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社会運動研究と環境社会学――解釈的/説明的環境運動研究の課題――

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 本稿では,本特集の目的にそって,社会運動研究の側から,その現状と方法論的区分をふまえつ つ,環境運動研究の課題を提起していく。まず環境社会学と社会運動研究の関係性を整理した上で, 第 2 節で方法論的区分にそって解釈的研究と説明的研究に区別(前者をマクロ社会的意義,当事者 にとっての意味,概念・カテゴリーとの関係の解釈に,後者を社会運動組織中心の説明,運動特性, アクションに関する説明にそれぞれ下位区分)し,また両研究が重視する点,運動の多様化への対 応,研究の立場性の違いについて論じた。次に第 3 節では解釈的運動研究の代表例として中期トゥ レーヌ理論を取り上げて検討し,環境運動研究に応用する場合の課題として ① 解釈理論としての 認識,② 理論の理解(概念と歴史的仮説,検証),③ 理論の妥当性(仮説相対化,後期理論)など を指摘した。第 4 節では説明的運動研究の主流である動員論について検討し,環境運動研究に応用 する場合の課題( ① 説明理論としての認識,② 定義に基づく対象同定と組織中心の仮説構築,③ 仮説の反証可能性)を示した。最後に解釈・説明の前提となる記述段階における環境社会学(環境 運動研究)の特徴(自然・物質も含めた記述)が逆に社会運動研究にも影響を及ぼしうることを論 じ,また社会/自然が接する水準を扱う「社会環境論」にも触れた。 キーワード:方法論的区分,トゥレーヌ理論,動員論,自然・物質も含めた記述

1.本稿の課題

 本特集の目的は,「趣旨」によれば,環境運動の多様化と運動研究の理論的展開をふまえ,「環 境社会学において広義の環境運動を対象とする研究が問うべきこと」を提起することにある。本 稿はそのなかで社会運動研究の側から,その現状と方法論的区分をふまえつつ,環境運動研究の 課題を提起することを目的とする(1)。  「趣旨」にもあるように様々な抗議運動やエコロジー運動の展開は,環境社会学の重要な研究 対象となってきた(2)。ただ環境社会学と社会運動研究の関係性自体は,国際的にみても必ずしも 明確ではなく,まずその点について確認しておく必要がある─なお「環境社会学」は社会学と いうディシプリンのなかに限定される学問ではないが,本稿では主に社会学的社会運動研究との 関係を論じるので便宜的に社会学内に議論を限定している。  社会学を下位区分する仕方は様々だが,ここではできるだけ幅広く分野を整理するために,水 準上の区分と領域上の区分の両方を用いることにする(図 1)。まず水準上の区分とは,全体社会 を構成するマクロ・メゾ・ミクロなどの各水準に応じて,社会学を,社会構造・変動論,社会集 団・組織論,社会的行為・相互行為論(「社会〇〇論」)というように「タテ」に区分する仕方で

社会運動研究と環境社会学

─解釈的/説明的環境運動研究の課題─

濱 西 栄 司

* * ノートルダム清心女子大学文学部准教授 [email protected]

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ある(図 1 の左側)。それらの社会〇〇論は,〈水準は 1 つに限定されるが,あらゆる領域の現象〉 を対象とする。またこの水準上の区分を前提にして特定の視座からやはりあらゆる領域にアプロ ーチするものとして社会システム論や社会運動論,社会問題論などの分野も位置づけられる─ 「社会環境論」(後述:5 節)もこちらに含まれる。他方,領域上の区分とは,全体社会を構成す る政治,経済,教育,環境などの各領域に応じて,社会学を,政治社会学,経済社会学,地域社 会学,教育社会学,環境社会学(「〇〇社会学」)というように「ヨコ」に区分する仕方である(図 1 の右側)。それらの○○社会学は,〈領域はいずれか 1 つに限定されるが,あらゆる水準の現象 を対象とする〉わけである(3)。  このような整理に従えば,「社会運動論」は水準上の区分に基づく社会〇○論の 1 つであり, 「環境社会学」は領域上の区分に基づく〇〇社会学の 1 つであり,〈「環境」領域における社会運 動論[研究]〉と〈環境社会学におけるメゾレベルの研究〉は部分的に重なることになる。  ただし,社会○○論は限定された水準で領域を問わず成り立つ一般的な知見を,〇〇社会学は 領域では限定されるが水準を問わず包括的に成り立つ知見を,それぞれ見出そうとしており,目 指す方向性にズレはある。それゆえ前者の知見を後者に,あるいは逆に後者の知見を前者に導入 する時には十分な慎重さが求められるし,またすでに導入された後も,各々の分野の研究発展を ふまえ,折に触れて「調整」はなされる必要がある。それゆえ,本特集のように,2 つの分野を つき合わせ,「調整」し,課題を見出そうという試みは重要であると言える。  両者をつき合わせようとする先行研究としては,国際的には Yearley(2005),国内では高田 (1995),中澤(2001),長谷川(2003),関(2004),寺田(2016)などが存在すると言える。ただし, いずれも,世界中で進む社会運動研究の発展(運動のグローバル化や群衆的な運動の展開をふまえた 研究,動員論の発展,トゥレーヌ理論の変化など)を完全にふまえたものとは言いがたい。そのこと 自体は,環境社会学独自の運動研究の発展に寄与する場合があるので,即問題と言えないにして も,社会運動研究側からみれば,改善の余地はあるようにみえる。そこで本稿では,(両分野間の 「調整」の一環として)社会運動研究の側から,その近年の知見をふまえつつ,環境運動研究の課 題について検討していくことを,研究課題としたい─第 5 節では逆に環境運動研究が社会運動 図 1 社会学における水準上/領域上の区分 社会システム論 社会運動論 社会問題論    … 社会構造論 社会変動論    … 社会組織論 社会集団論    … 社会的行為論 社会的相互行為論    … マクロレベル (全体社会の 水準)    … メゾレベル (集団・組織 の水準)    … ミクロレベル (個人・行為 の水準) 水準上の区分 社会○○論: 経済 文化 政治 地域 宗教 ジェンダー サブカルチャー 労働 福祉 領域上の区分 市場 医療 犯罪 家族 環境 教育 情報 その他 メディア 科学 ○○社会学:環境社会学,労働社会学,経済社会学,地域社会学,家族社会学,国際社会学,       メディア社会学,宗教社会学,情報社会学,教育社会学,福祉社会学,…

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研究に提起するものにも触れる。なお,社会運動研究自体が,現状,方法論的に 2 つに大きく区 分されることをふまえ,課題を考察する作業も 2 つにわけて進めていくことにしたい。  以下ではまず第 2 節で,社会運動研究を解釈/説明に方法論的に区分し,それぞれが重視する 点,運動の多様化への対応,研究上の立場性について確認する。その上で,第 3・4 節では環境 運動研究に応用されることの多い代表的な解釈理論・説明理論を取り上げ,環境運動研究の課題 について検討していく。最後に第 5 節では,環境社会学(環境運動研究)が社会運動研究(ひいて は社会学)に提起するものにも触れる。

2.社会運動研究の方法論的区分

2. 1.解釈と説明  補助線として導入する方法論的区分とは,社会運動研究を,その目指す研究課題に沿って, 〈社会的事象の意義・意味を,「社会運動」に関連する枠組みなどを参照しつつ解釈する研究〉と 〈「社会運動」と同定された社会的事象をめぐる様々な因果的メカニズムを説明する研究〉に大別 する区分のことである(濱西,2008;2016a;2017a;2017b ほか)。  従来,社会運動研究を整理する際に用いられていたのは,動員論者による「なぜ」(構造的要 因)/「どのようにして」(過程的要因)という説明変数・説明局面を軸とした区分(Klandermans, 1986)や,トゥレーヌらによる文化的水準/政治的水準といった,解釈が焦点を合わせる水準を 軸とした区分(Touraine,1985)であった。しかしいずれも各論者の立場から,対立する他方の アプローチを一方的に整理するための区分になってしまっていた(濱西,2008;2016a)。それに対 して方法論的区分は,運動・紛争研究全体(社会学各分野内での運動・紛争・対立の研究,一部の社会 問題研究や団体・組織研究,および政治学・歴史学・人類学・経済学・社会福祉学などでの運動・紛争研 究)を,より公平に,具体的な研究課題の次元で整理しようとする区分である。  その上で,さらにそれぞれは下位区分できる。まず解釈的研究は少なくとも以下の 3 つに区別 できる。第 1 に,現代社会にとってどのような意義があるのかを,社会全体と運動・紛争の関係 を論じるようなマクロな理論的枠組みを参照しつつ,解釈しようという研究である。資本主義論, 世界システム論,リスク社会論,脱産業社会論,流動的近代論,後期近代論など,様々な枠組み を活用することができる─後述のトゥレーヌ理論が代表的である。第 2 に,運動の当事者・参 加者個々人にとってどのような意味があるのかを,個人の主体性や脆弱性,自己やアイデンティ ティに関する議論を参照しつつ,解釈しようという研究である。小さな活動であっても,マクロ 社会的な意義とは別に,参加している個人にとっては「居場所」や「気晴らし」といった特別な 意味を有するということはある─主にマイノリティ研究の文脈で運動の意味を論じるような研 究でよく見られる(有薗,2017 ほか)。そして第 3 に,特定の概念・カテゴリーとの関係で,これ が何にどの程度あてはまるのかを解釈しようという研究である。ある現象が「労働運動」と呼ば れたり,「福祉運動」と呼ばれたりもする。保守団体内の女性の活動が「女性運動」なのかどう かも議論されている(鈴木,2016)。  次に,説明的研究も少なくとも以下の 3 つに区別できる。第 1 に,社会運動を,社会運動組織 による動員の結果として捉え,そこから社会運動形成・発展・衰退の因果的メカニズムを説明し

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ようという研究である。たとえば,組織構造や資源,フレーミング,政治的な環境などの変数が 良く注目を集めている─後述する動員論が代表的である。第 2 に,運動現象が有する何らかの 特性をめぐる因果的メカニズムを説明しようとする研究である。たとえば,なぜ・どのように集 合的アイデンティティや集合的経験,特定の集合行動が形成されるのか(Melucci,1996;濱西, 2016a;2017b;Smelser,1962)を問うものがある。第 3 に,運動によるアクション(封鎖などの直 接行動,路上デモや集会,署名活動,ビラ撒き,ロビー活動や裁判活動など)の実践局面のメカニズム を説明しようとする研究がある。特定の物理的な空間・時間,相手,予想できないハプニング, 混乱,様々な微細な 造性がどのようにアクションの展開に影響を与えるのかを問うことができ る(濱西,2018)。 2. 2.解釈・説明的研究の特徴  次に解釈・説明的研究がそれぞれ重視する点,および運動の多様化への対応,研究上の立場性 について,一般論的に論じておきたい(cf. 濱西,2016a)。  解釈的研究において,まず重視されることは,当然,解釈に用いられる枠組み(マクロな社会 理論,個人に関する議論,運動関連の概念・カテゴリーなど)に関する正確な,理論・学説的にも正当 化されうるような理解である。そこで疑義を持たれれば,いかに調査を積み重ねても,導かれる 解釈の説得力は根本的に薄れてしまうだろう。次に重視されることは,それらの枠組みを,当該 事例へ適用することの妥当性である。ある時代背景に基づく理論・概念を,異なる時代や社会背 景の事例にそのまま適用可能か,どのように相対化すれば良いか十分に検討することは必要であ る。  他方,説明的研究において,まず重視されることは,対象となる現象を厳密に確定することで あり,その現象を中心に様々な仮説が構築されることになる。特に,もし対象の同定が曖昧では, いったい何をめぐる因果関係を説明しようとしているのかが不明になってしまうだろう。その上 で,次に,反証可能性に開かれた形で因果関係を検証することである。仮に因果関係が立証され たようにみえても,それはある事例について,ある社会,ある法制度下において,ある時期にお いて,ある調査においてそうだっただけかもしれず,あくまでも反証が現れるまでの暫定的な結 論でしかないという認識は欠かせない。  次に運動の多様化については,まず解釈的研究では,多様化それ自体は問題にならない。社会 的企業であれ,NPO であれ,単なる集まりであれ,さらには行政機関による取り組みであれ, それが社会運動と呼べるかも含めて,社会や当事者にとっての意義・意味を解釈することがその 仕事だからである。他方,説明的研究においては,環境運動の多様化が,上述の対象同定段階に 関わる問題を引き起こす。これまでの研究蓄積と連続性を保とうとすれば,対象(運動組織,特 性,アクションなど)はいつも定義に合致していなければいけないが,運動の多様化はその同定作 業を困難にする可能性があるからである。  最後に研究の立場性については,まず解釈的研究では,解釈を行う者の評価の枠組み・ものさ しの選択,立場性は強く問われる。というのも,解釈がどのような内容であったとしても ─ 「社会の鏡」「未来の予言者」「ガス抜き」「無意味」など─結局,研究者が社会的意義や当事者 にとっての意味を解釈していくという営み自体が権威的・規範的なものになるからである。デー

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タを十分にあつめることはもちろん,多角的な視座から,時に当事者の協力も得ながら,意義・ 意味を慎重に解釈していく必要がある ─ 当事者が敵手や研究者と対話を行う「社会学的介入」 はこの文脈においてはじめて意味を持つ(濱西,2004)。他方,説明的研究では,立場性は解釈の 場合ほどは問われない。運動の形成・発展・衰退の因果的メカニズムを明らかにすることは,運 動に役立つことも,弾圧に役立つこともある。明らかにされたと思われたメカニズムもすぐに反 証されうるのであり,問われるのは説明作業そのものの立場性ではなく,誤った説を広めていな いかどうか,説明が真実かどうかのほうである。  以上,社会運動研究を解釈/説明に区分した上で,重視すべき点,運動多様化への対応,研究 の立場性について確認してきた。このような方法論的区分を補助線としつつ,次節では,まず解 釈的な環境運動研究の課題について具体的に検討していく。

3.中期トゥレーヌ理論と環境運動研究

3. 1.理論の概要  第 3 節では,解釈的な環境運動研究の課題について,代表的な解釈理論を通して具体的に検討 する。参照されることの多い代表的な枠組みは,現実の運動・紛争が社会全体の行く末に対して 有する意義に注目してきたアラン・トゥレーヌの理論,とりわけ彼が 1960─70 年代に提起した 「新しい」社会運動仮説,および反原子力運動などへの大規模な社会学的介入調査であると言え る。  トゥレーヌ理論イコール社会運動論,という誤解は少なくないが,そもそもトゥレーヌは機能 主義社会学やマルクス主義的な社会学,批判的社会学,そして合理的選択論をベースとする社会 学などに対して,行為・行為者中心の社会学を提示しているのであり,その対象は社会運動・紛 争だけでなく,様々な社会制度(企業,学校,大学,病院,メディア,原子力公社など),社会問題 (差別,貧困,不安定雇用化,社会的排除など)にも及ぶ。  トゥレーヌ理論(社会学理論)は,歴史的行為の概念体系と歴史的仮説からなり,前期から中 期,後期へと概念体系は拡張され,歴史的仮説も変化してきてきた(濱西,2016a)。  まず前期トゥレーヌ(1950─1968 年)は,歴史的行為概念をウェーバー,パーソンズの行為概念 と対比的に位置づけ(4),その行為連関の最上位の水準(5)(社会全体の行く末をめぐる水準)として 「社会運動」などを定義する。その上で,ルノー工場ほかの参与観察・社会史的調査および大規 模階層調査に基づいて,〈社会の生産のありようが全体社会(仏産業社会)の争点であり,その方 向性をめぐって産業主義企業家(産業社会のさらなる経済的発展を目指す)と統制的労働組合(中心 的な社会組織である企業などに対して参画かつ批判することで産業社会の民主化を目指す)が紛争に入る〉 という歴史的仮説を提起した。  それに対して中期トゥレーヌ(1968─1986 年)は,歴史的行為の連関からなるシステム論を提示 し,その中に「闘争」,「社会運動」などの概念をより精緻に位置づける。そして,1968 年以降 の運動の盛り上がりを背景として,新たな歴史的仮説を提起した。すなわち,〈社会全体の情 報・知識管理のありようこそ全体社会の争点であり,その方向性をめぐって,一方のテクノクラ シー(行政や企業を超えて形成される知識・情報をその権力基盤とする新たな「支配階級」)の運動と,

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後述する「対抗エリート」を核とする反テクノクラシーの運動が紛争に入る〉という「新しい」 社会運動仮説である(Touraine,1969=1970:64─71)。大規模な社会学的介入調査は,この中期の 歴史的仮説(解釈)を検証するためになされたわけである。 3. 2.環境運動研究に応用する際の課題  このようなトゥレーヌの理論が,解釈的な環境運動研究において参照されることは多いが,ウ ェーバー,パーソンズなどの学説・理論や各期の経験的研究をふまえなければその正確な理解は 難しい ─ 国際的にも,また弟子たち(理論研究よりも経験的研究を要請される)においても誤解さ れていることは少なくない。ここでそれらの点について指摘しておくことは,解釈的な環境運動 研究の今後の課題を提起することにつながるだろう。  第 1 に,中期トゥレーヌ理論は,〈過程的要因・How を重視する資源動員論〉に対して〈構造 要因・Why を重視する説明理論〉であるかのように国際的に誤解されていることもあるが(上 述の Klandermans,1986;Tarrow,1988),まったくそうではないということである ─ まだ各理 論ともに発展途上であった 1980 年代にそう誤解されたのはまだやむをえないところもあった。 トゥレーヌらが,反原子力闘争に対して行った調査の「研究課題」は,(全体社会の運動としての) 「社会運動の存否」(Touraine et al.,1980=1984:11),つまり「社会運動」水準の要素や傾向・側 面・次元がどの程度含まれているかを解釈することであった。構造的要因であれ何であれ運動の 形成・衰退のメカニズムそのものにトゥレーヌらは関心を持っておらず,その説明に直接,寄与 するような研究もしていない。この点は前期・中期・後期問わず一貫しており,後継者らもそう である─後述する文化運動論や経験運動論も因果関係の説明を目指すものではなく,動員論と 直接,接続できる・すべきものではない。  第 2・3・4 点は,2.2. で述べた理論理解に関するものである。  まず第 2 に,トゥレーヌ理論の概念体系において,「社会運動」は通常の意味とはまったく異 なり,全体社会の行方を左右するような水準の運動([全体]社会[の]運動)としてのみ位置づ けられている─この定義も前期・中期・後期問わず,後継者も含め,一貫している。それは実 際には水準・要素としてしか現れない理念型のようなものであり,それゆえ,「新しい」が付く か付かないかにかかわらず「社会運動」という言葉を彼が用いる時に,それが実体的な諸実践や 社会運動組織を指すことは一切ない。そこに含まれている「社会運動」の要素・水準を指してい るだけである。つまり,いかなる環境運動組織であっても,それらの組織が「社会運動」「新し い社会運動」として実体的に同定されることはない─ちなみにトゥレーヌらが用いる歴史的行 為関係の概念(「闘争」や後述の「文化運動」「経験運動」など)も同じく理念型的なものである。当 然,テクノクラシーの運動や新興企業,極右運動の中に「社会運動」の要素が含まれる可能性も ある(Wieviorka et Wolton,1987;Montero─Casassus,1997;Di Nunzio and Toscano,2012)。日本の 環境省の官僚集団や経団連の取り組みに「社会運動」の要素を見出すことも可能である。  第 3 に,中期の歴史的仮説において,テクノクラシーという「支配階級」に対する「抵抗の 核」として期待されたのは,(「時々思いだしたように蜂起したりその大衆的力によって攻撃的行動を支 援するだけの辺境に位置する分子」ではなく)「権力の所有者たちが指導下におこうとするところの 生産諸用具をかれらに対立させるだけの力をもつ中心的な諸分子」である,「科学的技術的能力」

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を有するような「専門職業人(professionnels)」,特に「教育と公衆衛生」に関わる専門職(「教授, 研究者,医師たち」),および「教育または医学の直接の消費者である」「学生あるいは患者」であ った。それら「教授,研究者,学生あるいは都市工学者たち,他方では技術幹部(エンジニア) あるいはエンジニアリング会社の技術者たち」が「対抗エリート」となって,「没落過程にある 諸共同体,変化の犠牲者たる高年労働者,および病院・団地・公共運輸機関などの「利用者」た ち」を牽引していく運動が反テクノクラシー運動だというのが中期仮説である(Touraine,1969 =1970:79─82)。大事なのは,情報・知識を土台に形作られる巨大な組織機構の支配に対する運 動(の要素を含んでいる)かどうかであり ─ それゆえトゥレーヌらは原子力施設反対運動をとり あげたのである ─,「環境」・「エコロジー」に関わる運動かどうかではない。3・11 以降,い わゆる「原子力ムラ」の機構に対して全国的に盛り上がりをみせた脱・反原子力を主要テーマと する巨大かつ多様な運動のネットワークには,十分に「社会運動」の水準・要素が含まれている とみなすことができるが,それは,その運動が環境運動だから,ではないのである。  第 4 に,仮に中期トゥレーヌが,〈反原子力運動や学生運動の一部に「新しい社会運動」の要 素が含まれている〉といったことを述べているようにみえたとしても,それはあくまでも解釈を 仮説的に提示しているだけである。その後に必ず経験的な調査がなされて,仮説が検証される ─その点が社会史的・理論的研究をベースとしつつ仮説的解釈を示して終わるハーバマスやオ ッフェらの「社会運動」論とは根本的に異なる(濱西,2016a:131─140)。検証の結果,仮説が否 定されることも多い。たとえば中期トゥレーヌは,歴史的仮説に沿って,「支配階級に対する抵 抗の核」(学生,学者,技術者などの知識生産に関わる専門家的性質を持つ人々)と位置づけられた学生 運動・原子力施設反対運動に社会学的介入調査を実施したが,仮説と合致したのはわずかな部分 であった。また「衰退過程にある諸共同体」の事例としての地域主義運動は「共同体に引きこも ることによるアイデンティティの防衛」を表す文化運動,女性運動は「平等性と差異の緊張関係 の問題化」を表す文化運動であったとされた。さらにフランスの労働運動,ポーランドの「連 帯」労組においても仮説は部分的にしか立証されず,最終的にトゥレーヌらは,同時代はまだ産 業社会の解体期にあり,次の社会はまだ到来しておらず,全体社会の争点も定まっていないとし て,中期の歴史的仮説を否定するに至っている(McDonald,1994:48)。そのことは国際的にもあ まり知られていない。いずれにしろ今後も,ある環境運動を「新しい社会運動」と仮説的に捉え て終わるのではなく,実際に検証する作業に進むことが求められる。  第 5・6 点は 2.2. で述べた理論の妥当性のほうに関するものである。  まず第 5 に,歴史的仮説はフランスを中心にした西欧諸国の経験をもとに構築されており,非 欧州・非西欧の社会にそのまま適用できるものではなく,仮説の相対化は必要不可欠だというこ とである。濱西(2016a:77─85)で行ったような福祉レジーム論を介した相対化以外にも様々な 試みが可能だろう。中期の歴史的仮説が否定されたということ(上述)は,フランスなどの事例 においてそうだったというだけであり,日本社会においては「新しい社会運動」仮説の内容自体 が変わる可能性もある(濱西,2016a:88─89)。たとえば,もともとの仮説では上述のように専門 職業人の役割が重視されている以上,それらを含まない生活者・住民だけの環境運動は「新しい 社会運動」の候補にはならないが,仮説の相対化の仕方によっては日本型「新しい社会運動」の 候補にはなりうる。

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 第 6 に,あまり知られていないが,トゥレーヌは,その後,前・中期理論とはかなり異なる後 期理論(1986 年∼現在)を展開しているということである。そこでは個人のレベルにまで概念体 系が拡張され,歴史的仮説は,前・中期と違って,次の社会の中心的争点が何なのか自体をめぐ って紛争がなされるとされる(Touraine,1992;1997;cf. 濱西 2016a:36─40,70─75)。そして次の社 会の争点の萌芽は,小さなマイノリティの運動や女性の集団,個人の営みの中にもありえるとさ れ,その萌芽を守る文化運動(ライバルとの紛争には入らない運動)に関する調査が主としてなされ るようになっている。さらにオルタ・グローバル化運動や非西欧圏の運動の研究をベースに, 「経験運動」(闘う個人の組織化されない集まり)という概念も提起されるようになっている (McDon-ald,2006;cf. 濱西 2016a:40─49,76;濱西 2017a)。たとえば,東日本大震災以後の脱原子力運動のな かに,社会の行く末を変える「社会運動」の要素がどの程度含まれているのかを解釈することは できるが,それとは別に,その運動が,「全体社会」自体が解体し中心的争点もライバルも失わ れている現代において個人の主体化を促進し守る「文化運動」の要素を,あるいは主体化だけで なく戦略性や役割・統合をめぐって闘う個人を,組織化せずに共在させるような「経験運動」の 要素を,どの程度含んでいるかを解釈することもできるようになっている。  以上の点を,中期トゥレーヌ理論を応用する解釈的環境運動研究が,現状,有する課題として 提起しておきたい。

4.動員論と環境運動研究

4. 1.理論の概要  第 4 節では,説明的環境運動研究の課題について,代表的な説明理論を通して具体的に検討す る。参照されることの多い代表的枠組みは,社会運動組織を中心において運動がなぜ/どのよう にして生成・維持・発展・衰退するのかなどを多角的に説明しようとする動員論(資源動員論を 核に政治的機会構造論やフレーミング論を総合した仮説体系)である。  そもそも動員論は,大衆社会論,心理学的運動論,機能主義的集合行動論,相対的剝奪論など の「伝統的パースペクティヴ」(McCarthy and Zald,1977)に対して,社会運動組織の資源動員の ありようから社会運動のメカニズムを説明する仮説として始まり,フレーミングや政治的機会構 造などに関する仮説と結びついて体系化されてきたものである。現在では,「社会変動はどのよ うにして・どの程度まで,⒜ 潜在的アクターに影響をあたえる機会に対して,⒝ 潜在的アクタ ーに対して,アクター間に対して,コミュニケーションや協働,コミットメントを促進する動員 構造に対して,⒞ 何が起こっているかについて共有された定義を生み出すフレーミング過程に 対して,影響を与えるか」,「動員構造はどのようにして・どの程度まで,機会・フレーミング過 程・対決的相互作用を形成するか」,「機会・動員構造・フレーミング過程は,どのようにして・ どの程度まで対決のレパートリーを決定するか」,「現行のレパートリーはどのようにして・どの 程度まで,機会と対決的相互作用の関係と,フレーミング過程と対決的ポリティクスの関係とを 媒介するか」などの仮説が総合的に組み合わされている(McAdam et al.,2001:14─17)。  もう少し具体的に言えば,たとえばトランスナショナル/グローバル運動の場合には,「どの ようにして普通の人びとが新しい視座を獲得し,新しい行為形態を試み,しばしば国境を越えた

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接触を通して新しいアイデンティティを担って出現するか」,「どのようにして・どの程度まで, 国内のアクター,クレイム申し立ての形態,幅広い戦略を変化させるか」などが問われ(Tarrow, 1998),テロリズムの場合は,「どのようなイシューと紛争がテロリズムを形成・維持するか」, 「テロリズムと,反テロリズムの戦いを駆動する暴力のダイナミクスとはどのようなものか」「ど のようにしてテロリズムは終わるのか」などが問われることになる(Oberschall,2004)。  動員論は,運動一般に通用する説明理論を構築しようとしており,当然,環境運動にも応用可 能な理論とされている。実際,反原子力運動の戦略・帰結に発生国・地域の政治的機会構造が与 える影響(Kitschelt,1986)や「独仏蘭・スイスの反原子力運動の動員にチェルノブイリ災害が 与えたインパクト」(Kriesi, et al.,1995)などが検証されてきている。 4. 2.環境運動研究に応用する際の課題  動員論が環境運動研究に応用されることは多いが,ただ資源動員論の提起からすでに 40 年以 上経つ中で,国際的にみてもいろいろな誤解は生まれてきているようにみえる。ここでそれらの 点を指摘することは,説明的環境運動研究における課題の提起にもつながるだろう。  第 1 に,動員論は,政治システムレベルでの解釈理論(Touraine,1985),合理性や戦略性をベ ースにした解釈理論(Dubet 1994)のように国際的に誤解されていることもあるが,そうではな いということである。動員論の研究課題は,あくまでも社会運動の因果的なメカニズムの説明で ある。より説明力のある仮説モデルを構築し検証していくことが責務であって,意義や意味を解 釈することはその仕事ではない。  第 2・3 点は 2.2. で述べた対象の同定と仮説構築に関連する。  まず第 2 に,動員論的仮説が仮に立証されているとすれば,それは定義に合致する特定の社会 運動組織についてだけだということである。動員論において社会運動は「社会構造の一部,ある いは報酬配分を変えたいという選好をあらわす一群の信念・意見」,社会運動組織はその社会運 動の「選好をもつとみなせる公的・複合的な組織」(McCarthy and Zald,1977)と定義されてい る(6)。これ自体はかなり曖昧な定義であるが,それでも対象がこの定義に最低限,合致している ということは,動員論にとっては方法論的な大前提である。環境運動研究においても,対象とす る運動が動員論における社会運動定義と合致しているかどうかは重要である。そしてもし合致し ていないのであれば,動員論的仮説を採用する必要性もない。動員論があたかも,社会運動に関 わる因果関係の研究すべてに使用可能な仮説・理論であるというのは誤解である。  第 3 に,動員論の諸仮説は,対象である社会運動組織を中心に,構築されていることである。 そこでは構造的な要因や他の諸現象もまた,その運動組織にとっての外的要因・環境として位置 づけられることになる。たとえば受益・受苦圏論は,紛争の特性と受益・受苦圏の空間的展開の 因果的関係を論じる(梶田,1988:32─34),生態学的な理論である。それゆえ,本来は組織中心の 動員論とは原理が異なるが,動員論と接続されると,社会運動組織と,〈社会運動組織によって 認識される限りでの受益・受苦圏〉との因果的関係を説明する理論として位置づけられてしまう。 他にもたとえば集合行動論(Smelser, 1962)のように,本来,構造や不満のほうを中心に,どの ような構造や不満がどのような運動や暴動,逸脱・問題を生み出すのかを説明しようとする理論 であっても,またある特定の特徴やアクションの展開を説明する理論であっても,動員論と接続

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されれば,社会運動組織中心に組み替えられ包摂されていくことになる─反対にトゥレーヌ理 論もパーソンズ理論や批判理論などを自らの位階的な解釈枠組の中に包摂している(濱西,2007)。 そのことを十分に自覚する必要がある。  第 4 は,2.2 で述べた仮説の反証可能性に関するものである。動員論もまた反証可能性にひら かれた仮説群であり,たとえ立証されたようにみえても,それは常に反証がなされるまでの暫定 的な結論でしかない。対象とする環境運動のメカニズムに資源やフレーミング,政治的機会が関 係するかどうかは逐一検証されなければならない。あたかも一般的に立証済みのものとして,各 領域に応用されてしまうことがあれば,それは問題だといわざるをえない。  以上の点を,動員論を応用する説明的環境運動研究が現状,有する課題として示しておきたい。

5.おわりに─社会運動研究・社会学への寄与

 以上,本稿では,社会運動研究の進展をふまえ,また社会運動研究における方法論的区分をベ ースにしつつ,環境運動研究の課題について考察してきた。最初に環境社会学と社会運動研究の 関係を整理した上で,第 2 節では,方法論的に解釈的研究と説明的研究を区別し,前者をマクロ 社会的な意義の解釈,当事者にとっての意義の解釈,概念・カテゴリーとの関係の解釈に区分し, また後者を社会運動組織中心の説明,運動特性に関する説明,アクションに関する説明に下位区 分した。その上で,両研究の特徴(重視する点,運動多様化への対応,研究上の立場性)についても 論じた。第 3 節では中期トゥレーヌ理論を取り上げ,解釈的運動研究に応用する場合の課題とし て,① 解釈理論の認識,② 理論の理解,③ 理論の妥当性などについて指摘を行った。第 4 節で は動員論を取り上げ,説明的環境運動研究に応用する場合の課題として,①説明理論の認識, ② 対象の同定と仮説構築,③ 仮説の反証可能性などについて指摘した(表 1)。  なお本稿では,執筆の経緯上(注 1 参照),代表的な理論を応用する場合の環境運動研究の課題 に議論を限定しているが,他にも様々な解釈・説明的研究が存在し,また環境運動研究内部で発 展してきた理論も存在している。それらの検討はまた機会があれば行うことにしたい。  最後に,環境社会学と社会運動研究の分野間の「調整」の一環として,これまでの検討とは反 対に,環境社会学側が社会運動研究に提起するものに触れておきたい。環境社会学は,自然環 境・物質的環境との「距離」が近く,しばしば自然・物質的な存在(生物,特に獣害などをもたら すものや絶滅危機種,そして海,山,川,湖沼,里山,岩礁,あるいはダムや高速道路,高層マンション, 工場,発電所など)が問題の当事者として,議論の中心に登場してくる。環境運動研究においても, 自然的・物質的環境も含めた対象の記述は珍しいものではなく,そのような視座は他の社会運動 の研究にも導入しうるだろう。たとえばデモであれば,集合場所や路上の状況,山や川,高速道 路,建築物の配置などの物質的環境の記述(濱西,2018)にもつながりうる。  また記述は解釈・説明の前提となる局面であり,記述の変化は,自然・物質的環境も含めた形 で,運動の意義やメカニズムを解釈・説明する途を開く可能性がある。まず解釈的研究の対象は, 現状,人間の集団・営みであり,自然・物質的なものは対象になっていない。それらの意義を評 価するとはどういうことか。たとえば,エコロジー系のデモ隊が連れて歩く動物や掲げる植物を, (運動の「環境」や「道具」としてではなく)運動の一部,歴史的行為の担い手として捉えるとは一

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体どういうことか。また説明的研究においても,「変数」として位置づけられてきたのは人,状 況,時点によって変化する動きであり,自然・物質的な環境は「定数」として処理されてきてい る─運動に参加する人々が集める物理的な金銭や道具の多寡が運動に影響を与えるということ はあるがそれは物質的なもの自体が変数になっているのではなく,人間による収集量・動員量が 変数になっているのである。確かに歴史的研究や比較研究においては,自然・物質的環境の違い を運動と関連づけることは可能であるが,動植物の動きや物質的な状態(およびその自生的な変 化)そのものを,運動をめぐる因果関係の「変数」(独立変数)として捉えるということが何を意 味するのか。筆者の想像の域を超えているが,土台となる「行為」概念や「変数」概念からの問 い直しなど,様々な検討が必要になるかもしれない(7)。いずれにしろ自然・物質的なものの記 述・説明・解釈に関する視座・知見は運動研究側を変える可能性を有している。  さらに〈空想〉を続けさせてもらえるなら,社会学自体にも,環境運動研究・環境社会学にお ける自然・物質的なものへの視座・知見は影響を及ぼしうる。1 節で紹介した水準/領域上の区 分(図 1)をふまえれば,たとえば〈あらゆる領域を対象とするが,全体社会と自然的・物理的 環境が,社会的なものと自然・物質的なものが接する/交わる水準に,限定される分野(社会環 境論)〉というものを新たに構想することはできるかもしれない。そこでは様々な現象が人と自 然/物質とともに記述され,解釈・説明されていくことになるだろう。これまで地道な実証研究 を積み重ねてきた日本の環境社会学・環境運動研究が,抽象的なパラダイム論ではなく,社会環 境論のような形で社会学自体に影響を与えていくことは可能かもしれない─それは大震災・原 子力災害を経験した日本の環境社会学に国際的に期待されていることでもあるだろう。

(1) 筆者は 2017 年環境社会学会大会シンポジウムにコメンテーターとして招聘頂き,社会運動研究の側 から 3 報告(特にそこで参照されていたトゥレーヌ理論と動員論)に対してコメントをさせて頂いた。 その後,編集委員会より,コメント内容を基調とした特集論文の執筆依頼を頂いたという流れである。 それゆえ,本稿は基本的に当時のコメント内容に沿っている。ただし,多様な 3 報告に対するコメン ト群を 1 つの基調にまとめること,また疑問点を指摘するためのコメント群から 1 つの独立した学術 論文を執筆することはなかなかに困難で,全体的に批判的なトーンにもなってしまっている。読者に はその点ご寛恕願いたい。また筆者は普段,研究を国内外で分けず─学術研究とは本来国境に左右 されないものだと考えている─出来る限り国内外問わずあてはまる議論を行うようにしている─ つまり英語に直せばできるだけ通用するように書いている。今回は依頼の文脈上,「日本の」環境運 動研究の課題を論じざるをえないが,ほとんどは海外の研究にもあてはまることであり,ことさら日 本の研究に課題があるとみているわけではない─むしろ国内の(環境)運動研究のほうがまだ自覚 的でバランスがとれている(濱西,2008:50─51;2016a:122,251)。誤解されるおそれがあるので 表 1 代表的理論とその環境運動研究への応用 代表的理論 環境運動研究に応用する際の課題 解 釈 中期トゥレーヌ理論(歴史的行為の概念体系, 歴史的仮説) ① 解釈理論としての認識,② 理論理解(「社会運動」概念や歴 史的仮説,検証),③ 妥当性(仮説の相対化,後期理論) 説 明 動員論(社会運動組織をめぐる反証可能な仮説 体系) ① 説明理論としての認識,② 対象同定と仮説構築(定義との 合致,組織中心仮説への包摂),③ 仮説の反証可能性

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補足しておきたい。 (2) 社会運動研究は,環境社会学だけでなく,福祉社会学,都市社会学,地域社会学,労働社会学など においても重要な位置を占めてきたといってよい。たとえば福祉社会学においては,福祉レジーム類 型に影響を与える労働運動,また社会事業運動,福祉権運動,ソーシャルアクション,社会保障運動, 社会福祉運動,協同組合・NPO・サードセクターなどのかたちで社会運動が登場してくる。 (3) 以前は水準上の区分が主流だったが,現在では,領域上の区分のほうが中心的になってきているよ うにみえる。その移行には様々な要因(一般的な知識の構築の困難さ,具体的経験的な調査との相性 の良さ,隣接学問との協働可能性の高さなど)がうかがえるが,経済学や心理学のような組織だった 他学問を意識して,各領域の知見を再び社会学の知見として組織化しようとする際には,水準上の区 分に基く社会○○論の領域横断的な視点は重要なものになってくる。 (4) トゥレーヌは,価値・規範自体を形成する行為を「歴史的行為」と呼び,その連関として様々な社 会関係を位置づけ,社会全体の変動と歴史の形成を理論化していく。その背景には,ウェーバーが主 観的意味の含まれている行動(「行為」)の中で,他者への指向(人々の過去や現在の行動,未来に予 想される行動へ向けられること)を伴う行為を「社会的行為」と定義し,その連関として社会関係を 位置づけたことや,パーソンズが規範への指向(この状況でこうするのが適切と社会的に考えられて いるものへ向けられること)を有する行為を「規範的行為」と呼び,その連関として社会関係を位置 づけ,社会が維持される条件などを理論化していったことなどがある(濱西,2016a;2016b)。彼ら の概念体系化作業の前提にあるのは,〈人間は「神」ではないので現象をありのまま捉えることはで きず,必ず概念を通して理解(解釈)するしかない〉という伝統的な考え方である(濱西,forth-coming)。 (5) トゥレーヌは,歴史的行為の連関を 3 つの水準に区別する。1 つ目は,企業,病院,学校,軍隊な どのように外部環境に働きかける具体的な手段の集合体の水準(「社会組織の水準」)である。その上 に,それらの規則・規範自体を決定する「政治・制度の水準」(諸々の行為者,政治勢力,利益集団 が互いに意思決定に影響を行使しようとする水準)が置かれる。その上位に政治的メカニズムのあり よう自体を決定する〈歴史性の水準〉が置かれる ─ それは,〈社会全体の価値・規範は「神」によ って社会の「外」から与えられるのではなく,結局は人々によって社会の中で知識や倫理,文化を通 して作り出されている〉という歴史的事実から想定される水準である。といっても〈全体社会の最上 位に,人々によって形成され共有された具体的な価値が存在し,そこから規範が導かれる〉というパ ーソンズ的な見方ではなく,〈人々によって形成・共有されるのは「争点」だけであり,いかなる規 範が形成されるかは,その争点をめぐる対立・紛争の結果に,未来に,委ねられる〉とされる。コン ティンジェントな次元を理論に含めることで歴史変化の偶然性にも対応している点がトゥレーヌ独自 だと言える(濱西,forthcoming)。

(6) 動員論(少なくとも McCarthy and Zald,1977)において社会運動は「選好」や「組織」で定義さ れており,不思議なことにそこに「アクション」は含まれていない。しかし,不満が存在してもそこ から運動が自然に発生するわけではない(それゆえ動員過程の分析が必要だと資源動員論は主張し た)のとおなじく,たとえ変革へ向かう選好とその組織,動員過程,レパートリーの選択過程が存在 したとしても,やはりそこから自然にアクションが発生・展開するわけではない。組織化・動員の過 程とは別にアクションの展開過程が存在するはずであり,それゆえ,2.1. で述べたように社会運動組 織中心の説明とは別にアクションに関する説明的研究が成り立ちうるのである ─ アクションこそ 「運動の現場」だと考えれば,そもそもそれを欠く社会運動定義のほうが誤っている。実施する(法 的責任も問われる)一人ひとりの振る舞いを外延とし,アクシデントやトラブルも発生するアクショ ンの展開(あるいは,アクションまで含めて新たに定義されたところの,〈社会運動〉の発生)を説 明しようとすれば,おそらく(動員論が中心に置いた)組織戦略もまた,中心的要因ではなく,(か

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つての「不満」同様)数ある要因の 1 つとして用いられることになっていくだろう。 (7) 人と自然のインタラクションを考える研究(足立,2017 ほか)は既になされてきている。またアク ターネットワーク理論(Latour,2005)の発想が役立つ可能性もある。

文 献

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This paper considers environmental movement research issues from the point of view of social movement research. First, it aims to clarify the relationship between environmental so-ciology and social movement research. Then it distinguishes interpretative research and ex-planatory research along the methodological classification presented in Section 2. The former is classified into interpretation of macro social significance, interpretation about meaning for participants and interpretation of concepts and categories, and the latter into explanation of social movement organization, explanation about movement characteristics and about action. In addition, the paper highlights the points that each study area emphasizes, and discusses the diversification of movements, and the positionality of research. In the third section, it first con-siders middle-term Touraine theory as a representative example of interpretative movement research. And the paper draws attention to the issues with its application to environmental movement research : ⑴ consciousness as interpretation theory, ⑵ understanding of the theory (concept and historical hypothesis, verification), and ⑶ validity of the theory (relativization, late theory). In Section 4, the paper discusses mobilization theory, which is in the mainstream of explanatory movement research. Then, it sets forth the issues relating to its application to environmental movement research : ⑴ consciousness as explanatory theory, ⑵ identification based on definition and hypothesis centered on organization, and ⑶ falsifiability of hypothesis. Furthermore, the paper discusses the features of environmental sociology (environmental movement research) at the description phase (descriptions including nature and materials), which can influence social movement research. Finally, it makes a brief reference to social en-vironment theory at the level of contact between society and nature.

Keywords : Methodology, Touraine Theory, Mobilization Theory, Descriptions Including Natu-ral and Material Environments

Social Movement Research and Environmental Sociology :

Issues for Interpretative/Explanatory Environmental

Movement Research

HAMANISHI Eiji

Notre Dame Seishin University [email protected]

参照

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