Ⅰ.緒言 国民の医療に対する関心の高まりや医療の高度化 に伴い、看護師は高度医療への対応や他職種との連 携など専門職としての役割が期待されている。この ような社会的要請を受け、看護学教育において基礎 的能力を有する質の高い看護師の育成が求められて いる。学士課程においても「大学における看護系人 材養成の在り方に関する検討会報告書」1)で、学士 課程修了時に看護専門職者として習得すべきコアと なる5つの能力群、具体的教育内容、期待される学 習成果が示され、各大学は学生の状況や教育環境を 考慮しながら、教育内容を検討していくことが求め られている。 <研究ノート>
基礎看護学実習における看護学生の実習過程と
実習環境に対する評価
−基礎看護学実習と成人看護学実習の比較から−
Evaluation for Clinical Practice Environment and Clinical Practice Process of the nursing students in Clinical Practice of Fundamental Nursing;
from a comparison between Clinical Practice of Fundamental Nursing and Clinical Practice of Adult Nursing
山本 純子
1,伊藤 朗子
2,新井 祐恵
3,門 千歳
4,松田 藤子
5,池水 みゆき
6要 旨
基礎看護学実習における実習過程評価と実習環境評価を成人看護学実習との比較から評価することを目的として、基礎 看護学実習の学生88名と成人看護学実習の学生187名を対象に、自記式質問紙調査を実施した。調査内容は、授業過程評 価スケールとClinical learning environment scaleによる実習環境評価である。分析は、基礎看護学実習における各尺度の 記述統計とPearsonの積率相関係数、基礎看護学実習と成人看護学実習の比較を 検定で求めた。基礎看護学実習の実習過 程評価の平均値は【Ⅳ教員、看護師−学生相互行為】【Ⅷ実習記録の活用】【Ⅹ学生−人的環境関係】が高く、【Ⅵ教員、看 護師間の指導調整】が低かった。総合得点と下位尺度はすべて中得点領域であった。実習環境評価では『Ⅳ学生の満足度』 が高く、『Ⅱ臨床実習指導者の関わり』が低かった。実習過程評価の合計得点と実習環境評価の下位尺度では『Ⅰ病棟ス タッフと学生の関係』『Ⅱ臨床実習指導者の関わり』に正の相関がみられた。基礎看護学実習と成人看護学実習の比較で は、実習過程評価の【Ⅳ教員、看護師−学生相互行為】、実習環境評価の『Ⅳ学生の満足度』が基礎看護学実習で高く、『Ⅴ 病棟の組織管理と慣例』は成人看護学実習が高かった。基礎看護学実習における実習指導評価を高めるため、教員と看護 スタッフが指導内容に一貫性を保つこと、初めて患者を受け持つ学生の心理状態に配慮し、学生の性格や傾向に合わせて 働きかけること、学生が自分の存在を認められ指導を受けているという実感をもつよう働きかけること、臨床における看 護師の行動の意味を伝えていくことの必要性が示唆された。 キーワード:基礎看護学実習,実習過程評価,実習環境評価,看護学生
Clinical Practice of Fundamental Nursing,evaluation of Clinical Practice Process, evaluation of Clinical Practice Environment,Nursing students
1 Junko YAMAMOTO 千里金蘭大学看護学部 受理日:2013年10月15日 2 Akiko ITO 千里金蘭大学看護学部 3 Sachie ARAI 千里金蘭大学看護学部 4 Chitose KADO 一般財団法人住友病院 看護部 5 Fujiko MATSUDA 一般財団法人住友病院 看護部 6 Miyuki IKEMIZU 一般財団法人住友病院 看護部
看護師に求められている実践能力を育成するため の教育方法には、講義・演習・実習がある。なかで も臨地実習は、看護職者が行う実践の中に学生が身 を置き、看護職者の立場で看護を実践する機会を得 る。そして、この一連の過程を通して学生は、看護 の方法について「知る」「わかる」段階から「使う」 「実践できる」段階に到達させ、看護について学び を深めていく学習の成果が期待されている2)。 このように、臨地実習は看護を学ぶ上で不可欠な 学習過程であるが、在院日数の短縮、患者の重症化 などによる学生の受け持ちが可能な患者選定の困難 さに加え、侵襲を伴う看護行為の制約などにより学 生が看護を実践できる機会が限定されている現状が ある。このことから、限られた状況で効果的な臨地 実習を行うことが必須になる。 Kolb3)は、学習は人と環境の関わりを伴うこと を挙げている。また、細田4)は実習指導者の教育 アプローチの要素として学習環境の調整を抽出し、 岩井5)は物心両面からの環境調整の必要性を述べ ている。このように、効果的に臨地実習指導を行う ためには、実習環境の視点からも臨地実習を評価し ていく必要がある。 そこで本研究では、基礎看護学実習を対象に実習 の質と実習環境の視点から実習評価を行ったので報 告する。 Ⅱ.研究目的 本研究の目的は、以下の2点である。 1)基礎看護学実習Ⅱを履修した学生の実習評価 (「実習環境評価」、「実習過程評価」)を把握する 2)成人看護学実習を履修した学生の実習評価との 比較より、基礎看護学実習Ⅱの実習評価を行う Ⅲ.研究方法 1.調査対象 本研究では、平成24年度にA看護系大学で基礎看 護学実習Ⅱ(以下、基礎看護学実習)を履修した2 年生88名、成人看護学実習を履修した3・4年生延 べ187名を対象とした。 2.調査時期 平成24年8月∼平成25年2月 3.調査方法 基礎看護学実習あるいは成人看護学実習終了後 に、無記名自記式質問紙を配布し、回収箱にて回収 した。 4.調査項目 1)実習過程評価 学生の視点から実習の質を評価し、実習過程の改 善に役立てることを目的として作成された、舟島ら の『授業過程評価スケール−看護学実習用−』を用 いて測定した6)。 10下位尺度42項目から構成され、下位尺度は【Ⅰ オリエンテーション】、【Ⅱ学習内容・方法】、【Ⅲ学 生−患者関係】、【Ⅳ教員、看護師−学生相互行為】、 【Ⅴ学生への期待・要求】、【Ⅵ教員、看護師間の指 導調整】、【Ⅶ目標・課題の設定】、【Ⅷ実習記録の活 用】、【Ⅸカンファレンスと時間調整】、【Ⅹ学生−人 的環境関係】の10側面から評価できる。得点が高い ほど、学生がその実習の質を高いと評価しているこ とを意味する。 また、作成者の調査結果より設定した上位32%以 上(平均値+標準偏差)の得点を高得点領域、下位 32%以下(平均値−標準偏差)の得点を低得点領域、 その間の得点を中得点領域とした3群に分けて評価 ができる。 この尺度の信頼性はCronbach s α係数による内 的整合性(各因子0.58∼0.93)と、実習間での総得点 に有意差がみられたことで識別性を確保し、妥当性 は教員と学生による表面妥当性、内容妥当性を確認 している。 2)実習環境評価 実習環境を学生がどのように受け止めているか を、病棟の対人的、物理的、組織的な環境から評価 することを目的としたDunn & Burnett の『Clinical learning environment scale (以下CLES)』を小笠原 らの日本語訳を用いて実施した7)。『Ⅰ病棟スタッ フと学生の関係』、『Ⅱ臨床実習指導者との関わり』、 『Ⅲ患者との関係』、『Ⅳ学生の満足度』、『Ⅴ病棟の 組織管理と慣例』の5因子23項目から構成される。 得点が高いほど、学生が実習環境が良いと感じて いることを意味する。本尺度の信頼性はCronbach s α係数による内的整合性(各因子0.63∼0.85)と因子 分析による構成概念妥当性、教員による表面妥当性 が確認されている。 なお、尺度の使用にあっては著作者からの使用の
許諾を得た。 5.分析方法 まず、基礎看護学実習における実習評価を把握す るため、実習過程評価の総得点と下位尺度の平均値 を、実習環境評価の総得点と下位尺度、各項目の平 均値を求めた。また実習過程評価と実習環境評価の 総得点と下位尺度のPearsonの積率相関係数を求め た。 最後に基礎看護学実習と成人看護学実習の実習過 程評価と実習環境評価の平均値の比較を 検定で求 めた。統計処理にはSPSS Ver.19を使用した。 6.倫理的配慮 質問紙配布時に、研究の目的、調査方法、無記名 であること、調査への参加は自由意思に基づくこ と、調査内容は成績評価には関係しないこと、質問 紙の回収をもって研究協力の承諾とすること、調査 結果は統計的に処理されるため個人が特定されず、 目的以外には使用しないことについて、口頭と書面 で説明を行った。なお本研究は、研究者が所属する 機関の倫理委員会の承認を得て行った。 7.実習の概要 基礎看護学実習Ⅱは2年生を対象とした科目(1 単位)で、「対象に必要な援助を通して看護過程を 展開し、日常生活援助を中心とした看護を学ぶ」を 目的に、平成25年1月∼2月に2施設で1週間行わ れた。 成人看護学実習は3∼4年生を対象とした成人看 護学実習Ⅰ(急性期、3単位)と成人看護学実習Ⅱ (慢性期、3単位)で、1施設で各3週間行われた。 Ⅳ.結果 分析対象者は、基礎看護学実習を履修した学生79 名(回収率89.8%、有効回答率100%)、成人看護学 実習を履修した148名(回収率79.1%、有効回答率 100%)であった。 1.基礎看護学実習に対する学生の評価 1)実習過程評価(表1.図1) 実習過程評価の総得点と下位尺度別平均値を表1 に示す。得点領域別の下位尺度の平均値を図1に示 す。 基礎看護学実習において実習過程評価の平均値が 4.0を超えた項目は、高い順に【Ⅳ教員、看護師−学 生相互行為】【Ⅷ実習記録の活用】【Ⅹ学生−人的環 境関係】だった。最も低かった下位尺度は、【Ⅵ教 員、看護師間の指導調整】3.39(SD0.80)だった。 得点領域別にみると総合得点は161.72(SD20.91) で、中得点領域だった。各10下位尺度項目の平均値 についてみても、全て中得点領域だった。 2)実習環境評価(表2.3) 実習環境評価の総得点と下位尺度別平均値を表2 に、実習環境評価における項目別平均値を表3に示 す。 基礎看護学実習において実習環境評価が最も 高 か っ た 下 位 尺 度 は、『Ⅳ 学 生 の 満 足 度』3.86 (SD0.85)で、最も低かった下位尺度は、『Ⅱ臨床実 習指導者の関わり』3.27(SD0.81)だった。 項目別にみると、基礎看護学実習において実習 環境評価が4.0を超えた項目は「16.その病棟で体験 したことは、非常に興味深いものであった」4.15 (SD0.79)だった。平均値3.0を切った項目は「20.学 生は、看護師からよりもむしろ、他の学生から多く のことを学んだ(逆転項目)」2.91(SD0.99)だった。 3)実習過程評価と実習環境評価の相関関係(表4) 基礎看護学実習における実習過程評価と実習環境 評価の合計得点と各下位尺度の相関関係を表4に示 す。 実習過程評価への合計得点には、『Ⅴ病棟の組織 管理と慣例』以外は正の有意な相関がみられ、r= 0.50以上のものは、高い順に『Ⅰ病棟スタッフと学 生の関係』、『Ⅱ臨床指導者の関わり』だった。 r=0.50以上の有意な相関がみられたものは、【Ⅳ 教員、看護師−学生相互行為】に『Ⅰ病棟スタッフ と学生の関係』、『Ⅱ臨床実習指導者の関わり』、『Ⅳ 学生の満足度』だった。【Ⅴ学生への期待・要求】 には『Ⅰ病棟スタッフと学生の関係』だった。【Ⅶ 目標・課題の設定】には、『Ⅰ病棟スタッフと学生 の関係』、『Ⅱ臨床指導者の関わり』だった。【Ⅷ実 習記録の活用】には、『Ⅰ病棟スタッフと学生の関 係』、『Ⅳ学生の満足度』だった。 2. 基礎看護学実習と成人看護学実習における実習 評価の比較(表1.2) 実習過程評価の【Ⅳ教員、看護師−学生相互行 為】では基礎看護学実習のほうが有意に高かった ( <0.05)。実習環境評価の『Ⅳ学生の満足度』も基
礎看護学実習が有意に高く( <0.05)、『病棟の組 織管理と慣例』は成人看護学実習のほうが有意に高 かった( <0.05)。 Ⅴ.考察 1.基礎看護学実習に対する学生の評価 1)実習過程からみた実習評価 学生の視点からの実習過程評価では、基礎看護学 実習での実習過程評価の総合得点および全ての下位 尺度の平均値は、中得点領域であった。舟島らは、 中得点の範囲にある実習は、学生の評価が中程度の 平均的な実習であるという6)。このことから、基礎 看護学実習が全体として実習過程に対する学生基準 に適合していた実習であったと評価できる。 下位尺度の平均値が高かった【Ⅳ教員、看護師− 学生相互行為】【Ⅷ実習記録の活用】【Ⅹ学生−人的 環境関係】からは、看護師や教員が学生に丁寧に関 わっていたことがうかがえる。【Ⅳ教員、看護師− 学生相互行為】には、教員や看護師の必要に応じた アドバイス・指導・説明や、学生の意見を認めたう えでの指導に関する内容が含まれる。基礎看護学実 習では、患者に対して初めて援助を実施することが 多い。よって、事前の調整、実施後の振り返りを含 め、必然的に看護師や教員の関わりは増す傾向にあ る。基礎看護学実習という学習段階を踏まえた指導 が、学生の肯定的な実習評価につながったのではな いかと推察する。 また学生は、実習記録の活用についても高く評価 していた。学生が実習記録をもとに看護師から指導 表1 実習過程評価の総得点と下位尺度別の平均値 基礎看護学実習と成人看護学実習 図1 実習過程評価下位尺度の低・中・高得点領域および基礎看護学実習の平均値
表3 基礎看護学実習の実習環境評価における項目別平均値
表2 実習環境評価の総得点と下位尺度の平均値 基礎看護学実習と成人看護学実習
を受ける場面に、朝の行動計画発表がある。教員も また、日々実習記録を提示しながら指導を行って いる。実習記録は学生にとって苦慮するものであ る8-10)が、実習記録が看護師や教員とのコミュニ ケーションを円滑にする役割を担っていると考えら れる。 一方、【Ⅵ教員、看護師間の指導調整】の平均値 が低値だった。【Ⅵ教員、看護師間の指導調整】に は、教員と看護師の連携、指導の一貫性に関する内 容が含まれる。教員と看護師の指導の調整について は、これまで基礎看護学実習や領域実習終了後を対 象とした結果11-12)でも課題とされている。教員と看 護師の指導の方向性が同じ方向を向いていなければ 学生の混乱を招き、効果的な学習をすすめることが できない。そのため、教員と指導者の指導調整につ いて、改善に努める必要がある。 これまで本大学において、基礎看護学実習の前に 説明会や病棟との打ち合わせの場を設け、実習指導 の窓口である師長・主任と実習目標や学生のレディ ネスについて確認してきた。しかし、実際の指導で は師長や主任だけでなく、看護スタッフが多くの指 導役割を担っている。教員が積極的に日々学生指導 に当たる看護スタッフと情報を共有し、指導内容に 一貫性を保ちながら実習指導に当たる必要性が示唆 された。 2)実習環境からみた実習評価 基礎看護学実習における実習環境評価を行った結 果、『Ⅳ学生の満足度』が最も高く、『Ⅱ臨床実習指 導者の関わり』が低かった。 臨床指導者の忙しさを感じながらも、病棟では個 別的な看護が行われており、学生にとって興味深い 体験となったことが考えられる。 しかし、笠井8)が基礎看護学実習の学生は、自 分自身の消極性から看護師との関わりに戸惑いを感 じていると指摘するように、慣れない環境に身を置 き初めて患者を受け持つ学生は実務を行う看護師の 言動に対応できないことが推察される。このことか ら、学生自身の緊張や性格、消極性などの課題も残 されるが、効果的に基礎看護学実習をおこなうため に、初めて患者を受け持つ学生の心理状態に配慮 し、学生自らが看護師に関わっていけるよう、教員 ならびに指導者は、学生の性格や傾向にあわせて働 きかけることが重要になるとの示唆を得た。 3)実習過程と実習環境の関連性 基礎看護学実習における実習過程評価と実習環境 評価の相関から、基礎看護学実習において実習過程 評価には多くの実習環境要因が影響を与え合ってい る。実習過程評価の総合得点に関わる要因として 『Ⅰ病棟スタッフと学生の関係』、『Ⅱ臨床実習指導 者の関わり』があり、これらの内容には、忙しい中 でも幅広い体験ができるように考慮されているや、 その他大勢としてではなく一個人として扱われてい ると感じているが含まれる。基礎看護学実習の学生 にとって、自分の存在を認められ、学習者として受 け入れられているという実感をもてることは、安心 感につながる。初めての実習において学生は、特に 緊張し戸惑うため、教員ならびに指導者は、実習指 導において、学生を精神的に支え、学生の姿勢や行 動を承認していくよう働きかけることが重要13)に なる。指導時間は一概に短長を基準に判断すること はできない。そのため、学生が自分の存在を認めら れ指導を受けているという実感をもつよう働きかけ る必要性が示唆された。 2.基礎看護学実習と成人看護学実習の比較 基礎看護学実習と成人看護学実習の実習過程と実 習環境の評価を比較した結果、成人看護学実習と比 べて基礎看護学実習が有意に高値だった下位尺度 は、実習過程評価【Ⅳ教員、看護師−学生相互行 為】と実習環境評価『Ⅳ学生の満足度』だった。 実習過程評価【Ⅳ教員、看護師−学生相互行為】 は、基礎看護学実習の中でも高く評価されており、 また成人看護学実習と比較しても有意に高く評価さ れていた。 これは学生のレディネスが影響していると思われ る。成人看護学実習は領域別実習であり、履修した 時点で学生の経験状況が異なる。そのため成人看護 学実習では、学生個々の経験状況を踏まえながら指 導にあたる必要がある。しかし、基礎看護学実習で はみなが初めての経験であることを考慮し、学生が より質問がしやすい配慮がされ、学生の必要に応じ た指導や説明への評価が高かったことが推察され る。 もう一つ基礎看護学実習が成人看護学実習より有 意に高かった内容に『Ⅳ学生の満足度』がある。こ の質問には、病棟で体験したことの興味深さや、そ の病棟で実習ができた満足さに関する内容が含まれ る。基礎看護学実習を履修する学生は、基礎看護学 実習が始まるまえに日常生活援助技術、診療の補助 など、一連の基礎看護技術について学習を終えてい
る。しかし、臨床では学習した技術を用いながら援 助する看護師の姿を目にし、興味深く感じたのでは ないかと推察する。 また、実習による満足度は看護師や臨床指導者と の関わりにも大きく影響する14)。指導者や教員が学 生に丁寧に関わることで学生の満足度および実習の 質を高めることになる。今後も学生の満足度を高め るうえで、基礎看護学実習では教員、指導者が学生 に対してより丁寧に関わっていく必要があると考え る。 一方、基礎看護学実習が成人看護学実習よりも有 意に低値を示したものに実習環境評価『Ⅴ病棟の組 織管理と慣例』がある。この因子は、その病棟にお いて独自のやり方が多いと感じたり、学生が学習者 として扱われていないと感じている実習環境を示し ている。基礎看護学演習では基本技術を学習する が、臨床では患者の健康レベルに応じた看護が行わ れている。そのため、学内で学習した方法と異なる という理由から、病棟独自のやり方で実施している と捉えたのではないかと推察する。よって、学内で 学習した援助方法ではなく、なぜ異なる方法を選択 したのかなど、看護師の行動の意味を伝えていく必 要性が示唆された。 Ⅵ.結論 1)基礎看護学実習において実習過程評価の平均値 が高かったものは【Ⅳ教員、看護師−学生相互 行為】【Ⅷ実習記録の活用】【Ⅹ学生−人的環境 関係】であった。最も低かったのは、【Ⅵ教員、 看護師間の指導調整】であった。 2)総合得点と10下位尺度項目の平均値はすべて中 得点領域であった。 3)実習環境評価の最も高かった下位尺度は『Ⅳ学 生の満足度』で、最も低かった下位尺度は『Ⅱ 臨床実習指導者の関わり』であった。 4)実習過程評価の合計得点と実習環境評価は『Ⅰ 病棟スタッフと学生の関係』、『Ⅱ臨床指導者の 関わり』に正の相関があった。 5)基礎看護学実習と成人看護学実習における実 習評価の比較では、実習過程評価の【Ⅳ教員、 看護師−学生相互行為】、実習環境評価の『Ⅳ 学生の満足度』では基礎看護学実習のほうが、 『Ⅴ病棟の組織管理と慣例』は成人看護学実習 が高かった。 6)基礎看護学実習における実習指導評価を高める ため、教員と看護スタッフが指導内容に一貫性 を保つこと、初めて患者を受け持つ学生の心理 状態に配慮し、学生の性格や傾向に合わせて働 きかけること、学生が自分の存在を認められ指 導を受けているという実感をもつよう働きかけ ること、臨床における看護師の行動の意味を伝 えていくことの必要性が示唆された。 Ⅶ.研究の限界と今後の課題 本研究で対象とした基礎看護学実習は2施設で 行ったため、実習病院の特徴や実習指導体制につい て考慮されていない。また、平成24年度に行われた 基礎看護学実習と成人看護学実習を対象としたため 対象が異なり、結果に偏りが生じている可能性も否 定できない。今後は、継続的に調査を行い、詳細を みていく必要がある。 謝辞 本研究の実施にあたり、ご協力くださいました看 護学生の皆様に深く感謝申し上げます。 本研究は、平成24年度千里金蘭大学看護学部特別 研究Aの助成を受けた研究の一部である。 引用文献 1)文部科学省,大学における看護系人材養成の在 り方に関する検討会最終報告(2011) 2)文部科学省,看護教育の在り方に関する検討会 報告(2002) 3)Kolb, D.A., : , Prentice Hall, New Jersey(1984)
4)細田泰子,実習指導者の教育的アプローチに影 響を及ぼす要因,国立病院看護研究学会誌 3 (1),88 92(2007) 5)岩井眞弓ほか,看護学実習における指導プロ セスの関連要素−1996年から2009年の国内先 行文献の分析−,保健科学研究誌 9,15 28 (2012) 6)舟島なをみ,看護実践・教育のための測定用具 ファイル−開発過程から活用の実践まで−,95 103,医学書院(2006) 7)Dunn, S.V.&Burnett, P.,
22,1163 1173(1995) 8)笠井恭子ほか,基礎看護学実習における学生の 戸惑いの実態,福井県立大学看護短期大学部論 集 9,(1999) 9)鶴田晴美ほか,基礎看護学実習における看護学 生の経験とその意味づけ,高崎健康福祉大学紀 要 4,65 76(2005) 10)滝下幸栄ほか,基礎看護学実習Ⅱの評価と課 題,京都府立医科大学看護学科紀要 17,93 99(2008) 11) 蓑田さゆりほか,基礎看護学実習Ⅰにおける授 業過程評価∼舟島による「授業過程評価スケー ル−看護学実習用−」∼,四日市看護医療大学 紀要 2(1),121 128(2009) 12) 冨澤理恵ほか,臨地実習を通した看護学生の学 びの方かとA病院における実習過程評価,千里 金蘭大学紀要 9,57 65(2012) 13) 浅井直美ほか,基礎看護学実習における学生が 意味づけした経験に関する研究,桐生短期大学 紀要 17,65 72(2006) 14)小笠原知枝ほか,看護学生の臨床学習環境とス トレス・コーピングに関する実態調査研究,広 島国際大学看護学ジャーナル 7(1),3 13 (2009)