社会変動論序説(その2)
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(2) . Vol .・ .22 No. ion IB) i i l ido Uni t lof Hok t t Journa on(Sec くa ver s y of Educa. Sept . ,1971. 社 会 変 動 論 序 説 (その2) 中. 江. 男. 好. 北海道教育大学旭川分校社会学研究室. I Change (No ia Yoshio NAKAE : An lntrocluction to the Soc ,2). 目. 1 社会学と社会変動論. 1 社会学の動向と社会変動諭 2 社会変動論の今日的課題. D 社会変動論の諸類型. 1 オーギュスト・コントの場合 2 高田保馬の場合 (その1) 3 アレックス・インケルスの場合. 次. 皿 体制変動論. 1 基本的視角 2 社会体制--構造と発展, その統一的 把握 3 産業資本主義 (その2) 4 独占資本主義 W 結論. 3 . ア レ ッ ク ス ・イ ンケ ル ス の場 合 Aイ ンケ ル ス (1920~) は1941年, コ ー ネ ル 大 学 を 卒 業 し, 1948年 以 来 ハ ー バ ー ド大 学 で教 鞭 を. と り, ソ ビ エ ト社 会 学 に つ い て の世 論, マ ス ・ コミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン研 究 あ る い は 国 民 性 の 理 論 的 ・. 実験的研究に従事してきている. 1964年にイ ンケルスの 「社会学とは何か」 が 「現代社会学入門」 シリーズと して出版された. ここではそれを中心にかれ の社会変動にたいする考え方・アメリカ社 . ・ ′ ・. 会変動論の動向等を概観する.. イ ンケルスによれば, 社会学の基本的な問題とは次のものである. すなわち 「社会学は, 社会的 1 ) ここでいう秩序とは 「出来事が多少とも規則 秩序と社会的混乱を解明しようとするものである」,. 2 ) であり, だからわれわれは 「ある特定の条 的な順序・あるいは一定の型をもって生起すること」 件のもとにおける, ある一時点において, ある出来事と他の出 来事とがどんな関係にあるかという 3 ) というものである. 社会学は人間の ことを, 経験的に証明可能な形で, 陳述することができる」. 社会的行動の底によこたわるこの秩序を見つけだし, 記述 し, 説明するものなのである, ところで この秩序がどのようにして生み出されていくかについてはブ 社会体系の存在による社会的動作の調. 整と統合・その調整と統合による混乱の防止と秩序づけが説明される. したがって社会学は 「ひと びとの集団によって共有されているところの比較的持続的な行為の体系」 としての社会体系の構造 ) ではこの社会体系はどのような性格 ・形成の過程をもつの 4 と機能を研究する学問ともいわれる. であろうか. イ ンケルスは人間が社会生活を営むにあたって最小限必要な条件, つまり社会的行為 の条件を三つの主要群に分ける. 一つは外的環境への適応, 第二は人間がもっている生物-社会的. な性質への適応, 第三は集合的な生活という条件にたいする適応である. 人間は共同生活において 一 40 一.
(3) . 第 22 巻 第 1 号. 一口 B) 北海道教育大学紀要( 第一部B 子・. 昭和46年9月. これらの適応過程をへて混乱と無秩序を避けるために自分の行動 を調整・統合しつつ社会組織とい. う基本的な単位をつくりだす. この社会組織の単位には 「ある特定の文化を共有している人びとの あいだで物事を処理するばあいに, 共通に採用 するところの特定の標準的やり方」 としての慣習ま たは習俗, さらにそれらが集団の強制的な感情 ・価値をもつばあいのモーレス また物事を処理す , る慣習的やり方の複合体としての役割, それが専門化・特定化さ れた社会的な価値 =地位 更にあ , る活動, 社会的要求のまわりにいっ そう複雑な役割構造が組織された集合体, つまり 「一つまたは 一連の価値をめぐって, そこに発達した行為様式 や社会的役割の組織的な体系であり 行為様式を , 規制し, 規則を管理するために発達した機構」 5 ) としての制度があげられる 社会体系はこのよう . ないくつかの制度が一組となって構成されたもので, 村落, 遊び仲間, 国家など大小さまざまな単 位がそのなかに含められている. このように社会体系は, その複雑さ・多様性にもかかわ らず 社 , 会的動作の調整と統合 ・混乱を未然のものとする, あるいは秩序へと導く機 能をその基礎に 「人 , 間性」 を前提とする秩序体系なのである. したがって 「完全な社会学というのは, 秩序と混乱の双 ) というとき, また 「同調や変異や逸脱とい た過程は 社 6 方の研究をふくまなければな らない」 っ , ) というとき, 社会における最も重要 な過 ? 会学が関心をよせている最も重要 なものに属している」 程が, 人びとが確実に自分の役割を, つまり社会の秩序を確保する過程だからなのであり その限 , りでなのである. したがって 「共通に認められた標準」 としての規範からそれ, その価値に対立的 なものとなるとき, それは社会的逸脱とされ, ス ピー ド違反から非行・売春・都市の荒廃現象な ど. 「社会的」 原因に由来するものが含まれる/ 社会的原因といっても, それは過渡的変動期にある地 区・スラム地区などの原因により社会規範が弱まり, 慣習的基準による行動が制御されなくなる こ とであり, 現象的な, それ自体さらに追求されなければならない逸脱直前の社会状態が原因とみな. されているようである, なぜなら 「政治・宗教におけ る逸脱行動はまだ体系的には研究されていな い」 か らで あ り, マ ー ト ソも い うよ うに 「逸 脱 行 動 に 関 して は た だ・一つ の 包括 的 な 理 論 を う ち た て. ) だからであるとし, 社会の全体的 ・構造的視点からの追求 ることができるのもまだ遠い先のこと8. は断念される. イ ンケルスのばあい, 以上のような社会学の基本的理解のもとに, 社会変動については次のよう に考えられる. すなわち社会学者は社会変動について関心をもっていないとかその理論をもってい. ないとかいうのは誤 っている. 社会学者は確かにたった一つですべてを包括するような変動理論を. 求めることは断念したが, そのかわり, 変動をもっ と具体的・現実的に, それが様々の条件のもと にある様々の社会組織のなかで顕現してくるとおりに扱おう9 ) というのである つまり社会変動論 . は先述の社会体系の様々の社会組織, 慣習, モーレス, 役割, 位置, 制度 などの変化を 現実にそ , こに現われてくるままに取り扱うのである. もちろんイ ンケルスも, 大規模な社会における変動に ついての研究例もあげている, しかしそれは世界的規模での工業化, 生産における工場システムや. 都市化の増大といった没体制的な変化にすぎない. こうして社会変動論の問題点が指摘さ れる」 - つは変化の単位, つまり社会変動という場合の社会が人類 や全世界の文化のことなのか 一特定社 , 会 か, 一制度, 一組の関係, 一人の人間なのかという問題である, 二つは変化しつ つあると考えら れている諸要素を具体的に特殊化する必要が あること. 第三は変化 の構成要素として客観的に認め られるものは何かということについての意見の一致. 第四は変化 の比率と方向の測定において生じ. る問題である. そしてこれら以上に重要な問題は, 社会変動の原因は何かということであるとし , 「大部分の社会的状況では, じつに多くの要因が作用 しているので 原因をは きりと定めること , っ l ) という. こうして社会学は かつての単一の 全体包括的な変動理論を失ないは o は困難である」 , , したが, 調査デザイ ンの改善, より正確で信頼できる測定法の開発 使用する概念のたえざる明確 , - 41 -.
(4) . VOI .I .22 No. i i i i do Un ive t lof Hokka t t on IB) on (Sec Journa rs y of Bduca. Sept . ,1971. 化などにより社会変動過程の理解を大きく し, 「さまざま の社会単位ごとの細かい特徴を説明しう る数多くの変動理論をもっており, われわれの下す判断の信頼性と妥当性とを増大したことによっ て 十 分 に 償 わ れ て い る」=) と い う の で あ る. こ の結 論 はイ ンヶル ス の あ る い は パ ー ソ ン ズ を 中 心 と. する今日のアメリカ社 会体系論からすれば当然の帰結であると思われる,. さ て 具 体 的 に 検 討 して い こ う, イ ン ケ ル ス も い う よ う に, 社 会 は 確 か に あ る 時 点 に お い て 一 つ の. まとま った統 一体として実在するのであり, その側面のみに限れば一定の 「秩序」 をもっていると いえる. また社会が対立や矛盾を現実に含んでいること, したがってその側 面に限ってみれば, 社 会は 「混乱」 を内包 しているということがいえる. しかしここで問題なのは, そもそも社会の 「秩. 序」 とは, 「混乱」 とは何を意味 しているのか, またその両者の関係はい かなるものであるのかと いうことである. 社会の秩序と混乱という言葉そのものに示されているように, そこでは社会は本 質的に秩序ある安定 したものであることが前提され, 混乱はその秩序からの逸脱として, 本来ある べ き で な い も,の と して のみ 考 え られ て い る の で あ る. つ ま り そ こ に は社 会 の も つ 統 一 性 と 社 会 の も. つ内的矛盾・対立は, 秩序と混乱という全く相反するものと して, 内容関連を抜きに してとらえら れているのである. 社会体系は社会化, あるいはモーレス的な形での統 制による規範への同調行動 をとる受動的な行 為者により構成されることになり, 何故 「混乱」 が, 社会の対立・矛盾が生じて. くるのか, 現に生 じているのかは本質的には何ら間 われない. このことの 原は社会体系の出発点, 先述の社会的行為の条件にまでさかのぼるであろう, つまり人間が社会的生活を営むにあたっての 最低限必要な条 件は何かの問題である. イ ンケルスはそれを, 環境への, 動物的・社会的性質への. 集合的生活への適応に 求めるわでけあるが, しかしそのような適応はそれ自体きわめて抽象的なも のであり, それらを現実的な歴 史的・社会的なものにする労働に目を向ける必要がある. 労働によ って人間は自らを他の動 物と区別される存在としたのであり, この活動こそが人間社会の存続の基. 礎だからである. 人間がその労働過程において相互に結 ぶ社会関係は人間の社会的行為を抽象の世 界から引き出すであろう. こうして, 人間の社会的行為の条件が現実的には, 単なる適応という形 で は 顕 現 しな い こ と, つ ま り 矛 盾・ 対 立 の 必 然 性 を そ の 基 礎 に も っ て い る こ と が 明 らか に さ れ る.. 労働を通して人間が相互に結びあう社会関係は, その中心を生産関係へと移していき, 階級社会に おいては, それは必 然的不可避的な階級矛盾・対立・闘争をもたらすことになるからである, した. が ってそれ以後のイ ンケルスの社 会体系への展開は, 秩序を柱とする一面的な安定のための過程と なり, 具体的に はその過程は権 力支配のための上からの秩序化・社会統 制と, それへの下からの適 応のみが, あるいはせいぜい階級支配を抜きに した逸脱のみが語られていることになる. 規範の内 面化・服従の自発性ということの背後には, 実は物質的基礎をもった支配階級の権力機関が厳とし て存在している のであり, 今日ではそれはきわめて巧妙な, しかしきわめて大きな機能を果たして いる. それゆえ社会 (階級社会) において, 被支配階級がその現実的社会基盤に もとづく搾取・抑 圧の中で必然的に何らかの形でそれへの抵抗・反発・正当の権利要求をおこなうとき, それは支配. 階級の既成秩序・規範からの逸脱・許すべ からざる行為として 秩序への階級的・権力的弾圧にあう ことに なる. しかしその 「混乱」 の本質は, 逸脱・欲求不満という類のものと しては理解できない ことはこれまでのことからもいうまでもない. それは社会の存立基盤に 基 づいた, 必然的な階級対 立・闘争 あるいはそこか ら生 じる矛盾なのであり, この対立と矛盾 (混乱) をその内に不可避のも のとして含む統一体 (秩序) として社会は現実に存在 しているのである. それは資本主義社会にあ 立 闘 争 ・ そ の統 一 体 と して 顕 っ て は 基 本 的 に は ブ ル ジ ョ ア ジ ー と プ ロ レタ リ ア ー トの 不 可 分 の 対 ・. 現する. 階級社会ではその階級闘争は, 社会進歩の障害物ではなく, 逆にその不可欠の条件であり 基礎であり, 推進力である. 社会体系論が, その社会化過程を階級社会における搾取 の過程へ, 階 - 42 -.
(5) . 第 22 巻 第 1 号 ぢ. 一口 B) 北海道教育大学紀要( 子 紀 要 第一部. 昭和4 6年9月. 層を階級へ, 役割配分を生産手段の所 有関係と階級的統制機構へ 更に社会体系を社会体制へとそ , の内容を変 えることが必要といわれる由縁である.. 次に社会そのものについてみていく. 社会変動については, 全体社会を包括する社会変動論を断 念するという. 断念せざるをえないであろう. というのは先に見てきたように全体社会は最初から 規範・制度体系に武装された, それ自体としては変化・ 発展することのない してはならないもの , と して前提されているからである, それでもなおかつ社会変動について語らねばならないとい うと ころにはそれなりの理由がある, 現実社会がその大前提のもとに安閑としていられない状態を生み 出し, この何とも説明のつかぬ 「偶然」 ・ 「不可思議事」 に目をおおうわけにはいかなくな てい っ るからである. この現象を先の大前提のもとに説 明しようとするなら必然的に この取り出したろ , 断片を全体社会の構造 と無関係に, 顕微鏡的に拡大 し, 変動を云々 せざるをえない それは実際に . は拡大された部分 の変動をも真にとらえることにはな りえない したが って調査デザイ ンの改善 . , より正確で信頼できる測定法の開発, 使用 概念の明確化などによ る社会変動過程の理解可能性はあ くまでも断片のそれであり, それが全体との関連性を抜 きに拡大解釈されるとき その理解可能性 , は, 非科学的な理解可能性, 不可知論へ転化する 「十分な可能性」 をも ているといえ る 全体社 っ . 会, その本質と無関係になされる部分的・現象的な変動の追求は そのための方法・手段をどれほ , ど改良しよ うとも結局それ以上には出ないであろう この両者は 部分を全体との関係で 現象を . , , それが含んでいる本質との関係で位置づけ, その働きを見 逆に全体を部分との関係で 本質を現 , , 象との関係で統一的に把握することにより正しく理解さ れる 部分と全体 現象と本質の弁証法的 . , な関係を理解す ることの必要性である. 具体的にいえば, 社会の部分における矛盾・対立・「逸脱」 r本質としての社会体制・生産 関係との関係において それがいかなる意 は全体社会・ 味をもつか, ど う位置づけされるのか, どこにその原因があるのかを見ていく必要があるし 全体社会の変動 はそ , の構成要素において, それぞれの特殊な位置・作用 をなす諸現象を区別し 必然的関連を 明確にす ,. るなかでは じめて把握す ることができるのである 階級矛盾に目をおおわぬかぎり 全体包括的な . , 変動理論を断念する理由などどこにもないのであ り むしろその点こそが今日問題 とされなければ , ならないであろう. 社会変動の究極原因についても同様のことがいえる 社会変動はあれやこれや . の諸々の要因による相互作用ということによっては 何事も説明されえないのみでなく それは対象 , の歴史的に形成されている構造の把握を不可能とす ることになる また社会現象において確かに様 . 々の要因がはた らいており, 諸現象は相 互関連性をもっているのであるが 問題はそのような諸現 , 象の位置・作用を全体との関係で把握 し, その全体における本質を明らかにしていくことである . こうして, 種々の分野において何がその相 互作用 の全体を究極的に規定 しているか あらゆる社会 , 関係のなかで何が様々のその他の社会関係を規定す る根源であるのか ということこそがまさに問 , 題 と さ れ て く る の で あ る. レ ー ニ ンは こ の こ と を 次 の よ うに 明確 に 述 べ て い る , 「い ま ま で は, 社. 会学者たちは, 社会現象の錯綜した網のなかで, 重要な現象と重要でない現象とを区別す ることに 困難を感 じ (これが社会学における主観主義の根源である) これを分界す るための客観的な基準を , 見い出すことができないでいた. 唯物論は, 『生産関係』 を社会の構造と して取 り出し この生産 , 関係に反復性と規則性という一般科学的な基準を適用 できるようにしたことで 完全に客観的な基 , 1 2 )「社会関係を生産関係に還元し そして この生産関係を生産力の水準に還元する 準を与えた,」 , , ことだけが, 社会構成体の発展を自然史的過程として考えるための強固な基礎をあた えた」 1 3 ) と. こうしては じめて社会構造 と社会変動の統一 的把握が可能となり 同時に変動 の究極原因と社会変 , 動の変革的位置づけが 明らかになる. そしてイ ンケルス の提起する社会変動論の諸問題も解決す る ことになる. こう考えてくると, 今日, この相互作用説, アメリカ社会学で大きな位置をしめる機 一 43 一.
(6) . vo l ,22 No ,1. ion 工B) i t lof Hokka ido Univer i on (Sec ty of Bducat Journa s. SePt , ,1971. 能主義的分析のはたす役割が明らかに なってくる. つまり社会の諸領域が相互に依存し, 作用 し合 の区別 っ ているという作用 の一般化によって, 実際は社会における重要な側 面とそうでない側面と 会の歴史的な発展性とそ それは結局社 づ およびそれらの位置 けを不明確にするということであり, の法則性を否定するということである, 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 1 0) 1 1) 12) 13). ー 引用文献 一. 「社会学とは何か」 アレックス・インケルス, 辻村明訳, 現代社会学入門1, (至誠堂)41p 1 同上4 p 同上41p 同上l o5p 同上11 9p 同上44p 同上13 8p 同上145p 同上1 55p 同上15 9p 同上159p 5p 「人民の友とはなにか」 レーニン, 国民文庫, 1 6p 同上1. m. 体 制 変 動 論. 1 . 基本的視角 然と社会, その一切の現象は, そ 身そのなかに身をおいている自 われわれをおおい, われわれ自 の周囲の諸条 件と密接な関係をもっており, 有機的な連関性, 相互依存性をもっている. そしてそ. れは不断の運動と変 化・発展の過程にあり, つねにあるものが死滅し, 発生し, 発展している. そ こでは同時に古い質的状態から新 しい質的状態への飛躍的発展がおこなわれている. そしてそのよ うな発展は, 古いものと新しいもの, 死滅しつつあるも のと生まれ出つつあるものの闘争, つまり. 対立物の闘争・矛盾をその源泉・原動力としている. あらゆる諸現象は, それ自らのうちに内部矛 盾をふくんでい るのである. 物質はそれ自体, ひとつの形態から他の形態へと発展するために必要 な一切のものをふくんでおり, その運動において自然界の多面性, そして多面的諸現象を生み出し 1 ) 運動はその物質の性質に内的な属性で てきた, 「世界の現実の統一性はそれらの物質性にある.」 あり, 両者は不可分のものである. 「運動は物質の存在の仕方 である. 運動のない物質はいまだか 2 ) 形 の で あ り, そ の っ て, ど こに も な か っ た し, あ るい は あ り え な い.」 生 命 と て 物 質 の 一 存 在 態 な. どこにも神らしきもの, 何かもやもやとした ものがやどっているわけではない. 「生命とは蛋白体 の存在の仕方 である. そして, この存在の仕方とは, 本質的には, 蛋白体の化学的成分が不断に自 9 ) この自然界に おける生物の発生は, 一つの大きな質的変化であっ 己更新をおこな うことにある.」. た, 更にこの生物の自己運動のなかで, 自然界の動物・自然法則にその生活を支配された動物とは 区別される存在・人間が生み出されてきた. 自らの生活物質を生産すること, 人間の労働が自然界 における第二の大きな 質的変化の橋渡 しとなっ た. 人間は自分で自らの生活をつくり出 し, 自分で 自らの歴史をつくり出すのである. ここに新たな, 人類に独自な矛盾の歴史がは じまる.. さて, このように世界が物質の低い形態から高い形態へと 合法則的に発展する運動であるなら, 人間の意識 も, また物質から生まれたものであり, 物質との関係においては じめて真に理解されう る. 意識は物質の発展 の所産である. 最高度に組織された物質=脳髄の所産である, つまり物質が 第一次的であり, 意識はそれから派生したもの, その反映 であり, 第二次的である. しかもその意. 識は, 社会的意識なのであり, それは人間の 自然への働きかけ, 人間相互の結 びつき, そこから発 - 44 -.
(7) . 第 22 巻 第 1 号. 北海道教育大学紀要(第一部B). 昭和4 6年9月. 生し, 発展してきた言語・思惟の発達をとお して発生し, 発展してきた. 「社会の物質生活は, 人 間の意識から独立に存在する客観的実在であり, 社会の精神生活は, この客観的実在の反映であり 4 ) 世界が物質的であり, 意識がその発展の最高所産であるならば, 人間の感覚 存在の反映である.」 ・概念等自体が客観的存在・現実性の意識における再現にほかならない. つまり物質・対象・世界. とその合法則性は人間にとって認識可能なものなのであり, 実践により検証され, 確認された人間 の知識が客観的現実性とその法則の正 しい反映・真理に達 しうるということである. もちろん, そ の反映過程は曲折をともなう複雑なものであり, 絶対的真理への接近については歴史的に条件づけ られているに しても, それは無限にその真理に近づくことのできる, まさに弁証法的過程であり, ) つまりわれわれは自然への働きかけ・生産活動と, 階級社会で 5 積極的・能動的過程なのである. の階級闘争という二つの基本的な社会的実践により, 自然界に働らいている発展法則についての信 頼できる知識・社会の発展についての正確な知識を得ることができ, 対象の発展にそってそれを実. 践的に適用することができる. 人民大衆の社会的実践こそ認識のおこりであり, それをささえ発展 さ せ る 力 で あ る.. われわれが生きている現代は, 人間が人間を搾取・抑圧する社会から, 不正と貧困・隷属と戦争 の原因を根絶する社会・人類の真の解放の社会へと力強く前進している. そして今日, 社会は, そ. の内部に働く矛盾につきうごかされ, そのより高い段階を求めて全世界的規模での対立の闘争を展 開している. それは幾百万勤労大衆の社会的実践によって確かめられうるのであり, その変革的実 践はそれに解決を与えうる, 現代に生まれ生活しているわれわれは, その矛盾の一般性と特殊性を 明確 に し, そ こに 働 き かけ る こ と に よ り, そ の法 則 性, 「わ れわ れ に と っ て の必 要 性」 に そ っ て,. 自らを, 自らの社会を目的意識的に, より高い段階のそれへと発展させることが可能なのである, われわれ自らの変革なく して自然と社会の変革はありえない. 逆に自然と社会の変革なく してわれ われ人類の解放はありえない. この両者の統一は, 人民大衆の 「変革的実践としてのみ, 合理的に ) ので あ る. 理解 さ れ う る」6. ー 引用文献. -. 1 ) 「反デューリング論」 エンゲルス, 国民文庫8 9p 2) 同上, 1 12P 3) 同上, 143 P 4) 「弁証法的唯物論と史的唯物論」 スターリン, 国民文庫114p 5) 「人間の思惟はその本性上, 相対的真理の総和から構成される絶対的真理をわれわれにあたえることができ る し, またあたえている. 科学の発展におけるおのおのの段階は, 絶対的真理というこの総和に新しい糧を つけくわえるが, おのおのの科学的命題の真理の限界は相対的であって, 知識のいっそうの成長によってあ るいは拡大され, あるいは縮小される……現代の唯物論, すなわちマルクス主義の観点から見れば, 客観的 絶対的真理へのわれわれの知識の接近の限界は歴史的に条件づけられている. しかし, この真理の存在は無 条件的であり, われわれがそれに接近することは無条件的である.」「唯物論と経験批判論」 レーニン, 国民文 庫1 70p÷171P 6) 「フォイ エルバッハ論」 エンゲルス, 国民文庫80p. 2 . 社会体制--構造と発展, その統一的把握 さて, ここでは前節の基本的視点に立って, 第二章社会変動論の諸類型の検討のなかで問題とさ れ, あるいはその方向性が追求されてきた, 社会とは何か, 社会変動とは何か, 社会の構造と変動. ・発展をいかに統一的に把握することができるかを 史的唯物論の立場から明らかに していきたい.. まず, 人間社会を対象とする科学・社会科学が成立す るというとき, その対象としての社会にお ける個別的.経験的な諸現象, 相互に錯綜し撹乱的偶然性を呈している社会現象のなかから, それ らの現象のなかで本質的なもの, そこに働く法則性が明らかにされなければならない. マルクス以. 前においては, 社会成員相互間の全体的関係はせいぜい各々の時代の人間の観念から発生するもの 一 45 -. . ・.
(8) . Vo l .22 No .I. lof Hokka ido Univer i i ion 工 B) Journa t s t on (Sec y of Educat. Sept . ,1971. と して説明されたにすぎなかった. 史的唯物論は更にそれらの観念がいかなる原因によって生じた ものであるかを追求する. マルクスは 「社会生活の種々の分野のなかから経済の分野を取りだすこ. とによって, またあらゆる社会関係のなかから生産関係を, それ以外のすべての関 係を規定する基 本的な・本源的なものと して取りだす ことによって」 人間社会を対象とする科学の可能性を, 社会 の発展を自然史的過程としてとらえる可能性を つくりだしたのである, 具体的には, 次のようなこ とである. 人間が生きていくためには何はさておき, 生活に必要な様々の財貨を生産しなければな らない. 人間はその生活の社会的生産において, 一定の, 必然的な・意志から独立した物質的な生 産関係にはいる. 生産手段の社会的所有をその基礎とするこの生産関係は, 労働手段, 労働力, 加. 工された労働対象が統一されて発揮される物質的生産力の一定の発展段階に照応する. これら生産 関係の総体が社会の経済的構造・土台を形づく る. この土台に照応する宗教的・芸術的, 哲学的等 の社会意識諸形態が形成される. つまり物質的関係としての経済的構造は, 社会的, 政治的, 精神 的な生活過程一般を条件づけ, したが って上部構造は一度できあがると逆に土台に積極的に働きか け, その発展テ ンポをかえることがあるにしても, 人間の社 会的存在が意識 を究極的には規定する のである. ところで社会的, 歴史的な概念としての生産力は, 社会的生産におけるもっとも積極的. ・能動的な要素であり, 絶えず発展し, 社会発展の出発点ともいいうる, 生産関係は一定の生産力 の発展のもとにいちど形成され ると容易には変化せず, 長期間つづく性質をもつ. ここに生産関係. が初期の生産力への積極的反作用・その促進の段階か ら 生産力発展の極枯の段階へと変化する必然. 性がある. 階級社会においては, それは生産力のもっとも能動的な要素としての大多数の勤労人民 大衆とわずかの旧生産関係の固執者・支配階級との階級闘争と して具体化される, この階級矛盾の 高かまりのなかで社会革命の時代がは じまるのである. 旧生産関係がその変更を余儀なくされる.. そ して新たにその生産力に照応 した生産関係が形成され, 先にみたようにその土台の変革とともに それまでの上部構造もおそかれはやかれ変革されることになる, 社会構成体は, 以上概観してきた. ような意味をもつ社会的経済構造と, その上に築かれる上部構造の総体である. 一般的にいう ,なら 社会変動とはこのよ うな社会構造全体の質的変化であり, 一 つの構成体から次の構成 体への転化と. の関連でとらえられる社会諸領域内の, あるいは相互の矛盾・対立による量質的変化である. した がって, 社会変動を以上から一般的に述べるならば, 次のようなものとなる. 生産力が発展する.. 生産関係との矛 盾・対立のうちに, 生産関係が変化を余儀なくされる. 社会の経済的構造が変動す る. 法律, 政治, 文化の上部構造もおそかれはやかれ徐々にかまたは急速に変化する. それまでの 社会組織は新たな社会組織に道をゆずる. 社会革命がおこなわれる, こうして人類は今までに五つ の社会構成体を経験 している. つまり原 始共産制, 奴隷制」 封建制, 資本主義, 社会主義である.. 原始共同体においては幼稚な労働用 具による低い生産力のため 剰余生産物 をうみだすことができな. かった. したが って個人の労働を搾取する余剰物はなく, 人間による人間の支配搾取も存在しえな い, 生産手段を共有し, 共同労働, 共同分配を不可避とする社会であ る. しかし原始共産制社会に おける生産力の高まりのなかで, 牧畜, 農業の発展をうなが し, 定着農業による生産力の発展は剰 余生産物をうみだすほどになり, 捕虜を殺さず, 奴隷として働かせることが可能となる. こうして. 奴隷制社会が成立する, 奴隷の使用は生産力をいっそう高めることになった. しかしこれまでの共 同体は階級に分かれ, ここに奴隷所有者=奴隷主と, 完全な無権利の状態におかれていた直接生産 者としての奴隷という階級が発生する. そ してこの奴隷を強制力で抑圧 し, 少数の搾取階級の利益 をまもる国家が, 従来共同体成員全体の利益をまもる仕事を遂行した公的機関にとってかわる. こ の奴隷制生産関係は生産力を一定の段階まで発属させたが, やがてついに生産力発展の障害物にな り, 奴隷と奴隷主との激 しい階級闘争となる.. - 46 -.
(9) . 第 22 ・巻 第 1 号 ・. 北海道教育大学紀要(第一部B). 昭和4 6年9月. 生産力のさ らなる発展のためには働き手が自分の労働結果にたい して ある程度の関心を示す よう な生産関係が必要となってきた. こうしてコローヌス制度などのような過渡期をへて, 新たに封建 社会へと移る. この社会の生産関係の基礎は主要な生産手段である土地を封建領主が所有し, 直接 の生産従事者である農民を不完全に所有していることである. 人格的 「自由」 と自立的経営 をいと. なむに必要な生産手段を与えられた農奴は経済外強制をともなった土地所有のもと, 封建地代とい. う形で剰余生産物は吸いあげられた. 封建社会における生産力の高まりは, 地代の形態を変えてい ・ った. 労働地代, 生産物地代, 貨幣地代である. 封建社会末期には商品経済が発展し, このことが 封建経済の基礎をほりくずすことになり, 資本主義的生産関係が内部から必然的に発生してきた, こうして封建国家の最後の形態である絶対王制を媒介に して 激裂な階級闘争のすえ資本主義社会が. 成立することになる. ここでは生産手段を全面的に支配する資本家階級と, 中世的身分・生産手段 から 「自由」 な疎外された労働者が生産関係の基礎となる. 階級社会最後のこの資本主義社会は生. 産力を非常に高めることになるわけであるが, 同時に自らの墓掘人をも急速につくりあげ, 訓練し 組織し, はげしい階級闘争のすえ, 革命的情勢が つくられ, 労働者階級が国家権力を資本家階級か ら奪う. 「収奪者が収奪される.」. 社会主義社会では生産手段の社会的所有が達成され, 階級を, 搾取を, そして従来の国家を廃絶 する, 資本主義社会 で停滞し, 浪費されていた生産力は合目的に, 総合的に発展させられ, その生 産力の非常な高かま 科こより, 都市と農村の間の対立, 肉体労働と精神労働の対立が消え, 「各人 はその能力に応 じて働き, その必要に応 じてうけとる」 共産主義社会へと移行する, 一般に人間に. 対するあらゆる暴力は廃絶され, 国家権力も不必要になり, こうして, 真に平等で自由な人間関係 の社会・経済制度となるのである, もちろん資本主義社会から社会主義社会への, 社会主義社会か ら共産主義社会への移行には, さまざまの過渡的段階があることはいうまでもない. 以上のことからさらに, 社会変動論は一般的には一つの社会構成体から他の社会構成体への発展. との関係で, 一社会構成体内部における生産力と生産関係の矛盾の具体的現われ, 土台および上部 構造における変化を検討 し, あるいは錯綜した社会諸現象のなかからその本質を, その根源を, そ. の法則性を明確に し, 逆にそれら諸現象の意味を実践的に位置づけなければならない. ところで具 体的な現実社会の動きをとらえようとするばあい, この社会構成体の概念をそのまま適用すること はできない. それぞれの構成体は, 歴史上の各時代を区分 し, それぞれの体制原理を示 しはしてい ても各時代の錯綜 した複雑な形 態は示していないからである. そこで体制という現実分析のための. 歴史的概念が必要となってくる. もちろん体制概念は資本主義世界体制・社会主義世界体制等の外 延的な意味でも使用される. が, ここでの社会体制は, その構造として社会構成体をもち, したが. って構造そのもののうちに対立・矛盾の契機とその発展の契機とをもっているのである. つまり生 産力と生産関係の矛盾という構造原理は 資本主義社会構成体では ブル ジョア ジーとプロ レタリア‐ トとの敵対的矛盾と, この矛盾対立する契機の統一体という階級構造として現われる.. この よ うに して は じめ て, 社 会 学 が コ ン ト以 来, な ん ら か の形 で う け 入 れ て きて い る 静 学 と 動 学. との分離・構造と変動の分離の問題 は解決される. つまり社会構造を構造原理としての対立矛盾の 弁証法的統一体として性格 づけ, さらにその社会のもっとも基本的な経済構造とそれに規定された. 上部構造を区別する ことによって, 社会の立体的な全体的・歴史的把握が可能となるのである. 3 . 産業資本主義. 資本主義は封建社会の末期, 広範な小生産者大衆を収奪することによっ て, つまり個人的で分散 的な生産手段を社会的で集約された生産手段へと変えることによって発生した. この資本主義の生. 産関係の特徴は資本家が機械や工場等の生産手段を独占し, それに対し労働者は生産手段から完全 -4 7一.
(10) . Vol .22 No .l. ion IB) ido Uni i i lof Hokka ヒ journa ty of Educat on (Se c ver s ,. Sept . ,1971. にきりはなされ, 自分の労働力以外は何ももっていないということである. 労働者は生活資料を得 るために資本家に自分の唯一の労働力を売らねばならない. 資本家はそれとひきかえに労働者と家 族が最低生活を維持できるだけの賃金を与える. ところで労働力の価値と労働過程での労働力の価. 値増殖は二つのまったくちが った大きさであり, この価値差こそ剰余価値を形成するのである, そ. れは労働者の不払労働の結果である. 資本は自らの自己増殖という 「神秘」 によってでなく, 労働 力と交換されることによってのみ増殖することができる. 「資本は剰余価値を生む価 値である,」こ うして資本主義的生産の恒常的目的は 剰余価値または剰余生産物を最大限につくりだすこと, 資本 の蓄積である. この目的のため資本家階級は相互に競 って, 可能なあらゆる方法を考えだす. 労働 日の延長, 労働強化, 新しい技術や機械の使用. 新しい技術や機械の資本主義的使用は資本家階級. の致富のための, 他方では労働者階級を搾取するための手段となり, 労働者階級を資本に従属させ る道具となる. 労働を無意味な単純労働にかえ, 労働者を機械の付属物 ・部分品にひきさげ, 肉体 労働と精神労働の分離・対立をいっそうは げしく し, 「必要」 な産業予備軍へと 「不必要」 な労働. 者をほうりこむ. 資本の有機的構成の高度化は剰余価値生産のあくことなき追求のなかで, 失業者 と半失業者をふくむ相対的過剰人口をうみだす. これの不可避的な発生は現役労働者のいっそう多 くの部分を不可避的に貧困化するのであり, 労働者階級の貧困化は資本主 義的蓄積と不可分のもの. である. 「一方の極での富の蓄積は, 同時に反対の極での貧困, 労働苦, 奴隷状態, 無知, 粗暴, 道徳的墜落の蓄積である.」機械を利用する大工業は, 労働者に対する否定的側 面と同時に新たな社 会の形成要素と しての物質的諸条件と社会的結合を生みだす. 資本主義の発展はこうして 生産過程. をますます社会的・公共的性格をおびるようにする. ところが資本主 義的生産過程においては生産 手段は資本家の私的所有であり, 初期にはそれが生産力の発展状態に 一応は合致しても, 基本的に は生産の社会的性格と矛盾している. この資本家に よる生産手段の私的所有と生産の社会的性格と の矛盾が, 資本主義的生産関係のもっとも基本的な矛盾である. この矛盾が原動力となって, 資本. 主義は発展してきたわけであるが, まさにそれ故に生産の発展過程でのその矛盾の蓄積は周期的恐 慌をひき起こすことになる. そこでこの恐慌, 資本主義経済のあらゆる矛盾の爆発としての恐慌に ついて若干た ち入ってみてみたい. 資本主義のもとでの生産は, 「商品生産」 を基礎にしており, その上で個別資本が各人の判断と. 責任においてばらばらに競争 しながら利潤を獲得することを 唯一の目的と して商品を生産する, 利 潤の追求はつねにより大きな剰余価値の生産である. このことは資本家階級が無償で取得する価値 がますます大きくなるということである, 資本家階級がこの目的を遂行するには, 生産された商品 を販売せねばならない. 労働者階級は, 労働力の価値としてうけとった賃金で自らの消費資料を買 う. 他方資本家階級は 回収した不変資と可変資本と剰余価 値で生産手段と労働力, そ して自ら ,の消 費資料を買う. 剰余価値生産の増大は生産された商品のなかで労働者階級のとり分を小さく し, 資 本家階級のとり分を大きくするのであるから, 労働者階級が商品を多く生産 すればするほど自分の. 生産した商品のますます小さい部分を消費できるにすぎない. 社会の大多数をしめる労働者階級の 消費力は, 社会的生産の増大とは逆にますます相対的に小さくなる. 資本家の個人的消費は自らの 目的追求のために相対的に制限されざるをえず, ここに社会的消費制限が不可避となる. 個別資本. 家の蓄積は生産手段に対する投資であり, 生産的消費の増加により一定限社会の消費量を拡大する が, それは結局, 個人的消費の大きさに制限されざるをえず, これによ って社会的消費制限の根本 的解決にはなりえない. こうして生産手段の生産は消費資 料の生産にく らべて絶対的・相対的によ. りいっそう急速に拡大 し, 個人的消費を計算にいれない自己目的的な 拡大となる. 商品として販売 されたときには じめて剰余価値は利潤として実現されるのであるが, 市場における商品販売は価値 - 48 -.
(11) . 第 22 巻 第 1 号. 一口 B) 北海道教育大 廻 第一部 学紀要( 子、. 昭和4 6年9月. 法則の制限をうける. 生産の無政府的状態において は 市場価格の変動による事後的調整によ て , っ のみ商品販売はなされるのである, しかし生死 をかけての個別資本間の無政府的生産は 市場の 諸 , 条件を無視 して, その剰余価値生産の実現 のために拡大される 社会的生産に不可欠の生産と消費 . の一定の関連性と生産諸部門間の一定の比例関係は 最大利潤追求の生産によりますます矛盾をつ ,. よめる. 信用は この事態を隠蔽し, 過剰生産をいっそう進行させ その破局をさきにひきのばす , . しかし, 無限にこの過程が つづくことは不可能である この無視され 破壊された比例関係は あ . , , る部面での販売不能の曝露とともにその全体 をおおうベールをはがされ この破壊された 比例関係 , を瞬間的に, 一挙に 再建する恐慌が爆発する. この過剰資本の強力な整理過程は社会の諸階層に深 刻な影響を与える. 企業倒産, 操業短縮は多数の失業者を不可避とする こうして資本の過剰は人 . 口の過剰と並ぶことになる. いうまでもなくそれは増殖活動をしている資本に対する相対的過剰人. 口である. またこのことは先にも機械化過程のところで述べたように 失業者だけの問題ではなく , 大量失業の圧迫は就業労働者の賃金, 労働条 件をいっそう劣悪なものとす る 恐慌はさらに 農業 . , をもおそう. 需要の減退に対する生産縮小の非弾力性と固定的地代によ り 中農の小農化 小農の , , プロ レタリア化, 潜在失業化が強行さ れ 農民層の分解がひきおこされる 最後に恐慌は資本家階 , , 級をもおそう. 中小資本の破壊による過剰資本の整理は 大資本への集中を急速に 強烈に お しす , , すめ ることになる. 生産の増大が労働者の失業をつくり 生産物を破壊 し 焼きすて 労働者を貧 , , , 乏のどん底につきおとすというこの 「おかしな」 現象は 資本主義の生産力と生産関係の矛盾をも , っとも典型的に示すものである. このように資本主義社会は, 生産力と 生産関係の矛盾 を根底にそれ独自の必然性をも て運動 し っ 発展して いる. そ してその生産力と生産関係の対立・矛盾は 具体的には資本家階級 と労働者階級 , の対立 ・矛盾として顕現する. 社会変動は主観的意図とは別に 以上のべてきたような必然的客観 , 的法則性に規定さ れておこり, 最も基本的な矛盾と しての 「生産の社会的性格と生産手段の した , が って取得の私的資本主義的性格と の矛盾」 その階級的表現と しての資本家階 級と労働者階級と の ,. 対立・矛盾, その止揚の過程と しておこる. この階級闘争はそれ自身一つの客観的・必然的過程で あるが, 次に経済的構造の発展の法則性 ・必然性がいかなる過程を通して人間主体の側の運動へと. 転化されるかを更に具体的にみていきたい.. 前述のように資本主義社会は過去 の死んだ労働と 現在の生きた労働の交換としての剰余価値法則. を貫徹 し, あくことなき資本の蓄積が追求される社会であった ところで この資本主義的生産の . , 再生産過程は, 商品と剰余価値 を生産するばかりでなく 資本関係そのものをも生産する過程であ , る, 一方における富を資本と して所有する資本 家階級と他方における賃金に依 存せざるをえない階 級としての労働者階級との再生産であり, この資本主義的生産の成果としてそれを永遠化す る し . たがって拡大再生産は, 拡大された資本家 (資本の集積 ・集中) と拡大された賃労働者を再生産す る. このように生産手段にたいする相異なる関係によって, またそれを基礎に した支配・搾取・役 割・分配の関係のちがいによっ て, 労働者階 級は資本主義全構造のなかで不可避的に形成さ れ そ , の主観的意図とは別 に自己の客観的位置・階級としての地位を与 えられるのである 社会の法則的 . ・ 必然的過程としての経済構造の矛盾は, ここにこの労働者階 級における即目的段階から対目的段 階への転化の問題と して主体化されることになる 剰余価値法則 とそれ故の窮乏化の法則という資 . 本主義社会の必然的な構造的矛盾がその過程を推進させる 先にもみたように 剰余価値による資 . , 本の蓄積は, 一方に おける資本のいっそうの増加と他方における労働者の貧困 無知 腐敗 道徳 , , , 的堕落を蓄積することになる. このような状 態において, 労働者は自らの生活 をまもり たかめよ , うという主体的要求をいだかずにはいない. 特に先に述べた恐 慌時の社会諸階層への影響は 資本 , 一4 9-.
(12) . vol .22 No .I. ion IB) i i ido Uni t on (Sにt Journalof Hokka s ver y of Bducat. Sept . ,1971. 主義社会の基本矛盾を国民的・世界的に 示 し, 社会的・政治的運動は体制そのものを問題とするも のへと発展 していくことになる. 資本家と労働者は互いにそ の対立矛盾の対象をいっそうひろめ, 尖鋭なものとしていく. しかし労働者にしても資本家に しても共に対立 しながらも結 びつかざるを うその矛盾 えないということは, 資本主義社会である限り不可避である. この悪循環 はよりいっそ, を深め, やがて労働者階級をしてこの矛盾を矛盾として認識させることになり, 更に矛盾の本質理 解はその根源に向けての強固な結集をうみだすのである. ここに対目的階級の即目的階級へのむす びめがあり, それは体制の変動 をもた らす実質的力となる. ところでこの芽に 一定の方向をあたえ 組織し, 指導発展させ, 終局の勝利を達成することは, もちろん 一組合, 一産業にもできないので あり, 全労働者階級の利 害代表組織の前衛が必要である. もちろんこの前衛自体, どこからか偶然 に現われ出るものではなく, 資本主義的生産過程において訓練され, 結集され, 組織されていく労 働者階級の必然的組織と して, 資本主義社会の必然的産物として結成されるものである. 前衛は労 働者階級を中心とする勤労大衆 が体制の 構造的矛盾に規定されてもっている主体的・客観的要求を. 取りあげることにより, それに方向性 を与えることにより, 組織化をすすめる. この前衛の指導の もとに労働者は階級闘争の不可避性, 団結の不可 避性, 階級闘争が政治闘争の形態をとることの不 ) について自覚し, 組織・運動を発展させ, 自分達が, す べての人間が, その体 制の変革に 可避性1 よってのみ, 全面的な人間性の 解放が達成されることを自覚するようになる. 経済闘争は政治闘争 へと発展し, 労働者は労働組合に組織され, 更に プロ レタリアー トの階級的組織の最高形態である 「イ デオロギー的に武装された前衛部隊」 に組織さ れる. こうして ブルジョア階級の存在と支配の 根本的条件は 「私人の手中への富の累積・資本の形成と増大」 であるが, その 「ブル ジョア ジーは ) ことになる, プロ レタリア ートが生産手段の私 2 なによりもまず自分自身の墓掘人をつくりだす」 的所有を絶滅 し, 人間による人間の搾取のあらゆる形態に終止符をうつために は, 資本に対する勝 利をたたかいとるためには, 勤労者の広範な大衆を, なによりもまず農民を, また社会の中間層を も自分の側にひきつけなければならない. 社会の自然発生的な結果として発生した階級への分裂は そ れ と は 反 対 に プ ロ レタ リ ア ー トを 中 心 と した 階 級 闘 争 に よ る, プ ロ レタ リ ア ー トの 政 治 的 支配 を. 意識的に確立することによりその絶滅が導かれる. 奴隷 制から封建制へ, 封建制から資本主義へと いう各階級社会の変 化は, いずれも私的所有にもとづいた生産手段所有者の変化であり, その一つ 前の所有関係のうちに自己の発生基盤を もっていたが, 社会主 義の社会的所有にもと づく生産関係 )(その2) 3 は, 私的所有にもとづく階級社会の内部に発生することはない. 一 引用文献 一 05p 1) 「現代社会学講座」 1体制の社会学, 有斐閣2 2) 「共産党宣言」 国民文庫43 p 1p 3 ) 「なにをなすべきか」 レーニン, 国民文庫4. - 50 一.
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