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糖尿病性足壊疽に対して踵部側面の皮弁を用いたSyme切断を行った1例

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Academic year: 2021

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(1)創傷 12(2):106 - 111, 2021. 106. <症例報告>. 糖尿病性足壊疽に対して踵部側面の皮弁を用いた Syme 切断を行った 1 例 福 原 定 子 *,藤 原 雅 雄 *,藤 高 淳 平 *,牧 野 愛 子 *,鈴 木 茂 彦 * Key Words:足関節切断,Syme 切断,人工真皮. Na 131 mEq/l, K 4.5 mEq/l, Cl 95 mEq/l, CRP 8.64. 序 文. mg/dl, PT-INR 1.02, APTT 27.6sec, HbA1c 8.5 % ,. 糖尿病性足壊疽の治療として,足関節切断はしばし. FBS 449mg/dl。. ば選択される。足関節切断には Syme 切断,Boyd 切断,. 画像所見. 1). Pirogoff 切断がある 。踵骨が残らない場合は Syme. CT 所見:踵骨に近接してガス像が認められた(図. 切断が選択される。. 2)。. Syme 切断では骨を脛骨・腓骨遠位端で切断し,踵. 造影 CT 所見:前脛骨動脈,後脛骨動脈,腓骨動脈. 骨足底部の皮弁で荷重部を作成する。通常,骨断端を. の開存を確認した。. 被覆するのに踵骨足底面の皮弁が用いられる. 1, 2). 。. 超音波検査所見:超音波ドップラーで前脛骨動脈,. 今回われわれは,37 歳,体重 130 kg の糖尿病患者. 後脛骨動脈を聴取可能であった。. の足壊疽に,工夫を加えた Syme 切断を行った。荷重. 入院後臨床経過:WBC,CRP,HbA1c,FBS など. 部に踵部内側面,外側面の皮弁を用いることで,形態. のデータから敗血症の急性期は過ぎたものの,感染コ. 良好な耐荷重性のよい切断端が形成された。室外での. ントロール,血糖コントロールが必要と考えられたた. 義足歩行,室内での裸足歩行が可能という好結果が得. め,フロモキセフナトリウム(FMOX)の静脈投与,. られたため,その詳細について報告する。. インスリンヒト(遺伝子組み換え)注射液の持続静脈. 症 例. 投与を行った。 CT 画像で踵骨に近接してガス像を認め,踵骨周辺. 患者:37 歳,男性。. の軟部組織や踵骨への炎症の波及が疑われた。しかし,. 既往歴:糖尿病。. 踵骨足底の皮膚は健常であったこと,また,造影 CT. 現病歴:患者は引退後の力士で体重 130 kg であった。. で前脛骨動脈,後脛骨動脈,腓骨動脈の開存と,超音. 当院を受診する 2 週間前に左足壊疽で敗血症となり,. 波ドップラーで前脛骨動脈,後脛骨動脈の血流が確認. 近隣の総合病院に入院となった。入院翌日に,感染コ. されたことから,虚血ではなくおもに感染による壊死. ントロール目的で足関節レベルでの切断術が施行され. と判断した。本症例を経験した時点では,当院には皮. た。全身状態が落ち着いたのちに左下腿切断を行うこ. 膚灌流圧(skin perfusion pressure; SPP)を測定する. とをすすめられたが,本人は下腿切断を拒否し,他の. 器械がなかったため SPP 評価はできなかった。足背. 選択肢を求めて当院を受診した。. 動脈は前医で切断されていた。足関節は開放されて. 初診時現症:創部は足根骨が露出し,周囲を肉芽で. いなかった。以上より,踵骨の温存は困難であるが,. 覆われていた(図 1) 。. Syme 切断は可能であると判断した。踵骨への感染波. 来院時検査所見:WBC 10,400/μl, Hb 10.9 g/dl, TP. 及が疑われたため,Boyd 切断,Pirogoff 切断などの. 7.3 g/dl, Alb 2.2 g/dl, AST 14 U/l, ALT 23 U/l, LDH. 他の足関節切断は選択できなかった。. 138 U/l, CK 35 U/l, BUN 8 mg/dl, Cre 0.68 mg/dl,. Syme 切断の手術までの待機期間中,感染コント. * 浜松労災病院形成外科 2020 年 5 月 22 日受領 2020 年 7 月 15 日掲載決定.

(2) 創傷 12(2):106 - 111, 2021. 107. (a). (b). (c). 図 1 初診時所見。左足ショパール関節での切断後。 (a)前方からの所見 (b)側方からの所見 (c)足底からの所見. ム(SBT/CPZ),ミノサイクリン塩酸塩(MINO)に 変更して静脈投与を開始した。 術中所見(図 4):足底を縦方向に切開して,壊死 した皮膚,軟部組織をデブリードマンした後,heel pad を一部含んだ踵の内側皮弁,外側皮弁を作成した。 足関節の関節包を切開して足関節で離断し,距骨と踵 骨を除去した。踵骨はもろく腐骨となっていた。脛骨, 腓骨周囲の軟部組織を骨膜下で剝離した後,脛骨,腓 骨を脛骨下端で切断し,ヤスリで辺縁を滑らかにした。 図 2 初診時 CT。踵骨に近接してガス像が認められる。. heel pad を一部含んだ踵の内側皮弁で荷重部を可及 的に被覆したのち,不足分を外側皮弁で被覆して縫合 した。皮弁縫合後,脛骨,腓骨の断端は覆われたが,. ロールとして FMOX の静脈投与を行ったが,壊疽は. 前面と後面に皮膚欠損部が生じたため,塩基性線維芽. 進行し,手術予定日までの 20 日間の間に,踵骨部か. 細胞増殖因子(bFGF)を含浸させた人工真皮(ペル. ら足底中央にかけての皮膚が壊死に陥った。足底の皮. ナック G プラス ®,グンゼ株式会社,京都)を貼付した。. 膚が壊死となったため,踵骨足底部の皮弁ではなく,. bFGF はフィブラスト® スプレー 500(科研製薬株式. heel pad を一部含んだ踵の内側皮弁,外側皮弁で切. 会社,東京)1 本を添付溶解液 5 ml で溶かした溶解液. 断端を閉鎖するように工夫した Syme 切断を行うこと. として使用した(添付文書の用法用量に準じて,添. とした (図 3) 。踵骨足底部の皮膚より耐荷重性が弱く,. 付溶解液 1 ml あたりトラフェルミンとして 100μg と. 歩行時に皮膚潰瘍が生じやすい可能性が懸念された。. なる)。この溶解液を,サイズ M(82 mm × 90mm). 皮膚が歩行に耐えられないようであれば将来的に下腿. のペルナック G プラス ® に含浸させた(6.8μg/cm2)。. 切断となることを説明し,本人の了解を得たうえで足. ペルナック G プラス ® は皮膚欠損部に合わせてトリミ. 関節での切断術を施行することとした。. ングして使用した。. 手術予定日の 2 日前に初診時の創部培養結果およ び 薬 剤 感 受 性 結 果 が 判 明 し て,Enterobacter cloacae. 術後経過:手術の 1 週間後,人工真皮(ペルナック. complex,Klebsiella pneumoniae,Enterococcus faecalis. G プラス ®)を貼付した部位から混濁した浸出液を認. が検出され,3 種ともにガス産生菌であった。抗菌薬. めた。発赤,熱感などはなかったものの,感染のリス. はセフォペラゾンナトリウム・スルバクタムナトリウ. クを減らすためにペルナック G プラス ® のシリコーン.

(3) 創傷 12(2):106 - 111, 2021. 108. 図 3 手術計画(赤線は皮弁の輪郭,青斜線部は骨切除部,黄色部は heel pad). (a). (b). (c). (d). 図 4 手術所見 (a)足底部に壊死を認めた。 (b)脛骨,腓骨を脛骨下端で切断した。 (c)踵骨内側面の皮弁で荷重部を可及的に被覆した。 (d)前面と後面に人工真皮を貼付した。手前が前面。. フィルムを取り除いた。ペルナック G プラス ® を貼付. dog ear は目立たず, 丸みを帯びた滑らかな断端となっ. していた部位には全体的に真皮様組織の形成がみられ. た。. た。皮膚欠損部は洗浄と軟膏処置で上皮化を期待する. 術後 23 週目から義足装着下に歩行を開始した。義. こととした。軟膏は精製白糖・ポビドンヨード軟膏を. 足は二重構造の果義足で,インサート部分と有窓式の. 使用した。その時期に,本人が入院生活はベッドの大. 外装から構成されるものとした(図 6)。術後 1 年 7 ヵ. きさが体格に比べて小さいのでストレスがたまるとい. 月(歩行開始後約 13 ヵ月)には,室外では義足装着. う理由で退院を希望したため,自宅での創部の処置を. 下に 1 日約 3 km 程度の歩行が,室内では裸足歩行が. 指導して通院加療とした。皮膚欠損部は周囲からの上. 可能であった。断端底面後方に一部胼胝形成を認める. 皮化によって徐々に縮小し,骨断端にも問題はなかっ. が,潰瘍形成や感染などのトラブルは生じていなかっ. た(図 5) 。術後 16 週で上皮化が完了した。切断端の. た(図 7)。CT で断端の底側の heel pad の維持が確.

(4) 創傷 12(2):106 - 111, 2021. 109. (a). (b). (c). 図 5 術後 14 週目の所見 (a)前方からの所見 (b)足底からの所見。矢印は前方を示す。 (c)X線所見(前後像). (a). (b). 図 6 義足の所見 (a)果義足のインサート部分。矢印は前方を示す。 (b)果義足の有窓式の外装部分. (a). (b). 図 7 術後 1 年 7 ヵ月の所見 (a)外側斜め前方からの所見 (b)足底からの所見。矢印は前方を示す。. 認された(図 8)。 考 察 当科が SPP 測定器を所持していなかった当時,本 症例の切断高位は,造影 CT と超音波ドップラーを 用 い て 決 定 さ れ た。 現 在 は SPP 評 価 で, 測 定 値 が 30mmHg 以上 3),実際の診療における境界域を考慮 すると 40 mmHg 以上あることを確認してから切断高 位を決定することにしている 4)。 Syme 切断は 1843 年に James Syme によって報告 (a). (b). 図 8 術後 1 年 7 ヵ月の CT (a)前後像:矢印は heel pad (b)側面像:矢印は heel pad. された方法であり,最初の症例は 16 歳の少年の結核 による距骨と踵骨のカリエスであった 5)。現在では, 悪性腫瘍,先天性・後天性の変形,壊死,壊疽,難治 性の感染などの治療に適用されている 2)。.

(5) 創傷 12(2):106 - 111, 2021. 110. 一般的に Syme 切断が高い耐荷重性をもつ理由と. 欠損部に対して,植皮は行わず人工真皮を貼付して,. して,以下の事項があげられる。①脛骨と腓骨が,脛. その後軟膏処置で上皮化させた。理由は,図 4d のよ. 骨遠位端の関節軟骨の直上の断端の面積が広い部分で. うに,皮膚欠損部は広範であったが荷重部ではなく,. 切断されること,②切断面が地面と平行になるため荷. また収縮して上皮化することで断端形態がよくなるこ. 重がかけやすいこと,③踵骨足底部の皮弁には heel. とが期待されたからである。約 4 ヵ月の期間を要した. pad という構造があり,体重負荷および歩行時にクッ. が,dog ear は軽度で,丸みを帯びた滑らかな断端と. ションの役割を果たす。Syme 切断では踵骨足底部の. なった。この dog ear が少ない断端形態も術後トラブ. 皮弁に骨膜をつけるため,皮膚と骨膜との間に存在す. ルを生じていない理由の一つかと考える。今回,皮膚. 6, 7). ,④踵骨足底部の. 欠損部に bFGF を含浸させた人工真皮(ペルナック. 皮膚は glabrous skin という平滑で無毛の丈夫な皮膚. G プラス ®)を使用したが,ペルナック G プラス ® は. であること 8, 9),である。Heel pad は弾性線維組織に. 従来型の人工真皮のコラーゲンの一部をゼラチンに置. よる密な隔壁を有した脂肪組織で構成されており,同. き換えることで bFGF の徐放機能をもち,従来型よ. 様の構造は全身のなかで局所的に耐荷重性を要する部. り半分程度の期間で真皮用組織が形成されるため血流. 位(踵部,指尖部,手掌の母指球部と小指球部,坐骨. 再開が早くなり感染に強いとされる 12)。. る heel pad が破壊されないこと. 結節部,膝蓋骨部)に認められる 6, 7)。. 結 語. Syme 切断と下腿切断を比較すると,下腿切断では 十分な耐荷重性があるとはいえない下腿後面などの皮. Syme 切断には,比較的正常肢に近い下肢長のため. 膚に荷重を強いるが,Syme 切断では heel pad を有. 室内では義足を装着しなくても歩行できるという利点. する glabrous skin の皮弁に荷重することができる。. がある。踵骨足底部の皮弁が使用できない症例でも,. 加えて,Syme 切断では下腿切断に比べて正常肢に近. heel pad を有した glabrous skin で耐荷重性のある踵. い下肢長をもつため,室内では義足を装着しなくても. の内側皮弁,外側皮弁で断端を作成する今回の工夫は. 歩行できる。これは,下腿切断とは比較にならない利. 有用と考えられた。. 点である. 6, 7). 。Syme 切断を行った患者について,リ. ハビリテーション後の裸足歩行に関するコホート研究. 本論文について他者との利益相反はない。. で,小児の患者では 82%が,成人患者では 41%が裸 の切断端で歩行可能,との報告がある 10)。. 文 献. 今回の方法では,踵骨足底部の皮弁のかわりに heel pad を一部含んだ踵の内側皮弁,外側皮弁を荷重部に. 1)S. テリー・カナリ , 藤井克之:切断術/感染症/腫瘍 .. 用いた。術前は踵の内側皮弁,外側皮弁の耐荷重性に. キャンベル整形外科手術書[原著第 10 版], 第 2 巻 ,. ついての懸念があったが,体重が 130 kg あるにもか. 岩本幸秀編 , 東京:エルゼビアジャパン ; 2004. 30-7.. かわらず,術後 1 年 7 ヵ月経過後,トラブルは生じて. 2)津山直一 , 黒川髙秀 , 二ノ宮節夫 , ほか:切断術お. いない。今回の Syme 切断変法が成功した理由として,. よび腫瘍 . 整形外科手術クルズス , 東京:南江堂 ;. ①荷重面の再建に使用した踵骨側面(特に内側)の皮. 1996. 72-5.. 弁に heel pad が存在したこと,②本症例では内側皮. 3)長谷川宏美 , 市岡 滋:形成外科医の役割:創傷治. 弁の皮膚が glabrous skin であり,外側皮弁の皮膚も. 療医として . 日本のフットケア・下肢救済に必要な. glabrous skin から有毛の皮膚への移行部であったこ. 医療 PEPARS, 2010; 48: 37-43.. と,③患者は 37 歳という比較的若年であり,過去の. 4)塚本祐也 , 神保幸太郎 , 松浦充洋 , ほか:重症虚血. 職業は力士で運動能力が高かったこと,④断端皮膚に. 肢(CLI)患者の下肢切断術に対し皮膚灌流圧(SPP). 明らかな知覚鈍麻がなかったこと,⑤血流が悪くなく,. 測定を用いた術前評価の検討 . 整外と災外 , 2017; 66:. 感染コントロールと血糖コントロールが成功したこ. 379-82.. と, が重要であると考えられる。また,他の理由として,. 5) S y m e J : S u r g i c a l c a s e s a n d o b s e r v a t i o n s :. dog ear が少なかったこと,が考えられる。Syme 切. amputation at the ankle-joint. 1843. Clin Orthop. 断の欠点として,両果部に dog ear が形成され醜状変. Relat Res, 1990; 256: 3-6.. 形をきたす点と,dog ear による義足装着上での困難 さが指摘されている. 1, 2, 11). 。この問題を解決するため. に,Syme 切断の 6 週後に二期的に dog ear の形成術 行う方法が報告されている 11)。今回の方法では皮膚. 6)Harris RI:Syme’s amputation. J Bone Joint Surg, 1956; 38B: 614-32. 7)Harris RI:The History and Development of Syme’s Amptation. Artif Limbs, 1961; 6: 4-43..

(6) 創傷 12(2):106 - 111, 2021. 8)Banis JC:Glabrous skin grafts for plantar defects. Foot Ankle Clin, 2001; 6: 827-37. 9) Wu LC, Gottlieb LJ:Glabrous Dermal Grafting: A 12-Year Experience with the Functional and Aesthetic Restoration of Palmar and Plantar Skin Defects. Plast Reconstr Surg, 2005; 116: 1679-85. 10)Braaksma R, Dijkstra PU, Geertzen JHB:Syme Amputation: A Systematic Review. Foot Ankle Int,. 111. 2018; 39: 284-91. 11) Spitter AW, Brennan JJ, Payne JW:Syme amputation performed in two stages. J Bone Joint Surg Am, 1954; 36: 37-42. 12)牧野愛子 , 藤高淳平 , 福原定子 , ほか:塩基性線維 芽細胞増殖因子徐放機能をもつ新規人工真皮を使用 し創閉鎖を得た前額部難治性皮膚瘻孔の 1 例 . 日形. 会誌 , 2019; 39: 322-32..

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