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日本における「台湾野菜」の食べられ方を通して見えてくる日本の食文化

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Academic year: 2021

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(1)日本における「台湾野菜」の食べられ方を通して見えてくる日本の食文化                             M10242F 坂口文馨. 本人が受け入れたり受け入れなかったりする 理由を探ることで、日本の食文化の一端を明ら.  台湾でよく食べられている野菜40種の内、 兵庫県在住者が食べたことがない割合の高い 順から9種類の野菜を選び、さらにここ数年食 べるようになったニガウリ(ゴーヤ)と近年余 り食べられていないトウガンも加えて、全部で 11種類の野菜を「台湾野菜」とした。  その分類、原産地と日本への渡来時期は表1 に、台湾での利用状況は表2に示す通りである。. かにできる可能性がある。. 表1木研究で聰リ上1fるr 台湾5葉』とその原高地日本へω重来腕期. 1.背景と目的  台湾と日本は隣接しているにもかかわらず、. 台湾で食べられている野菜全てを日本人は必 ずしも受け入れていない。ヘチマのように広く. 栽培されても、全く食されていないとみえるも のもある。台湾でよく食べられている野菜を日.  本研究では、はじめに、日本における野菜の 特徴を概観する。その上で、アンケート調査で 明らかになった「台湾で食べられていて日本人 が知らない、または、あまり食べていない野菜」. をr台湾野菜」と位置づけ、各r台湾野菜」に ついて、植物学的な特徴、代表的な調理法、地 域や時代に関わらず日本で食べられなかった のかどうか、等を比較検討した。その結果から、. 日本人による外国の食文化の受け入れの様式、. さらにはこれを含めた日本の食文化のあり方 について考察を加えた。. 2.日本における野菜と野菜料理の特徴  日本は温暖多湿のため、多くの山菜に恵まれ てきた。しかし、日本原産の山菜は変異性が低 いため、品種の分化や改良が進まず、栽培品種 として確立したものは少ない。現在の栽培野菜 の大部分は中国や欧米で作物化されたもので、 特に明治時代には積極的に世界中の野菜を網 羅して栽培した。.  一方、日本の食生活は仏教から大変大きな影 響を受け、肉食が忌避され、野菜は大変重要な 位置を占めてきた。その調理法はr煮る」・r炊 く」・r焼く」・r生」という日本的な調理法が主 で「揚げる」、「妙める」という調理法は少なか った。奈良時代以降、寺院での精進の食生活が 行われるようになり、脂肪の摂取を補うために 自然発生的に油を使った料理が発達したが、絞 られる種子は限られ、庶民は灯油用の油も節約 していたので、料理用にはなかなか回せなかっ た。そのため、「揚げる」、「妙める」という調 理法が普及しなかったといわれている。. 3.r台湾野菜」の定義と日本への渡来. ゙似植物. i食用部分). ヘチマ カイつン. ヨウサイ. 日本への渡来時期. 原産地. 別名・.  野采名. 熱帯アジア. 江jコ時代初期. 中国南部かb東南アジ. 古くかb,. A. エンサイ、翌1o 熱帯アジア. リ. 熱帯アメI」カ. サツマイモ. X80年前後1■再導入 古く琉球を経て九州に セ治1一再導入 7世紀に中国・琉球を経て九州に. iつる〕. トウガン. カモウリ. ハヤトウリ. 東部アジア. 5世紀頃朝鮮半島かb. 熱帯アメI」カ. 大正6年(1917年)頃. ュ新芽若葉) ヒュナ. ユウガオ 一カウ1」. ノカンゾウ. ヒユ、ヒュウ. 古くかb、奈良時代1採取し食した. ヒョウタン. 縄文期(おそ■〈器として利用〕かb. 熱帯アジア インド北アヲリカ ゴーヤ 熱帯アジア ワスレグサ・ヤ 中国大陸、シベリア、日 uカンゾウ {と東南アジアなど 東アジア北アメリカ. 6世紀末頃1 日本在来. 戦前台湾かb、産地化しなかった ‡マコモに黒穂菌が寄生し根元の部分が筍状1一肥大したものマコモ自体は日本在来種. マコモた1寸^. 表2.「台湾5集』の合着での刹用状況 妙め物1日本と同様の使い方もあるが、食べるための野菜として栽培するの が主簡単1■美味しい料理が作れるので愛されている夏野菜の一つ 妙め物1葉と花茎を食用とする。見た目と違って、調理後の色は鮮やかで、歯 ごたえがあってとても美味しい野菜である ヨウサイ 妙め物、汁物、お浸し=耐暑性が強い。成長が速くて病虫害が少ない。栄養価 が優れて、台湾の重要な夏野菜の一つ サツマイモの 妙め物、汁物、お浸し:新野菜の一つ。茎は直立し、機械で収穫可。皮を剥カ つる なくて良いし、剥いても爪が黒くならない苦味毛渋みもない健康野菜 トウガン 汁物、煮物1スペアリブとのスープは夏場最高の料理である。お菓子にしたり ヘチマ. カイラン. 飲み物の「久瓜茶」1’したりすることもある ハヤトウリ 新芽・若葉). ヒュナ. ユウガオ =カウリ ノカンゾウ. 妙め物、お浸し、汁物=特別に美味しいとはされなかったが、化学農薬の使用 量が少なくてすむ健康野菜として愛され、重要な夏野菜の一つになっている 妙め物、汁物、お浸し:裏が適するが年中生産ができ、連作障書も少ない。生 育期が短く栄養価も高い、裏の重要な葉野菜の一つである 妙め物、汁物、煮物、サフダ=かんぴょっと同じく乾燥して加工野菜を作るが、 新鮮な野菜として妙めたリスープにしたりして食べるのが主流である. 妙め物、汁物、サフダ、天ぷb=栄養価が高い重要な野菜の一つ。色も実の 形も多様野菜としての食用が主であるが、薬用・観費用1■も使われている お浸し、汁物、妙め物、煮物=花は色毛形も大変美しく、台湾でもかっては観賞 用であったが、今は主1’食用1’しており、台湾の特産の一つ1’なっている. マコモたけ. 妙め物、汁物、天、b=b、煮物、サフダ=栽培条件が遺し、運搬も貯蔵もしやす. い重要な夏野菜台風や豪雨で他の野菜が少ないとき、丁度最盛期を迎える. 4 「台湾野菜」の日本における利用状況 ①江戸時代(文献〔江戸の野菜〕) 「台湾 野菜」の料理として、冬瓜くずに(トウガンの あんカ)け)、へちまにびたし(ヘチマの若い実 の煮浸し)、ひゆうのよごし(ヒユナの和え物). の記載があった。いずれも煮物か和え物であり、. 江戸期には江戸地域でヘチマも食されていた。 ②昭和初期(「日本の食生活全集(農文協)」).  r台湾野菜」の多くが昭和初期に日本のどこ かで利用されていた(表3)。調理法をみると、. 江戸時代と同じように油を使う料理(妙め物・.

(2) 長3.日本の査生 活全真{農文協〕‘一記I■Eがおうた「台湾1,業』とそのI■麗法 記載のあった県. 種類 ヘチマ カイフン. 食用1沖縄鹿児島宮崎愛媛(食用以外の用途1茨城静岡〕. 調理法 酢味階和え、味噌汁の実、澄まし汁の実、汁の実煮物、苦瓜と茄子との味噌煮. ヨウサイ. 記載無し 沖縄. サツマイモのつ. 新潟神奈」l1兵庫岐阜静岡京都和歌山鳥取高知沖縄. る. 長崎. トウガン. 神奈川千葉茨城沖縄静岡二重富山石川岐阜愛知大 阪和歌山滋賀高知長崎. ハヤトウリ. 若葉や新分の利用1=ついての記載は無し (果実==重、奈良高知、沖縄長崎). ヒュナ. 奈良島根沖縄. 昧糟和え、コマ和え、おひたし、』ま味噌和え、豆腐で和える。. ユウガオ. 北海道青森岩手山形福島三重栃木兵庫香」l1新潟富. 新鮮な物1なかごの煮つけ、汁の実、味噌汁、味噌煮、煮しめ、煮付け、汁の実、澄 まし汁、妙め煮、塩漬け、煮物、和え物、あんかけ、辛し和え、ユウガオの刺身(乾. 長崎. 燥した物=カンピョウ=お汁、煮付け、すし、卵とじ、昆布巻き〕 チャンプル、妙め煮、天、b:b、演物、妙め物、酢味階和え、油妙め. 山長野石川滋賀奈良島根岡山山梨大阪鳥取沖縄. ニガウリ ノカンゾウ. マコモたけ. 沖縄鹿児島大分熊本宮崎愛媛長崎 北海道岩手青森山形岐阜京都島根長野愛媛沖縄. 油妙め、汁の案、ンプシー、ぞっすい、味噌汁の実 茎煮しめ、塩漬け、佃煮、いもづる飯、煮物、どぶ漬け、茎を袋演け、味噌汁、酢味噌 和え、妙め物、味講和え、ぞうすいゴマ味噌和え、 汁の実、あんかけ、味噌演け、くずひき、ぬか味噌演け、塩漬け、酢の物、なめ昧階、 煮物、とうが酒、煮付け、粕和え、味噌汁、お澄まし、酢もみ、味噌和え、黒砂糖和え、. 妙め物、酢味噌かめむし (果実は奈良演け、塩漬け、粕漬け、酒粕漬け、汁の実、煮物、油妙め、味階汁の実). 新鮮な物1和え物、おひたし、酢味噌和え、カンゾウの花演け、辛し和え、妙め物 乾燥した物=佃煮ゴマ和え、肉ミ十の実. マコモたけの利用1=ついての記載は無し くマコモの芽を季節の野菜とする1新潟〕(マコモの茎葉は、お盆や七. 夕の行事の材料=干葉群馬埼玉茨城宮城山形). てんぷら)は少なく、味噌汁・漬物・煮物・和 え物・佃煮・あんかけ・煮しめ・炊き込みご飯・ 酢の物・汁の実・お浸しの記載が多かった。 ③現代 r日本の野菜(生産流通間題研究会)」. によると、ユウガオ、ヨウサイ、カイラン、ト ウガン、ニガウリ、ハヤトウリ、ヒユナ、マコ. モたけなどの野菜は小口流通野菜として記載 されている。これらの野菜は、地域により少量 でありながらも生産販売され、食されていると いうことになる。また、ヘチマは沖縄や南九州 地方で食べられて、ノカンゾウも山形の飛島、 新潟の佐渡など新芽や花の蕾をお浸しにして 食べたりしていることもわかった。サツマイモ のつるも今回のアンケート調査結果から一部 の地域がまだ利用していることがわかった。.  また「地域食材大百科(農文協編)第一巻い も」r同第2巻野菜」r同第4巻山菜」によると、 「台湾野菜」は現在それぞれ表4のような主産 地があって栽培されている。    表4 地域食材大百科(農文協籍)に記載のある「台湾野菜」. 現在日本の主産地. 野采名 ヘチマ. 沖縄鹿児島宮崎静岡. カイフン. 茨城、干葉、埼玉静岡和歌山など特1大都市近郊. ヨウサイ. 沖縄、南九州. サツマイモのつる. 記載無し新品種の開発. トウガン. ノカンゾウ. 南九州、沖縄は盛んのほか、呆都、愛知、岡山 鹿児島、宮崎 記載無し 栃木県で全国の9割を生産(かんぴょっ) 沖縄鹿児島、宮崎、群馬 全国各地1一自生、古くかb栽培、観賞されてきた. マコモたけ. 青森県かb沖縄県の各地. ハヤトウリ ヒュナ. ユウガオ ■ガウリ.  以上より「台湾野菜」の多くは、現在、日本 のどこかで食べられている。マコモたけ、カイ ラン、ヨウサイ、ニガウリなど、新たに輸入・ 再発見された台湾野菜も多い。マコモだけは現 在、水田の転作作物として注目され、地域おこ しの作物として期待されている。各地で試行錯. 誤で栽培し続け、意見交換するr全国マコモサ ミット」も開催されている。. 5.r台湾野菜」から見えた日本の食文化.  阪神間の大多数の人に知られていなかった r台湾野菜」は、歴史的には日本のどこかでは 食べられてきており、現在でも食用として用い られている。しかし、台湾のように主要な野菜 として流通・消費されていることはない。この ような違いから浮かび上がる日本の食文化の 特徴を、次の五つの仮説にまとめた。 ①日本の伝統的調理法に合わないr台湾野菜」 は受け入れなかった。→日本の食文化:r伝統 的な野菜の調理法は限られたもので、いずれも 油をほとんど使用しない。」. ②料理用の食材以外の利用法があるものを良 さない傾向がある。→日本の食文化1r多用途 の利用をせず、ヘチマやニガウリは限られた地 域でしか食用としなかった。またユウガオはカ ンピョウの原料に限られる地域が多かった。」. ③野菜は一部の利用が広まると、他の部位を 利用しなくなる傾向が強い。→日本の食文化: 「野菜はたとえ利用できても、とことんの利用 法をしない。ハヤトウリは果実だけを食し、新 芽と若葉を食しない。」). ④昔から食べられていたr台湾野菜」の伝統 的調理法が好まれなくなり、食されなくなって いる。→日本の食文化:「この二、三十年間に、. 西欧化がすすみ、食嗜好が大きく変化し伝統的 な調理法が好まれなくなってきている。」. ⑤現代はr台湾野菜」を台湾料理とともに受 け入れる素地があり、実際受け入れつつある。 →日本の食文化:r現代は、諸外国の料理を広 く受け入れ、油を使った台湾・中国料理は特に 好まれる調理法の一つとなってきている。」.  近年は、諸外国の料理を広く受け入れ、油を 使った台湾・中国料理は好まれている。r台湾 野菜」はさらに受け入れられていくと思われる。           [指導教員 増澤康男コ.

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