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レピュテーションから考える企業の評価—情報としての価値を焦点として—

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レピュテーションから考える企業の評価

── 情報としての価値を焦点として ──

Corporate Evaluation from the Perspective of Reputation:

Focus on Information Value

青 山 訓 与

Noriyo Aoyama

要  約  企業を評価するのは誰なのか。企業外部にいる人間と限定した場合に、企業に関する情報入手には制 限が伴うこととなる。上場企業に関しては、法的な裏付けのもと有価証券報告書を提出している。また 株式上場にあたっても規則で書類の提出が求められ、自主的な公開としてIRなどHPで情報公開して いる場合もある。しかし、企業情報はそれだけではない。さまざまな情報が世の中に飛び交っており、 情報過多などと表現されたりもするが、昨今のインターネットの世界における企業評判、名声、口コミ と言われるレピュテーションも企業情報の1つであり、企業の評価の1つの視点である。その企業情報 の情報価値はどこにあるのか。  情報価値は、誰にとっての情報価値なのかによって内容も力点も異なる。企業側の情報価値なのか、 利害関係者にとっての情報価値なのか。さらに、その情報がどのように用いられるものなのかという目 的からも情報価値は異なる。企業の評価という立場から情報価値を眺めた時に重要となるのは、その評 価の有用性にあることは当然であるが、そもそも事実であるかどうかが問われるのが情報価値であり、 その事実・真実はどこにあるのか。会計情報に問われる信頼性の付与という問題と同様にレピュテー ションも信憑性の神髄にある主観的ではあるものの事実・真実が追求されていることに触れた。また、 レピュテーションから企業評価を眺めた時に見えてくる評価の不確かさ危うさについて確認すると同時 に、企業は評価を通じて社会から育まれ、そのプロセスの1つとして企業にかかわる情報としての価値 を社会とともに高めていく必要性に触れた。 〔キーワード:情報としての価値 レピュテーション 主観的な事実・真実〕

はじめに

 企業によるCSR、ESGというものが一般的ではな い時代には、企業がどういった活動を行ったとしても 利益をあげ、働く場として提供されていれば問題ない 時代もあった。さらに上場企業に関しては債権者ある いは投資家目線での情報公開だけで事足りていた。昨 今では、企業の環境経営あるいは社会的責任の貢献度 について監視するような、メディア含めた社会からの 厳しい目で企業はチェックされている。チェックある いは評価するための情報もさまざまな形で世の中に流 れている。レピュテーションもその1つであり、立場 によりその活用目的もことなる。  企業内部で作成される企業情報とは異なるプロセス

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を経て作成される企業情報であるレピュテーションで はあるが、購買など企業のマーケティングに影響する だけでなく、CSR、CSVあるいはESGに向けた企業 活動を通じて企業全体の評価にもつながる。企業全体 の評価に影響を及ぼし得るものではあるものの、レ ピュテーションという側面からの企業の評価は、 evaluationであるといえるのかという点で疑問は残 る。そもそもassessmentを含む概念として考えたい evaluationという評価にはいくつかのステップが考え られることは別稿(青山 2019)で論じたが、企業の 評価という枠組みの中に存在しつつも、様相は異なる 評価と言える。  本稿においては、その評価の対象になる企業情報に 焦点を絞り、企業情報として価値のある情報とは、そ して企業の評価として利用されることで見えてくる評 価のリスクとその可能性についてレピュテーションを 通じて考察したい。  レピュテーションは、企業の立場から企業の価値を 増減させる資産としてのコーポレート・レピュテー ション(櫻井 2005)とも表現されたりしているが、 価値ある情報、無視しえない情報であるからこそ、評 価のステージに引き上げられる。

Ⅰ 情報価値とは何か

 「情報価値」について考える際、気になるのが「情 報に期待する価値」という意味なのか「価値のある情 報」なのかという点である。「情報価値志向」という 言葉を用い「メディアによって得られる情報に人々が 期待している価値」(坂井 2018)としているものもあ れば、「情報価値」すなわち「取り上げる価値がある 情報」(赤堀 2019)と読む論者もいる。前者に関して は、情報を受信する側の価値と考えられ、後者に関し て は、 田 中(2019) は、 情 報 を 発 信 す る 側 の プ ロ フェッショナル性という視点から「様々な環境の変化 に応じて価値ある情報を発信できなければならない」 と指摘していることを参考とすれば、情報の発信者側 の視点と考えられそうである。情報を発信する側と情 報を受信する側のそれぞれに価値を見出すことができ るのが情報価値であるとするならば、企業情報はどう であろうか。企業情報は、企業を通じて作成される情 報であるため、発信者は企業と考えられる。またそれ らの情報を入手(受信)して価値判断を行うのは利害 関係者ということになる。  ⑴ 企業にとって価値ある情報  このニュースを記事として取り上げることの価値、 あるいは日々刻々と変化する社会環境の中で人々に とって価値のある情報を収集し発信し続けることの意 味が情報価値であるならば、企業情報を作成し発信す る企業側の情報価値はどこにあるのだろうか。企業の 目的は、利益を追求すること、企業の社会的な責任を 追及することなどいくつか目的はあるが、最終的には 情報発信する立場からの情報価値とは、企業価値を高 める情報であるということであろう。  企業価値を高める情報とは何か。上場会社について は、株主をはじめさまざまな利害関係者に会社状況の 報告が必要であり、特に投資家に対しては、タイム リーな情報公開が求められている。法律に基づく有価 証券報告書や東京証券取引所の規則に基づく公開情報 である決算短信、また、会社の自主的な公表情報とし てIR情報が会社のHPで公開されたりもしている。 昨今では、様々なメディアを利用することができ、何 を通じてそれを公開していくのかということも大きな ポイントとなる。いずれにしても、企業利益につなが る情報、投資家向けの視点で言えば、株価の上昇へと つながるような情報であろう。あるいはそれにつなが るような、優れた新製品・新商品の情報を公開するな ど利害関係者は投資家だけではないことを踏まえれ ば、CMで商品広告を打ち出すことも1つである。  また、企業の社会的責任、CSR、ESGなどが言わ れ始めてから、ますます財務情報以外の非財務情報を 掲載している報告書が社会から求められ必要性が高く なってきている。利害関係者向けの情報で、最終的に は、企業側のメリットへとつながる情報を利益の種と してまく。さらにはその情報の保証という問題も含め てその信頼性が昨今の課題ともいえる。では、このよ うな多様な情報をなぜ企業が公表することが求められ るに至ったのかであるが、法律や規則で求められる社 会規範として求められていること以上に、社会の変容 を期待して、環境問題、社会的な問題をそれぞれの企 業の社会的責任として取り上げることで、社会的な課 題を解決していくというビジネスであると同時に慈善 事業やCSR活動等をアピールするイメージアップの 側面もある。  これら企業が作り出す情報が法律を根拠として、あ

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るいは利益を追求して、あるいは社会からの期待に応 えるために発信されているということに加え、企業を 取り巻く環境により企業が多様な役割が期待されてい るからに他ならない。変化あるいは進化への期待とも とれる。企業にとって思いもつかないような斬新な要 望やアイデアを企業の外部から内部に取り込む柔軟性 ある企業が生き残ってきたとしたならば、未来志向で 企業の価値を形作るのは、不安定で理解不能だけれど も、その領域に歩み寄ろうと一歩踏み出す勇気、覚悟 でしかない。それを教えてくれる、そう感じさせてく れるレピュテーションのような自由な情報にこそ価値 があるともいえるような気がする。ただ、そこで注意 しないといけないのは玉石混交な情報から必要な情報 を引き出さなければいけないということである。  ⑵ 利害関係者が情報に期待する価値  利害関係者が企業情報に期待する価値とは、企業と どのような利害関係を持つのかにより異なる。消費 者、投資家、債権者、地域住民、地方公共団体などさ まざまである。  ①投資家が期待する情報価値  企業情報として重要な位置をしめるものに会計情報 がある。会計情報の情報価値とは、会計情報が投資家 の意思決定に貢献して、目的適合性ないし意思決定関 連性を発揮するには少なくともそれが情報価値を有し ていなければならない。ここでいう情報価値とは、そ の会計情報の入手と利用によって、投資家による企業 評価や投資結果が改善されること(桜井 2013)であ る。この情報価値を有する会計情報がなぜ作られるの かと れば、投資家の意思決定に貢献するためなのだ が、価値ある情報はそれだけではない。  投資というと、見返りを求めない投資と見返りを求 める投資がある。前者については、親から子への投資 に近く、出世払いとなると後者に近くなるが、基本的 には自分が親から受けた恩を自分の子供への投資とし てつなげるという発想がある。また、「ご恩に報いる」 「托鉢」という表現も日本にはあり、見返りを期待し ない「徳をつむ」活動の1つである。欧米で言うとこ ろの宗教を背景とした慈善事業、ボランティアに近 い。欧米型のいわゆる投資は後者に近い。慈善事業で はない、株価の上下運動の中で利益を確定させたり配 当等の利益を追求する。では、日本におけるESG投 資はどちらを目指しているのかということであるが、 ESG投資という側面から見ても、投資家がESG活動 を通じて期待しているのは、最終的には、中長期的な 企業価値の向上や株式のリターンである(光定 2018) という。企業価値の向上とは言いつつも利益という見 返りを求めない慈善事業的な発想での投資では決して ない。何に投資するのか、あるいはその投資スタンス により必要とされる企業情報も異なるが、安定した一 番の情報はやはり、損益状況、財産状態、キャッシュ フロー状況等の財務情報ということになろうが、それ だけではないからESG投資ということなので、当 然、財務情報以外の情報を加味し合理的に意思決定す るための情報が重要である。   a)個人投資家が期待する情報価値  1日のうちに何度も取引を行う短期的な投機目的の 投資家もいれば、数年、数十年と中長期的に投資して 企業を育てる視点で資金提供を行う立場がある。どち らの立場で情報をみるのかでもかなり異なる。1日の 値動きで売買するような投機目的であれば、情報の中 心は、新製品等の話題性、株価の値動き、取引の出来 高等の今現在における賑わいのような活動性が重要で ある。情報の信憑性があるかないかという、その正し さというよりも、ありそうだという不確かな情報で あったとしても活動性が高いとにらんだ場合は株の買 いが殺到する。企業不祥事あるいは企業価値にとって マイナスな情報がある場合は空売りなどの手法を用い て投機家は寄ってくる。つまり、投資結果が改善され れば、利益があげられれば、情報の整合性がとれずと も投機資金が流れ込む場合が往々にしてある。しか し、中長期的な投資という場合には、若干視点が異な る。経済環境へのマクロ的視点や決算短信などの財務 情報、どんな製品・商品を作り出している企業なの か、経営者の考え、企業の成長性、財務健全性等、企 業についてきちんと理解しているのか理解していない のかが重要なポイントとなる。つまりは、決算情報を 利用した財務分析による経年比較やその製品を実際 使ってみての感想などが企業の安全性、成長性、将来 性を見極めるポイントとなり、雰囲気とか流れなどと いった主観的なそして根拠のない情報だが株価の上昇 気流にのるというものではなく、根拠にもとづく正し い情報が投資判断基準となったりする。上記でも触れ たが、昨今ESG投資という環境性、社会性、ガバナ

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ンスなどの多面的な評価から企業への投資を行うもの が登場し、一般の個人投資家にとっても興味、関心が 高いものとなってきている1) ものの、主眼は見返りを 期待した利益を出すことには変わりはない。   b)機関投資家が期待する情報価値  個人投資家とは異なり、少し、資金的なゆとりを もって投資するのが機関投資家である。機関投資家に は受託者責任2)があり、預かっている資産の運用と、 その運用のやり方について個人投資家のような自己責 任の範疇で自由な行動が許されず制限されている。ま た、投資先企業との「対話」というものを日本版のス チュワードシップ・コードでは重んじているが、機関 投資家と投資先企業との間の対話を通じて、SDGsな どを踏まえたさらにより良い社会を目指せる企業に投 資し共に企業を育てる、ひいては社会をはぐくむ活動 だともいえる。  ここで機関投資家にとって情報に期待する価値が何 かと考えると、投資先企業の選別にあたっては、財務 分析等で必要になる財務情報に最大の価値があること は間違いないが、企業が利益を得るまでの企業活動の プロセスについて財務以外の企業情報にも価値を見出 すことができる。2019年に有価証券報告書等の記載内 容について『企業内容等の開示に関する内閣府令』3) が公布・施行された。その中で触れられているのは、 「財務情報および記述情報の充実」や「建設的な対話 の促進に向けた情報の提供」「情報の信頼性・適時性 の確保に向けた取り組み」についての改正であり、実 務においては、投資家が求めている企業の情報につい て有価証券報告書への記載がこれまで以上に求められ てきているということである。  機関投資家の立場からすると、これまでの財務的な 結果にプラスして大きな未来を見据えた社会を作るう えで欠かせない構成要員としての企業をはぐくむ、ひ いては未来社会へ投資するという要素が情報価値の構 築にプラスされる。  ②生活者・消費者が期待する情報価値  投資家もたどればどこかしらで消費者であり、どん な利害関係者も生活者であり消費者である。おいし い、安い、便利、希少という価値は当然、消費者が期 待する価値であるが、人権、環境問題、動物愛護、社 会的正義、コミュニティの関与などといった倫理的な 項目についても重要視する人たちもいる。これらに配 慮している商品あるいは企業についての情報をもと に、より責任ある消費活動を勧めるバイヤーズガイド4) というものがある。消費者も多様であり、様々な価値 あるいは情報への期待を高めている。また、経済的な 価値では測れないものを非貨幣価値あるいは非貨幣的 側面として表現し、企業側で言うところの無形資本を 消費者側の立場に立ち、読み手側が利用する価値に着 目して情報資産と定義する報告書5)がある。当然、レ ピュテーションへの読み手だけでなく書き手との情報 共有により両者に便益を生むものであるとも付記され ており、情報資産としての情報の集積により企業側の 情報管理の問題等ふくめて影響をもたらす6)という。 企業外部で作られる情報を消費者の資産として考える 情報資産であるが、ステークホールダーとしての個人 が体験や疑似体験を通じて認知された事象またはイ メージがレピュテーション資産を蓄積していく(櫻 井 2005)と表現されているものと重なる。上記報告 書においては、消費者側に立つ情報資産としている が、情報が蓄積され企業にフィードバックされれば当 然、企業の無形資産と言われるレピュテーション資産 への影響は不可避となり、企業側そして消費者等のレ ピュテーションを作成する側の両方から情報をともに 作り出す財産としての価値にも注目したい。

Ⅱ 企業情報における事実・真実

 企業にまつわる情報の価値は誰の立場に立つのかに より多様であり、また、その評価された結果をどう使 うかについても一概には言えない。言えるのは、評価 された結果は、何かに使われることに意義がある有用 性ということである。では、どのような目的で企業は 評価される必要があるのか。評価の目的の1つとして 意思決定のためということがある。意思決定する主体 がいて、意思決定される材料としての企業の評価結 果。最終的には意思決定者が目指すのは合理的な意思 決定ということになる。しかし、企業内部から吸い上 げられた企業情報における評価とは異なり、企業外部 で作成された企業情報であるレピュテーションは、情 報の保証・検証を経ての情報の翻訳あるいは解釈され た企業評価あるいは格付けというプロセスが得られる 場合もあればそうでないものも多々存在する。その点 で、企業内部から吸い上げられてきた情報と同じに扱

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うことはできない。つまりは、企業情報といえども、 フィルターを通じて加工、作成されてきているものも あれば、野ざらしのまま意思決定場面に持ち込まれる 場合もある。しかし、どの利害関係者であったとして も第一義的には、その情報が事実・真実の情報である ということは変わらない。それは企業側にとっても、 そして企業を取り巻く利害関係者にとっても崩せない 価値である。以下、情報に対して期待できる制度的な 事実・真実を踏まえた上で、レピュテーションにおけ る事実・真実について考えることとする。 ⑴ 制度的な事実・真実  企業会計で財務諸表を作成する理論を学び、簿記で は財務諸表を作成する技術を学ぶ。その財務諸表が適 正に作成されたのかを証拠との突合作業をしながら確 認してお墨付きを与えるのが監査の仕事である。その 一連の流れの中で、財務的な視点を通じて企業を把握 し、財務情報が作られる。その企業情報の情報として の価値はどこから生まれるか。  企業会計原則等規則や法律に基づいて作成された情 報であり、法律等の制度に裏付けを求めながら行われ る監査で精査された情報であるということにある。会 計学辞典(同文館:第六版)には、「会計原則に基づ いて行われる会計行為の結果として得られる財務諸表 の真実性は、会計原則にしたがう限り保証される。こ れは社会的に一般に承認された制度的真実性」である と記載がある。また、福井(2013)は、会計研究の対 象は事実ではなく単なる主観的な思い込みに過ぎない わけではない。存在論上は主観的であっても認識論上 は客観的に存在する制度的事実であると表現する。制 度的真実あるいは制度的事実と表現を異にするものの 言わんとするところは同じであるように見受けられる。  法律や規則等の制度によって裏付けられた事実・真 実。経済的な事象をルールに基づいて吸い上げ、かた どられた姿が財務情報であるとするならば、たとえ収 益性を今期あげられなかったことを裏付ける証拠とな る財務情報だったとしても、情報としての価値は高 い。収益性をあげられなかったのにもかかわらず、財 務諸表上の数値を操作し、その不正を監査で見抜けな かった状態で作成された情報は、情報としての価値は 低い。つまり、営利を追求し、収益を上げることが求 められる企業経営ではあるものの、企業情報としての 価値という視点からは、証拠のある根拠に基づく情報 であるのか、信頼性はあるのか信憑性はあるのかとい う点で評価はあがる。事実・真実であれば信頼性を付 与する必要はないのだが、事実・真実であるかどうか というところに疑問が残る以上、限りなく事実・真実 であろうというお墨付きが重要なカギとなる。これが 制度というプロセスを得ることによって得られる事 実・真実であるが、これを非財務情報に対して期待す ることはかなり厳しい現状にある7) 。さらに、評判や 名声、口コミと言われているレピュテーションは、企 業情報として収集する社会的な規範である法やルー ル、原則等がない以上、制度的な事実・真実性を期待 することはできない。口コミや企業評判は、消費者あ るいは投資家の主観から生まれたものに近く、客観性 を要求されないようなコメントまで含まれるからであ る。ここで、現在レピュテーションが企業の評価に使 われているものを見ていきながら、その事実・真実に ついて考えてみたい。 ⑵ 企業の評価としてのレピュテーションに期待する 事実・真実  ①投資家サイドからみたレピュテーション  制度的な事実・真実の裏には法律、ルール、原則、 規準のようなものが存在するが、企業の評価を総合的 に行っている、東洋経済新報社『CSR企業白書2018』8) CSR評価・CSR企業ランキングはどうであろうか。 昨今では、情報提供としては大きな位置づけを占めつ つある。具体的には、上場企業、未上場企業4000弱の 企業へ調査票を送付して、アンケート調査によりデー タを集め、また、財務情報に関しては決算情報を使用 し、独自の総合的な評価を出している。また、企業の 新しい評価軸として環境的な側面から企業を評価する という環境経営学会9) が行う環境経営格付けというも のもある。経営研修会、参加企業の自己評価や学会員 のヒアリング、インタビューにより経営評価・診断を 行うものである。  財務分析、経営分析といった場合、制度的な事実・ 真実を根拠とした情報をもとに評価分析が行われるこ ととなるが、非財務情報という情報を把握するルー ル、原則、基準も統一されていない様々な形が許され ている報告書の場合、その評価をどう扱うのかは難し い。企業側の思惑で作られた報告書であるというゆが み、企業外部の者が作成したアンケートのゆがみある いは信憑性はどの程度あるのか、ヒアリング・インタ

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ビューに関してもさまざまな質問者、回答者等の主観 が含まれバイアスがかかる可能性は高い。上記のもの を企業の評価として参考とする根拠としては、企業の 財務情報以外の情報が入手困難であるというただ中で 情報を収集し独自なりにも整理されているという点に ある。客観性があるのか、合理的な意思決定の判断材 料となりうるのかという点では確証はない。確証がな い以上、レピュテーションとの区分けが難しい。  レピュテーションであり企業の評価とされる有名な ものに、「世界で最も称賛される企業」という特集で 毎年継続して行われているランキングがある。ランキ ングはピックアップされた企業680社の取締役と証券 アナリスト合計3,900人に対し、米人事コンサルティ ング大手コーン・フェリーが調査票を送付し、9つの 項目について主観的に「称賛に値する」とされる企業 を回答する手法でのランキングと説明されている10) 。 主観的に「称賛に値する」ことを言っている以上、客 観性が期待できないことは言うまでもないが、企業の 評価の1つとして権威づけされている。その評価結果 をどう使うかは意思決定者の自己責任となるが、評価 としての価値は高く、主観性にもとづく評価だとして も有用性が期待できるあるいは期待したいということ であろう。  ②消費者サイドから見たレピュテーション  消費者の視点から企業を評価するといった場合、レ ピュテーションとしての評価とバイヤーズガイドのよ うな評価、ランキングがある。前項でも触れたが、バ イヤーズガイド11) は、客観的な情報をもとに評価さ れるものであり、商品選択の際に参考にするものだ。 それとは一線画するものに、消費者サイドから見たレ ピュテーションである口コミがある。インターネット 上においては最近、amazonや楽天などの販売サイト で商品選択する際に口コミ数や信頼性(図表1、2参 照)などが商品選択の際の参考とするなど商品評価、 企業評価へとつながる大切な情報となっている。  バイヤーズガイドもレピュテーションも消費活動を 通じて消費者が企業へ経済的に投票12) する際の情報 ではあるものの、バイヤーズガイドは客観的な裏付け を参考とする評価であるのに際して、レピュテーショ ンは消費者の主観に近いところでの評価という点で違 いがあると言える。では、レピュテーションに信憑性 あるいは事実・真実は求められないかといえばそうで はない。むしろ事実・真実を求めるからなおさらに、 沢山の評判や名声や口コミ情報あるいはマイナスコメ ントを含めた生の現場の声、事実・真実の情報を求め る。 ⑶ 主観的な事実・真実  消費者は商品購入の際に様々な声を参考としている というアンケート調査がある。また企業にとって良い 情報だけではなく悪い情報、企業価値をマイナスとす る情報に関しても商品選択の際の参考としている(図 表3、4参照)ことから、このあふれる情報の中から 知りたい情報を選び出し、商品購入に結び付けるプロ セスも単純であるとは言えない。これは消費者だけに 限った話ではなく、投資家においても同じである(図 表5参照)。投資家がこの企業へ投資をすると決断す るに際して、企業にとって良い情報も悪い情報も情報 図表2 口コミを読む際、主に重視する点 (出典:GDPに現れない ICTの社会的公正への貢献に関する調査研 究より抜粋引用) 図表1 口コミを読んだこと飲食店・初稿先の決定や商 品購入につながった経験 (出典:GDPに現れない ICTの社会的公正への貢献に関する調査研 究より抜粋引用)

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として価値があるから参考とする。意思決定に参考に なる事実・真実な情報が欲しいということである。  最近、上場企業などで作成が進みつつある統合報告 書は財務情報と非財務情報で構成されている。そのう ちの財務情報に関しては制度的事実・真実が期待でき るものの、非財務情報は、企業のCSR、ESGなど財 務的な数値としての把握、比較が困難な情報であるな ど制度的な事実・真実が約束されていない。レピュ テーションに関しても当然、求められない。企業情報 として収集する際に法的な根拠や制度上のルール、基 準などは明瞭ではなくまた、強制力もないからであ る。ルールの無いところで発生する現場の声であるか らレピュテーションなのであるが、これに関しても、 事実・真実性が求められていないわけではない。で は、どんな事実・真実性が存在するのかといえば主観13) 的な事実・真実とはいえないだろうか。  主観的な事実・真実という言葉からイメージするも のに宗教的な発想がある。覚醒した者が、神の声を聞 きとり解釈した理解を覚醒者の言葉で届ける。そこに は、覚醒者の主観によって理解した言葉を事実・真実 として届けるというものである。だれもその客観性を 証明できず、また、解釈の正しさを証明できないまま に、「そうであるらしい」という複数の声から客観性 に近づく(Daivid 2019)。そして、この客観性を求め ている主観的な事実・真実について考えてみると、レ ピュテーションとの共通項を見出せそうでもある。消 費者が持つ主観的情報を比較評価した時に、財・サー ビスを使用した結果、類似したコメントを吸い上げ同 意を求める事実・真実と近いように感じる。あるい は、この主観的な事実・真実も実は、他人との意見や 感想に類似性を求めている段階で、消費者の主観性を 排除しようとして客観性を求めているとも言えなくも ない。なぜなら、一人一人違う人たちの違う評価を求 めた口コミなどは、自由気ままな表現で行われる一 方、悪い評価も投稿あるいは表現される。そのいくつ かを比較するなかで類似性を発見し、同一化、共通化 できそうなものをすり合わせ抽出する。そこにおける コメントは、店頭で購入したりサイトを通じて購入す る場合でも、店員の対応の悪さがその売り上げに反映 されたりする場合も往々にしてあり得る。また、求人 サイトにおいても、実際、働いてみた感想を掲載すれ ば、求職者はそれを参考として応募するしないを決め る。そのコメント自体も、個人的な恨みから生まれた デマかもしれない。いずれにしても投稿者の感情を含 めてのコメントも多々存在する。消費者自身の主観的 コメントに、客観性がないことであっても消費者に とって感じたことが事実であるならばそれが事実・真 実といえる。  口コミ、評判といったレピュテーションに信憑性は 求めないということではなく、さまざまな意見を見聞 きできることが醍醐味であり、レピュテーションに何 を求めるかといえば、その声を利用する意思決定者の 方で自覚のありなしにかかわらずレピュテーションの 中に知りたい声を求めており、そして、それが事実・ 真実か意思決定に有用であるのかそうでないかをかぎ わけようと主観的に精査している。こう考えるなら ば、レピュテーションの事実・真実とは、主観的なも 図表3 良いクチコミと悪いクチコミ、どちらが気にな るか(単一選択) (出典:購買行動におけるクチコミ影響に関する調査より抜粋引用) 図表4 良いクチコミと悪いクチコミどちらが購入に影 響するか (出典:購買行動におけるクチコミ影響に関する調査より抜粋引用) 図表5 「企業の評判」の良し悪しによって投資先を変更 した経験 (出典:企業の評判と購買・就労・投資に関する意識調査より抜粋引用)

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のであるもののそれを排除しょうという個人内のプロ セスを通じて限りなく理性的で客観的なところへ導か れるものともいえる。そもそも、自己責任のなかで、 レピュテーションを評価として利用する場合には、特 に、理性的で客観的でなければならない理由は見当た らないような気もする。 ⑷ 意思決定のための事実・真実  企業の目的は利益を追求するためにも消費者から 財・サービスを購入してもらわないといけない。さら には事業拡大あるいは事業の維持のために投資等の資 金提供者を募る必要がある。これを達成するために情 報が開示される。かたや情報の受信者はどうであろう か。利害関係者にとって情報に期待する価値とは、商 品選択あるいは投資先の選別にさいして自分の思う価 値判断ができる情報であるということにある。さらに 消費者あるいは投資家にとって情報に何を求めるかと いえば、企業が提供する財・サービスが本当のところ どうであるのかという、事実・真実の情報であるとい うことである。消費者の購買行動がゆくゆくは企業利 益の向上へつながり、株価上昇含め企業価値へと反映 されることが期待される。意思決定に利用できる情報 であるのかないのかということに加え、評価する前 提・基礎として事実・真実の情報であるのかというこ とに価値があり、企業価値をマイナスとする可能性の ある情報であったとしても事実・真実であり、消費 者・投資家をミスリードしないための情報であること に価値がある。消費者・投資家には、意思決定に際し て誰の責任でもない自己責任(機関投資家に関しては 受託責任であるが)が伴うからである。企業の評価と いう立場からレピュテーションを捉えた時に、それは 法律や規則等の制度によって裏付けられた事実・真 実、制度的な事実・真実を現状においては期待できな いものの、消費者・投資家が望む情報は企業価値を高 める良い情報ばかりではなく、リスク情報等の企業に とって悪い情報も含めて知りたいという主観的である かもしれないがそれでも事実・真実である。その真意 は、判断を間違いたくない、合理的な意思決定のため に事実・真実を求めているからにほかならないという ことである。評価するという場面での情報価値は、そ れは情報発信者としての企業側の思惑とは異なる、自 らの責任ということを常に求められる情報受信者の 個々の価値判断の場面で問われることになる。  情報の受信者として企業あるいは財・サービスにま つわる情報は企業から公開される情報のみならず、至 る所にちりばめられており、それを情報受信者はあら ゆる形で入手しているといえる。企業全体の評価であ る場合もあれば個別の製品の評価としての場合もあ る。それがレピュテーションと言われているものであ り、たとえそれがどのような事実・真実であったとし ても意思決定が合理的に完遂されれば問題ない。しか し、意思決定の際の参考にするなど有用性あるものだ としてもレピュテーションについてはそれだけではな いリスクもある。

Ⅲ レピュテーションから考える企業の評価に

おけるリスク

 桜井(2005)は、レピュテーションを企業側の立場 から資産の1つとしてみるコーポレート・レピュテー ションを提唱している。企業価値を高める非常に重要 な無形資産であり、情報としての有用性はあるもの の、その反面、信用失墜行為があれば企業価値を低め マイナスのレピュテーションとなり、マイナスにもプ ラスにも企業の価値を変動させるものだとも言ってい る。この企業価値をマイナスに触れさせた要因をリス クと捉える見方がある。 ⑴ レピュテーション・リスク  企業は、製品の事故、偽装問題、自然災害、環境問 題等の社会規制まで含め多くのリスクにさらされてい る。さらにこれら含めた些細なアクシデントや事件・ 事故が企業の不祥事としてメディアで取り上げられる こと事態もリスクである。この企業がさらされるリス クについて、レピュテーションという立場から、レ ピュテーション・リスク(櫻井 2011)と言われても いる。目に見えない賠償責任あるいは費用のリスクが 潜んでいる。企業におけるリスクを考えてみてもその 分類や区分けも論者により多様である。そのなかにお いてレピュテーション・リスクも同じであるが、共通 して言えることは、企業にまつわるリスクである以 上、それが潜在化しているならコントロールは難し く、顕在化していたとしても企業が自身の力だけで制 御しづらい問題である。ゆえにリスクなのだが。  レピュテーション・リスクは、法律等を違反して不 祥事を起こしマイナス評価されるもの、法律違反も悪

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意もないものの結果的に評判や名声を傷つけてしまう マイナス評価、デマなどの悪意による行為でマイナス 評価されるものと分けて考えられる(櫻井 2011)。レ ピュテーションは企業の価値に影響を与えるものとし て、また、その評価において、評判や名声としての影 響力は大きい。  これらの情報は企業価値を低減させるものではある ものの、企業を評価するという場面において、消費 者・投資家が責任を求められるとするならば、意思決 定の場面でリスク情報を判断基準の1つとして利用す る価値は非常に高いと言える。選択しない、投資しな いということも合理的な判断の1つである。  ⑵ 時間の経過による変容というリスク  遠い将来あるいは近い将来に病気になるのか、なら ないのかという時の経過で問題が表面化してからでし か安心・安全かそうでないかを語れない。レピュテー ションも同じである。プラスのレピュテーションだっ たとしても、時間の経過とともに真実が登場すること により事実が変容していく場合がある。これまで事実 と真実という言葉のニュアンスを明確にはしなかった が、ここでは、使い分けたい。事実は真実により変容 する14)と考えるからだ。例えば、企業の価値に直接 影響するような事件や事故が起きたとする。その店へ の出入りや、商品購入に際しては慎重になる。企業経 営に重大な影響を及ぼしかねない事態にもなりえない にもかかわらず、その真実は、時が経過したのちでし か表面化せず、信憑性をその場で確かめることの困難 さがある。現段階でのマスコミ報道あるいは入手した 情報が正しくない場合も往々にしてある。良い評判で あった企業は、良い評判として見逃されがちである が、情報の信憑性がどの程度高いのかによる確証が得 られない以上、その良い評判としてのメッキが剥がれ るという不安定感は否定できない15)  昨今の企業不祥事における事例においても、企業不 祥事が表面化するまでは優良企業と言われていた会社 は多数存在する。企業不祥事を起こした企業におい て、社会的責任等に基づく報告書などが評価機関に よって格付けのようなことが行われてるが、問題発覚 や新たな情報により評価の格下げが行われる。この点 で時間の経過とともにリスクが表面化した場合、優良 企業もリスクありとして変容し、評価の保証には時間 的な経過が要求される。  レピュテーションの評価を通じて考えるのは、評価 結果という事実も真実により変容する。変化を前提と するものを捉える時、どのような形で企業情報を公開 しているのか、どのタイミングでの公開情報なのか精 査する必要がある。評価のタイミングの難しさととも に、意思決定のタイミングの難しさともいえる。 ⑶ 評価が誇張されるリスク  レピュテーションは会社の評判や財・サービスの口 コミなどの評価として世の中に出回るものであるが、 意思決定者は、さまざまに表現されるレピュテーショ ンという企業の評価を通じて、企業の事実・真実ある いは商品の事実・真実に迫っているともいえる。情報 過多と言われるこの世の中において、自分の目で自分 のやり方で信憑性、信頼という事実・真実にアプロー チして、購入あるいは投資するという意思決定が行わ れる。なぜなら、機関投資家は少し異なるスタンスで あるが個人投資家も消費者も最終的には自己責任が問 われる。企業あるいは財・サービスのイメージアップ のために利用されることもある。使って本当に良いと 思う財・サービスであればまだしも、評判や名声を高 めるために、社会的認知度あるいは社会的影響力の高 い人物の評価コメントを利用する。あるいは、社会的 信用のある専門家の評価コメントで、イメージアップ を図り宣伝効果をあおる。このようなネット上の情報 の事実・真実については疑問符が残る場合が往々にし てあり、自己責任の名のもとに意思決定をしようとす る人たちをミスリードしてしまう可能性を秘めている 点で良い情報であったとしても悪い情報であったとし てもどちらにしても注意が必要である。  事実は真実により変容する。真実がどのタイミング で公開されるのか。事実は変容しないことにつきる が、保証がどのレベルで得られているのか確証が得ら れない以上、事実を歪める可能性のある情報には慎重 にならなければいけない。そして、特に個人的なレ ピュテーションに関しては、情報価値とは言いつつも 主観に頼るということでかなり流動的な情報であると いう側面が強調される。

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Ⅳ レピュテーションから考える企業の評価へ

の期待

⑴ 企業の評価における情報価値  消費者・投資家の目線に立って、企業の評価がなぜ 行われるのかといえば、それは、投資家あるいは消費 者が責任の名のもとに意思決定の判断材料に使いたい からだ。その意思決定とはどんなことであるかといえ ば、買うという選択あるいは買わないという選択、投 資する投資しないの二者択一である。どちらも意思決 定であり、どちらも重要な価値判断となる。財・サー ビスの供給者であり、企業情報の発信者としての企業 にとって価値のある情報は、企業価値を高める情報で はあるものの、企業情報の受信者である消費者・投資 家にとっては、それだけが価値のある情報ではない。 意思決定の判断材料として、何を選択するかも自由で ある。つまり、企業価値を毀損する情報は批判に値す る情報で企業価値を高める情報は優良情報であるとい うのは企業側の論理である。企業価値に悪影響を与え るかもしれない情報だったとしても信頼性、信憑性の 高い事実・真実の情報であるならば情報受信者にとっ て意思決定の根拠としての有用性は高く企業情報の価 値は高い。  「李下に冠を正さず」という言葉が世の中にはあ る。また、「火のないところに煙はたたない」という 言葉もある。悪い や誤解されるような行動は慎むべ きという戒めであるが、企業の価値を毀損する可能性 のあるリスク情報だとしても情報は情報である。事実 は真実により変容するかもしれないというリスクを含 めて名声・評判等のレピュテーションである。ただ、 名声・評判等のレピュテーションをちらつかせなが ら、企業の価値をメインに据え置いたとたん情報とし ての価値がゆがめられてしまいかねないという危険性 もある。企業の評価においては企業の価値ではない、 情報としての価値があるのかという点に力点を置くべ きだと考える。 ⑵ あるべき姿へと導くレピュテーション  薬も量を過ぎれば毒になるようにリスクも企業価値 を損なうものもあれば、その量や質によっては薬とし て企業へ働きかける場合がある。かつての企業の公害 問題も今では企業の社会的責任としてとりあげられ、 環境問題、CSRやESG等と企業活動の中で対応が求 められ今に至る歴史がある。レピュテーションには、 様々な消費者・投資家の声をレピュテーション・リス クへつながらないような回避策あるいは予防策として 大きな病になる前の薬として、あるいは消費者・投資 家の声により価値のある情報としてフィードバックさ れ企業活動をあるべき姿へ導く教えあるいは学びとし ての役割も期待したい。しかし、このレピュテーショ ンを薬と受け取るのか毒と受け止めるのか判断を誰が 行うのかということである。その情報を正しく読み込 めるということ。情報を精査できるということ。企業 外部に存在するレピュテーションを企業内部へ取り込 み、より良い組織として変革を遂げるための情報とし てどう読み込むのか、解釈するのかという読み手の存 在がとても重要となる。評価された結果を次の活動へ つなげられる解釈者の存在が必要と考える。

おわりに

 レピュテーションは企業価値を高めることもあれば その内容によっては価値を低減させるリスクともな る。そして、その事実・真実の情報であるならば、評 価の前提・基礎としての情報としての価値は認められ るものの、それがそのまま企業の価値増加につながる ものではない。つまり、企業経営上求められる企業の 価値の増加と企業が作り出す情報としての価値の増加 は密接不可分ではあるが連動しているとは言えない。  企業の価値を高めていくことが企業経営では求めら れているが、それとは別の視点である情報としての価 値を高めていくことが企業の評価においては重要であ る。財務情報以外の企業情報の情報価値を高めるプロ セスに何を置くべきなのか。または、財務情報のよう な制度的なプロセスを置くことで制度的な事実・真実 が期待できるとするなら、まずは何から手を付けるべ きなのかについて検討していくことが重要である。  企業の評価は、企業をチェックし監視する機能でも ある。企業の社会への貢献度を監視、評価する制度と もいえる。また、その監視されたり評価されたりとい うプロセスを通して、企業が社会から育まれていると いう見方もできる。つまり、社会がもとめる評価基準 を意識することにより、企業活動が社会の望む形へと 接近していく。ただ、物事の結果としての評価はそう 簡単には出てこない。子育ての結果が成人前後に出た りするように企業活動の結果を1年という期間を区

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切って評価結果を期待するとなると歪曲された結果あ るいは期待された結果を早急に望むがため結果ありき で業績を作り上げるようなプロセスを歩みかねない。 業績はつくりあげるのではなく、目標へのプロセスを 重視することで結果的に業績が上がり評価が上がるべ きと考える。  評価は、検定試験や受験のようなふるい落とすため の、切り捨てるために必要な場合も往々にしてある。 しかし、評価はあくまでより良い改善に向かうため、 あるいは良い状態を維持するための手段と考え、レ ピュテーション含め、非財務情報と言われている企業 情報に関しては、他社との比較可能性について問われ る場面もあるものの、企業のステークホールダーとと もに作り上げる財産として存在してほしいと希望し、 可能であれば、評価自体を目的にしたくないと個人的 には考える。誤解を恐れずに言うならば、父性的な評 価ではない母性的な評価としての機能、つまりは、企 業は評価されることで社会から育まれている存在であ るということに重きをおき今後も注目していきたい。 注 1)ESG投資が個人にも拡大し関連投信8兆円が流入している (日本経済新聞 2020年7月21日) 2)最近ではスチュワードシップ・コードというものがあり、ス チュワードシップを直訳すると受託者責任ということになる が、銀行や生命保険会社あるいは年金基金などの金融機関が責 任ある機関投資家として企業との対話を通じて企業の持続的成 長や最終受益者の投資リターンの拡大を促す行動原則である。 日本においては約285社がスチュワードシップ・コードの受入 れを表明している(金融庁『企業内容等の開示に関する内閣府 令』)。 3)金融庁『企業内容等の開示に関する内閣府令』平成31年内閣府 令第3号 4)バイヤーズガイドの中で特に有名なのが、環境問題に配慮した グリーンコンシューマーガイドとも呼ばれているものがある。 1988年ごろにその歴史は れるようであるが、昨今では環境を 含めた倫理的な消費ともいわれている(Better World Shopper)。

5)株式会社 情報通信総合研究所、2016年

6)同報告書 株式会社情報 情報通信総合研究所 参照

7)IFAC「International Framework for Assurance Engagements

(2013)」JICPA翻訳「保証業務の国際的なフレームワーク」

8)東洋経済新報社『週刊東洋経済臨時増刊CSR企業白書2018』

9)環境経営学会HP参照

10)World’s Most Admired Companies(世界で最も称賛される企 業)は、米国フォーチュン誌(ビジネス雑誌)1990年代に「最 も尊敬される米国の企業」という特集で掲載がスタートした。 11)バイヤーズガイドの1つである米コンシューマーレポートは、 市場で消費者が求める「事実・真実」「透明性」「公正さ」に基 づき、研究、調査を行い、メディア、消費者グループ等の他の 組織と協力して、企業が提供する製品、サービスの改善の推進 に貢献している。 12)購買活動あるいは消費は、消費者が行う企業への経済的投票で あるといわれている。 13)主観とは、何かとの問いには一概には答えにくいが、主観は感 情であり理性であると考えたい。 14)企業は変容し続ける生きものとしてとらえた時に、今ある表面 化している症状あるいは現象をfactとして捉え続ける必要性 がある。そのfactを裏付ける症状・現象の理由・根拠がどこ にあるのか。たとえば、factを体調不良という症状・現象と捉 えるなら、理由や根拠としての検査結果としてのtruthが考え られる。一般的な社会事象としての事実とは変りようのない事 実のことを指す場合が多いが、企業の評価において語られる事 実は変わりようのない結果として氷上にあがる事実だとしても その水面下で支える真実によってはその意味するところが変わ る。つまり評価における事実はそれを支える真実と言われてい るものの確証が得られにくいという不安定感が否めないために どちらも変容する可能性を秘めている。会計学の辺縁であるに もかかわらず企業の評価という場面では、真実と事実について は、使い分けが必要であるようにも感じられる。 15)情報開示における評価のデータには直近における企業による事 件・不祥事等は原則として評価に含まない旨が記載されている (『CSR企業白書2018』週刊東洋経済臨時増刊)。 参考文献・引用文献

David R.Hawkins.“Reality and Subjectivity”立花ありみ訳『Ⅰわた し真実と主観性』、ナチュラルスピリット、2019年、p.218。 櫻井通晴『コーポレート・レピュテーション』、中央経済社、2005 年、p.1。 櫻井通晴『コーポレート・レピュテーションの測定と管理』、同文 館出版、2011年、pp.332 333。 福井義高「会計研究の基礎概念」『企業会計の基礎概念』中央経済 社、2013年、p.505。 桜井久勝「資本市場研究の課題と展望」『会計情報の有用性』、中央 経済社、2013年、p.3。 青山訓与「企業における『評価』と『監査』」『高崎商科大学紀 要』、第34号、2019年、pp.107 117。 赤堀三郎「研究ノート:リアリティの崩壊という社会的リアリ ティ」『東京女子大学社会学年報』、第7号、2019年、p.76。 坂井直樹「メディア・フォロー行動から見た情報価値志向の類型 化」『慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀 要』、2018年、p.63。 田中美保「デジタル化時代に求められる情報発信と組織改革∼新聞 メディアの記者の立場から∼」『JournalofInternationalAssociati on of P2M』、2019年、p.263。 光定洋介「投資家からみた企業のESGの在り方」『経営センサー』、 2018年、pp.11 17。

IFAC「International Framework for Assurance Engagements」

JICPA翻訳『保証業務の国際的なフレームワーク』、2013年、p.17。 金融庁『企業内容等の開示に関する内閣府令』平成31年内閣府令第 3号、2019年。 株式会社情報通信総合研究所『GDPに現れないICTの社会的公正 への貢献に関する調査研究』、2016年、pp.7-15。 日本経済新聞 2020年7月21日夕刊 東洋経済新報社『週刊東洋経済臨時増刊CSR企業白書2018』東洋 経済新報社、2018年、p.92。

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電子メディア情報

・Better World Shopper https://betterworldshopper.org/

 (閲覧日2020年8月25日)

・Ellis Jones.“Reflections on a Decade Long Exercise in Public Sociology: Can We Quantify Ethical Consumption?”, Humanity and Society  http://betterworldshopper.org/wp-content/uploads/2019/

 09/2019-Better-World-Shopper-Theory-and-Methods.pdf

 (閲覧日2020年8月25日)

・Fortune,“mericasMost Admired Companies,”2020

 https://fortune.com/worlds-most-admired-companies/  (閲覧日2020年8月25日) ・「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・ コード≫∼投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために ∼ 金融庁 2020年3月改訂(閲覧日2020年8月25日) ・環境経営学会 http://smf.gr.jp/(閲覧日2020年8月25日)

参照

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