8.疼痛緩和チーム依頼患者の精神的ストレス調査 ―つらさと支障の寒暖計を活用して― 奥澤 直美,小林 剛,眞中 章弘 (独立行政法人 国立病院機構 西群馬病院 疼痛緩和チーム) 【目 的】 がん患者は, 病期にかかわらず約半数に適応 障害, うつ病, せん妄などの精神症状が認められるとい われている. これらの精神的苦痛は痛みと同様に適切な ケアが必要とされているが見落とされやすい. そこで今 回,疼痛緩和チーム (以下チームとする)患者の精神的ス トレスについて調査した. 【方 法】 平成 21年 8月か ら 12月までのチーム依頼患者を対象とし, 初回訪問時 に本人から同意を得て, つらさと支障の寒暖計 (がん患 者の適応障害・うつ病スクリーニング)」を用いて調査し た. 気持ちのつらさの点数が 4点以上, かつ日常生活の 支障の点数が 3点以上をカットオフ値にした. カットオ フ値を超えた患者には, 精神科受診について説明をした. 【結 果】 チーム依頼患者 23名中, 20名 (87%) に調査 した. カットオフ値を超えた患者は 6名 (30%) であっ た. その 6名に精神科受診について説明を行い, 1名が受 診し,5名は受診希望がなく中には「チームが来てくれる のでいい」という言葉があった. 【 察】 チーム患者 の依頼内容のほとんどは疼痛緩和であるが, 今回の調査 で, チーム依頼時に精神的ストレスや心のつらさを抱え ている患者が多くいることがわかった. また, 今回精神 科受診を希望しなかった患者から「チームが来てくれる のでいい」という言葉があり, チームが精神的支えと なっているとも思われ, チームの役割を再認識した. 今 後も調査を続け, 結果を依頼病棟にも伝え, 精神的苦痛 を早期に把握し適切なケアにつなげていきたいと え る. 9.突然の病的骨折により急激に ADLが低下した患者 の看護 ―スピリチュアルペインの訴えに対する看護 介入― 奥野さやか,林 千賀子,高柳麻衣子 黒澤 知恵,塚原みどり (伊勢崎市民病院 9階A病棟) 【はじめに】 スピリチュアルペインの表出が多い患者の 事例を経験し, 看護師のスピリチュアルケアにおける役 割について 察したため報告する. 【事例紹介】 対象 : 50歳代男性 A 氏. 胃癌播種性骨髄癌症. 経過 : H21年 9 月に入院し病名告知を受ける. 化学療法を開始したが, 歩行中に右大 骨病的骨折し床上生活となる. 治療の効 果はなく, 12月緩和ケア病棟へ転棟する. 【看護展開】 A 氏は骨折により疼痛の出現と下肢の安静が必要とな り, 生活の大部 に他者の介助が必要となった. 骨折直 後は痛みに対する訴えが多かったが, 痛みが落ち着いた 頃より, 予後への不安や今後も骨折の危険性が高いこと などから, 強い無力感や, 自 の人生に価値感を見出せ ないという発言が多く聞かれるようになった. また, 感 情に起伏があり, 頻回に涙を流すこともあれば, 医療者 に対し怒りを表出する場面もあった. 看護師は積極的傾 聴を行い, 共感的態度で接した. また, 緩和ケアチームが 介入し多職種で援助を行った. しかし, 無力感や無価値 感は緩和されなかった. 【 察】 看護師が積極的傾 聴を行うことで, A 氏から多くの感情が表出された. し かし, A 氏と医療者の思いにギャップがあったことから, 患者の訴えに対し説明的・誘導的になってしまうことが あり, 共感的態度は一貫されていなかった. 積極的傾聴 のポイントとして, 田村は「看護師の評価や反応として 引き起こされる感情を持ち込まずに聴く」ことを挙げて いる. 看護師は, 誘導的に会話をしたり決断を急かした りせず, A 氏の思いをそのまま受け止め, A 氏の揺れて いる思いに付き合うことが必要であった. また田村は, 看護師が, 患者が自 の思いを率直に話すことができ るように支持的な態度を示すことで, 患者の自己洞察が 深まり,問題解決も可能となる」と述べている.このこと から, 積極的傾聴は患者が人生に対し新たな意味付けを することを支え, スピリチュアルペインの軽減に大きな 役割を持っていると えられる. 【まとめ】 看護師の 役割は, 患者が自 の人生に対し新たな意味付けができ るように支えることである. そのために, スピリチュア ルペインの存在を受け止め, 意味を 察, 理解して, それ に応じた介入方法を検討していく必要がある. 10.多くの課題を抱えた患者家族の退院支援の検討 高田 由, 沼 晶子,茂木真由美 (群馬県立がんセンター 看護部) 佐藤 浩二 (同 呼吸器内科) 猿木 信裕 (同 麻酔科) 【目 的】 多くの課題を抱えた状況での在宅療養への移 行には退院調整が重要である. 今回終末期中期における 患者の在宅への移行を可能にした看護介入を明らかにす る. 【方 法】 Jonsenの倫理検討シートを用いて,終末 期における患者の課題を 4側面から抽出 【事例紹介】 30歳代女性,膵尾部がんⅣ期,肝臓・腎臓転移,腹膜播種 あり. 経過 : 症状出現から 2ヶ月で受診. 診断後, 余命 数ヶ月の告知を受ける. 初回化学療法実施後, 副作用及 び肝機能の悪化により, 治療継続困難となり在宅療養を 希望. 家族構成 : 夫, 小学生の長女, 幼児の長男, 義 母 との 6人暮らし. 【結 果】『医学的適応』: 疼痛コント ロールに関する不安を抽出. それに対し麻薬量・レス キュー薬の 用のタイミングを調整. その結果, 患者は 80 第 21回群馬緩和医療研究会
8. 疼痛緩和チーム依頼患者の精神的ストレス調査 ―つらさと支障の寒暖計を活用して―(第21回群馬緩和医療研究会)
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