インパクトファクターの分野別上位ジャーナルに着目した
日中のトップジャーナルの比較と中国トップジャーナルの
分析
○林 和弘 科学技術・学術政策研究所) 〒100-0013 東京都千代田区霞が関 3-2-2 Tel: 03- E-mail: [email protected]A comparison of the top journals of Japan and
China, focusing on the top impact factor journals
by field and analysis of top journals of China
HAYASHI Kazuhiro)
National Institute of Science and Technology Policy 3-2-2 Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo 100-0013 Japan Phone: +81-3-3581-0605 E-mail: [email protected] 【発表概要】 その国の研究力を測る手段として、研究論文数が取り上げられることが多いが、そ の国の学会を中心とした研究者コミュニティが主体的に編集に携わるジャーナル(自 国ジャーナル)の数やそれらの質も、研究力を測る一つの指標となりうる。今回、クラリ ベイトアナリティクス社のジャーナルインデックスの中で、分野別のインパクトファクター 上位25%(Q1 ジャーナル)の雑誌群をその分野のトップジャーナルとみなし、その数と 内容を国別に分析することで、その国の研究力や特徴に関する示唆を得ることができ ると考え、2000 年以降の Q1 ジャーナル数の推移を日本と中国に絞って調査・比較し た。その結果Q1 ジャーナル数において 2010 年代に日中の逆転が起こり、また、 2018 年には 3 倍以上の差が生まれていることが分かった。また、中国の Q1 ジャーナ ルは、2000 年代後半より戦略的な創刊、ないしはプラットフォーム移行がなされている ことが示唆され、欧米の商業出版社との提携が多いことなどがわかった。 【キーワード】 自国ジャーナル、トップジャーナル,インパクトファクター,Q1 ジャーナル,日中比較 1. はじめに 科学技術政策づくりにおいて、データ やエビデンスに基づく政策立案がより重 視される傾向にある。[1]そして、その国 の研究力を定量的に測る手段として、研 究論文数が取り上げられることが多く、さ まざまな国際比較がすでに行われてい る。[2] その一方で、その国の学会を中心とし た研究者コミュニティが主体的に編集に -55- 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集
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携わるジャーナル(自国ジャーナル)の 数やそれらの質も、研究力を測る一つの 指標となりうる。なぜなら、質の高いジャ ーナルを保持していることは、その分野 の研究コミュニティから多数の良質な原 稿を集められること、また、編集母体とし て著名な研究者からなる編集委員会の 構成などによる質の高い査読を行える体 制を持つことを意味するからである。特 にその分野のトップジャーナルにおいて は、世界中から最先端の原稿が集まり、 また、その掲載論文が多くのインパクトを 得ることでそのジャーナルのインパクトフ ァクターが高くなる。 ここで、クラリベイト・アナリティクス社の ジャーナルインデックスに存在する分野 別のインパクトファクターに着目した。単 純なインパクトファクターの序列には全く 意味がないが、150 程度にカテゴライズ された分野別の上位25%(Q1 ジャーナ ル)の雑誌群をその分野のトップジャー ナルとみなした上で、その数と内容など を発行主体の国別に分析することで、そ の国の研究力や特徴に関する示唆を得 ることができると考えた。今回は、その試 行として、近年発展が著しい中国と日本 の比較を行った。 2. 調査手法 まず、調査対象として、クラリベイト・ア ナリティクス社のSCIE(Science
Citation Index Expanded)と
SSCI(Social Science Citation Index)
に掲載されているジャーナルを2019 年 12 月 25 日に検索した内容を分析した。 なお、 バージョンとしては、10 月 11 日 アップデート版であった。 このデータを用い、1.日中の Q1 ジャー ナルの数を1997 年から各年ごとに集計 した。また、2.インデックスされている、す なわちインパクトファクターが付与されて いるジャーナルの総数を2000 年から 5 年おき(最新は2018 年)に集計して参 考値とした。 3. 結果と考察 A Q1 ジャーナルと総インデックス数の 推移 日中のQ1 ジャーナル数の推移を図 1 に、総インデックス数を図2 に示す。図に 示すとおり、日本が10−20誌の間で漸 増傾向で推移しているのに対して、中国 は 2008 年ごろまでは数が少なかったが、 その後急速に数を伸ばし、2014 年に日 本を逆転し、2018 年には 55 誌と日本の 15 誌と 3 倍以上の差があることがわかっ た。図2 に示すとおり総インデックス数は まだ日本が多い状況であるが、中国の Q1 ジャーナルが急速に増えていること は注目に値する。 5 9 11 12 9 1111 9 10 5 8 8 9 1113 181817 15131815 1 1 0 1 0 1 1 2 1 3 2 2 7 5 91213 2828 39 5055 0 10 20 30 40 50 60 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 Japan China 図1 日中のQ1 ジャーナル数の推移 159 167 214 247 252 47 78 132 195 214 0 50 100 150 200 250 300 2000 2005 2010 2015 2018 Japan China 図2 日中の総インデックス数の推移 -56- 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集
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表1 中国の Q1 ジャーナルの詳細(一部抜粋) No タイトル 総引用数インパクトファ クター プラッ トフォー ム 創刊年 現プラッ ト フォーム での出版 開始年* 移行時の 巻 2 0 0 6 年 以降の 創刊 2 0 0 6 年 以降に 移行 URL
1 CELL RESEARCH 15,131 17.848 Nature 1990 2001 vol 11 https://www.nature.com/cr/
2 FUNGAL DIVERSITY 4,234 15.596 Springer 1970 2010 vol 40 〇https://link.springer.com/journal/13225
3 Light-Science &Applications 5,894 14.000 Nature 2012 2012 〇 https://www.nature.com/lsa/
4 National Science Review 1,842 13.222 OUP 2014 2014 〇 https://academic.oup.com/nsr
5 Molecular Plant 9,274 10.812 Cell Press 2008 2008 〇 https://www.cell.com/molecular-plant/home
6 Nano-Micro Letters 2,209 9.043 Springer 2009 2009 〇 https://www.springer.com/journal/40820
7 Nano Research 16,517 8.515 Springer 2008 2008 〇 https://www.springer.com/journal/12274
8 Cellular & MolecularImmunology 4,058 8.213 Nature 2003 2008 vol 5 〇https://www.nature.com/cmi/
9 Protein & Cell 3,243 7.575 Springer 2010 2010 〇 https://link.springer.com/journal/13238
10 GENOMICS PROTEOMICS &BIOINFORMATICS 1,612 6.597 Elsevier 2003 2003 https://www.journals.elsevier.com/genomics-proteomics-and-bioinformatics
B 中国 Q1 ジャーナルの分析 2010 年頃からの中国の躍進の理由 を探るために、2018 年の Q1 ジャーナ ル 55 誌(うち一誌は二つのカテゴリ ーにQ1 ジャーナルとして入っている ためにユニークジャーナル数として は 54 誌)について、発行タイトル、 発行年、最新電子ジャーナルプラット フォーム、プラットフォーム移行年な どを1 タイトルごとに目視で調査した。 その結果の一部を表1 に示す。 その結果、中国のQ1 ジャーナルが 欧米の電子ジャーナルプラットフォ ームを利用している傾向にあったの で 集 計 し た 。( 図 3 )図 3 の通り Elsevier 社を筆頭に欧米の大手商業 出版社との提携が多く、同じく欧米の 学会出版系、大学出版系の出版者との 連携もみられ、中国ないしは香港を拠 点としているプラットフォームは3 誌 ( Translational Lung Cancer Research(GLOBAL SCIENCE PRESS) 、 JOURNAL OF COMPUTATIONAL
MATHEMATICS (AME publishing company) 、 Cancer Biology & Medicine(original))であることがわ かった。 また、比較的最近創刊されたジャー ナルが多く、また、創刊年が古いジャ ーナルも、比較的最近欧米出版社のプ ラットフォームに移行していること がわかったので、創刊年ないしは、プ ラットフォーム移行年を推定して集 計したものが図4である。推定の方法 は、登載コンテンツの年ごとの登載状 況(利用サーバー,目次の体裁)の変 化、及び本文の体裁の変更などから、 移行年を総合的に推定した。その結果、 2000 年代後半から創刊ないしはプラ ットフォーム移行を行っているQ1 ジ ャーナルが多く、2006 年以降に創刊 したジャーナル(26)ないしは、プラ ッ ト フ ォ ー ム 移 行 し た ジ ャ ー ナ ル (14)の割合は 72%(39/54)になるこ 図3 中国 Q1 ジャーナルの利用プラッ トフォーム -57- 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集
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とが分かった。 以上の結果より、中国においては、 2000 年後半より、欧米出版者との連 携を戦略的に強め、新刊ジャーナルの 発行を推し進めた。加えて、既存のジ ャーナルも欧米出版者プラットフォ ームへの移行を進めた。この二つの戦 略が、Q1 ジャーナルの増加に結びつ いていることが強く示唆された。 4. おわりに 分野ごとに区切った場合でも、インパ クトファクターが高い雑誌が本当に良い 雑誌かどうかは議論があるところではあ るが、今回の調査で高インパクトファクタ ー雑誌を獲得する中国の戦略の一端を 外形的なデータを用いて知ることができ た。 また、本調査は国と調査内容を絞って 試行的に行ったものであり、今後、他の 国と比較をすることや、各国の自国トップ ジャーナルそれぞれに掲載された論文 の数や質を分析することで、その国の研 究力に対するさらなる示唆を得られること が考えられる。 5. 参考文献 [1] 内閣府における EBPM への取組 https://www.cao.go.jp/others/kichou/ ebpm/ebpm.html [2] 科学技術・学術政策研究所 論文 ベンチマーキング調査専用ページ https://www.nistep.go.jp/research/sc ience-and-technology-indicators-and -scientometrics/benchmark -58- 第17回情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集