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同級生の日本語母語話者との会話に見られる留学生の普通体使用 ――言語社会化の観点から――

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(1)(日本語教育 172 号 2019.4). 〔調査報告〕. 同級生の日本語母語話者との会話に見られる 留学生の普通体使用 ――言語社会化の観点から――. 奥 西 麻 衣 子 要 旨 本稿では,留学生と同級生の日本語母語話者との雑談を二回にわたって観察し,留学 生のスタイル使用および普通体の運用がどのように変化していくのかを,言語社会化 (Schieffelin & Ochs, 1986)の観点から分析し,考察した。結果,来日直後の留学生の発話に はスタイルの混用が散見されたが,2 か月後はほぼ一貫して普通体を用いるようになって いた。普通体の使用傾向においては,普通体の様々な対話機能を用いて会話を行う様子が 観察された。このことから,目標言語コミュニティの熟達者(同級生の日本語母語話者)と の日常的な相互行為実践が学習者のバリエーション習得に影響を与えていることが示唆さ れた。 【キーワード】 スピーチスタイル,普通体,言語社会化,指標性,接触場面. 1.はじめに 日本語の話しことばには「丁寧体/普通体」というスピーチスタイル(以下,スタイル) の区別があり,日本語学習者にとって習得が困難な項目の一つである。日本語母語話者は 社会化する中で多様な話し方を身につけていく(渋谷,2007:6)が,学習者の場合はどう だろうか。本稿はこの疑問を端緒とし,来日して間もないマレーシア人留学生を対象に留 学環境下で彼らのスタイルがどのように変化していくかを観察する。二つのスタイルのう ち,主な観察対象は普通体である。普通体は,友人や家族の間で使われているように相手 への親しさを示し,相手の語りを促す社会的な機能を有する(Cook, 2002;Taguchi, 2015)。 良好な人間関係を築き維持していくには,スタイルのこうした機能を学ぶことも重要であ るが,現在の日本語教育の現場では丁寧体の使用が中心であり,普通体に馴染みの薄い学 習者は少なくない(Matsumoto & Okamoto, 2003)。また,従来のスタイル習得研究は,目上 の相手との会話や初対面会話など丁寧体の使用が期待される会話データを扱ったものが多 く,普通体基調の会話を分析した研究はきわめて少ない。 そこで本稿は,留学生と同級生の日本語母語話者との雑談を二回にわたって観察し,留 学生のスタイル使用と普通体の運用に見られる通時的変化を明らかにし,今後のスタイル 『日本語教育』172号(2019.4). - 134 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(2) 教育のあり方を検討する。次の 2 では,本稿が拠って立つ言語社会化理論について,その 中核概念である指標性に触れた上で,概略を説明する。 2.本稿の立場:言語社会化の観点から見たスタイル研究 本稿は,スタイルを捉える概念として, 「指標性(indexicality)」 (Silverstein, 1976)を援用 し分析を行う。指標とは, 「私」がそれを発する「話し手自身」を示すように,コンテクスト に依存する形で実際の意味が生まれ,コンテクストによって変化することをいう。人称代 名詞などコンテクスト内に具体的な指示対象が存在するダイクシスがその典型例である が,日本語のスタイルのように,指示対象が存在せず,会話が交わされるそのコンテクス ト内に逆に指示対象を作り出す役割を果たすものもある。例えば,丁寧体は一般に「場面 の改まり」や「丁寧さ」を表すが,親しい相手に使う場合は「冗談」の意味にもなりうるよ うに,話者の状況,立場性や相手との関係性と深く関係している。クック(2014:83)は, こうした「言語形態を使用して適切な社会的範疇を指し示し,構築するための知識」を「指 標的知識」とし,形態学的に複雑な日本語では特に重要な概念であるとしている。 このように日本語のスタイルは丁寧度の度合いだけでなく,話者の状況などをも示しう るものであるため,学習者にとって習得が困難である。しかし多くの場合,スタイルにつ いての指標的知識が日本語の教室で教えられることは少ない(Cook, 2016)。Schieffelin & Ochs(1986)は,指標的知識は,子どもが周囲の大人とのやり取りを通して成長していくよ うに,目標言語コミュニティに新たに加わった「新参者(novice)」 が「熟達者(expert)」と の相互行為を重ねることにより,そこで必要とされることばの適切な使い方と社会文化的 知識(1)を学び,成員となっていく「言語社会化(language socialization)」の過程で培われる と論じている。新参者は,熟達者との日常的なやり取りを通して人々がどのような言語行 動をとり,それがどのような規範に基づいているかを観察し,ことばと意味のつながりを 学んでいくのである。 本稿はこの概念を第二言語習得に応用し, 「大学」という目標言語コミュニティの新参者 である留学生が,熟達者である同級生の母語話者との相互行為実践によってどのようにス タイルを習得していくかを,普通体の使用に着目し分析したものである。対象者の留学生 は,JFL の教室環境において 3 年間の学習歴があり,中上級レベルに達している。しかし, Matsumoto & Okamoto(2003)が指摘するように,教室では丁寧体に比べ,普通体に触れる 機会は乏しい傾向にある。また,彼らの来日前の状況は,日本語で話す相手が日本人教師 やマレーシア人教師にほぼ限られていたことから,インプットもアウトプットも丁寧体が 主だったと推察される。そのような学習者が普通体をいかにして習得していくのか,探る 余地がある。 3.先行研究 3-1 普通体の機能に関する先行研究 普通体の機能的特徴を解明しようとした先駆的研究に,Maynard(1993)がある。Maynard は,日常会話や書きことばデータから,普通体は文末詞(「ね/よ」等の終助詞, 「から/け ど」等の接続詞)等の談話標識を伴ったもの(例:明日授業があるよね。)と,それらが付加 『日本語教育』172号(2019.4). - 135 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(3) されない言い切りの形である「裸の普通体(2)」 (例:明日授業がある。)に分けられ,後者は 聞き手に対する意識が低いときに使われるとしている。 Maynard をふまえ Cook(2002)は,指標性の観点から,会話の参加者が自身の立場や相手 との関係を示すリソースとして普通体を用いる様相を質的に観察している。Cook による と,日常会話にのみ文末に付加される終助詞や上昇音調などの要素が見られたことから, これらは,普通体と共起することで聞き手への情意的態度(affective stance)を指標すると いう。そのため,通常相手と親しい関係や心理的に近い関係である場合に用いられる。一 方,新聞記事やインタビュー会話においては,これらの要素を伴わない普通体が発話の繰 り返しや言い換え時に用いられていたことから,話し手の焦点が情報内容に向けられてい ることを指標すると論じている。 Maynard,Cook にさらなる検討を加えた岡崎(2016,2018)は,普通体基調・丁寧体基調 の会話データから詳細な分類を試み,裸の普通体,上昇音調など様々な形態的・音声的特 徴によって普通体の分類基準を提示している。 以上をまとめると,普通体は,発話されたコンテクストによって聞き手目当てのものと それが希薄なものとに分けられ,前者の場合,終助詞など特定の要素を伴うことにより聞 き手への情意的態度が指し示され,後者は発話の情報内容への焦点化を示し,相手への親 しみを表したり,相手の語りを促す機能があることがわかった。 3-2 日本語学習者の普通体使用に関する先行研究と本稿の研究課題 学習者の普通体使用に関する研究は,初対面会話をデータに,丁寧体からのスタイルシ フト現象の中で出現した普通体を考察したものが多く(陳,2003 など),普通体基調の会話 を扱い,その運用面について着目した研究は数少ない。 McMeekin(2014)は,英語を母語とする中上級レベルの留学生 5 名とホストファミリー との日常会話を観察し,最長 8 週間にわたる縦断データから普通体使用の変化を記述して いる。結果,5 人中 4 人に普通体の増加が見られたが,8 週目の時点でも丁寧体が 7 割以上 を占め,普通体は 1 割程度しか使われていなかった。次に,普通体の使用傾向としては,相 手発話の繰り返し,聞き返しといった意味交渉の際に顕著に使われていたが,終助詞「ね」 の使用が 2 か月後もわずかであったことから,普通体が情意的態度を指標することが理解 されていなかったのではないかと考察している。 同様にホストファミリーとの日常会話を観察した Cook(2016)は,英語を母語とする中 級レベルの留学生 2 名のスタイル使用を 5 か月間記録している。結果,5 か月後は 2 名とも 普通体使用が増えていたものの,丁寧体へのシフトも依然多く見られ,また普通体発話に 終助詞の「ね」等が付加されていないために不自然な箇所が散見されたという。 二つの研究は,時間を経てもなお丁寧体の出現頻度が高く,聞き手目当てであることを 指標する普通体の使用例が少ないという結果になっている。それには,主たる会話の相手 がホストマザーという,留学生よりも年齢が「上」の相手であったことが少なからず影響 していた可能性がある。McMeekin(2014:13-14)では, 「ホストファミリーに失礼な印象 を与えたくないから丁寧体を使っている」という声が報告されており,Cook でも,幼いホ ストブラザーに終始普通体を使用していた一方で,ホストマザーに対しては丁寧な態度で 『日本語教育』172号(2019.4). - 136 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(4) 応じるべきと考え,あえて丁寧体を用いていたとする。留学生が「丁寧体で話すべき人物」 として相手を認識していたのであれば,そもそも普通体自体使われにくいだろう。 Taguchi(2015)は,普通体の情意的機能も観察の範疇とするためには,普通体が用いら れやすい関係が近い話者同士の会話で見る必要があると指摘している。Taguchi では,留学 生 18 名の友人同士の会話データから,終助詞,上昇音調などの情意的要素を含んだ普通体 発話を量的に抽出し,来日直後から 12 週間後の変化を観察している。結果,普通体の増加・ 丁寧体の減少が見られたが,情意的機能を有する普通体発話についてはわずかに増加した だけだったとする。 Taguchi の調査は,普通体の情意的機能も注意深く観察した数少ない研究であるが,会 話データは「友人」として話すよう指示されたロールプレイ会話で,参加者同士は実際の 友人関係にはなく現実の場面に則していない。また,非母語話者同士の会話であるため, (ファン,1999)の特徴を反映した結果とも考えられる。McMeekin 第三者言語接触場面(3) (2014:31)で, 「同年齢の日本語母語話者との会話で見れば,普通体の使用実態も異なり うる」と述べられているように,普通体の使用形態を捉えるためには,普通体が基調とな る場面で,かつ母語話者との会話で観察する必要があるが,この条件で見たものは管見の 限りない。以上の課題を踏まえ,本稿では以下の課題を立てた。 課題 1.同級生の日本語母語話者との会話に見られる留学生のスタイル使用にどのよう な変化と特徴があるか。 課題 2.同級生の日本語母語話者との会話に見られる留学生の普通体使用にどのような 変化と特徴があるか。 4.研究方法 4-1 データの概要 調査参加者は,マレー語を母語とするマレーシア人留学生 5 名(男性 3 名,女性 2 名(4)) である。2017 年 3 月に来日後,4 月より関東圏の大学に編入学し,調査開始時点は学部 3 年 生であった。全員,来日前に予備教育機関にて 3 年間の日本語学習を経験しており,日本 語能力試験 N2 を取得済みであることから中上級レベルと判断した。会話相手には,留学 生の同級生である日本語母語話者 5 名から協力を得た。留学生とは同じ大学の学科,コー ス,学年に所属し,週一回以上大学の内外で会って話をする関係で,同性・同年齢(調査 開始時点で 20 歳〜 21 歳)である。収集データは,留学生と同級生の日本語母語話者による 20 分間の一対一の雑談で,同じペアによる会話の録音を来日初期と 2 か月後の計二回行い, 合計 10 本の会話を収集した。収集時期は,1 回目が 2017 年 5 月〜 6 月,2 回目が 2017 年 7 月 〜 8 月である。集めた音声データは,高木他(2016)を参考に文字化を行った(5)。 4-2 分析方法 4-2-1 スタイルの分類 前提として,本稿は丁寧体・普通体を総称して「スタイル」と呼び分析を行う。分析の単 位は発話文(6)とし,全発話文を「丁寧体」 「普通体」 「中途終了」に分類した。 「丁寧体」 「普通 体」の分類には,言い切りの形だけでなく,文末詞が付加された発話文も含まれる。また, 『日本語教育』172号(2019.4). - 137 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(5) スタイルの認定は文末述部に用いられたものを原則とするが,質問への応答として発話さ れた応答詞(「うん/はい/いや/いいえ」)の場合は岡崎(2016,2018)に倣い対象に含め た。 「中途終了」は,言いよどみや聞き手に遮られた発話など文末まで言い切らず終了した 発話を指すが,スタイルが不明であるため,分析対象とせず総発話数を算出する際にのみ 用いた。二次評定者として,日本語教育を専門とする日本語母語話者 1 名が全発話の 2 割 を判定した結果,筆者との一致率は 96.6% であった。分類の後, 「丁寧体」 「普通体」の二つ のスタイルの使用率を算出し,1 回目と 2 回目を比較した。 4-2-2 普通体の発話タイプ 3-1 において,普通体は聞き手目当てであるか否かにより,さらに下位分類ができるこ とを述べた。岡崎(2018:22)では前者を「聞き手に対して強く意識が向けられて」いるも の,後者を「発話の情報内容へ向けられて」いるものと説明していることをふまえ,本稿で は,聞き手に対する意識が強く,聞き手と親しい関係,心理的に近い関係であることが指 標される普通体発話を「聞き手目当て型」,聞き手に対する意識が希薄であり,話し手の意 識が発話の情報内容へ向けられていることが指標される普通体発話を「情報焦点型」と呼 び分析に用いることとする。各タイプの分類は,岡崎の枠組みを援用した分類基準(表 1) に基づいて行い,それぞれの使用率の変化を算出し,1 回目と 2 回目を比較した。4-2-1 と 同様に,二次評定者 1 名が全普通体発話の 2 割を判定し,筆者との一致率 99.3% を得た。 なお,これに該当しないものとして独り言のように発せられる「独話的発話(以下,独 話)」も見られたが,紙面の都合上本稿では扱わず総発話数を算出する際にのみ用いた。ま た,母語話者については顕著な変化が見られなかったため,平均値で示すこととした。 表 1 普通体の分類基準(岡崎,2016,2018 をもとに筆者改定) 情報焦点型. 聞き手目当て型. 繰り返しや共同発話(7)など,聞き手ではなくや 相手の質問に対し答える発話(ただし,言い直 り取りされる情報について述べられた発話 し要求に対する言い直し発話は情報焦点型) 裸の普通体 例)A:(速度制限が)ほんとは 80 なんだよ . 例)A:あれ,明日バイト? B:ほんとは 80. B:あした::,ない . 「から / けど / し」を伴う発話 文末詞. 上昇音調. 例)なんかまだ hh まだ遊びたい気持ちある hh,けど .. ・「ね / よ / の / さ / じゃん / でしょ」を伴う発話 ・質問に用いられる「か / な / っけ」を伴う発話 例)でもやっぱり夏が:,暑いね . 例)明日バイト休みだっけ .. 相手の発話またはその一部を繰り返すことで聞 相手に質問を投げかける発話 き返しを行う発話 例)A:僕はパンピーだから . 例)A:何が専門? B:パンピーラ? B:情報処理 . A:パンピー .. *発話例はすべて本稿のデータから抜粋. 5.結果と考察 5-1 研究課題 1. 留学生のスタイル使用の変化. 2 か月後の変化を見ると,丁寧体の使用率は 16.2% 減少していた。一方,普通体の使用率 は 20.1% 増加し,8 割近い使用が見られた(表 2)。. 『日本語教育』172号(2019.4). - 138 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(6) 表 2 各スタイルの使用率の変化(8) 留学生. 丁寧体. 普通体. 中途終了. 計. 1 回目. 21.7%(238). 59.2%(650). 19.1%(210). 100%(1098). 2 回目. 5.5%(51). 79.3%(741). 15.3%(143). 100.1%(935). 1.0%(12). 87.0%(1056.5). 12.0%(146). 100%(1214.5). 母語話者. *括弧内は回数を表す(以下同様) *母語話者の数値は計二回の平均値で表示(以下同様). 当初の予想に反し,1 回目の時点において全体の半数以上を普通体が占め,来日初期の 時点で普通体を基調スタイルとして用いていた。しかし,その割合は母語話者が 8 割強用 いていたのに対し,留学生は 6 割に満たない。そこで,1 回目のデータを見ていくと,丁寧 体と普通体の混用が全員に共通して散見された(会話例①)。 会話例①(M1 と J1 の会話:1 回目) →. 01. M1. え,家族と暮らしてるんですか?. 02. J1. 一人暮らし .. 03. M1. 一人暮らしですか?. 04. J1. そうそうそう .. 05. M1. へ:.. 06. J1. さっきも言ったんだけど,あの,出身,出身した,島が(あ:),すごく遠いから,すごく遠い. 07. J1. 08. J1. とても遠いから住めないの一緒に hh.. →. 09. M1. あ:すごいね:h.. →. 10. M1. なんか,え:と,一人暮らしな:なんか,おか,お金は大丈夫ですか?. 11. J1. お金?. 12. M1. いや,お金の問題とか .. →. んだよ .. →. すごく遠いの,ここ,俺の島で,ここ日本みたいな感じだから .. * M は留学生,J は日本語母語話者を示す(以下同様) *点線は丁寧体,一重線は普通体を示す(以下同様). 1 回目の会話における M1 の普通体使用率は 60.4% であった。会話例を見ると,09 と 12 で普通体が使われている。このように同級生との会話で普通体が使えているということ から,この時点ではすでに,普通体の使用に関して目標言語コミュニティへの社会化が一 定程度起こっていると言えよう。ただし,スタイルの混用,特にスタイルシフトという観 点から見ると,M1 の言語使用には母語場面と異なる傾向が見られる。つまり,会話例の 01,03 では丁寧体を使って質問をしているが,09 では「すごいねー」と述べ,基調スタイ ルの普通体に戻っている。しかし 10 で,言いよどみが続いたあとに「大丈夫ですか?」と 尋ね再び丁寧体にシフトしている。このような丁寧体へのシフト,すなわちアップシフト は,母語場面の先行研究によれば,冗談(大津,2007)や話者が責任を伴った行動をすると き(クック,2014)など,何らかの社会的意味を指標するときに使われるとされている。し かし,本稿の留学生のアップシフトにおいては,質問発話や「はい」などの応答発話といっ た形式的なパターンが見られ,母語場面の傾向とは異なっていた。このような母語話者の 規範と異なるアップシフトの使用パターンは,来日初期の時点で普通体を使い慣れていな かったことが関係していると思われる。スタイルは話の命題以外の部分であり,日本語の 『日本語教育』172号(2019.4). - 139 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(7) スタイルは主に文末に位置するため,学習者にとっては意識を向けにくい。また, 「〜です か」→「はい/いいえ」のような質問応答は教室場面で頻繁に交わされる表現であり,反射 的に丁寧体を用いていた可能性もある。スタイルを文脈に応じて使い分けるには,形式的 知識・社会文化的知識だけでなく,相互行為実践の機会を重ね,指標的知識を身につける ことがきわめて重要であると言えよう。このことは,2 か月後に普通体発話が 8 割近くに のぼった本調査の結果にも如実に現れている。次の会話例は,会話例①と同じペアによる 2 か月後の会話であるが,02,04,06,07 で相手と同様に一貫して普通体を用いていること が窺える。 会話例②(M1 と J1 の会話:2 回目) 01. J1 ((期末試験が))間違いなく二つはとれた .. 02. M1. な,な,なんで?. 03. J1. え?え?間違いなく二つはとれた .. 04. M1. あ:そうか:.. 05. J1. あとはだめだな:.. →. 06. M1. 大変だね,期末 .. →. 07. M1. なんか忙しくなる h.. → →. 時間の経過につれて普通体発話が増加する現象は先行研究でも報告されているが, McMeekin(2014),Cook(2016)の結果と比較すると,各回の使用率・増加率ともに本稿の 結果が大きく上回っていた(9)。これには, 「同級生」との雑談という今回の状況が普通体を 選択する動機として強く働いたものと推察する。会話相手の母語話者は,二回ともほぼ一 貫して普通体を使って話していたことから,普通体が同級生との会話で用いる規範的なス タイルであることを会話を通して暗黙裡に教えていると考えられる。今回の顕著な増加傾 向はそれを反映したものと捉えることができ,留学生はコミュニティの熟達者との日常的 なやり取りを重ねることで普通体の運用力を高めていったと言えるのではないだろうか。 5-2 研究課題 2. 留学生の普通体使用の特徴と変化 続いて,タイプ別の使用率の変化では,1 回目は情報焦点型が最も割合が高く半数以上 を占めていたが,2 回目では 13.7% 減少し,聞き手目当て型が 5.6% 増加していた。一方,母 語話者の方は二回とも聞き手目当て型が最も多く用いられていた(表 3)。 1 回目のデータでは留学生と母語話者で使用される発話タイプに明白な違いが見られ, 母語話者が聞き手目当て型を中心に用いていたのに対して,留学生は情報焦点型を最も多 く使って話していた。しかし,2 か月後は聞き手目当て型の使用率が上昇し,母語話者の使 用形態に近くなっていた。次節で,留学生の普通体発話をタイプ別に分析し,それぞれの 変化と特徴を分析する。. 『日本語教育』172号(2019.4). - 140 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(8) 表 3 普通体発話のタイプ別使用率の変化 情報焦点型 留学生. 聞き手目当て型. 独話. 計. 1 回目. 56.6%(368). 34.5%(224). 8.9%(58). 100%(650). 2 回目. 42.9%(318). 40.1%(297). 17.0%(126). 100%(741). 37.1%(392). 50.8%(537.5). 12.1%(128). 100%(1057.5). 母語話者. 5-2-1 情報焦点型 情報焦点型は,2 回目に減少が見られたものの最も多く用いられていた。どの発話環境 で用いられていたか,情報焦点型の要素別使用率を見ると,二回を通じて使用率が高かっ たのは「裸の普通体」であった(表 4)。 表 4 普通体発話に占める情報焦点型の要素別使用率の変化 裸の普通体 留学生. 文末詞. 上昇音調. 1 回目. 50.6%(329). 2.2%(14). 3.8%(25). 2 回目. 36.0%(267). 3.6%(27). 3.2%(24). 27.5%(291). 3.8%(40). 5.8%(61). 母語話者. 「裸の普通体」は母語話者でも 3 割近く使用されているが,留学生はそれを上回る。情報 焦点型の裸の普通体には繰り返しや共同発話などがあるが,この中で留学生全員に顕著に 用いられていたのは,繰り返し時に用いられた普通体であった。以下はその例である。 会話例③(M1 と J1 の会話:1 回目). →. 01. M1. 塾.. 02. J1. 塾,講師 .. 03. M1. じゅくごうし .. 04. J1. 塾.. 05. J1. A((共通の友人))と一緒 .. 06. M1. あ:そうですか .. 会話例③は M1 が J1 のアルバイトについて尋ねている場面である。J1 の発話(02)に対 し,M1 は「じゅくごうし(03)」と述べ聞き取った内容をそのまま繰り返している。ここで M1 は「塾」という単語は知っているが, 「じゅくごうし」と発音していることから, 「塾講師」 という複合語の意味を知らなかったため,02 で聞き取った内容をそのまま発することで自 身の聞き取りの正否を相手に確認していると推察される。これを受けて J1 は,04 で意味す るところが「塾」であるという確認を相手に与え,さらに「A(共通の友人)と一緒(05)」と いう補足説明を加えることにより,M1 の理解(06)を得ている。 このような繰り返しによる意味交渉は,留学生全員に二回とも頻繁に見られたものであ る。繰り返しは,会話を円滑に進める上で不可欠な作業であり,とりわけ学習者にとって は会話を中断させずに非明示的な形でトラブルを解決する重要な手段である。接触場面に おいては,互いの能力差から会話が停止したり誤解が生じたりするなどコミュニケーショ 『日本語教育』172号(2019.4). - 141 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(9) ン上のトラブルが起きやすい。この結果は学習者の普通体が意味交渉の際に用いられやす いという先行研究の報告(陳,2004;McMeekin, 2014 など)を裏付けるものである。 他方,次の例のように意味交渉以外でも普通体による繰り返しが使われていた。 会話例④(M2 と J2 の会話:2 回目). →. 01. J2. 見た?. 02. M2. まだ .. 03. J2. なんか 8 月 25 日まで .. 04. M2. 8 月 25 日 hhh.. 05. J2. うーん,全然ある h,時間 .. 会話例④は,期末課題の期限について話している箇所である。J2 の期限について述べた 発話(03)を受けて,M2 は笑いを含みながら前の発話を繰り返している(04)。中田(1992: 273-280)は,繰り返しには発話の情報内容に対する話し手の心情や態度を表現する「心情 的機能」があり,相手との共感・一体感を示し,会話にテンポと楽しさをもたらす効果が あるとしている。 本稿の母語話者の全員に同様の繰り返しが多数使用されていたが,留学生は個人差があ り,1 回目は 5 人中 2 人,2 回目は 3 人にしか見られなかった。しかし,1 回目では一度も使 用が見られなかった M2(会話例④)に変化があったことは注目に値する。留学生の母語の 談話特徴など他の要因も考慮する必要があるため一概には言えないが,これには,その場 で話題となっている情報に対する自身の心情を日本語で表現する方法を,母語話者とのや り取りの中で身につけたことが可能性として考えられる。 以上のように,留学生は情報焦点型の普通体をコミュニケーション上のトラブルを解決 する手段や,一部ではあるが会話の内容への反応を表す手段として用いており,会話の展 開を促す言語リソースとして活用していることがわかった。2 回目に裸の普通体が大きく 減少した背景には,2 か月の間に聴解力や語彙力が伸びたことにより,意味交渉の頻度が 少なくなったことが少なからず関係しているとも考えられる。しかしまたそれは,留学生 が目標言語コミュニティにおいて「新参者」 「学習者」という立場から,一人前のメンバー =「熟達者」になっていく過程にあるとも言えよう。 5-2-2 聞き手目当て型 聞き手目当て型は, 「文末詞」と「上昇音調」の二要素の増加が見られた(表 5)。 「文末詞」は 1 回目から 3.2% 増加していた。これは,1 回目では丁寧体もしくは裸の普通 体で用いられていたのが 2 回目で文末詞が付加された普通体が使われるようになったため と考えられる。以下に二つの例を示す。 表 5 普通体発話に占める聞き手目当て型の要素別使用率の変化 留学生. 裸の普通体. 文末詞. 上昇音調. 1 回目. 21.4%(139). 5.4%(35). 7.7%(50). 2 回目. 19.0%(141). 8.6%(64). 12.4%(92). 5.6%(59.5). 31.2%(330). 14.0%(148). 母語話者. 『日本語教育』172号(2019.4). - 142 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(10) 会話例⑤(M3 と J3 の会話:1 回目) でもなかなか:やっぱり,日本で売ってない種類がある, (うんうん)からスーパーとか行っ. 01. J3. 02. M3. う:ん,でも値段が(うん)高いですよね日本では .. 03. J3. そうだね .. 04. J3. 日本,値段が高いよね .. ても:. →. 会話例⑥(M3 と J3 の会話:2 回目). →. 01. J3. うんうんうん . あ:,マレーシアはゴミの分別しないの?. 02. M3. 分別しない h.. 03. M3. それは:,悪いところだよね hh.. 04. J3. hhh しないんだ .. 会話例⑤では,東南アジアの果物について話している。J3 の発話(01)に対し,M3 は「値 段が高いですよね(02)」と丁寧体+文末詞の形で意見を述べている。続く会話例⑥も意見 を述べている箇所である。02 の,マレーシアではゴミの分別をしないという点に関して, M3 は「悪いところだよね(03)」という普通体+文末詞の形で述べている。 次に「上昇音調」に関しては 1 回目から 4.7% 増加していた。1 回目では丁寧体で質問発話 をしていたのが,2 回目では普通体を用いた発話が増えたためだろう。以下に例を示す。 会話例⑦(M1 と J1 の会話:2 回目) → →. →. 01. M1. あ:なんの話 h ?. 02. J1. なんの話しようか .. 03. M1. たぶん,じゃあ,期末はどう?. 04. J1. え?. 05. M1. 期末 hhh.. 06. J1. あ:期末ね .. 07. J1. いや:ちょっとやばいね .. 08. M1. ( [ ・・・). 09. J1. [ やばい .. 10. M1. え?なんで?. 会話例⑦は会話例①と同ペアによる 2 回目の会話である。1 回目(会話例①参照)で は,M1 は丁寧体で質問しているが(01,03,10),2 回目では全て普通体で質問をしている (01,03,10)。M1 の質問発話数は,1 回目では質問発話 28 回のうち普通体が 6 回,丁寧体が 22 回であったのに対し,2 回目では 29 回のうち普通体が 26 回,丁寧体は 3 回であった。 以上の結果は何を意味しているか。聞き手目当て型の「文末詞」と「上昇音調」は,相手 に直接的に投げかける発話であるため,話者の親しさが示される発話である。よって心理 的に近い間柄の相手に使われる傾向が強く(Taguchi, 2015),母語話者の普通体発話では二 回とも高い割合で用いられていたものである。この二要素における増加は,相手の母語話 者から聞き手目当て型の普通体のインプットを日常的に受けると同時にアウトプットの機 会も豊富にあったことによると考えられる。聞き手目当て型の普通体を会話参加者の双方 『日本語教育』172号(2019.4). - 143 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(11) で使うことができるのは,基本的に相手と心理的に近い場合に限られる。留学生が普通体 を用いて聞き手に親しみを表せるようになったことを示唆していると言えよう。 しかし,文末詞においては,使用率は依然低い。母語話者の使用率は二回とも 31% にの ぼり三要素中最も高い割合を占めているが,留学生の場合 2 回目でも 9% に満たない。この 結果は,目標言語環境というインプットが豊富な環境下でも,文末詞「ね」等の習得は学習 者にとって困難であるというこれまでの指摘と一致する(楊,2010;Masuda, 2011 など)。 聞き手目当て性の高い文末詞を使うことで相手に親しさを示すことができるが,これが付 加されていない裸の普通体は相手にぶっきらぼうな印象を与えることがある(楊,2010)。 普通体のこうした指標的機能を学習者に示す必要性があると言えよう。 6.まとめと今後の展望 6-1 まとめ 本稿は,同級生との会話における留学生のスタイルの使用および普通体の使用形態につ いて 2 か月後の変化を分析した。その結果,次の点が明らかとなった。 まず,スタイル使用については,ほぼ一貫して普通体を用いるようになっていた。普通 体の使用形態では,情報焦点型の使用率が高く,円滑な会話を行うための重要な役割を果 たしていることが再確認された。また,聞き手目当て型においては増加が見られ,対話者 に積極的に関わろうとする態度や相手への親しみを表す様相が捉えられた。 以上のように,本稿では留学生が普通体を習得していく過程の一端を記すことができ た。これらの変化は,留学環境が学習者のスタイル使用に関する指標的知識の獲得を促 す可能性があることを示している。特に,同級生や友人との会話は,普通体を使って話 す実践的な場として,また親しさを表す方法を学ぶ場として豊富な学びの機会となる。 Schiffelin & Ochs(1986)は,ことばの学習とは,コミュニティで共有されている形式的知 識と社会文化的知識の両方の力を獲得することであり,それは,コミュニティの熟達者と の社会的な相互行為の中でなされるとし,言語習得と社会化は密接不可分であると論じて いる。 本稿の留学生は,ローカルコミュニティの「熟達者」である同級生との日常的なやり取 りを通して,普通体という言語形態を駆使し, 「同級生との雑談というコンテクストでは通 常普通体を用いる」という規範を身につけるとともに,普通体を使って自己表現を行い相 手と活発なやり取りを行う相互行為能力を高めていったと言えるだろう。 6-2 教育上の示唆 現在の教育現場やスタイル研究において丁寧体により比重が置かれやすいのは,丁寧体 を使えば相手に無礼な印象を与えにくく,コミュニケーション上の失敗をしにくいという 考えが背景にあるからだと思われる。しかし,当然のことながら,学習者が日本語で話す のは初対面や目上の相手だけではない。友人,サークル仲間,アルバイト先の同僚など,多 様な社会的ネットワークの中で日本語を使うという現実の状況に照らせば,話せるスタイ ルが丁寧体のみであることも問題を孕んでいるのではないだろうか。学習者が相手とより 親しくなりたいと考えるとき,丁寧体のみで話し続ければ,相手に「距離をとられている」 『日本語教育』172号(2019.4). - 144 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(12) と思われ,関係構築の試みが失敗するおそれもある(Cook, 2008:191)。 本稿は,留学環境という言語リソースが豊富な環境において,熟達者との相互行為実践 が普通体の習得を促す可能性があることを指摘したが,日本語を使う場は日本という地理 的環境だけでなく,また,熟達者も日本語母語話者のみとは限らない。オーストラリアで の実践例を紹介しているトムソン(2016:3)では,日本語の教室にサポート役として上級 生や大学院生など母語,学習経験の異なる日本語の「ロールモデル」が参加し,創造的な ことばの学びをもたらしているとしている。このように日本語が使用される場を「実践コ ミュニティ(community of practice)」 (Wenger et al, 2002)としてデザインすることで,JFL 環境においても多様な「日本語話者」との対話の機会をつくり,スタイル学習のための豊 富なリソースを提供することができるだろう。しかし一方で,熟達者の言語使用を観察し ていても,意識的・無意識的に学習されるものとされないものがあり(Cook, 2016),明示 的な指導がなければスタイルの持つ機能に気づきにくく,適切に使えるようになることが 難しいのも事実である。日本語教育現場では,スタイルの様々な機能についての理解を深 め,実践を通して自分のものにしていくための学習デザインが必要である。 ことばのバリエーションを得ることは自己表現の多様なツールを得ることである。さら に,そのバリエーションに関する指標的知識を得ることで相手との関係性や社会的な文脈 に則して適切なスタイルを主体的に選択できるようになる。学習者が日本語を使って自己 実現を図ることができるような支援がなされねばならないだろう。 6-3 今後の課題 本稿は,留学生のスタイル使用について 2 か月後の変化を観察したが,量的なデータ の分析に留まっている。スタイル習得には,学習者個々人が身を置く環境や相手との親 密度,スタイル使用意識といった個人的な要素が密接に関わっているとする指摘もあり (Taguchi,2015),本稿でもそれらがスタイル使用に影響を与えた可能性は排除できない。 言語社会化の過程をより緻密に捉えるためには,エスノグラフィー,会話分析といった手 法を加え,質的な観点からの分析が必要である。今後の課題としたい。 謝辞 本稿は,平成 29 年度お茶の水女子大学修士論文の一部を加筆修正したものです。調査実 施にあたりご協力くださった協力者の皆様,本稿執筆に際し終始懇切なるご助言と力強い 励ましをくださったお茶の水女子大学の佐々木泰子先生,本林響子先生,ゼミの皆様に心 より御礼申し上げます。また,査読者の先生方には掲載に至るまで多くの有益なコメント を賜りました。記して感謝申し上げます。 注 (1) 社会文化的知識は,あるコミュニティの成員が共有しているとされる社会・文化に関わる 知識を指す。例えば, 「日本社会では,目上の相手に対して敬意を示すために,敬語を使う」 と言うとき,それはその人が日本社会について持つ社会文化的知識である。一方,指標的 知識は,敬語がコンテクストに応じて「敬意」を指し示したり, 「冗談」を指し示したりする 『日本語教育』172号(2019.4). - 145 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(13) ように,コンテクストを媒介としてことばが何を指標するかについての知識である。 (2) 別稿のメイナード(1991:76)では「裸の “ ダ体 ”」と記述されているが,本稿では「裸の普 通体」の同義語とみなしている。 (3) 第三者言語接触場面とは, 「参加者いずれもが母語ではない第三者の言語によってイン ターアクションを行う場面」 (ファン,1999:37)である。ファンは,日本語の第三者接触 場面の特徴として,1)弱い基底規範しか存在せず,日本語以外の言語リソースも積極的に 用いられること,2)言語のホスト-ゲスト関係が成立しないため,両者が調整ストラテ ジーを用いること,3)すべての逸脱を解決しようとせず,会話の進行を優先することをあ げている。 スタイルにおける性差の影響について,陳(2003),宮武(2007)は日本語母語話者の使用に (4) 明確な男女差がなかったと報告している。よって本稿も性別によるデータ統制はしていな い。 文字化に用いた記号 (5) ./,. 発話の終わり/切れ目. ?. 上昇音調. (...). 聞き取り不可能. (. ) h. ((. )). 相手によるあいづち. :. 音の引き伸ばし. 笑い. [. 発話の重なり. 筆者による補足. (6) フィラー,あいづち表現,感動詞,挨拶表現,非文や聞き取り不可能な箇所,また,従属節 の節末部分(例:今日は日曜だから,仕事は休み。)は発話文の認定対象外とした。 (7) 「共同発話」とは,はっきりと相手に向けて発されたのでなく,話者同士が共同で発話行為 を完成させている発話である(メイナード,1991:76)。 (8) 表 2- 表 5 の百分率の計算では,小数点第 2 位を四捨五入した。このため,計は必ずしも 100% にならない場合がある。 (9) 1 回目と 2 か月後の普通体の使用率は,McMeekin(2014)では平均 3.4% →平均 7.5%,Cook (2016)は 55.7% → 64.3% という結果となっている。 参考文献 大津友美(2007) 「会話における冗談のコミュニケーション特徴―スタイルシフトによる冗 (1) 談の場合―」 『社会言語科学』10 号(1),45-55. 「日本語の雑談における母語話者と上級学習者によるスタイルシフトの研究 (2) 岡崎渉(2016) ―非デスマス形の指標的機能の観点から―」 『広島大学大学院教育学研究科博士論文』 「非デスマス形の機能による分類方法の検討―情意的態度と聞き手目当て性 (3) 岡崎渉(2018) の観点から―」 『兵庫教育大学研究紀要』52 号,19-31. (4) クック峰岸治子(2014) 「言語社会化理論における指標研究と第二言語習得」 『第二言語とし ての日本語の習得研究』17 号,80-96. 渋谷勝己(2007) 「なぜいま日本語バリエーションか」 (5) 『日本語教育』134 号,6-17. (6) 高木智世・細田由利・森田笑(2016) 『会話分析の基礎』ひつじ書房 「同年代の初対面同士による会話に見られる「ダ体発話」へのシフト―生起 (7) 陳文敏(2003) しやすい状況とその頻度をめぐって―」 『日本語科学』14 号,7-28. 陳文敏(2004) 「台湾人上級日本語学習者の初対面接触会話におけるスピーチレベル・シフ (8) 『日本語教育』172号(2019.4). - 146 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(14) ト―日本語母語話者同士による会話との比較―」 『日本語教育論集』20 号,18-33. (9) トムソン木下千尋・尾辻恵美・片岡裕子・クリステンセン井関資子・小島卓也・佐藤慎司・ 島崎薫・ダグラス昌子・當作靖彦・毛利珠美・ロビン・スペンスブラウン(2016) 『人とつ ながり,世界とつながる日本語教育』くろしお出版 (10) 中田智子(1992) 「会話の方策としてのくり返し」国立国語研究所(編) 『国立国語研究所報 告 104 研究報告集』13 号,267-301. (11) ファン,S.K. (1999) 「非母語話者同士の日本語会話における言語問題(<特集>日本の言 語問題)」 『社会言語科学』2 号(1),37-48. 「日本人友人間の会話におけるスピーチレベルの使用実態」 (12) 宮武かおり (2007) 『TUFS 言語 教育学論集』2 号,19-31. (13) メイナード,K・泉子(1991) 「文体の意味―ダ体とデスマス体の混用について―」 『月刊日 本語』20 号(2),75-80. (14) 楊虹(2010) 「中国人日本語学習者の終助詞の使用に関する一考察」 『お茶の水女子大学人文 科学研究』6 巻,199-208. (15) Cook, H. M.(2002)The social meanings of the Japanese plain form. Japanese/ Korean Linguistic, 10, 150-163. (16) Cook, H. M.(2008)Socializing identities through speech style: Learners of Japanese as a foreign language, Bristol, United Kingdom: Multilingual Matters. (17) Cook, H. M.(2016)Adult L2 learners’ acquisition of style shift: The masu and plain forms. In Minami, M.(eds.), Handbook of Japanese Applied Linguistics, 6, De Gruyter Mouton. 151-174. Masuda, K.(2011)Acquiring Interactional Competence in a Study Abroad Context: Japanese (18) Language Learners’ Use of the Interactional Particle “ne”, The Modern Language Journal, 95(4), 519-540. Matsumoto, Y. & Okamoto, S.(2003)”The Construction of the Japanese Language and Culture in (19) Teaching Japanese as a Foreign Language”, Japanese Language and Literature, 37, 27-48. (20) Maynard, S.( 1993)Discourse Modality: Subjectivity, Emotion and Voice in the Japanese Language. Amsterdam: John Benjamins. McMeekin, A.(2014)Japanese Learners’ Indexical Uses of the da Style in a Study Abroad Setting. (21) Japanese Language & Literature, 48, 1-38. (22) Schieffelin, B. B., & Ochs, E.(1986)Language socialization. Annual Review of Anthropology, 15, 163-191. Silverstein, M.(1976)Shifters, linguistic categories, and cultural description, In K. Basso & H. (23) Selby(eds.), Meaning in anthropology, University of New Mexico, 11-55. Taguchi, N.(2015)Developing interactional competence in a Japanese study abroad context, (24) Bristol, United Kingdom: Multilingual Matters. Wenger, E. & McDermott, R. & Snyder, W. M.(2002)Cultivating communities of practice. (25) Boston: Harvard Business School Press.(野村恭彦監修・櫻井祐子訳[2002] 『コミュニティ・ オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践―』翔泳社) . (お茶の水女子大学大学院生) 『日本語教育』172号(2019.4). - 147 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(15) The Use of the Plain Style by Japanese Learners in Conversations with Japanese Classmates: Drawing on Language Socialization Framework OKUNISHI Maiko This paper draws on the language socialization framework(Schieffelin & Ochs, 1986)to examine how the use of speech styles, specifically the plain style, changes among five students studying in Japan during a period of two months. Conversations between the Japanese learners and their Japanese classmates were recorded. The data shows that although the students primarily mixed the two styles, after two months all students used the plain style almost consistently in their conversations. Concerning the use of the plain style, they employed various interactional functions of the plain style in conversations. Findings suggest that daily interactions with “experts” in the target language community, i.e., the Japanese native classmates, contribute to acquisition of Japanese variation. . (Graduate School, Ochanomizu University). 『日本語教育』172号(2019.4). - 148 -. ONLINE ISSN: 2424-2039 発行:公益社団法人日本語教育学会.

(16)

表 2 各スタイルの使用率の変化 (8) 丁寧体 普通体 中途終了 計 留学生 1回目 21.7% (238) 59.2% (650) 19.1% (210) 100% (1098) 2回目 5.5% (51) 79.3% (741) 15.3% (143) 100.1% (935) 母語話者 1.0% (12) 87.0% (1056.5) 12.0% (146) 100% (1214.5) *括弧内は回数を表す(以下同様) *母語話者の数値は計二回の平均値で表示(以下同様)  当初の予想に反し, 1 回
表 3 普通体発話のタイプ別使用率の変化 情報焦点型 聞き手目当て型 独話 計 留学生 1 回目 56.6%(368) 34.5%(224) 8.9%(58) 100%(650) 2 回目 42.9%(318) 40.1%(297) 17.0%(126) 100%(741) 母語話者 37.1%(392) 50.8%(537.5) 12.1%(128) 100%(1057.5) 5-2-1 情報焦点型  情報焦点型は, 2 回目に減少が見られたものの最も多く用いられていた。どの発話環境 で用いられていたか,

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