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電子計算機技術者はロバート・パーカーの夢を見るか?

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Academic year: 2021

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(1)IPSJ Magazine. [巻頭コラム] 電子計算機技術者はロバート・パーカー の夢を見るか? ▪葉山 考太郎  銀河系のワイン界に君臨する帝王がいる.アメリカの元弁護士,ロバート・パーカーで, 試飲したワインを数行でコメントし,100 点法で点数をつける.この点数を「パーカー・ポ イント」と呼び,ワインショップの広告や愛好家は「RP92」のように書く.世界中のワイン の価格は,この点数で一方的に決まるのだ.  30 年前,ワイン評論家として無名だったパーカーは,世界中の有名な評論家の予想に反し, ボルドーの 1982 年が偉大なヴィンテージになることや,ブルゴーニュの 1983 年は問題が 多いと書いた.それがピタリと的中したことで一躍,「銀河系で最上の舌を持つ評論家」と なる.世界で初めて 100 点法を採用したことも大成功の要因だ.パーカー以前の評価は,20 点満点方式や 5 つ星方式がほとんど.20 点式だと,評点が 16 点台,17 点台に密集する.畳 一枚に 30 人の美女が爪先立ってひしめくようなものだ.パーカーは小中学校で使う 100 点 満点方式を採用し,ワインの差を「写真判定」した.  パーカー・ポイントに対する愛好家の信頼感は絶大で,RP90 以上が高品質ワインである との暗黙の「線引き」ができた.RP89 と RP90 の間には,越えられない大きなギャップがあ る.RP100 のいわゆる「完全ワイン」は瞬時に売り切れ,価格が十倍以上高騰する.生産者 への影響も異常に大きい.ワイン界で圧倒的に威張っているボルドーの超一流シャトーでさ え,最新ヴィンテージ・ワインの初値をつける時,パーカー・ポイントを見て決める.パーカー. 巻頭 情報処理 Vol.56 No.6 June 2015.

(2) ■ 葉山 考太郎 ワインライター ソフトウェア開発を 30 年経験後, 大学勤務.葉山名義でワイン専門 誌に寄稿.主な著訳書は,『クイズ ワイン王』『今夜使えるワインの小 ネタ(講談社)』,『30 分で一生使 えるワイン術(ポプラ社)』,『ブル ゴーニュワイン大全(白水社)』.. から良い点数をもらうため,パーカー好みのどっしり濃厚なワイン(別称というより蔑称で 「黒ワイン」と呼ぶ)を作る生産者も多く,銀河系のワイン産業を一人で牛耳っている.  パーカー・ポイントの内訳は,色が 5 点,香りが 15 点,風味と余韻が 20 点,熟成の可能 性が 10 点.残りの 50 点はワインであれば無条件にもらえる.パーカーにインタビューした 時に, 「実質的に 50 点法ではないか?」と聞いたところ,「半分は,教室で息をしていれば もらえる出席点と同じだ」と答えてニヤッと笑った.パーカー・ポイントには,パーカー個 人の嗜好を 50 点満点で採点しただけとの批判と,ワインのレベルを標準化,簡略化したこ とへの評価が渦巻くが,良くも悪くもこれが「ワインの品質メトリクス」だ.  ワインと対極にある(ように見える)ソフトウェアの品質メトリクスはどうか? 開発プ ロジェクトには内部基準(たとえば,累積バグ数をプロットしたゴンペルツ曲線が漸近線に 近づいた)はあるが,ユーザに向けた定量的評価は見ない.ワインは,1 本 380 円から 150 万円までいろいろある.ソフトウェアも品質レベルは多様だ.ユーザに見えるソフトウェア の品質メトリクスがあれば,ユーザも品質に金を払うし,発注側も開発費用や期間を値切っ てプロジェクトがデスマーチ化することも少なくなる.ソフトウェア界に「ロバート・パー カー」の出現を望む.. 情報処理 Vol.56 No.6 June 2015. 巻頭.

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