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雑草害の拡大防止に防草シートをどう活かすか

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16 雑草管理 佐治健介 株式会社白崎コーポレーション/ 雑草インストラクター キーワード: 雑草被害,統合型雑草管理,被覆資材の役割,表土環境の保全,IWM はじめに 都市・市街地,農業場面にわたって広がる私たちの生活域の多くは,多種多様な雑草植 生に覆われている.そして,ここ数十年来の雑草繁茂の増大は,種々のインフラ施設にお ける土地利用の阻害,植栽の劣化,生活環境の悪化,生態系サービスの低下などに大きく 影響してきた(伊藤 2020).雑草問題が深刻化した原因にはいろいろあるが,自然的要素 としては,一昔前より懸念され続けている社会問題“地球温暖化”や“ヒートアイランド 現象がある.昨今は異常気象という単語も聞き慣れたものとなり,ここ数年は夏季の最高 気温 40℃越えの地点が出ることも珍しくない.我々にとっては過酷な変化であるが,生育 期間の長期化(生育に向かない低温となる期間が短縮),光合成の促進(大気中の CO2量の 増加),生息域の拡大(分布限界の北上)と,雑草の立場で見れば概ね好ましい環境の変化 であろう.しかし,雑草状況の悪化の最大の原因は人為的要素といえるだろう,環境変化 に適応し難防除化する雑草をただのゴミとみなし,場当たりな除草作業で対処するままで は,一時しのぎにはなっても根本解決に至らず問題は拡大するばかりである.今日の日本 では,雑草対策のためのツールは防草シートをはじめ各種 のマルチ材,除草機器,除草剤 など豊富にそろっているが,残念ながらこれら技術の機能を十分に生かし統合した科学的 思考に基づく雑草管理は今もほとんどなされていない.作業従事者の減少や高齢化,作業 環境の悪化などが年々進行しているにも関わらずである. 防草シートによるマルチは,一度の施用により長期にわたって雑草植生を抑えることの できる唯一無二の手段である.本稿では,雑草管理に関わる人々が防草シートの機能を理 解してより適材適所に活かして頂くこと,および関係者に本資材についての知識をあらた めて共有して頂くことを目的に,活用場面,構造や機能,施用方法とその留意点などにつ いて解説し,今後の展望について考察した. 1.防草シートの活用場面

雑草害の拡大防止に防草シートをどう活かすか

Kensuke Saji:How to utilize weed proof sheets for vegetation hazard management . Shirasaki Corporation Co.,Ltd./ Instructor of weed managements

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17 1.1 雑草問題の発生場面 防草シートの適用できる場面を明確に把握するために,まずは,対象となりうる生活圏 緑地・非農耕地の雑草問題の種類とその原因および排除すべき具体的な損害や不利益につ いて整理してみた(表1). 1.2 活用の現状 今日では道路(法面・中央分離帯・植栽帯・交差点・ガードレール・フェンス・標識) や鉄道沿線(法面・フェンス・標識・電子盤),あるいは農耕地(法面・休耕田・電柵下・ 耕地)など,防草シートは多種多様な場面で活用されている(図1). 当初は道路場面,農耕地場面での管理作業軽減,クレーム対策を目的とした活用が中心 であったが,2007 年開始の補助事業“農地・水・環境保全向上対策”による地域環境保全 (景観形成)での活用と,2012 年以降に爆発的に増加した野立ての太陽光発電の施設管理 としての活用が切掛けとなり,普及が促進された. 現象・原因 環 境 的 問 題 緑地の劣化 大気浄化機能の低下 ・ 生活環境 CO2の排出 ・ 地域環境 環境負荷の増大 ・ 地球環境 特定雑草の温床・拡大 在来生物の衰退 有用植物の劣化 経 済 的 問 題 修復・再植コスト ・ 公共資産の劣化 利用機能の低下 ・ 費用対効果 イメージの悪化 ・ 非効率・無駄 低環境貢献度 ・ 非社会的貢献 緑地資産価値の低下 ・ 組織文化の荒廃 無神経・無関心・無自覚のそしり ・ 非持続性 地域コミュニティーとの関係低下 職場環境・従業員心理の悪化 管理・監督機能の衰退 生活環境の劣化 ストレス増加 地域景観の破壊 社 会 的 問 題 無計画・無駄使いの評価 ・ 衛生/精神衛生 火災 ・ 防災/防犯 遮蔽障害事故の発生 ・ 教育/障害 有毒・有害害虫の発生・温床 ・ 安全/不安 花粉・雑草種子の飛散 ・ 生活文化の停滞 歩行障害 苦情の増加・対策コストの増加 防犯機能の低下 コミュニティーイメージの悪化 衛生環境の劣化 緑地の衰退 雑草の放置 景観の悪化 繁茂・放置場面の増加 区分 影響・損害・不利益 除草・搬出・焼却 雑草放任 表1 生活圏における雑草問題

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18 2.防草シートの要求機能 防草シートは,元来土木分野で土砂の洗堀防止や土壌基盤安定に使用されてきたジオテ キスタイル(土木建設用途の合成繊維製品)を,マルチとして雑草の長期的制御を目的と して開発された資材である.したがって,シートには防草性(防草効果)と耐久性(持続 期間)が担保されることが最も重要になる. 2.1 雑草制御機能 道路法面 害虫対策,景観対策 道路交差点 視界安全性 有用植物の保全 道路中央分離帯 管理作業軽減,作業安全性, 走行安全性,有用植物の保護 鉄道法面 維持管理作業・頻度軽減 鉄道電子盤 維持作業効率改善 施設機能保全 河川法面 護岸管理作業軽 有用植物の保護 電力無人基地 維持管理軽減 施設機能保全 住宅地空き地 クレーム対策 農耕地電気柵下 管理作業効率改善 施設機能保全 図1 防草シートの活用場面 防草シートが活用されている場面とその活用目的 (中川 2009)より引用

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19 防草シートの雑草制御機能は,主として遮光及び物理的障壁による種子の発芽や光合成 の阻害,貫通の阻止によるものである.遮光機能については野外で 3 月上旬から 10 月に 施用した防草シート下において,透光率 3%以下では該当期間の雑草発生が 0%に抑えら れたが,透光率 8%のものではわずかに発生・生長した記録がある.雑草には光発芽性種子 を持つ種が多いが,発芽は微量の赤色光でも誘導されるため,遮光による雑草の抑制は主 に発芽後の光合成阻害による幼植物の枯死によるものであることが推察される.なお,光 合成の有効波長は 380~710nm であり,種子の光発芽は赤色光/近赤外光の比が高いと誘導 されるため,遮光率が同じでも防草シートの色,すなわち遮断・透過する光の波長によっ て効果は異なってくる. 多年生雑草の栄養繁殖体(地下の根茎やクリーピング・ルートなど)の発生抑止効果は, 防草シートの物理的な強度が主な要因となる.繁茂する多年生雑草を地際で刈り取り,強 度の異なる複数の防草シートを設置した試験では,50g/㎡のシートではほとんどの多年生 雑草を抑えることができたが,チガヤの地下茎のように先端が鋭利で硬質の形状のものは シートを貫通することが認められた.このような形状の雑草には,150g/㎡程度の単位面積 質量に相当する物理的強度が必要である(伊藤 2009). 2.2 耐久性(持続期間) 防草シートは屋外に設置されるため,太陽光,主に紫外線による光劣化,降雨や気温変 化による素材の伸縮・膨張,風による煽られや踏圧による疲労蓄積等が要因となり,経時 劣化が発生する.その劣化は主に資材強度の低下として現れ,いずれ風や踏圧な どの外的 刺激による摩り減りや破断が発生する.防草シートの耐久性は防草機能がどれだけの期間 にわたって持続するか,促進劣化試験や経年評価を基に設定される.原材料や構造の工夫 により,現在のところ最長で 20 年の耐久性を持つシートもある. 2.3 その他の機能 防草シート選択の際は,防草性,耐久性以外の性能も含め,各適用現場で要求される水 準に見合ったものを選択することが重要である. ・施工性・・・地面,構造物への馴染みやすさ,持ち運び・カットの容易さ ・安全性・・・歩行の際の滑りにくさ,燃えにくさ,風での捲れに くさ ・植栽適応性・・・水の通りやすさ,植栽植物との相性 ・景観性・・・周辺景観への溶け込み,見栄えの良さ 例えば,道路・鉄道敷地・河川等,公共施設で使用される際は,雑草問題によって引き 起こされるクレーム対策として使用されるため,防草シートには高性能,高い防草性がよ り長く続くこと,更には景観(シートの色)や安全性(風による捲れ防止)が重視される. 対して農道や畦畔等,農耕地周りで使用される際は,作業負荷の軽減が目的であり,自身 で作業できる軽量で取り扱いが容易なものが頻繁に使われる.近年増加のメガソーラー を 初めとした太陽光発電施設に適用するケースでは,売電期間を踏まえた管理コストの軽減, より長期間の使用に耐えうるものが要求されている. 3.防草シートの構造と種類

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20 3.1 原材料 防草シートは,ポリエステルやポリプロピレンなどの化合物を原材料としたものが大部 分である.防草シートの加工は,着色剤や紫外線劣化防止剤などの機能を付加する材料を 加え,フィルムや繊維の形状を経て最終的に シート状の形態にする.また,原材料として は,羊毛やジュートなどの天然繊維や,アスファルトやポリ塩化ビニルを素材とするもの, ペットボトル等を原料とした再生ポリエステルや反毛などのリサイクル材なども使用され る. 3.2 構造 防草シートの多くは織布または不織布の構造を基本としている(図2). 織布タイプの防草シートは,シート全体の厚さに対して,縦方向・横方向への引張強さ に優れる点,また,織り目部分に若干の隙間があり,シートが透水性・通気性を持つ点が 特徴である.不織布については,製造方法や材料の配合によって織布以上に性状に差が生 じるため,全てについて述べることは困難である.ただ,現在防草シートとして用いられ ているものをあえて大別するのであれば,薄く硬い“高密度”不織布と,それ以外の不織 布に分類できる. 高密度不織布は繊維が密に詰まった“硬い”シートであり,雑草の貫通に対して高い物 理的抑止効果を持つ.その反面,薄く硬く仕上がったシートは,柔軟性に欠ける点,衝撃 に弱く,裂けやすい点などが指摘されている.対して,高密度でない不織布は雑草の貫通 抑止力は劣るものの,柔軟性に富み,裂けにくい性状を示すものが多い.また,高密度不 織布に比べて繊維間の隙間が大きく,高い透水性・通気性を示すのも特徴である. その他の構造としては,ポリエチレンのフィルムを厚く成 形し,防草シートとして使用 する製品もある.こちらは,織布や不織布と異なり,非透水性である点が特徴である. また,機能を補完しあうために,織布と不織布や,性状の異なる不織布どうしを貼り合 せ,二層や三層構造の防草シートとして使用しているものや,表面または全体に樹脂を含 ませることで耐久性や強度の向上を図っているもの,更には,シートとコンクリートブロ ックを組み合わせた製品や,裏面に粘着性を持たせ構造物への貼付を可能にした製品,薬 剤とシートを組み合わせた製品も使用されている (図3). これらの材料特性と構造の組み合わせにより,2.3 で挙げた機能が生み出される. 図 2 防草シートの基本構造 それぞれ(左)織布,(中)高密度不織布,(右)不織布の拡大写真.

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21 3.3 生産と商品出荷 他の工業製品の例に漏れず,防草シートも大量に生産することでコストを抑えている. 通常,一回の生産量は数千~数万㎡の単位となる.カスタマイズした少量生産も可能では あるが,生産が安定するまでの材料ロス,設備調整など,コストがかかりすぎるので防草 シートの生産には不向きである.このため大量少品種生産品を用いることになるので,防 草シートとしては,出荷規格(商品規格)での調整が極めて重要になる.主流の形態は, 1m 幅ないし 2m 幅のロール状で,現場で転がして容易に拡げることができる.これら規格 幅のシートを出荷前に二次裁断し,現場の幅に適合した形で提供するサービスもある(オ ンデマンド加工).また,近頃はホームセンターや 100 円ショップなどで 1~5 ㎡ほどのシ ートが折りたたまれて販売されているのを見かけることもあり,ごく小面積での需要も伺 える. 4.防草シートの設計・施工・維持管理 4.1 適用方法 1)地表面被覆設置 人目に付く形での適用方法であるため,防草シートと言われた際にまず思い浮かぶのは こちらの事例であろう.主として遮光による光合成と種子の発芽阻害,物理的障壁により 雑草を抑止する.劣化主要因である紫外線に曝されるため,シートの経時劣化が最も進行 しやすい用途となる. 2)マルチ資材下の被覆設置 雑草種子(埋土種子)および雑草地下繁殖器官(地下茎・横走根)のある土壌層をシー トで被覆し,その上に敷き均す有機マルチ材(バーク,ウッドチップ等),無機マルチ材(砂, 砂利,砕石,各種舗装材等)の効果を補強する.劣化主要因である 紫外線から保護される ため効果の持続性も高く,景観も良い. 3)植栽マルチ設置 植栽植物に起きる雑草害(光や養水分の競合)を防止するために用いる.一般的にはカ バープランツ(被覆植物)の育成と維持が主な使い方である.植栽木の維持にも使われる が多くない.使用例の多いのは,シートの植穴に植栽し,シート上に匍匐茎(ランナー) 図3 特殊構造の防草シート (左)左側の不織布が表,右側の高密度不織布が裏の二層構造の防草シート (右)裏面の粘着層で舗装面に貼り付けるタイプの防草シート

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22 や匍匐枝を広がらせる使い方である.シバザクラやイワダレソウをはじめ多くの園芸種(グ ランドカバープランツ)を用いた造景に適している.また,センチピートグラスなどの芝 草にも使われるが,芝生の育成には切断した栄養繁殖体(匍匐茎や地下茎)をシートで挟 んだ二重ネット工法などがある.なお,植栽マルチ工法の解説は別の機会を設けたい. 4)埋土設置 防草シートを垂直または半球面に土中に埋設する適用法がある.前者は根系の侵入や侵 出の制御を目的に設置され,根切り作業や伐根作業を大きく軽減する.後者は地中埋設設 備(暗渠・用排水管・配線口など)への根系侵入を防止することや,地中埋蔵有害物質の 根系による吸収と拡散防止に広く使われている. 4.2 施工方法 1)施工基盤整備 防草シートの機能を発揮させるためには,設置場所の状態に応じて,あらかじめ整備す る前処理が必要である.前処理とは以下に示す作業をいう. ・生育雑草を株本から刈り取り,除去する(設置後のシートの弛み防止) ・鋭利な株や飛び石の除去(シートの破損防止) ・施工面の凹凸の均し(水みち発生による法崩れ防止) 雑草の根茎部が大量に残存する場合は,シートの持ち上げ(ススキ,ヨシ),シートの突 き抜け(チガヤ)等のリスクがあるため,茎葉処理型の除草剤で枯殺してから刈り取るか, 刈り取り後または整地(耕起)後に土壌処理型除草剤を処理する必要がある. 2)施工手順 防草シートを地表面に沿うよう弛みなく設置していくことが基本である.雑草に押し上 げられた際に隙間が生じないよう,シートの重ね部,構造物周辺はテープや接着剤等を用 いて固定することが重要である.シート重ねは傾斜による雨水の流れや風向きを考慮し, 堆積が最小となるように重ねの上下を決定する. 防草シートの固定には鉄やプラスチック製の固定ピンが使用される.固定ピン使用の目 的は防草シートの捲れ,ズレ,持ち上げ防止であり,特に端部はシート下に風が入り込ま ないよう数を増して打設する.なお,固定ピン打設箇所は 地面に押し付けられ湿った状態 となりやすいこと,打設の際の穴が開いていることから,飛来種子の発芽やシート下で発 生した雑草の出口となりやすい.そのため,ピン頭部をテープ等で覆い雑草発生を予防す ることは重要である. 植栽を行う場合は,防草シートに十字またはT字の切り込みを入れ,苗を植え付ける. 当然植え穴部分からも雑草は発生するため,切り込みは植え付けができる最小限に留める のが良い. 4.3 維持管理方法 防草シート現場特有の雑草発生の状況として,以下のものが挙げられる. ・固定ピン打設部からの雑草発生 ・シート重ね部分からの雑草発生 ・シート端部,構造物際からの雑草発生

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23 ・シート上に堆積した土壌からの雑草発生 ・シート破損箇所からの雑草発生 上記箇所から発生する雑草は,他の雑草に遮られることなく太陽光,土中の養水分を占 有するため,周辺部に生育する同種雑草に比べ巨大化する傾向にある.一旦発生し,巨大 化した雑草はシート上に種子や枯れカスなどを堆積させる,根を伸長させシートにしがみ つくなどし,現場の劣化を進行させるため,早期の発見と除去が基本となる. なお,固定ピン打設部,シートの重ね部分,端部,構造物際からの発生雑草については, 防草シート設置時にそれに対応した資材を併用することで抑止・軽減可能である.一方, シート上の土壌堆積やシートの破損は経時的に必ず発生するので,早期に発見し処理する のが肝要である. そもそも防草シートの維持管理とは,設置したシートの防草効果を維持するための作業 である.したがって,シート上に発生する雑草や破損個所からの雑草に対して,手取りが できない多年生雑草には適切な除草剤の使用が必要になる.シート上に土壌の堆積と雑草 の発生がみられるケースでは,冬期に雑草発芽前土壌処理剤を処置する.シートの破 損部 位から発生する雑草に対しては,冬期に土壌吸収型除草剤を注入する,または雑草が展葉 した初期に茎葉吸収移行型除草剤をスポット処理する. 防草シートの維持管理の要点は,シートの防草効果を長期にわたって維持することであ り,シート自体を維持することとはイコールではない.いずれにせよ,年一回冬期に防草 効果の点検作業を行うことが必要である. なお,シートの広範囲の破損や劣化がみられる場合は,シートの飛散など安全上の問題 が生じる恐れがあるので,速やかに更新等の対応をとる. 5.防草シートについての留意点 5.1 土壌環境の変化 防草シートを設置することで,シート下の土壌環境は変化する.シート下 5cm の地温度 変化をみると,透水性シート下の地温は,気温と同調し日中は高く日没とともに低下する 変化を示すが.総じて裸地より低く植物発生材マルチ下よりは高く維持される. また,シ ート下の土壌硬度は裸地より高くなる傾向がある.これは,裸地の降雨による土壌団粒構 造の破壊とは異なり,シート下に蒸発散の抑制により飽和水が発生し,土壌の団粒構造が 崩壊すると考えられる(角ら 2007)(表2). 高木 針葉樹 低木 広葉樹  芝草  雑草 地温(℃)1) 31.0 28.7 28.6 28.8 28.3 31.2 土壌水分(%)2) 31.2 31.0 31.1 30.8 30.4 28.5 土壌硬度(mm)3) 24.3 14.9 14.2 12.2 13.7 26.7  注):1)8月,9月の平均値 外気温30.2℃,2)8月,9月の平均値,3)被覆12ヶ月後の測定値 (角ら 2007)より引用) 植物発生材 防草 シート  裸地 物理性 表2 地表面被覆の違いと土壌の物理性

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24 5.2 地表環境への影響 太陽放射熱(日射)は,土壌,水面,植物などの自然物やコンクリート・アスファルト などの構造物によって反射されたり,吸収・蓄熱されたりする.基本的に防草シートは黒 色を初めとした濃色であり日射を殆ど反射せず吸収する.吸収された太陽熱は直ちに放出 されるか,地面に伝導し蓄熱される.したがって,日射に曝された防草シート上の温度は 気温より高くなるものの,日没や日射が遮られると速やかに低下する.蓄熱量は体積に依 存するので薄いシートには蓄熱性はなく,熱伝導も放熱も起こらない(伊藤ら 2011). 5.3 シートの更新と廃棄 更新は既存のシートの上に被せる形で新たな防草シートを設置する方法であり,撤去の 手間を省くと共に既存のシートの強度・遮光性能を活用できる. 撤去する場合は,重機または人力で実施する.撤去後の資材は産業廃棄物に分類され, 各自治体の指示に従い廃棄となる. 防草シートの主な素材はプラスチックであるが,屋外での使用により泥や汚れが多量に 付着する状態となり,廃棄シートのリサイクルが困難なのが現状である.今のところ撤去 後の防草シートは産業廃棄物として埋設処理となり,廃棄が環境負荷となっている点は否 めない.この先,取り組むべき課題は廃棄シートの洗浄と再生など,廃棄量を削減する技 術の開発が求められる. 6.雑草害の拡大防止に向けた防草シートの役割 6.1 統合型雑草管理 まず初めに,除草と雑草管理の違いについ明確にしておきたい.除草とは一時的に雑草 を除去する作業を意味し,通常,除草剤や刈払い機などの除草ツールを用いる. このため,ツールの属性の優劣を問題にすることがあっても,その使用に対して雑草がど のように応答していくか,また,雑草害の変容などについては気にしない.一方,雑草管 理とは,雑草による実害を把握し,その実害の軽減と防止に向けて科学的(合理的)に対 処していくこという.統合型雑草管理(Integrated Weed Management : IWM)とは,入手可 能な雑草制御ツールのすべてを用いることによって,雑草害を長期的に許容できる水準以 下に抑えていく管理システム(またはプロジェクト)を意味する.この手法が生まれた 背 景は,雑草と雑草害は,人とその環境に呼応して「増える」,「広がる」,「変わる」という 特性を持つ生物および生物害であることが認識されたからである.すなわち,雑草の管理 とは,雑草の適応スピードに‘手を変え,品を変え’対応していくしかないということで ある. 6.2 雑草管理と防草シート 雑草管理の目的は,雑草害を長期的に排除していくことにあるのは論をまたないが,長 期的に除草作業を省くという意味ではない.防草シートをこの文脈で語られることが多い が,本当の実用場面は,他のツールでは達成できないことの実現,他のツー ルでだけでは 十分な成果が得られない場合の補完,他のツールでは長期的に安全が担保されない場面な どにある.日本では,雑草害の未然防止や拡大防止において,防草シートの長期的経済効

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25 果が検証されることはあまりない.そこで,諸外国の事例をいくつか紹介する.一つは, 重金属廃棄物や放射能汚染廃棄物(核廃棄物ではない)などの埋設緑地における雑草木根 系の侵入防止である.除草剤との併用で50 年以上の長期雑草管理が目的とされている.も う一つは,灌漑用水管,暗渠排水管,配線管などの地下埋設ヒューム管内への根系の侵入 防止がある.25 年以上の雑草管理が要求される.この他,難防除雑草群落の撲滅や境界部 の雑草管理などにもその長期的経済効果が評価されている.いずれにせよ,長期にわたり 雑草害の経済損失を未然に防ぐには,防草シートを適所に用い,適材のツールと組み合わ せる技術によってのみ可能になる. おわりに 防草シートのこれから 1990 年頃の普及開始以降,防草シートはより高強度,より高耐久,より低コストにと, 資材属性の改良に焦点を当てて製品開発が行われてきた.その反面,応用技術の開発はお ろそかになっており,今日においても防草シートのポテンシャ ルが活かしきれていないと 思われる.この状況を改めるためには,総合的に雑草害の長期的経済損失を把握し,その 改善に向けて防草シートを機軸に他の防草ツールの機能を見直すことが必要である.そし て,「何のために」長期の雑草管理をするのかが各関係者で共有されれば,防草シート技術 の適用範囲や改善点がより明確になると思われる.最後に,現在の諸ツールの‘やること’, ‘やれること’を持ち寄り,雑草害をこれ以上に拡大させないための協働ができればと思 っている. 引用文献 伊藤幹二 2011. 都市の気候変動と深刻化する雑草問題,草と緑 3:9-20 伊藤幹二・伊藤操子 2011.シート防草緑化整備技術ハンドブック , 株式会社白崎コーポレ ーション:4-59 伊藤幹二 2009. 防草シートとは何か? NPO 法人防草緑化技術研究所第 1 回シンポジウ ム講演要旨:1-10 伊藤操子 2020. 多年生雑草対策ハンドブック:叩くべき本体は地下にある.農文協. 伊藤操子 2009. 緑化場面の雑草問題とシート活用技術:試験事例からの考察,NPO 法人防 草緑化技術研究所第 1 回シンポジウム講演要旨:19-27 角龍市朗・伊藤操子・伊藤幹二 2007. 緑地管理で排出する植物残渣のマルチ資材として の機能.雑草研究 52(別):252-253 久保光・乾義明・佐治健介 2006. 道路緑化樹木の生育による歩道舗装の破壊対策(防止) に関する試験研究,福井県雪対策・建設技術研究所年報第 19 号:57-59 久保光・乾義明・佐治健介 2009.道路緑化樹木の生育による歩道舗装の破壊対策(防止) に関する試験研究(その2),福井県雪対策・建設技術研究所年報第 22 号:64-67 中川豪 2009. 現場でのシートの利用実態と今後の課題,NPO 法人防草緑化技術研究所第 1 回シンポジウム講演要旨:35-43 佐治健介 2009. 防草シートの現在:構造と活用現場からのアプローチ,NPO 法人防草緑化

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26 技術研究所第 1 回シンポジウム講演要旨:11-17

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