている. そして, そのような観点から桐原の 「将来, 職業選択の自由を確保すること」 ならびに 「近代産業における, 生産の技術を, 将来身につける基礎能力」 を養うことを紹介し, 桐原が考えるこの教科の具体的目 標が, 現代的な生産能力の基礎教育を通して, 産業化社会の中での生活能力を養うことであり, 産 業の現実からわが国の今後の経済的立場を理解し, そのことによっ て高い技術 す的な感覚と批判的, 創造的な精神をもつことができるところにあるとしている. 1 } 技術科教育の意義と役割の視点から 技術科の性格について考え 基本的には 他方, 馬場らは1 , , , 一般教育としての有用性, 実践学習としての主体性, 創造力培養のための教育的価値をあ げている. つまり, ①技術科はあくまで具体的な事物を対象にして, その中に働いている原理性や法則性を理 解させて, 発散的 思考や評価の 思考操作の訓練学習によっ て, 生徒の技術的な創造力と実践的な態 度を伸ばす教科である. ②技術科は技術と自然科学との相互依存の関係を理解させて, 合理性, 実. 証性など技術の持つ最適性の追求と, 実証的態度を陶 台する教科 である. ③技術科は生活の向上を 願っ て生まれ, 社会的な環境の中で育っ た技術 寸の学習をとおして, 現代の産業や, 科学技術の進歩 226.
(4) . 技術科教育の目的と現代的役割 がもたらす多様な変化や問題に対 して, 適切な判断力を育成する教科である. ④技術科は技術の成 果を実際に活用させたり, 製作, 操作の学習をとおして, 勤労の尊さを体得させ るとともに, 賢明 2 ) な消費者を育てる教科である. などの教育効果を列挙している1 . 1 3 1 4 ) 「 また, 長谷川ら ’ は技術教育の役割として, 青少年をあらゆる方面に発達させるためには, 他 の諸教科の教育とともに基礎的・一般的な技術教育が必要 であり, 技術教育は, 完全な人間をつく る教育にとっ て不可欠な一構成部分 である」と述べている. さらに, 「技術教育はこれを通して論理 的に 思考し, 物事を合理的に処理する能力を身につけさせる‐ 複雑な技術的事象を単純 な要素に分 析し, これを総合して, 一般的な技術的法則 を発見し, 技術的経験を土台として技術的事象の法則 性に気づかせる.」 こうした事を通して, 「思考と行動の規則を習得し, 技術教育によっ て獲得され た論理的思考を, 人間関係を改善し, 社会的問題を分析し処理する普遍的な能力に高めていくこと が でき る」 と 論 じて い る.. 5 )は技術 さらに桐田1 す科教育について2-3の視点から概括, 整理している. まず学習指導要領の 「 系譜から見て, 現代の生活は生産, 分配, 消費と情報の生成, 伝達, 処理によっ て支えられている . その生活を向上させるために児童・生徒に それらの正しい理解をさせ, それを通して創造の能力お よび実践的態度を養う‐一 ことが定着してきている. また, 教育のあり方から見て, 技術教育は 「学 校で児童生徒が積極的に課題をもち, その課題解決のために自己を磨き, 自己のもてるものを全て 課題解決にぶっ つけて挫折を飛び越え忍耐強く努力を継続していきながら, 自分でやれることを増 やしていく場を教師が設定し, 指導していくことである」 と述べ, これが勤労体験学習の理念にも 通じるとしている‐ さらに, 技術の本質的視点から見て,「われわれの知識はわれわれの生活の目的 に結び付け, 応用することによっ てわれわれの生活を明るく豊かにするもの である‐ つまり, 知識 は技術の仲介によっ てはじめて人間の 受に立つ価値が生ずるものになり, その価値の背景にものの 善悪があり, そこで技術の功罪が問われるものである」 と述べ, 学校教育の中では技術を人間当為 の行動として捉え, 技術 けを通して行動させるということは 児童生徒の生活を心理性と道徳性の中 で 価値判断させ, 技術目的にむかっ て主体的に対処していくことであると考えている. 以上のように, 今日, 普通教育としての技術科教育は, 「学校で児童生徒が積極的に課題をもち, その課題解決のために自己を磨き, 自己のもてるものを全て課題解 決にぶっ つけて挫折を飛び越え 「 忍耐強く努力を継続していきながら, 自分でやれることを増やしていく」 , 創造性と実践性理念と すべきものであり, その使命は, 技術 けの理論を体験しながら学習することによっ て, 物の見方, 考 え方, 扱い方の判 断力を養い, 自然と社会におけ る科学的, 合理的な方法を実践を通して習得させ る」 などの目的を学習することであり, 社会, 家庭を問わず生活上の様々 な課題を積極的に捉え, その課題解決のために, 技術的課題を科学的に 思考する能力, 即ち,「複雑な技術 寸的事象を単純な要 素に分析し, これを総合する」 論理的思考力を高め創造力 を養うことが基本的に重要であり, この 教科の基本的な目的もそこに在 ると考える‐ また, それらの教育活動を通して技能や技術観の育成 ならびに人間的連帯の創造がなされなければならない. 一 方, 今日の子ども達を取り巻く状況の中で, この教科として考えなければならない幾つかの問 題が想起される. すなわち, 子ども達の社会環境や生活環境の変化に応じて身体の機能の無器用や 人と人の交わりの欠如, あるいはこれからのハイテクノロジー社会への対応, 高齢化社会や地球的 課題である自然環境破壊, さらにはエネルギー問題の解決などであり, この教科として考慮しなけ れなならない内容について以下に検討したい‐. 227.
(5) . 佐々木 久 硯. 3. 技術科教育の今日的役割 1) 人間形成に対する教育 今日, 子ども達をとりまく環境は時代とともにはげしく変わり, 日常の生活の中では, 既製のお もちゃやファミコン, 利便性を追求した様々な道具の使用を通して, モノの扱いが無器用になっ た 子どもが増え, 一人遊びが通常化し, さらにはモノに対する値打ちや, 労働に対する価値観のゆが みさえ生じ, 労働から逃避したり, 労働する者を軽視するような傾向が見られ, 人間形成上の最も 6 } 基本的な問題として考えなければならないことが指摘されている1 . こう した問題には受験学力の競争など社会的な要因も含まれ, 一教科においてその完全な克服を 求めることは難しいが, モノヘの認識を深め, 思考し, 実際に手を使い技術的課題を解決するこの 教科の特質を充分に発揮することにより, 他の教科では達成できない大きな成果が期待されるもの と思われる. すなわち, 技術科教育では単なる学力が問われるのではなく, 技能を通して技術的課 7 }は技術教育は 題を創造的に解決する中で, 人間として 必要な基本的資質の陶冶が図られる‐ 山崎1 創造性育成の教育 であり, 生き方を追求する教育であると述べているが, この教科が他の教科では 評価することのできない人間としての基本的資質の評価を可能にする点で, とかく学力評価のみが 重視されている今日, 本教科の持つ教育的価値は極めて高い. 2) 公害, 環境問題に対する教育 今日の科学技術はわれわれの生活, 社会, あるいは地球環境に多くの公害や環境破壊をもたらし た. そして, これはそれをもたらした現在の科学技術 では決して解決 できないとさえい われてい 8 ) しかしだからと云っ て われわれはいま直ちに現在の科学技術による研究や応用を中止するこ る1 , . とは出来ないし, 現在の科学技術がもたらすような, 不備が生じない画期的な新しい科学 パラ ダイ ムの創出と, それによる技術が出現しない限り, 例えそれから派生した問題ではあっ ても, 現在の 科学的 思考方法でそれらの問題を, 現時点の解決しなければならない課題として検 討するしかない だろう. K・エリッ ク・ドレクスラーはテクノロジー競争が速まれば, 新しい開発が早く訪れることにもな るが, 致命的な過ちが増えることも忘れてはならない. だから, テクノロジーの先を読むことで, テクノロジーの進歩の速度に バランスをとる必要がある‐ ところがテクノロジーの成長を遅らせる ことは難しいから, 早く行く手を読まなければならない. 十分に先見性があれば, テ.クノロジー競 9 ) 争を正しい方向に向けることができるであろうとしている1 . 最先端の技術の方向は一部の専門家の判断に委ねざるを得ない が, 技術の問題を専門家だけの閉 じた問題として でなく, すべての人が参加しうる開かれた場の議論にのせ, そのことの中に人間が 0 ) 学校教育においても技術科 再び技術 寸の主人公となりうるチャンスも潜んでいるとの指摘も あり2 , 教育を通して日常 生活の中での環境汚染や地球にやさしい生活のあり方について学習することは欠 かせない教育内容といえる‐ 3) ハイテクノロジーの基礎力を養う 21世紀を迎え, 将来の日本を展望すると困難な問題が山積している‐ その第一は日本人口の減少 である. 青年人口は20年後には現在の約半数になる. こう した人口の減少は当然, 国の生産力にも 影響し, 現在の日本の国民生活を維持し発展させる上で極めて深刻な問題となることは間違いない だろう. これまで日本の科学技術の進展はめ ざましく, 特に電子産業の分野では他国の追随をゆる さない成果を納めている. 将来, 人口が減少した日本においても, こう した産業の発展を展望 でき るか否かをきめるのは, エネルギー技術を含めた新たな技術の進展と 無縁に考えることはできない 228.
(6) . 技術科教育の目的と現代的役割. だろう‐ また,,現在, コンピュ ータは日常のあらゆる場面に組み込まれ, ワープロやパソコン技術 の習得はこれからの生活で必須のものとなっ た. さらに, 生命科学は従来神秘とされていた謎を解 明し,生命現象の巧みなメカニ ズムを物質生産やあらゆる分野のシステムに応用しようとしている. そう し た点では今後益々研究の重要性が高まり, 新たな技術 ずを生み, それが電子産業, 医療産業, 食品産業として発展することはまちがいないだろう. こう したハイテクノロジーを理解する上での 基礎的教育を技術科教育の中 で, 技術的課題解決能力 の養成とあわせて行うことは重要である. 4) 生涯学習との関連 新しく提唱された生涯教育の理念は, 一生を通じて行われる教育過程を一つの統合したものとし てとらえ, 教育は青少年期に限定されず, 一生涯にわたるものとする垂直的統合と, 教育を学校以 外の家庭, 社会, 企業などに機能を分担協力させる水平的統合が含まれる‐ つまり, 一般教育と職 1 } しかし生涯教育で得られた資格や成果を社会的に評価するシス 業教育の統合が挙げられている2 . テムが国によっ て異なる現状では, その受けとめ方にも各国で多少の違いがあると思われる. ユネ スコ第18回総会では, 個性の発達を促し, 専門能力の獲得の可能性の提供, 職業分野においての実 践能力と技術を現代化し, 新鮮化すること, 個人を進展するテクノロジーに適応 できるようにし, あるいはそのテクノロジーの変化に追従できず失職した場合に転職可能なようにすることなどが指 1 ) そう した点から見れば 生涯教育の内容と して技術・技能あるいは技術的課題の解 摘されている2 . , 決に関わる教育は大きなウエイトを占める‐ 従っ て, 技術科教育の中で生涯教育を行うための基礎 的能力として, 学ぶことを学ぶため広範囲な分野 での知的好奇心の保持, 永続性のある自己教育能 力などを養うことが必要である. そのためには自分で課題を見つけ出すな ど, 学習者に自己選択の 2 )を育てる指導を通して技術 自由を与えた教育システムや, 効力感2 す的課題解決に対する成功感を体 験させることが重要であり, こう した教育内容を学習させることは本教科の今日的役割として挙げ ら れる.. 4. 結. 託. 本論文では, 21世紀を迎える今日の学校教育における, 一般教育としての技術科教育の目的につ いて考え, 教科のもつ特質を確認するとともに, この教科の持つ現代的役割について検討し, 技術 科教育を通して何を次代 の子どもたちに学習させなければならないのかを提示した. 技術科教育の目的についての考えは技術 寸そのものの捉え方の相違に遡り,多くの意見が見られる. それらを通してこの教科の目的を, 児童生徒が積極的に課題をもち, その課題解決のために自己を 磨き, 自己のもてるものを全て課題解決に向け, 努力を継続していきながら, 技術の理論を体験を 通して学習することによっ て, モノの見方, 考え方, 扱い方の判断力を養い, 自然と社会における 科学的, 合理的な方法を実践的に習得させ るところにあると要約できる. つまり, 社会, 家庭を問 わず生活上の様々 な課題を積極的に捉え, その課題解決のために, 技術的課題を科学的に 思考する. 能力, 複雑な技術的事象を単純な要素に分析し, これを総合する論理的 思考力を高め, 創造力を養 うことに本教科の基本的目的が在り, それらの教育活動を通して技能や技術観の形成さ らには人間 的連帯が養われなければならない. さらに現在の子ども達を取り巻く状況の中で, この教科として考えなければならない問題は少な くない. ここでは, 人間形成, 公害・環境問題, ハイテクノロジー の基礎的理解, 生涯学習に対す る役割などについて検討した‐ 229.
(7) . 佐々木 久 硯. 今日, 子ども達の日常 生活の中では様々な既製道具の使用を通 して, モノの扱いが無器用になっ た子どもが増え, モノに対する値 打ちや, 労働に対する軽視的価値観な ど, 人間形成上の最も基本 3 } 技術科教育は 実際に手を使い 技術的課題を解決するこ 的な問題として看過 できない状況にある2 , . とを教科の特質と し, その中でモノヘの認識を深め, 論理的に 思考し, 創造することにより, 他の 教科 では達成することのできない人間形成に対する 成果が期待されるだろう. また, 一方, 現在の科学技術はわれわれの生活, 社会, あるいは地球環境に多くの公害や 環境破 壊をもたらした. テクノロジー競争 が速まれば速まるほどこうした問題の増加も加速される状況に ある. したがっ て, 技術のもたらす事態を的確に予測し, 先を読むことで, その進歩の速度にバラ 4 )は技術の発展で可能なこ ンスをとる必要 がある. 学校教育においても技術 け科教育を通して, 近藤2 ととできないことを判別ができる, 技術を何時, どのように使う かを問うことができ, 賢明な選択 ができる, 技術的教養人の育成, などを構想している. こう した能力を養うため本教科において, 日常生活の中での環境汚染や 地球にやさしい生活のあり方について 学習することは欠かせない教育 内容といえる. さらにこれからの日本では, 人口の減少が避けられない一方, 高齢化社会に進むことが予測され ている. 人口の減少は国の生産力や国民生活の維持発展にも影響することが必至であり, 極めて深 刻な問題となる. こう した状況の克服はやはりエネルギー技術を含めた新たな技術の進展に期待さ れるだろう. そうした点 で, 技術科教育において技術的課題解決の能力を養うとともに, コンピュ ー タや バイオなどのハイテクノロジーの 基礎を理解させことは, この教科における今日的課題の一つ となるだろう. 他方, 高齢化社会に対しては, 生涯教育の必要性が提示されて いる. しかし生涯教 育 で得られた資格や 成果を社会的に評価するシステム が国によっ て異なる現状で, その受けとめ方 にも種々の考えが見 られるが, これには生涯教育で得られた成果を社会的に評価 し, 収入等に反映 される場合のほか, ライフワーク的な課題を見いだし自ら解決し, それを自分 の生きがいとする場 合もある. いずれにしても, 技術・技能あるいは技術的課題解決に関わる内容が生涯教育として大 きなウエイ トを占める. 従っ て, 技術科教育の中で技術的課題解決能力を養うとともに, 生涯教育 を行うための基礎的能力として, 自己教育能力を養成 することがこの教科の役割の一つとして挙げ ら れ る.. 引用文献 ) 改訂版 P 0 195 8 3年 ( 95 8 1) 文部省 1 .19 . 明治図書 . 中学校学習指導要領 昭和3 P 12一11 6 第2号 教育科学 学習指導要領・技術・家庭科の批判 95 8 2) 長谷川淳 1 .1 ‐ ‐ 「生活に必要な技術」 という接小化 教育 2 P 2 一 3 2 8 3 3号 969 3) 佐々木亨 1 . . ‐ 9 89 4) 文部省 1 .85 ‐ 大蔵省印刷局 ‐ 中学校学習指導要領 P P 28 8 ) 岩波書店 9 0 5) 中岡哲郎 19 . 現代テクノロジーの素性と基本性格 (岩波講座 人間 7巻 技術とは . P ‐ 2 7 日本標準 2 1 3 1 発達と技術の教育 身体/技術 子どもの 日本の学力 8巻 79 6) 須藤敏昭 19 . ‐ ‐ . P 5一206 9 74 7) 近藤義美 1 ‐ ‐ 技術科の構造 (1) 福岡教育大学紀要 第23号 第4分冊 .19 20 第4分冊 P 9 77 8) 近藤義美 1 .209一2 ‐ ‐ 技術科の構造 (m) 福岡教育大学紀要 第27号 P 学文社 6-7 技術科教育法 90 9) 佐々木亨, 近藤義美, 田中喜美 19 . ‐ ‐ 名古 88 10 ) 木村 誠 19 . 技術教育における技能教授に関する研究ノート1-桐原榛見生産技術教育論を中心に- 1 1 一 6 5 1号 5 5 屋大学大学院教育学研究科教育学専攻 教育論叢 第3 . P 3 97 8 ) 教員養成大学‐学部教官研究集会技術科教育部会編著 1 11 . . 技術科教育の研究 第一法規 ‐1 ) 同. P 12 .13一14 .. 230.
(8) . 技術科教育の目的と現代的役割 13 ) 長谷川淳 1 979 2一4 0 .3 ‐ 技術科教育の役割と目標 技術科教育法 P ‐ 産業図書. 14 ) 長谷川淳 19 l p 9 61 .7 ‐ 技術教育の役割と目標 岩波講座 現代教育学1 .岩波書店 1 5 ) 桐田壌一 19 8 9 3 3- 4 1 r ‐7 . 技術科教育と勤労体験学習との関連について 京都教育大学紀要 Se , A N0 153 ‐. ) 須藤敏昭 197 16 9 3一21 1 7 .2 . 日本の学力 8巻. 身体/技術 子どもの発達と技術の教育 P . 日本標準 7 92 技術教育の教育内容の共通理解を求めて 第3 1 ) 山崎貞登 19 日本産業技術教育学会 5回全国大会講演要旨 . 集. S.6‐. 99 0 1 8 ) 中岡哲郎 1 ‐ 現代テクノロジーの素性と基本性格 (岩波講座 19 ) K・ エリ ッ ク・ ドレ クス ラー 1992 ‐ 創 造 する 機械. 人間 7巻. 技術とは P 88 ) 岩波書店 ‐2. P.275一276 パー ソナ ルメ デイ ア ‐. 20 ) 高木仁三郎 1 ) 岩波書店 9 9 0 ‐63 . 核エネルギーの解放と制御 (岩波講座 人間 7巻 技術とは P 21 生涯教育と技術教育 ) 立山安雄, 林清美, 板井隆, 野田義稔, 八尋隆道, 松田昇一 1 98 4 大分大学教育学部研 ‐ 究報 告. P 6(7) . . .39‐50. 2 2 80 ) 波多野誼余夫 19 4-6 6 東京大学出版会‐ ‐4 . 自己学習能力を育てる P 2 ) 須藤敏昭 1 3 97 9 17 ‐216一2 . 子どもの発達と技術の教育 (日本の学力 8 身体/技術 P ‐) 日本標準 24 ) 近藤義美 199 2 5回全国大会講演要旨集 旨集 S ‐1‐ . 技術科教育の目的と内容 日本産業技術教育学会第3 (本学教授 旭川分校). 231.
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