暗号と社会の素敵な出会い:0.編集にあたって
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(2) 編集にあたって. 松尾真一郎(国立研究開発法人 情報通信研究機構) 金岡 晃(東邦大学). インターネットの登場を待つまでもなく,古来. 出会いをすることが,我々の社会生活を安全にす. から情報の保護は社会の重要な課題であった.暗. るために重要になってきている.この思いから,. 号技術は主に軍事用途で発達し,認証技術は,た. 今回の「暗号と社会の素敵な出会い」を企画する. とえば江戸時代の関所札のように,国や自治体に. に至った.. おけるさまざまな権限管理に使われてきた.そし. 本小特集では,暗号技術が今後の社会における. て,インターネットの登場によって,そのような. 信 頼 の 基 盤 と な る 例 と し て, ま ず 最 初 に「 マ イ. 情報保護の必要性は一般市民の普段の生活にまで. ナンバーと電子署名・電子認証」においてマイナ. おりてくるようになった.つまり,一般市民がセ. ンバーシステムへの認証技術の適用について示す.. キュリティ技術を意識して利用することが当たり. 次に,我々がネットワーク上で利用するさまざま. 前となった.そして,セキュリティ技術の中核の. なプロトコルの安全性と暗号の安全性の関係性と,. 1 つである暗号技術も,以前の軍事用途から,一. プロトコルのセキュリティを守るために必要な活. 般市民が当たり前に使うようになっている.. 動について,「SSL/TLS と暗号プロトコルの安全. 1970 年代後半から現代暗号技術の研究が盛ん. 性」にて示す.続いて,社会に必要なトラスト(信. に行われている.暗号技術には数学的な安全性証. 頼)を,どのようにして暗号技術を用いて実現し. 明が付けられ,我々が個々の暗号技術の安全性に. ようとしているかを「トラストと暗号技術の関係. ついては心配しなくてもよいようになった.しか. 性」で示す.次に,暗号研究者が新たな暗号技術. し,残念ながら,せっかく安全性の証明が付いた. を開発するときの意図(キモチ)を「楕円曲線暗. 暗号技術を部品として使っていても,システムと. 号のキモチ」にて解説する.最後に「暗号技術で. して正しくくみ上げられなかったり,正しい運用. お金を実現する」において暗号技術が新たな経済. がなされないことによって,セキュリティ事故を. 的基盤を作り出す例としてデジタル通貨の成り立. 引き起こし,社会的な問題となるケースが出てき. ちを説明する.. ている.このような不幸をなくすためには,暗号. 本小特集によって,社会における安全や安心と. 技術の研究者・開発者が考える提供できるセキュ. 暗号技術との結び付きに関する理解が深まり,暗. リティ,制約条件などの設計意図と,暗号を情報. 号技術の研究と情報システムの開発の間で,より. システムに組み込んだり利用する人の期待が,合. 素敵な出会いがもたらされるようになることを願. 致する必要がある.まさに,暗号と社会が素敵な. ってやまない. (2015 年 9 月 8 日). 情報処理 Vol.56 No.11 Nov. 2015. 1057.
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